発明を守る方法と、権利を守る戦い その1 特許とは何か、本当に知財を守れるのか

企業が新たな技術や製品を開発した時、そのノウハウや技術をまねされないように特許を取ります。

しかし特許を取っただけではノウハウや技術を守ることはできません。特許を取っても様々なルートから技術やノウハウは他社に流れます。
 
さらに事業がグローバルで行われる今日では、海外でも特許を出願しなければなりません。その際、海外は知財に関する法制度が日本と異なるという問題があります。

ではどのようにしたら良いのか、発明を守る方法について考えました。
 

技術やノウハウを守る方法

誰にも知らせず秘密にする

知財を守る最も良い方法は、「秘中の秘」は誰にも知らせず、ノートにも残さず頭の中に留めておくことです。
 
バイオリン製作の巨匠 アントニオ・ストラディバリは生涯に1200本のバイオリンを製作しました。しかしその製法は、全く記録がなく、そして後世の誰も彼のバイオリンを超えることができません。

最高の演奏家は今でもストラディバリウスのバイオリンを求め、その価値は計り知れません。しかしもし彼が、製法のメモを残していれば、もっと多くの数の素晴らしいバイオリンが生まれたと思います。
 
図1 ストラディバリウスのバイオリン(Wikipediaより)

図1 ストラディバリウスのバイオリン(Wikipediaより)
 

同様にコカコーラ社のコカコーラのレシピは、門外不出になっていて、コカコーラ社でも限られた人しか知りません。世界中にあるコカコーラの製造会社もシロップの原液はアメリカ本社から供給を受けています。
 
ただし開発した技術を誰にも知らせない方法は大きなリスクがあります。自社独自の技術であっても、他社も思いつくかもしれません。その時、先に自社で特許を取っておかないと他社が特許を出すかもしれません。多くの国では特許は先願主義のため、他社が自社の後から考えた技術でも、他社が先に出願すれば他社が権利化できます。

現実には多くの技術は、同じ時期に自分以外に何人かが考えています。せっかく画期的な技術を開発しても、他社が先に出願・権利化すればその技術を使用するためには他社にライセンス料を払わなければなりません。
 
一方、特許を取ることは、その技術の独占使用権を得る代わりに、その技術を広く公開することになります。つまりコカコーラ社がレシピの特許を出願していれば、ライセンス料を払えば誰もがコカ・コーラと同じ味を飲み物を作ることができます。そうならないようにするためにもコカコーラ社は完全に秘密にして事業を行う体制をつくりました。
 
しかし本当に素晴らしい技術であれば、特許を取れば将来その特許の期限が切た時に誰でもその技術を使えるようになり、社会の進歩に大いに役立ちます。もしアントニオ・ストラディバリの時代に特許制度があり、彼がバイオリンの製法の特許を取っていれば、はるかに多くの素晴らしいバイオリンが生まれていたでしょう。
 

公開する

開発した技術を特許で権利化するには、出願や審査請求、さらに権利化した後も特許を毎年維持するのにお金がかかります。だったら、特許を取らずに技術内容を公開して、自社で権利化しない代わりに他社にも権利化させないという方法です。

特許は日本をはじめ多くの国では先願主義です。例え先に発明しても相手が先に出願すれば権利化できます。しかし出願の時点で、すでに他社が発明していて、多くの人が知っている技術は特許になりません。(公知の事実)そこで発明内容をパンフレットやホームページで公開してしまいます。この時、公開した日付が重要です。確実な方法は公開したパンフレットやホームページを公証役場で認証を受けることです。
 

特許

特許とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」を指します。

特許制度とは、発明者に出願から20年、独占的な権利(特許権)を与える一方、発明を公開し技術の進歩を促進する制度です。つまり独占使用権の代償として、技術内容は公開されます。
 
