イノベーションの本質とイノベーションを起こす方法を考える

近年、非常にマスコミに登場する言葉として、イノベーションがあります。

イノベーションとは、技術革新と訳されます。

技術革新が起きれば、日本企業はまた元気になるのでしょうか?

イノベーションとは、どのようなものなのか?

イノベーションの意味と、その実態について、主に「イノベーションのジレンマ」で有名なクレイトン・クリステンセンの著作を主に各種文献を参考にまとめてみました。


イノベーションとは

 

イノベーションの定義

全く新しい技術や考え方を取り入れて、新たな価値を生み出して、社会的に大きな変化を起こすことです。

シュンペーターによる定義

シュンペーターはオーストリアの経済学者で、1911年世界で初めて、イノベーションという言葉を用いました。

innovation

イノベーションとは、

【経済活動の中で生産手段や資源、労働力などを、それまでとは異なる仕方で新結合すること】

以下の5つがあります。

  • 新しい生産物、または生産物の新しい品質の実現
  • 新しい生産方法の導入
  • 新しい販路の開拓
  • 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
  • 新しい組織の実現

つまりイノベーションとは発明である必要はなく、今あるものを今までとは異なるやり方で結びつけるだけで、実現できるということです。

持続的イノベーションと破壊的イノベーション

このようなイノベーションの定義によれば、ソニーのウォークマンやアップルのiPhoneやiPodだけでなく、百円均一ショップやスターバックスもイノベーションです。

一方ある業界でイノベーションが起こると、今まで業界を制覇した企業が退場し、新たな企業が業界を制することが少なくありません。

iPhoneの台頭により、ガラケーと呼ばれる従来の携帯電話は市場が急速に縮小しました。

過去にはパソコンの普及により、日本語ワードプロセッサが市場から消えました。

 

もし自社が取引している企業が、イノベーションの波に飲み込まれ、短期に市場を失えば、自社の経営への影響は少なくありません。

従って、中小企業経営においても、イノベーションの本質を理解し、取引先の動向を注目することが重要と考えます。

「なぜ優良企業が失敗するのか?」

ハーバード・ビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセンは、多く事例の研究し、優良企業がその競争力と収益力を高めるために努力するほど、イノベーションから遠ざかり失敗へ突き進むことを明らかにしました。

これが「イノベーションのジレンマ」です。

クリステンセン氏によれば、イノベーションには「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の2つがあります。

 

【持続的イノベーション】

ある技術が開発されると、当初は技術の向上に応じて、性能も大きく向上します。

しかし、技術が成熟すると、多額の費用をかけ研究開発しても性能向上の度合いが低くなります。

この時間と成長の曲線はS字を描くことから、技術のS字曲線と呼ばれます。

そして技術が成熟し成長の限界が予想されると、企業は新しい技術の開発に取り組みます。そして新たな技術が確立すると、再び高い成長が実現します。

従って技術の向上は、下図のような曲線で高められます。

 

これが持続的イノベーションです。

この場合、今までに蓄積した技術と経験が、次の技術の開発に有利な条件となります。従って多くの場合、今までのリーダー企業が、次のリーダー企業になります。

技術の成熟と持続的イノベーション

技術の成熟と持続的イノベーション

 

【破壊的イノベーション】

破壊的イノベーションとは、従来の持続的な技術とは全く異なる破壊的技術で、市場に 参入することです。

多くの破壊的技術による製品は、従来の製品よりも性能が低く、それまでの市場では受け入れられません。しかしそれまでとは異なったニッチな市場では、その特徴が評価され、新たな顧客に受け入れられます。

 

その市場は大手企業が参入したいとは思わないような小さな市場です。

しかし性能は低くても、この新たな特徴が顧客に評価され、急速に市場が拡大します。

市場の拡大と共に基本性能が徐々に向上し、従来の製品に近づいてくると、大手企業の市場を奪うようになります。そうなって始めて大手企業は脅威を感じ、対応しようとします。

