10. 人と設備の組合せで原価はどう変わるのか

【コラムの概要】

人と設備の組み合わせ方によって原価の計算は変わる。そこで「有人加工」と「無人加工」、「多台持ち」やロボットの導入、夜間の無人加工や「かけ逃げ」などの計算方法を説明。さらにライン生産とセル生産の原価の計算や状況に応じて人と設備を組み合わせる場合の計算方法を説明。

人の時間単価「アワーレート(人) 」の計算について
4. 人のアワーレートの計算方法(1)基本の考え方

設備の時間単価「アワーレート(設備) 」の計算について
設備アワーレートの計算方法|設備費を時間で考える

で説明しました。

実際の生産では、人と設備の組み合わせで行うことがあります。この場合、人と設備の組み合わせの仕方によって加工費の計算が変わります。そこで以下の8つの場合について説明します。

  1. 有人加工と無人加工
  2. 多台持ち
  3. ロボットの導入
  4. 夜間無人加工
  5. 「かけ逃げ」
  6. ライン生産
  7. 人と設備の組み合わせが決まっていない場合
  8. 製品に応じて使用する設備が変わる場合

1. 有人加工と無人加工

人と設備の組み合わせの中で、有人加工とは人と設備が同時に生産する場合を指します。具体的には作業者が設備1台につきっきりで生産する場合です。
1人1台持ちとも言います。

以下の事例では「有人加工では571円が、無人加工では194円と、377円も低くなりました」
以下に具体的な数値で解説します。

有人加工

人の費用と設備の費用が両方発生するため、製造費用は人と設備の合計です。この時アワーレートは、間接費を含んだアワーレート間を使用します。

この間接費の分配については
間接費とは?見積に入れないと利益が残らない理由
を参照願います。

製造費用(人)=アワーレート間(人)×製造時間

製造費用(設備)=アワーレート間(設備)×製造時間

製造費用=製造費用(人)+製造費用(設備)

あるいは
アワーレート(人と設備)=アワーレート(人)+アワーレート(設備)

製造費用=アワーレート(人と設備)×製造時間

図 有人加工
図 有人加工

有人加工の製造費用

架空の企業A社
マシニングセンタの現場
アワーレート間(設備) 1,670円/時間
アワーレート間(人) 3,770円

A1製品
ロット100個
段取時間0.5時間
加工時間0.1時間

製造費用は571円でした。

【計算】

製造時間 = 一回の段取時間 ロット数 + 加工時間 = 0.5 100 + 0.1 = 0.105 時間

段取費用 = (アワーレート(人)+アワーレート(設備))×段取時間 ロット数 = (3,770+1,670)×0.5 100 = 27 円

加工費用 = (アワーレート(人) + アワーレート(設備)) × 加工時間 = (3,770 + 1,670) × 0.1 = 544 円

製造費用 = 段取費用+加工費用 = 27+544 = 571 円

無人加工

ボタンを押した後、設備が自動で加工する場合、加工中の作業者の費用はゼロになり、設備の費用のみです。
一方、段取作業は人が設備を止めて行います。そのため人と設備の両方の費用が発生します。
従って

段取費用 = (アワーレート(人) + アワーレート(設備)) × 段取時間

加工費用 = アワーレート(設備) × 加工時間

図 無人加工
図 無人加工

無人加工の製造費用

マシニングセンタの現場
アワーレート間(設備) 1,6790円/時間
アワーレート間(人) 3,770円

A1製品
ロット100個
段取時間0.5時間
加工時間0.1時間

製造費用は194円でした

【計算】

段取費用 = (アワーレート(人)+アワーレート(設備))×段取時間 ロット数 = (3,770+1,670)×0.5 100 = 27 円

加工費用 = アワーレート(設備) × 加工時間 = 1,670 × 0.1 = 167 円

製造費用 = 段取費用 + 加工費用 = 27 + 167 = 194 円

従って有人加工では571円が、無人加工では194円と、377円も低くなりました。
この例では、アワーレート(人)はアワーレート(設備)より高いため、無人加工は高いコストダウン効果があります。

