平成28年度補正ものづくり補助金 前回からの変更のポイント

1. 平成28年度補正ものづくり補助金

 

平成28年度革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金(通称 ものづくり補助金)の公募が平成27年11月14日に開始されました。

その公募内容は、平成27年度補正にさらに新たな条件が加わり、大変複雑になっています。そのため、公募要領も68ページもあります。

そこで平成27年度補正との違いについて、ポイントを紹介します。

 

2. 補助金のタイプ

 
事業の類型と設備投資の有無から以下のように分類できます。
 

平成28年度補正ものづくり補助金の類型

平成28年度補正ものづくり補助金の類型


 
どの事業を選択するのか、わかりやすく図に表すと以下のようになります。
 
平成28年度ものづくり補助金の類型と対象企業

平成28年度ものづくり補助金の類型と対象企業


 
このように整理すると、平成27年度補正と比べて、変わってくるのは第四次産業革命型と、増額要件1と2になります。
 

3. 第四次産業革命型のポイント

 

第四次産業革命型では、適合要件が公募要領の6ページに小さく書いてあります。その中で、IoT、AI、ロボットなどの用語が出てきます。
これらについての詳細は、後述します。

結論として、第四次産業革命型は以下の要件に適合する必要があります。

 
複数の設備や機械をネットワーク(インターネット)でつなぎ、AIやロボットを活用して、

  1. 監視(モニタリング)
  2. 保守(メンテナンスサービス)
  3. 制御(コントロール)
  4. 分析(アナライズ)

 
上記のいずれか1つ以上を行う革新的ものづくり
 
従って、以下の3要素が必須となります。
 

 第四次産業革命型に必要な要素

第四次産業革命型に必要な要素


 

(訂正 社内LANもIoTに含まれます。)

この3つの要素をすべて満たしたうえで、革新的なものづくりを行う事業が必要です。

その際、事業の本質は、上記の3つであり、これにより事業課題を解決するような事業にしなければなりません。

 

4. 雇用・賃金拡充による増額のポイント

 

【増額要件1】 5%の賃上げと雇用増(維持)

  1. 全従業員の平均賃金を5%増額(実績報告が必要)
  2. 雇用者の維持・増加

 

1) 対象となる従業員

雇用保険対象者すべてです。
具体的には、正社員、パート、アルバイト、契約社員、非正規社員、出向、嘱託を含みます。
 

2) 平均賃金と対象となる賃金

給与支払総額のうち、賞与・通勤手当・家族手当・時間外割増賃金を除いたものです。
平均賃金は、対処となる賃金を、時間給または時間換算額で算出します。
 

対象となる賃金

対象となる賃金


 

3) 実績報告

事業終了時点から遡った6ヶ月間の平均賃金と、前の期の同じ6ヶ月間の平均賃金を報告します。

追加
採択後、中央会が用意したホームページに雇用保険対象者全員の該当期間6ヶ月と、1年前の6ヶ月の賃金実績を入力する必要があります。

 
 

4) 退職者が出た場合

雇用の増加、又は維持が条件なので、退職者が出た場合は補充しなければなりません。
ただし、同じ職種を補充しなければならないとは書いてありませんので、パート社員や非正規社員の補充でも構いません。
 

【増額要件2】 最低賃金グループの10%の賃上げ

全従業員の賃金の下位10%の平均賃金を10%増額(実績報告が必要)

 
《注意点》

  • 最低賃金グループに1,000円以上のものがいれば、対象外(都市部では、最低時給が900円を超えていて注意が必要です。)
  • 最低賃金が現状で地域別最低賃金を下回っていれば、対象外

 
従業員30人の場合、3人(端数切り上げ)
 

最低賃金グループ

最低賃金グループ


 
このように増額要件は、従来し異なりかなり厳しいものになっています。
 
その他、注意点として

  • 適用されない場合でも、増額にならないだけで、一般型の1,000万円は適用されるので、とりあえず対象にしておくことは可能です。
  • ここでの平均賃金は、対象期間6ヶ月での、上記の定義に従って計算した時間当たり賃金であり、パート社員やアルバイトに支払う賃金とは異なるので注意が必要です。
  • 増額要件1で5%引き上げた場合、時間外割増賃金が基準賃金に対して労基法で定めた割増率を下回れば、時間外割増賃金の引上げも必要になります。
  • 増額要件1で、補充者が見つからなかった場合、増額要件の対象外となるので注意が必要です。
  • 増額要件2で、最低賃金グループの賃金を10%以上増加した場合、それ以外の従業員の賃金を上回る場合もあります。その場合、人事考課の関係でそれらの従業員の賃金も引き上げなければならなくなります。
    そのため事前にシミュレーション計算することをお勧めします。

