0.1. 中小製造業の利益を増やすには?|原価からわかる、利益を確保し持続・発展するためのアプローチ

利益改善の基本まとめ|中小製造業の経営課題

中小製造業の利益を増やすには?|原価から見える本当の経営課題と解決方法

なぜ利益が減少するのか?原価から見える中小企業の経営課題

  • 売上はそれほど下がっていないのに、利益の減少が続いている。赤字の年も増えた
  • この製品、いくら利益があるのか?本当は赤字ではないのか?
  • この見積金額は正しいのだろうか?

なぜこのようなことが起きるのでしょうか?

現場のコストダウンを頑張っても利益が増えない会社には、共通の原因があります。

このコラムでは、中小製造業でよく起きる6つの問題から、利益が減少する原因と、その解決方法を解説します。

※このコラムの事例は、実際に中小製造業で起きている問題を参考に一般化した架空の事例です。

なぜ利益が減少するのか?中小製造業によくある6つの問題

現場改善に取り組み、製造時間は短くなっています。経費削減にも取り組んでいます。

その改善は、利益になっていますか?

改善を続けているのに、利益は減少している。そうした会社は少なくありません。

どこに問題があるのでしょうか。

ロットが減少し、大量生産に適した設備が合わなくなってきている

大量生産では生産時間が短く生産性の高い設備を使用します。
しかし品種が増え、ロットが小さくなると、こうした設備では品種切替の時間が長く、原価が高くなることがあります。

例

  • バー材の自動供給付き自動盤で無人加工していたが、段取時間が1.5時間と長く、ロットが半分になったため、段取費用が増加した。
  • 加工する材料にアルミが加わり、鉄からアルミへ材料を切り替える際、切粉の清掃に30分余分に時間がかかるようになった。
  • 大型のプレス機のトランスファーラインによる自動化が自社の強みだった。ロットが小さくなると、金型交換に加えてトランスファー装置の段取も必要になり、ライン全体の段取に2時間以上かかるようになった。

他にも大量生産の工場でロットが減少すれば、以下のような問題が起きます。

製品1個当たりの段取費用の増加

大量生産では1個当たりの段取費用は低く、段取費用を原価に入れない場合もあります。
しかしロットが5,000個から2,000個になれば、1個当たり段取費用は2.5倍になり、原価に影響するようになります。

しかも大量生産では段取時間の長い設備も多いのです。

例

複数の設備を連結した加工ラインの場合、段取はすべての製品がラインから排出されなければ始められない。
しかも段取が終わっても最初の製品が出てくるまでにも時間がかかる
その結果、段取の着手から完了までの時間が長い。

例えば、6工程あり、各工程の加工時間が5分の場合、最初の工程に材料を投入してから完成まで30分かかります。段取前にライン内の製品をすべて排出するまでに最大30分、段取完了後、次の製品の最初の1個が完成するまでにも30分かかります。こうした時間も、品種切替に伴う停止時間に影響します。

計算上の原価は下がっていても実際の原価は高くなっていた

加工時間をストップウォッチで測り、ムダを削減し、1個当たりの加工時間は短くなっていました。
改善により計算上の原価は低くなっていました。
しかし段取費用も含めた本当の原価は高くなっていたのです。

どうすれば問題が分かるのか?実績原価の把握について原価管理コラムまとめから読むことができます。

では、この問題にどう対応したのか?具体的な取組を無料PDFで読むことができます。

原価を低く見すぎて赤字

多品種少量生産では、見積の回数が非常に多く、大量生産のようにひとつひとつの見積に時間をかけられません。
しかし見積金額が低ければ利益が出ない受注になってしまいます。
この低すぎる見積には様々な原因があります。

10年前のアワーレートで計算している

1時間の費用アワーレートには、人件費、設備の費用、工場の経費など様々な費用が含まれます。
しかしこのアワーレートが10年以上変わっていない企業もあります。
10年の間、人件費、消耗品、工場の経費は上がっています。
このアワーレートで計算した原価はすでに実態から乖離しています。