無人加工が成立する条件

この条件が成立するには、加工中の作業者は別の現場で他の付加価値を生む作業をしなければなりません。加工中も作業者の賃金は発生しているからです。

中には、加工中の作業者が現場に留まり、品質確認や次の生産の準備をする場合もあります。この場合、作業者の費用は加工中も発生しているため、原価は有人加工と同じです。

実際には、自動で加工している設備は、加工中は作業者がやる作業は限られています。しかし現場を離れられない場合、作業者は複数の設備を担当します。
これが多台持ちです。

2. 多台持ち

2台持ちの製造費用は無人加工ほど低くはありませんが、有人加工よりも低くなります。
以下に具体的な数値で解説します。

ワークの着脱

設備が自動で加工しますが、加工完了後の製品の取り外しと材料のセットは作業者が行う場合があります。生産中はこのワークの着脱のみなので、1人の作業者が複数の設備を担当します。これを多台持ちといい、2台の場合は2台持ち、3台の場合は3台持ちと言います。

図 多台持ち
図 多台持ち

2台持ちの製造費用

2台持ちの場合、作業者の費用は2台の設備に分けられるので、設備1台当たりの人の費用は1/2になります。

段取費用 = (アワーレート(人) + アワーレート(設備)) × 段取時間

加工費用 = アワーレート(人) × 加工時間 × 1/2 + アワーレート(設備) × 加工時間

製造費用の計算例

A1製品の2台持ちの製造費用375円

段取費用は無人加工と変わりません。
段取費用 27円 

加工費用 = アワーレート(人) × 加工時間 × 1/2 + アワーレート(設備) × 加工時間
= 3,770 × 0.1 × 1/2 + 1,670 × 0.1 = 348 円

製造費用 = 段取費用 + 加工費用 = 27 + 348 = 375 円

従って
有人加工 571円
2台持ち 375円 (▲196円)
無人加工 194円 (▲377円)

2台持ちの製造費用は無人加工ほど低くはありませんが、有人加工よりも低いため、多台持ちは高いコストダウン効果があります。

持ち台数が変化する場合

持ち台数が2台、3台と現場の状況によって異なる場合

  • 2台持ち 375円
  • 3台持ち 293円
  • 4台持ち 261円

持ち台数が増えれば原価はさらに下がります。

そこで見積金額を計算する場合は、その製品の標準的な持ち台数を決めます。
実際の生産で持ち台数が見積と異なれば原価は変わっています。持ち台数が少なくなれば原価は上がっています。だから多台持ちの現場では実際に予定した持ち台数で生産しているかどうか、チェックが必要です。

では人の代わりにロボットを導入した場合はどうでしょうか?

3. ロボットの導入

ロボットを導入して無人加工にすれば、高いコストダウン効果があります。

ただし、これはロボットの価格次第です。この時、ロボットの耐用年数が問題になります。

図 ロボットの導入
図 ロボットの導入

ロボットの耐用年数

会計上のルールでは、設備にロボットを追加した場合のロボットの耐用年数は、元の設備の耐用年数になります。法定耐用年数10年の設備にロボットを追加すれば、ロボットの法定耐用年数も10年です。
しかしロボットが10年使えるかどうかは別です。ロボットは電子部品が多く、また使用中にぶつけることもあります。また小型の協働型ロボットには耐久性が低いものもあります。

そこで原価計算ではロボットの年間費用(実際の償却費)は、設備の耐用年数でなく、ロボット自体の本当の耐用年数から計算します。この本当の耐用年数や実際の償却費は
設備費と減価償却の考え方|原価にどう入れるか
を参照願います。