特許出願の手続きと費用

【出願】 申請書を特許庁に出願します。費用は14,000円
【公開】 出願から1年6か月後に出願内容は公開され、
誰でも見ることができます。
【審査請求】 出願から3年以内に審査請求しなければ、
取り下げられます。
請求費用は、118,000円~
(請求項の数により変わる)
【特許査定】 特許庁が審査(実体審査)し、
特許として認められれば、
登録料を払って登録します。
【登録】 登録料は、1~3年2,100円~
(請求項の数により変わる、以下同様)
4~6年6,400円~、7~9年19,300円~、10~25年55,400円~

 

多くの企業は申請書の作成や審査請求は、弁理士にお願いします。その費用は弁理士により異なりますが、申請書の作成だけでも数十万円はかかります。

この特許出願は、発明者本人が行うこともできます。弁理士は、報酬をもらって出願の代理ができる資格です。(弁理士の独占業務)
 

実用新案

実用新案とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作であって、物品の形状、構造又は組合せに係るもの」です。特許ほど新規性がないが、発明として権利化したい場合に実用新案を申請します。実用新案は出願から10年間の独占使用権があります。
 

【出願】 申請書を特許庁に出願します。費用は14,000円
【審査】 特許庁で審査(方式審査)され、認められれば、
登録料を払って登録します。
【登録】 登録料は、1~3年2,100円~
(請求項の数により変わる、以下同様)
4~6年6,100円~、7~10年18,100円~

 

意匠

意匠とは、物品の形状・模様・色彩に関するデザインのことです。製品の形やデザイン、ロゴなどを意匠登録すれば競合他社が勝手にマネするのを阻止できます。意匠の権利期間は最長10年で、その後更新できます。ただし意匠はデザインに対する権利なので、他社が同じ機能の製品でもデザインさえ変えれば、同じものをつくることができます。

費用は登録出願に16,000円、登録料は、1~3年8,500円、4~20年16,900円です。
 
図2 意匠登録されている新幹線の先端形状(Wikipediaより)

図2 意匠登録されている新幹線の先端形状(Wikipediaより)

 

商標

商標とは、事業者が、自社の商品やサービスを、他社のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。会社のロゴや商品名などは商標として登録することで独占使用することができます。権利期間は20年です。
 
商標出願料は3,400円~(区分数による)、商標登録料は、28,200円×区分数(10年分)、更新登録申請料は、38,800円×区分数 です。
 
®マークとは、登録商標(Registered Trademark)の意味で、米国商標法では、商標の損害賠償を請求するためには®マークをつける必要があります。しかし日本では、「登録○○号商標」などと表示することが努力義務とされているだけです。しかし®マークをつけておくと他人に無断使用されるのを防止する効果があります。
 

特許、実用新案、商標、意匠の違い

特許は、アイデアだけでも権利化できますが、実用新案は物品など現物が必要です。ただし実用新案は、(実体)審査がないため、方式審査で落ちない限り登録できます。対して特許は、(実体)審査で新規性がないとみなされると拒絶されます。(後述)
 
従って、実用新案は、特許より登録が容易で費用も特許ほどかかりません。しかし実体審査がないため、登録できてもすでに他社で実施されていて権利化できていない可能性もあります。そのため他社と侵害係争になった場合、実用新案は他社の使用を差し止めする効果がないこともありえます。私が技術者だった時、知財部から
「ライセンス交渉の材料としては、実用新案は弱いから費用対効果を考えて出さない」
と言われてしまいました。
 

出願しても拒絶されることもある

特許は出願すればすべて権利化されるわけではありません。特許庁で拒絶されたり、出願人が取り下げたりして、権利化されるのは特許庁で査定される特許の3/4程度です。

拒絶理由の多くは「新規性がない」、「すでに知られている(公知の事実)」、「他の発明から容易に類推できる」などです。そのため出願の際、弁理士などの専門家に相談しても「絶対に権利化できる」とは言いません。ただし、もし特許庁で拒絶されても内容を修正して再審査を受ければ登録できる場合があります。