他にもアワーレートの計算に問題がある場合もあります。

例

  • 人のアワーレートに間接部門の人件費や工場の経費が適切に入っていない
  • 検査はパート社員だからと賃金プラスアルファでアワーレートを決めている
  • 作業者の清掃・打合せ・5Sなど非生産時間がアワーレートに反映されていない

kg○円、1個○円で価格を決めている

鋳物、製缶品のkg○円、メッキ、塗装の1個○円、慣例で決められた単価で価格を決めている場合があります。
これは発注者にとっては、価格が査定しやすく便利な方法です。
しかし製品によって同じkgでも製造時間は違い、原価は違います。
メッキや塗装も製品によって大きさや表面積が違うため、原価も違います。

例

  • 1個○円から、製品ごとに適切な原価を計算しようとしても、どう計算すればよいのかわからない
  • 製品ごとに体積や表面積を計算するのが困難
  • しかし人件費、処理液や塗料などの消耗品、工場の経費は年々上昇しています。
  • 適正な原価がわからなければ、取引先に価格が妥当であることを説明できません。

販管費、利益が適切に見積に入っていない

見積には製造原価だけでなく、販管費(管理費)と利益も必要です。
自社の販管費は、製造原価の何%に相当するでしょうか。
中小企業では、製造原価に対して20%以上の販管費が計上されていることもあります。その場合、見積に含める販管費が5%では、必要な利益を確保できません。

例

  • 取引先の指定で見積書の管理費は5%となっているため、原価の5%を管理費として見積に入れている
  • 実際の会社の販管費は20%で、これまでは見積金額を最初に決めて、それに合わせて原価を入れていた

実際にどのようにすれば原価を適切に計算できるのか?製品別原価の計算方法について原価計算コラムまとめから読むことができます。

「なぜこんなに高いのか?他はもっと安い」と毎回値切られる

こう言われる会社もあります。実際、競合は自社よりも低い金額です。

なぜ自社の見積は競合よりも高いのか?

問題は、競合よりも価格が高い理由がわからないことです。

競合よりも高い理由 間接部門の費用が大きい

市場の要求は高く、高い品質、信頼性、アフターサービスが製品に求められます。
販売した製品に不良があれば、時にはリコールして全品回収しなければなりません。
リコールがあればメーカーには多額の費用が生じます。
だから、メーカーは仕入先に対して

  • 高い品質管理と工程管理
  • 購入品・外注品の受入検査・品質管理と外注指導
  • 誰がいつ、どの設備でどの製品を製造したかという製造履歴管理
  • 作業者の教育と資格認定

このような高度な管理を求めます。

そのため生産管理、品質管理、工程管理など間接部門の人が増えています。
その分、間接費が増えて原価は高くなります。
しかし、すべての企業が同じ水準の管理体制を整えているわけではありません。そこまでの管理体制を持たない企業は間接費が少なく、見積金額も低くなります。取引先は、そうした競合の見積金額を示して「なぜこんなに高いのか」と言います。

