イプシロン打ち上げの快挙、日本製品の高品質は、マネジメントシステムの成果?

9月14日(土)14時、日本の独自技術である固体燃料ロケット

イプシロンの打ち上げに成功し、多くの日本人がこの快挙を喜びました。

イプシロン打ち上げ

世界最高の固体燃料ロケット イプシロン

 

実は日本はこの固体燃料ロケットの分野では、世界のトップレベルを行っています。

このイプシロンロケットの詳細については、以下のリンクが参考になります。

イプシロンロケットが拓く新しい世界

 

このイプシロン、打ち上げ費用を削減するために新たに

「モバイル管制」システムを開発し、

なんと数人とノートパソコン1台で打ち上げができてしまいます。

その結果、従来のM-5ロケットでは42日かかっていた

打ち上げ準備の期間がわずか7日間に短縮され、

打ち上げ費用は75億円から38億円と1/2にする事ができました。

この快挙は、リーダー森田教授の将来を見渡した的確なビジョンと、

それを実現する関係者の地道な努力の結果ではないかと思います。

 

森田教授へのインタビューは以下のリンクにあり、

ロケット技術のすごさと大変さがとてもよくわかります。

未来を切り開く次世代ロケットイプシロン

 

一方で、ビジネスの世界では海外で新しい経営手法が広まると、

書籍などで日本にも紹介され、

これこそが企業業績を大きく改善する画期的な手法として紹介されてきました。

 

これらの経営手法について、以前も引用した

「ヤバい経営学」フリーク・ヴァーミューレン著 東洋経済

では、その効果について、以下のように述べています。

 

…具体的には、目標管理、ゼロベース予算、トレーニンググループ(Tグルーブ)、

Y理論、Z理論、多角化、マトリックス組織、社員参加型経営、歩き回る経営、

多能工化、QCサークル、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)、

TQM(総合的品質管理)、チーム経営、シックスシグマ、ISO9000といったものだ。

 

カリフォルニア大学バークレイ校のバリー・ストー教授とリサ・エブスタイン教授は、

こういう経営手法を導入した企業のその後を、綿密な統計分析で調査した。

二人はフォーチュン500社のうち、100社のデータを集めた。

具体的には、導入している経営手法(TQMなど)、組織構造、

企業の評判(『フォーチュン誌』の「最も尊敬される企業」ランキング)、

企業業績、そして経営者の報酬といったものだ。

 

そして、二人はこんな発見をした。

流行りの経営手法を導入した会社は、

導入していない会社と比べて業績が良いわけではない。

経営手法と企業の業績に相関関係がもしある場合でも、

それはマイナスの関係だった。

 

つまり、流行りの経営手法は何の役にも立たないのだ。

引用ここまで

 

著者が引用している経営手法の中には、BPRやシックスシグマのように

十数年前に日本に紹介され、以前私も勉強したものもありました。

しかし当時シックスシグマを導入して大きな成果を上げて、

様々な書籍で紹介されたモトローラは、携帯電話のデジタル化の

波に乗り遅れ、当時の勢いはなくなってしまいました。

 

これに対して日本の企業の多くは、

このような流行りの経営手法の導入にお金をかけることなく、

地道に設備投資や製造工程の改善に取組んできました。

 

唯一の例外を除いて

その例外とは、ISO9000です。

ISO9000は新しい品質マネジメントシステムとして

今から20年ほど前に日本に急速に導入されました。

まず日本の大手企業が導入し、それに伴い、その取引先も導入しました。

その結果、日本製品の品質は向上したのでしょうか。

 

以下、再び同書からの引用です。

ペンシルバニア大学のマリー・ベンナー教授とハーバード・ビジネススクールの

マイク・トシュマン教授は、ISO9000導入企業のイノベーションに何が起きているか調査した。

二人は、1980~1999年の写真産業98社と塗料産業17社についてデータを集めた。

そこから、対象企業のすべての特許と関連文書を調べた。

そして、イノベーションが企業にとって既存分野(現状の延長線上や派生研究)なのか、

新規分野(成長のための全く新しい研究)なのか分類した。

すると二人は明確なパターンを発見した。

企業がISO9000を導入すると、既存分野の発明が急激に増えていた。

その反面、新しい革新的なイノベーションが犠牲になっていた。

ISO9000のせいで「同じような」特許ばかり増えると、

全く新しい技術や製品の発明が出てこなくなるのだ。

なぜこういうことが起こるのだろう。

それは、ISO9000は、会社が「物事を進める最適な方法」からの逸脱を最小限にするからだ。

引用ここまで

 

ISO9000は、業務の中で品質に影響する様々なポイントで

チェックや検証を行い、その記録を残すことを求めます。

その結果をフィードバックし、改善することで、品質が向上する仕組みを構築します。

これ自体はとても良いことですが、こういった管理システムを導入することで、

開発におけるイノベーションを阻害することが、上記の調査から明らかになっています。

何より、中小企業にとってこれらの管理システムの運用の負担が

社員に大きくかかる点が最大の問題です。

 

私自身、最近中小企業の方からISO9000の導入について相談されることがあります。

相談された企業に、ISO9000のメリットとデメリット、そして費用を

正直に伝えると、多くの企業が「認証取得は必要ない」と判断されます。

それは、中小企業において品質はシステムに頼るより、

各自が地道な努力をする事の方が重要であると認識しているからではないかと思います。

 

品質管理を日本にもたらしたデミング氏についての記事は、こちらから参照いただけます。

 

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