ロボットの計算例

A社 マシニングセンタにワーク着脱用のロボットを導入
購入金額500万円
本当の耐用年数 5年

実際の償却費は100万円でした。

実際の償却費 = 購入金額 本当の耐用年数 = 500 5 = 100 万円

ロボット導入前のマシニングセンタのアワーレート(設備)940円/時間

マシニングセンタ
実際の償却費140万円
ランニングコスト18.4万円
年間操業時間2,100時間
稼働率0.8
このマシニングセンタが4台

【計算】

直接費によるアワーレート(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計 (操業時間×稼働率)の合計 = (140+18.4)×4×10,000 (2,100×0.8)×4 = 943 ≒ 940 円/時間

ロボットを導入することで実際の償却費が100万円増加するため、アワーレート(設備)は

ロボット導入後のアワーレート(設備)は1,540円/時間

ロボット導入後のアワーレート(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計 (操業時間×稼働率)の合計 = (140+18.4+100)×4×10,000 (2,100×0.8)×4 = 1,538 ≒ 1,540 円/時間

アワーレート(設備)は600円/時間 増加(1.6倍)

直接費によるアワーレート(設備)の差は1.6倍ですが、間接費を分配すると差は小さくなります。

ロボット導入後のアワーレート間(設備) 2,260円/時間

【計算】
間接費の分配485万円
ロボット導入前

アワーレート間(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計+間接費分配 (操業時間×稼働率)の合計 = ((140+18.4)×4+485)×10,000 (2,100×0.8)×4 = 1,665 ≒ 1,670 円/時間

ロボット導入後

アワーレート間(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計+間接費分配 (操業時間×稼働率)の合計 = ((140+100+18.4)×4+485)×10,000 (2,100×0.8)×4 = 2,260 円/時間

ロボット導入前 1,670円/時間
ロボット導入後 2,260円/時間
間接費は変わらないため、差は1.4倍になりました。

ロボット導入の製造費用は244円

ロボット導入により無人加工となるため加工費は設備の費用のみとなります。

A社マシニングセンタ
A1製品の例
段取費用 27円

加工費用 = アワーレート(設備) × 加工時間 = 2,260 × 0.1 = 226 円

製造費用 = 段取費用 + 加工費用 = 27 + 226 = 253 円

従って
有人加工 571円
2台持ち 375円
ロボット導入 253円
無人加工 194円

ロボットを導入して無人加工にすれば、高いコストダウン効果があります。
またロボットの場合、夜間無人で生産することもできます。

4.夜間無人加工の設備

夜間無人加工を行えば、製造費用は大幅に低くなります。
以下に具体的な数値で説明します。

完成品の取り出しと材料の投入まで自動化

製品の取り出しと材料の投入も自動で行う設備もあります。
例えば、ローダー(ロボット)やバーフィーダー付きNC旋盤です。

多数のワークをセットし夜間無人加工

またワイヤーカット放電加工機やパレットチェンジャー付きマシニングセンタは、ワークの着脱は人が行いますが、多数のワークをセットできるため、長時間無人で加工することができます。そこで昼間作業者が段取やワークの着脱を行い、夜間は無人で加工します。