例

  • 間接費を含めた自社の適正なアワーレートが計算されていない
  • 競合との原価の差を理解していないため、見積が高いことを説明できない

小ロット短納期のため、大量の在庫と保管費用がかかっている

メーカーは生産を効率化し、コストを下げるために、

  • 在庫をなくす
  • 必要な時に必要なものを発注

するようになっています。

しかし量産設備は1個だけつくれば原価は極めて高くなります。

  • プレスを1個だけ打つ
  • 自動盤で1個だけつくる

のは現実的ではありません。

またそれだけのコストを取引先は負担しません。
そこで取引先の需要にタイムリーに供給するため、多くの企業は在庫を持ちます。
この在庫にも費用がかかります。

例

在庫の保管・管理にいくらかかっているのか把握しておらず、在庫保有によって自社の見積が高くなっていることを説明できない。

間接部門や在庫の費用をどのようにすれば計算できるのか?
製品別原価の計算方法について、原価計算コラムまとめから読むことができます。

現場では複数の問題が重なって起きることもあります

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価格転嫁が進まず利益が減少

材料費、副資材、人件費、電気代などが上昇し、利益が減っています。
そこで取引先に「10%の値上げ」をお願いしました。
しかし取引先から、

「なぜ10%なのですか。根拠を示してください」

と言われ、交渉が進みません。

人件費、光熱費が上昇すれば、原価がいくら上がるのかわからない

製品によって材料費、加工費の比率は違います。
加工費に占める人件費も違います。
取引先に受け入れてもらうには、製品ごとに含まれる人件費・光熱費と、それぞれの上昇額を示す必要があります。

例

  • アワーレートに占める人件費、光熱費などの比率を計算
  • この比率から製品ごとの人件費、光熱費などの上昇金額を計算
  • 製品ごとに値上げ金額の明細を作成

刃物、溶接・熱処理設備などで使用するガス、溶接材、塗料や薬品など消耗品の製品ごとの使用量が不明

刃物、ガスなど様々な消耗品の価格も上昇しています。
1回の使用金額は小さくても、年間では大きな金額になります。

例

  • 切削加工用の刃物は製品によって消耗の程度が異なり、製品原価にいくら計上すればよいのか分からない。
  • ガスや溶接材などの費用は年間では大きな金額になるが、製品原価にどう反映すればよいのか分からない。

値上げ交渉での金額の明細が必要

今までは、工場経費として一括で原価に組み込めばよかったものが、値上げ交渉ではそれぞれの現在の費用と上昇額を示す必要が出てきました。

この値上げ金額の計算方法について、値上げ計算コラムまとめから読むことができます。

では、この問題にどう対応したのか?具体的な取組を無料PDFで読むことができます。

前任者が行っていた原価計算を誰も引き継げずブラックボックス化している

原価計算を長年担当した社員が退職しました。
残されたのは、前任者が自社に合わせて作り込んだ複雑なExcelです。
後任者が開いてみても、

「なぜ、この計算なのか分からない」

組織変更や設備の入替えがあっても、

「ここを変えたら、どこまで影響するのか分からない」

と怖くて触ることができません。

組織は変わり、賃上げもあって費用は増えています。
しかし見直しはできず、ずっと同じアワーレートです。

なぜこのようなことが起きるのか

Excelは柔軟に計算式が作れ、多くのデータを処理できますが、

  • どのような考え方で計算したのか、後から計算式を見てもわからない
  • 1箇所変えると、どこに影響するのかわからない

ということが起きます。

そのため、複雑なエクセルはつくった人以外がメンテナンスするのは困難です。

エクセルで原価計算したため起きる問題の例

  • 人件費や会社の経費が数値で入力され、時間が経過し金額が増えても反映されない
  • 人や設備の数、配置が固定され、増員・増設や組織変更に対応できない
  • 人や設備の繁忙状況が変わってもアワーレートに反映されない

原価計算の専門知識は前任者しか知らず、継承されない

製品別の原価計算のやり方の参考書は少なく、会計の専門家でも製品別の原価計算を指導できる方は限られます。
その結果、前任者がいろいろな本を参考に独学で自社の原価計算を構築します。
しかしそれを後任に指導、教育する機会がないまま会社を去ってしまうことがあります。

例

  • 材料費、加工費の計算は、エクセルから理解できるが、アワーレートをどうやって計算したのか、資料が残っていない
  • 材料歩留や稼働率をどのように決めたのか、根拠がわからない

原価計算は複数で共有が必要

自社の原価計算は、売価を決める重要な数値です。

これを一人の担当者しかわかっていないのはリスクがあります。
自社の原価計算のやり方を確定し、それを複数の担当者が共有できる仕組みが必要です。

製品別の原価計算の方法について、原価計算コラムまとめから読むことができます。

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利益はなんとか出ているが、B/Sは悪化している。将来が不安