しかし、破壊的技術のメーカーは、それまでの経験で蓄積した技術とノウハウで大手企業を引き離してしいます。

その結果、大手企業は次第に市場シェアを奪われ、市場から退出するはめになります。

持続的な改良と破壊的技術

持続的な改良と破壊的技術

 

コラム 破壊的イノベーションの例1 《電話》

1875年グラハム・ベルが電話の特許を取得した時、ベルは電話を、電信事業を発展させるためのものと考えて、電信会社ウェスタン・ユニオンに技術を10万ドル(現在の貨幣価値で170万ドル)で譲渡しようとしました。

ウェスタン・ユニオンのウィリアム・オートンは、

「この会社が電気を使ったおもちゃごときをどうやってものにしろというのかね」

と鼻であしらったので、ベルはしかたなく自ら事業化することにしました。

 

1878年コネティカット州に創立された最初の電話会社の通話距離はわずか数マイルにすぎませんでした。

ベルは、二点間の通話サービスのライセンス事業を展開しました。

電話は人々の間に、近隣のオフィスや裕福な家庭の使用人との通話手段として広まりました。

1年後には、加入者が購入した電話機は1万7千台を超え、1900年には利用者数は100万人を超えました。

それでも長距離通話に占める電話の割合は、まだ3%に過ぎませんでした。

しかしベルの電話会社AT&Tは、純利益が1300万ドルだったのに対し、ウェスタン・ユニオンの純利益は600万ドルでした。

1910年、ついにAT&Tがウェスタン・ユニオンの経営権を買い取りました。

 

新市場型破壊とローエンド型破壊

破壊的技術により新たな市場に参入する企業は、そのビジネスモデルが今までにないビジネスモデル、いわば破壊的なビジネスモデルです。

この破壊的なビジネスモデルには、新市場型破壊とローエンド型破壊の2種類があります。

【新市場型破壊】

新市場型破壊とは、「価格が低い」とか、「持ち出せる」とか、「使いやすい」など今までとは異なる価値基準で、今まで顧客でなかった「無消費」の人たちを顧客にします。

例えば、ソニーのトランジスタラジオは、自分の部屋でラジオを聞きたいというティーンエージャーに新たな消費をつくりだしました。

同様に家庭用の感熱紙ファックスは、今までファックスのなかった個人の家庭に新たな消費をつくりだしました。


このような人々にとって、破壊的技術の製品を使う以外には、選択肢は「使わない」ことだけでした。

従って、ソニーのトランジスタラジオは、音が薄っぺらでも、顧客にとって「ラジオがない」状態よりもはるかにましでした。

同様に家庭用の感熱紙ファックスも、専用の感熱紙が必要であったり、送信に時間がかかったりしても、「ファックスがない」状態よりもはるかにましだったのです。

 

一方従来のラジオやファックスのメーカーは、新市場型破壊の企業をライバルとはみなしませんでした。これらの製品の市場は価格が安く、利益も少なく、大手企業からみれば魅力がありませんでした。

大手企業は、利ザヤの薄い収益源は新市場型破壊の企業に渡し、自分たちは持続的イノベーションで高い収益を上げる事を選択しました。

 

【ローエンド型破壊】

ローエンド型破壊は、限られた機能の低コストの製品を提供することで、従来市場の最もローエンドの顧客を獲得して成長するものです。

これはすでに「消費者」であるが、価格や機能などがローエンドの顧客の要求を満たさなかったために、需要が拡大しなかった層です。

ここに機能は限られるが低価格の製品を提供することで大きな成長を得ました。

しかし低コストの製品を提供しても十分な利益を上げるためには、新たなビジネスモデルの構築が必要です。

従来の企業と同じ収益構造では、低コストは収益性を圧迫し、体力のある大手企業に勝つことは困難です。

 

例えば、1960年代ウォルマートなどのディスカウントストアは、ペンキ、金物、スポーツ用品などの耐久消費財をデパートより低価格で販売し、売り上げを急増させました。

彼らは、在庫を年五回転以上回転させるビジネスモデルにより、粗利益率23%でも十分な在庫投資収益率(120%)を実現できました。その結果、デパートよりも低価格で売ることができました。