この場合、図のように作業者が昼間2台の設備を担当して段取とワークの着脱を行い、夜間無人で加工します。
従って昼間は加工中は2台持ち、夜間は無人加工です。

図 夜間無人加工
図 夜間無人加工

夜間無人加工 ワイヤーカット放電加工機

A社 ワイヤーカット放電加工機の現場
ワイヤーカット放電加工機4台

図 夜間無人加工の人と設備
図 夜間無人加工の人と設備
実際の償却費 160万円

4台とも
購入金額2,400万円
本当の耐用年数15年

【計算】

実際の償却費 = 購入金額 本当の耐用年数 = 2,400 15 = 160 万円

ランニングコスト57.6万円
年間操業時間6,800時間

作業者2名
1名年間労務費400万円 1名年間労務費550万円
年間労務費平均475万円
就業時間2,100時間
稼働率0.8

図 夜間無人加工の原価
図 夜間無人加工の原価
作業者は「50%が段取、50%は生産中の間接作業」

50%の間接作業では、作業者の費用は設備の間接費用
つまり作業者の作業時間は、1,050時間が段取、1,050時間が加工中の間接作業です。

間接費は段取は人と設備、加工は設備のみに分配されます。この間接費の分配計算は複雑なため、利益まっくすで計算しました。その結果、アワーレートは

段取

アワーレート間(人) 3,560円/時間
アワーレート間(設備) 1,130円/時間

加工

アワーレート間(設備) 2,090円/時間

ワイヤーカット製品のA2製品の製造費用

A2製品
段取時間0.5時間
加工時間0.1時間
ロット100個

製造費用233円

【計算】

段取費用(人) = アワーレート(人)× 1回の段取時間 ロット数 = 3,560 × 0.5 100 = 17.8 ≒ 18 円

段取費用(設備) = アワーレート(設備)× 1回の段取時間 ロット数 = 1,130 × 0.5 100 = 5.7 ≒ 6 円

段取費用 = 段取費用(人) + 段取費用(設備) = 6 + 18 = 24 円

加工費用 = アワーレート(設備)加工 × 加工時間 = 2,090 × 0.1 = 209 円

製造費用 = 段取費用 + 加工費用 = 24 + 209 = 233 円

夜間無人加工により設備の操業時間が長くなりアワーレート(設備)は低くなりました。その結果、製造費用も低くなっています。

完全に無人加工でできなくても、途中まで無人で加工した場合はどうでしょうか。
これが「かけ逃げ」です。

5.「かけ逃げ」の場合の原価

「かけ逃げ」とは、終業間際にワークをセットし、就業後も設備は無人で加工を続け、加工が終了したら設備を停止したままにするものです。
終業後は設備が無人で加工するため、部分的に無人加工ができます。

図 かけ逃げ
図 かけ逃げ

日常、かけ逃げ出来る場合とできない場合があれば、かけ逃げによる原価を見込むのは危険なので、かけ逃げはできないという前提で原価を計算します。
かけ逃げが日常的に行われている場合、その分設備の操業時間を長くしてアワーレート(設備)を計算します。

例えば、A社 マシニングセンタの現場で、毎日かけ逃げを行うため終業後平均3時間稼働する場合

アワーレート(設備) 1,230円/時間

かけ逃げによる稼働時間の延長は735時間

【計算】
年間稼働日 245日
かけ逃げ時間合計 = 245 × 3 = 735 時間
設備の操業時間 = 2,100 + 735 = 2,835 時間

アワーレート間(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計+間接費分配 (操業時間×稼働率)の合計 = ((140+18.4)×4+485)×10,000 (2,835×0.8)×4 = 1,233 ≒ 1,230 円/時間

かけ逃げしない場合 1,670円/時間
かけ逃げした場合 1,230円/時間 (▲440円/時間)

アワーレート(設備)が440円/時間低くなったことでその分原価も下がります。

6.ライン生産の原価

ライン生産とセル生産、設備の台数が同じであれば、原価は同じです。
以下に具体的な数値で説明します。

複数の設備が連結されてラインになっている場合、原価はどのように計算するのでしょうか。

図 ライン生産
図 ライン生産

ラインのアワーレート

ラインの場合、複数の設備を1台とみなしてアワーレートを計算します。
図のように4台のマシニングセンタを連結した場合

マシニングセンタ1台はこれまで同様
購入金額2,100万円
本当の耐用年数15年
ランニングコスト18.4万円
年間操業時間2,100時間
稼働率0.8

4台連結した場合

購入金額 = 2,100 × 4 = 8,400 万円

実際の償却費 = 購入金額 本当の耐用年数 = 8,400 15 = 560 万円

ランニングコスト=18.4×4=73.6万円

アワーレート間(設備) 6,660円/時間

【計算】

直接費によるアワーレート(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計 (操業時間×稼働率)の合計 = (560+73.6)×10,000 (2,100×0.8)×4 = 3,771 ≒ 3,770 円/時間