 
このように考えると増額要件は、恒久的な人件費の上昇につながることと、退職者の補充がうまく行かないと対象から外れて補助金が減額されるリスクがあります。
 

5. 加点項目

 

  1. 「経営力向上計画」の認定事業者、及び「経営革新計画」の承認申請事業者 (第四次産業革命型・一般型のみ)
  2. 総賃金の賃上げに取り組む企業
  3. IT化に取り組む企業
  4. 台風7,9,19,11号の激甚被害に指定された地域の事業者

 
《注意》

  • 「経営力向上計画」及び「経営革新計画」は、認定を受けているか、申請中が加点されます。
    申請中の場合は、申請書類をすべて作成して受付機関で受理されている必要があります。
  • 総賃金の賃上げは、前述の増額要件とは別です。増額要件に適合していなくても、申請書に総賃金の1%を賃上げする旨を記述すれば加点されます。
  • IT化に取り組む企業は、補助事業とは別の取組でも該当します。
    経理や生産管理などの日常業務でIT化による効率向上に取り組んでいれば、その旨を別紙にまとめることで加点されます。

 

6. その他の注意点

 

国が中小企業・小規模企業に取り組んでほしいことが今回の公募要領に記載

平成27年度補正では、平成26年度補正以前のレベルでは採択されると思われた申請書の多くが不採択になりました。
従って、平成27年度補正から審査の傾向が変わったと言えます。
 
どう変わったのか、
それは今回の公募要領の変更点から読み取ることができます。
 
今回の変更点から、読み取れること

今まで国が本当に書いて欲しいことが書かれていない

 
国が企業に本当に書いて欲しいことは、

『自社の競争力・技術力を高め、企業が成長発展する革新的なものづくり・商業・サービスの事業計画』

であり、

その計画を本当に実行することです。

 

ものづくり補助金の申請書の作成は、中小企業にとってかなり難易度が高く、文書作成のスキルを持った専門家に依頼するケースがあります。

その際、問題なのは、企業が実際に考えた事業計画を申請書に書くのではなく、定型的な採択のための作文を行うことです。

そのような事業計画は、実行されることがなく、革新的なものづくりは実現しませんし、企業の真の競争力強化になりません。

 
では何を書いたら良いのか、
 
従来の公募要領では審査項目は公開されていましたが、書くべき内容についてはあまり詳しくありませんでした。
今回は、公募要領の19ページから、5.事業の具体的な内容として書かれています。
 

その1:具体的な取組内容(27ページ 表2:審査項目(2)参照)

  1. 本事業の目的・手段について、今までに、自社で取り組んできた経緯・内容をはじめ、今回の補助事業で機械装置等を取得しなければならない必要性を示してください。
    また、課題を解決するため、不可欠な工程ごとの開発内容、材料や機械装置等を明確にしながら、具体的な目標及びその具体的な達成手段を記載してください
    (必要に応じて図表や写真等を用い具体的かつ詳細に記載してください)。
    事業期間内においては機械装置等の取得時期や技術の導入時期についての詳細なスケジュールの記入が必要となります。
    (27ページ:審査項目(2)①~④参照)
  2. 【革新的サービス】の応募申請においては、新たな製品・サービスを顧客等の他者に対し役務としてどのように提供するのか具体的に説明するとともに、「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示す方法との関連性を説明してください。
  3. 【ものづくり技術】の応募申請においては、「中小ものづくり高度化法」の12分野との関連性を説明してください。
  4. 本事業を行うことによって、どのように他者と差別化し競争力強化が実現するかについて、その方法や仕組み、実施体制など、具体的に説明してください。(27ページ:審査項目(2)③、④参照)
  5. 連携体で応募申請する場合は、各事業者ごとの役割分担や連携の内容などを具体的に説明してください。

 
その2:将来の展望(本事業の成果の事業化に向けて想定している内容及び期待される効果)

