「これを書かないと通らない!」平成28年度補正 ものづくり補助金申請書のポイント

注記)

「令和元年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称ものづくり補助金)申請書の書き方」は、こちらからご参照いただけます。
 

年々、厳しくなると言われているものづくり補助金、
弊社では中小企業の方が独力で書くための参考になるように
「補助金申請書の書き方」を無料で提供しています。

しかしこのマニュアルを見ても、
どのように文章を書いていいのか分からない
という意見もありました。

そこで、本コラムでは、例文を掲載しながら、書き方のポイントを解説します。

具体的な書き方については、こちらのマニュアル「補助金申請書の書き方」が参考になります。

以下の解説にあるカッコのついた番号は、マニュアルの項目の番号です。

 

公募要領に書いてある!書かなければいけないこと

実はどのようなことを書かなければならないかは、
公募要領の19ページ「5.事業の具体的な内容」
に書いてあります。

従って、公募要領が求めることはちゃんと書かなければ不採択になります。

しかし公募要領が求めることは非常に多く、漏れやすいので注意が必要です。

以下、公募要領の要求事項に沿って解説します。

 

その1:具体的な取組内容(27ページ 表2:審査項目(2)参照)

 

なぜ、その設備が必要か、理由を書く

a. 本事業の目的・手段について、今までに自社で取り組んできた経緯・内容をはじめ、今回の補助事業で機械装置等を取得しなければならない必要性を示してください。

補助金を受ける補助事業に関して、今まで取り組んできたこと、その経過を簡潔に記述します。

これは弊社マニュアル「補助金申請書の書き方」の

(1) 自社の事業
(2) 自社の商品・サービス(製品・部品)
(3) 自社の強み
(4) 顧客

で、要点を押えて書くことで「自社で取り組んできた経緯・内容」を示すことができます。

 

そして
「なぜ補助金でこの事業を行う必要があるのか」
理由は、以下の内容で示すことができます。

(5) 顧客の要求・ニーズ
(6) 事業課題(経営課題)

 

顧客の要求・ニーズを明確にしたうえで、
「外部環境の変化により売上が低下した」
「品質問題が起きている」
「顧客の新たな要求、ニーズに対応できない」
など、自社の直面している問題、つまり事業課題を書きます。

 

(7) 解決方法

事業課題の解決方法として、補助金を活用して設備投資、新製品や新サービスの開発を行うことを書きます。

これにより
外部環境の変化や顧客の要求・ニーズ対応できないという事業課題(6)を解決するためには、
(7) の設備投資や新製品や新サービスの開発を行う必要があること
を訴えることができます。

 

何をやるのか、材料や装置まで明確にし、具体的な目標と手段を書く

また、課題を解決するため、不可欠な工程ごとの開発内容、材料や機械装置等を明確にしながら、具体的な目標及びその具体的な達成手段を記載してください(必要に応じて図表や写真等を用い具体的かつ詳細に記載してください)。

「工程ごとの開発内容、材料や機械装置」は、(32),(33)で書きます。

「具体的な目標、及び具体的な達成手段」は、
(11) 技術的課題、(12) 解決方法、(13) 具体的な目標(定量的・定性的) を、
(32),(33)に書きます。

 

(32) 具体的な取組内容

新たな設備を導入し新技術を立ち上げる場合、
1) 設備仕様確定、
2) 設備選定、
3) 設備導入・設置、
4) 装置教育、
5) テスト加工、
6) 評価、
7) 顧客の評価
一般的には、この7ステップはあると思います。

加えて
a. 外部との連携がある場合、その活動
b. 購入する備品・設備の導入時期
c. 数値化された達成度
を書きます。

 

