ものづくり補助金 採択の為の最大のポイント「技術の革新性」の書き方

私は、ものづくり補助金の申請書を企業自身が作成することで、

「自社の競争力強化につながる事業計画を自らが作成し、

企業の発展につながる」と考えています。

 

しかし、いざ書こうとすると、

今まで補助金の申請書を書き慣れていない企業の方が、

公募要領を読んだだけで

「採択される申請書」を書くのは容易ではありません。

 

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そこで、企業の方の申請書の作成を支援するため、

こちらのサイトに補助金申請書の書き方のマニュアルを書きました。

(なお、弊社では申請書の作成代行は行っておりません。)

 

「技術的課題とその解決方法」が求められる理由

 

実際には、このマニュアルの中の「技術的課題とその解決方法」で、多くの方が戸惑われます。

ここでは、この「技術的課題とその解決方法」について、補足説明します。

 

ものづくり補助金の事業の目的は、公募要領に以下のように書かれています。

国内外のニーズに対応したサービスやものづくりの新事業を創出するため、認定支援機関やよろず支援拠点と連携して、革新的な設備投資やサービス・試作品の開発を行う中小企業を応援します。

 

つまり、採択されるためには、革新的な設備投資や、革新的な試作品の開発である必要があります。

 

そのような革新的なことは大企業でしかできないのではないか。

 

いいえ、1人の零細企業でも採択されています。

 

ものづくりを行っている企業は、必ず独自の工夫や高度な技術があります

それを訴えれば良いのです。

 

では、どうやって革新的かどうか評価されるのでしょうか?

 

この革新的かどうかは、公募要領の審査項目の中にある、以下のポイントで評価されます。

(2)技術面

    1. 新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイディアの活用等を含む))の革新的な開発となっているか。
    2. 試作品等の開発における技術的課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか。
    3. 技術的課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか。
    4. 補助事業実施のための体制及び技術的能力が備わっているか。

 

革新的な開発かどうかの評価は、技術的課題とその解決方法です。

そこで、以下のような考え方で作成します。

技術的課題とその解決方法の考え方

 

【事業課題(経営上の課題)】

顧客や市場の要求に基づき、製品やサービスのQCDを向上するような○○が必要となった。

 

【本事業の内容】

事業課題を解決するために、○○という設備を導入する。あるいは○○という技術を開発し試作する。

 

【技術的課題】

○○という設備を導入し、事業課題を解決するためには、△△という技術的課題がある。

 

【具体的な目標(定量・訂正) (技術的課題の達成目標)】

△△という技術的課題の達成目標は、**である。

 

【(技術的課題の)解決方法】

△△という技術的課題を解決するために、◇◇を創意工夫して、**という達成目標をクリヤする。

 

【(競合との)優位性】

△△という技術的課題を解決した結果、□□という点で競合に対して優位となる。

 

 

この技術的課題、具体的な目標(定量・訂正)、解決方法、優位性は、

前回のものづくり補助金で、採択された後の提出する交付申請書の

書式がこのようになっていました。

 

つまり国は、このような書き方を求めています。

従って最初からこうやって書いた方が、後で書き直しする手間が省けます。

 

では、どうやって書くのか?

 

試作開発であれば、開発テーマがありますから、それに従って書けばあまり困らないと思います。

書く際は、課題と達成目標を明確にすることと、解決方法は創意工夫を盛り込むことです。

 

しかし、設備投資の場合は、困る企業が多いようです。

 

考え方として、

設備を導入しても今までとは違うことをやるわけですから、

何か調整(チューニング)したり、

設備の機能を使いこなすために最適条件を探したりするはずです。

これを書きます。

 

あるいは、設備を使う為に治具や周辺機器が必要なものがあります。

これらを製作する際に何か創意工夫があれば、これを書きます。

 

そして新しい設備を入れるからには、高い生産性、品質、短納期などが実現できるはずです。

これを具体的な達成目標に落とし込みます。

 

手順として、

 

解決方法 → 技術的課題 → 達成目標 → 優位性

 

この順番で考えると、考えやすいです。

 

技術的課題の具体的事例(架空事例)

 

以下に、仮想事例で考え方を具体的に説明します。

(注意 内容は架空ですので、使用しないでください。)

事例 マシニングセンタを導入する

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【事業課題】

3軸マシニングセンタにCAD/CAMを使用して、三次元曲面のある金型を製作してきた。

金型で培った高度の高い金属加工技術を活かして、異分野に進出したいが、

より複雑な形状の引き合いがあり、3軸マシニングセンタでは対応できない。

 

【事業課題の解決方法】

3軸マシニングセンタ+1軸テーブルの4軸で複雑な形状に対応する。

 

このままでは、「機械を買って解決しました」ということになってしまい、革新的ではありません。

そこで技術的課題を考えます。

機械を導入しただけで本当に解決するでしょうか?

