高度成長時代の不況を振り返る。~30年先の経営を考えるために~

これからの世の中の変化を考える際、

過去がどうなっていたのか知っておくことは重要です。

戦後の高度成長期、日本企業が躍進して、
大変良かった時代という印象があります。

しかし実際には好況・不況があり、
その過程で倒産した会社も少なくありませんでした。

また時代の変化に取り残され、消えていった会社もありました。

そうならないためにも、あの時代がなんであったのか、
知っておくことは無駄ではないと思います。

戦後から現在に至るまで、大きな好況・不況は、以下のものがあります。

  • ○好況1950年(昭和25年)~1953年(昭和28年):朝鮮特需
  • ●不況1953年(昭和28年)~1954年(昭和29年):朝鮮戦争後の不況
  • ○好況1954年(昭和29年)12月~1957年(昭和32年)6月:神武景気(31ヵ月)
  • ●不況1957年(昭和32年)~1958年(昭和33年):なべ底不況
  • ○好況1958年(昭和33年)7月~1961年(昭和36年)12月:岩戸景気(42ヵ月)
  • ○好況1962年(昭和37年)10月~1964年(昭和39年)10月:オリンピック景気(24ヵ月)
  • ●不況1964年(昭和39年)~1965年(昭和40年):証券不況
  • ○好況1965年(昭和40年)11月~1970年(昭和45年)7月:いざなぎ景気(57ヵ月)
  • ●不況1973年(昭和48年)12月~1975年(昭和50年)3月:第1次石油危機
    ●不況1980年(昭和55年)3月~1983年(昭和58年)3月:第2次石油危機
  • ●不況1985年(昭和60年)7月~1986年(昭和61年)11月:円高不況
  • ○好況1986年(昭和61年)12月~1991年(平成3年)2月:バブル景気(51ヵ月)
  • ●不況1992年(平成4年)~2001年(平成13年):複合不況
  • ○好況1999年(平成11年)2月~2000年(平成12年)11月:ITバブル(22ヵ月)
  • ○好況2002年(平成14年)2月~2008年(平成18年)8月:いざなみ景気(仮)(78ヵ月)
  • ●不況2008年(平成20年)~:リーマンショック

以下の図に戦後から現在までの日本のGDPの推移と、不況を示しました。

戦後の日本のGDPの推移

ここで、名目GDPは、国内総生産(GDP)のそのままの金額です。

実質GDPは、名目GDPを物価の上昇率で割ったものです。

これは名目GDPの金額が増加しても、実際に物価も上昇していれば、
生産が増えていることにならないからです。

 

朝鮮戦争後の不況 1953年(昭和28年)~1954年(昭和29年)

戦後の混乱の中、激しいインフレとそれに対する緊縮財政政策の中で、
日本経済は深刻な不況に陥っていました。

しかし1950年6月25日朝鮮戦争の勃発により、
米軍は戦争に必要な物資の調達や戦車や航空機の整備を日本に依頼しました。

その発注金額は1952年には8億ドル(1ドル360円として、2,880億円)を超え、
最終的に米軍が発注した総額47億ドルに上りました。

これが朝鮮戦争特需となり、日本経済が息を吹き返しました。

実は、日本政府は占領軍経費として1952年までに総額47億ドル
ともいわれる費用を負担しており、そう考えると発注者は米軍でしたが
、資金は日本政府が出したことに近いものがありました。

一方この朝鮮戦争特需は一過性の面がぬぐえず、
1953年(昭和28年)にはその反動による不況が訪れました。

経営力の弱い中小企業は大企業への依存度を高めざるを得ず、
下請け化、親企業への系列化が進みました。

例えば鉄鋼業は、高炉〔こうろ〕を持たない電炉メーカーや、
他社から供給される鋼材の加工に特化した単圧メーカーなどの
中小の鉄鋼メーカーが多くありました。

しかし戦前の旧態然とした設備であり生産性が低いため、
競争力を失い、大手鉄鋼メーカーに合併・吸収されまし。

また当時は労働争議も激しく、その結果倒産した中小企業も少なくありませんでした。

あのトヨタ自動車も、1950年に過剰在庫による人員整理が原因で
激しい労働争議が起き、創業者の豊田喜一郎氏が退任しています。

 