例 

  1. 設備仕様確定 ○○を実現する設備の仕様を確定する。
  2. 設備選定・発注 確定した仕様に基づき、メーカー、機種を選定・発注する。
  3. 設備導入・設置 (メーカー)は設備を納入、動作確認を行う。
  4. 装置教育 (メーカー)は、○○の製造条件に付いて技術指導を行う。
  5. テスト加工
    技術的課題1の○○のトライを行う。目標(精度など)±0.0*を確認する。
    技術的課題2の○○のトライを行う。目標(精度など)±0.0*を確認する。
    (外部からの指導がある場合) トライに当たっては、○○機関の指導を受ける。
  6. 評価 本事業の課題である○○について、テスト加工を行い社内で評価する。
  7. 顧客の評価 顧客○○の評価を受ける。

 

「 (31) 社外体制」の図に載っているのに、(32)の具体的な取組内容にないのは、不自然です。

同様に技術的課題で挙げてあるのに、解決の取組がないのも不自然ですので注意してください。

 

事業期間内においては機械装置等の取得時期や技術の導入時期についての詳細なスケジュールの記入が必要となります。(27ページ:審査項目(2)①~④参照)

(33) 事業実施のスケジュール

「(32) 具体的な取組内容」の各番号と簡単な内容を日程表に書きます。
社外の関係者は社名を、社内の担当は社員名を書くとわかりやすいです。

 

革新的サービスは「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示す方法で行う

b. 【革新的サービス】の応募申請においては、新たな製品・サービスを顧客等の他者に対し役務としてどのように提供するのか具体的に説明するとともに、「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示す方法との関連性を説明してください。

どのように提供するのか具体的に書く必要があります。
ここで具体的とは、誰が、いつ、どこで、どうやって、提供するかです。

その事業を実際に進めようとすれば、これは明確にする必要があります。
もし明確に書けない場合、事業計画がまだ具体的でなく、そのまま進めるとリスクが高くなります。
そこで明確になるように再度計画をつくります。

 

中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示す方法とは、以下の表の(1)から(10)の内容です。

 

具体的な方法 (経済産業省 サービス生産性向上のガイドラインより)

具体的な方法
(経済産業省 サービス生産性向上のガイドラインより)


 

実際には、上記の「新たな製品・サービスを顧客等の他者に対し役務としてどのように提供するのか」これを具体的に考えると、必ず(1)から(10)のいずれかに該当するはずです。

そこで、
『本事業の取組は「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示す○○と○○に該当する』
と、改めてしっかり書いておきます。

ガイドラインに示す方法は、この補助金の必要条件であり、これを満たさなければ不採択になります。

 

ものづくり技術は「中小ものづくり高度化法」の12分野の技術で行う

c.【ものづくり技術】の応募申請においては、「中小ものづくり高度化法」の12分野との関連性を説明してください。

関連性の説明とは、マニュアルにあるように、この事業の技術的課題を書いて、その課題は12分野の○○に係る技術に該当するとすれば、良いです。
さらに当てはまる高度化目標を12分野から転記します。

 

差別化と競争力強化となる具体的な方法を書く

d.本事業を行うことによって、どのように他者と差別化し競争力強化が実現するかについて、その方法や仕組み、実施体制など、具体的に説明してください。(27ページ:審査項目(2)③、④参照)

「 (14) 技術的課題 優位性」で他社との差別化を説明します。

「(29) 社内体制」「(30) 技術的能力」「(31) 社外体制」でこれを示します。

ここで、優位性や差別化を書く上で多くの方が陥りがちなことは、技術や事業の絶対的なレベルを考えてしまうことです。
補助金の審査は、絶対的な技術の高低まで評価できません。
特に製造業の方は、同業他社の技術レベルをよく知っているため
「うちのやっていることは大したことはない」
と考えてしまいます。

しかし審査では、絶対的な技術の高い低いまで審査していません。

また審査員もそこまで判断できるような専門家ではありません。

自社なりに創意工夫して、他社ではやっていないことを訴えれば十分です。

すごく精度が高くなくても
「加工条件を工夫して刃物の寿命が長くなった」
「治具を工夫して生産性が上がった」
ということでも十分です。

 

