価格交渉・値上げ交渉の進め方|製造業のための購買対応と伝え方を解説 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 数人の会社から使える原価計算システム「利益まっくす」 Wed, 01 Apr 2026 11:23:54 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.7.5 https://ilink-corp.co.jp/wpst/wp-content/uploads/2021/04/riekimax_logo.png 価格交渉・値上げ交渉の進め方|製造業のための購買対応と伝え方を解説 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 32 32 5. 材料費・人件費が上がったとき、価格はどう変えるべきか https://ilink-corp.co.jp/7717.html https://ilink-corp.co.jp/7717.html#respond Wed, 27 Apr 2022 03:12:10 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=7717 原材料や人件費など製造業の原価は、近年上昇しています。
鋼材など資源やエネルギーが世界経済の成長に伴い需要が増加し、それに対し供給が不足し価格が上昇するからです。石油のように産油国の供給調整と投機マネーの流入のため価格が大きく変動するものもあります。
 

1年間では大幅な上昇

その結果、鋼材価格は下図に示すように1年間で40%も上昇しました。

図1 鋼材価格の推移

図1 鋼材価格の推移


 

原油価格は1バレル116ドルと2008年以来の高値になりました。一方、長期的な傾向を見ても、2005年以降1バレル25ドルを切ることはほとんどなくなりました。つまり以前のような価格は期待できそうにありません。

図2 原油価格の推移

図2 原油価格の推移


 

木材は海外の旺盛な需要のため相場が上昇し、日本が買い負けし入手不足になる「ウッドショック」が起きました。
 

人件費も国の最低賃金の引き上げに伴い上昇しています。

最低賃金は10年間で26%上昇しました。
図3 愛知県の最低賃金の推移

図3 愛知県の最低賃金の推移

このような原料、光熱費、人件費の上昇は製造原価を引き上げます。その結果、まず自社が使用している原材料や包材などの資材価格が上昇しています。加えてコロナ渦のため世界中の工場の稼働が低下し供給不足が生じました。供給不足は半導体や電子機器だけでなく、電線やコネクタのようなものまで入手困難になりました。
 

こうなると価格が高くても手に入るだけましとなってしまいます。そして高い価格で買わざるを得ません。
 

値上げを認めない会社があると

これがサプライチェーン全体に大きな影響を及ぼしています。図のように最初に原料や資材の価格が上昇します。これは2次下請けの製品の原価を上昇させます。その結果、2次下請けメーカーは値上げをしなければ採算が取れません。2次下請けメーカーが値上げすれば、次は1次下請けメーカーと順次価格は上昇するはずです。
 

しかし1次下請けメーカーと2次下請けメーカーの間に強い支配関係があり、

2次下請けメーカーの値上げを1次下請けメーカーが認めなければ、2次下請けメーカーの経営は苦しくなります。

図4 サプライチェーンでの値上げ


 

部品メーカーと最終商品メーカーの違い

この原材料価格の上昇と値上げの関係は、部品メーカーと最終商品メーカーでは違います。
なぜなら

最終商品メーカーの場合は、自社が値上げしても競合が値上げしなければ、販売量が減少し市場シェアを落としてしまうからです。

食料品や日用品など消費者が価格に敏感な商品で、この傾向は顕著に出ます。

逆に販売量を落とすより、たとえ原価の上昇により1個の利益が少なくなっても販売量が維持できれば、結果的に全体の利益の減少は抑えることができます。
 

販売量の維持を優先

マスコミは

「企業努力で値上げを吸収しきれず食料品や日用品が値上げ」

と報道します。実際はシェアを維持するために利益率の低下を我慢してきた企業が、耐えられず値上げしたのが正解で、企業努力で値上げを吸収できていたわけではありません。

この「企業努力で値上げを吸収」の誤解が、中小企業が取引先に値上げを要求しても受け入れられない原因の一つです。

 

部品メーカーの販売量は発注先の需要で決まる

最終商品メーカーと異なり、下請けの部品メーカーは高い市場シェアがあるわけでないため、値上げをしなければ会社全体の利益が減少します。しかも元々利益率が低い場合が多く、原材料費の上昇は利益を圧迫します。
 

この原価と利益の関係は下図のようになっています。
ここでは架空のモデル企業として「金属切削加工A社」を想定します。
 

原価と利益の関係

このA社のA1製品を例に、原価と利益の関係を説明します。

図5 製造原価の構成

図5 製造原価の構成


 

製造費用

A1製品は材料費300円、製造費用545円、従って製造原価は845円でした。

内訳
マシニングセンタ加工 段取時間1時間 加工時間0.1時間 ロット100個
アワーレート(人) 3,295円/時間 アワーレート(設備) 1,657円/時間
人の製造費用 363円 設備の製造費用 182円 合計545円

製造費用545円には、作業者の人件費や生産に使われた設備の費用、他に間接部門の人件費や工場の製造経費が含まれます。
 

販管費

他に工場には、製造原価以外の事務職や営業担当の人件費など「販売費および一般管理費(以降 販管費)」もあります。
この販管費は製造原価に一定の比率をかけて計算します。
A1製品の販管費は150円でした。

従ってA1製品を製造するのにかかった費用は、
製造原価845円に販管費150円を加えた995円です。
 

もし1,080円で受注した場合、
利益は1,080円から995円を引いた
85円です。
 

値下げは利益が大幅に減少

つまりA1製品を納入して入ってくるお金1,080円のうち、
995円は実際にかかった費用です。

利益として残るお金は85円しかありません。

顧客が発注価格を1,040円に下げれば、
利益は約半分の45円になってしまいます。
 

小売業と製造業で異なる販管費の考え方

ただし販管費の考え方は、小売業と製造業(特に部品メーカー)は異なります。
 

小売業は先に挙げた最終商品メーカーと同様、
価格を下げれば販売量が大きく増やすことができます。
従って製造業のように原価の一定の比率を販管費と考えるよりも、
会社全体の粗利(売価から仕入金額引いた金額)の合計金額で考えます。
粗利の合計が販管費を上回れば、利益が出るからです。
 

しかし製造業は工場の生産能力で生産量が決まってしまいます。しかも部品メーカーは価格を下げても受注量は大きく増えません。従ってどの製品も一定の比率で販管費が含まれていると考え、それでも利益が出るような価格で受注します。
 

材料など費用の上昇による原価への影響

材料価格の上昇

このA1製品で材料費が20%上昇し360円になったとします。

図6 材料費が上がった場合

図6 材料費が上がった場合


 

その結果、製造原価も60円増加し
905円になります。
販管費も製造原価に比例するので、
10円増加します。
 

その結果、製造費用合計は1,065円になります。

受注価格が1,080円であれば、80円の利益が15円と、大幅に減少します。
 

材料費以外の費用の増加はわかりにくい

このように材料費の上昇は、材料費が単独の費目となっているためわかりやすいです。

しかし人件費や光熱費は製造費用の一部になっています。人件費がいくら増加したら、製造原価がどれだけ増加するか、簡単に分かりません。
 

これを計算するには、製造原価に個々の人件費や光熱費を組み込んだ個別原価の仕組みが必要です。

同様に製品を顧客に配送する輸送費が上昇した場合も、販管費に輸送費を個別に組み込んだ仕組みが必要です。

図7 費用の増加と原価への影響

図7 費用の増加と原価への影響


 