また、例え特許が権利化されても、競合がその特許を無効と考えれば、その特許に対し特許無効審判を特許庁に申請することもあります。

従って、本来であれば特許出願する前に、自社で先願があるか調査してから特許出願すべきです。先願調査は特許庁のデータベースを検索すれば誰でもできます。しかし様々なキーワードを打ち込んで検索して自社の特許に関連する特許を探すのは、ある程度のテクニックが必要です。そのため知財に詳しくない人が完全に調べるのは困難です。弁理士のような専門家も先願調査を専門とする弁理士は多くなく、費用もかなりかかります。
 

特許の明細の日本語は、分りにくい

特許の申請書に添付する明細書は、独特の言い回しの日本語で書かれ、特許になじみのない人には非常にわかりにくい文章です。
 

「一端が素子への接続部で他端が配線基板への接続脚部となった金属板製の所定数の端子の中間部の周囲を…(ある特許の請求項の一部)」
 
私が設計していた頃、自分の職場で、自分が出願した特許の明細を自ら細かく読んでしっかりと理解していた設計者はほとんどいませんでした。当時、私は競合会社の特許はずいぶん読みましたが、自分が出願した特許の明細書は丁寧に読んだことは一度もありません。(第一、そんな暇はありませんでした。)
 
一方、アメリカの特許も調べましたが、アメリカの特許は、普通の英語の専門書と同じで、辞書を引きながらスラスラ読めました。英語で書かれた特許の文章が、日本語で書かれた特許の文章より読みやすいという不思議な経験をしました。
 

技術やノウハウを守るために必要なこと

 
「これはすごいアイデアだから、特許を取れば独占できる」

そのように考える中小企業の経営者に時々会います。行政や支援機関の方もそのように言います。しかし1つの特許で技術を独占できません。技術やノウハウを守るには、様々なポイントを押さえておく必要があるからです。
 

多くの特許は回避される

非常に基本的な技術が権利化できれば話は別ですが、大抵の場合は、その特許を回避する方法が見つかります。企業で技術開発を行う場合、何か新しい機能を開発する際に他社の特許に抵触することは珍しくありません。開発とは他社の特許に抵触しない新しいやり方を考える作業でもあります。私自身も何度も競合の特許を回避する方法を考えました。
 
しかも公開された競合の特許には、詳しいやり方が図解入りで示されています。従ってじっくりと回避策を考えることができます。
 

発明を実現するためには、多くの周辺技術が必要

画期的な発明ほど、それを製品化・量産するためには、様々な周辺技術が必要です。発明を独占するには、製品化・量産に関する周辺技術や製造技術まで広く権利化する必要があります。

画期的な発明をしても、周辺技術の特許出願にもたもたしていると、競合が必要な周辺技術の特許をたくさん取得してしまいます。そうなると自社が核となる技術の特許を持っていても、競合の特許を使用しない限り製造できなくなってしまいます。
 
当然、周辺技術をすべて権利化するためには、相当なお金がかかります。

つまり、独占使用するには、それなりのお金がかかります。
 

発明は自分だけではない

不思議なことに全く同じ時期に何人もが同じ発明を行っています。

  • 電話は、グラハム・ベル、エリシャ・グレイ、トーマス・エジソンの3人が同時期に発明しました。
  • 太陽の黒点は1611年に4人が別々に発見しました。
  • シリコンチップは1957年に2人が発明しました。

 
発明者が誰も思いついていない画期的な発明と思っても、世界のどこかで誰かも思いついているのです。
 

技術が流出

発明により優れた製品が生まれると、多くの人々がそれを求めます。情報が短時間に世界中に伝搬する今日では、需要が短期間に急増します。それに応えるためには製品の供給体制を素早く整える必要があります。供給能力の拡大に手間取っていると、ライバルが先に市場を占有します。
 
自社だけで十分な供給能力がない場合、パートナー企業に技術をライセンスし供給体制を取ります。

もしライバル企業がその技術に関して、別の強力な特許を取得していると、双方でクロスライセンス契約を結び、双方の特許を使用できるようにします。(今日では多くの技術が競合企業とのクロスライセンスになっています。)
 
