原価計算と見積の基礎 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 数人の会社から使える原価計算システム「利益まっくす」 Tue, 30 Sep 2025 07:18:45 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.7.4 https://ilink-corp.co.jp/wpst/wp-content/uploads/2021/04/riekimax_logo.png 原価計算と見積の基礎 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 32 32 経営コラム 製造業の原価計算と見積 https://ilink-corp.co.jp/10604.html https://ilink-corp.co.jp/10604.html#respond Mon, 29 Jan 2024 08:34:44 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=10604 工場の管理者、原価管理、経理など実務に携わる方たちが感じる原価計算・見積の疑問について、実務者の視点でわかりやすく説明しました。

原価の基本的な考え方、アワーレート計算などをわかりやすく説明した【原価計算と見積の基礎】と、実際に発生する費用の集計や原価への組み込みを詳細に解説した【実務における原価の疑問】があります。

原価計算と見積の基礎

 

個々の製品の原価の計算方法、人と設備のアワーレートの計算方法、間接費や販管費の計算方法など基本的な計算をわかりやすく書きました。


【原価計算と見積の基礎】1. なぜ原価が必要なのか?

様々な費用が上昇する今日、原価が分からないと値上交渉ができません。他にも原価が分からないことで起きる問題は…


【原価計算と見積の基礎】2. 製造原価の計算方法(1)

製造原価を計算する費用は決算書の値を元にします。決算書には工場で発生する様々な費用が計上されています。例えば…


【原価計算と見積の基礎】3. 製造原価の計算方法(2)

個々の製品の見積に間接製造費用と販管費も入れる必要があります。間接製造費用は間接部門の労務費や工場の経費など…


【原価計算と見積の基礎】4. 人のアワーレートの計算方法

人のアワーレートは人の年間費用を実際に付加価値を生んでいる時間で割って計算します。一方各現場には賃金の異なる人がいるため…


【原価計算と見積の基礎】5. 設備のアワーレートの計算方法(1)

設備のアワーレートは設備の年間費用を実際に付加価値を生んでいる時間で割って計算します。この年間費用のうち設備の購入費用は…


【原価計算と見積の基礎】6. 設備のアワーレートの計算方法(2)

設備のアワーレートの具体的な計算を説明します。設備が年間で半分しか稼働しなければ…


【原価計算と見積の基礎】7. 間接費用の分配

人と設備以外の費用、間接製造費用と販管費の計算について説明します。工場には直接製品を製造する直接部門と…
 

以降、個々の製品の原価、工程別の原価については「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】にあります。
 

原価計算と見えない赤字

 


【原価計算と見積の基礎】8. 高い設備は原価が高いのか

設備の大きさ(価格)による原価の違い、設備によって現場を分けるかどうか、ラインの場合の設備の考え方などを説明しました。同じ設備でも大きさによって償却費やランニングコストが異なる場合は…


【原価計算と見積の基礎】9. 自動化とロボットの活用

無人加工と有人加工の違い、ロボットを導入した場合の原価を説明しました。有人加工は加工中、人と設備の費用が同時に発生しますが、無人加工の場合は…


【原価計算と見積の基礎】10. ロットの減少によるコストアップ

段取がある場合、製品1個の段取費用はロットが小さくなると大きくなります。具体的にどのくらい違うのか、機械加工A社樹脂成型加工B社の事例で…


【原価計算と見積の基礎】11. 段取時間の短縮

ロットが少なくなれば原価に占める段取費用が大きくなります。この段取時間を短縮すれば段取費用はどのくらい小さくなり原価はどうなるでしょうか?実は段取は2種類あり…


【原価計算と見積の基礎】12. 検査追加によるコストアップ

検査費用が最初から見積に入っていれば問題ありませんが、検査費用が見積に入っていない場合、検査を追加すれば原価は上がります。この検査には全数検査と抜取検査があり…
 

このコラムの続きは、書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」にあります。
 

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【原価計算と見積の基礎】19.失敗によるコストアップ https://ilink-corp.co.jp/9595.html https://ilink-corp.co.jp/9595.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:36:51 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9595
【コラムの概要】

自社設計・製造の製品では、設計ミスや予期せぬ問題によるやり直しが発生し、原価が当初の見積もりをオーバーして赤字になるリスクがあります。これを避けるため、過去の失敗事例から適切な失敗費用を見積もりに上乗せすることが必要です。また、難易度の高い案件で発生した超過費用は、企業の技術力向上のための「開発費」と捉えことも重要です。

光熱費や運賃などの費用の上昇によるコストアップや利益の影響について、○○で述べました。

一方、自社で設計・製造する場合、設計ミス(失敗)のためやり直しをすることがあります。
これにより原価はどれだけ上昇するのでしょうか。

この失敗の原価について、以下の4点を述べます。

  1. 設計費用の考え方
  2. 失敗コスト
  3. 見積精度を高める取り組み
  4. 失敗を開発費と考える場合

1. 設計費用の考え方

例えば、生産設備や搬送設備を設計・製作する受注生産型の企業は、顧客の要望に基づいて毎回設備(製品)を設計・製造します。初めて設計する製品では、設計ミスや想定外の問題が起きます。設計のやり直しや部品の再作成が発生し、原価は予定より増えます。
そして、見積の時点では利益があったのに、結果的に赤字になってしまいます。

これはどうしたらよいでしょうか?

設計ミスや予期せぬ問題がどれくらい起きるかは、製品の技術的な難易度や複雑さに関係します。そこで、案件毎に材料費、設計費、製造費用の見積金額と実績金額を記録し、どの案件でどのくらいの差異が生じたのか調べます。

例えば、設備メーカーのD社 D1製品の見積は図のようなものでした。

図 設計のあるD1製品の見積
図 設計のあるD1製品の見積

実際は、材料費、設計費用、製造費用が見積よりも増えて0.8万円の赤字でした。こうしたことが毎回起こるのであれば、その分見積を高くします。

図 D1製品の実績原価
図 D1製品の実績原価

 2. 失敗費用

初めて設計する製品はどうしても設計ミス(失敗)が起きます。そこで失敗をある程度予測して見積を高くします。そうしないと失敗で赤字になってしまいます。ただし、あまり高くすると価格競争力をなくして失注します。そこで、過去の失敗とオーバーした金額を調べて、適切な金額を上乗せします。

図では、見積に対し

製品D1 : 130%
製品D2 : 100%
製品D3 : 140%
製品D4 : 110%

平均で120%でした。
利益を確保するためには、現状の見積に対してプラス20%にします。

図 見積に対する実績のばらつき
図 見積に対する実績のばらつき

こう書くと「設計ミスがあることがおかしい! 設計が頑張ってミスをなくすべきだ!」と言われてしまいます。設計ミスややり直しを減らす努力は当然必要です。しかし新規設計する以上、ミスややり直しが発生するのは事実です。それを認めてそれでも利益が出る金額にしないと利益が出ません。〈注〉これはミスを起こす設計者からは言いにくいため管理者が決めます。

〈注2〉筆者がかつて設備メーカーに高額な専用設備を発注した時の経験です。仕様打合せ、相見積の末、ある設備メーカーに発注しました。しかし、発注側は一切仕様を変えていないのに、問題が多発し納期も大幅に遅れました。おそらく設備メーカーは赤字だったと思います。これはすべて設備メーカーの問題でした。こういった特殊な製品は、起こりうる問題の予測も含めて、見積能力がとても重要だと感じました。