  1. 本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等について、その成果の価格的・性能的な優位性・収益性や現在の市場規模も踏まえて記載してください。
    (27ページ:審査項目(3)②参照)
  2. 本事業の成果の事業化見込みについて、目標となる時期・売上規模・量産化時の製品等の価格等について簡潔に記載してください。
    (27ページ:審査項目(3)③参照)
  3. 必要に応じて図表や写真等を用い具体的かつ詳細に記載してください。
  4. 【革新的サービス】に応募申請される方は「革新的なサービスの創出・サービス提供プロセスの改善を行い、3~5年計画で「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成する計画」の根拠を具体的に記載してください。
    (詳細を別添資料とすることも可能)。
    (27ページ:審査項目(3)④参照)
  5. 【ものづくり技術】に応募申請される方は、「革新的な試作品開発・生産プロセスの改善を行い、3~5年計画で「付加価値額」「経常利益」の増大を達成する計画」の根拠を具体的に記載してください(詳細を別添資料とすることも可能)。
    (27ページ:審査項目(3)④参照)
  6. 会社全体の事業計画(表)における「付加価値額」「経常利益」等の算出については、算出根拠を明記してください。

 
公募要領には、このように書かれています。(アンダーラインは、著者が記入)
当然、これらの項目の内容の記載がなければ不採択になります。
 

7. その他注意点2

【長く書きすぎない】

『※ 応募申請書については、実施したい事業内容を明確にするとともに、要点を押さえて記入してください。

また、記載の分量で採択を判断するものではありません。』と公募要領18ページに書かれています。

 

必要な内容のみを相手に伝わるように書けば分量は適切な量(数ページから20ページの間)に収まります。

ページ数が多くなった場合、多くの場合は申請書に必要のない自社の歴史や外部環境の分析にページを割いているケースが多いようです。

 

【認定支援機関が5年間のフォローアップ】

今回から採択後のフォローアップを認定支援機関が行うことになりました。

『d.本補助金における認定支援機関の役割は、認定支援機関確認書の作成や、事業実施期間中の支援に加え、
事業終了後の事業化への支援を地域のよろず支援拠点、商工会議所、商工会等と連携し、
事業者のニーズに応じて当該機関が提供する支援措置へつなげることが求められます。
なお、フォローアップの状況を調査し、結果を公表する場合があります。』

 

従って、事業完了後5年間は、認定支援機関が事業の達成状況を確認します。

その点を考慮して認定支援機関を選択する必要があります。

あるいは、国は地域のよろず支援拠点、商工会議所、商工会等と連携することを求めていまから、これらの期間が認定支援機関であれば、そこに依頼するのも一つの方法です。


 

8. 第四次産業革命型についての詳細

 
公募要領の6ページに小さく書いてあり、見落としやすいので注意が必要です。
 

「IoT・AI・ロボットを用いた設備投資」とは、本事業において、IoTへの設備投資を行うことで、
単に従来から行われている単独の機械の自動化(ロボット)やAI(人工知能)技術の活用、工程内の生産管理ソフトの導入ではなく、
複数の機械等がネットワーク環境に接続され、そこから収集される各種の情報・データ(ビッグデータ)を活用して、
①監視(モニタリング)、②保守(メンテナンスサービス)、③制御(コントロール)、④分析(アナライズ)のうち、いずれか1つ以上を行い、
AIやロボットを活用するものを対象とします。
(新規にAIやロボットを導入するのではなく、既設のAIやロボットをネットワーク環境に接続し、IoTを行うものも対象とします。)
なお、IoT機能を活用せず、単独でAIやロボットを活用する事業については、第四次産業革命型での応募はできません。(一般型、小規模型での応募は可能です。)

 

ここで、IoT・AI・ロボットは、公募要領の35ページに説明があります。

しかし、公募要領の35ページでは、IoTの正確な定義が書いてありません。
 
一般的には、以下のように定義されます。
 
【IoT】

「モノのインターネット」(IoT: Internet of Things)のことで、自動車、家電、ロボット、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りをすること。

モノのデータ化やそれに基づく自動化等が進展し、新たな付加価値を生み出す。

その結果、製品の販売に留まらず、製品を使ってサービスを提供するいわゆるモノのサービス化の進展にも寄与する。

 
従って、複数の設備や機械、あるいは個々のセンサーカメラの情報がインターネットネット環境につながる必要があります。
具体的には

  • 複数の機器をネットワークに接続(1台だけでは不可)
  • 接続はインターネットネットワーク環境で行う(社内LANでも可)