間接費485万円

アワーレート間(設備) = (実際の償却費 + ランニングコスト)の合計+間接費分配 (操業時間 × 稼働率)の合計 = (560+13.6+485)×10,000 2,100×0.8 = 6,658 ≒ 6,660 円/時間

製造費用 1,043円

量産ラインのため段取はないものとします
作業者1名がこのラインを担当
作業者のアワーレート(人) 3,770円/時間
加工時間 0.4時間
これを4台に工程分割し、1台 0.1時間 (サイクルタイム)

【計算】

人の費用 = アワーレート(人) × 製造時間 = 3,770 × 0.1 = 377円

設備の費用 = アワーレート(設備) × 製造時間 = 6,660 × 0.1 = 666円

製造費用 = 製造費用(人) + 製造費用(設備) = 377 + 666 = 1,043 円

セル生産の場合

4台の設備がひとつの製品の全行程を生産するセル生産の場合

図 セル生産
図 セル生産
アワーレート(設備) 1,670円/時間

1個の製造時間0.4時間
作業者1名が4台を担当するため4台持ち

【計算】
1台のアワーレート(設備)

直接費によるアワーレート(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計 (操業時間×稼働率)の合計 = 140+18.4×10,000 2,100×0.8 = 943 ≒ 940 円/時間

間接費は4台で485万円、1台121万円

アワーレート間(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計+間接費分配 (操業時間×稼働率)の合計 = (140+18.4+121)×10,000 2,100×0.8 = 1,669 ≒ 1,670 円/時間

製造費用 1,045円

製造費用(人) = アワーレート(人) × 1/4 × 製造時間 = 3,770 × 1/4 × 0.4 = 377 円

製造費用(設備) = アワーレート(設備) × 製造時間 = 1,670 × 0.4 = 668 円

製造費用 = 製造費用(人) + 製造費用(設備) = 377 + 668 = 1,045 円

ライン生産は1,043 円、セル生産は1,045円、この差は計算誤差のため、実際には同じ原価でした。

7. 人が主体の現場

手動旋盤や手動フライス盤など汎用機が主体の現場では、設備の担当が明確でなく、製品によってどの設備を使用するのか決まっていない場合があります。
例えば1品ものの金型部品を製造する現場などです。
こういった現場では、部品ごとの工程や設備は図面を見ながら、作業者がその都度選択します。

図 人が主体の現場
図 人が主体の現場

設備は管理できない、人の間接費とする

こういった現場は、設備の稼働時間が少なく、設備も長く使えます。従って実際の償却費は低くなります。そこで設備は人の付属物と考え、設備の費用は人の費用に間接費として入れます。

A社 汎用機の現場の設備

汎用旋盤2台
汎用フライス盤2台
ボール盤2台

設備の年間費用合計76万円

汎用旋盤
購入金額420万円
本当の耐用年数30年

実際の償却費 = 購入金額 本当の耐用年数 = 420 30 = 14 万円

汎用フライス盤
購入金額600万円
本当の耐用年数30年

実際の償却費 = 購入金額 本当の耐用年数 = 600 30 = 20 万円

ボール盤
購入金額120万円
本当の耐用年数30年

実際の償却費 = 購入金額 本当の耐用年数 = 120 30 = 4 万円

ランニングコストは電気代のみですが、金額が低いため無視します。

設備の費用合計 = 14 × 2 + 20 × 2 + 4 × 2 = 76 万円

これを人の費用に追加します。

アワーレート間(人) 3,890円/時間

【計算】

アワーレート間(人) = (人の年間費用合計+設備費用+間接費分配 (就業時間×稼働率)の合計 = (2,050+76+485)×10,000 2,100×0.8×4 = 3,885 ≒ 3,890 円/時間

設備の費用を入れない場合 3,770円/時間
設備の費用を入れることで120円/時間増加しました。

このように設備の費用が人の費用に比べて低ければ、原価の大半が人の費用です。その場合、設備の費用は人の間接費としてアワーレート(人)を計算します。これは溶接や仕上げ作業の現場などにも応用できます。

