自動車は本当にコモディティ化するのか、その時、日本の自動車メーカーに競争力はあるのか?

多くの地域で自動車産業は、地域の雇用と税収を支える基幹産業です。

自動車もコモディティ化し

自動車産業の競争力が低下したら…。

 

これについては、多くのモノづくり企業に対し非常に大きな影響があるため、
極力情報収集を行っています。

そんな中、思わず手に取って買ってしまったのがこの本です。

「アップル、グーグルが自動車産業を乗っとる日」 桃田 健史 著 洋泉社

同書では、今後先進国での需要の衰退と

新興国の需要の急激な増加という2面性があると述べています。

世界全体の自動車販売台数は増加を続け、2017年には1億台を突破するとみられています。

2010年 7466万台
2011年 7808万台
2012年 8206万台

2017年 1億台

この増加の大半は新興国によるもので、2016年には自動車の保有割合は

新興国と先進国の割合が逆転します。

2007年 先進国:新興国=6:4
2016年 先進国:新興国=4:6

 

一方で国内需要は減少します。

しかも軽自動車の割合が増えています。

2012年
国内の総需要 537万台
乗用車457万台中、軽自動車156万台 (34%)

今後、需要はさらに減少し、2028年には400万台を割り込み、300万台レベルに落ち込むと予想されます。

バブル期には、700万台を超えていたのに比べると、実に半分近くまで減少します。

 

原因のひとつは

 

少子高齢化です。

高齢者が運転できるのは元気な人でも90歳、人によっては80歳で運転しなくなります。

私の父は現在79歳ですが、すでに70歳になった時点で運転を止めました。

今後団塊の世代がこの年代に突入すると、高齢者の運転人口が減少します。

 

原因の二つ目は、

 

車が丈夫になり壊れなる一方、
新車に魅力がなくなり、敢えて買い替える必要が減ってきたことです。

 

原因の三つめは、

 

地方経済が疲弊し、車にお金がかけられなくなったことです。

デフレ下の日本では賃金が上がらず、大型商品を購入するマインドが希薄になっています。

その上、モデルチェンジしても買い換えたいほどの魅力が少ないため、買い替えがなかなか起きません。

さらに経済的な問題が免許の取れない若者の増加があります。

 

それでも先進国の市場全体はボリュームがあり、無視はできません。

またアメリカは移民政策により今後も人口の増加が予想され、市場も拡大すると予想されます。

そしてこうした先進国で売れるのは、高級車やハイブリッド車です。

一方新興国では価格の安い大衆車が多く売れ、世界全体では大衆車の割合が大きくなります。

その中で現在の自動車産業の抱えている問題は、「ネタ枯れ」であると同書は指摘しています。

 

2010年代に入り自動車メーカーは、オーバークオリティを意識するようになりました。

モデルチェンジしても、デザイン以外、製品に大きな変化が見られなくなりました。

自動車の基本性能、走る、曲がる、止まる、そして乗り心地は、消費者が十分満足するレベルに達しました。

 

こういうと自動車に詳しい方は、まだまだとおっしゃるかもしれません。

むしろ技術的に見ると、十分満足するレベルに達したというより、既存の技術では差がつけられなくなった言う方が正解かもしれません。

あるいは、そうやってこれ以上の細かな改良を積み重ねても、

そこに消費者が価値を見出すほどの差別化ができなくなった、

と言えるかもしれません。

 

かつて、宝島出版から出ていた「本気の車選び」という本には、

「車はプラットフォームの共通化が進むとメーカー毎の差がなくなり、

フロントグリルのメーカーのエンブレムだけがやたら大きくなる、」

という話がありました。

そういわれて見ると、各社ともフロントグリルのエンブレムがずいぶん大きくなった気がするのは、私だけでしょうか。

旧型Cクラスの全面

旧型Cクラスの全面

 

新型Cクラスの全面

新型Cクラスの全面

 

このような「ネタ枯れ」となった今、マスコミが注目したのが自動運転でした。

一方で自動運転は、携帯電話で起きたような変革を起こす可能性があります。

携帯電話では、メーカーはハードウェアの供給会社であり、一番大きな収益は毎月通信料を課金する電話会社にあります。

 

自動車もそうなってしまうのでしょうか?