中小企業には、塗装、メッキ、熱処理、鋳造など自動化設備を使って大量生産している企業もあります。
自動化設備は高額ですが、生産コストは低く、大量生産向きの設備です。
一方、大量生産品は価格が厳しく、取引先のコストダウン要求もあり、利益は年々減少しています。
現在はまだ利益がありますが、度重なる修理で資金が奪われB/Sは悪化しています。
このままでは将来発生する設備の更新ができるか不安です。

必要なのは中長期の資金計画

設備の更新時期と概算額は、あらかじめ予測できます。
そこで中長期での利益、設備の更新、借入金の増減を含めた資金計画を立てます。
そこから毎期必要な利益を逆算します。

設備のアワーレートは更新に必要な費用から計算する

財務会計は過去に発生した費用を適切に集計し利益を計算します。
しかし設備の更新は未来に発生する費用です。
つまりその設備が稼ぐお金は将来の設備の更新に必要なお金です。
その更新に必要なお金が会社に残るように設備のアワーレートを決めます。

例

  • 減価償却を基に設備のアワーレートを計算しているため、減価償却が終われば設備のアワーレートが下がり、そのため利益も少なくなる
  • 資材費や人件費の上昇によって設備価格が高くなり、更新時には以前の1.5倍と予想されるがそれを計画に入れていない

中長期の資金計画と設備のアワーレートの正しい考え方が必要

将来の設備更新をスムーズに行うためには、中長期の資金計画は必須です。

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利益を増やすために会社全体で必要なこと

実は問題は原価だけではないかもしれません。

見積金額の決め方や低すぎる見積に問題がある場合

利益が出ない、あるいは赤字になる原因は低すぎる見積金額や甘い製造時間の予想の場合もあります。

  • 取引先の要求が厳しく、このままでは赤字受注となるため、原価を低く見積もった
  • 指値されるから細かく原価を計算しても意味がない
  • 梱包、手仕上げ、抜取検査などの費用が原価に入っていない
  • 自社製品を設計する際、目標原価を達成できるか、確認していない

その結果、利益が出ない受注や赤字製品になってしまいます。

「価格は変えられない」場合でも、原価が分かればできること

「指値だから、原価を計算しても意味がない」と言われることがあります。
しかし価格を変えられなくても、製品ごとの原価が分かれば、次のことができます。

  • 赤字製品を見直す:どの製品が赤字かが分かれば、作り方や工程を見直したり、数量や納期などの条件を取引先に相談したりできます。
  • 受注を選ぶ:利益が出ない仕事を増やさず、利益が出る仕事に工場の時間を使えます。
  • 作業時間の目標を決める:「この製品は何時間で作れば黒字になるか」が分かれば、現場に具体的な目標時間を示せます。

その場合、受注後にいろいろと改善しても限りがあります。
最初の見積と受注を改善しなければなりません。
そして受注時に見積もった原価を、実際の生産で達成できたか確認することも必要です。

つまり利益を増やすためには、
最初の原価企画(見積)から、原価管理、原価低減まで
一連の活動を連続して行う必要があります。

原価企画(見積)―「いくらでできるのか」を予測し、利益が出る価格を決める

一般に原価企画とは、製品の企画・開発・設計段階で目標原価を設定し、その原価を実現するために製品を作り込む活動を指します。

一方、開発・設計のない受注生産の部品メーカーでも受注前に、
「この製品はいくらでできるのか」を予測し、
「いくらで受注すれば利益が出るのか」を把握しなければなりません。