利益まっくすの活用~利益まっくすは人件費や光熱費の上昇でアワーレートが変わる

弊社の個別原価計算の仕組み「利益まっくす」は、決算書の労務費、製造経費からアワーレートを計算し個別原価を計算する仕組みです。
そのため決算書の労務費や光熱費が上昇した場合も個々の製品の製造原価がどれだけ上昇したのか簡単に計算できます。
 

切削加工 A社の例

そこでA1製品を例に、人件費、電気代、輸送費が上昇した場合の原価を示します。
 

A1製品の製造費用は以下のように計算しました。
ここでアワーレート(人)、アワーレート(設備)は、間接部門の人件費や工場の製造経費が含まれています。

マシニングセンタ加工 段取時間1時間 加工時間0.1時間 ロット100個
アワーレート(人) 3,295円/時間 アワーレート(設備) 1,657円/時間
人の製造費用 363円 設備の製造費用 182円 合計545円
 

人件費が3%上昇

人件費が3%上昇した場合、A社の人件費は年間で537万円増加しました。
 

その結果、アワーレート(人)、アワーレート(設備)は以下のように増加しました。
アワーレート(人) 3,382円/時間(+87円/時間) 
アワーレート(設備) 1,668円/時間 (+11円/時間)
 

その結果、製造費用は
人の製造費用 372円 設備の製造費用 183円 合計555円(+10円)
10円増加しました。

販管費は151円、1円増加し、合わせて11円増加しました。
元々85円だった利益は74円、11円減少しました。

図8 人件費3%増加による原価の影響

図8 人件費3%増加による原価の影響


 

会社全体で人件費3%の上昇は、A1製品では11円の原価の上昇です。11円はそれほど大きくないように見えるかもしれません。しかし11円値上げしなければ、年間では537万円もの利益を失います。
 

電気代が20%増加

同様に電気代が20%上昇した場合、A社は260万円年間で費用が増加しました。
 

A1製品を製造する設備の電気代(ランニングコスト)も増加し、アワーレート(設備)は上昇します。またそれ以外の工場で使用する電気代も増加するため、工場の製造経費(間接費用)も増加します。その結果、アワーレート(人)、アワーレート(設備)は
アワーレート(人) 3,310円/時間(+15円/時間) 
アワーレート(設備) 1,692円/時間 (+35円/時間)
 

その結果、製造費用は
人の製造費用 364円 設備の製造費用 186円 合計550円(+5円)
5円増加しました。

販管費は150円と変わらず、費用の増加は5円でした。

図9 電気代20%増加による原価の影響

図9 電気代20%増加による原価の影響


 

5円は低い金額ですが5円値上げしなければ、年間で260万円の利益がなくなってしまいます。

このように人件費や光熱費の上昇は個々の製品の原価で見ればわずかな金額です。しかしこのわずかな金額を値上げしなければ、工場全体では年間で大きな利益を失います。
 

輸送費が上昇した場合

一方輸送費は、製品毎に計算していないこともあります。また発送も、場合によってチャーター便だったり混載便だったりします。あるいは自社で輸送する場合もあります。

この場合、まず仮に条件をチャーター便、あるいは混載便と決めます。その条件で1個当たりの輸送費を下図のように計算します。

図10 製品1個の運賃の計算

図10 製品1個の運賃の計算


 

チャーター代が4万円→6万円と50%上昇した場合
1個当たりの運賃40円→60円 (+20円)
 

見積で輸送費は販管費の中にまとめて記載しないで、輸送費だけ別の項目で記載します。そうしておけば輸送費が上昇したとき、値上げ交渉が容易になります。

自社で輸送する場合は、社内の製造工程と同様に人のアワーレートから人の費用を計算し、トラックの償却費・燃料費と輸送距離から設備の費用を計算します。人の費用と設備の費用から輸送費を計算し、見積に記載します。
 

このように光熱費や輸送費の上昇は、個々の製品では大きな金額ではありません。しかし年間では大きな金額になり、そのため利益は大きく減少します。そのため値上げは不可欠です。

プレス加工や樹脂成形加工は、原価の増加はもっと小さな金額になります。
 

プレス加工B社の例

B社 B1製品で、人件費、電気代、輸送費が上昇した場合の原価を示します。

B1製品の製造費用は以下のように計算しました。
ここでアワーレート(人)、アワーレート(設備)は、間接部門の人件費や工場の製造経費が含まれています。
 

段取時間1時間 加工時間0.8秒 (0.0002時間) ロット3,000個
アワーレート(人) 2,896円/時間 
アワーレート(設備) 段取1,283円/時間 加工1,929円/時間
材料費11.1円
段取費用 0.70円 加工費用 0.43円 合計1.13円
販管費1.45円
受注金額14.5円 利益0.82円

図11 プレス加工B1製品の製造原価と利益

図11 プレス加工B1製品の製造原価と利益


 

人件費が3%上昇

人件費が3%上昇した場合、年間ではB社の人件費は397万円増加します。その結果、アワーレート(人)、アワーレート(設備)は以下のように増加しました。
アワーレート(人) 2,974円/時間(+78円) 
アワーレート(設備) 段取1,307円/時間(+24円/時間) 加工1,963円/時間(+34円/時間)
 

その結果、製造費用は
段取費用 0.71円 加工費用 0.44円 合計1.15円(+0.02円)
0.02円増加しました。販管費は変わらず、費用合計は0.02円増加しました。

図12 人件費3%増加による原価の影響

図12 人件費3%増加による原価の影響


 

人件費3%の上昇はB1製品で見れば、0.02円というわずかな原価の上昇です。しかしこの0.02円値上げしなければ、年間では397万円の利益を失います。
 

電気代が20%増加

同様に電気代が20%上昇した場合、A社は年間で380万円費用が増加しました。

A1製品を製造する設備の電気代(ランニングコスト)も増加し、アワーレート(設備)が上昇します。またそれ以外の工場で使用する電気代も増加するため、工場の製造経費(間接費用)も増加します。その結果、アワーレート(人)、アワーレート(設備)は以下のように増加しました。
 

アワーレート(人) 2,917円/時間(+21円) 
アワーレート(設備) 段取1,314円/時間(+31円/時間) 加工1,981円/時間(+52円/時間)
 

その結果、製造費用は
段取費用 0.71円 加工費用 0.44円 合計1.15円(+0.02円)