なべ底不況 1957年(昭和32年)~1958年(昭和33年)

昭和32年まで続いた神武景気は、国際収支の悪化により急速に冷え込みました。

当時日本は輸出金額が輸入に比べ少なく、十分な外貨を稼ぐことができませんでした。

しかし生産が拡大すれば、原料、エネルギーなどの輸入が増え、
支払いのための外貨が不足します。

外貨が尽きれば外国への支払いができなくなる、
つまりデフォルトが発生します。

そこで政府は過熱する景気を押えるため、金融引き締め策を取りました。

その結果、産業界は減益・減収、資金不足に陥りました。

これに神武景気で急増した設備投資が、設備過剰を引き起こし、景気が低迷しました。

この時、長期間の景気低迷は避けられないとする「なべ底論」が起き、なべ底不況と呼ばれました。

結果として、国内消費の高まりと、政府が1958年(昭和33年)から3回にわたって
実施した公定歩合の引き下げによって、日本経済は回復し、
1958年(昭和33年)後半から岩戸景気に移行しました。

 

証券不況 1964年(昭和39年)~1965年(昭和40年)

1964年10月の東京オリンピック終了後に需要が減少し、
企業は過剰在庫をかかえるようになりました。

1964年にはシステムキッチンのサンウェーブ工業、
65年には粉飾決算が表面化した山陽特殊製鋼が倒産し、
市場に不安なムードが漂い始めました。

そんな中、1965年5月に山一証券の経営危機が伝えられ、
店頭に解約を求める顧客が殺到しました。

5月22日から25日の3日間に4万4,000人が山一証券の窓口に殺到し、
解約額は6日間で47億円にも達しました。

同様のことが他の証券会社でも発生し、金融恐慌寸前となったのです。

もし金融恐慌が発生すれば、企業に資金が十分にいきわたらなくなり、
倒産する企業が続出する可能性がありました。

5月28日に日銀が、山一証券に対する無担保、無制限、無期限の融資(日銀特融)を
決定し、事態はようやく沈静化しました。

結果として、日銀特融をはじめとして、戦後初の赤字国債発行などが効果を発揮し、
景気は10月には底を打ちました。

なお当時山一證券危機が始まった22日からわずか6日後の、
28日に日銀特融を決定したのは、当時の大蔵大臣 田中角栄氏でした。

 

決して順調でなかった高度経済成長期

このように過去を振り返ると戦後の高度経済成長期が決して、
順調で平坦な過程でなかったことがわかります。

むしろ左翼思想の蔓延や激しい労働争議など経営環境は厳しい面がありました。

さらに日本自体も十分な外貨がないなど、経済成長の足かせになっていました。

また歴史を振り返ると、第一次大戦後のドイツや終戦直後の日本のように、
大量の通貨発行による極度のインフレ、ハイパーインフレが起きています。

そのため通貨の発行に慎重であり、今ならば積極的に市場に通貨を供給して
景気刺激策を取るところ、前述のなべ底不況のように金融引き締めを行い、
不況を加速させてしまうこともありました。

その一方では、証券不況のように一歩間違えば大変な混乱になるところを、
適切な対処により危うく切り抜けたときもありました。

このように考えると、戦後の高度経済成長期が決して
順調に経済成長を遂げたのではないことがわかります。

常に経済環境は変動し、時には政策の失敗により不況が大きくなることもありました。

間違いなくいえるのは、好況は決して続かず、いい時の後は必ず悪い時が来ることです。

未来を予測し、変化の兆候を読み取り、いち早く手を打つことが必要ではないでしょうか。

ところが、その変化が今ではこの同時とは比べ物にならないくらい大きくなっています。

そしてその影響も広範囲にわたっています。

これについては、次回にお話しします。

 

「平成バブルはなぜ起きたのか?どんな過ちがあったのか?」については、こちらから参照いただけます。

「2050年、日本は世界の中に埋もれるのか。36年後の世界を統計データから読み解く」については、こちらから参照いただけます。

 
 

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