本コラムは、原価企画の考え方を部品メーカーにも広げ、原価を予測して売価・見積価格を決める活動も含めて「原価企画(見積)」と呼びます。

製品ごとの利益は、製造原価だけでなく、納入場所、梱包、運賃、検収条件によっても変わります。
例えば、利益が減少する原因として、

  • 「ロットが小さくなったのに価格が同じ」
  • 「10年前のアワーレートで見積している」
  • 「取引先の指値を受け入れている」

これらは原価企画(見積)に問題があることも多いのです。

原価管理―「いくらでできたのか」を把握し、実際の利益を計算

見積で適切な原価を予測しても、実際にその原価で製造できるとは限りません。
製造後に実績原価を把握し、見積時の原価と比較し、実際の利益を計算します。

例えば見積では、
「製造時間30分」
でしたが、実績時間は45分でした。

原因を調べると、

  • 段取に想定以上の時間がかかっていた。
  • 作業者によって加工時間に大きな差があった。
  • 検査や梱包など、見積にない作業が増えた。

ということがあります。

あるいは到底達成できない目標時間のため、利益が出ないこともあります。
その場合、問題は現場ではなく、
最初の製造時間の予測や目標原価に問題があった可能性があります。
つまり原価管理は、
見積時に予測した原価と実際の原価を比較し、原価企画(見積)に問題があるかどうかを明らかにする活動
でもあります。

この原価管理については、原価管理のまとめコラムから読むことができます。

原価低減―目標原価を達成しても利益が足りなければ、さらに原価を下げる

目標原価を達成しても、さらに原価を引き下げなければならない場合もあります。

  • 「競争が激しく、目標原価では利益が出ない。あるいは売れない」
  • 「予想以上に経費が上昇したが、売価(見積)を上げられない」

このような場合です。
そこで、現在の目標原価をさらに引き下げることを本コラムでは「原価低減」としています。

つまり本コラムは、

原価管理:設定した目標原価を達成する活動

原価低減:目標原価そのものをさらに引き下げ、それを実現する活動

としています。

原価低減は大幅な原価の引下げとなることが多く、作業改善だけでは達成が困難です。

そこで

  • 材料や加工方法を変える。
  • 工程そのものを変える。
  • 設備を変える。
  • 製品の仕様や設計まで見直す。

このような取り組みが必要になります。

実際は、目標原価をさらに引き下げる原価低減を行わなければならない場合、

  • 原価企画(見積)での原価予測が甘かった
  • さまざまな事情から原価を低く見積もっていた
  • 目標原価を達成できる設計や製造工程になっていなかった
  • 受注後に原材料費などが上昇した
  • 市場や受注価格の予測が甘かった

このようなことが多いのです。

原価管理で目標原価・見積に問題が見つかった場合

つまり原価管理を行うことで、原価企画(見積)の問題や改善点が分かります。

  • 製造時間の予測が甘い
  • 取引先の要求が厳しく、原価を低く見積もっていた
  • 検査や梱包費用が見積から抜けていた

こうした問題があれば、原価管理で目標原価を達成するのは困難です。

製品ごとの利益が出ない製品や赤字製品に対して
「コストダウンの努力が足りない」

といっても、原価企画(見積)に問題があれば現場ができることは限られています。

あるいは、大幅な原価低減が必要になった場合は、その原因を明らかにして対策しなければ、次の製品でも同じ問題が繰り返されます。
従って

原価企画(見積)→原価管理→原価低減→次の原価企画(見積)

というフィードバックを継続することが、利益を増やすためには必要です。

中小製造業が持続・発展するためには

企業が持続・発展するためには、利益が必要です。
設備の更新、新たな技術や製品への取組、人材の採用と教育、これらには資金が必要で、その資金を貯めるには利益が必要です。
そのためには

原価企画(見積)→原価管理→原価低減→次の原価企画(見積)

の仕組みが必要です。

原価企画・原価管理・原価低減を続けることで、本当の問題が見えてくる

なぜなら原価企画(見積)に問題があっても原価企画(見積)だけ見ていては分からないからです。
原価管理で目標原価と実績原価を比較して、
初めて原価企画(見積)で想定した原価に問題があることが分かります。