8. 製品によって人と設備の組み合わせが変わる場合

ここまで説明した方法は、現場に人と設備の配置が決まっていて、各現場の人と設備のアワーレートから原価を計算しました。
中には現場の人と設備の組み合わせが決まってなく、製品に合わせて組合せる場合があります。
あるいは生産量に応じて現場に投入する人数を変える場合です。

この場合、人と設備を別々の現場として設定します。これは使い易い方法ですが問題もあります。
以下に具体的な数値で説明します。

図 製品によって人と設備の組み合わせが変わる場合1
図 製品によって人と設備の組み合わせが変わる場合1
図 製品によって人と設備の組み合わせが変わる場合2
図 製品によって人と設備の組み合わせが変わる場合2

人と設備のアワーレートを別々に計算する

こういった場合、現場の人と設備の組み合わせが固定できないため、アワーレート計算の条件が頻繁に変わります。
その場合、図のように人と設備を別々の現場として、それぞれのアワーレートを計算します。製品によって人と設備を組合せて原価を計算します。

人と設備の組み合わせの計算例

A社の機械加工(マシニングセンタ、NC旋盤、複合加工機)の現場を人と設備を別の現場として計算します。

現場の構成

現場1 (設備) マシニングセンタ4台
現場2 (設備) NC旋盤 3台
現場3 (設備) 複合加工機 1台
現場4 作業者 8名

年間操業時間2,200時間
稼働率0.8
どの現場の設備も同じとします

マシニングセンタ アワーレート間(設備) 1,670円/時間

マシニングセンタ 4台
実際の償却費 140万円
ランニングコスト18.4万円

【計算】

直接費によるアワーレート(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計 (操業時間×稼働率)の合計 = (140+18.4)×4×10,000 (2,100×0.8)×4 = 943 ≒ 940 円/時間

間接費分配485万円

アワーレート間(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計+間接費分配 (操業時間×稼働率)の合計 = ((140+18.4)×4+485)×10,000 (2,100×0.8)×4 = 1,665 ≒ 1,670 円/時間

NC旋盤 アワーレート間(設備) 1,460円/時間

NC旋盤3台
実際の償却費100万円
ランニングコスト(電気代)23.2万円

【計算】

直接費によるアワーレート(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計 (操業時間×稼働率)の合計 = (100+23.2)×3×10,000 (2,100×0.8)×3 = 733 ≒ 730 円/時間

間接費分配365万円

アワーレート間(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計+間接費分配 (操業時間×稼働率)の合計 = ((100+23.2)×3+365)×10,000 (2,100×0.8)×3 = 1,458 ≒ 1,460 円/時間

複合加工機 アワーレート間(設備) 1,700円/時間

複合加工機1台
実際の償却費140万円
ランニングコスト(電気代)23.2万円

【計算】

直接費によるアワーレート(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計 (操業時間×稼働率)の合計 = 140+23.2×10,000 2,100×0.8 = 971 ≒ 970 円/時間

間接費分配122万円

アワーレート間(設備) = (実際の償却費+ランニングコスト)の合計+間接費分配 (操業時間×稼働率)の合計 = (140+23.2+122)×10,000 2,100×0.8 = 1,698 ≒ 1,700 円/時間

作業者のアワーレート

現場4 作業者 8名
各社員の年間人件費
若手社員4名 4009万円
中堅社員2名  550万円
ベテラン2名 700万円

人件費合計 4,100万円

人件費合計 = 400 × 4 + 550 × 2 + 700 × 2 = 4,100 万円

アワーレート間(人) 3,770円/時間

8人とも
年間就業時間 2,100時間
稼働率 0.8

【計算】

直接費のアワーレート(人) = 人の年間費用合計 (就業時間×稼働率)の合計 = 4,100×10,000 2,100×0.8×8 = 3,051 ≒ 3,050 円/時間

間接費分配 970万円

アワーレート間(人) = (人の年間費用合計+間接費分配 (就業時間×稼働率)の合計 = (4,100+970)×10,000 2,100×0.8×8 = 3,772 ≒ 3,770 円/時間

