原価計算と見積の基礎 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 数人の会社から使える原価計算システム「利益まっくす」 Wed, 28 Feb 2024 06:11:54 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.5.3 https://ilink-corp.co.jp/wpst/wp-content/uploads/2021/04/riekimax_logo.png 原価計算と見積の基礎 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 32 32 【原価計算と見積の基礎】6.設備のアワーレートの計算方法(2) https://ilink-corp.co.jp/9564.html https://ilink-corp.co.jp/9564.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:20:18 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9564 No related posts. ]]>  
【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)ではアワーレート(設備)の計算に必要な減価償却費について説明しました。

ここではアワーレート(設備)の具体的な計算について説明します。
 

アワーレート(設備)の計算

 

アワーレート(設備)の計算に使用する設備の年間費用は、実際の償却費とランニングコストです。アワーレート(設備)の計算は以下の式です。

複数の設備がある場合、複数の設備を平均した現場の平均アワーレート(設備)を計算します。

 

A社 マシニングセンタ1(小型)の現場の場合

 

A社のマシニングセンタ1(小型)の現場の設備を(図1)に示します。

図1 A社マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート(設備)

計算を簡単にするため4台とも

購入価格 : 2,100万円
ランニングコスト : 18.4万円
年間操業時間 : 2,200時間
稼働率 : 0.8
実際の耐用年数 : 15年

とします。実際の償却費は

現場の平均アワーレート(設備)は

マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート(設備)は900円/時間でした。

4台の設備は導入後、それぞれ4年目、8年目、11年目、12年目でした。

決算書の減価償却費は

4年目 : 215万円
8年目 : 138万円
11年目 : 0円
12年目 : 0円

従って減価償却費から計算したアワーレート(設備)は

減価償却費から計算したマシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート(設備)は600円/時間でした。
 

24時間稼働した場合

 

人は24時間働けませんが、設備は24時間稼働できます。24時間稼働すれば稼働時間が長くなり、アワーレート(設備)は低くなります。

A社のマシニングセンタ1(小型)を24時間稼働させた結果、

年間操業時間 : 2,200時間 → 6,000時間

年間の電気代 : 18.4万円 → 50.2万円

年間の電気代は50.2万円に増加しました。アワーレート(設備)は

電気代は増えましたが稼働時間が大幅に増えたため、アワーレート(設備)は

昼勤のみ: 900円/時間

24時間 : 400円/時間

昼勤のみの44%になりました。高価な設備はアワーレート(設備)が高くなりますが、24時間動かせばアワーレート(設備)を低く抑えられます。
 

年に半分しか稼働しない場合

 

逆に設備を動かさなければアワーレート(設備)は上昇します。

マシニングセンタ1(小型)の現場で、購入11年目と12年目の設備が半分しか稼働しない場合(図2、図3)

図2 年に半分しか稼働していない設備

図3 2台は年に半分しか稼働しない場合

アワーレート(設備)は以下のようになります。

アワーレート(設備)は1,200円/時間、約1.3倍になりました。

将来更新する設備は使わなくても費用が発生しています。そのため使わない時間が長ければアワーレート(設備)は高くなります。
 

高い設備と安い設備がある場合

 

価格の高い設備と低い設備は、アワーレート(設備)が違うのでしょうか。

A社のマシニングセンタ1(小型)の現場で、高性能な設備(例えば5軸マシニングセンタ)を1台導入した場合を考えます。この設備は、複雑な加工ができる反面、価格が4,200万円と高価でした。

図4に示すマシニングセンタ1(小型)の現場で購入4年目の設備が4,200万円の場合

図4 1台が高価な設備の場合



4,200万円のマシニングセンタは

実際の償却費 : 280万円 (2倍)

マシニングセンタ単体の
アワーレート(設備) : 1,700円/時間

それまでの2倍近くになります。そのため現場の平均アワーレート(設備) は、1,100円/時間 になり、200円/時間上昇しました。その分見積も高くなります。

高価な設備は価格に見合った付加価値を生むことができれば問題ありません。

しかし、従来の設備と同じ付加価値しか生まなければコストアップになってしまいます。
 

価格の高い設備は原価が高くなる?

 

4,200万円のマシニングセンタと2,100万円のマシニングセンタでは、アワーレート(設備)は異なります。

つまり価格の高い設備で製造すれば原価も高くなります。

そのため単価の低い加工は、安い設備を使うように指示する管理者もいます。では安い製品は高い設備を使うべきではないのでしょうか。

アワーレート(設備)の主な違いは、実際の償却費です。実際の償却費はすでに過去に払ったお金です。例え高い設備を使っても新たにお金が出ていくわけではありません。高い設備も使わなければお金は稼ぎません。

つまり設備が高くても、どんな仕事でも入れて設備を動かした方が利益は増えるのです。

そこで設備の価格が違っても同じ能力であれば同じ現場と考えます。そしてその現場の平均アワーレート(設備)を使用します。そうすればどの設備を使用しても原価は同じです。
 

設備を増やしたらどうなるのか?

 

設備を増やせば、その分、減価償却費・実際の償却費は増えます。それに応じて受注を増やさなければお金は増えません。

つまり設備を増やすということは、工場全体の費用を増やすことです。その分受注を増やして設備の稼働率を維持しなければなりません。設備が増えても受注が増えなければ、設備の稼働率が下がり原価が上昇します。

一方、測定器のように直接生産しない設備を増やせば、アワーレート(設備)が上昇します。そして工場のコスト競争力は弱くなります。それでも必要であれば測定機は入れなければなりません。その分現場は高コストになっていくので、より付加価値の高い受注を増やさなければなりません。

間接的に使用する設備を増やすとアワーレート(設備)はどうなる?

現場にはボール盤やグラインダーのように日常の生産には使用せず、部品の修正や治具の作成に使用する設備もあります。(図5)

常時使用されて付加価値を生む設備に対して、これらは生産をサポートする設備です。本コラムはこれを「補助的に使用する設備」と呼びます。

図5 補助的に使われる設備

補助的に使用する設備は、使用頻度が低く更新期間も長いため、その費用はアワーレート(設備)には入れません。ただし、高額でしかも短期間に更新する設備の場合、その設備の実際の償却費を設備の年間費用に加えて、アワーレート(設備)を計算します。

例えば、図6のマシニングセンタ1(小型)の現場で、検査のため500万円のデジタルマイクロスコープを導入しました。デジタルマイクロスコープの実際の耐用年数は10年でした。このデジタルマイクロスコープはマシニングセンタの現場のみで使用します。

そこでデジタルマイクロスコープの実際の償却費50万円/年を、マシニングセンタ1(小型)の現場の間接製造費用とします。

図6 デジタルマイクロスコープを導入した場合

間接設備を含む平均アワーレート(設備)の計算は以下の式です。
(設備の年間費用合計は、実際の償却費+ランニングコストの合計)

アワーレート(設備) : 900円/時間 → 970円/時間

アワーレート(設備)は70円/時間増加しました。
 

どこまで細かく計算するのか? 設備のランニングコスト

 
設備のランニングコストには図7のようなものがあります。

図7 ランニングコストの例

その内訳は

  • エネルギーコスト
    電気、ガス、水道など水道光熱費
  • 消耗品
    オイル、クーラントなど液体
    二酸化炭素、アルゴン、窒素ガスなど気体
    ウェス、刃物、工具など固体
  • 修理・保守費用
    修理代、保守契約などサービス費用