3. 見積精度を高める取り組み

設計がある製品は見積の精度が重要です。いくら見積価格で受注できても、失敗が多ければ赤字になってしまいます。特に設計やプログラミングなどクリエイティブな仕事は工数の見積が難しく、また設計者やプログラマは、楽観的に考えて工数を少なく見積る傾向があります。(多くの設計者やプログラマが納期を守れないことも、楽観的に考えることの現れです。)
つまり

  • 見積精度を高めるために、過去の設計や製造費用の実績を集計し、見積との乖離を調査
  • 実績を元に設計や製造費用の見積の仕方を改善する(フィードバックする)仕組みをつくる
  • 過去の見積と実績の乖離から、見積に下駄をはかせる量を決める

等が必要です。
それでも顧客の要求が非常に高く、未経験の技術要素があれば失敗は起きます。これはどう考えればいいのでしょうか。

 4. 失敗を開発費と考える

他社と差別化し技術力を高めるには

  • 自ら開発テーマを定めて研究開発する
  • 顧客から難易度の高い案件を受注する

2つの方法があります。
マンパワーに限りがある中小企業は、専任の開発チームをつくる余裕がありません。また開発チームをつくっても生産が優先されて開発が進まないこともあります。

その場合、現在より少し技術レベルの高い案件を受注します。そこで起きる失敗や問題を解決すれば自社の技術力を高めることができます。受注すれば納期までに必ず完成しなければならず、メンバーは必死になって取り組みます。

この時、やり直しのために見積をオーバーした金額は「開発費」の意味があります。顧客からお金をもらって研究開発をしたと考えれば、この赤字は技術を手に入れるための費用です。

しかし、経営者から案件ごとの赤字を厳しく責められると、現場はリスクの少ない無難な案件しか受注しなくなります。技術は向上せず、気がついたら他社もできる無難な案件しか受注できなくなってしまいます。

ただし難易度が高いといっても、

  • 技術的なレベルアップが必要なもの
  • 顧客が現実を無視した実現困難なことを要求している

この見極めは重要です。前者はレベルアップになりますが、後者は実現困難なことをひたすら努力させられるだけで、レベルアップにならないからです。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化しました。
中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として、専門的な言葉を使わず分かりやすく書いた本です。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

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利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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【原価計算と見積の基礎】18.経費の増加によるコストアップ https://ilink-corp.co.jp/9593.html https://ilink-corp.co.jp/9593.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:35:39 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9593
【コラムの概要】

電気代などの光熱費上昇は、間接製造費用としてアワーレートを上昇させ、製品原価を引き上げます。また、運賃の上昇も原価上昇の要因となり、どちらも値上げなしでは企業の利益を大幅に減少させます。企業はこれらの費用増加分を正確に計算し、顧客に値上げを求める必要があります。

○○では不良の増加による原価の上昇について述べました。

一方近年では様々な費用が上昇しています。例えば

  • 原材料価格
  • 電気、ガスなどエネルギー費用
  • 原材料以外の材料、例えば、オイルやグリス、ボルト・ナット、梱包用の包材や段ボール
  • 設備の運転や保全に必要なオイルやクーラント、ウェスなどの消耗品
  • 刃物などの消耗工具
  • 運賃など輸送費
  • 人件費

では、これにより原価はどれだけ上がっているのでしょうか。ここでは

  1. 光熱費の上昇と原価
  2. 運賃の上昇

について述べます。

1. 光熱費の上昇と原価

電気、ガス、水道などの光熱費は、製造原価報告書に記載されています。この製造経費は、間接製造費用として各現場に分配し、アワーレートに組み込まれます。
電気代が上昇すれば、間接製造費用が増えてアワーレートは上昇します。ランニングコストに電気代が入っていれば、設備の費用も増えます。アワーレート(設備)も上昇します。

機械加工A社 マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレートは、

  • アワーレート間(設備)  :  1,720円/時間
  • アワーレート間(設備)  : 3,360円/時間

でした。このアワーレート間(設備) 1,720円/時間の内訳を図に示します。

図 マシニングセンタ1(小型)の現場 アワーレート間(設備)
図 マシニングセンタ1(小型)の現場 アワーレート間(設備)
  • 直接製造費用 : アワーレート用償却費 140万円 電気代18.4万円
  • 間接製造費用 : 間接製造費用分配 155万円

アワーレートは、直接製造費用と間接製造費用の合計を、設備の稼働時間で割って計算します。この間接製造費用の分配145万円には、工場の共用部分の電気代が含まれています。
同様にアワーレート間(人) 3,360円/時間の内訳を図に示します。

図 マシニングセンタの現場 アワーレート間(人)
図 マシニングセンタの現場 アワーレート間(人)
  • 直接製造費用 : 現場全体の年間労務費の平均 447万円
  • 間接製造費用 : 間接費分配 145万円

設備と同様に、直接製造費用と間接製造費用の合計を、作業者の稼働時間で割って計算します。この間接製造費用分配145万円の中にも、工場の共用部分の電気代が含まれています。

電気代が30%上がった場合、設備の電気代と間接製造費用分配に含まれる共用部分の電気代が上昇します。これを図に示します。

図 電気代30%上昇した場合のアワーレート間(設備)
図 電気代30%上昇した場合のアワーレート間(設備)
図 電気代30%上昇した場合のアワーレート間(人)
図 電気代30%上昇した場合のアワーレート間(人)

アワーレート間(設備)

電気代が30%上昇した結果、
直接製造費用 : アワーレート用償却費 140 万円 
電気代 18.4 → 23.9 万円
間接製造費用 : 間接製造費用分配 145 → 150 万円

アワーレート間(設備) : 1,720 → 1,790 円/時間 (+70円)

アワーレートは、70円/時間上昇しました。

アワーレート間(人)

間接製造費用 : 年間労務費の平均 447 万円/人
間接製造費用 : 間接製造費用分配 145 → 150 万円

アワーレート間(人) : 3,360 → 3,400 円/時間 (+40円)

アワーレートは、40円/時間上昇しました。

アワーレート間(人)とアワーレート間(設備)の合計は

5,080 → 5,190 円/時間 (+110円)

130円/時間増加しました。これによる、A1製品の原価の上昇を図に示します。

図 A1製品の原価、利益の変化
図 A1製品の原価、利益の変化

電気代が30%上昇した結果、

製造費用 : 10円増加
販管費込み原価 : 10円増加

その結果、50円の利益が40円に減少しました。以前と同じ利益にするには10円の値上げが必要です。

そこで値上を顧客にお願いすると「10円ぐらい企業努力で何とかしてくれませんか」と言われるかもしれません。しかし、電気代が30%上昇すれば、A社は年間390万円も費用が増加しています。この10円を値上げしなければ、年間で390万円もの利益を失うことになるのです。

運賃の上昇

運賃には2種類あります。

  1. 製品を顧客に運ぶ費用 (販管費に計上)
  2. 材料の運搬や工場間の移動の運賃 (製造原価に計上)

2. は内部費用で、間接製造費用です。対して1. は顧客の納品場所、納品方法により変わります。特に大きな製品や単価の低い製品は、原価に占める運賃の割合は高くなります。

燃料費や人件費の上昇により、運賃も年々上昇しています。これを価格に転嫁しなければ赤字になってしまいます。そこで製品1個の運賃を以下のようにして計算します。

製品1個の運賃

トラック1台の費用と1台に積める量から計算します。A社 A1製品の場合を図に示します。

図  A1製品の運賃計算
図  A1製品の運賃計算

トラックのチャーター代 : 5万円
1車の積載量 : 2,500個

1個の運賃 = チャーター代 積載量 = 50,000 2,500 = 20 円

1個の運賃は20円でした。
トラックのチャーター費用が1.5倍に上昇すると、

運賃 = 20 × 1.5 = 30 円

見積を10円上げる必要があります。
A社の年間の輸送費が2,000万円であれば、50%の運賃の上昇は1,000万円の増加です。10円値上げしなければ利益が1,000万円減少します。