従って電気代20%増加によるB1製品の原価の上昇は、人件費3%増加と同じ0.02円でした。
 

樹脂成型加工C社の例

C1製品の製造費用は以下のように計算しました。
ここでアワーレート(人)、アワーレート(設備)は、間接部門の人件費や工場の製造経費が含まれています。
 

段取時間1時間 加工時間60秒 (0.0167時間) ロット3,000個
アワーレート(人) 2,586円/時間 
アワーレート(設備) 段取685円/時間 加工1,021円/時間
材料費30.9円
段取費用 1.09円 加工費用 17.02円 合計18.11円
販管費5.77円
受注金額57円 利益2.22円

図13 樹脂成形加工C1製品の製造原価と利益

図13 樹脂成形加工C1製品の製造原価と利益


 

人件費が3%上昇

人件費が3%上昇した場合、年間ではC社の人件費は397万円増加します。
その結果、アワーレート(人)、アワーレート(設備)は以下のように増加しました。
 

アワーレート(人) 2,659円/時間(+73円) 
アワーレート(設備) 段取696円/時間(+11円/時間) 加工1,038円/時間(+17円/時間)
 

その結果、製造費用は
段取費用 1.12円 加工費用 17.29円 合計18.41円(+0.3円)
0.3円増加しました。販管費は0.03円増加し、費用合計は0.33円増加しました。

図14 人件費3%増加による原価の影響

図14 人件費3%増加による原価の影響


 

人件費3%の上昇はB1製品で見れば、0.33円というわずかな原価の上昇です。しかしこの0.33円値上げしなければ、年間では397万円もの利益を失うのです。
 

電気代が20%増加

同様に電気代が20%上昇した場合、A社は年間で380万円費用が増加しました。

A1製品を製造する設備の電気代(ランニングコスト)も増加し、アワーレート(設備)が上昇します。またそれ以外の工場で使用する電気代も増加するため、工場の製造経費(間接費用)も増加します。その結果、アワーレート(人)、アワーレート(設備)は以下のように増加しました。
 

アワーレート(人) 2,590円/時間(+4円) 
アワーレート(設備) 段取699円/時間(+14円/時間) 加工1,039円/時間(+18円/時間)

段取費用 1.10円 加工費用 17.32円 合計18.42円
 

その結果、製造費用は18.42円、0.31円増加しました。販管費は0.03円増加し、費用合計は0.34円増加しました。
 

値上げができなければ稼ぐ力が徐々に低下

このように計算すれば原材料、光熱費、人件費の上昇による値上げを適切に計算し、顧客に説明できます。
もし値上げをしなければ、こういった原価の上昇は利益の減少となり、企業の稼ぐ力を徐々に奪ってきます。
 

廃業した企業の案件の見積は3倍

昨今製造業の経営者からよく聞くのは、取引先から廃業した会社の製品の製造を依頼されることが増えたことです。受注が増えるのはありがたいことですが、顧客が提示する価格がとても低くて驚くそうです。提示価格の2倍、いや3倍の価格でなければとても受注できないといいます。

図15 廃業した会社の製品の価格

図15 廃業した会社の製品の価格


 

これは廃業された会社がそれまで値上げできず、我慢して生産している間に価格が市場価格からかけ離れてしまったことを示しています。そして値上げできなかったために、必要な利益が得られず設備の更新もできないため、廃業を決断されたものと思われます。
 

値上げを受け入れない取引先

このように原材料や光熱費の価格上昇を算出し、顧客が値上げを受け入れてくれれば問題ありません。しかし多くの場合、「価格引き下げはあっても値上げはとんでもない」と言われてしまいます。

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4. なぜ製品ごとの原価が必要なのか|見積がずれる本当の原因 https://ilink-corp.co.jp/4415.html https://ilink-corp.co.jp/4415.html#respond Mon, 20 May 2019 02:33:40 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=4415 1、中小企業・小規模企業の原価計算とその課題

 
製造業が個別原価を計算するのが大変なのは、個別原価の計算に様々な要素があるためです。
 

材料費、製造費用、間接費

例えば

1、材料費

  • 材料の使用量とロス量(材料歩留り)
  • 材料の購入価格の変動

2、製造費用

  • どのような工程で製造するのか製造工程の構成と、各工程のアワーレートと製造時間
  • 製造ロットの数と段取時間
  • 不良の数(製品歩留り)

3、間接費

  • 消耗品等副資材の使用量
  • 電気・ガス・水道等光熱費
  • 物流費
  • 受入検査、出荷検査、生産管理等間接作業の費用

 
ざっと挙げただけでもこのような費用があります。この中には製品の種類や製造ロットの大きさにより変わるものもあります。
 

図1-1 製造原価の構成
図1-1 製造原価の構成
 

そのため、自社のアワーレートを大雑把に決めて「この製品は『何分かかる』からいくら」といった方法で個別原価を計算してきた企業も多くあります。そのアワーレートも何年も見直ししていなかったりします。
 

厳しくなる受注環境

かつては原価があいまいでも、赤字や黒字の受注がいろいろあって結果的に利益が出ていました。
ところが今日では、黒字の受注が減って赤字の受注が増えて、利益が出なくなってきています。
 
その原因は、利益率の高い大量生産の製品は海外工場に移転し、国内ではロットの小さい手間のかかる製品が増えたためです。また日本製品自体が海外の安価な製品との競争にさらされ、価格を下げなければ生き残れなくなったためです。

メーカーは部品調達コストの引き下げに力を入れ、その影響が下請けの中小企業にも及んでいます。
 
また海外の日系企業や現地の中小企業からも部品を調達するようになり、メーカーの調達手段が多様化したことも原因のひとつです。

部品が小さければ、海外の工場で生産して日本に運んでも、部品1点当たりの輸送費はわずかな金額です。納期や品質に問題がなければ、海外の部品メーカーも選択肢に入るようになりました。

 日本の中小企業は今や海外の部品メーカーとも競争しなければならなくなってきているのです。

 

2、一方的な価格の引き下げは国も問題視

 
このような中小企業を取り巻く環境の変化が、中小企業の経営の悪化や廃業の一因にもなっています。

このことは国も問題視して、メーカーに対し過度な価格引き下げをしないようにガイドラインを提示したりハンドブックを発行しています。
 
中小企業・小規模企業事業者のための価格交渉ハンドブック
 

国のガイドラインの内容

このガイドラインでは、次の示す内容は、下請法や独占禁止法に違反する恐れがあると書かれています。

  • 発注者が、自社の予算単価・価格のみを基準として、通常支払われる対価に比べ著しく低い取引価格を不当に定めること
  • 原材料価格、エネルギーコスト、労務費などの上昇や、環境や安全面での規制対応に伴うコスト増であるにもかかわらず、不当に従来の取引価格で納入させること
  • 量産が終了した補給品支給の契約を結ぶ場合、量産時よりも少量にもかかわらず、量産時と同等単価で発注するなど、取引価格を不当に定めること
  • 大量発注を前提とした見積りに基づいて取引単価を設定したにもかかわらず、見積り時よりも少ない数量を見積り時の予定単価で発注すること
  • 合理的な説明をせずに、通常支払われる対価に比べ著しく低い取引価格を不当に定めること
  • 発注者の都合で取引条件が変更され、それに伴いコストの増加が生じたにもかかわらず、受注者にそのコストを不当に負担させること
  • 発注者が、自己の都合で発注内容を変更したにもかかわらず、当該発注内容の変更のために受注者が要した費用を全額負担しないこと