対するデパートは、在庫を年に三回転させるビジネスモデルのため、40%の粗利益率を確保しないと、十分な在庫投資収益率(120%)が得られませんでした。

デパートの顧客にとって、ペンキ、金物、スポーツ用品などの耐久消費財は、顧客自身が使い方を良く知っており、高度に訓練された販売員を必要としませんでした。

 

つまりデパートに「過保護」にされた顧客だったのです。

このようなローエンド型破壊者から攻撃を受けたデパートには、二つの選択肢がありました。

・ディスカウントストアに対抗して、価格を下げる

しかしデパートの在庫回転率3回転では、自社の在庫投資収益率が大幅に低下してしまいます。

・自社はより利益率の高い高額商品に経営資源を集中する。

その結果、デパートはこれらの商品の市場をディスカウントストアに明け渡しいきました。

 

コラム 破壊的イノベーションの例2 《トランジスタラジオ》

1947年、ベル研究所は世界で初めてトランジスタを開発しました。

初期のトランジスタは、出力が小さく、それまで主流の真空管には遠く及びませんでした。

ソニーの井深大は、1952年アメリカの友人から、ウエスタン・エレクトリック社(以降、WE社)が2万5000ドル(約900万円)でトランジスタの特許を公開していることを知りました。

井深は、翌年WE社とライセンス契約を締結しましたが、

WE社は

「何に使うのか? これは補聴器ぐらいにしかならない」

と言いました。

 

井深は、自らトランジスタの製造工程も開発し、1955年トランジスタラジオを発売しました。

このラジオは真空管式のラジオに比べ、音は薄っぺらで受信性能も低く、性能も大したことはありませんでした。

しかしアメリカのティーンエージャーにとって、うるさい親から逃れて好きなポップミュージックを聞くためには、他に方法はありませんでした。

その場合、性能は問題ではありませんでした。

1955年は、エルビス・プレスリーがテレビ出演し、熱狂するティーンエージャーたちに大人たちが顔をしかめた時代でした。

 

しかし当時の真空管の大手企業、RCA、ゼニス、ゼネラル・ラジオにとっては、価格が安く利益率も低く、市場が限られるトランジスタラジオに魅力はありませんでした。

真空管ラジオには、購入後も補修用の真空管の販売や交換の大きな市場ができていました。

彼らもトランジスタの研究に取り組んでいましたが、目指していたのは家庭のリビングに置く大型のラジオでした。

 

それができる間に、市場は小型のトランジスタラジオに席巻されてしまいました。

 

業界のトップ企業であるが故に転落する「イノベーションのジレンマ」

多くの場合、破壊的技術は業界のトップ企業ではない企業から生まれます。

トップ企業は、トップ企業に至る過程と、それまでに築いた価値観が、自らのイノベーションを阻害してしまいます。

 

これが「イノベーションのジレンマ」です。

これは以下のプロセスを経ます。

(1) 新規参入企業が、その破壊的技術でローエンド市場に足場を確保し、成長を遂げます。

新規参入企業にとって、ローエンド市場でも十分な市場規模であり、自社が獲得した破壊的なビジネスモデルは、ローエンドでも魅力的な収益をもたらします。

例 ソニーのトランジスタラジオの生産台数は、当時のソニーには十分魅力的な台数でした。

 

(2) 製品の機能が向上し、破壊的技術で従来の企業を席巻し、業界の優良企業となる。

 

(3) 優良企業となった後、自社の売上と利益が最大となるように、最も成果が期待できる分野に重点的に経営資源を投入する。

例 トランジスタラジオやその他の製品も、常に競合からの攻撃にさらされています。

自社の売上や利益を維持するためには、常に商品開発と技術開発を行い、より良い製品を開発する必要があります。

そのため企業は必要な経営資源は、できる限り効率よく配分しようとします。

 