そして、ライバル企業がライバル企業のパートナー会社に技術をライセンスする際に、こちらの技術がクロスライセンスを通じてライバル企業のパートナー会社に流出します。あるいは設備を外部委託した時に、設備メーカーから技術が流出することもあります。
 

特許は鉾と盾

特許には二つの役割があります。他社にまねさせない独占使用権という「鉾」と、他社に特許を権利化されないように先に出願する「盾」の役割です。
 
クロスライセンス契約での特許の役割は、まさに「鉾と盾」です。相手が使いたいような強い特許が自社にあれば、ライセンス交渉で相手より優位に立てます。また相手が自社の特許のいくつかを侵害していれば、相手を攻撃する鉾になります。

クロスライセンス契約では双方の鉾と盾の強さにより、相手の主張をやわらげ、自社の主張を強く訴えて、お互いが無料で権利を使用できるようにします。
 
もし自社の特許が強く、相手が自社の特許を多く侵害していれば、相手からライセンス料を請求します。逆に自社に強い特許が少なく、自社が相手の特許を多く侵害していれば、相手からライセンス料を求められます。ライセンス料は、製品1台につきいくら、という場合が多く、時にはこれが何億円にもなることがあります。
 
一度クロスライセンスを締結しても、個々の特許が時間の経過により有効期限(20年)を迎え効力を失うと、特許の力関係が変わります。自社の強い特許が失効すれば、今までは払わなくてよかったライセンス料を払うことになります。

そのためライバル企業とクロスライセンスになっている場合は、技術開発を継続して競合を先制できる特許を随時権利化して、ライセンス交渉が有利になるようにしなくてはなりません。
 

パテントマップの必要性

競合企業と製品開発競争を行っていると、多くの場合クロスライセンスの状態になり、双方が相手の特許を侵害している状態になります。その場合、競合の特許と自社の特許をすべて調べて、相手の特許を侵害しないで、どのような技術を開発するかを考える必要があります。これがパテントマップです。
 
設計していた頃、課題を解決するためにチームのメンバーで一生懸命考えて、解決する方法を見つけました。すると上司から「それは競合のA社から特許がでている」と言われ、とても腹が立ちました。

今から思えば、最初から他社の特許を侵害しないで設計者が考えるように、パテントマップを部下に作らせておくのが、上司の仕事ではなかったのかと思います。
 
一方代表的な技術分野のパテントマップは、特許庁が特許出願技術動向調査等報告を作成し広く公開しています。その技術分野の詳細な資料でもあり、研究開発に取組む際に必ず事前に目を通しておくことをお勧めします。
 
特許出願技術動向調査
 
図3 特許庁のパテントマップの例

図3 特許庁のパテントマップの例
 

特許権を巡る争い

 
特許係争になった場合、最も困るのは、係争相手が事業を行っていないことです。その場合、こちらが一方的に相手の権利を侵害していることになります。クロスライセンスに持ち込むことができず、係争相手に多額のライセンス料を払わなくてはならなくなります。
 
逆に非常に強い特許を持っていて、一方的にその権利を侵害して製品を大量に製造している企業があれば、特許侵害訴訟を起こせば巨額のライセンス料を受け取ることも可能です。こうして過去に巨額のライセンス料が支払われた事件が起きました。
 

レメルソンとサブマリン特許

米国の発明家ジェローム・ハル・レメルソンは1950年代より数々の発明を特許出願しました。その特許の一部は、長期間に渡り分割や補正が申請されていたため、全く公開されませんでした。こうしてその特許が権利化された時には、多くの企業が特許を侵害している状態になってしまいました。
 
【サブマリン特許】
出願されても分割や補正の手続きのために全く公開されず、その発明が広く普及した時点で特許権が成立し、多額の特許実施料を請求されることです。特許の権利期間は「出願日より20年間」ですが、かつては特許分割や補正を繰り返して手続きを遅らせると、実質的に権利期間を延長することができました。アメリカではその間公開もされず、時間が経過し、権利化されたときは大量の製品が権利侵害の対象となってしまいます。
これはかつての特許制度が、