 
しかし個々の受注の中で材料費、労務費、光熱費、輸送費が明確でなければ、ガイドラインに沿って交渉をすることはできません。

 

図1-2 原価という計器が必要

図1-2 原価という計器が必要
 

3、原価と財務会計、管理会計の関係

 
財務会計は会社全体のお金の動きを示すものです。その結果は、決算書など財務諸表にまとめられ、経営の指標となります。

また財務会計の一部を修正して税務申告書が作成され、税務申告が行われます。これら財務会計の目的は、会社全体のお金の動きです。
 

個別原価の役割

この企業活動は細分化すれば、ひとつひとつの活動は「ものをつくって売る」という商いです。そしてひとつひとつの商いにおける利益の集合が財務会計の利益(損益計算書の営業利益)になります。

つまり財務会計の利益を改善するには、ひとつひとつの商いの利益を高めるしか方法はありません。
 
そのためには、それぞれの受注案件での原価を明らかにし、それを元に価格を決めて顧客と交渉する必要があります。

また受注後は、予定通りの原価になるように生産プロセスを管理しなければなりません。これが個別原価の役割です。
 

管理会計との関係

一方、会計には財務会計の他に管理会計もあります。

これは発生する費用を変動費と固定費に分けて、損益分岐点や限界利益を計算します。これらを見ることで会社の収益性や安全性が評価できます。この財務会計、個別原価と管理会計の関係を図1-3に示します。

ただし、この管理会計も会社全体での収益性、安定性です。
 

図1-3 財務会計、個別原価と管理会計

図1-3 財務会計、個別原価と管理会計
 

そこで個別原価を計算する際に、変動費と固定費を分けて、個々の受注ごとに損益分岐点を計算する方法もあります。これはひとつの製品を長い期間受注する場合には、効果的な利益管理の方法です。

しかし中小・小規模製造業、しかも多品種少量生産では、このような管理をするのは容易ではありません。
 

中小・小規模製造業の取組み

そこで、以下のステップで取り組むことをお勧めします。

  1. まず簡便な方法でアワーレート、間接費を元にした個別原価の仕組みを構築。
  2. 個別原価から見積作成の仕組みを構築。見積を元に価格交渉を行い利益を改善
  3. 実績原価を把握する仕組みを構築し、見積原価で製造できるように製造プロセスを改善
  4. 管理会計を導入し、損益分岐点などから今後の設備投資の判断を行う。
    (その際、減価償却は本書の考え方を参考にする。)
  5. 長期的に受注する製品があれば、その製品に関してのみ、固定費と変動費、損益分岐点を分析し、収益性を評価する。

 
このように取り組むことで、生産や受注など企業活動に会計を組み込み、これを活用して利益を改善できます。

このような活動は中堅以上の規模の企業であれば、基幹業務システムや原価計算システムにより実現されています。

しかし、中小・小規模製造業、しかも多品種少量生産では、実現している企業は限られています。しかし、今後の厳しい受注環境の中で利益を出し続けるためには、このような取組は不可欠と考えられます。

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2. 見積金額の計算方法|製品ごとに原価を積み上げて価格を決める https://ilink-corp.co.jp/4417.html https://ilink-corp.co.jp/4417.html#respond Mon, 20 May 2019 02:29:40 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=4417 1、製造原価の計算式

 
個別原価は以下の式で計算します。
 
個別原価 = 材料費+外注費+労務費+設備費+間接製造費用
――式(2-1)
 
以下に個々の費用について説明します。実際の値については、架空の事例「T製作所のA製品」で説明します。
 

【材料費】

材料費は、原材料やボルトナットなどの購入品の費用です。材料費は製品1個当たりの使用量に単価をかけて計算します。
 
材料費 = 単価×使用量 ──式(2-2)
 
 T製作所A製品(図2-1)は、
材料の単価800円/kg、使用量2kgでした。この場合、材料費は
 
 材料費 = 800×2 = 1,600円/個
となります。

図2-1 製造原価の例(T製作所A製品)
図2-1 製造原価の例(T製作所A製品)
 

生産には材料以外に刃物やグリスなどの消耗品も必要です。しかし、これらは個々の製品にどのくらい使用したのかわからないので、材料費でなく後述の間接製造費用に入れます。
 

【外注費】

外注費とは一部の製造工程を外部に委託した場合の費用です。例えば熱処理、表面処理などです。外注費は外注先に支払った費用を個数で割って1個当たりの費用を計算します。

T製作所A製品(図2-1)では500円とします。
 

【労務費】

労務費は、作業者の人件費です。作業者の1時間当たりの費用(アワーレート(人))に、製品1個の製造にかかった時間(製造時間)をかけて計算します。

アワーレート(人)の計算方法は、第3章で詳しく説明します。
 
労務費 = アワーレート(人)×製造時間
──式(2-3)
 
T製作所A製品(図2-1)では、アワーレート(人)が3,679円/時間、
製造時間が0.5時間なので
 
労務費 = 3,679×0.5 = 1,839.5円/個
となります。
 
注記)
アワーレートには、他にチャージレート、時間チャージ、賃率、ローディングなど様々な呼び方があります。ここでは、多くの製造業で使われるアワーレートという言葉を使用します。
 

【設備費】

設備費とは、製造設備の費用です。設備1時間当たりの費用(アワーレート(設備))に、製品1個の製造時間をかけて計算します。設備費の主なものは、購入費用(減価償却費)とランニングコストです。

減価償却費については『中小企業・小規模企業のための 個別製造原価の手引書』第4章、アワーレート(設備)については第5章で詳しく説明します。
 
設備費 = アワーレート(設備)×製造時間
──式(2-4)
 
T製作所A製品(図2-1)では、アワーレート(設備)が151円/時間、
製造時間が0.5時間なので
 
設備費 = 151×0.5 = 75.5円/個
となります。
 

【間接製造費用】

間接製造費用とは、製造費用の中で個々の製品にどのくらいかかったのかわからない費用のことです。例えば受入検査や物流などの作業者です。

彼らの業務も生産には不可欠ですが、彼らの時間はどの製品にどのくらいかかっていたのか分かりません。
 
建物の購入費用(減価償却費)や光熱費、消耗品や雑費なども個々の製品に正確に分配するのが困難な費用です。
 
これらの費用は、間接製造費用として直接製造費用に一定の比率をかけて計算します。ここではこれを「間接費レート」と呼ぶことにします。

この間接費レートは決算書から計算します。具体的な計算方法は『中小企業・小規模企業のための 個別製造原価の手引書』第6章で述べます。

 
間接製造費用 = 直接製造費用×間接費レート
──式(2-5)
 
T製作所A製品(図2-1)では、間接費レートが0.2663でした。

直接製造費用の労務費が3,679円、設備費用が151円なので、
 
間接製造費用 = (1,839.5+75.5)×0.2663 = 510円/個

となります。
 
表2-1 製造原価報告書(T製作所)
 

【個別原価(個別の製造原価)】

個別原価は、式(2-1)から計算します。

T製作所A製品(図2-1)では、
材料費1,600円、外注加工費500円
労務費1,839.5円、設備費75.5円
間接製造費用510円なので
 
個別原価 = 1,600+500+1,839.5+75.5+510 = 4,525円

となります。
 
決算書の製造原価報告書には、その会社の1年間の製造原価の合計が記載されています。

T製作所の製造原価報告書の例を表2-1に示します。
 

2、見積金額はどうやって出すか?