これらの費用はどの設備でどれだけ発生したのか正確にはわかりません。そこで間接製造費用として、他の工場の経費と共に各現場に分配します。

ただし、設備によっては特定の費用がとても高いことがあります。その場合、その費用はその設備の直接製造費用としてアワーレート(設備)の計算に入れます。例えば

  • ヒーターがあるため消費電力がとても大きい設備。あるいは射出成型機など設備の大きさで消費電力が変わりアワーレート(設備)にも影響する場合。
  • 窒素、二酸化炭素やアルゴンガスなどのガスを多く消費する設備。
  • 食品製造設備のように終業後洗浄のため多量の水を使用する設備。
  • 刃物やオイルなどの特定の消耗品の使用量が多い設備。
  • 多額の修理費が発生する設備。
  • 多額の修理費に備えて毎年保険をかけている設備。又は高額な保守契約をメーカーと締結している設備。

これらの費用は、その設備、あるいは現場固有の費用として、アワーレート(設備)の計算に入れます。

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【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法ではアワーレート(人)の計算について説明しました。

ここではアワーレート(設備)の計算について説明します。
 

アワーレート(設備)の計算式

 
第3章で説明したアワーレート(人)の計算式は以下の式でした。

アワーレート(設備)も同様に設備の年間費用を「年間操業時間〈注1〉×稼働率」で割って計算します。


〈注1〉アワーレート(人)の場合、就業時間でしたが、設備を「就業」とは言わないので操業時間としました。意味は同じです。

設備の年間費用は、設備の購入費用と年間のランニングコストです。
この設備の購入費用は、減価償却費として計上されています。

この減価償却費はどのような費用でしょうか。
 

減価償却費とは?

 
設備を購入した場合、その費用は耐用年数で分割して減価償却費として毎年計上されます。図1では、2,100万円の設備を購入し、耐用年数は10年でした。

この場合、毎年210万円が費用として計上されます。(定額法の場合)

図1 減価償却費の例

計上される費用とお金の動き

最初の年は設備を買ったため、2,100万円お金が出ていきました。

しかし費用として計上されるのは、減価償却費210万円のみです。

従って会社のお金は、その差額1,890万円分マイナスします。(キャッシュフローがマイナス1,890万円) これを図2に示します。

図2 減価償却費とお金の動き

2年目以降はお金がプラス

2年目以降は、もうお金は出ていきません。しかし毎年減価償却費210万円が計上されます。支出がないのに210万円費用が計上されるため、お金は210万円増えます。(キャッシュフローがプラス210万円)

このように設備投資は、決算書の費用と実際のお金の動きが異なります。

どうしてこのようなことをするのでしょうか。
 

減価償却の考え方

 
これは会社の起源となった大航海時代を考えるとわかりやすいです。

胡椒などの香辛料はヨーロッパでは採れません。そのため、かつては東南アジアや中国からシルクロードを経由して運ばれ、極めて高価なものでした。

しかし16世紀に入るとヨーロッパから東南アジアへの貿易航路が開かれました。

図3 大航海時代の帆船、サンタマリア号(復元)(Wikipediaより)

当時の貿易航海は、多額のお金が必要な一大事業でした。そのため複数の資産家がお金を出して会社をつくって事業を行いました。

当初は1回の航海が終わると、会社を清算して出資者にお金を分配しました。しかし次も航海は行います。毎回会社を清算していては非効率です。

そこで一度航海が終わっても会社を清算せず、出資金は株式として残し事業を継続しました。これが株式会社の始まりです。
 

船の費用

 
ここで船の費用を考えてみます。

船は最初に購入しますが、その後何回も航海に使えます。船の費用をすべて1年目の費用にすると、1年目の航海は大きな赤字になります。

図4では、1年目は経費1億円で売上は4億円でした。しかし船の費用10億円あるため、収支はマイナス7億円でした。

対して2年目以降は船の費用はゼロです。そのため収支はプラス3億円でした。

図4 船の費用と利益

船は10回の航海に使えるとします。そこで船の費用を10回の航海に分けて費用とした方が利益を適切に計算できます。これを図5に示します。

図5 船の費用を均等にした場合

図5では、船の費用は毎年1億円です。収支は1年目からプラス2億円になります。
 

減価償却とは資産の価値が減少すること

 

これは航海に1度出る度に船が痛み、1億円ずつ価値が減っていくことです。

この事業を続けるには、毎年1億円ずつ10年間お金を貯めて、11年目には10億円で新たに船を買わなければなりません。これが減価償却費の意味するところです。〈注2〉

一方、減価償却費があると、毎期の利益と現金の動きが合わなくなります。利益が出ていても会社にお金があるとは限らないのです。


〈注2〉実際は大航海時代は、まだ固定資産や減価償却費の概念はありませんでした。
減価償却費が普及したのは、19世紀イギリスで蒸気機関車が発明され、鉄道が普及したためでした。鉄道は多額の初期投資が必要なため、初期投資した年は多額の赤字が発生します。それでは株主に利益を分配できないことから減価償却という概念が生まれました。
 ただ固定資産の損耗という考え方は、船で考えるとわかりやすいので、貿易航海を例に説明しました。

 

財務会計の減価償却は税法に従う

 
従って減価償却の金額によって利益は変わります。

毎期の減価償却を企業が自由に決めることができれば、企業が自由に利益を増やしたり減らしたりできます。

これは税務署には都合が悪いため、減価償却については以下の2点が税法で決められています。
 

耐用年数

 

耐用年数(法定耐用年数)は、設備の種類に応じて税法で決められています。表1に国税庁の定める法定耐用年数の一部を示します。

表1 法定耐用年数の例

設備の種類 細目 耐用年数(年)
プラスチック製品製造業用設備 8
金属製品製造業用設備 金属被覆及び彫刻業
又は打はく及び金属製
ネームプレート
製造業用設備
6
その他の設備 10
はん用機械器具製造業用設備 12
生産用機械器具製造業用設備 金属加工機械製造設備 9
その他の設備 12

この法定耐用年数は、設備の区分が粗く、使用条件の違いも考慮していません。

実際は同じ設備でも、過酷な使い方をする場合とそうでない場合、1日24時間稼働と昼勤のみの場合で劣化は大きく違います。そのため法定耐用年数まで持たない設備もあれば、法定耐用年数よりずっと長く使える設備もあります。

設備でも金額が低いものは1年で償却(一括償却)されます。また設備以外に建物やソフトウェアも減価償却します。しかし土地は劣化しないので減価償却をしません。
 

定率法と定額法

 

減価償却の方法は、図6に示すように、毎年一定額を償却する定額法と、毎年一定率を償却する定率法があります。

どちらを採用するかは企業が前もって選択します。定率法を選択すればすべて定率法、定額法を選択すればすべて定額法です。(ただし建物はいずれの場合も定額法です。)

図6定率法と定額法

図6の場合

設備 : 2,100万円
法定耐用年数 : 10年
定額法 : 毎年210万円
定率法 : 1年目420万円、2年目336万円と年々減少

設備の劣化という点で考えれば定額法が適切です(海外は定額法が一般的)。しかし利益が多く出ている企業は、できるだけ早く減価償却をして利益を減らし、支払う税金を少なくしたいと考えます。

また毎年設備投資を行うと、定額法の場合、年々減価償却費が増えて利益を圧迫します。
定率法ならば減価償却費は2年目以降減少するため、こういったことが起きにくくなります。

そのため定率法を選択する中小企業が多いです。

一方大企業と違い、中小企業は減価償却をしなくても違法でありません。利益が出なければ無理に減価償却をしなくてもよいのです。ただし減価償却をしないで利益を増やして決算をよく見せることは、金融機関に対してはマイナスです。
 

