交渉 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 数人の会社から使える原価計算システム「利益まっくす」 Sun, 15 Mar 2026 06:37:41 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.7.5 https://ilink-corp.co.jp/wpst/wp-content/uploads/2021/04/riekimax_logo.png 交渉 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 32 32 【製造業の値上げ交渉】22. 少し高くても受注2 指値とコストダウン https://ilink-corp.co.jp/13403.html https://ilink-corp.co.jp/13403.html#respond Sun, 08 Sep 2024 02:51:20 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=13403
このコラムの概要

製造業が顧客の指値に応じるには、まず正確な原価計算で対応可能か見極める必要があります。もし指値が原価を下回る場合は、諦めずに徹底したコストダウンを追求します。具体的な策としては、原材料の見直し、工程効率化、設備の稼働率向上などがあります。これらの努力を顧客に示し、信頼関係を築きながら、利益を確保できる最適な価格での受注を目指すことが重要です。

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新規の引き合いがあった場合、取引先が発注金額を指定(指値)することがあります。

この場合、指値で受注しなければだめでしょうか。

なぜ取引先は指値をするのでしょうか?

それは開発段階から原価を管理する原価企画を行っているためです。
 

原価企画とは?

今はどのメーカーも競合との価格競争が厳しく、販売価格は高くできません。

そこで利益を出すには、原価を抑えなければなりません。

もし開発が終わって原価を集計し、原価が高すぎれば赤字で販売することになってしまいます。大抵は生産中にコストダウンを行い利益が出るようにします。

しかしあまりに原価が高ければ、生産開始前に再度設計をやり直したり、最悪販売中止になったりします(かつて企業で開発をしていた時、そういった経験をしました)。

そこで多くのメーカーで、図のように目標原価を開発段階で設定する原価企画を行います。

図 原価企画

製品企画の際に市場価格を決めて、それに対する原価、開発費の回収、利益と販売費などの数値計画を立てます。

この目標原価を展開して、購入部品費、社内での組立・加工費、工場経費に展開します。

複雑な製品では、これをさらにユニットごとに展開します。
 

図 目標価格の割り付けと目標価格のオーバー

図 目標価格の割り付けと目標価格のオーバー

もし各ユニットに展開した原価を集計し、目標価格を大幅にオーバーすれば設計の見直しをしなければなりません。

原価の7~8割は設計で決まってしまいます。高く設計してしまった製品を安くつくるのは困難なのです。
 

指値

ここで設定した原価から逆算して、各部品の目標価格を決めます。

これが指値です。

ではどうやって価格を決めるのでしょうか?

実績がある部品は過去の実績価格から決めます。

実績のない部品は、類似部品の過去の価格を参考に推測します。

実際は、製品の目標原価が厳しく、そのため指値も低くなります。

ではその価格で本当につくれるかというと、具体的な根拠はない場合が多いです。取引先でその部品の製造工程まで展開して、各工程の加工時間とアワーレートから指値を決めることは多くありません。

あるいは取引先でコストテーブルが整備されていれば、コストテーブルを元に指値を計算します。

このコストテーブルは、部品の大きさや表面積など、何らかのパラメーターから部品の原価を概算するものです。

しかし概算なのでコストテーブルの金額が実際の原価と合っているとは限りません。部品によっては計算と合わないものもあります。

指値は経営目標

つまり指値は、
「この金額でなければ目標価格で売れない、あるいは目標利益が得られない」
という目標値です。

図 目標価格から指値への展開

図 目標価格から指値への展開

残念ながら原価企画の段階で、近年の様々な費用まで配慮されることは多くありません。製造業では「原価は下げるもの」という考えがあるためです。

そのため新製品を従来の製品より安く販売する、あるいは従来の製品よりも利益を増やそうとすれば指値はどんどん低くなります。

それは現実の原価と乖離します。

本来は低価格で製造するには、低い原価でできるように設計から見直さなければならないのです。
 

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安く調達するには、安くつくる必要

その点、安くつくることについて中国メーカーは優れています(品質の問題はありますが)。

かつて二輪市場が拡大していた中国市場で、ホンダは安価なコピーメーカーに手を焼きました。

そこでホンダは、コピーメーカーの1社 海南新大洲摩托車と提携するという奇策に出ました。

提携後、ホンダが海南新大洲摩托車で見たのは「彼らがホンダも考えられない方法で安くつくっていた」ことでした。中国国内でし烈な価格競争を行うコピーメーカーは、安くつくることに関して多くのノウハウがあったのです。

そこでホンダは、品質面で妥協できない部品のみホンダのサプライヤーの部品に変えさせ、それ以外はコピーメーカーの製品そのままでホンダブランドをつけることを認めました。

その結果、このコピーメーカー製ホンダの二輪車は他のコピーメーカーから市場を奪い取ることに成功しました。さらにこの海南新大洲摩托車のサプライチェーンを活用して、部品を安く調達し、タイやベトナムで安価な二輪車を生産し、市場シェアを拡大しました。タイやベトナムで売れているホンダの二輪車の価格は、日本の半分近い価格です(最近は円安で差は縮まりましたが)。

一方、量産メーカーは生産を開始したから、改善を行ってコストを下げていきます。


注) 生産現場の改善活動は、作業者の自主的な活動として、カイゼン(KAIZEN)と呼ばれるため、一般的な改良を意味する改善とは区別して、以降はカイゼンと記述します。

 

定期的に原価低減を要請する問題

生産開始後も定期的に発注価格マイナス〇%を要求されることもあります。

仕入先もこうした要求が定期的に来ることは分かっているため、生産する中でカイゼン点を探して、コストダウンします。

あるいは、メーカーの全社的なコスト低減活動の一環として、原価低減○%という目標が出されたり、一部の製品のみ市場での価格競争力が低いため、「価格協力」と称して一律○%の価格低下を求められたりします。
 

