製造業の新規受注 ~ものづくりの営業におけるSPINの応用 その2

以前のブログで顧客に商品説明する際には、

特徴、利点、利益というFABの三要素があることを説明しました。

そして製造業の営業では、このFABを顧客に理解してもらうのに

とても簡単な方法があることを話しました。

それがサンプルをつくってしまうことです。

サンプル,プレゼンテーション

サンプルは最も効果的なプレゼンテーションです。

 

現物は何よりも雄弁に自社の技術を物語ります。

つまり特別なクロージング技術や、説得の技術がなくても、

サンプルが無言で営業してくれるのです。

そしてサンプルの作成費用は、商談に至るまでにかけた経費と、

今後の取引の利益を考えると、決して高くないといえます。

 

実際、積極的に新しい仕事を受注している企業は、

どんどん無償でサンプルを作ってきました。

100万分の1グラムの歯車で有名な樹研工業の松浦社長は、

取引先の技術動向を予測して、現状よりもさらに小型化すると考え、

事前に予想して部品をつくりました。

取引先が、仕事の依頼に来たとき、「その部品ならもうできているよ」

と言って取引先を驚かせたそうです。

 

そして人間の心理として、無償サンプルは相手に心には無言の負債となります。

つまり負い目があるので、ほかの条件が同一であれば、

サンプルを出した方に有利になる可能性があります。

では、実際の製造業の営業でSPINを活用した事例を考えてみます。

 

例えば、中小企業A社の営業Xさんが、大手メーカーB社の技術者Yさんを訪問しました。

Xさんは、A社の加工技術をYさんに知ってもらい、受注を取りたいと考えています。

最初に

1. の状況質問で、B社、さらにYさんについての客観的事実を聞きます。

ポイントは2つあります。

 

ひとつは事前に調べておくことです。

Aさんが訪問する企業は大抵ホームページを持っています。

従って、事前にホームページで調べれば、B社の製品や売上規模は分かります。

また、B社の製品の業界情報もある程度はネットで調べることができます。

その結果、質問を絞ることができます。

 

もうひとつは、事前に質問内容を考えておくことです。

SPINの質問技法は、今までのセールスと異なるため、アドリブではとっさには質問が出てきません。

そこで事前に調査した内容を元に、得たい情報を質問として考えておきます。

 

2. の問題質問で、Yさんの抱えている問題を聞きます。

ここでも事前に質問内容を考えておきます。

1.で調べた内容を元に、問題は何か仮説を立てます。

その仮説を検証する質問を考えます。

多くの場合、この質問が呼び水となりYさん自らが話す気になります。

その場合は聞き役に徹します。

実際、技術者と商談する場合、顧客に問題がないという場合は極めて希です。

なぜなら、技術開発では必ず問題が生じるからです。

従って、顧客が問題を話さないのは、話題がその問題に向かっていないと考えます。

何が問題なのか、話題を広げると共に、顧客が話しやすいように質問します。

ただ、顧客が自ら問題を語り出すことは多くの場合期待できません。

やはりAさんが広い範囲を質問して、話すきっかけをつくることが重要です。

 

3. の示唆質問

問題が明らかになったとき、その問題が重要なものであれば、

示唆質問で無理に問題の影響を引き出さなくてよいかもしれません。

「そんなことは言われなくても分かっている」

と言われてしまうかもしれません。

一方あまり重大な問題と捉えていなければ、

その問題の影響を示唆質問によって意識してもらった方がよい結果が得られます。

 

4. の解決質問

ものづくりの場合、解決策はシンプルに「できるか、できないか」という場合があります。

顧客がどうやってつくるか、に関心がなければ、「できます」でOKとなります。

むしろ「できる能力がある」ことを納得してもらうことが大変かもしれません。

 

クロージング

最も簡単なクロージングは、「できます」と答えた後、サンプルをつくってしまうことです。

サンプルは最もわかりやすく、しかも自社の能力も証明します。

非常に高価な部品では、製品と同じサンプルは困難なので、

その場合は肝心な部分のみ部分サンプル化します。

また、多く企業ではYさんがA社の説明を受けて良さを納得しても、

今度はYさんが社内の関係者にA社が部品が良いことを説明しなければなりません。

その場合も、現物サンプルがあれば説明が容易になります。

 

以上を要約すると

(1) 状況質問

事前に顧客を調べて最小限の質問。事前に質問を考える

(2) 問題質問

仮説を立てて、質問を考える。顧客が問題を話さないときは、話題を広げて、話すきっかけをつくる。

(3) 示唆質問

顧客が問題の大きさを認識していれば不要

(4) 解決質問

解決策は、できることを納得してもらえば済む場合が多い。

 

クロージング

現物サンプルで納得してもらう

このように、一見難易度が高いSPINも製造業固有の条件を当てはめれば

容易になります。

 

ものづくりの営業におけるSPINの応用 その1についてはこちらからご覧ください。

 

トップ企業が次々と導入した営業スキル「SPIN」については、こちらから参照いただけます。

 

売れる説明のポイント「FAB」については、こちらから参照いただけます。

 

「SPIN」の核心、4つの質問については、こちらから参照いただけます。

 

ものづくりの営業におけるSPINの応用 その1については、こちらから参照いただけます。

 

 

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