しかし運賃を見積の販管費に入れてしまうと、値上げ交渉が難しくなります。そこで運賃は販管費と別にします。その場合、その分販管費を低くします。

例 A社
販管費 : 7,700万円
部品の輸送費の年間合計 : 2,000万円
運賃を除外した販管費 : 5,700万円

図 販管費から運賃の除外
図 販管費から運賃の除外

図では、運賃2,000万円を販管費から除外し、販管費は5,700万円、販管費レートは25%→18%になりました。

輸送条件が異なる場合

運賃の計算で困るのは、同じ製品でも輸送条件が異なる場合です。

例えば
条件1 混載便とチャーター便
条件2 顧客までの距離(H工場20km、K工場200km)

毎回異なった運賃を顧客に請求するが難しい場合、それぞれの比率から平均運賃を計算します。まず過去の実績から比率を調べます。

【納品場所】
H工場まで50km 60%
K工場まで300km 40%

【チャーター、混載比率】
チャーター便 80%
混載便    20%

この比率から全体の比率を計算したものを表に示します。

輸送方法比率全体比率
H工場60%チャーター便80 %48 %
混載便20 %12 %
K工場40%チャーター便80 %32 %
混載便20 %8 %

チャーター便のH工場とK工場の運賃を図に示します。

図 チャーター便でのH工場とK工場の運賃
図 チャーター便でのH工場とK工場の運

混載便でのA工場とB工場の運賃を図に示します。

図 混載便でのH工場とK工場の運賃
図 混載便でのH工場とK工場の運賃

集計結果を表に示します。

運賃全体比率運賃×比率
H工場チャーター便48 %2048 %9.6
混載便12 %5012 %6
K工場チャーター便32 %4032 %12.8
混載便8 %1008 %8
合計(平均運賃)36.4

平均運賃は36.4円、これを見積に入れます。

このように光熱費や運賃などの費用の上昇は原価や利益に大きく影響することが分かりました。
他にも設計ミスや加工ミスで失敗しても損失が生じます。特に専用設備など毎回設計する製品ではこうしたミスは避けられません。

では設計ミスや加工ミスは原価や利益はどれだけ変化するのでしょうか?

設計ミスや加工ミスによるコストアップについては○○を参照願います。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

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経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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【原価計算と見積の基礎】17.不良損失によるコストアップ https://ilink-corp.co.jp/9590.html https://ilink-corp.co.jp/9590.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:33:11 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9590
【コラムの概要】

不良品の発生は、廃棄・修正・再作成の費用として原価を上昇させます。不良の原因は、製造のばらつき、作業ミス、あいまいな合否基準など多岐にわたります。損失額は、修正や再作成の費用で計算され、特に大量生産では利益を大幅に圧迫するため、損失金額を現場に示し、迅速な原因究明と対策を講じることが重要です。

材料価格の変動による原価の影響は○○に、
材料歩留や材料ロス率、スクラップ価格の変動による原価の影響は○○
で述べました。

ここでは不良による原価の影響について述べます。
不良品を廃棄したり修正すれば原価は上昇します。

本来は「不良は放置せず、不良対策が終わるまで生産は止めるべき」ですが、現実には顧客の納期もあり、十分な対策ができないまま生産を続ける場合もあります。

この不良は原価にどれくらい影響するのでしょうか?

不良の原因

不良とは何でしょうか。

不良は「規格を外れた製品」のことです。
ではなぜ規格を外れるのでしょうか。
代表的な原因を示します。

製品のばらつき

大量生産では、製品の品質(特性値)はばらつき(誤差)があります。誤差の分布は、一般的には釣り鐘型の分布(正規分布)になります。

図 正規分布
図 正規分布

分布のすそ野はなだらかに広がっていて、生産量が多ければ公差を外れた(すそ野の端)ものが増えます。大量生産では不良は避けられないのです。

ばらつきが大きくなる原因は

  • 設備の能力不足
  • 作業者のスキル不足のため、製造条件の調整が不十分
  • 工程能力以上の品質の製品を製造
  • 設計上の製品の品質が不足し、要求品質を安定して達成できない
  • 設備の劣化や作業者のスキル不足で工程能力が低下

など様々です。

作業者のミス

設備に問題がなくても、作業者が操作をミスしてしまうこともあります。人は100%ミスなく作業するのは困難です。ミスが起きにくい、あるいはミスをしても不良が出ないやり方を工夫します。

あいまいな合否基準

合否基準があいまいだと、発注側、受注側の解釈の相違により、良品・不良品の判定結果が変わります。傷や汚れ、色合いなどは定量的な判定が難しく、五感による官能検査が行われます。官能検査は検査員の主観で良品・不良品の判定が変わります。しかも顧客(買う側)の立場が強く、つくる側が良品だと思っても顧客から不良品とされてしまうこともあります。

では、この時の損失金額はどのように考えればよいのでしょうか。

これは不良品をどう処置するかで変わります。

不良損失の考え方

不良品の処置には

  • 不良品をそのまま使う
  • 修正して使用する
  • 再作成する

3つがあります。
この修正や再作成にかかった費用が不良損失の金額です。図にこういった不良品の処置の種類を示します。

図 不良品の対処の種類
図 不良品の対処の種類
不良品がそのまま使える場合

機能に影響のない不良、軽微な不良のため、そのまま納入する場合です。あるいは納期が迫っているため、不良品が使えるのでそのまま納入する場合です。
その際、顧客は文書「特別採用申請書 (特採) 」の提出を求めます。この文書の作成や顧客との打合せにかかった時間(コスト)も損失金額です。

不良品を修正して使える場合

不良品を修正する際、新たに製造指図書を発行する会社と発行しない会社があります。前者の場合、新たに発行した製造指図書に修正にかかった工数を記録し、その工数から損失金額を計算します。
製造指図書を発行しない場合、修正工数を修正前の製造指図書か、日報に記録します。

不良品が使えない場合

不良品が使えない場合

  • 不良品の数の分、納入数を減らす
  • 不良品の分、別途作成する

この2つがあります。

  • 納入数を減らす場合、廃棄した分の原価が損失金額です。
  • 再作成する場合、再作成費用が損失金額です。

不良品を廃棄する場合、材料が再利用できる場合と再利用できない場合があります。
樹脂成形は不良品を粉砕して再利用できます(ただし品質の厳しい製品は再利用できません)。 その場合、損失金額は製造費用のみです。材料費は損失に含まれません。

大量生産での不良損失の金額

大量生産は不良はゼロではありません。大量生産では不良の損失コストを原価に組み込んでおきます。

樹脂成形B社

樹脂成形B社 B1製品は、図に示すように不良率が0.5%でした。

図 樹脂成形品B1製品の不良損失1
図 樹脂成形品B1製品の不良損失1

不良品50個(不良率0.5%)はすべて廃棄し、損失分を補填するため50個多く生産しました。
製造原価 : 29.1円

損失金額= 29.1 × 50 = 1,455 円

1個当たりの損失金額 = 損失金額 ロット数 = 1,455 10,000 = 0.15 ≒ 0.2 円

不良発生前に3.3円あった利益は0.2円 (6%) 減少しました。もし常に0.5%不良が発生するならば、損失金額を最初から見積に入れておきます。
一方、1個当たり0.2円の損失は現場も軽視しがちです。しかし、気づかない間に不良率が増加すれば、損失金額はもっと増えます。

