モノづくり温故知新 第二話 「蒸気船を持ちたい」という殿様の命令でつくってしまった家具職人

今回は蒸気船をつくった家具職人の話です。

幕末にペリーの黒船が日本に来港し、 日本も黒船が必要だという声があちこちで起き、4つのグループが蒸気船の製作に取りかかりました。

第一のチーム、ようやく重い腰を上げた江戸幕府

第二のチーム、琉球を支配下に入れ、海外の情報が豊富でかつ、砂糖などの収益で資金の豊富な薩摩藩

第三のチーム、長崎を所管していたため、海外の情報が豊富な佐賀藩

第四のチーム、四国の宇和島藩。

黒船

 

ただ、この宇和島藩に差し迫って蒸気船をつくる差し迫った事情はありませんでした。

藩主 伊達宗城が参勤交代の途中に品川で停泊していた黒船を見て「あんな船を持ちたい」と思ったからでした。

そして、蒸気船建造を命じたのは、なんと藩内で器用者といわれた仏壇・仏具の職人 提灯屋の嘉蔵(後の前原巧山)でした。

殿様から蒸気船製造の命を受けた藩の下級武士達は、よほど人材に困ったのか、提灯屋の嘉蔵の元を尋ね、蘭書の図面をもとに 蒸気機関がつくれないか依頼しました。

 

嘉蔵は、漁に使う網曳きのロクロを思い出し、これを工夫して不眠不休で思案し、箱車に四輪をつけ回転するカラクリを作り上げて見せました。

伊達宗城に見せますと

「本物を造れ。嘉蔵に金子(きんす)を取らせる」

と褒美を与え二人扶持五俵の武士に取り立てました。

嘉蔵が袴に大小を差し、自宅に帰ったところを見た近隣の住民は、気が狂ったのかと思ったそうです。

(汚い身なりをして出かけた嘉蔵が、侍になって帰った来たのでさぞかしびっくりしたと思います。)

当時、蘭学大好きな藩主 伊達宗城のために、村田蔵六(後の大村益次郎)が翻訳のために宇和島藩に来ていて、蘭書の翻訳を行なっていました。

嘉蔵はカラクリを船に応用する工事にかかりましたが、村田蔵六の図面を直ちに理解しさらに改良案を進言するなど、すばらしい才能を発揮しました。

 

しかし、試作・試運転を重ねてもなかなか完成しませんでした。

原因は、湯釜が鋳物のため、高圧になると「巣」から蒸気が噴出してしまい、圧力が上がらなかったためでした。

度重なる失敗に、

「おつぶし方」

とまで言われました。

「やはり本の知識だけでは無理なのか」

そのとき長崎に黒船が入ったという知らせが届きます。

そこで嘉蔵と村田蔵六は、長崎へ黒船を見に行きました。

嘉蔵はタービンを叩いてみて分かりました。

「なんだ、鋳物ではなく鋼だ」

今度は鋼でタービンを造ったところ、蒸気の漏れが止まりました。

そしてついに、蒸気船が完成しました。

薩摩藩には遅れを取りましたが、2番目の快挙です。

しかも薩摩藩には 外国の技術者がいましたが、宇和島藩は、独力で完成したのです。

 

その様子を、司馬遼太郎は小説「花神」で以下のように書いています。

以下、「花神」より引用

船がうごいている。

海が背後に押しやられ、舳先に白波が沸いている。

平素沈鬱なばかりの家老 松根図書までが子供のようなはしゃぎ声を上げ

「村田、進んでいるではないか」

と、振り返って叫んだ。

が、村田蔵六の悪いくせが出た。

「進むのは当たり前です。」…

殿様は驚いている。

「ペリーの蒸気船に日本中が尻もちをついたのは、わずか3年前だ。3年後の今、宇和島湾で蒸気船がうごいている。」

引用ここまで

宇和島藩のこの快挙について、司馬遼太郎は

「この時代宇和島藩で蒸気機関を作ったのは、現在の宇和島市で人工衛星を打上げたのに匹敵する」

と述べています。

 

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