アワーレート(設備)に減価償却費を使用する問題

 
アワーレート(設備)の計算に、この減価償却費を使用する場合、以下の問題があります。

  1. 定率法の場合、減価償却費が年々減少する
  2. 図4-6に示すように定率法の減価償却費は年々減少します。そしてアワーレート(設備)も年々低くなります。それでも利益は出ます。

  3. 法定耐用年数を過ぎればゼロ
  4. 法定耐用年数を過ぎて設備を使用できれば減価償却費はゼロです。アワーレート(設備)はさらに低くなります。

  5. 設備の更新を考えると
  6. 設備を更新すると新たに減価償却が発生し、アワーレート(設備)が高くなります。

減価償却が終わった設備が、その後は未来永劫使えるならアワーレート(設備)が低くても問題ありません。

例えば、現場で補助的に使っているボール盤やグラインダーなどは壊れない限り何十年も使用できるでしょう。

しかし、日常の生産に使用している設備は徐々に劣化します。そしていつか更新時期が来ます。最近の設備は制御にコンピューターや電子回路を使用するものも多く、コンピューターや電子回路は10~15年で寿命が来ます。

そしてその頃には補給部品もなくなります。 (これはメーカーによります。20年以上補給部品を供給するメーカーもあれば、10年未満でなくなるメーカーもあります。)
 
減価償却が終わった設備を更新すれば、新たに減価償却費が発生します。減価償却が終わってアワーレート(設備)を低くしていた場合、アワーレート(設備)を高くしなければ赤字になってしまいます。

しかし設備を更新したからといって、価格を上げることができるでしょうか。
 

更新を考慮した正しい設備の費用

 

こういったことを避けるためアワーレート(設備)に使用する設備の費用は、購入金額を本当の耐用年数で割った金額を使用します。これを本コラムは「実際の償却費」と呼びます。

例えば図6の設備は法定耐用年数が10年ですが、A社では、実際は15年くらい使用します。

そこで実際の償却費は

この140万円でアワーレート(設備)を計算すれば、設備を更新した後も同じアワーレート(設備)になります。

ただし、実際の償却費からアワーレート(設備)を計算した場合、問題がひとつあります。

それは、設備購入直後は実際の償却費より、決算書の減価償却費の方が高いことです。減価償却費の方が高いため、利益が低くなります。図7では、

実際の償却費 : 140万円

減価償却費(1年目) : 420万円

差額の280万円分利益がマイナスします。場合によってはこのために会社が赤字になるかもしれません。ただし、減価償却費420万円は、実際は現金の支出がない費用です。従って会社に残るお金はどちらも変わりません。

図7 減価償却費と実際の償却費

 

耐用年数に達したら更新に必要なお金がなければならない

 

この減価償却費は現金の支出のない費用です。そのため減価償却費の分だけ会社にお金が残ります。

図8に示すように毎年減価償却費でプラスしたお金を貯めていけば、設備が耐用年数に達した時、設備の購入金額分のお金が会社に残ります。

このお金で設備を更新します。

借入をして設備を導入した場合は、減価償却費でプラスになったお金で借入金を返済します。設備の更新が来れば、借入金の返済が終わり、新たな借入ができるようにします(実際は借入金の返済期間は耐用年数より短いため、返済にはもっとお金が必要です)。

図8 減価償却と内部留保

 

減価償却が進むと安く受注しても利益が出る

 

注意しなければならないのは、減価償却が進むと会社全体の製造原価が下がり、「受注金額が低くても利益が出る」ことです。

顧客から価格引き下げの要求が厳しい場合、利益が出ているので、まだ値下げできるように思えます。しかし値下げを続ければ、次の設備の更新に必要なお金が残りません。しかも多くの工場では、そういった設備は1台ではありません。

例えば、図9の例は設備が4台あり、導入から14年目が1台、12年目が2台、11年目が1台、全て減価償却が終わっています。

図9 4台の設備の更新

4台はそれぞれ

1年後 : 設備1が15年目

3年後 : 設備2、3が15年目

4年後 : 設備4が15年目

になり、順に更新時期を迎えます。

自己資金で設備を更新する場合、今年の時点で8,400万円の内部留保がなければなりません(借入で購入する場合は、新たに借入しても返済できる利益が今年の時点で必要です)。

昨今、中小企業(製造業)の廃業の原因のひとつに設備の老朽化があります。

理由は厳しい値下げ要請に応え続けた結果、利益が減少して更新に必要な内部留保が残らなかったためです。

これを避けるには中期経営計画に設備の更新時期と必要な資金を盛り込んで、計画的に内部留保を積み上げます。

この設備の償却費を使用してアワーレート(設備)はどうやって計算するのでしょうか。

具体的なアワーレート(設備)の計算は【原価計算と見積の基礎】6.設備のアワーレートの計算方法(2)で説明します。

経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法 https://ilink-corp.co.jp/9560.html https://ilink-corp.co.jp/9560.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:18:32 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9560 No related posts. ]]>  
【原価計算と見積の基礎】2.製造原価の計算方法(1)では工場で発生する必要と製造原価の構成について

【原価計算と見積の基礎】3.製造原価の計算方法(2)では間接製造費用と販管費、見積金額の計算について説明しました。

ここではアワーレート(人)の計算について説明します。
 

アワーレート(人)は稼働率を入れて計算

 
アワーレート(人)とは、1時間あたりの人の費用です。

これは時給とは違うのでしょうか?
 

アワーレート(人)の計算

 
アワーレート(人)は、人の年間費用を1年間の稼働時間(実際にお金を稼いでいる時間)で割って計算します。

1年間の稼働時間は、年間の就業時間に稼働率をかけて計算します。

従ってアワーレート(人)の計算は以下のようになります。

つまりアワーレート(人)は、稼働率の分、時給より高くなります。
 

A社 正社員Aさんのアワーレート(人)

 
A社の正社員Aさんの費用とアワーレート(人)を図1に示します。稼働率は80%とします。

図1 正社員Aさんのアワーレート

Aさんの支給額は月20.23万円〈注1〉賞与含めて15か月分で303.5万円でした。

社会保険料の会社負担分は303.5万円の16%、49万円でした。


〈注1〉本コラムはできるだけ区切りがいい数字になるように金額を決めています。そのため、現実の費用と比べると高すぎる、あるいは低すぎることがあります。

Aさんの年間費用は

年間費用=20.23×15×(1+0.16)
    =352 万円

Aさんのアワーレートは、

A社 パート社員Hさんのアワーレート(人)

 
パート社員Hさんの時給は、960円/時間、年間費用は115.2万円でした。(図2)

アワーレート(人)は、稼働率が0.8のため、Hさんのアワーレート(人)1,200円/時間でした。

図2パート社員のアワーレート(人)



正社員Aさんのアワーレート(人)   : 2,000円/時間

パート社員Hさんのアワーレート(人) : 1,200円/時間

時給960円のHさんのアワーレート(人)は、稼働率0.8で割ったため1,200円です。

なぜアワーレート(人)の計算に稼働率をかけるでしょうか?

この稼働率は何を意味するのでしょうか?
 