(4) 小規模な市場では大企業の成長ニーズを満たさない

ローエンド市場や新市場で新たなニーズが見つかっても、優良企業にとっては市場規模が小さいものです。主力商品で競合と激しい競争を行っている企業にとって、貴重な経営資源を投入するほどの魅力がありません。

(5) 存在しない市場は分析できない

商品企画や研究開発の効率を高めるためには、市場の動向を調査し、顧客のニーズに合った製品や技術を開発しなければなりません。

しかし破壊的技術による市場は今まで存在しなかった市場であり、存在しない市場は分析できません。従って新市場型破壊では、市場調査と事業計画が役に立った実績はほとんどありません。

また多くの場合、専門家の予測は外れます。

従って新市場型破壊に取り組むには、市場規模も売り上げも分からない事業に、資金と人を投入しなければなりません。

これは財務的には良い判断とは言えず、このよう意思決定は容易ではありません。

例 ソニーは1990年代から米国流の付加価値経営を導入し、資本効率の最適化を図りました。その結果、それまでの革新的な製品を生み出す土壌が失われました。

 

(6) 組織の能力は無能力の要因になる

従来の持続的技術を開発するための、洗練された組織や人材とその価値基準は、新たな破壊的技術に取り組む際には、妨げとなります。

例 過去にNTTが携帯電話に取り組んだ時、NTTにとって通話品質は固定電話同様にクリヤで聞き取りやすい通話が基準でした。

スカイプやLINEなどの無料通話は、NTTの求める基準には達していませんでした。しかし携帯電話の通話料が高いと感じている顧客にとって、スカイプにより低料金で長時間海外と通話できれば、低い音声品質は許容でました。

 

(7) 技術の供給は市場の供給と等しいとは限らない

技術が進歩することで、持続的技術の製品はいずれ顧客のニーズを超えてしまいます。その結果、顧客の選択基準は、性能から信頼性、さらに利便性、最終的には価格へ変化します。

一方企業は競争力を高めるために、より高性能、高利益率のハイエンド市場を目指して 競争します。その結果ローエンド市場に空白ができ、破壊的技術を持った競争相手が入り込む余地ができます。

この製品の性能が市場の需要を追い抜いてしまうことが、製品のライフサイクルの各段階を移行する最も大きな要因です。

 

こうして破壊的技術で業界のリーダーとなった企業が、持続的技術では常にリーダー的な立場にありながら、忍び寄る破壊者に突然市場を奪われ、リーダー企業の地位を失ってしまいます。

 

コラム 専門家の迷言

「テレビは半年もすれば市場から消える。毎晩、合板の箱を凝視することに、人はすぐ飽きるだろう。」

1946年ダリル・ザヌック(20世紀フォックスのプロデューサー)

「世界に“コンピューター”は5つあれば足りる」

1943年トーマス・J・ワトソン(IBM初代社長)

「彼らのサウンドは好きになれない。ギターのグループは廃れつつある。」

1962年デッカ・レコーズ、ビートルズを拒んだレコード会社

「将来的にもパソコンのメモリは640KBもあれば充分だ。」

1981年ビルゲイツ(マイクロソフト創始者)

「複写機の潜在的な世界市場は、最大5千台と思われる。」

1959年IBMの幹部(ゼロックスの創始者に 宛てた手紙)

「個人が自宅にコンピューターを持つ理由はない。」

1977年ケン・オルセン(DEC社の創業者兼社長)

 

技術の進歩と製品の陳腐化

 

【相互依存型アーキテクチャ】

その技術が「十分でない」状態にある時、製品を構成する各要素の間の特性は、適切にチューニングする必要があります。

これは製品の設計思想にも関わり、「相互依存型のアーキテクチャ(設計思想)」と呼ばれます。これは別名「垂直統合モデル」、あるいは「すり合わせ型ものづくり」とも呼ばれます。

 

例えば、初期の大型コンピューターは、プロセッサからメモリ、オペレーティングシステムや入出力機器まで、全てコンピューターが最適な性能を発揮できるようにカスタマイズされ、チューニングされていました。