そこに新たな動きが起きました。

 

先日グーグル・カーのニュースが出ていました。

以下のユーチューブに動画があります。


A First Drive

 

いよいよ自動運転が近い将来実現するのでしょうか。

体の不自由な方や高齢者が、免許がなくても自由に移動できる

そんな未来を考えるとワクワクします。

ところがどうも、そんなに簡単なものではないようです。

 

では、グーグルの発表した自動運転とは、どのようなものでしょうか

グーグルの公開資料によると自動運転の基本は

4種類のデータを重ね合わせることです。

・GPSでおよその位置を特定

・グーグルマップを元に地図データのベースを作成

・交通標識、信号機、路面などのインフラ情報を打ち込んだデータを合わせ

・グーグル・カーの3Dレーダーで収集した周りの3D情報を重ねる

 

ここからわかることは、

自動運転を実現するためには、地図データや標識、信号機、路面などの膨大なインフラデータが不可欠です。

そして、このデータベースをグーグルが保有した場合、自動運転の主導権はグーグルにあります。

 

実は自動運転は、すでに日本をはじめとした各国で取り組んでいました。

日本では、ITSと呼ばれるシステムです。

例えば愛知万博では、シャトルバスを無人で走らせていました。

ところがその後、自動運転はあまり盛り上がりませんでした。

それがここにきて急に脚光を浴びたのはなぜでしょうか。

それは自動運転の考え方が全く違うからです。

ITSは、道路などに目印を埋め込み、それを車が認識して自動で運転する方法です。

普及するには、道路などのインフラ整備が欠かせません。

また複雑な判断が必要な状況では人の判断が不可欠です。

このシステムは道路に線路を引くようなものです。

ということは、実現のハードルは高い、

というか、このITSは高速道路などの限られた道路しか考えていません。

全国の道路網にインフラを設置するのは、現実的ではありません。

と依然、お金のない国ではできません。

 

ところが、グーグルの自動運転のシステムは、自立しています。

必要なのは膨大なデータだけです。

データの収集は大変ですが、もしできればビジネスを独占できます。

そしてグーグルはグーグルマップのように無料で提供するかもしれません。

グーグルは、車との情報通信を独占できれば、無償でも構わないというかもしれません。

 

お金を生む方法は後から考えればいいのですから。

例えば、自動車メーカーからお金を取るとか、

自動車のディスプレイにレストランやお店の広告を載せるとか。

これは、検索エンジンでやったビジネスの仕方です。

利用者からみれば、Gmailのように無料で利用できればうれしいことです。

この時、グーグルの開発したシステムに対応した自動車しか、自動運転ができないとなれば、どうなるでしょうか。

まあ、私のように運転があまり好きでない人間には自動運転は待ち遠しい限りです。

 

ところが私も自動車メーカーの方と話をしましたが、反応が良くないのです。

なぜでしょうか。

自動運転は、車をコモディティ化してしまいます。

運転の楽しみは、もうなくなります。

加速の良いエンジン、シャープなハンドリング、全く意味がなくなります。

ドライバーはコンピューターですから。

しかし、自動車メーカーの人は、それは嫌なようです。

 

「アップル、グーグルが自動車産業を乗っ取る日」によると、

今の自動車メーカーを支えている技術者は、

40~50代半ばであり、

著者は、彼らから、

「20~30年くらい前の、我々が入社したての頃。

あの頃の気持ちに戻らないといけないと思う。」

という言葉を聞くそうです。

彼らは、高度成長期に華やかだった自動車産業に憧れて入社した世代です。

彼らの多くは、「クルマ好き」

その反面「電気嫌い」が多いとも言われます。

そんな彼らが、車が今までの車でなくなるようなことをするでしょうか。

しかも、敢えて車の価値を下げるようなコモディティ化することを。

「イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」クレイトン・クリステンセン 著 翔泳社

によれば、そのような変革に成功した企業は、極めて稀だそうです。

将来、グーグルが自動運転のシステムを完成し、

どの車も性能に差がなくなったとき、

市場を制覇するのは、どのメーカーでしょうか。

 

ひょっとして、グーグルが中国などに低価格の車をつくらせ、

30万円も出せば、好きなところに連れて行ってくれる乗り物が手に入る、

もし、そうなったら

その時、トヨタは、日産は大丈夫でしょうか。

 

参考までに

ダイヤモンドオンラインでは以下の記事があります。


トヨタ・日産・ホンダ等日系メーカーが自動運転とEV技術で「グーグル」に大負けするこれだけの理由

 
【イノベーションについてのまとめ】

イノベーションとは何か、日本企業のイノベーションの例、画期的なアイデアとそれを実現する方法、そしてイノベーターを脅かす模倣者の戦略など、今までのコラムを
「過去のイノベーションとデジタル時代のイノベーションについて」
にまとめました。良かったら、こちらもご参照ください。
 

 

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