 
目標受注価格(見積金額)は、以下の式で計算します。

目標受注価格(見積金額)= 個別原価+販管費+目標利益
──式(2-6)
 

【販管費】

販管費は、販売費及び一般管理費の略です。会社で発生する費用のうち、製造に関わる費用は製造原価、製造に関わらない費用は販管費に計上されます。

販管費の主なものは、営業・事務などの人件費、光熱費、通信費、消耗品費など事務所の経費、営業車両の費用、役員報酬などです。T製作所の販管費の明細を表2-2に示します。
 
近年、中小企業では間接業務が増えて販管費が増加しています。売上高に対する販管費の比率は会社により異なりますが10~30%くらいです。

そのため、見積金額を計算する際は、販管費を適切に計算し見積に加える必要があります。
 

表2-2販売費一般管理費(T製作所)

 
しかしどの製品がどのくらい販管費がかかっているのか本当のところわかりません。そこで製造原価に対して、一定の比率をかけて販管費を計算します。

ここではこれを「販管費レート」と呼ぶことにします。

この販管費レートは決算書の販管費を製造原価で割って計算します。この販管費レートについては第6章で詳しく述べます。
 
販管費レート=販管費/製造原価
──式(2-7)

T製作所は表2-1より製造原価9,050万円、表2-2より販管費2,600万円なので
 
販管費レート = 2,600/9,050 = 0.2873

つまり、28.7%でした。

 
個々の製品の販管費は以下の式で計算します。
 
販管費 = 個別原価×販管費レート
─式(2-8)

T製作所A製品(図2-1)の販管費は、
 
販管費 = 4,525×0.2873 = 1,300円

となります。
 

【見積原価(販管費込みの原価)】

ここでは、個別原価に販管費を加えたものを便宜的に見積原価と呼びます。
 
見積原価 = 個別原価+販管費 ─式(2-9)
 
T製作所A製品(図2-1)では、
個別原価4,525円、販管費1,300円なので、
 
見積原価 = 4,525+1,300 = 5,825円

となります。
 
このように見積に必要な費用を

  • 直接製造費用:労務費+設備費
  • 個別原価:直接製造費用+間接製造費用+材料費+外注加工費
  • 見積原価:個別原価+販管費
  • 見積金額:見積原価+目標利益

と呼ぶことにします。

この構成を図 2-2に示します。

 

【目標利益】

見積金額は、個別原価に販管費と目標利益を加えたものです。

ここで目標利益はいくらにすればよいでしょうか。

目標利益は売上高に対する営業利益の比率(売上高営業利益率)から計算します。売上高営業利益率は以下の式で計算します。
 
売上高営業利益率=  営業利益/売上高 
―式(2-10)
 
売上高と営業利益は損益計算書に記載されています。

表2-3にT製作所の損益計算書を示します。T製作所は、売上高1億3,000万円、営業利益1,350万円なので

売上高営業利益率 = 1,350/13,000 = 0.104

となります。

 
つまり先期は、会社全体で10.4%の利益率でした。従って、今期も先期と同等の利益を得るには個々の見積に10.4%以上の利益率の利益を入れる必要があります。

ここで10.4%は売上高に対する営業利益の比率です。見積を計算する際は、見積原価に対する営業利益の比率(見積原価利益率)に変換します。
 

図 2-2 直接製造費用、個別原価と見積原価

図 2-2 直接製造費用、個別原価と見積原価
 
表2-3 損益計算書(T製作所)
 

この見積原価利益率は以下の式から計算します。

式2-11
 
先期の売上高営業利益率から今期の売上高営業利益率の目標値を決めます。
 
T製作所では先期10.4%だったので、今期は利益率を改善して12%を目標としました。

見積原価利益率は
式2-12
 
T製作所A製品は、見積原価5,825円、見積原価営業利益率が13.6%なので、
 
目標利益 = 5,825×0.136 = 792円

となり、見積金額は
 
見積金額 = 5,825+792 = 6,617円

となります。
 

3、見積計算の考え方

 
このように個別原価計算 「利益まっくす」は決算書(損益計算書)の数値を元に計算します。

理由は、損益計算書はこれまでに会社でかかった費用を正確に表しているからです。
 

利益まっくすの特徴

この方法は、個々の費用の分配を細かく計算する必要がなく、先期の決算書から一括で計算できるので中小企業でも容易にできます。ただし、今期は先期と同じ人員や設備構成であることが前提です。大幅な増員や設備の増設があった場合は再度計算する必要があります。
 
この方法がすべての製品に正しいかというと、そうでないケースもあります。例えば、自社の製品の中で材料費の割合が非常に高い製品と低い製品がある場合です。材料の購入にかかる手間は、材料の手配と受入のみなので費用(販管費)はそれほどかかりません。しかし生産は、もっと多くの費用(販管費)がかかります。
 
そうなると同じ個別原価の製品でも材料費の高い製品と材料費の少ない製品では販管費を変えた方が適切な見積が計算できます。そこで必要であれば製品の原価の構成に合わせて計算方法を修正します。

 

【配賦、配課と分配】

本書は、間接製造費用や販管費などの費用を個々の製品に割り振ることを「分配」と呼んでいます。会計の本では、割り振ることを「配賦」と呼びます。この配賦も辞書では「割り当てること」という意味です。
 

一方会計では「配賦」のほかに「賦課」という言葉もあり、以下のように使い分けています。

  • 配賦:製造原価を計算する際に、間接費を何らかの基準(配賦基準)を用いて振り分けること
  • 賦課:製造原価を計算する際に、「何に」「どれだけ」使ったのかがわかる直接費を振り分けること

 
このような使い分けをしていて、
「直接費は賦課して、間接費は配賦する」
と言います。しかしこごてはあえて難しい会計用語を用いず、一般的な分配を使用します。
 

4、直接製造費用と間接製造費用の違い

 
製造業は、材料を仕入れて製品に加工し、出荷する事業です。

図2-3 付加価値
図2-3 付加価値
 

図2-3では、100円で材料を仕入れて、加工して400円で出荷します。このとき、工場の生み出す付加価値は、製品の価格400円から材料費100円を引いた300円です。
 

直接作業者と間接作業者

この付加価値を生み出す作業者を直接作業者と呼びます。

実際は、工場にはこの付加価値を生む作業をする人以外に、ものを運んだり、生産管理といった付加価値を直接生まない人もいます。

その人たちを間接作業者と呼び、彼らの費用は間接製造費用に含めます。
 

補助的に使用する設備

多くの加工設備は「削る、穴を開ける」などの付加価値を生みます。この中には常時生産に使用され毎時一定の付加価値を生み出す設備と、たまにしか使用されない設備があります。

ここではこのたまにしか使わない設備を「補助的に使用する設備」と呼びます。

この補助的に使用する設備は、どの製品にどのくらい使用したのかわからないことが多いため、このような設備の費用は間接製造費用に含めます。
 
実は従来1時間5,000円のように中小企業が慣例的に使用してきたアワーレートは、このような間接製造費用や販管費を含んだアワーレートでした。

従ってこのアワーレートに製造時間をかけて見積金額を計算するのは間違っているわけではありません。
 

5、販管費と製造原価の違いは?