これはミニコンや初期のアップルのパソコンなども同様です。

 

これには各要素技術に対する高度な知識と調整能力が必要であり、この段階で新規企業が参入しても成功は難しいものです。

同様に自動車もエンジンやサスペンション、ECUなどがお互いに最適化され、チューニングされて、優れた乗り心地や静かで滑らかな走りを実現しています。

【モジュール型アーキテクチャ】

企業が競合との競争に打ち勝つために性能と機能を高めていくうち、顧客の要求を超えてしまう「オーバーシューティング」が起こります。その結果、顧客は他社と比較を始めます。

 

顧客は改良された製品を喜んで受け入れるものの、そのために割増価格を払う気はなくなります。

そして自らの望むものを出来るだけ手軽に手に入れようとします。

 

こうなると、少しでも性能を高めるために、個々の要素を最適にチューニングする必要がなくなります。

むしろ、より低価格を実現するために各要素(モジュール)を標準化し、大量生産して低価格を実現した方が、競争力が高まります。

その結果、モジュール型の製品アーキテクチャが台頭します。

 

こうしてモジュールの設計・製造の外部委託、インターフェースの標準化、製品のコモディティ化が始まります。

これは統合型リーダーへの破壊的攻撃となります。

日本は「すり合わせ型のものづくりが強い」という意見があります。


しかしこの理論によれば、ある製品が永遠にすり合わせ型であることはありません。競争に打ち勝つために製品の改良を続けていれば、いつかオーバーシューティングが起こります。

それは自動車も例外ではありません。

破壊的なアイデアを生み出す国

 

【アメリカ】

多くのアメリカ企業にとって市場を創造した経験は一回だけでした。後は、破壊的技術に興味を示さず、上位のマーケットへ進出して成長に専念してきました。

一方でアメリカでは、破壊的技術やアイデアを持った技術者や経営者がスピンアウトし、出身元の企業に破壊的な攻撃を仕掛けてきました。

ベンチャーキャピタルが資本を提供し、彼らを後押ししました。

これが活発に行われているのが、シリコンバレーです。

【台湾】

多くの企業が毎年設立され、破壊的なマーケットに狙いを定めています。

広達電脳(クォンタ・コンピュータ)は、ささやかな量のラップトップパソコンの製造請負から始めて、徐々に業界のバリューチェーンに食い込み、デルなどコンピューターメーカーのデザインにまで進出しました。

一方で台湾企業の多くは、新たな市場への破壊的な原動力を生み出しているわけではありません。

【韓国】

韓国の成長を支えてきたのは大財閥であり、相対的に低い人件費や政府の補助を有効に活用して、造船、鉄鋼、自動車、家電、半導体などの巨大市場で存在感を示しています。

ハイエンド市場への成長の余地は残っていますが、低い人件費のメリットがなくなった時、如何にして破壊的な市場へ参入するかという大きな課題があります。

【中国】

自国にハイエンドからローエンドまで幅広い市場を持つ強みがあります。

ローエンド市場には、先進国のハイエンド製品では満足できず、「非消費」の層が膨大に広がっています。
自国市場が求める製品を適切に提供すれば、破壊的な攻撃が可能です。

例えば、電動バイクは中国市場で急速に普及し、年間2000万台以上の販売実績があります。

すでに台数では、エンジン付きバイクを追い抜いています。

この電動バイクは、動力性能や航続距離ではエンジン付きバイクにかないませんが、低いランニングコストと、ガソリンスタンドのインフラのない地方で使えるという点で破壊的です。

