ニッチは自分でつくるもの!自力で宇宙開発を行う植松専務の講演を聞きました

私は小さい時から運動は苦手で、徒競争はいつもビリ、中学で入ったバスケ部は万年補欠で試合には一回も出ませんでした。

「自分は運動はダメなんだ!」

そんな呪文を自分にかけていました。

でも、それは学校と自分が、自分の可能性を奪う呪文をかけていただけでした。

 

原付免許を取って、買ったオートバイはオフロードタイプのバイクでした。

だったらオフロードを走らなければということで、近所の河原に出かけました。

難しい!

しょっちゅう転びました。

でも楽しくて、ヒマさえあれば河原に行って走っていました。

そのうち50ccでは物足りなくなり、2年後には競技用のモトクロスバイクで練習していました。

 

ある日、速そうな人が前にいたので追いかけたら、意外とついていけました。

彼は国際B級を目指して中部選手権に参加している選手でした。

「あいつは何者なんだ!」

彼は友人に語ったそうです。

おどろいたのも不思議はありませんでした。

彼は最新の水冷マシン、私は2年落ちの空冷マシン、それをリヤカーに積んで原付バイクで引っ張って河原に来ていました。

空冷モトクロスバイク

そんなボロバイクに追いつかれたのですから…。

やれば出来るんだ!

 

19歳の夏、呪文が解けました。

 

ニッチは自分でつくるもの!自力で宇宙開発を行う植松専務の講演

 

「どうせ無理」

そう私だけでなく、多くの子供、いや大人までもがこの呪文にかかっています。

この言葉をなくすために、自力で宇宙開発を行っている中小企業があります。

植松電機の植松専務、9月18日彼の講演を聞く機会があったので聞いてきました。

 

「どうせ無理」をなくすためにはどうしたら良いでしょうか。

それには小さな失敗をすればよいのです。

小さな失敗を繰り返して、それを克服することで自信をつけていくのです。

そう、私がバイクの練習で数限りなく転んだように。

そして自力で失敗を克服した人は、仕事でもチャレンジできるのです。

そして成果を上げる事ができます。

植松専務の言葉を彼の著書 「NASAより宇宙に近い町工場」より引用します。

(以下、引用部は太字で書かれています。)

なぜなら、結果が分かっている実験はしなくていいんです。

本当の実験はどうなるかわからないことをするものです。

 

自身の体験を振り返ってもそうでした。

社会人になってから、設計・開発を18年間やってきました。

設計した時は、うまく行くと思い込んでいました。

そして、大抵は問題が多発しました。

 

でも、それは新しいことにチャレンジしたからでした。

 

そして多くの人に助けられながら、なんとか解決してきました。

そして失敗した経験を積むことで、どうしたら失敗するか、分かってきました。

 

しんどいことやつらいことを克服したり改善したりするのは、みんな立派なビジネスになるからです。

 

私が開発していた電子部品組立機には、薄い基板を支えるために細い棒を立てて下から基板を支えていました。

しかし基板の大きさが変わると、その棒の位置を動かさなくてはなりませんでした。

最新の機械は、20台あまり連結して使用するので、20台の棒の位置を調整するのは大変でした。

この棒をロボットを使って自動で調整することは、他のメーカーでも過去に取組んでいました。

しかし、それまでどのメーカーも本気でその機能を製品に搭載していませんでした。

20台の機械を短時間で再スタートするためには、どうしてもその機能が必要でした。

本気で取り組んだら、大変苦労しましたが、実現しました。

実現したら、後をついてくるライバルはいませんでした。

独自の機能になりました。

 

ニッチを探せと言います。しかし…

 

ニッチは自分でつくるものです。

自分で苦しいことを見つけて改善すればいいのです。

顧客満足というものは、お客さんを「いやあ、すごいな」とうならせることにあります。

 

電子部品組立機は、ロボットが高速で電子部品を基板の上に置いていく機械です。

この電子部品を吸着する機構部分は非常に精密なものです。

そしてよく壊れました。

そこでこの精密な部分を大きさを1/2、重さを1/5にしました。

そしてワンタッチで交換できるようにしました。

今まで壊れると半日かかって交換していました。

それが片手で持ってきて、ワンタッチで交換後、10分もすれば元のように動きました。

それは、ラインを半日も止めたくなかったから。

止めないラインにしたかったから、頑張って交換式にしました。

そうしたらお客さんは、とても喜んでくれました。

 

0から1を生み出す仕事をするためには、どんな人が必要なのかというと、頭のいい人でも、高学歴の人でもありません。

「やったことのないことをやりたがる人」です。

「あきらめない人」です。

「工夫する人」です。

 