 
販管費とは、費用の中で製造に直接関わらない費用です。多くの中小企業の決算書を見ると、どの費用を製造原価にし、どの費用を販管費にするかは、会計事務所や顧問税理士により異なっています。設備の減価償却費がすべて販管費に入っていたり、営業車両の減価償却費が製造原価に入っていたりすることは珍しくありません。
 
そこで個別原価を計算する際は、製造原価だから製造費用、販管費だから製造原価に無関係な費用と決めないで、製造原価や販管費の個々の費目を確認します。
 

広い意味では販管費も原価の一部

実際には事務や営業が資材管理や生産管理の一部を行っている工場もあります。事務員や営業担当もいなくては生産活動ができず、彼らも工場に不可欠な人たちです。

つまり広い意味では販管費も製造原価の一部です。従って製造原価に販管費を加えたものが、真の原価です。
 
(ただし会計では、販管費と製造原価は扱いが違います。製造にかかった費用の中で今期の製造原価として計上されるのは、販売された製品の費用のみです。在庫の製造にかかった費用は今期の製造原価に含まれません。一方販管費は、在庫の増減に関わらず今期の費用になります。)
 

粗利で判断する危険

製造原価に販管費を加えたものが真の原価と考えれば、個々の受注が儲かるかどうかを粗利(売上から製造原価を引いた売上総利益)で判断するのは危険なことが分かります。

なぜなら粗利がプラスでも、販管費を引いてマイナスであれば実際は赤字だからです。

見積には製造原価、販管費に欲しい利益まで入れ、受注する際は利益が確保できるように交渉します。

詳しい見積のつくり方は『中小企業・小規模企業のための 個別製造原価の手引書』第6章で述べます。
 
T製作所A製品では、図2-4に示すように製造原価4,525円、販管費1,300円、目標利益792円で、見積価格は6,617円でした。

しかし、もし顧客と交渉する際に、販管費と目標利益を計算せず、営業担当は製造原価4,525円、見積価格6,617円しか知らなかったらどうでしょうか。

5,700円で受注しても、1,175円も粗利があるので儲かっていると思うのではないでしょうか。
 
実は5,700円では、目標利益どころか販管費も全額もらえていません。このような受注が続けば、会社が赤字になってしまいます。

そうならないためにも、見積の際には販管費と目標利益を明確にする必要があります。

図2-4 粗利はあっても赤字
図2-4 粗利はあっても赤字

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いくら利益を取るべきか|見積で必要な利益の決め方

見積金額の計算方法が分かったら、次はどの程度の利益を確保すべきかを考えます。
利益の考え方を整理することで、適切な見積金額が見えてきます。

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3. いくら利益を取るべきか|見積で必要な利益の決め方 https://ilink-corp.co.jp/3734.html https://ilink-corp.co.jp/3734.html#respond Wed, 16 May 2018 13:42:20 +0000 http://ilink-corp.co.jp/?p=3734
【コラムの概要】

適正な見積金額には適正な利益が不可欠。借入金返済や設備更新には利益がなくてはならず、利益ゼロでは企業は存続できない。ただし利益はあくまで会計上のもの、中小企業の場合は利益よりも資金繰りの方が重要。一方取引先は利益を「儲け」と考え真っ先に削ろうとする。そこで自社に必要な利益から利益率を計算し、見積に反映する。

適正な見積金額には利益も必要です。
実は利益については、取引先も自社も誤解が多いのです。そのため低すぎる利益で見積を出してしまう企業もあります。

利益はいくらが適正なのでしょうか?

1. 利益とは? 会計上の利益

決算で1年間の利益を計算します。この利益には以下の3種類があります。

営業利益

損益計算書の売上から、原価(売上原価)と販管費を引いたものです。本コラムの見積書の利益は営業利益です。

経常利益

通常の事業活動以外の費用は営業外費用として計上されます。具体的には借入金の利息、株式からの配当金、補助金や経営者からの資金などです。

プレス加工ではスクラップはそれなりの金額になりますが、スクラップ収入を営業外費用に計上することがあります。スクラップ収入の分、材料費が少なくなるため、本来はマイナスの材料費です。しかし営業外費用の場合、スクラップ費用が変動しても営業利益には影響しません。

当期純利益

自然災害などにより突発的に発生した費用や収入は特別利益・特別損失に計上します。経常利益からこの特別利益・特別損失と税金を引いたものが当期純利益です。
特別利益・特別損失には、固定資産の売却収入、固定資産の廃棄による損失、自然災害による損失などがあります。

会社の最終的な利益が当期純利益で、その分お金はお金が増えます。
この営業利益、経常利益、当期純利益の関係を図に示します。

図 営業利益、経常利益、当期純利益
図 営業利益、経常利益、当期純利益

利益は計上する対ミンクで変わる

売上を計上するタイミングは企業によって異なります。出荷した時「出荷基準」、納品した時「納品基準」、検収が上がった時「検収基準」などです。
売上計上のタイミングによって決算時点の売上が変わり、利益も変わります。

図 売上計上のタイミング
図 売上計上のタイミング

利益はやり方によって変わり一つではありません。

利益とお金の動きは異なる

売上を計上する時期は企業によって異なるため、利益があってもお金が入っているとは限りません。

利益の考え方は大企業と中小企業は異なる

大企業は適正な利益計算が必須

大企業、特に上場企業は企業会計基準に従い公正かつ適切に利益を計算しなければなりません。上場企業の利益は株価に大きく影響します。赤字になれば株価は下がります。そこで売り上げ、利益が適正に計算されているかを監査法人が監査します。

大企業と異なる中小企業

中小企業の場合、赤字でも会社にお金があれば問題ありません。むしろ税金を少なくするために意図的に利益を減らしたりします。あるいは利益が少なければ減価償却をしません。これは上場企業では粉飾ですが、中小企業は税法に従っていれば問題ないため合法です。

2. 利益よりキャッシュ

お金の動きを示すキャッシュフロー計算書

大企業も資金は重要で、決算ではキャッシュフロー計算書も作成されます。しかし中小企業の決算にはキャッシュフロー計算書は必要ありません。そのためその期にお金がプラスしたのか、マイナスしたのかが分かりにくいのです。

キャッシュフローの簡易計算

そこで以下の式を使えば、会社に残るお金を中小企業でも簡単に計算できます。

会社に残るお金=税引後利益+減価償却費+借入金の増減+設備投資

借入金の増減や設備投資がなければ、会社に残るお金は、税引き後の利益と減価償却費の合計です。先の「図 営業利益、経常利益、当期純利益」にこの関係を示します。

3. 必要な利益は?