稼働率の意味するところ

 

稼動率の意味は、企業や書籍により様々です。本コラムは、稼働率を「就業時間に対し付加価値を生んでいる時間(稼働時間)の割合」とします。


例えば、ある作業者の1日は図3のようになっていました。

図3 ある作業者の1日

この1日は以下のように分けられます。
 

【付加価値を生んでいる時間】

  • 段取時間
  • 生産時間

 
【付加価値を生んでいない時間】

  • 朝礼
  • 移動
  • トイレのため離席
  • 資材を探す
  • 会議
  • 片付け

 

ここで付加価値を生んでいる時間に段取時間が入っているのは、本コラムは段取費用も見積に入れているからです。

多品種少量生産では、ロットの大きさが違うと製品1個当たりの段取費用が大きく変わります。そのため原価に段取費用を入れます。

大量生産で段取の頻度が少なく、段取費用が見積に入っていない場合、段取時間は付加価値を生まない時間です。

作業者が1日忙しく働いていても、このような付加価値を生まない「稼いでいない時間」があります。しかしこの時間も費用(人件費)は発生しています。

そこで就業時間に対し付加価値を生んでいる時間の割合を稼働率とします。

アワーレート(人)は、人の年間費用を就業時間に稼働率をかけたもので割って計算します。受注が少なくなり稼いでいる時間も少なくなれば、稼働率は下がります。

1日フルに生産するだけの受注がなく、空いた時間に5S活動(整理・整頓)や改善活動を行っても、それは「お金を稼いでいない時間」です。その分、アワーレート(人)は高くなっています。

稼動率は、作業者の稼働時間と就業時間を集計すれば計算できます。

実際は1年を通して行うのは大変なので、数名を一定期間調べて全体の稼働率を推定します。稼働率の値は、1日現場に入っている作業者でも80~95%ぐらいです。
 

賃金、社会保険料、派遣、請負などの費用は?

 

労務費には図4に示すように

  • 賃金
  • 賞与
  • 退職金
  • 各種手当
  • 社会保険料(法定福利費)
  • 福利厚生費
  • 雑給

があります。

図4 労務費の内訳

この労務費は、賃金、賞与、退職金、各種手当などが含まれます。

各現場の人の年間費用は、その現場に所属している人の労務費を集計します。

社会保険料は、全社員がまとめて計上され、個々の社員の金額はわからないことがあります。社会保険料の会社負担の合計はA社では約16%でした。そこで人件費の16%で概算しました。(これは業界によって異なりますので注意してください。)

派遣社員や請負の費用は労務費でなく、外注費や製造経費に入っていることもあります。
これらは原価計算では「労務費」なので、各現場の人の費用に入れ、その分、外注費や製造経費からマイナスします。
 

賃金の高い人のつくった製品の原価は高いのか?

 
正社員Aさんとパート社員Hさんのアワーレート(人)は

正社員Aさんのアワーレート(人)   : 2,000円/時間

パート社員Hさんのアワーレート(人) : 1,200時間

パート社員Hさんのアワーレート(人)は正社員Aさんの60%です。その結果、同じ製品を1時間かけて製造した時の費用は

正社員Aさんが製造   : 2,000円

パート社員Hさんが製造 : 1,200円

パート社員Hさんが製造すればAさんの60%になります。

この計算は正しいのですが、現実には全く同じ製品を、つくった人が違うために異なる原価で管理するのは困難です。

そこで正社員Aさん、パート社員Hさんも含めた、その現場全体の平均アワーレート(人)を使います。
 

A社のマシニングセンタ1(小型)の現場の平均アワーレート

 

A社のマシニングセンタ1(小型)の現場は、図5に示すようにA~Dさんまで4人の作業者(正社員)がいました。年間総支給額も352~528万円と幅がありました。

ただし就業時間と稼働率は、計算を簡単にするため同じにしました。

図5 現場の平均アワーレート(人)

マシニングセンタ1(小型)の現場の作業者の年間費用合計は

作業者の年間費用合計=352+352+440+528
          =1,672 万円

マシニングセンタ1(小型)の現場の作業者の「就業時間×稼働率」の合計は

作業者の「就業時間×稼働率」の合計=2,200×0.8×4
                 =7,040 時間

平均アワーレート(人)は以下の式で計算します。

マシニングセンタ1(小型)の現場の場合

平均アワーレート(人)は、2,380円/時間でした。この2,380円/時間であれば、誰がつくっても同じ原価になります。
 

工場全体で平均アワーレート(人)とする場合

 

工場によっては、応援のために現場同士で人が頻繁に移動し、現場の作業者を固定できないことがあります。

その場合、工場全体の平均アワーレート(人)を計算します。現場毎のアワーレート(人)の差が大きくなければ、これでも十分です。大企業でも工場のアワーレート(人)はひとつのところもあります。

A社の現場と労務費を図6に示します。ここで実稼働時間合計は、就業時間×稼働率の合計です。稼働率は全て0.8としています。

図6 直接製造部門全体の人の費用

直接製造部門の直接労務費合計 : 8,957万円

直接製造部門の間接労務費合計 : 115.2万円

直接製造部門の稼働時間合計 : 42,080時間


すべての現場の平均アワーレート(人)は2,160円/時間でした。

この2,160円/時間であれば、マシニングセンタ1(小型)、マシニングセンタ2(大型)、NC旋盤、ワイヤーカット、組立のどの現場も同じアワーレート(人)で原価を計算できます。

ではどういう時にアワーレート(人)を分ける必要があるのでしょうか。
 

必要ならば、事業分野、製品分野で分ける

 
例えば、工程や扱う製品が異なるため、アワーレート(人)を変えたい場合です。
 

例1 明らかに原価が違う

 

  • 組立は付加価値が低いため、賃金の低いパート社員主体で製造
  • 加工は付加価値が高く技術も必要なため、賃金の高い正社員が製造

この場合、組立と加工を同じ平均アワーレート(人)にすると、組立は加工の高い賃金の影響を受けてアワーレート(人)が高くなります。

見積も高くなってしまい、受注がしづらくなります。そこで組立と加工のアワーレート(人)を分けます。組立の現場のアワーレート(人)を図7に示します。

図7 組立の現場のアワーレート(人)


組立のアワーレート(人)           : 1,530円/時間

マシニングセンタ1(小型)のアワーレート(人) : 2,380円/時間

マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート(人)は、組立の現場の約1.5倍でした。
 

例2 事業が違う

 

  • 現場1は、大量生産品の製造、作業者は1日現場から離れず生産に従事
  • 現場2は、多品種少量品の製造、作業者は生産の準備や打ち合わせなど現場から離れることが多い

この場合、現場1と現場2の作業者の賃金は同等でも、稼働率が大きく違います。そこで現場1と現場2で稼働率を変えてアワーレート(人)を計算します。

一方、現場には設備を操作する人や組立作業者など付加価値を生む作業者以外に、生産の準備をしたり、生産完了後の片づけをしたりする作業者もいます。

この人たちの費用はどうなるのでしょうか。
 

現場の間接作業者や管理者の費用はどうするのか?

 

生産の準備をしたり、生産完了後の片づけをしたりする作業者は、付加価値を直接生んでいません。しかし彼らがいなければスムーズな生産はできず、彼らも現場に不可欠な人たちです。

また現場の管理者も管理に専念していれば付加価値を生んでいません。

こういった人たちの費用は、その現場の間接製造費用としてアワーレート(人)の計算に入れます。
 

補助作業者の費用

 

例えば、図8のマシニングセンタ1(小型)の現場には、生産準備など補助作業を行うパート社員Hさん(間接作業者)がいました。

図8 間接作業者の費用



中小企業の工場には、管理者自ら生産を行うプレイングマネジャーもいます。彼らは管理業務もあるため、1日フルに生産ができません。

この場合は管理者の時間を

直接時間 : 生産している時間 (%)

間接時間 : 管理など生産していない時間 (%)

に分けます。
 

プレイングマネジャーの費用

 
図9の管理者 正社員Dさんは、直接50%、間接50%でした。間接50%は、その現場の間接製造費用とします。

間接製造費用の分、平均アワーレート(人)は上昇します。

その結果、2,900円/時間でした。

図9 管理者がプレイングマネジャーの場合

間接作業者や管理者が増えれば、アワーレート(人)の計算で分子(人件費)は増えますが分母(実稼働時間)は増えません。その分、アワーレート(人)は高くなります。

つまり直接生産しない人が増えれば原価は高くなるのです。
 

稼働率が低い年は翌年アワーレート(人)が高くなる?