【日本】

トヨタ、シャープ、ソニー、新日本製鉄、神戸製鋼所、キヤノンなど多くの日本企業は、破壊的イノベーションで世界の市場に参入し、成功してきました。

トヨタはトヨタ生産方式という低コスト・高品質の生産で、

シャープは液晶電卓、

ソニーはトランジスタラジオやトリニトロンテレビ、

新日本製鉄や神戸製鋼所はアメリカ市場の最も低い品質を求める層に安い鉄鋼製品、

キヤノンは卓上コピー機

などです。

こうしてローエンド市場参入した企業は、次第に性能を上げ、市場全体を席巻して行きました。

しかし多くの日本企業が、イノベーションのジレンマに陥っています。次の飛躍的な成長となる破壊的マーケットは、彼らには小さすぎ、漠然としています。

競合と競争の為の効率的な研究開発の仕組みは、新しいマーケットを創出するには、決して適切ではありません。

また国が介入する新事業、高品質テレビや第五世代のコンピューターなどは、典型的な生き残りのためのマーケット、つまり、すでに確立している技術の軌跡に沿うものです。

これらが、次の破壊的なニッチ分野を探す際に、役に立つことはほとんどありません。

 

コラム 革新的なアイデアは数人で 《ソニー》

ソニーは1950年から1982年の間に12の新市場型破壊事業に成功しました。

例えば、トランジスタラジオ、小型の白黒テレビ、ビデオカセットレコーダー、携帯型ビデオレコーダー、ウォークマン、3.5インチフロッピーなどです。

ソニーは、これらの新製品開発の決定を、創業者の盛田氏と五名ほどの腹心だけで行っていました。

 

彼らは人々を観察し、

「本当はどんな『用事』を片付けようとしているのか」

考えることによって、破壊の足掛かりを探し、驚異的な実績を上げていました。

 

その後、盛田達が経営から身を引くと破壊的事業は著しく減少しました。

ソニーではMBA出身者たちが多く採用され、彼らは市場を細分化し、定量的に成長性を分析しました。

この手法は既存市場での持続的な改良には役立ちましたが、直感的な観察によって何かを洞察することはできませんでした。

 

破壊的事業には、人々が片づけようとしている「用事」を見極め、迅速な開発とフィードバックが欠かせなかったのです。

 

破壊的なアイデアを評価する3ステップ

多くの製品や技術のアイデアは、頭の中に浮かんだ時点で破壊的であることは極めて稀です。

そのアイデアを実現に向けて形づくる中で、大きな成長性を秘めた破壊的なアイデアとなっていきます。

その事業プランが、破壊的なアイデアの可能性があるかどうか評価するには、以下の3つの関門をパスするしなければなりません

ステップ1

・今までお金やスキルがないなどの原因で、手に入らなかったり、できなかったり、高額な費用で専門家にやってもらっていた人が大勢いるか?

・この製品やサービスを利用するために、わざわざ不便な場所に移動しなければならないか?

 

ステップ2 ローエンド型破壊の可能性

・市場には、価格が低ければ性能面で劣っても喜んで購入する顧客がいるか?

・ローエンドの「過保護にされた」顧客を勝ち取るために、低価格でも魅力的な利益を得られるビジネスモデルを構築できるか?

 

ローエンド型破壊では、低い粗利益率でも魅力的な利益を実現するために、間接費の削減や素早い資産の回転を実現する製造プロセスと、今までより改良されたビジネスモデルの組合せというパターンが多くみられます。

 

ステップ3

・自社の考える破壊的イノベーションは、業界の大手企業すべてにとって破壊的であるか?

1社でも、その企業にとっては持続的イノベーションであれば、それまでの経験からその企業が圧倒的に有利であり、新規参入者が勝つ見込みはほとんどありません。

 

イノベーションに必要な資金

事業に資金調達は不可欠です。

特に破壊的技術で市場に参入する企業に、資金調達は避けて通ることができません。

 

事業の成長期に必要な資金は、

「成長は気長に待つが、利益は気短にせかす」

資金です。

破壊的技術やビジネスモデルで、今まで存在していない市場に参入し、「無消費」に対抗するには、市場が成長するのに時間がかかります。

従って破壊的市場は、参入後しばらくは小規模なままであり、大きな成長は望めません。

 

一方で、

その破壊的ビジネスモデルがうまく行くのか?

顧客がその製品に喜んでお金を払うのか?