限られるカイゼンの効果

しかし現実にはカイゼンでできるコストダウンは限られます。

「カイゼンに終わりはない」

と、継続してカイゼンする姿勢は大切です。しかしこれまでもずっとつくってきた製品の原価は、頑張ってカイゼンしても下がる金額はわずかです。

ただし材質や加工方法まで変えれば、原価は大きく下がります。

例えば切削加工からプレスやダイキャストに変える、

金属から樹脂に変えて一体成型する、

このようなカイゼンをすれば原価は大きく下がります。しかしこのような変更は設計変更が必要なため、メーカーと協力して行う必要があり、仕入先だけでは困難です。

しかも定期的な価格引下げには、それ以上大幅な原価低減が必要なのです。
 

実はもっとコストダウンが必要

取引先から価格引き下げ5%の要請があった場合、すべての費用を5%引き下げる必要があります。

しかし原材料は頑張って交渉しても下がりません。そして部品には材料費が原価の50%を占めている場合もあります。

その結果、受注金額が5%低くなった場合、製造費用(製造時間)はもっと下げなければなりません。

例えば、架空のA社のある製品で受注価格が5%低くなった場合の加工時間の短縮を計算します。

この会社は
販管費が製造原価の20%ありました。

材料費 : 500円
製造費用 : 500円
製造原価=材料費+製造費用= 1,000円

受注金額は1,260円でした。

販管費は製造原価の20%なので
販管費=1000×0.2=200 円

その結果、利益は
利益=受注金額-製造原価-販管費

=1260-1000-200=60 円

利益60円は 原価+販管費 の5%でした。

5%価格引下げでも利益が出るようにするには

取引先から5%の価格引き下げの要請がありました。
受注価格=1260×(1-0.05)=1197円

材料費、販管費(比率)、目標利益はそのままとすれば
(販管費+製造原価)=1197-60=1137円

つまり1000円の製造原価を947.5円にしなければ、同じ利益が得られません。

この1,000円のうち材料費500円、材料費は下げられなければ、製造費用のコストダウン目標は

製造費用=製造原価-材料費=947.5-500=447.5円 (-10.5%)

製造費用を500円から447.5円(-10.5%)に引き下げなければなりません。

つまり5%の価格引き下げに対して、同じ利益にするためには10.5%の製造費用削減が必要です。

図 価格引き下げと原価低減

図 価格引き下げと原価低減

もし製造費用を10%下げる、つまり製造時間を10%短縮する具体的な方法がなければ、根拠のない一方的な価格引下げです。
 

値上げの根拠を正しく提示するには、見積や実績原価といった基礎的な原価の考え方を押さえておくことが重要です。
原価計算の基礎から原価管理、値上げまaでを体系的に整理したページはこちらをご覧ください。
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低すぎる指値は買いたたきの可能性

このように適切な根拠のない一方的な価格引下げや指値は、下請法違反という見解を国は出しています。

そこでこのような価格引下げの要請があった場合、できる限り要請の文書を保管しておきます。この文書が下請法違反の証拠になります。
 

過剰品質になっていないか?

取引先の目指すのは目標価格の実現です。そのためには本当はつくり方を見直す必要があります。

そこで図面や仕様で過剰な品質になっているところがないか探します。そのようなところが見つかれば取引先と協議します。

「心配だから入れた公差」、「念のために入れた注記」があるかもしれません。その1文が仕入先の生産の効率を引下げ、原価を引き上げているかもしれません。
 

安くても品質リスクのある仕入先と取引しますか?

メーカーの最大の課題は、品質リスクです。市場クレームやリコールになれば多額の費用が発生します。そして市場クレームやリコールには仕入先の部品の品質不良が原因のものもあります。

こういった品質リスクを考えれば、いくら安くてもリスクのある仕入先に発注するでしょうか?

取引先のこのような状況も踏まえ、自社の適正価格を説明して理解を求めます。
 

低すぎる価格

中には高い値段を出せるのに、低い金額を出してしまう場合もあります。

私の経験ですが、ある製品の重要な基幹部品の見積を仕入先に依頼しました。

出てきた見積は、自分の想定よりもかなり低い金額でした。この部品は他ではつくれないため競合はなく、もっと高い金額で発注しました。残念なことに、この仕入先はその後、経営が大幅に悪化してしまいました。

本当にあの値段で利益が出ていたのか、高く売れるチャンスを生かす考えはなかったのか、やるせない気持ちになりました。
 

取引先が原価を誤解

取引先が低い価格を求める原因に仕入先の販管費と利益を誤解していることもあります。これについては○○を参照願います。

指値でどこも受けない

私の経験ですが、原価企画を行い、目標価格を設定して指値を決めても、どこも指値では受けなかったこともありました。

取引先が指値で発注できるかは、低い指値でも受注する仕入先があるかどうかです。

これは取引先のサプライチェーンの規模と仕入先によります。

仕入先に仕事が十分にあれば、低すぎる金額の案件を無理して受注する必要がありません。その結果、どこも指値で受けてくれないことが起きます。

もし金額が低すぎて断った案件が、しばらく経って再び「何とかできないか」と打診されれば、それはどこも指値で受けなかった案件です。その時は強気で指値よりも高い価格で交渉できます。

交渉には、適正な原価と値上げ金額が必要

顧客と建設的な話し合いをするには、自社の適正価格が分かっている必要があります。また値上げ交渉では、製品別の適正な値上げ金額も必要です。

まず自社の正しい姿を知ることが、顧客と交渉するためには必要です。

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