不良率が10倍の5%に上昇した場合を図に示します。

図 樹脂成形品B1製品の不良損失2
図 樹脂成形品B1製品の不良損失2

不良数は500個、その分500個多く生産しました。

損失金額 = 29.1 × 500 = 14,550 円

1個当たりの損失金額 = 損失金額 ロット数 = 14,550 10,000 = 1.45 ≒ 1.5 円

3.3円あった利益は1.5円 (55%) 減少し、半分以下になってしまいました。
しかし「不良率が5%!」と現場に注意を促しても、慢性的に不良が発生していれば、現場に危機感が生まれません。そこで不良率でなく、損失金額を現場に示します。利益が大幅に減少している(場合によっては赤字になっている)ことを現場に伝えて、粘り強く対策を行います。

一方、樹脂成形の場合、不良品を粉砕して再び成形できることがあります。樹脂成形品は原価に占める材料費が高いので、材料が再利用できれば損失金額は小さくなります。図に材料が再利用できる場合の損失金額を示します。

図 樹脂成形品B1製品の不良損失3
図 樹脂成形品B1製品の不良損失3

不良数は500個、損失は加工費用のみです。1個当たり損失金額は14.1円です。これは不良を廃棄した場合の37%でした。

損失金額 = 14.1 × 500 = 7,050 円

1個当たりの損失金額 = 損失金額 ロット数 = 7,050 10,000 = 0.71 ≒ 0.7 円

廃棄した場合の1.5円と比べ損失金額は0.7円に減少しました。それでも1個当たり0.7円の損失が発生しています。しかも500個余分に生産しなければならず、時間当たりの出来高が低下します。

しかし、材料が再利用できるため、現場は不良に無関心になっていることがあります。しかし不良は工場の出来高を減らし生産性を低下させています。

評価よりも対策

不良の損失を減らすためには「その期やその月の損失金額がいくらか」よりも、不良が発生した時点で「正確な状況の把握とスピーディーな対策」が重要です。その上で製品毎、ロット毎の不良率や損失金額を監視します。不良率が悪化するようであれば直ちに手を打ちます。

不良の原因には様々なものがあります。発生するタイミングも様々です。その都度原因を突き止めて対策しなければなりません。また不良には自社だけでなく、顧客に協力してもらわないと解決できないものもあります。

  1. 製造プロセスが不安定
    寸法など特性値が安定しない。ばらつきが大きい。温度などの環境の変化、作業者の違いなどで変化が大きい。
  2. 製品の設計品質が不安定
    そもそも図面の公差が工程に対し厳しい。形状、材質に問題があり必要な形状や精度を実現するのが容易でない。
  3. 製造工程、検査工程のミス
    作業者の作業ミスや機械の設定ミス、検査の見逃しなどヒューマンエラー
  4. 顧客と品質の考え方に相違がある
    傷や色むら、バリ、製品の振動や異音など官能検査の部分で顧客と合否判断が違う

このような問題(不良)は、製造の担当者だけでは解決できません。特に(4)などは上司や顧客も巻き込んで取り組む必要があります。

このように不良の増加は原価に大きく影響することが分かりました。

他にも光熱費や運賃などの費用が上昇すれば利益は減少します。

では光熱費や運賃などの費用が上昇が多発した場合、原価や利益はどれだけ変化するのでしょうか?

経費の増加によるコストアップについては○○を参照願います。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化しました。
中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として、専門的な言葉を使わず分かりやすく書いた本です。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

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利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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【原価計算と見積の基礎】16.歩留とスクラップ費用の影響 https://ilink-corp.co.jp/9587.html https://ilink-corp.co.jp/9587.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:32:39 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9587
【コラムの概要】

材料費は、加工ロス(切削の取り代や端材、成形時の付着など)を考慮し、材料歩留(投入量に対する完成品の割合)を用いて計算されます。歩留改善は原価低減に直結し、発生したスクラップを売却できる場合はその金額を材料費から差し引くことで、より正確な原価が計算できると具体例と共に説明しています。

材料価格の変動と原価について○○で説明しました。

ここでは材料歩留と材料ロス率、スクラップ価格の変動による原価の影響について述べます。

材料歩留と材料ロス率

購入した材料は100%製品にならず材料のロスが発生することがあります。
その場合の材料費は以下の式で計算します。

材料費 = 材料単価 × 使用量 ×(1 + 材料ロス率)

材料ロスの原因

切削加工など除去加工
  • 必要な寸法精度に仕上げるための取り代
  • 定寸材から切り出す場合、切断代と端材
板金プレス加工など成型加工
  • 板材から切り出した端材
樹脂成形など粉体・液体材料
  • 設備や容器に付着して製品にならない材料
  • ランナーなど金型の経路で固まった材料

などがあります。
これを材料歩留〈注2〉といいます。材料費を正しく計算するには、材料歩留を計算します。材料歩留を改善すれば、原価は下がります。

〈注2〉
歩留とは、インプットに対するアウトプットの比率です。歩留には
材料歩留 : 投入した原材料に対する完成品の割合
製品歩留 : 生産数における良品の割合
などがあります。これらを単に歩留と呼ぶこともあります。本コラムは、混同を避けるため、製品歩留、材料歩留と明記します。

切粉や端材を回収業者が買ってくれる場合、その分材料費が下がります。スクラップがお金になる場合、材料費の計算にスクラップ費用も入れます。
これは以下の式で計算します。

材料重量 = 製品重量 + スクラップ重量

材料歩留 = 製品重量 材料重量

材料費 = (材料単価 × 材料重量) - (スクラップ単価 × スクラップ重量)

切削加工の材料歩留の計算例

切削加工では、材料寸法は完成寸法に取り代をプラスします。図では、完成寸法に対し片側で3mmの取り代としました。その結果、
材料寸法 : 106mm
製品重量 : 7.8kg
材料重量 : 9.3 kg

図 切削材料の材料歩留の例
図 切削材料の材料歩留の例

材料歩留 = 製品重量 材料重量 = 7.8 9.3 = 0.84 ≒ 84 %

材料単価 : 300 円/kg

材料費 = 9.3 × 300 = 2,790 円

棒状・板状の材料を定寸材から切断する場合、端材が生じます。端材の分、材料歩留は悪化します。
図では、素材はφ50×1,000mmの定寸材で長さ29mmで切断します。切断のロスを1mmとしました。

図 定寸材から切り出して使用する場合
図 定寸材から切り出して使用する場合

その結果、定寸材から33個取れました。定寸材の価格を取り数33で割ると、材料費は139円でした。

1個の材料重量 : 0.44kg
定寸材のkg単価 : 300円/kg
定寸材の重量 : 15.3kg
定寸材の価格 : 4,590円

材料歩留 = 製品重量 材料重量 = 0.44×3 15.3 = 0.95 ≒ 95 %

プレス加工の材料保留の計算例

図は、プレス加工や板金加工などで四角の板材から丸く切り出す例です。

図 プレス加工(一列配置)の場合の材料歩留
図 プレス加工(一列配置)の場合の材料歩留

製品重量 : 0.098kg
材料重量 : 0.14 kg
材料単価 : 120 円/kg
材料費 : 16.8円

材料歩留 = 製品重量 材料重量 = 0.098 0.14 = 0.7 ≒ 70 %

製品が円形の場合、図のように三列を千鳥に配置すれば、製品の面積の比率が上がり、材料歩留は向上します。

図 三列を千鳥に配置した場合
図 三列を千鳥に配置した場合

1列配置の場合、材料費は16.8円、材料歩留は70%です。しかし3列配置の場合、材料費は14.6円、材料歩留は80%になります。

材料費低減率 = 改善前材料費-改善後材料費 改善前材料費 = 16.8-14.6 16.8 = 0.13 ≒ 13 %

材料費は13%低減できました。プレス加工は、原価に占める材料費の比率が高く、材料歩留を改善すれば原価は大きく下がります。

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「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

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【原価計算と見えない赤字】15.材料価格の変動によるコストアップ https://ilink-corp.co.jp/9584.html https://ilink-corp.co.jp/9584.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:32:01 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9584
【コラムの概要】

製造原価に大きく影響する材料費について解説。材料の種類や購入に伴う副費を説明し、変動する材料費への対応として、原価の上昇分を値上げ交渉する方法と課題を述べている。

 
検査追加によるコストアップについて【原価計算と見積の基礎】14.検査追加によるコストアップで述べました。

材料価格が上昇した場合、原価はどう変わるでしょうか?

