その価格、安くないですか? 利益を倍増する製造業の値決め

以前の記事で、製造業、特に中小企業では、現場カイゼンを行っても、それを収益の改善に結び付けるのは容易でないことを書きました。

そのカイゼンはお金を生み出しますか? 中小企業の現場改善の難しさ

カイゼンで生産性が向上しても、

派遣社員やパート社員などを削減し、人件費を削減するか、

余力ができた分、新たな受注を取ってきて売り上げを増やさない限り、

利益は増えません。

 

実は、カイゼン以外に収益を改善するもう一つの方法があります。

 

それは値上げです。

 

「何を馬鹿な!」と、おっしゃるかもしれません。

しかし、例えばあなたの会社が、治具や専用機の部品のような「一品もの」の仕事をしている会社で、あなたの会社の出す見積もりが毎回通っている場合、その見積もりは安すぎるかもしれません。

時々、「高い!」と言われて、値交渉されるのであれば、大丈夫でしょう。

それでも、まだ安い見積があるかもしれません。

 

先日も、ある社長さんが、

「手間もかかるし、あまり受けたくない仕事だったので、高めに見積りを出したら、『あれっ!』という感じで通ってしまった。」

とおっしゃっていました。

それを、「この仕事を取りたい!」と思って、

頑張って安く見積もったらどうなっていたでしょうか?

みすみす手にすることができる利益を失っていたのではないでしょうか。

この値決めは、

  • 量産か、一品ものか
  • 顧客がしっかりとしたコストテーブルを持っているかどうか

など様々な条件によって対策が変わります。

顧客が一品もの主体で、自社でコストテーブルを持っていない場合、受注価格は、相見積もりで決まります。

この場合、競合がいなければ、高くても受注できます。

 

逆に、ものすごく安い見積もりを出す競合が現れれば、仕事を大量に持って行かれる可能性もあります。

1990年代バブルが崩壊した後では、地方の金型メーカーが中部地区にやってきて、相当安い見積もりを出してきたこともありました。

ただし、極端に安い見積もりは、発注側も品質に不安を感じる場合もあります。

 

逆に、他のメーカーがつくれないような技術があれば、もっと高くできます。

ある樹脂部品会社にA社から樹脂部品の引き合いがきました。

かなり難易度の高い部品だったのですが、見積りを出しても受注できませんでした。

A社は他の安いところでつくろうとしたのですが、うまくいきませんでした。

そこで、その会社に再度引き合いがきました。

その会社は、今度は以前の2倍の価格で見積もりを出したそうです。

 

これは交渉のテクニック的には、正解です。

 

なぜならA社は、他ではこの部品はできないという貴重な情報を、結果的に渡してしまったからです。

その会社は、情報の点で圧倒的に優位となったのです。

(まあ、2倍にするかどうかは気持ちの問題もありますが)

 

では、顧客がしっかりとしたコストテーブルを持っていて、製造原価をちゃんと計算して、指値をしてくる場合はどうでしょうか。

特に量産部品では、指値の場合も少なくありません。

この場合も、重要なのは顧客の選択肢です。

 

指値に応じる企業が他に多数あり、供給能力に問題がなければ、指値以上の価格を出せば、受注できないでしょう。

しかし、他の競合メーカーも応じなければ、指値以上の価格が通る可能性があります。

実際、私が設計として価格交渉に当たった時、好景気で他にも仕事が一杯あったときは、コスト交渉は大変でした。

「その値段ではできない。」と強気で言われることも多かったです。

 

あるいは、価格の安い会社はあるけど、品質や納期に問題がある、

品質や納期管理の良い会社は、価格が高い、

ということも多くありました。

その場合は、何とか安い会社の価格にまで、下げてもらうように交渉しました。

もし、あなたの会社がこのような交渉を迫られたら、安易に下げるのはもったいないです。

いろいろと高い理由を並べて、少しだけ下げておいても、受注できる可能性は高いからです。

なぜなら、顧客の本音は、安い会社に発注したくないわけですから。

 

このように考えると、値決めは、情報が非常に重要です。

そのためには、日ごろから顧客に通い、人間関係を構築すると共に、普段の会話から情報収集することが重要です。

情報収集のテクニックとして、私はよく例えを使います。

顧客に直接

「いくらにしたらよいですか?」

「見積もりはどのくらい高いのですか?」

と、ストレートに金額を聞いても教えてくれません。

そこで、

「いくらぐらいですか?カップラーメン1個ぐらいですか?」

「いくらぐらいですか?牛丼1杯より高いですか?」

「これって、原付バイク1台くらいですか?」

と聞きます。

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金額は言えないけど、具体的な比較する物があると、それより高いか、それより安いかぐらいは大抵教えてくれます。

それでも全くわからないより、ましです。

これらの情報を基に値決めをしていきます。

 

ところが、製造業、特に一品ものをつくる会社では大きな問題があります。

 

それは、自社の「正確な製造原価が分からない」企業が多いことです。

 

小売店、例えばTシャツを売っているお店で、200円でTシャツを仕入れて、500円で売っているとします。

そのお店は、売れ残ったら50%OFFのセールを行い、250円で売ってしまいます。

それでも50円の利益があります。

これは仕入れ値が200円と分かっているからです。

 

ところが製造業では、この仕入に該当する製造原価がはっきりしていない企業があります。

「この部品は、大体2時間でできそうだから、わが社のアワーレート5000円をかけて、10,000円、これに販管費2割をつけて、12,000円」

こんなざっくりとした見積もりをしているところが案外多いです。

その価格が通れば、問題ないのですが、

「12,000円!高すぎる!A社は8,000円だったぞ!」

と言われて、

「今月は受注が少ないし、仕方がない!8,000円でいいです。」

と受注します。

 

これが赤字受注の原因のひとつです。

「本当は、いくらまでなら下げても良かったのか」

これには適切な原価計算が不可欠です。

しかし、税理士や会計事務所がつくる会計基準にのっとった原価計算は、このような目的には使えません。

ではどうしたら良いのか、これについては別の機会にお知らせします。

 

ものづくり改善 段取り時間短縮については、こちらから参照いただけます。

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