つまり儲けの出るビジネスモデルかどうかは、早く検証しなければなりません。

そして問題があれば早く修正する必要があります。

 

そのためには、

「利益を気短にせかす」

資金でなければなりません。

破壊的ビジネスモデルが、儲けが出るビジネスモデルで、

しかも顧客の支持が得られるものであれば、

破壊的イノベーションにより上位市場に移行することが可能です。

 

しかし往々にしてベンチャーキャピタルからの資金は事業の成長を求めます。

そして

「成長は気短にせかすが、利益は気長に待つ」

資金により、イノベーターは誤った方向に向かってしまい成功から遠ざかります。

あるいは、企業の成長が失速したために、破壊的技術で新たな市場に参入しようとすると、企業の資金が成長を気短にせかしてしまいます。

その結果、成長事業を立ち上げるために本来やるべきことを見失ってしまいます。

つまり成長を期待して、儲けが出るかまだわからないビジネスに資金をつぎ込み、後戻りできなくなってしまうのです。

 

コラム 革新的なアイデアは何度も失敗の後に生まれる

コンピューター科学を専攻した大学生マックス・レプチンは、1998年夏セキュリティ・ソフトウェア会社を立ち上げるためにシリコンバレーに移り住みました。

彼はスタンフォード大学の暗号化技術の授業をのぞいた時、居合わせたヘッジファンド経営者ピーター・シールと意気投合し、携帯端末向けのセキュリティ ソフトの会社を立ち上げました。

 

当初の構想はクレジットカードやパスワードなどの個人情報を安全に送信できるソフトウェアを用意し、パームパイロットなどの携帯端末を財布代わりにするものでした。

期待して製品を市場に投入したが、顧客はパームパイロットの利用者の中でも個人情報に関心のある一部に限られ、市場規模があまりに小さすぎました。

 

そこでパームパイロット間のお金を送信するためのソフトウェアの開発に取り組みました。

大手ベンチャーキャピタルから資金を得て、急成長を遂げましたが、間もなく壁に当たりました。

「パームパイロット間でお金をやり取りするために直接会うのなら、小切手を渡せばいい話じゃないか。」

だが、このアイデアを煮詰めて行くうちに、パームパイロットとコンピューターを同期させて、別のパームパイロットのユーザーにお金を送りたいという要望に気がつきました。

「そこで電子メールにお金を添付するというアイデアが浮かんだ。」

 

これが電子メール決済サービスで世界最大手の会社、現在のペイパルとなりました。

もし2人が最初の製品を市場に投入し失敗していなければ、今の成功はありえませんでした。

携帯端末を財布代わりにするという発想が失敗だったように、最初のパームパイロットの実験も無残な失敗でした。

だがこうしたカギとなる実験を行ったから、成功に不可欠な最高の手がかりを得ることができました。

イノベーションを確実に手にする方法

進化論の誤ったイメージ

進化論によると現在の生物は進化の過程を経て、現在の環境に最適な姿に「進化」したことになります。

そして単細胞生物から脊椎動物、魚類から爬虫類、哺乳類と進化し、その頂点に立っているのが人間です。

ところが最近その学説に疑いがもたれています。

例えば、ファーブルは昆虫の生態を観察するうち、昆虫は最初から生きるための完全な術を知っていたと確信しました。

 

例えば、ツチバチはハナムグリの幼虫に卵を産み付けます。

ツチバチの幼虫は、ハナムグリの幼虫を殺さずに生かしたまま、食べて育ちます。

しかし食べる個所を間違えると、ハナムグリの幼虫は死んでしまい、その結果ツチバチの幼虫も死んでしまいます。

 