材料費の割合が高い製品は、材料価格が変動すれば原価が大きく変わります。そこで材料価格の変動を原価に細かく反映させます。

それに対し、材料費の割合が低い製品は、材料価格の変動を原価に細かく反映してもメリットは多くありません。

材料費について

  1. 材料費の種類
  2. 材料価格の変動と値上げ交渉

の3点を述べます。
 

1. 材料費の種類

 
材料には図1に示す様々なものがあります。

図1 材料の種類


原材料には、固体、粉体や液体、植物や動物など有機物があります。

固体 : 金属材料(棒やブロック形状、板材)など
    粉体や液体 : 樹脂(ペレット)、化学製品、食品など
有機物 : 野菜も果物や食肉など農産物、水産物など
部品 : メーカーの完成品やボルト、ナットなどの資材

原料と材料の違いは、製造工程で物理的・化学的変化があるかどうかです。

原料 : 物理的・化学的な変化がある
材料 : 物理的・化学的な変化がない

です。部品とは、自社の製造工程では加工せずに、そのまま組み立てるものです。

原材料は、固体、粉体・液体、有機物により材料歩留やロス率の考え方が異なります。

また材料費は直接材料費と間接材料費があります。

直接材料費(主に材料費) : 主要材料、購入部品
間接材料費(製造経費) : 補助材料、工場消耗品、消耗工具器具備品

これを図2に示します。

図2 材料費の種類


直接材料費
【原材料、部品】

  • 主要材料・購入部品
  • 部品表に使用量が記載され、製品毎に原価が明確

補助材料費
【補助材料費】例 ボルト・ナット、電線、溶接スタッドなど

  • まとめて購入され、間接製造費用として計上
  • 部品表に使用量が記載され、製品毎に原価が明確(受払記録がある)

【工場消耗品費】例 油・塗料、結束バンド、ボルト・ナット

  • まとめて購入され、間接製造費用として計上
  • 部品表に使用量が記載されず、製品毎に原価があいまい(受払記録がない)

この分け方は企業によっても違います。例えば塗料は、設備メーカーでは原価に占める割合が低く工場消耗品です。

しかし、塗装工場では塗料は原材料(主材料)です。使用量を製品毎に管理して原価に組み込みます。ボルト・ナットも企業により補助材料費だったり、工場消耗品だったりします。

【消耗工具器具備品費】例 刃物、砥石など

  • まとめて購入され、間接製造費用として計上
  • 製品による消耗度合いが不明

切削工具の中で特定の製品で消耗が大きいものは、その製品の原価に入れます。

材料の費用は材料費だけではありません。他にも材料の購入に伴って発生する費用があります。これは材料副費と呼ばれます。(図3)

図3 材料の購入に伴って発生する費用

材料副費には

  • 材料の発注・受入・検収に伴って発生する費用
  • 材料の購入に伴って発生する費用(保険・税金など)
  • 材料の輸送・保管に伴って発生する費用

があります。海外から材料を直接購入する場合は、関税や手数料も発生します。
材料副費の例を以下に示します。( )内は経理での仕訳科目の例です。

【外部で発生する費用】

    • 運送費・荷役費 (荷造運賃)

海外から購入する場合、以下の費用も発生します。

  • 輸出入運賃   (荷造運賃・輸出入運賃)
  • 関税        (輸出入税金)
  • 買取手数料・保険料 (輸出入雑費)

一方、材料の発注や受入には下記のような社内の費用も発生します。
【内部で発生する費用】

  • 検収・整理のための人件費 (労務費)
  • 保管のために倉庫を借りている (保管料)
  • 注文・支払事務の人件費  (労務費・販管費)

材料副費は、材料費、労務費、製造経費、販管費などに計上されます。

材料副費は材料の購入に伴って発生しますが、材料の購入と発生時期がずれ、複数の材料をまとめて計上されるため、どの費用がどの材料に対応するのかわかりません。また運送費や保管料は販管費になっていることもあります。

従って、材料副費も含めた材料費を正確に計算するのは困難です。そこで材料副費は間接製造費用として現場に分配します。

ただし材料を国内と海外のどちらから調達すべきか判断する場合は、材料価格だけでなく、材料副費も含めて判断しなければなりません。

単価は海外の方が安くても、まとめ買いが必要だったり保管費用や倉庫へ運ぶ運賃が必要だったりして、海外の方が高くなっているかもしれません。
 

2. 材料価格の変動と値上げ交渉

 原価に占める材料費の比率が高い製品の場合、材料価格が変動すれば原価は大きく変わります。そこで原価の上昇分を値上げ交渉します。

悩ましいのは、材料費が頻繁に変動する時です。市場価格が頻繁に上がったり下がったりする材料もあります。

顧客が毎月材料費を改訂してくれればいいのですがそうはいきません。図6は材料費が徐々に上昇する例です。

図6 値上げが続く材料費の価格交渉

材料費の上昇が続くため、4月に顧客と値上げ交渉を行いました。

交渉には時間がかかり、発注単価が変わったのは半年後の10月でした。その間も材料価格は上昇し続け、10月の価格は4月より15円高くなっていました。

値上げ交渉しないよりはましなのですが、結局元の利益になりませんでした(実際には発注価格が改訂されるまで、もっとかかった例もあります)。

それならば将来の材料費の上昇も見込んで値上げしたいところですが、これは難しいです。


 

経営コラム【原価計算と見積の基礎】の一覧はこちらを参照願います。

製造業の値上計算と価格交渉については「経営コラム 製造業の値上交渉」を参照願います。
 

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【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

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【原価計算と見積の基礎】14.検査追加によるコストアップ https://ilink-corp.co.jp/9581.html https://ilink-corp.co.jp/9581.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:31:19 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9581
このコラムの概要

製品の検査強化は品質向上に不可欠ですが、コスト増大も招きます。人件費や設備費に加え、検査時間の増加は生産効率を下げ、製品原価を引き上げます。しかし、不良品流出による損失やブランドイメージの低下を防ぐメリットもあります。コスト増大だけを問題視するのではなく、不良品発生による損失と比較検討し、品質とコストの最適なバランスを見極めることが重要です。

 
段取時間の短縮と外段取化について【原価計算と見積の基礎】13.段取時間の短縮で述べました。検査が追加された場合は原価はどうなるでしょうか?