 

忙しい月は人の稼働率が高く、暇な月は稼働率が低くなります。

その結果、忙しい月はアワーレート(人)が低くなり、暇な月はアワーレート(人)が高くなります。そうなると原価が変わってしまいます。

これでは製品が儲かっているのは

  • 高く受注できた
  • 短い時間で生産できた
  • たまたまその月は稼働率が高かった

どれなのかわからなくなってしまいます。

アワーレート(人)は、原価を計算する「ものさし」です。

そこで稼働率は年間で一定とし、アワーレート(人)は一年間変わらないようにします。(この点が、毎月の稼働率から実際原価を計算する財務会計の原価計算と違う点です。)

一方、年によって繁忙状況が変わることもあります。

本コラムは、先期の決算書からアワーレートを計算します。そのため先期の稼働率が低ければ、翌期のアワーレート(人)は高くなります。

本当は、先期は受注が少なかったので、今期は受注を増やしたいところです。

しかし今期のアワーレート(人)が高ければ、見積も高くなってしまい、一層受注しにくくなります。

この場合は、工場が元々目標としている稼働率でアワーレート(人)を計算します。そしてその稼働率を達成できるように営業活動に力を入れます。

では、アワーレート(設備)はどうやって計算するのでしょうか。

アワーレート(設備)の計算方法は【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)で説明します。

経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
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https://ilink-corp.co.jp/9560.html/feed 0
【原価計算と見積の基礎】3.製造原価の計算方法(2) https://ilink-corp.co.jp/9558.html https://ilink-corp.co.jp/9558.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:17:24 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9558 No related posts. ]]>  
【原価計算と見積の基礎】2.製造原価の計算方法(1)では工場で発生する必要と製造原価の構成について説明しました。

ここでは間接製造費用と販管費、見積金額の計算について説明します。

間接製造費用も原価の一部です。そこでこれらの費用も製品の原価に組み込みます。

では、どうやって間接製造費用を原価に組み込むのでしょうか。
 

間接製造費用の分配1 製品に直接分配

 
最も簡単な方法は直接製造費用に何らかのルールで分配〈注1〉する方法です。

〈注1〉
本コラムでは、間接製造費用を割り振ることを「分配」と呼びます。会計では割り振ることを「配賦」と呼びます。この配賦も「割り当てる」という意味です。
会計では「配賦」のほかに「賦課」という言葉もあり、以下のように使い分けています。

配賦:製造原価を計算する際に、間接費を何らかの基準(配賦基準)を用いて振り分けること

賦課:製造原価を計算する際に、「何に」「どれだけ」使ったのかがわかる直接費を振り分けること

「直接費は賦課して、間接費は配賦する」という表現します。しかし、本コラムでは難しい会計用語を用いず、一般的な「分配」を使用します。

原価計算の本には、分配基準の例として以下のものがあります。

  • 直接材料費
  • 直接労務費
  • 直接製造費用
  • 直接活動時間
  • 機械稼働時間
  • 生産量
  • 売上高

これらの分配基準は一長一短があります。

例えば「直接材料費に比例して分配する方法」は、製品によって材料費の比率が異なると間接製造費用が変わってしまいます。

そこで本コラムはこのような問題の比較的少ない「直接製造費用に比例する方法」を使用します。直接製造費用に対する間接製造費用の比率を、本コラムは「間接費レート」と呼びます。

間接費レートは、決算書の直接製造費用合計と間接製造費用合計から計算します。

間接製造費用は、直接製造費用に間接費レートをかけて計算します。

間接製造費用=直接製造費用×間接費レート

製造費用は、直接製造費用と間接製造費用の合計です。

製造費用=直接製造費用+間接製造費用
    =直接製造費用×(1+間接費レート)

この方法は、どの製品も直接製造費用に比例して間接製造費用を計算します。

しかし現場によっては間接製造費用がたくさん発生した現場とそうでない現場があります。その場合、次の方法で間接製造費用を各現場に分配して原価を計算します。
 

間接製造費用の分配2 各現場に分配

 
間接製造費用を部門別に計算し、各現場に分配する方法です。

例えばA社では、資材発注部門は、原材料を使う加工や組立の現場には関係しますが、検査や設計には関係しません。
そこで資材発注部門の費用は、加工と組立の現場に分配します。

このようにして各現場の直接製造費用と間接製造費用を計算し、その合計からアワーレートを計算します。これを図1に示します。

図1 間接製造費用の分配

 

財務会計の計算方法

 
財務会計では、この部門別の費用の計算は以下のように行います。

  1. 水道光熱費、消耗品費、修繕費などを各現場と間接部門に分配する
  2. 共用部の減価償却費、保険料、賃借料など共用部の費用を何らかの
    分配基準で各現場と間接部門に分配する(分配基準の例 人数、床専有面積、光熱費など)
  3. 間接部門の費用を各現場に分配

実際は、消耗品費や水道光熱費などは、各現場や間接部門がどれだけ使っているのか正確にはわかりません。またこれらの費用を各現場や部門に分配しても金額は低いので、そこに労力をかけてもメリットは多くありません。
 

直接時間、又は直接製造費用に比例して分配

 
そこで本コラムは、間接製造費用(製造経費と間接部門費用)は各現場の「直接時間」、または「直接製造費用」に比例して分配します。

例えば、A社の資材発注の費用は、加工と組立の各現場それぞれの直接製造費用に比例して分配します。ただし特定の現場が多く消費している費用があれば、その現場の費用を増やします。
 

間接製造費用を含んだアワーレート

 
こうして計算した間接製造費用と直接製造費用を現場毎に合計し、稼働時間で割ってアワーレートを計算します。

なお本コラムは、直接製造費用から計算したアワーレートと、直接製造費用と間接製造費用の合計から計算したアワーレートを区別するために、これをアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)と表記します。


アワーレート間(人)の計算方法は、【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法

アワーレート間(設備)の計算方法は、【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)

6.設備のアワーレートの計算方法(2)

で説明します。
 

製造費用の計算式

 

間接製造費用を含んだ製造費用は以下の式で計算されます。

製造費用(人)=アワーレート間(人)×製造時間(人)
 
製造費用(設備)=アワーレート間(設備)×製造時間(設備) 

製造費用(人+設備)=製造費用(人)+製造費用(設備)

本コラムでは、製造費用は製造費用(人+設備)を指します。もし人と設備が同じ時間製造すれば、製造費用は以下の式になります。

製造費用=(アワーレート間(人)+アワーレート間(設備))×製造時間
    =(アワーレート間(人+設備))×製造時間 

ここでアワーレート(人+設備)は、アワーレート間(人)とアワーレート間(設備)を合計したものです。
 

A社のアワーレート間

 

この方法で計算したA社のアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)を表1の右側に示します。

表1 アワーレート間(人)、アワーレート間(設備) 単位 : 円/時間

アワーレート アワーレート間
設備 設備
マシニングセンタ1(小型) 2,380 900 3,360 1,720
マシニングセンタ2(大型) 2,380 1,800 3,420 2,850
NC旋盤 2,380 700 3,150 1,470
ワイヤーカット 2,250 400