人と設備の組み合わせの原価

A1製品 マシニングセンタ1台持ち

マシニングセンタ アワーレート間(設備)  1,670円/時間
作業者 アワーレート間(人) 3,770円/時間

A1製品
ロット100個
段取時間0.5時間
加工時間0.1時間

製造費用は571円でした。

【計算】

製造時間 = 段取時間 ロット数 + 加工時間 = 0.5 100 + 0.1 = 0.105 時間

製造費用(人) = アワーレート(人) × 製造時間 = 3,770 × 0.105 = 396 円

製造費用(設備) = アワーレート(設備) × 製造時間 = 1,670 × 0.105 = 175 円

製造費用 = 製造費用(人) + 製造費用(設備) = 396 + 175 = 571 円

同じ製品を複合加工機1台持ち

複合加工機 アワーレート間(設備)  1,700円/時間
作業者 アワーレート間(人) 3,770円/時間

製造費用は575円でした。

【計算】

製造費用(人) = アワーレート(人) × 製造時間 = 3,770 × 0.105 = 396 円

製造費用(設備) = アワーレート(設備) × 製造時間 = 1,700 × 0.105 = 179 円

製造費用 = 製造費用(人) + 製造費用(設備) = 396 + 179 = 575 円

使い易いが問題も…

実は会計の本の原価計算はこの方法です。
人と設備、それぞれのアワーレートを計算し、それぞれの費用を求めます。
この考え方はわかりやすく、現場の人たちには使い易い計算方法です。

ただし人と設備の組み合わせを固定すれば、年間でその現場が何時間稼働すれば、どれだけの製造費用が生じたか計算できます。1年間で生産した製品の製造費用の合計と、1年間の現場のアワーレートかける稼働時間を比較すれば、現場が適正に生産していたのか、生産していないロスがどのくらい生じたのか分かります。

しかしここで述べた人と設備の現場を分けてしまうと、製品によっては1台持ち、2台持ちがあったり、同じ製品でも設備が違ったりするため、この比較ができなくなります。

従って設備と人の組み合わせがある程度決まっていて、それ以外の組み合わせをイレギュラーにできれば、先に述べたような人と設備で現場を構成する方が確実です。

一方設備と人の組み合わせが頻繁に変わるようであれば、人と設備を別々の現場とします。ただし、この場合も間接費は人と設備それぞれに分配するため、間接費が漏れることはありません。

まとめ

  1. 有人加工と無人加工:人が常時関わるか、段取り後設備が自動加工するかで製造費用が大きく変わる。
  2. 多台持ち:一人の作業者が複数の設備を扱うと、人件費が分散しコストダウンにつながる。
  3. ロボットの導入:設備の費用は増加するが、無人化による人件費削減でコストダウンが可能になる。
  4. 夜間無人加工:昼間に段取りし、夜間に自動加工することで設備の稼働率が上がり、費用が低下する。
  5. かけ逃げ:終業後も設備を稼働させると設備の操業時間が増加し、時間単価が下がる。
  6. ライン生産とセル生産:複数の設備を連携させるライン化でも、単体設備のセル生産でも同費用。
  7. 人が主体の現場:設備費用が低い現場では、設備費を人件費の間接費に含めて計算する。
  8. 人と設備を分けて計算:製品によって組み合わせが頻繁に変わる場合、人と設備を独立させて費用を計算する。

実際は様々な工程があります。では複数の工程で生産される製品の原価はどうやって計算されるのでしょうか。
これについては 工程別原価計算とは?製品ごとに原価を積み上げる方法 を参照願います。

次に読む

人と設備の組合せが分かったら、次は製品ごとに原価をどう積み上げるかを確認します。

工程別原価計算とは?製品ごとに原価を積み上げる方法

工程ごとに人と設備の原価を積み上げることで、製品ごとの原価が見えるようになります。
工程別原価計算の考え方を理解することで、見積の精度が大きく変わります。

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