複数社で連携して連携体で申請する場合は、連携の内容と役割分担を忘れずに書く

e.連携体で応募申請する場合は、各事業者ごとの役割分担や連携の内容などを具体的に説明してください。

各事業者ごとの役割は、
(32) 具体的な取組内容と、
(33) 事業実施のスケジュール
にそれぞれの役割とスケジュールを書いてください。

 

その2:将来の展望(本事業の成果の事業化に向けて想定している内容及び期待される効果)

 

本事業で売上増加が見込まれる顧客、売上予測はできる限り具体的に書く

a.本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等について、その成果の価格的・性能的な優位性・収益性や現在の市場規模も踏まえて記載してください。(27ページ:審査項目(3)②参照)

申請書の本文は非公開であり、審査員には守秘義務が課せられますので、ユーザーやマーケットは、できる限り具体的な固有名詞で書いた方が、リアリティが出ます。

この事業の成果が、価格的、性能的に他社に比べて優位性があること、また収益性が高まることを書きます。

これは文章で書くとわかりにくくなるので、以下のように表にしてしまうのも一つの方法です。

自社
(本事業の成果)
競合
価格的 (優位性を簡潔に記述)
収益性を簡潔に記述
自社に対してどうか
性能的 優位性を簡潔に記述 自社に対してどうか

 

市場や市場のニーズについては、マニュアルでは以下の番号の内容になります。

(19) 成果の寄与する市場
(20) 市場規模
(21) 市場のニーズ

b.本事業の成果の事業化見込みについて、目標となる時期・売上規模・量産化時の製品等の価格等について簡潔に記載してください。(27ページ:審査項目(3)③参照)

5年後の売上計画が本当に実現できると思ってもらうために、どこの誰にいくら買ってもらうのか、審査員が理解できるように書いてください。

この部分があいまいな申請書は非常に多く、本当に5年後にこの売上になるのか、疑われます。

具体的には、

本事業対象製品は、主要取引先〇〇社が201*年より*%増産の計画である。当該生産は、当社の他協力会社2社が製造している。
本事業の成果により、製造コストを*%提言し、納期を*%短縮することで、*%受注が増加する見込みである。
これにより当該製品の売上は、*円から*円に増大する。

また当該製品は○○の特徴と競合に対して-*%の低コストを武器に、○○業界に新規開拓する。
すでに○○社から、○○という部品が欲しいという希望があり、本事業完成後、サンプルを提示して、受注活動を行う。
これにより○○社の他*社から新規の受注を獲得し、5年後には、*円の売上を見込んでいる。

 

これはマニュアルでは、以下の項目になります。

(24) 本事業の成果の事業化見込み(5年後の売上の増加計画と達成のための活動)
(25) 補助事業終了後5年間の事業化スケジュール
(26) 売上の増加額(5年間の売上と利益の増加計画)

 

c.必要に応じて図表や写真等を用い具体的かつ詳細に記載してください。

経常利益や付加価値額の根拠は、売上だけでなく、人件費や減価償却費の変化も書く

d.【革新的サービス】に応募申請される方は「革新的なサービスの創出・サービス提供プロセスの改善を行い、3~5年計画で「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成する計画」の根拠を具体的に記載してください(詳細を別添資料とすることも可能)。(27ページ:審査項目(3)④参照)

根拠を具体的に記載するように求めています。

つまりどうして「付加価値額」及び「経常利益」が上がるのか、その理由を書く必要があります。

経常利益が上がる理由は、

  • 売上が上がる
  • 費用が下がる

ですから、
○○の取組により売上が向上
これは先の5年間の売上増加計画で示されます。


 

付加価値額が増加する理由は、付加価値額が増加するためには

  • 経常利益が増加
  • 人件費が増加
  • 減価償却費が増加

サービス業では、経常利益が大幅に伸びない限り、経常利益の伸びだけでは付加価値額が目標に達しません。
また減価償却費は、定率法の場合、年々減少します。
そのため、付加価値額を上げるためには、賃上げを行うか、雇用を増やして人件費を増加する必要があります。