どんなに転んでも、起きれば良い、そう分かっていた私は、どんどんチャレンジしました。

そして学びました。

何でもチャレンジすると、とてもしんどいことを。

 

開発には納期があります。

解決できても、時間がかかれば発売に間に合わなくなります。

そこで新しい製品は、ポイントとなるところだけは、チャレンジしました。

チャレンジしなくては、性能が得られませんから。

その代り、今までと同じ機能でかまわないところは、できる限り今までの技術で行うようにしました。

力を入れるべきところと、そうでないところをメリハリをつけるようにしました。

それでもトラブルは常にありましたが。

 

「どうせ無理」は楽をするための言葉、楽をすると無能にしかなれない。

 

人工衛星をつくったときには、

前略 ~中には悪意のアドバイスをする人もいました。

「おまえたちの人工衛星は真空中で動くかどうか確認したのか?

おまえたちが使おうと思っている部品は実績がないじゃないか。

宇宙で動くわけないだろう」

と言われました。

 

「ではその真空中の試験はどうやってやればいいんですか」

と聞いたら、国の施設を使えと言うんです。

一日のレンタル料を聞いたら、600万円だというので、とても払えません。

そこで真空施設のことを研究してみたら、つくれそうな気がしてきました。

 

で、つくってみました。

もちろん、国の施設はすごく大きいものです。

けれども僕たちの人工衛星は小さいんだから、小さくていいやと思って、小さくつくりました。

廃材を利用してつくったら、20万円でできました。

この施設の中で、宇宙と同じ真空状態がつくり出せるようになったんです。

僕たちの人工衛星を入れてみたら、動きました。

 

「動くよ」と言ったら、その人は

「いや、宇宙はマイナス100度なんだぞ。そこで動くと思うのか」

と言うので、そこに液体窒素というものを循環させて、マイナス196度まで冷やせるようにしました。

そして実験したら、やっぱり動くんですね。

「やっぱり動くよ」

と言ったら、その人は何も言わなくなりました。

 

僕たちの人工衛星は宇宙に行って立派に1年と9ヶ月、仕事をしてくれました。

~中略

~僕たちの人工衛星には温度計をつけておきました。

はたして宇宙の温度は何度だったかというと、およそ30度でした。

どこがマイナス100度なんでしょうね

 

専門家は、その専門知識がある故に間違ってしまうことがあります。

私も土壌の分析で専門の機関に相談したところ、こういう設備がないから出来ないと言われました。

でも、どうしてその測定が必要なのか、遡って考えたら、簡単な実験でできることが分かりました。

そしてやってみたら、わりと簡単にデータを取ることができました。

 

実は問題を一番考えているのは、当事者なんです。

解決できなくて、困って専門家に相談に行っても、良いアドバイスがもらえなくても仕方ないんです。

それは、その問題の一番の専門家があなたなんですから。

 

不安だと思ったら、自分たちで繰り返して試して、自分達で信じればいいんです。

 

かつての私の上司はいつも言っていました。

「機械は思った通りには動かない。設計した通りに動く。」

新しいものを生み出す時は、どうしてそうなるのか、理屈をしっかりと考えなければなりません。

そして「いける!」と思ったら、すぐに実験します。

 

簡単な実験装置で十分です。

 

そして動くとわかったら、次に進みます。

そこまでは確実に進んでいます。

その結果が、自信になります。

 

では、何をつくるのでしょうか。

 

市場のニーズをきちんと調べなければならないでしょうか。

 

でも、こんな迷言があります。

「コピー機なんて世界で5000台売れればいい方でしょう」

IBMがゼロックスの創始者に対しての発言―1959年

 

「一般家庭がパソコンを欲しがる理由が見当たらない」

DEC創立者 ケン・オルセン

―1977年ボストンで開かれたワールド・フューチャー・ソサエティ・ミーティングにての発言。

 

「電車の時代はこない」

プロイセンの王ウィリアム一世―1864年

「お金を払ってベルリンからポツダムまで1時間で行くやつなんていないよ。馬なら1日待つだけでいいし、無料だ」

 

どんなものも最初は小さくて、そして価値が分からないんです。

 

世界で初めてのものを知っている人間はそれまでいないからです。

世界初のものはマーケットリサーチしたって、答えなんて出るわけがありません。

マーケットリサーチで得られるのは、すでにある情報だけです。

だから国家主導の世界初はこの世にいないんです。

世界初はすべて個人が自腹でやってきました。

人はやったことがないことと、知らないことしか出会わないからです。

夢とは、大好きなこと、やってみたいことです。

仕事は、社会や人のために役に立つことです。

初めて出会う全てのことに、

「うわあ、すごい、やってみたい」

と感動していれば、必ず、やってみたい夢というものが見つかります。

そしてその夢は必ず実現します。

でも簡単な夢から、かなえ方の練習をしなければ大きな夢はかないません。

だから、まず小さなことからやってみるべきです。

 