2,400 ※550 (890)
出荷検査 1,720

2,350
組立 1,530

1,920
設計 2,750

3,220

※ ワイヤーカットは段取のアワーレート、( )内は加工のアワーレート


マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート間(人)は、

(直接製造費用のみの)アワーレート(人) : 2,380円/時間

(間接製造費用を含めた)アワーレート間(人) : 3,360円/時間

間接製造費用を含めると980円/時間増加しました。

アワーレート間(設備)は、

(直接製造費用のみの)アワーレート(設備) : 900円/時間

(間接製造費用を含めた)アワーレート間(設備) : 1,720円/時間

間接製造費用を含めると820円/時間増加しました。
 

製造原価の計算

 

複数の工程で製造する場合は、各工程の製造費用を合計します。
 

A1製品の製造原価

 

図2に複数の工程で製造したA社 A2製品の例を示します。

図2 複数工程での原価

3工程の製造費用の合計は1,060円でした。製造原価は製造費用に材料費と外注費を加えたものです。

製造原価=材料費+外注費+製造費用 

図2は、材料費450円、外注費50円なので、

製造原価=450+50+1,060
    =1,560円

製造原価は1,560円でした。
 

見積金額の計算

 
販管費は製造原価に一定の比率(販管費レート)をかけて計算します。

販管費=製造原価×販管費レート 

製造原価に販管費を加えたものを本コラムでは「販管費込み原価」と呼びます。(会計では「総原価」と呼びます。)

販管費込み原価=製造原価+販管費

見積金額は、販管費込み原価に目標利益を加えたものです。

目標利益は、販管費込み原価に「販管費込み原価利益率」をかけて計算します。

目標利益=販管費込み原価×販管費込み原価利益率

見積金額=販管費込み原価+目標利益 

販管費込み原価利益率の計算については、【原価計算と見積の基礎】8.販管費と利益の計算で説明します。
 

販管費、目標利益、見積金額

 

A社 A1製品 (マシニングセンタ1(小型)で製造)の原価、販管費、目標利益を図3に示します。

図3 見積金額

A社は、販管費レート25%、販管費込み原価利益率は8.7%でした。

販管費=製造原価×販管費レート
   =760×0.25=190円

販管費込み原価=製造原価+販管費
       =760+190=950円

目標利益=販管費込み原価×販管費込み原価利益率
    =950×0.087=83≒80円

見積金額=販管費込み原価+目標利益
    =950+80=1,030円

見積金額は1,030円でした。

アワーレートはどうやって計算するのでしょうか。

アワーレート(人)の計算方法は【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法で説明します。

経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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https://ilink-corp.co.jp/9558.html/feed 0
【原価計算と見積の基礎】2.製造原価の計算方法(1) https://ilink-corp.co.jp/9552.html https://ilink-corp.co.jp/9552.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:12:04 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9552 No related posts. ]]>  
【原価計算と見積の基礎】1.なぜ原価が必要なのか? では、工場が儲かっているかどうかの「ものさし」として、原価の必要性を説明しました。ここでは原価計算の方法について説明します。

製造業では、会社に入ってくるお金は製品の売上です。会社の費用はこの売上から賄われます。この費用が増えれば利益が減少します。

つまり会社の費用が増加することは、原価が増えることです。

言い換えれば「会社で発生する費用はすべて原価」です。つまり「ボールペン1本買っても原価は増える」のです。

この費用にはどのようなものがあるのでしょうか?
 

発生する費用はすべて決算書に書かれている

 
会社に入ってくるお金(売上)と出るお金(費用)、そして残るお金(利益)は、決算書に記載されています。

この決算書には図1に示す損益計算書、製造原価報告書があります。

図1 決算書の構成

この決算書の費用について、以下に説明します。
 

材料費

 
材料費は、製造原価報告書の材料費に計上されます。材料費は図2に示すようなものがあります。

図2 材料費


 
〈原材料〉

原材料には、原料と材料があります。

原料:製造工程で性質が変わるものです。

例えば、樹脂原料は粒上のペレットですが、成型機を通すことで
樹脂製品に変わります。

材料:製造工程で基本的に性質が変わらないものです。

鋼材は、加工機で切削することで形は変わりますが、
鋼材の性質は変わりません。

   ただし熱処理をすれば硬さは変わります。しかし硬さ以外は原型も性質もとどめているので、材料のままと考えます。

〈部品〉
購入した状態のまま使用するものです。

部品には、製造先によって購入品(メーカー)、外注品(外注)、内製品(社内)の3種類があります。

部品の中には、ボルトやピンのように使用量が多く、ひとつの製品に何個使用したのか管理していないものがあります。

その場合、材料費でなく工場消耗品(製造経費)とすることもあります。

〈工場消耗品〉
補修用材料、洗浄剤、オイル、燃料、包装資材など、生産活動に伴って消費されるものです。

多くは製品1個にどのくらい使用されているのかわかりません。あるものが原材料か、工場消耗品なのかは、企業によって変わります。

例えば、組立工場では塗料は消耗品ですが、塗装工場では、塗料は原価に占める割合が高いため原材料です。

〈消耗工具器具備品〉
スパナなどの工具や切削・研削工具などの刃物、測定工具など、資産にならない少額の工具や備品です。

機械加工工場は、切削・研削工具の消耗が激しく、これらは材料費とすることもあります。
また特定の製品で激しく消耗する工具は、その製品固有の材料費にすることもあります。

製品1個の材料費は以下の式で計算します。

材料費=単価×使用量 
 

外注費

 
メッキ、塗装、焼入れなど製造工程の一部を社外に委託した費用です。大抵の場合、製品1個の外注費は明確です。

一方、外注先に支払う費用がすべて外注費とは限りません。中には、材料費や労務費もあります。これを図3に示します。

図3 外注先に支払う費用とその区分

外注に支払う費用には以下のものがあります。

〈材料費〉
外注先が仕入れた材料、部品を購入。
外注先が購入した材料を外注先が加工し完成部品として納入。

これらは会計上は材料費ですが、外注費に仕分けされることもあります。

〈外注費〉
外注先に材料(又は半加工品)を支給して、製造の一部を委託し、完成品、又は半加工品として納入。

〈労務費〉
外注先の社員が自社に来て、自社の工場内で製造の一部を請け負えば、これは派遣社員と同様に労務費です。

組立工程の一部を外注先に委託した場合、外注先の社内で行えば外注費ですが、外注先の社員が自社に来て作業すれば労務費です。

外注先に支払った費用でも、このように内容によっては材料費・外注費・労務費です。

しかし全部外注費として決算書に計上されていることもあります。財務会計上は問題ありませんが、原価計算では内容に応じて分ける必要があります。

また受注が増えたため、一部の製品の製造を外注に委託することがあります。その結果、同一製品で内製と外注の2つの原価ができます。この場合、元々内製の製品であれば内製の原価とします。

外注に出して原価が上がった場合は、「実績原価が上がった」と考えます。
 

労務費

 
製造原価報告書の労務費は、製造部門や間接部門など工場で働いている人たちの人件費です。
製品1個つくるのにかかった労務費は、作業者の1時間当たりの費用(アワーレート(人))に〈注1〉製造時間をかけて計算します。