この2条件に適合している必要があります。
(担当によっては社内LANでも良いという考えがあるかもしれませんが、不採択のリスクが高くなります。)
2016年11月28日愛知県中小企業団体中央会の公募要領説明会での説明

 
AIは、公募要領の36ページに

人間の使う自然な言語を理解したり、論理的な推論をしたり、さらには経験から学習したりするプログラムやソフトウエアのことをいいます。
AI(人工知能)の応用例としては、「専門家の問題解決技法を模倣するエキスパートシステムや、翻訳を自動的に行う機械翻訳システム、画像や音声の意味を理解する画像理解システム、音声理解システム」

ということで、これも正確な定義がありません。

IT用語辞典では、

人工知能とは、人間の脳が行っている知的な作業をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステム。
具体的には、人間の使う自然言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりするコンピュータプログラムなどのことをいう。

 

従って、ニューラルネットワークを応用した高度なシミュレーションシステム、ビッグデータと機械学習による予測システム、エキスパートシステムのようなものを装置メーカーが提供しており、それを活用できる場合は第四次産業革命型で申請することは可能です。
従って、AIの活用はかなり難易度の高いものとなります。

複数の設備を、稼働や停止など単純な制御でなく、
複数の設備の詳細な稼働状況の監視、設備の摩耗状況やメンテナンス時期のモニタリングなどの保守、複数の機械の動作を最適化するような高度な制御、不良原因の解析や稼働率の分析を行えば、
機械学習など狭義のAI技術でなくても、AIとみなされます。
愛知県中小企業団体中央会に確認

 
【ロボット】
公募要領ではロボットについて以下のように書かれています。

○ ロボットとは
人の代わりに何らかの複数の作業工程を自動的かつ連続的に行う(例えば、同じ材質の部材に穴を開ける作業においても2箇所以上連続して行うなどの)機械装置などが対象にあげられます
(単一の動作だけを行う機械装置や、人間が仲介し操縦者が機械装置に搭乗する機械装置は対象としません)。
また、手動操作であってもパワードスーツや、移動端末であるドローン、自動車や船舶や航空機など乗り物全般の自動操縦技術(一般に「オートパイロット」と呼ばれるもの)はロボットに含めます。

 

公募要領にはこのように書かれており、普段使用している産業用ロボット以外にもこの定義に当てはまるものがあります。

ただしその境界はあいまいなため、不明な場合は各地域の経済産業局などに問い合わせると良いです。

 
他にも以下のサイトにも申請書作成のポイントがあります。
 
「これを書かないと通らない!」平成28年度補正 ものづくり補助金申請書のポイント
 
平成27年度補正ものづくり補助金 必要な事前準備と過去の不採択のパターン
 
ものづくり補助金 二次公募 意外と知られていない採択のポイント 
 
パンフレットや補助金申請書に欠かせない「自社の強み」見つけるポイントは、「違い」 
 
ものづくり補助金 採択の為の最大のポイント「技術の革新性」の書き方 
 
平成26年度補正 ものづくり補助金 意外と知られていない採択後の手続きと収益納付 

 
 

《ご案内》

◆経営コラム 経営コラム 製造業の経営革新 ~30年先を見通す経営~◆

ものづくり企業の「30年先の経営」を考えるヒントとして、企業経営、技術の進歩、イノベーションなどのテーマを定期的に更新しています。

メルマガのハックナンバーについては、こちらをご参照ください。

 
こちらにご登録いただきますと、更新情報のメルマガをお送りします。

(登録いただいたメールアドレスは、メルマガ以外には使用しませんので、ご安心ください。)


 

◆未来を考えるワンコイン経営勉強会「未来戦略ワークショップ」◆

毎月第3日曜日 9:30~12:00 経営の失敗事例やイノベーションについて学ぶ有志の勉強会「未来戦略ワークショップ」を開催しています。

詳細は、こちらをご参照ください。

申込みは前日までに電話か、お問合せよりお申し込みください。

 

◆ニュースレター「モノづくり通信」◆

ものづくりや技術、イノベーションについて、弊社ニュースレター「モノづくり通信」を発行しています。

詳細は、こちらをご参照ください。

モノづくり通信の発行は、弊社メルマガでご案内しています。

こちらにご登録いただきますと、更新情報のメルマガをお送りします。
 
 



ページ上部へ▲

メニュー