そして原価管理によって製品別の利益を把握し、赤字製品を詳しく調べると、次のような問題が見えてきます。

  • 多品種少量生産で見積件数が多く、製造時間の見積りが実際とずれている
  • 梱包・運賃・検収などの条件があいまいになっている
  • 現場に目標時間を指示しておらず、作業者ごとの個人差も大きい
  • 取引先からの追加要求に対し値上げ交渉が進まず、原価が高くなっている
  • 人件費や経費の上昇分を価格転嫁できていない

具体的な問題がわかれば、対策ができます。
こうした取り組みを継続することで、利益を増やすことができます。

工場の管理者が取り組むこと

原価企画(見積)、原価管理、原価低減の仕組みを実際に運用するのは、多くの中小製造業で、工場長、製造部長、製造リーダーなどの管理者です。

管理者にとって重要なのは、

受注前に「いくらでできるのか」を予測する

製造後に「実際はいくらでできたのか」を把握し、問題があれば対策する

この2つです。

そして実績原価が高く利益が少なければ、原因を調べて対策します。

  • 製造時間が長ければ、改善によって時間を短縮する。
  • 見積時間が甘ければ、見積のやり方を見直す。
  • 見積に含まれない作業のため原価が高い場合は、価格への反映について営業と協議する。

そして、まず製品ごとに利益が出る状態にします。
それぞれの製品で利益がなければ、会社全体の利益も得られないからです。

しかし、ここで一つ別の問題が出てきます。

製品ごとには利益が出ている。それでも決算では利益が出ない

こうして製品ごとに利益が出るようになっても、

決算では、会社全体では十分な利益が出ない

ことがあります。

なぜでしょうか。

例えば工場の受注が少なく、当初想定した設備や人の稼働が実際は低ければ、実際のアワーレートはもっと高くなっています。
あるいは間接部門の人員や工場経費が当初よりも増えていることもあります。
その結果、それぞれの製品では目標原価を達成したのに、決算では利益が出ないことが起こります。

これは管理者だけでは対処できない問題です。

経営者でなければできないこと

原価を把握することで、

「利益が出ない本当の原因は原価ではなかった」

ことが分かる場合があります。

利益が出ない原因は、大きく次の2つに分けられます。

実際の原価が高い

  • 工場の稼働が低く、実際のアワーレートは高くなっていた
  • 間接部門や工場の経費が当初より増えていた

受注金額が低い

  • 指値や競合との競争のため、低い金額で受注していた
  • 製品の競争力が弱く、値引きや特殊仕様で受注した

このような場合、「コストダウン」では解決せず、管理者にできることは限られています。

間接部門の費用や工場の経費は固定費です。受注量に合わせて増減することは困難です。
つまり固定費は、人員も含めた工場の規模をどのくらいにするかでほぼ決まります。
そして工場の稼働や生産量は、どれぐらい受注があるかで決まります。
これには営業活動が大きく影響します。

その場合、

  • 現状の売上に対し、直接部門、間接部門、管理部門の規模は適正か
  • 工場が十分に稼働するだけの受注はあるか
  • 利益が出る金額で受注できる営業体制があるか、競争力のある技術・商品であるか

ここに問題があるかもしれません。
そして本当の原因が分かって初めて、正しい対策を選ぶことができます。

実際の会社では、ここからさらに問題が起きます

ここまで読むと、

「原価を把握し、原因を調べて対策すればよい」

と思われるかもしれません。

しかし実際の会社では、そう簡単には進みません。

  • 原価を計算したら、これまで利益が出ていると思っていた主力製品が赤字だった。
  • 値上げが必要だと分かったが、大切な取引先にどう説明すればよいか分からない。
  • 正しいアワーレートを計算したら、従来の見積価格との差があまりにも大きかった。
  • 原価計算の仕組みを変えようとしたが、必要なデータが社内にそろっていなかった。

そして、正しい原価が分かったからこそ、それまで見えていなかった新しい問題が現れることもあります。

では実際の中小製造業では、どのような問題が起き、経営者や担当者はどう対応したのでしょうか。

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