実際は、利益はもっと必要なのです。

会社に必要なお金

それは会社が持続するには以下のお金が必要だからです。

借入金の返済

借入金は、この会社に残るお金で返済します。会社にお金が残らなければ、借入金が返済できません。

設備投資

設備や建物は老朽化し、いつか更新しなければなりません。更新するには、それだけのお金が会社にあるか、あるいはそれまでに借入金を返済して新たに借入できる必要があります。

原価償却の分お金が残る

今年導入した1,000万円の設備は10年後には更新が必要です。10年後には1,000万円のお金が必要です。毎年減価償却費の分、お金はプラスするので耐用年数10年経てば更新に必要な1,000万円は貯まっているはずです。

長期的な資金需要と必要な利益

工場には多くの設備があり、順次更新時期が来ます。そこでそれぞれの設備の更新時期と必要な資金を調べて長期の資金需要と資金の蓄積の計画書をつくります。この時、借入金の返済も入れておきます。その計画から必要な毎期の利益が分かります。

これが会社が持続するために必要な利益です

ところが取引先はこのことを分かっていません。そのため以下のようなことを言われます。

4. 利益に関する取引先の誤解

利益は儲け

儲けだからゼロでもいいと考え、価格交渉では利益を真っ先に削ろうとします。現実には利益ゼロでは会社が持続できません。

利益率が高すぎる

「利益は認めるがこの利益率が高すぎる」と言われます。それは自社(大企業)の利益率と比較するためです。しかし大企業に比べ中小企業の多くは資本が少なく、必要な資金は借入金で調達しています。借入金の返済のため大企業よりも多くの利益が必要です。

利益は認めるが、内製品より高いのはおかしい

取引先が内製品と比較して「高すぎる」と言う場合、実は比較の条件が違うっています。図のように取引先が内製品を社内で売買する場合、社内売買価格は製造原価と工場の販管費、工場利益の合計です。この工場の販管費や利益は低いため、合計金額は仕入先の見積より低くなります。この社内売買価格と比較して「高すぎる」と言います。

しかし取引先がこの内製品を外販する場合は、本社費用や営業費用がプラスされます。そのためもっと高くなります。ところがこの内製品を外販したことがなければ、そもそも外販価格を知らないのです。

低すぎる利益の指定

こういった背景から、取引先が見積書の利益は原価の2%、あるいは利益と管理費合わせて10%と指定してきます。これでは会社が成り立ちません。
中には仕入先の社内でも、この比率を基準に見積を計算してしまうことがあります。

どうすればいいでしょうか?
まず自社の適正な利益を計算します。

5.適正の利益と適正価格

いくら利益が必要なのかは、適正な利益率から計算します。

自社の適正な利益率

先期の決算書から自社の利益率を計算します。この利益率は売上高に対し計算するため売上高営業利益率です。

売上高営業利益率= 営業利益 売上高

見積の利益を計算する場合、売上高でなく、販管費込みの原価から計算します。この利益を販管費込み原価利益率と呼ぶことにします。
販管費込み原価利益率は、以下の式で売上高営業利益率から計算します。

販管費込み原価利益率= 売上高営業利益率 (1-売上高営業利益率)

値引き代を考慮して利益を増やす

この利益率で計算した利益額は、「値引きがなくそのまま受注」という前提です。もし取引先から値引き要請がある場合、その分、利益率を高くします。

長期的な資金計画から目標利益を設定

先の計算は先期の利益から目標利益率を計算しました。
もし長期の資金計画があり必要な利益率が分かっていれば、その利益率から目標利益を計算します。

具体的な販管費込み原価利益率の計算例

モデル企業A社
売上高10億円
営業利益3,500万円

販管費込み原価利益率 3.6%

【計算】

売上高営業利益率= 営業利益 売上高 = 3,500 100,000 = 0.035 = 3.5%

販管費込み原価利益率= 売上高営業利益率 (1-売上高営業利益率) = 0.035 (1-0.035) = 0.036 = 3.6%

具体的な利益と見積金額

架空のA1製品

見積金額 1,243円

【計算】

製造原価1,000円
販管費200円
販管費込み原価 1,200円

目標利益=1,200×0.036=43円

見積金額=1,200+43=1,243円

図 利益と見積金額
図 利益と見積金額

見積書の書き換え

ここで計算した見積金額が適正価格です。この金額で受注すれば製造原価、販管費をカバーした上で必要な利益が得られます。
もし取引先が適正な利益率を認めない場合、取引先が認める利益率で利益を計算して、利益が不足する分製造原価を増やします。

6. 値引きに対する誤解

見積書を取引先に示し価格交渉を行う際、値引きの影響を理解していない営業担当者もいます。

値引きは利益を大幅に減らす

1,243円の見積書を基に価格交渉しました。そして取引先から1,220円、23円の値引きを求められました。
見積金額1,243円に対し1,220円、見積金額の98%、悪くないように思えます。失注したくない担当者は1,220円を受け入れます。

値引きで利益は53%マイナス

しかし利益は、43円の目標が20円、53%マイナスです。

図 値引きの影響
図 値引きの影響
1,243円の取引でなく、43円の利益の取引

1,243円の見積のうち、1,200円は、製造原価1,000円と販管費200円です。これはすでに出費される金額です。
だから本当は、1,243円の取引でなく、43円の利益の取引と考えるべきです。43円の利益の取引であれ23円の値引きは利益に大きく影響します。

43円の利益の取引と考えて、数円の値引きも粘り強く交渉しなければ、年間での目標利益の達成は困難です。

まとめ

本コラムの内容を以下にまとめました。

  • 企業の継続には適正な利益が不可欠。
  • 利益は会計上の数字、現金とは異なる。
  • 中小企業は資金繰りのため利益を重視。
  • 取引先は利益を「儲け」と誤解しがち。
  • 借入返済や設備投資には利益が必要。
  • 適正利益率を見積に反映させることが重要。
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1. 値引きすると利益はいくら減るのか|見積で失敗しないための基本 https://ilink-corp.co.jp/2427.html https://ilink-corp.co.jp/2427.html#respond Wed, 14 Oct 2015 23:49:07 +0000 http://ilink-corp.co.jp/?p=2427 絶え間なく技術が進歩する今日、

製造業の企業は定期的に最新の設備に更新し、

自社の技術を高めることが必要です。

そのためには利益を上げなければなりません。

利益の公式は、

利益=売上-費用 =売価×個数-費用

です。

従って利益を増やすためには、

  • 費用を下げる→コストダウン
  • 個数を増やす→受注増加
  • 売価を上げる→値上げ

のいずれかが必要です。

実際にそれぞれに取り組むと利益がどう変わるのでしょうか。

 