労務費=アワーレート(人)×製造時間

A社の現場〈注2〉には図4に示す人たちがいました。

図4 製造現場の人たち


〈注1〉アワーレートは、チャージ、賃率、ローディングなどと呼ばれることもあります。意味は同じなので本コラムではアワーレートとします。アワーレートの時間単位は、1時間(円/時間)の他、1分(円/分)、1秒(円/秒)があります。

〈注2〉本コラムではアワーレートを計算する組織の単位を「現場」と呼びます。同じ部署でも設備の種類が異なりアワーレートも異なれば別の現場とします。
例えば、製造1課にマシニングセンタとNC旋盤があれば、現場1はマシニングセンタ、現場2はNC旋盤とします。

自社が雇用:
正社員、パート社員、実習生他にシニア社員を定年後、嘱託やアルバイトとして雇用する場合もあります。社長など役員が現場で作業していれば、役員報酬(販管費)の一部も原価計算では労務費です。

他社が雇用:
派遣社員や社内外注・請負これらが製造原価の労務費です。一方、図5に示す
派遣社員や社内外注の費用は、外注費や製造経費に計上されていることもあります。

図5 労務費以外に計上される人の費用

自社で雇用する人の費用の内訳:
正社員、パート社員、実習生、嘱託・アルバイトなど、自社が直接雇用する人の費用には以下のものがあります。

  • 賃金・給与
  • 退職金 (又は退職引当金)
  • 賞与 (又は賞与引当金)
  • その他手当
  • 法定福利費
  • 福利厚生費
  • 雑給

法定福利費や福利厚生費は、製造原価と販管費を分けずに、すべて販管費に計上されていることもあります。
また実習生に関する費用は労務費でなく製造経費の場合もあります。

派遣社員、社内外注など他社が雇用する費用:
派遣社員の費用は、企業によって労務費、外注費、製造経費など計上の仕方が異なります。また社内外注や請負は、外注費に計上されることがあります。

その場合、外注先が社内外注と加工外注の両方を行っていれば、加工外注の費用と社内外注の費用が一緒になっています。
原価計算では、外注費と労務費に分けます。

このように原価計算では人の費用は、決算書の費目を確認して適切に分類します。
 

製造経費

 
工場で発生する費用の内、材料費、労務費、外注費以外は、製造経費です。
ただし、総務、経理や営業など、製造に直接関係しない費用は販管費です。

製造経費には図6に示すようなものがあります。

図6 製造経費


 

販管費

 
販管費(販売費及び一般管理費)は、会社で発生する費用のうち製造に直接関係しない費用です。

これは図7に示すものがあります。

製造に直接関係しない費用とは何でしょうか。これは以下の2つです。

販売費 商品や製品を販売するための費用「販売費」
一般管理費 会社全般の業務の管理活動にかかる費用「一般管理費」

図7 販管費

工場では日々これらの費用が発生します。

原価を計算するためには、これらの費用を元に製品1個あたりの原価を計算しなければなりません。

この原価の構成はどうなっているのでしょうか。
 

製造原価の計算

 

製造原価の構成

 
図8にA社 A1製品の製造原価を示します。

図8 A1製品の製造原価の構成

A1製品は、材料費330円、外注費50円、製造費用380円でした。
製造原価は、材料費、外注費、製造費用の合計760円でした。

製造費用380円の内訳は、直接製造費用(人)、直接製造費用(設備)、間接製造費用です。

【直接製造費用】
製品を製造するのに直接携わった人や設備の費用で、その中で製品1個製造するのにどのくらい発生したのか、はっきりとわかる費用です。
これには人と設備の費用があります。

直接製造費用(人) : 人が直接関与して製造した費用
直接製造費用(設備) : 設備が直接関与して製造した費用

【間接製造費用】
物流や資材受入など製造に間接的に関わった人の費用です。加えて工場で発生する様々な費用(製造経費)も間接製造費用です。

また製造に直接かかわった費用でも、製品1個にどのくらいかかったのか正確にわからなければ、間接製造費用とします。
 

直接製造費用(人)とアワーレート(人)

 
直接製造費用(人)は、以下の式で計算します。

直接製造費用(人)=製造時間(人)×アワーレート(人)

製造時間(人) : 製品1個を製造するのにかかった人の時間
アワーレート(人) : 作業者1人が1時間作業した時に発生する費用

アワーレート(人)の計算は【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法で説明します。
 

設備の直接製造費用とアワーレート

 
直接製造費用(設備)は、製造にかかった設備の費用です。

直接製造費用(設備)=製造時間(設備)×アワーレート(設備)

製造時間 (設備) : 製品1個を製造するのにかかった設備の時間
アワーレート(設備) : 設備1台が1時間稼働した時に発生する費用

アワーレート(設備)の計算は【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)【原価計算と見積の基礎】6.設備のアワーレートの計算方法(2)で説明します。

例として、A社の現場毎のアワーレート(人)、アワーレート(設備)を表1に示します。

表1 A社の現場毎のアワーレート  単位:円/時間

アワーレート(人) アワーレート(設備)
マシニングセンタ1(小型) 2,380 900
マシニングセンタ2(大型) 2,380 1,800
NC旋盤 2,380 700
ワイヤーカット 2,250 400
出荷検査 1,720
組立 1,530
設計 2,750

現場によって、人件費や設備の費用が異なります。そのため、アワーレート(人)、アワーレート(設備)も現場によって異なります。
 

多品種少量生産では段取時間も見積に入れる

 
段取とは、品種の切替のことです。〈注3〉
 


〈注3〉段取は、大きく分けて以下の2種類があり内容は異なります。

(1) (すでに実績のある製品の) 品種の切替
(2) (過去に実績のない製品の) 生産準備

(1)の段取は、金型、材料、刃物、加工治具の交換、加工プログラムの切替、テスト加工と品質確認などを行います。

(2)の段取は、(1)に加え加工プログラムの作成やテスト加工、プログラムの修正などを行います。

プレス加工、樹脂成形加工のような量産工場は、段取は(1)を指します。段取の手順は決まっていて、できる限り早く行います。

一方、多品種少量生産や単品生産の工場は、段取は(2)のこともあります。

初めて製造する場合、プログラムや加工条件が適切でなければ不良品をつくってしまいます。従ってスピードだけでなく、的確な作業が求められます。

 

製品1個当たりの段取時間は

従って、ロット数が多ければ1個当たりの段取時間は短くなります。段取も含めた製造時間は、1個当たりの段取時間と1個の加工時間の合計です。

 

間接製造費用の分配

 
 

付加価値について

 
製造業は、材料を仕入れて製品に加工する事業です。

例えばA社は材料を330円で仕入れ外注に50円払って加工してもらいました。それを社内でA1製品に加工して1,000円で顧客に納入しました。(図9)

この時、工場が生み出した付加価値は、製品の価格1,000円から社外に払った費用(材料費と外注費の合計)380円を引いた620円です。

付加価値=売上-社外に払った費用

図9 付加価値


 

直接作業者と間接作業者

 
この付加価値を生む人が直接作業者です。
工場にはこの直接作業者以外に、ものを運んだり、生産管理といった付加価値を直接生まない人もます。その人たちを本コラムでは間接作業者と呼びます。

間接作業者の費用は間接製造費用です。
 

直接製造設備と補助的に使用する設備

 
多くの設備は「削る、穴を開ける」などの付加価値を生みます。こういった設備は直接製造設備です。

また設備には常時生産に使用され付加価値を生む設備以外に、たまにしか使われない設備もあります。

例えば、製品のひずみ取りに使用する油圧プレスは、製品にひずみが出た時だけ使用されます。製造工程が安定してひずみが出なければ使いません。

本コラムでは、このような設備を「補助的に使用する設備」と呼びます。

補助的に使用する設備は、どの製品にどのくらい使われたのか正確にわかりません。そのため、このような設備の費用は間接製造費用です。

言い換えると付加価値を生まない人や設備は「稼いでいない」人や設備です。しかし稼いでいない人や設備も良い製品をつくるには必要です。ただし、稼いでいない人や設備が増えれば、原価が高くなります。
 