つまりツチバチは、

「最初からハナムグリの幼虫を食べる手順を完璧に知っていた」

のです。

これは「後から学習したとは到底考えられない「とファーブルは思いました。

間違った進化のイメージ

間違った進化のイメージ


つまり上の図のように生物は進化の階段をステップアップしたのではなく、

下の図のように様々な生き物がバラバラに現れ、たまたま環境に適応したものだけが繁栄しているのです。

正しい進化のイメージ

正しい進化のイメージ


同様にイノベーションも、どのイノベーションが優れたイノベーションか、それは市場が決定すると考えられます。

それは時代とともに、周りの環境にも影響されます。

下の図はインターネットの発展と共に発展したウェブブラウザの系譜です。

ブラウザの進化

ブラウザの進化


初期のブラウザは、1993年にNCSAのMosaicが登場し、それから1997年までに40以上もの製品がリリースされました。

しかし以降はInternet ExplorerとNetscape Navigatorに集約されました。

そして世にいうブラウザ戦争が勃発し、Internet Explorerに集約されました。

 

ところがその後Netscape Navigatorを作りなおしたMozilla Fire Foxがリリースされ、 さらにGoogleがGoogle Chromeをリリースしました。

今や他にもOperaやSafariなどもあります。

 

イノベーションを予測することは困難

このようにその時と環境、そして様々な要因により市場を制するものは異なるのです。

これを予測することは極めて困難です。

その結果、アップルの携帯端末ニュートン、モトローラの衛星電話システム「イリジウム」など多くの画期的な新事業が敗れ去りました。

それでも確実にイノベーションを成功させる唯一の方法は、失敗を恐れずにチャレンジを繰り返し、早く結果を検証することにつきます。

たくさんチャレンジすれば、当たる確率は高くなります。

 

厳選されたプロジェクトに多額の資金を投入するより、資金をかけずに規模の小さいプロジェクトを何度も数多く行う方が成功に近いといえます。

ソニーは革新的な製品を数多く発売しましたが、一方ヒットせずに消え去った製品もたくさんあります。

覚えているでしょうか?ヒットしなかった商品の数々

覚えているでしょうか?ヒットしなかった商品の数々


この中には、皆さんが全く知らない商品もあるかもしれません。

しかしこれがなければ、ヒット商品は生まれなかったと言えるのではないでしょうか。

 

未来は予測可能?

下記の「伊野辺家の一日」は、国が主導して2007年2月26日にまとめられた「イノベーション25戦略会議」より、20年後の未来をイメージして作られたものです。

はたして未来は、この予想通りになるでしょうか?

 

朝7:00

直之、由美子、大輝らも起きてきて、家族全員が居間で朝の団欒のひと時。

壁には103インチの大型ディスプレイ。

分割画面と専用ヘッドホンで各人が好きな映像(TV、インターネット、等)を見る事が可能だが、今日は美咲が留学している北京のTV放送を皆で見ながら談笑している。

朝8:00

直之が出勤。

バス、電車を利用して自宅からオフィスに向かう。

テレワーク制度の普及、フレックスタイム制(20年前にはこう呼ばれていた)の普及等により、通勤に伴う。

過密な人の移動がなくなったおかげで、バスも電車も座って乗れる。

直之の会社の社員の半分は自宅で仕事をしている。

かつて勤めていた大企業でも3割がテレワーク対象者らしい。

 

「かつての通勤地獄がまるで嘘のようだ」

そんな事を考えながら、昔の週刊誌を読むように携帯フレキシブル・ディスプレイに映し出されるニュースを読む。

ちなみに、伊野辺家は長期耐用可能な技術により作られた住宅で、200年も持つと言われている。

地震などの自然災害にも強く、建物の倒壊実験では、震度7でも倒壊しない。

地震の際にも、地震の揺れを自然に察知し、各種インフラや家電製品などがネットワーク化して二次災害を防止するシステムが作動するので、安心だ。

バスは、バッテリー充電型の電気自動車だ。

今では公共交通機関としてのバスはすべてこのタイプか燃料電池車になっている。

また、最近、人工光合成技術などにより、CO2をエネルギー源として走る自動車が開発されて、実用化が期待されている。

道路も極めてスムーズな流れ。

全国的には未整備なところも一部残されているらしいが、直之の通勤経路地域はITS(高度道路交通システム)が整備されており、3年連続で交通事故ゼロを達成している。

 
 

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