私が現場から設計に移った時は、設計の戦力が不足していた時期でした。

そして上司が私に思い切って、新製品の開発リーダーを任せてくれました。

まだ27歳の若造に思い切って仕事を任せてくれたのです。

随分生意気なことも言っていましたし、激しい議論もしました。

上司から見れば頼りない部分も随分あったと思います。

 

それでも小さな失敗を繰り返し、

それを自分で解決することで、

どのくらいのレベルでチャレンジすると、

どのくらい問題が起きて、開発にどのくらい時間がかかるか、

技術の難易度がある程度読めるようになりました。

 

そうやって徐々に大きなプロジェクトも任されるようになりました。

 

でも、企業で開発していた時は、目的が明確でした。

どんなチャレンジをすべきか、だれもできないことは何か、はっきりしていました。

 

今は、コンサルタントとして、企業の開発や自社商品のアドバイスをする立場です。

 

でも企業の方が一生懸命考えて開発しているものを見ると、こちらもワクワクします。

特に他にまだないものを、困っている人のために実現しようとしている人は心から応援したくなります。

 

それは、大発明でなくても良いのです。

例えば、愛知県豊田市の中小企業 株式会社東亜製作所は、狭い場所にオートバイを収納できるものです。

株式会社東亜製作 バイクガレージ・モトキュービック

ポイントは、レールの上にバイクを載せて、90度旋回する機構が付いていて簡単に狭い場所に収納できることです。

これはありそうでない商品で、世界初かもしれません。

それは狭い場所でも大型バイクを置きたいという人の困りごとを解決したからです。

それは社長がバイクが好きで、バイクの好きな人の困りごとが良く分かっていたからです。

まずは、「この人の困りごとを解決したい!」というものを探してみてはいかがでしょうか。

どんなマーケテイングの本よりも、マーケテイングのヒントがあるかもしれません。

 

植松専務は「どうせ無理」をなくそうという想いをTEDでスピーチしています。

以下のユーチューブで動画をご覧できます。

 

経営コラム後記

呪文が解けた私は、その後どうなったかといいますと、

モトクロスの練習中に転倒して首を痛めて、しばらくバイクに乗れない状態になり、モトクロスからは引退しました。

 

でもツーリングは好きで全国を旅しました。

 

20代後半でカヌーにはまり、毎週川に行っていました。

 

30代後半で、トライアスロンにはまり、毎日ランニングや水泳の練習をしました。

 

44歳でアイアンマン(水泳3.9km、自転車180km、ラン42km)も完走しました。

 

アイアンマンを完走

アイアンマンを完走

もし、17歳の夏にバイクと出会わなかったら、一生呪文がかかったままだったら、どんな人生だったでしょうか。

 

そして、頼りない若造の私を見守り、支えてくれた先輩たちがいなかったら、どんな人生だったでしょうか。

 

これまでの出会いに、ひたすら感謝しています。

 

そして今度は、私が少しでも若者たちの呪文を解くことができればと思っています。

 
 

《ご案内》

◆経営コラム 経営コラム 製造業の経営革新 ~30年先を見通す経営~◆

ものづくり企業の「30年先の経営」を考えるヒントとして、企業経営、技術の進歩、イノベーションなどのテーマを定期的に更新しています。

メルマガのハックナンバーについては、こちらをご参照ください。

 
こちらにご登録いただきますと、更新情報のメルマガをお送りします。

(登録いただいたメールアドレスは、メルマガ以外には使用しませんので、ご安心ください。)


 

◆未来を考えるワンコイン経営勉強会「未来戦略ワークショップ」◆

毎月第3日曜日 9:30~12:00 経営の失敗事例やイノベーションについて学ぶ有志の勉強会「未来戦略ワークショップ」を開催しています。

詳細は、こちらをご参照ください。

申込みは前日までに電話か、お問合せよりお申し込みください。

 

◆ニュースレター「モノづくり通信」◆

ものづくりや技術、イノベーションについて、弊社ニュースレター「モノづくり通信」を発行しています。

詳細は、こちらをご参照ください。

モノづくり通信の発行は、弊社メルマガでご案内しています。

こちらにご登録いただきますと、更新情報のメルマガをお送りします。
 
 



ページ上部へ▲

メニュー