 

根拠を求められているので、経常利益が上がる理由として

a.で示した理由により、売上が増大する。
費用は、人件費が*%増大し、他の費用は*%増加するが、合わせて*%の増加のため、経常利益は*円になる。

 

付加価値が上がる理由として、

上記の理由により、経常利益が増加する。
人件費は、雇用の増加・賃上げにより、*%増加する。
減価償却費は、本事業により*円に増加するが、その後減少し、*円になる。
その結果、付加価値額は、*円になる。

e.【ものづくり技術】に応募申請される方は、「革新的な試作品開発・生産プロセスの改善を行い、3~5年計画で「付加価値額」「経常利益」の増大を達成する計画」の根拠を具体的に記載してください(詳細を別添資料とすることも可能)。(27ページ:審査項目(3)④参照)

ものづくり技術では、革新的サービスのように3~5年計画で「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上は求められていません。

ただし、3~5年計画で「付加価値額」「経常利益」の増大を達成する計画」とその根拠は必要です。

つまり数字はいくつでも良いのですが、少なくとも目標数値を決めて、それを達成できる理由を書く必要があります。

f.会社全体の事業計画(表)における「付加価値額」「経常利益」等の算出については、算出根拠を明記してください。

これは上記で説明されます。

 

ものづくり技術で陥りがちな過ち

 

ものづくり補助金の申請書を見て、多い間違いがあります。

それは12分野のものづくり技術で書かれた申請書なのに、技術的課題が12分野の課題でない場合です。

具体的には、このような申請書です。

金型メーカーが、より高精度なプレス金型を短納期で製造するために、高性能な工作機械(マシニングセンタ)を導入する計画をつくりました。
これは、12分野では、「精密加工に係る技術」となり、申請書もそのように書きます。

ところが技術的課題には、

  • 金型の構造を変更して、プレス精度を高める
  • 切削加工だけで仕上げて、研削加工をなくして納期を短縮する

この2点を書きました。

これは、高精度なプレス金型を短納期で製造するためには、解決しなければならない技術的課題ですが、それは精密加工に係る技術の課題ではありません。

設備投資をすることで

革新的な精密加工技術を達成するかどうか、

審査されます。

この場合、精密加工の観点で見れば、上記2点は革新的でないと判断される恐れがあります。

もし、上記の課題を技術的課題とするのであれば、この技術は、
「立体造形に係る技術」、
つまり革新的なプレス加工技術の開発になります。

これであれば、上記の技術的課題は良いかもしれません。

しかし精密加工に係る技術であれば、以下のように精密加工での技術的課題を挙げる必要があります。

例 仕上げ加工時に主軸の変形による精度の影響を予め補正する

つまり、設備投資を行うことで、
革新的な12分野に関する技術を獲得して、自社の経営課題を解決する
のがものづくり補助金で求めることです。

しかし往々にして、
自社が解決すべき問題、例えば

  • 精密なプレスを実現する
  • より低コストのプレスを実現する

などに対して
設備投資するものが直接プレス加工を行う機械でない場合があります。

その場合、設備投資する機械に関する革新的なものづくり技術となるような課題が必要です。

 

他にも以下のサイトにも申請書作成のポイントがあります。
 

平成28年度補正ものづくり補助金 前回からの変更のポイント
 

平成27年度補正ものづくり補助金 必要な事前準備と過去の不採択のパターン
 

ものづくり補助金 二次公募 意外と知られていない採択のポイント 
 

パンフレットや補助金申請書に欠かせない「自社の強み」見つけるポイントは、「違い」 
 

ものづくり補助金 採択の為の最大のポイント「技術の革新性」の書き方 
 

平成26年度補正 ものづくり補助金 意外と知られていない採択後の手続きと収益納付 
 

 

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