検査費用が最初から見積に入っていれば問題はありません。しかし、見積にない検査をすれば原価は増えています。
あるいは、当初は無検査や抜取検査でした。しかし不良が流出したため全数検査を追加した場合です。全数検査の分、原価が増えています。

この検査の損失について

  1. 検査の種類
  2. 検査費用の違い

を述べます。

1. 検査の種類

検査の種類は大きく分けると

① 全数検査
② 抜取検査
③ 無検査

の3つです。


図1 抜取検査と全数検査

全数検査

 製品をすべて検査する方法です。確実ですが、その分コストがかかります。プレス加工など加工時間が短い製品は、生産時間よりも検査時間の方が長く原価は大きく上昇します。

一方、全数検査でも検査漏れは起きます。全数検査をしても100%良品とは限りません。例えば、人が目視で検査する目視検査では、見逃しがどうしても起きてしまいます。

抜取検査

一定量のサンプルを抜き取って検査する方法です。抜き取ったサンプルの結果を統計的手法を用いて判定します。

図2の検査は、1,000個から10個を抜き取り「不合格品が1個以内なら合格」でした。不合格品が2個あれば、そのロットは不合格です。その場合、このロットは全数検査をします。

この抜取検査の方法はJIS(JIS Z 9002~9004、Z9015)に詳しく記載されています。実際はJISに規定された方法でなく「1,000個生産したから5個抜き取って検査」と抜取り数を適当に決めていることもあります。

製品の強度や溶接・半田付けなど接合部の強度は、破壊しなければ測定できません。従って検査したものは使えません。硬さ測定も製品にくぼみをつけるため、検査したものは使えません。こうした製品は抜取検査しかできません。

抜取検査の課題は、

  • 不良品が流出することがある
  • 誤判定がある

この2点です。これはサンプルからロット全体を(統計的手法で)推定するためです。つまり100%良品を保証することは抜取検査ではできないのです。

その一方、強度測定のように抜取検査でしかできない検査があります。今日、品質に対する要求は厳しく、顧客は「100%良品」を求めます。しかし抜取検査は100%良品を保証できません。だからといって全数検査をしても100%良品とは限りません。

100%良品を保証するには、以下の2点が重要です。

  • ポカヨケのような不良品をつくらない仕組みをつくって、100%良品ができるようにする
  • ばらつきを抑えて不良の発生確率を低くする。

では、この抜取検査の費用はいくらでしょうか。

抜取検査の場合、1個当たりの検査費用は、検査費用に抜取りの比率をかけて計算します。

無検査

検査しないことです。

  • 規格から外れても、後工程や客先で発見できる
  • 規格から外れても、その影響は限られるので検査費用をかけるまでもない
  • 規格に対し、製品の品質が十分に高い

このような場合、無検査で製造します。

3種類のどの検査方法を採用するかは、製品の特長や品質に対する考え方によって異なります。

2.検査費用の違い

 見積に全数検査が入っていないのに、全数検査を追加すれば原価は増えます。赤字になることもあります。何とか全数検査をやめたいところです。

そこで顧客に全数検査の廃止を理解してもらうために、コストダウンを訴えます。では、検査をやめるといくらコストダウンになるのでしょうか?

無検査、抜取検査、全数検査でどれだけ原価が変わるのか、具体的な数値で確認します。
 

機械加工A社 A1製品の場合

機械加工A社 A1製品の原価を無検査、抜取検査、全数検査で比較します。検査は各寸法をノギス、マイクロメーターで行いました。

検査時間 : 3分(0.05時間)
検査のアワーレート : 2,350円/時間

検査費用を以下に示します。

【全数検査】
検査費用=検査のアワーレート×検査時間
=2,350×0.05
=117.5 ≒ 120 円 

全数検査追加による原価の上昇は120円でした。

【抜取検査】
抜取検査の数 : 100個中5個抜取

A1製品の抜取検査、全数検査の製造費用と利益を図2に示します。

図2  A1製品 検査追加による製造費用と利益

検査費用       利益
無検査 : 0円   無検査 : 50円
抜取検査 : 6円   抜取検査 : 44円
全数検査 : 120円   全数検査 : ▲100円
抜取検査追加では、利益は6円減少し、全数検査では、利益は100円の赤字でした。

検査費用が見積に入っていない場合、全数検査を追加すれば原価は大幅に増加します。

抜取検査は1個あたりの検査費用が5/100に減少します。そのため検査費用は6円、抜取検査の影響は多くありません。そのため抜取検査の費用を原価と考えない企業もあります。

この記事を書いた人

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化しました。
中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として、専門的な言葉を使わず分かりやすく書いた本です。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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【原価計算と見積の基礎】13.段取時間の短縮 https://ilink-corp.co.jp/9579.html https://ilink-corp.co.jp/9579.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:30:25 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9579
このコラムの概要

製造業において、多品種少量生産が進む中、段取時間の短縮は極めて重要です。この取り組みは、生産停止時間を減らすことで設備の稼働率を高め、製品あたりの固定費を削減します。また、人件費や在庫コストの削減、さらにはリードタイム短縮による顧客満足度向上にも繋がります。段取時間の短縮は、単なる効率化に留まらず、企業の競争力強化に不可欠な経営戦略です。

 
ロットが減少すれば利益が少なくなります。これについては【原価計算と見積の基礎】12.ロットの減少によるコストアップで説明しました。

それでも利益を出すためには、段取費用を削減します。これには段取時間の短縮や外段取化があります。ここでは

  1. 段取の種類
  2. 段取時間の短縮
  3. 外段取化
  4. 段取時間の短縮と外段取化のコスト削減効果

について述べます。

1.二種類の段取

一般的に「段取」と呼ばれる作業は、二種類あります。1つは「品種の切替」、もう1つは「新たな製品の生産準備」です。 

品種の切替

 現在生産中の製品を「すでに実績がある別の製品」に切り替えることです。

今日では製品の種類が増え、大量生産の工場も以前より頻繁に段取を行っています。
多品種少量生産では段取の頻度はさらに高くなっています。そのため段取時間は生産性に大きく影響します。段取で行うことは加工方法によって変わります。具体的には以下の内容です。

【機械加工】
加工プログラムの切替、刃物の交換、加工治具の準備、設定値の入力など

【樹脂成形】
金型の交換、樹脂原料の入れ替え、射出成形機の設定など

【プレス加工】
金型の交換や材料の入れ替え

段取後は、テスト生産を行い品質を確認します。問題があれば製造条件を調整します。品質に問題がなければ生産を開始します。
すでに実績がある製品なので製造条件は確立し、作業手順も決まっています。そのためできるだけ短時間に行います。できれば目標時間を決め、実際にかかった時間を記録します。

新たな製品の生産準備

 これは「今まで実績のない製品」の生産準備です。以下の作業が増えます。

【機械加工】
加工プログラムの作成やテスト加工

単品生産や多品種少量生産では、日々新たな製品を生産します。日常の段取の多くはこの「新たな製品の生産準備」です。

【プレス加工、樹脂成形加工】
新しい金型を使ったテスト加工、加工条件の調整です。量産の現場ではそれほど多くありません。

プレス加工、樹脂成形加工など量産工場では、「品種の切替」を段取と呼び、新たな製品の生産準備は「生産立ち上げ」や「生産準備」と呼ぶこともあります。

この新たな製品の生産準備は、時間よりも作業の正確さとその後の生産の品質が安定していることが重要です。最初の設定に問題があれば、その後不良品を大量に生産してしまいます。