利益を増やす3つの方法の検討

例えば、図の例では、単価5円の製品を20個受注しました。

その結果、売上は100円です。

genkotorieki

この場合、

製造原価は55円(材料費10円、労務費40円、その他経費5円)、

販売費及び一般管理費40円、

営業利益は5円です。

コストダウンによる利益増加

コストダウンを行い、5%工数を低減しました。

その結果、

労務費が40円→38円になります。

genkacosutodaun

その結果、

営業利益は5円→7円と、40%増加します。

 

コストダウンした分は、直接利益の増加につながります。

従って、わずかな金額の増加でも利益の増加に大きく貢献します。

 

受注増加による利益増加

受注が増加し、受注個数が5%増えました。

実際には、受注側が働きかけても個数は増えません。

むしろ営業が頑張って別の案件を受注し、全体の受注量が増加することの方が多いです。

ここでは他と容易に比較するため、単純に個数が増えたと仮定します。

売上は5%増加します。

一方、製造原価も5%増加します。

(厳密には、段取り替えの費用などは、生産個数に無関係なので、製造原価の増加分はもう少し低いです。ここでは計算を単純にするため、純粋に5%増加とします。)

その結果

営業利益は5円→7.25円と45%増加します。

genkajyutyuzouka

個数が増えると製造原価は増加しますが、それ以上に利益が大きく増加します。

値上げによる利益増加

値上げにより単価アップが実現し、同じ生産量でも売上が5%上がったとします。

この場合費用はそのままなので

利益が5円→10円と2倍になります。

genkaneage

値上げした分は、利益にダイレクトに影響します。

つまり値上げできれば、利益は大きく改善します。

逆に値下げは利益を著しく悪化させます。

 

一度決まった金額を上げる困難さ

このように利益を増やすためには、値上げは非常に効果的です。

しかし、例え赤字の製品であっても値上げは容易ではありません。

厳しい価格競争を行っている発注側の企業にとってみれば、

「もっと価格を下げてほしいのに、値上げなんてとんでもない」

と言うかもしれません。

 

また、例え取引先の担当者は理解を示しても、次の関門が立ちはだかります。

多くの企業は、発注価格は生産管理システムの単価マスターに登録されます。

単価マスターの変更は決められた手続きを経なければなりません。

さらに担当者の上司が納得するような理由も必要です。

 

このような大変さがあるので、一度決まった価格を上げるのはよほどのことがない限り、担当者は動いてくれません。

この値上げの困難さを考えると、最初の値決めの重要性が分かります。

つまり後から5円値上げするより、最初から5円高く受注する方が、可能性が高いと言えます。

 

見積りの重要性

受注活動は、高く受注したい受注企業と、安く発注したい発注企業との交渉です。

これは図のようになっています。

kakakukousyou

受注側は、製造原価に販売費及び一般管理費と利益を加えて、見積を出します。

実は、会社にお金が残るためには、営業利益が出ただけでは不十分です。

なぜなら、金利など営業外費用、さらに税金、借入金の返済のお金が必要だからです。

特に借入金の返済は、税引き後の利益から出さなければなりませんので注意が必要です。

そこから売上高に対する自社の営業利益率を出せば、受注したい最低金額が決まります。

 

ここで注意すべきなのは、発注側はこのような受注側の理由は分かりません。

企業が存続するためにはこれだけの利益が必要なのですが、その利益すら削ろうとします。

従って見積の本当の詳細は明らかにせず、利益金額などは低めにして出します。

 

これは図の中で「これ以下では赤字になる価格」

これが営業外費用や税金、借入金の返済を含んだ利益です。

営業担当者はこの利益を意識する必要があります。

 

指値の場合

一方製品の価格競争が厳しく、それぞれの部品の価格を合わせて製造原価を算出する方法では、求めるコストの製品が得られなくなってきました。

そこで製品の企画段階から部品のコストを決めて、そのコストで製造する企業を探す「原価企画」の取組が行われています。

その結果、見積ではなく、最初から指値で価格を指定する企業も多くなっています。

そして指値が製造原価を下回っているようなケースすらあります。

 

指値でも高く受注できる機会

一方ですべての受注が、指値で決まっているかというと、そうではありません。

指値で受注する企業が1社もなければ、少し高くしてでも発注せざるを得ません。

私の経験でも、生産が急に増加した時は部品の供給が間に合わず、協力会社を回って「お願い」したことがありました。

「お願い」されるのですから、安くつくる必要はないのです。

事実、したたかな経営者はそのタイミングで、理由をつくって値戻しを図っていました。

つまり「お願い」することで、発注側は他に選択肢がないことを相手に知らせているわけです。

このような情報があれば、価格が高くても顧客が妥協するポイントを探ることができます。

ポイントは情報収集です。

この情報収集のポイントについては、別の機会にお知らせします。

価格交渉で大事な点

つまり価格交渉で重要なのは、受注側が

「これ以下では赤字になる」

というギリギリの価格を知っているかどうかです。

このギリギリの一線が分かれば、頑張ってなんとか交渉しようとします。

 

しかし、製造原価はいくらで、どこまで下げたら赤字になるのか分からないと、発注側がその発注側の権限にものを言わせて強く値下げをせまると、担当者は押し切られてしまいます。

なぜなら担当者は、利益を確保することよりも、失注する方が怖いからです。

失注を恐れずに、必要な利益を含んだ見積を出すのは、非常に勇気のいることです。

そのためどうしても確実に受注できるように価格を下げてしまいます。

 

それは利益に大きく響きます。

 

実は本命は決まっていた

でもそうしたら失注するのではないか。

実は、どこに発注するかは、顧客の心の中である程度決まっていることも少なくありません。

しかし発注する際は、複数の企業から見積を取ることが規定となっているため、形式的に見積を取っていたりします。

 

しかし発注企業の担当者は複数の取引先全てに丁寧に打合せするほどの時間はありません。

まあ図面を渡して作れるような簡単なものであれば、相見積はさほど面倒ではありません。

しかし図面や仕様だけでは良いものが作れない高度で精密な部品や複雑な製品では、取引先と入念な打ち合わせが必要です。

それを相見積の企業すべてと丁寧に行ったら、大変な工数になります。

 

そのため本命の会社には時間を取って丁寧に打ち合わせをしますが、他の会社にはそこまで時間を取りません。

どうせそこでつくることはないのですから。

もし見積を依頼されて打合せをしても、相手側の態度に熱意が感じられない場合、そうした「当て馬」になっている可能性があります。

この場合、見積の依頼が出た段階で勝負はついています。

 

ではどうしたら良いのか。
 

それは見積の依頼が出る前に、自社が良いと思ってもらうことが重要です。

そして発注側が、「この会社が良い」と思うポイントは、意外な点であったりします。

事前の情報収集で、このポイントを探り、適切なPRを行い、見積で出た時点でライバルより一方先に行っていれば、受注活動は有利になります。

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