フィルムカメラを知らない平成生まれに売れているカメラ「チェキ」

デジカメに押され、写真フィルム市場全盛期の4%まで縮小しました。

その中で、今売上を伸ばしているフィルムカメラがあります。

それが富士フイルムの「チェキ」。

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撮ったその場でカードサイズのプリントができるカメラ、

そうかつてポラロイドが圧倒的に強かったインスタントカメラです。

 

「えっでも周りで持っている人を見たことがない。」

そうかもしれません。

実は中国や韓国など東アジアの若い女性を中心に火が付き、それが日本に波及してきたからです。

販売台数も2009年は49万台が、2010年に87万台、2011年127万台、2012年160万台と伸びています。

その販売地域は、中国、韓国など東アジア地域が約5割で、日本は1割程度です。

 

どうして人気が出たのでしょうか?

 

理由は、「チェキ」で撮った写真は世界で1枚しかないからです。

デジカメは画像データのため、いくらでもコピーできる。

逆に1枚しかないことが、新たな価値を生みました。

例えば、結婚式などイベントなどです。

あるいは韓国では、チャリティーオークションでタレントが自分のチェキにサインをした写真をアルバムにして販売して、売り上げを寄付したりしています。

これも世界に一つしかないという特徴があるからです。

参考記事http://toyokeizai.net/articles/-/11975

 

皆さんご存知のようにかつて写真は、カメラで撮影して、お店に持って行って現像・プリントしてもらうものでした。

ところが、1948年偏光板をつくっていたアメリカ ポラロイド社のエドウィン・H・ランドが画期的なカメラを開発しました。

休日を過ごしていたランドに3歳の娘が

「どうして写真を撮ったらすぐに見れないの?」

この一言で閃いたランドは、カメラの内部で現像できるシステムを開発します。

最初のインスタントカメラ「Land Camera」は誰でも扱いやすく、

値段も手頃なため、爆発的に売れました。

 

といっても一般的な35mmフィルムより値段も高いので、使ったことがない方もいるかもしれません。

実は、工学などの実験には欠かせないものでした。

かつて光学顕微鏡や電子顕微鏡、オシロスコープなど様々な実験装置で観察した結果を記録するには、インスタントカメラか、通常の写真しかありませんでした。

すぐに結果を確認したいために、昔は暗室まで持っていた実験室も少なくありません。

従って、すぐに記録できるインスタントカメラは、欠かせないものでした。

 

他にも証明用写真のニーズもありました。

かつて履歴書や免許証の更新の為に、写真店や自動販売機で3分間写真を撮った経験のある方も多いと思います。

しかしデジタル化の波が押し寄せ、フィルムカメラはデジカメに圧倒されました。

いつしか写真はプリントするではなく、データになりました。

多くの実験室でもデータ化は非常に重宝しました。

すぐにパソコンに入れて、レポートに出来るからです。

そして3分間写真もデジタル化されました。

 

そして多くの人は写真をプリントしなくなりました。

いつしか写真は紙で見るものから、画面で見るものに変わったのです。

 

そしてインスタントカメラの市場も急速に縮小しました。

 

富士フイルムは1980年代初頭からインスタントカメラを開発し、販売していました。

インスタントカメラの開発には、印画紙や現像の高度な技術が必要で、他社が容易には参入できません。

その結果、ポラロイドに次ぐインスタントカメラとして市場で認知されてきました。

そして1998年写真サイズを名刺サイズにした「チェキ」を発売しました。

「チェキ」は発売当初は人気を呼びましたが、デジカメの普及に伴い需要は低下、結婚式などの需要で細々と売れるだけになりました。

そこでマーケティング戦略を変更し、「かわいい」を押し出して、若い女の子向けに売ることにしました。

そして全体のデザインも変更しました。

また彼女らは、普段は量販店のカメラ売り場にはあまり行きません。

そこで雑貨店や化粧品売り場といったところで、まず触ってもらい、その楽しさを実感してもらうことを狙いました。

ちなみに、初代のチェキと現在のチェキです。

中身は同じであったとしても、外観でこんなにも変わるものです。

 

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その結果、写真をプリントすることを知らない世代に、プリントする楽しさを伝えることに成功したのです。

彼女らは、お気に入りのファッションの写真にコメントを入れて友達と交換したり、自分たちの楽しみ方を見つけました。

そして、若い女性を中心に人気が高まり、チェキの使い方の本まで出版されました。

 

さらに富士フイルムでは、写真の周りに様々なデザインのフレームを設けたり、撮った後に手軽に書き込みができるようなデザインを加えました。

また人気キャラクターとタイアップして機種やフィルムも販売し、さらに携帯電話のようにカメラのボディ貼る装飾用のデコレーションシールも用意しました。

さらにカメラとしても白飛びした(全体に明るすぎ、顔などが白っぽくなる)いい風合いの写真が撮れるという特徴を生かして、通常より絞りを3分の2程度開けより白飛びした「ハイキーモード」という機能も加えました。

その結果「チェキ」のマーケティング戦略を考えるにあたり、韓国やアジアの国々で、口コミで人気が広がり、東アジア全体で10代後半~30代の女性を中心に市場が拡大しました。

韓国ではタレントのブログで取り上げられたり、テレビドラマで使われたことも人気に火が付いた原因でした。

これにはキャラクターとのコラボレーションやデザインに日本的な「かわいさ」が盛り込まれていて、それが東アジアでの日本文化の人気と結びついて広まったといえます。

参考 富士フイルム IRピックアップ「海外で人気が拡大するチェキ」

 

このチェキのマーケティングについて富士フイルムで販促を担当する渡邊氏は、

「若い女性のなかでも、デジカメやスマホがこれだけ普及している中で、チェキを使いたい人はどんな人だろうか」

という質問を自らに問いかけました。

この質問により、具体的な顧客像を浮き彫りにすることができたのです。

その結果

「一工夫をして人とは違う個性を出したい、友だち同士でコミュニケーションをとって楽しく過ごしたい」

といった女性像が浮かび上がってきたといいます。

そしてそのようなライフスタイルを持ち、個性的なファッションを楽しんでいる原宿系の女の子たちという具体手的なイメージでできました。

そして原宿だけでなく、韓国だったら明洞、中国だったら上海と、世界各地には同じような価値観を持った女の子が浮かび上がったのです。

そして原宿系のモデルをパッケージに起用した販促ができました。

 

富士フイルム イメージング事業部の坂田氏は、「東洋経済」で以下のように語っています。

以下、「東洋経済オンライン」より引用

 

「とにかく、チェキを使って楽しんでもらいたいですね。

友だちとのコミュニケーションを増やしたり、生活を豊かにするようなカメラになればいいなと思います。

チェキは親元を離れて楽しみ方が広がっているようなところもありますし、これからもユーザーの方々と一緒によりよい製品に育てていきたいです。」

 

引用ここまで

 

インスタントカメラという商品と技術は、昔からあるものです。

しかし時代が変わり、世代が交代すると逆に目新しいものになったのです。

そこに着眼し、ターゲット層を変えて、ターゲットの彼女らに合った商品を投入しました。

すると使い方や楽しみ方は、顧客が考えていきました。

そして、その楽しみ方はブログやSNSで口コミとなり広まっていきました。

20世紀の商品と21世紀のマーケティング戦略、まだ他にも様々な可能性があるのではないでしょうか。

でも、大事なことはデジカメ全盛の時代に、フィルムカメラを残した富士フイルムの決断だと思います。

 

富士フイルムの変化への対応については、弊社ニュースレター「モノづくり通信第15号」に書きました。良かったらご参照ください。
「モノづくり通信第15号」

 
 

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