このように、2種類の段取では内容や要求されることが違います。では段取時間はどうやって短縮すればよいでしょうか。

2. 段取時間短縮の方法

 実際に段取作業を観察すると、様々な課題が見つかります。

  1. 段取に必要な治具や金型が近くにないため、遠くまで取りに行っている。あるいは治具や金型が見つからず探している。
  2. 治具や金型を取り付ける位置が定まっていないため、調整や芯出しをしている。
  3. 交換部分がユニット化されていないため、交換に時間がかかる(例 マシニングセンタのツールホルダの数が十分になく、ツールホルダの交換でなく、ツールホルダの刃物を交換している)。
  4. 段取作業中、締め付けるボルトの数が多く、締め付けに時間がかかっている。
  5. 段取の手順が作業者によってバラバラで、段取時間も作業者によって異なる。

このような課題を改善します。一方、段取時間は同じでも、段取を生産中に行えば、設備の停止時間を短くできます。これが外段取化です。

3. 外段取化

 外段取とは、生産中に次の生産の段取を行うことです。

例えばプレス加工や樹脂成形加工では、生産中に次の金型を運びます。樹脂成形加工では、すぐに生産できるように予めヒーターで金型の温度を上げておきます。

このように生産中に行う段取を「外段取」と呼びます。これに対して設備を止めて行う段取を「内段取」と呼びます。「内段取」の一部を「外段取化」すれば、段取中の設備の停止時間を短くできます。

図1では、金型交換1時間のうち、30分を外段取化しました。その結果、内段取時間は30分に短縮できました。

図1 射出成形機の外段取化

マシニングセンタの外段取

 マシニングセンタには、図2に示すようにワークをパレットと呼ばれる治具に固定し、このパレットを自動で交換するものがあります。

パレットを自動で交換する装置をパレットチェンジャー(PC)と呼びます。パレットの交換は自動で行いますが、パレットからのワークの着脱は作業者が行います。パレットには異なるワークを取り付けることができるため、パレットを交換すれば品種を切り替えることができます。またパレットチェンジャーに多くのパレットをセットすれば、夜間無人で生産できます。

図2 パレットチェンジャー

4. 段取時間短縮と外段取化のコスト削減効果

射出成型加工の外段取化の効果

 樹脂成形加工B社 B1製品 (ロット1,000個)、外段取化によって原価がどれだけ改善されるのでしょうか。

【従来】
段取時間(内段取) 1時間

【改善後】
外段取時間0.5時間 内段取時間0.5時間

外段取は生産中、作業者が空いている時間を使って行います。そのため外段取の人の費用はゼロです。

ロット数 : 1,000個
加工時間 : 0.0167時間 (1分)

この時の改善前と改善後の製造費用、利益を図3に示します。

図3 段取時間短縮の効果

製造費用          利益
段取1時間 : 16.7円   段取1時間 : 0.2円
段取0.5時間 : 15.2円    段取0.5時間 : 2.0円

ロット1,000個では0.2円しかなかった利益が、段取時間を短縮したことで2.0円に増加しました。全体の製造時間も短くなり、時間当たりの出来高も増えました。

この外段取化のコスト低減は、作業者が空いている時間に行うことで人の費用がゼロになったためです。生産中作業者が手一杯で、外段取のため他から応援してもらう場合は、人の費用が発生します。そうなると外段取化のコスト低減効果は大幅に減少します。

実は外段取化の最大のメリットは、設備の稼働時間が長くなることです。しかし、それをお金に変えるには、稼働時間が長くなった分、生産量を増やす、つまり受注を増やさなければなりません。外段取化を進めても受注が増えなければ利益は増えません。

では検査が追加されると原価はどれだけ変化するのでしょうか?

検査の追加によるコストアップについては【原価計算と見積の基礎】14.検査追加によるコストアップを参照願います。

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  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

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  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
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  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

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【原価計算と見積の基礎】12.ロットの減少によるコストアップ https://ilink-corp.co.jp/9576.html https://ilink-corp.co.jp/9576.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:28:48 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9576
このコラムの概要

多品種少量生産が進む現代において、生産ロットの減少は製品原価を上昇させます。これは、生産量に関わらず発生する固定費(減価償却費、人件費など)を少数の製品で分担するためです。ロットが減ると、製品あたりの固定費負担が大きくなります。また、段取り替え時間や材料費も増加する可能性があります。このコスト増を正確に把握し、価格設定に反映させることが、多品種少量生産における重要な経営課題となります。

 
自動化や多台持ちにより原価は大幅に下がりました。
では、ロットの大きさが変われば原価はどのくらい変わるでしょうか。

ここでは機械加工A社、樹脂成形加工B社のロットの違いによる原価の違いを比較します。
 

機械加工A社、樹脂成形加工B社のロットの違いによる原価の違い

 
1個の製造時間は

ロットが大きくなれば、1個当たりの段取時間が短くなります。加工時間に比べて段取時間の長い製品は、ロットが変わると原価も大きく変わります。

では、ロットの違いにより原価はどのように変わるのでしょうか。具体的な数値で検証します。

機械加工A社

 多品種少量生産の例として機械加工A社について考えます。A社のA1製品のロットが100から20に減少しました。ここで

段取時間 : 0.5時間
加工時間 : 0.07時間

です。製造時間と製造費用を図1に示します。

図1 ロットの違いによる製造費用と利益


製造費用          利益
ロット100 : 380円   ロット100 : 50円
ロット20 : 480円    ロット20 : ▲70円

ロットが100から20に減少したことで1個当たりの段取時間は5倍になりました。その結果、製造費用は100円増加しました。
ロット100個では50円の利益がありましたが、ロット20個では70円の赤字になりました。

このように中小ロットの場合、ロットの大きさがわずかに変わっても原価が大きく変わります。では大量生産ではどうでしょうか。 

樹脂成形加工B社

 樹脂成形加工B社 B1製品のロットが10,000個から1,000個に減少しました。

段取時間 : 1時間
加工時間 : 0.0167時間 (1分)

製造費用と利益を図2に示します。

図2 ロットの違いによる製造費用と利益

製造費用          利益
ロット10,000 : 14.1円   ロット10,000 : 3.3円
ロット1,000 : 16.7円    ロット1,000 : 0.2円

このように段取時間が長くても、ロットが大きければ1個当たりの段取費用は小さくなります。

しかしロットが減少すれば、1個当たりの段取費用が増えて原価が上昇し、利益は0.2円に減少しました。 

ロットが大きくても小さくても、ロットの減少は原価に影響する

 中少量生産でも大量生産でも、ロットの大きさが変われば原価は変わります。しかしロットの小さい製品は、ロットの大きさが変わっても担当者は原価が大きく変わるとは思っていません。

発注先が1つの単価しか設定できない場合、ロットが変わっても同じ単価で発注されます。しかし、ロット100とロット20では原価は大きく違います。ロットが減少すれば価格交渉しなければなりません。

一方、納期に間に合わせるため、現場がロット100をロット20に分けて生産することもあります。ロットを分割すれば原価が上がることを現場に理解してもらい、現場が適切に判断できるようにします。では段取時間によって原価はどれだけ変化するのでしょうか?

