中小企業の現場改善=儲かる工場になるために ~リードタイム短縮 その2 ブルウィップ効果
モノづくりは、最終的には製品として完成し、
顧客に届けられます。
このとき、顧客の需要に変動があると、
部品メーカーのようなサプライチェーンの上流では、
生産量の変動が非常に大きくなります。
これは、牛を追い立てる鞭が、手元の動きに比べ先端が
大きく動くのに例えて、「ブルウィップ効果」と呼ばれています。
このブルウィップ効果は、部品メーカーと完成品メーカー、
小売業者と卸業者などの企業間だけでなく
自社内でも、工程の下流に比べ上流では変動が大きくなります。
その意味でも、ブルウィップ効果の仕組みを知っておく必要があります。
1) ブルウィップ効果とは
ブル・ウィップ効果とは、サプライチェーンの川上事業者になればなるほど、
末端の需要動向の変化が増幅されて伝わることをいいます。
これは、流通・小売業のサプライチェーンマネジメント(SCM)から
出てきた考え方です。
下図のように
原材料メーカー ⇒ 部品メーカー ⇒ 完成品メーカー ⇒ 卸売業 ⇒ 小売業
というサプライチェーンの中では、
小売業のわずかな需要の変動が、上流の原材料メーカーでは大きな変動になっています。
2) エシェロン在庫
エシェロン在庫とは、自社から見、サプライチェーンの下流に位置する
在庫のことをいいます。
卸売業者の在庫は、完成品メーカーから見たエシェロン在庫になります。
エシェロン在庫は、自社の需要の変動に大きな影響を与えます。
ブルウィップ効果が起こる原因には以下のようなものがあります。
① 最終顧客の需要動向が川上に伝わるのが遅い
発注間隔が長い、需要動向を川上事業者に伝えていない、
等の理由で川上事業者に最終顧客の需要動向が遅れて伝わるためです。
② 川上事業者は需要変化に対して過剰に反応してしまう
川上事業者が供給能力が足らずに欠品することを恐れて、
在庫を余分に持ったり、生産量を余分に引き上げたりすると、
過剰在庫となります。
その結果、需要が減少したときに最終顧客の需要以上に、需要が減少します。
つまり、過剰在庫のためにわずかな需要変化に対して敏感になってしまいます。
好景気が大きいほど、この後の不況が大きくなる原因のひとつに、
このブルウィップ効果の影響があります。
③ リードタイムが長い
製造リードタイムが長いと、より遠い未来の需要動向を、
現在の需要動向から予測しなければなりません。
その結果、生産計画や購買計画する不確定要素が高くなります。
ブルウィップ効果を軽減するには、
川上事業者が最終顧客の需要動向を早く正確に掴むことです。
また、各サプライチェーンの受注から出荷までの時間を
短くすることが重要になってきます。
そのため、以下のような取り組みがブルウィップ効果低減に有効となります。
ⅰ SCM体制の構築
サプライチェーンの上流から下流まで、需要動向の情報の伝達を素早くします。
SCM(サプライチェーンマネジメント)は、各サプライチェーンの情報の伝達を
情報システムで結び、最終顧客の需要動向をリアルタイムに川上事業者へと展開します。
ⅱ 川下事業を統合する
買収・合併などにより、川上事業者と川下事業者が統合すれば、
情報の伝達のスピードアップ、サプライチェーン間の在庫削減が可能になります。
例えば原材料メーカーが、完成品を作り、小売までできるようになれば、
ブルウィップ効果の影響を減らすことができます。
ⅲ 生産リードタイムを短縮する
生産リードタイムを短縮することで、より近い将来の需要予測をすればよくなります。
その結果、需要予測の精度がUPします。
過去にも、震災やその他様々な要因で供給不足が生じたとき、
各サプライチェーンが過剰に反応して、最上流の材料メーカーでは、
大量の注文が入った後、その後全く注文がなくなってしまうことがありました。
これは、不足しているからあるものを確保しようと、過剰に購入した結果
生産量が減少したときには、在庫の消化のためにそれ以上に発注を
減らしてしまいます。
これもブルウィップ効果の例です。
ものづくり改善 段取り時間短縮については、こちらから参照いただけます。
ものづくり改善 リードタイム短縮 その1については、こちらから参照いただけます。
ものづくり改善 5Sについては、こちらから参照いただけます。
ものづくり改善 品質改善については、こちらから参照いただけます。
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