  • 特許として登録されるまで公開されない(1971年以前の日本、および2000年以前の米国、ただし、米国においては現在でも一部例外的に公開されない場合がある)
  • 特許の有効期間は登録日から起算する(1995年以前の日本や1996年以前の米国)

 
という問題点があったためでした。
 
レメルソン氏は、1990年代に16件のバーコード特許を取得し、世界の自動車会社を相手にライセンス交渉を行い1500億円以上受領しました。日本の自動車工業界だけでも100億円のライセンス料金を支払いました。
  
【レメルソン氏のバーコードと画像処理特許の流れ】
レメルソン氏が、特許に基づく使用料請求に関して企業とコンタクトを取り始めたのが、1989年です。自動車、家電をはじめとする4~5つの業界が対象でした。

1992年 ミノルタとハネウエルに対し、1億ドルを超える賠償金を獲得、セガが敗訴し2,000万ドルの支払いを命じられました。
それ以来、日本企業は裁判を恐れるようになりました。
1992年 ドイツの4社に対し約1億ドルの和解金で合意。さらに日本のエレクトロニクス業界と合計4億5千万ドルで和解。
同時期、フォード、GM、クライスラー、モトローラ、三菱が侵害警告を受け、モトローラ、三菱は和解。
フォードは1995年に勝訴。
1997年 フォードは再度侵害警告を受けましたが、裁判中に形勢が不利と感じたレメルソン社は金額を大幅に下げた和解案に同意。

 
その後、レメルソン氏は標的を中小の企業に向け、警告文を1,500社ほどに発送し、400~450社がライセンス契約を締結しました。
 
 

キルビー特許

ジャック・セイント・クレール・キルビー氏は、2000年にノーベル物理学賞を受賞したアメリカの電子技術者で、1958年テキサス・インスツルメンツ社にて集積回路(IC)を発明しました。氏は他にも電卓やサーマルプリンターも発明しました。
 
ジャック・キルビー氏の半導体集積回路の基本特許249特許は、1960年に出願されたものの異議申し立てが相次ぎ、1977年にやっと登録され、1980年に満了しました。
 
一方、これを分割した275特許は、拒絶査定に対して反論を続け1986年に公告、1989年に登録されました。権利期間は1986年から2001年まで15年間でした。

この275特許は、広い範囲の半導体製品(IC)が対象となりました。これは半導体が生活の隅々まで行き渡るようになってから特許となったため、日本の各半導体メーカーは莫大な実施料を支払いました。しかし富士通だけは支払いを拒否し、裁判に持ち込みました。その結果、275特許は無効とされ勝訴しました。
 

パテント・トロール

他社から買収した特許を使い、その特許を侵害していると目をつけた企業に巨額のライセンス料を請求する企業や個人のことです。自らは事業を行っておらずライセンス料が目的のため、クロスライセンスなどの交渉には応じません。彼らは「パテント・トロール」とも呼ばれています。このトロール(troll)の意味は、北欧の神話で洞穴や地下に住む奇怪な巨人のことです。
 
図6 北欧の伝説の怪物トロール(Wikipediaより)

図6 北欧の伝説の怪物トロール(Wikipediaより)
 

アメリカでは、製造を行っていないのにも関わらず特許訴訟を起こす企業が多く、その特許訴訟に占める割合は全体の67%にもなります。

原因は、特許訴訟が専門的なスキルを必要とするため、弁護士費用が極めて高額で訴訟を起こされた場合、法廷で争うよりも和解した方が費用が少ないためです。そのため高額な和解金を目当てにパテント・トロールが訴訟を起こしているためです。
 
【最近の事例】
アメリカの特許管理会社スマートフラッシュは、同社のデジタルコンテンツの保存と管理に関する特許を侵害したとしてアップルを訴え、2015年2月損害賠償5億3290万ドルの支払の判決で勝訴しました。

