検査で品質は向上する? ~全数検査の落とし穴
多くの中小企業のモノづくりでは、大企業のように機械による
自動化ができず、手作業による部分も少なくなくありません。
その場合、作業者のミス、つまりヒューマンエラーによる不良が
発生することがあります。
例えば、組立ミスによる誤組立や、異品納入など、
又機械加工でも加工条件の設定ミスによる寸法不良が起きることがあります。
その結果、不良品が顧客にまで流出すると大きな問題となり、
原因と対策が必要になります。
しかしヒューマンエラーが原因の場合、根本的な対策が難しく、
全数検査で流出防止を図ることもあります。
この全数検査は流出防止として有効でしょうか。
実は不良の発生確率が低いと検出率は低下します。
これは「人は捜し物がなさそうなら早めにあきらめる」
ようにプログラムされているからです。
例えば、2002年にアメリカ国内の空港検査員5万人に
ついて銃を見過ごす確率を調査しました。
その結果、見過ごす確率は25%、4丁に1丁は見過ごされていました。
このときの発生確率は1PPM(100万の1)しかなく、650万人の乗客に対し、
検査員が見つけた銃は598丁でした。
見過ごす確率は25%、4丁に1丁は見逃していました。
つまり全数検査は、流出防止策としてはリスクの高い方法です。
ではどうしたら良いでしょうか。
以下の方法があります。
・ポカヨケを構築し、不良を作れない工夫をする。
・完全なポカヨケができなくても、ミスが起きにくいようにチェックリストの整備、製品を入れる箱の色分けや部品の識別方法などを工夫する。
・作業手順の標準化と手順書の作成を推進する。
・自動検査装置を導入し、検査を自動化する。
・数値管理できるものは、管理幅を狭め、品質を向上する。
プレスや樹脂成形など加工時間が短い製品は、
全数検査を行なうと加工時間より検査時間の方が
長くなってしまいます。
問題点を対策し、全数検査を早急に廃止しないと
製造コストが大幅に上がったままになります。
私の経験でも、プレス工場でプレス機が停止しているので
確認したところ、作業者は別の製品の全数検査を行なっていました。
この製品は金型に問題があり、寸法が公差を外れるため全数検査を
行なっていました。
その検査に時間がかかり、作業者は自分の担当している
プレス機を止めて検査していたのです。
この場合、早急に金型を修正し、寸法を安定させ
全数検査を廃止しないと、製造コストがかさむ一方でした。
工程能力は、本来は測定を数値化して、標準偏差から
工程能力指数Cpkを求めます。
一方通止めゲージ等で検査を行ない結果が数値化できない
場合もあります。
その場合、ゲージの管理幅を要求される公差域よりも狭くし、
そこですべて合格になるように加工機の精度を高めます。
もし不良になった場合は、公差域ちょうどのゲージで検査し、
合格であれば納品します。
公差域を厳しくしたゲージが、工程能力、
及び改善活動の目標となるわけです。
このような製造能力を高める活動は、すぐには成果が
出にくいものですが、ムダな全数検査を廃止するためには
必要になります。
見落としなど誤認識によるヒューマンエラーについては、こちらから参照いただけます。(別サイト)
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