新たにやるべきことはないでしょうか。

 

《考えられることを羅列します。》

  1. 4軸加工に対応したワークのクランプ方法
  2. 刃物の突き出しが長くなるので、ヒビリやすくなる
  3. クーラントの当て方が変わる
  4. コーナーRが小さい部品が多くなるので、小径刃物が増え、加工時間が長くなる。
  5. 干渉のチェックが目視では困難

 

《それでは、どうやってこれらを解決するのでしょうか。》

  1. 1軸回転テーブルのクランプ位置に合わせた専用のクランプ治具を設計し、刃物と干渉しないクランプを行う。
  2. 突き出しが長くなってもヒビリが生じないような、刃物系、回転数、切込み、送りの条件を調整する。
  3. 旋回するワークに適切にクーラントが当たる角度を探す。
  4. 荒取りと仕上げで刃物の径を変え、コーナーRの小さい個所は仕上げの時点で加工し、それまでは、大径の刃物で加工能率を上げる。
  5. 干渉チェック付きのCAMを導入し、干渉チェック条件を最適化し、刃物の取り付け位置に誤差が生じても干渉しないようにする。

 

《では、この達成目標は》

  1. クランプ治具にワークをセットしても、5面の加工が可能なこと
  2. ビビリが生じないこと。表面粗さRa=3μm以下
  3. 4軸加工中均等にクーラントが当たり、ビビリが生じないこと。表面粗さRa=3μm以下
  4. 想定しているワークの加工時間30分以下
  5. 刃物とワークの干渉 ゼロ

 

ポイント

上記の書き方には、いくつかのテクニックが使われています。

  • 干渉チェックなどは、その機能を使えば問題は解決します。しかしそれでは創意工夫がありませんので、例えば、刃物の取付誤差があっても干渉しないように、干渉チェック機能を微調整する、というようにします。
  • ビビリなどは、表面粗さなどの代用特性に置き換えて数値化します。
  • クーラントが当たっているかどうかも、ビビリ等の別の現象に置き換えれば、表面粗さで数値化できます。

ここから、以下のように書くことができます。

技術的課題

「3軸マシニングセンタ+1軸テーブル」の設備を導入し、事業課題を解決するためには、従来のワーククランプ方法では、5面を同時に加工できないため、4軸加工に対応したワークのクランプ方法を開発する技術的課題がある。

具体的な目標(定量・訂正) (技術的課題の達成目標)

達成目標は、クランプ治具にワークをセットしても、5面の加工が可能なことである。

(技術的課題の)解決方法

4軸加工に対応したワークのクランプ方法を開発するために、1軸回転テーブルのクランプ位置に合わせた専用のクランプ治具を設計し、刃物と干渉しない位置でクランプを行う。奥まった斜めのポケット加工でも、刃物が確実に入るように取り付け時のワークの位置を最適化する。

(競合との)優位性

専用治具を開発し、複雑な形状でも、5面を1度に加工できるようになるため、競合が2工程で加工するところ、1工程で加工できる。その結果競合に対し、低コストと高精度の点で優位となる。

このような考え方で、技術的課題をできれば3つ挙げます。

1つでは、革新的であることを訴求するのに弱いため、できれば2つ以上欲しいところです。

 

採択されるための技術的課題のポイント

絶対的な技術の高低を問われない

大事な点は、技術的課題は、絶対的な技術の高低を問われていません。

そんなことをしたら、大半の中小企業は採択されなくなってしまいます。

また、あれだけの申請書を短時間に絶対的な技術の高低を審査はできません。

自分たちが普段やっていることで十分です

それを上記のステップで、課題とその解決方法を明確にすればよいのです。

そして審査員が革新的だと判断すれば採択されます

 

専門分野を知らない人でも理解できること

先の文章は、加工を知らない方は理解できないと思います。

ですから、図や写真をふんだんに入れて、審査員が内容を理解できるようにしてください。

技術的課題のレベルが低くて不採択になるより、

技術的課題の内容を審査員が理解できなくて不採択になる可能性の方が高いです。

専門分野をしらない人でも理解できることが、採択の為の秘訣です。

 

設備投資であっても研究開発と考える

このようにやっていくと、設備投資のみでも採択されるためには、技術開発的要素が必要です。

従って設備投資のみでも、研究開発と考え、開発の計画を立ててください。

実際、設備投資のみで採択されても、補助事業期間中は、開発のみに使用でき、生産には使用できません。

生産に使用できるのは、補助事業が完了し、生産転用の手続きが完了してからです。

 

以上の内容を参考に技術的課題に取り組み、採択されることをお祈りいたします。

 

この考え方は、ものづくり補助金以外にも様々な補助金や助成金の申請書に使えます。

注記)

「令和元年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称ものづくり補助金)申請書の書き方」は、こちらからご参照いただけます。
 

 

他にも以下のサイトにも申請書作成のポイントがあります。
 

「これを書かないと通らない!」平成28年度補正 ものづくり補助金申請書のポイント
 

平成28年度補正ものづくり補助金 前回からの変更のポイント
 

平成27年度補正ものづくり補助金 必要な事前準備と過去の不採択のパターン
 

ものづくり補助金 二次公募 意外と知られていない採択のポイント 
 

パンフレットや補助金申請書に欠かせない「自社の強み」見つけるポイントは、「違い」 
 

平成26年度補正 ものづくり補助金 意外と知られていない採択後の手続きと収益納付 

 

 

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