具体的な間接製造費用

 
この間接製造費用を図10に示します。

図10 間接製造費用

【人の費用 (労務費) 】

  • 現場で生産準備や後処理など補助作業を行う作業者
  • 現場の管理者
  • 倉庫や工場内の物流(フォークリフトの運転)を行う作業者
  • 生産管理、品質管理など間接部門

 

【人以外の費用 (製造経費) 】

  • 現場にある直接製造設備以外の設備(補助的に使われる設備)
  • 測定機、フォークリフトなど間接部門の設備
  • クレーン、空調機など工場の共用設備
  • 工場の光熱費、借地代、税金などの費用

 
これらの間接製造費用も原価の一部です。そこでこれらの費用も製品の原価に組み込みます。

では、どうやって間接製造費用を原価に組み込むのでしょうか。

これは【原価計算と見積の基礎】3.製造原価の計算方法(2)で説明します。

経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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https://ilink-corp.co.jp/9552.html/feed 0
【原価計算と見積の基礎】1.なぜ原価が必要なのか? https://ilink-corp.co.jp/9511.html https://ilink-corp.co.jp/9511.html#respond Tue, 16 Jan 2024 05:18:39 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9511 No related posts. ]]>  
なぜ個々の製品の原価(以降、個別原価)が必要なのでしょうか?

「たとえ個別原価がわかっても発注先が一方的に値段を決めるので意味がない」
このような意見もあります。

しかし、個別原価がわからないことで次のような問題があります。
 

「どんどん上がる物価」個別原価がわからなければ値上げできない

 
個別原価がわからなければ原材料や光熱費が上がっても、製品がいくら上がっているのかわかりません。なぜなら原材料や光熱費は生産量によって毎月変動するからです。

試算表を見ても費用が増えているのは「その月の使用量が増えたため」なのか、「値上げの影響なのか」わかりません。決算になって利益が減ったことで、ようやく値上げの影響がわかります。
 

原材料価格の上昇

 
鋼材など鉱物資源は世界中で需要が増加し、価格も上昇しています。

図1の厚板16~25ミリの鋼材の市況価格は、2021年の4月から1年間で40%も上昇しました。

図1 鋼材価格の推移 (厚板16~25ミリの例)

 

エネルギー価格の上昇

 
原油価格は、ウクライナ戦争や産油国の供給調整、投機マネーの流入により大きく変動します。さらに原油や天然ガスは円安の影響も強く受けます。

これにより電気代は高騰し、kWhあたりの平均販売単価は、図2に示すように2022年12月には2年前に比べ2.5倍に上昇しました。(中部電力の例)
 

図2 電気平均販売単価の推移(中部電力)


 
他にも、樹脂や潤滑油など石油を原料とする製品や、刃物などの消耗品、梱包用の段ボール、運送費なども上がっています。
 

人件費の上昇

 
人件費も上昇しています。

図3に示すように、最低賃金は10年間で26%上昇しました。(例 愛知県)最近は人手不足による賃金上昇が加わっています。
 

図3 最低賃金の推移(愛知県)


 

値上げは喫緊の課題

 
このような背景から電気・ガスなどの光熱費、消耗品や運送費などは、随時値上げされています。

これに対し交渉の余地はほとんどありません。その分値上げしなければ利益が削られてしまいます。多くの中小企業にとって値上げは喫緊の課題です。

しかし中には「値上げは無理」とあきらめている会社もあります。

材料費や運送費は、交渉のやり方によっては値上げできる可能性があります。

いくら個別原価が上がったのかわからなければ値上げ交渉ができません。他にも、個別原価がわからないために起きる問題があります。
 

「本当はもっと高いかもしれない」実績原価との違い

 
それは実績原価が見積をオーバーしてもわからないことです。

実績原価が高くなる原因は

  • 設備のトラブルや不安定な工程のため、予定より時間がかかった。
  • 納期に間に合わないため、製造している製品を止めて別の製品を割り込ませた。そのため段取が2回発生した。
  • 作業ミスのため不良品が発生した。
  • 顧客から傷の指摘を受け、全数検査を追加した。
  • 金型費は製品の価格に上乗せする契約で受注したが、途中で生産が打ち切られた。

など様々です。
 

問題を早期に発見するためには実績原価の把握が必要

 
実績原価が上がれば利益が減るだけでなく、時には赤字になります。しかし実績原価を把握していなければ、赤字かどうかもわかりません。

問題を早く発見し対処するには、実績原価の把握は不可欠です。

一方、多品種少量生産の場合、1個1個製造時間を記録するのは大変です。それでも「ロット毎に生産開始と完了の時間を記録する」などやり方を工夫すれば実績時間の記録は可能です。
 

儲かっているかどうかがわかる「ものさし」

 
つまり個別原価は、工場がどのくらい儲かっているかどうかを把握する「ものさし」です。ものさしがなければ、現場が日々適切な利益を出しているかどうかがわかりません。

決算をしてようやく儲かっていないことがわかります。しかしその時は手遅れです。
 

試算表では儲かっているかどうかわかりにくい

 
試算表でもお金の動きはわかりますが、会社全体のお金の動きです。しかも工場の費用は毎月変動します。さらに売上と費用は発生時期もずれます。

儲かっているのかどうかは、試算表ではわかりにくいのです。

しかし、実績原価がわかれば生産している製品が「利益を生んでいるのか、赤字になっているのか」わかり、直ちに手を打つことができます。(図4)
 

図4 個別原価がわからないと問題が放置される


 

原価は計器の役割

 
夜間飛行している航空機のパイロットは、機体が上昇しているのか、下降しているのか目視ではわからないといいます。そのためパイロットは計器を見て操縦します。

同様に個別原価は、工場が適正に運営されているのか、高度(利益)を落としているのかを判断する計器なのです。(図5)
 

図5 個別原価は工場の「ものさし」


 

「ものさし」を財務会計に使う必要はあるか?

 
財務会計において原価計算は重要です。それは個別原価から在庫や仕掛品の金額を計算し、そこから会社の利益を計算するからです。

そのため、大企業は発生した費用を細かく集計して個別原価を計算します。

原価計算は専任の社員が専用のシステムで行います。これは中小企業にとってはとても高いハードルです。
 

決算目的の原価計算と管理目的の個別原価は分ける

 
しかし、決算に必要な原価計算は、今までも会計事務所や税理士が行っています。新たに計算した個別原価を財務会計に使用するメリットは中小企業にはありません。

財務会計に使用しようとすれば、会計基準に合わせた複雑な処理をしなければなりません。そこに手間をかけるより、個別原価はあくまで製品の収益性を評価する「ものさし」とし、製造の仕方や見積のやり方を改善することに力を入れた方が現実的です。
 

お金を数えるのは1度だけ

 
原価計算は、結果が金額(数字)で出るため、つい手間をかけてしまいます。しかし、「どれだけ手間をかけてお金を数えてもお金が増えるわけではありません」。

お金を数えるのは最低限(1回)で十分です。あとはお金を増やすこと(現場の改善)に努力すべきです。

この個別原価はどうやって計算するのでしょうか。

これは【原価計算と見積の基礎】2.製造原価の計算方法(1)で説明します。

経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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