またアメリカ エオラス社はマイクロソフトに勝訴して5億2100万ドルの賠償金を獲得しました。
 
この問題はアメリカの政府立法機関でも深刻に捉えられ、2014年7月下院委員会で悪質な特許訴訟を抑制する通称「TROL法」法案が可決されました。
 
【中小企業も標的にし始めた】
アメリカの起業家クリス・ハル氏は、パテント・トロールに襲われたときに断固戦うことを決意しました。

  • 和解金を払う意思がないことを伝え、相手の所在地、相手の弁護士を公開しました。
  • 同じ会社から同様の訴訟を受けている企業と連絡を取り情報を共有しました。
  • 訴訟費用がかかっても、断固として戦うことを決意しました。

その結果、裁判に勝訴し、パテント・トロールは退けられました。
 

【PPAPの商標を出願】
2016年ユーチューブで世界的にブレイクしたピコ太郎氏の曲「PPAP」や歌詞にある 「ペンパイナッポーアッポーペン」のフレーズを元弁理士 上田育弘氏の経営するベストライセンス株式会社が商標出願していました。
 
同社は、毎年1万件以上の商標を出願していました。最近の商標出願数ランキングは以下のようになります。

2015年
1位 / 8130件 ベストライセンス株式会社
2位 / 6656件 上田育弘

2016年
1位 / 19949件 ベストライセンス株式会社
2位 / 5701件 上田育弘
3位 / 829件  サンリオ
4位 / 608件  資生堂

2017年
1位 / 584件  ベストライセンス株式会社
 
同氏は、出願しても半年間は出願料(商標1件につき1万2,000円)を払わなくても登録できるという制度の抜け穴を利用していました。(登録された件数はわずか5件)この半年間の間に企業にコンタクトしライセンス交渉を行い、有望なものだけ登録するビジネスモデルのようです。
 
これについては、特許庁も問題視し、下記のサイトで述べています。
自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)
 
実際は、申請者が事業を行っていない、あるいは商標出願してもすでに他の者が使用している、そのような場合、商標登録されることはありません。もし商標登録されたとしても、それ以前に自社が使用していた事実があれば、その商標は無効であると訴えることができます。
 

特許制度の課題

グローバル化して今日、独占使用は非常にコストがかかる

特許は、その出願した国でしか効力を発揮しません。日本で登録した特許を他社が侵害した場合、日本では訴えることができますが、アメリカで侵害した場合はアメリカで特許を権利化しない限り訴えることができません。
 
つまりアメリカで訴えるために、アメリカでも権利化しにければならず、販売先がヨーロッパ、中国、インドと広がれば、それぞれの国での出願が必要で多額の費用がかかります。
 
しかも侵害訴訟は、その国の法律の下で行われます。新興国では司法制度が外国企業に対し公平でないこともあり、訴訟しても不利な判決が出ることもあります。
 

特許制度の問題点 通報制度がない

最も大変なのは、他社が侵害した場合侵害していることを、自分たちで見つけなければならないことです。これは第三者が発見し、侵害を受けたものに通知する通報制度がないためです。
 
私が設計していた時、競合が自社の特許を侵害しているかどうか、展示会で調べてくるように知財担当から依頼されました。

しかし展示会で動いている装置が、本当に自分の特許を侵害しているかどうか調べるのは容易ではありません。明らかに同じ機能を搭載していれば分りますが、全ての機能を展示会で説明しているわけではなく、メンテナンスなど普段は使用しない機能は展示会でもデモしません。
 
また画像処理のアルゴリズムなどは元々公開しないので、自社の特許を侵害しても分かりません。
 

特許制度の問題 侵害者を訴えるのは自分しかない

また自社で開発した製品を海外で販売した時、海外の現地の企業がマネをして販売しても、それは自社が訴えなければなりません。
 
自社の特許を侵害している企業の所在地を調べ、その会社に

  • 自社の特許を侵害している事実を伝える
  • 直ちに製品の販売を中止するように勧告
  • 販売したければ、自社にライセンス料を支払うように要請
  • 応じない場合は、訴訟を起こす意思を伝える

を伝えなければなりません。

そして相手が応じなければ、中国で弁護士に依頼して訴訟を起こさなければなりません。
 

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