段取時間の変化と外段取化については【原価計算と見積の基礎】11.段取時間の短縮を参照願います。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化しました。
中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として、専門的な言葉を使わず分かりやすく書いた本です。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
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【原価計算と見積の基礎】11.自動化とロボットの活用 https://ilink-corp.co.jp/9574.html https://ilink-corp.co.jp/9574.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:27:55 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9574
このコラムの概要

製造業における自動化・ロボット導入は、人件費削減、生産効率向上、品質安定化を通じて製品原価を大幅に下げます。初期投資は高額ですが、24時間稼働による生産能力の最大化や従業員の安全確保など、長期的な視点でのメリットは多大です。これにより、企業の競争力強化に不可欠な戦略となります。成功には、適切な導入計画と原価分析が鍵です。

設備の大きさによる原価に違いについて【原価計算と見積の基礎】10.高い設備は原価が高いのかで説明しました。

一方、今日では多くの設備がコンピューター制御化(NC化)され、起動ボタンを押せば自動で生産します。この時、原価はどうなるのでしょうか。

この自動化・無人化に関し、以下の6点について述べます。

  1. 人と設備、段取と加工の組合せ
  2. 無人加工と有人加工の違い
  3. 無人加工中の作業者の費用
  4. 人をロボットに置き換えた場合

1. 人と設備、段取と加工の組合せ

 人と設備が稼働する場合、どのように原価を計算するのでしょうか。最初に図1に示すように製造費用を人と設備、段取と加工(製造)で分けて考えます。

図1 段取と加工

図1で加工中の人と設備の組み合わせから

  • 有人加工 (人と設備が同時に加工)
  • 人のみ
  • 無人加工 (加工は設備のみ)

この3つがあります。無人加工の場合、段取は

内段取 : 設備を止めて段取
外段取 : 生産中に設備を止めずに段取

の2つがあります。

「人のみ」の現場で設備を一部使用する場合、設備の費用は、その現場の間接製造費用とします。そしてアワーレート間(人)の計算に入れます。同様に「無人加工」の現場で一部人が関与する場合、人の費用はその現場の間接製造費用とし、アワーレート間(設備)の計算に入れます。

なお、本コラムで原価に段取費用を入れているのは、ロットの大きさが変わると原価も変わるためです。

ロットが少なくなれば1個当たりの段取費用が高くなり原価が上がります。これが原因で赤字になることもあります。一方、大量生産で段取がほとんどない場合、段取費用は原価に入れません。その場合、段取は生産ロスと考えます。

2. 無人加工と有人加工の違い

  有人加工 : 加工中、作業者が設備を常時操作する
無人加工 : 加工中、作業者は設備についていない

この違いを段取と加工に分けて説明します。

有人加工

 【段取】
作業者は設備を止めて段取を行うため、人と設備の両方の費用が発生します。

【加工】
作業者は設備を常に操作するため、加工中も人と設備の両方の費用が発生します。

図2 有人加工

有人加工の場合、製造費用は人の費用と設備の費用の合計です。

人と設備の時間が同じであれば、アワーレートはアワーレート間(人)とアワーレート間(設備)の合計です。これをアワーレート(人+設備)と呼ぶことにします。

アワーレート間(人+設備)=アワーレート間(人)+間アワーレート(設備)  

無人加工

 【段取】
有人加工と同じです。作業者は設備を止めて段取を行うため、人と設備の両方の費用が発生します。

【加工】
設備が自動で加工し、作業者は設備から離れます。加工中は設備の費用のみ発生します。

図3 無人加工

ただし無人加工での作業者の費用がゼロになるには、加工中、作業者は他の現場で「別のお金を稼ぐ仕事」をする必要があります。

「お金を稼ぐ仕事」とは「見積に入っているバリ取りや検査など」です。見積に入っていない検査や次の生産準備はお金を稼いでいません。その場合は加工中も人の費用がかかると考えます。その場合、無人加工でも原価は有人加工と同じです。

設備が無人で加工を続けるには、材料の自動供給と製品の自動取出し(自動排出)の機能が必要です。こういった機能がなく材料の供給と製品の取出しを作業者が行う場合はどうなるのでしょうか。

この時、作業者が複数の設備を担当することがあります。これが多台持ちです。  

多台持ち

  作業者が1人で複数の設備を担当することです。大量生産の工場でよく行われます。1人で2台担当すれば2台持ち、3台担当すれば3台持ちと呼びます。以下は2台持ちの説明です。

【段取】
作業者は設備を止めて段取を行うため、人と設備、両方の費用が発生します。

【加工】
2台持ちの場合、作業者は2台の設備を担当します。

設備の費用は有人加工と同じですが、人の費用は1/2です。

図4 多台持ち

A社のマシニングセンタ1(小型)の年間費用(実際の償却費)140万円です。これは正社員より低い金額です。従って無人加工で人の費用がゼロになれば原価は大きく下がります。2台持ちは人の費用が半分になります。有人加工より原価は低くなります。

一方、無人加工中作業者は他の現場で「別のお金を稼ぐ仕事」をする必要がありますが、これはなかなか難しいです。

実際は加工中作業者がその現場で設備の状態を監視したり、製品の検査や仕上げ作業を行ったりしています。この場合、加工中の作業者の費用はどう考えたらよいでしょうか。

3. 無人加工の作業者の費用

 この場合、無人加工中の作業者の費用は、設備の間接製造費用と考えます。図5は、無人加工の設備が4台あり、2人の作業者が担当しています。

作業者は、設備の段取を順に行い、段取が完了すれば設備は無人で加工します。段取が終われば、作業者は次の段取の準備や完成品の品質確認を行います。無人加工でも多くの現場はこのようにしています。

図5 無人加工中の作業者

この場合、加工中も作業者の費用は発生します。ただし加工中作業者は複数の設備を担当し、作業者の費用がどの製品にどのくらい生じているのかわかりません。そこで加工中の作業者の費用は、設備の間接製造費用とします。

アワーレート間(設備)は

図5の例では4台の設備に作業者が2名なので2台持ちと同じです。作業者の持ち台数が多くなれば、原価はさらに下がります。

作業者の費用は、加工中は設備の間接製造費用、段取中は直接製造費用です。そこで作業者の日々の時間の中で段取時間と加工時間の割合が必要になります。ただしこの比率を正確に調べるのは大変なので、数日間サンプルを取って代表値とします。これを図6に示します。

図6 無人加工の作業者の費用

図6は設備が4台、作業者が2名の場合

作業者の段取時間と加工時間
段取 : 2,200時間 (50%)
加工 : 2,200時間 (50%)

設備は4台なので合計時間は
段取 : 2,200時間
加工 : 6,600時間

段取中は、人と設備の費用が両方発生するため、段取のアワーレートは、アワーレート間(人)とアワーレート間(設備)の合計です。
加工中は設備の費用のみです。ただし、人の費用は間接製造費用としてアワーレート間(設備)に含まれます。その結果

段取のアワーレート : 3,670円/時間 (2,610+1,060)
加工のアワーレート : 2,180円/時間

4. ロボットの導入

 ロボットを導入して無人加工ができれば原価は下がります。しかし、従来の産業ロボットは高価で安全フェンスのため広い場所も必要で、導入は容易ではありませんでした。

近年、スピードはそれほど速くないのですが、安価で安全フェンスも不要な協働ロボットが普及してきました。こういったロボットを導入した場合、原価はどうなるのでしょうか。

図8 ロボット化の場

500万円のロボットでも5年間使用すれば、年間のロボットの費用(実際の償却費)は100万円、パート社員と変わりません。ただし協働ロボットは、スピードは遅いため人よりも時間は長くなります。

しかし、人は24時間働けませんが、ロボットは24時間働けます。ロボットは有休もとりません。人は作業スピードが遅くなったり、トイレのために抜けたりしますが、ロボットは一定のスピードで動き続けます。

そこで現在の作業のままロボットを人と置き換えるより、スピードは劣っても24時間稼働できるロボットの特徴を生かして作業を見直しします。ロボットを導入することで設備が長時間稼働できればアワーレート(設備)が下がり原価が低くなります。
ロボット化でどれだけ原価は下がるのでしょうか。

では製造ロットが変わると原価はどれだけ変化するのでしょうか?

ロットの減少によるコストアップについては【原価計算と見積の基礎】12.ロットの減少によるコストアップを参照願います。

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