タイで売っていた商品を1兆円ビジネスにした男 ディートリッヒ・マテシッツ

1984年、オーストリア人ディートリッヒ・マテシッツは、

ユニリーバのマーケティングマネージャーの仕事を辞め、

中国系タイ人チャリアオ・ユーウィッタヤーと50万ドルずつ出資して飲料の会社を設立しました。
それから2年間で35万ユーロ(約4500万円)あったマテシッツの貯金は底をつきました。

しかし、その28年後の2012年、その飲料は世界中で52億本が売れました。

さらに、2010年には彼の所有するF1レーシングチームのステファン・ベッテルがワールドチャンピオンになりました。

F1

 

そう彼は、エナジードリンク「レッドブル」の創設者です。

 

1982年、ユニリーバのマーケティングマネージャーとして、世界中を飛びまわっていたマテシッツは、ニューズウィーク誌のある記事に目を留めます。

その記事には、日本の高額納税者の1位が、彼が見たこともない企業「大正製薬」であると書いてありました。

マテシッツは、大正製薬がリポビタンDという滋養強壮作用のある飲料のメーカーであることを知りました。

この飲料の可能性を予感したマテシッツは、それから世界中の行った先々で、この手の飲料を試しました。

そして、タイでクラティンディーン、タイ語で「赤い雄牛」という名のドリンクに出会いました。

クラティンディーンにほれ込んだマテシッツは、中国系タイ人チャリアオ・ユーウィッタヤーと50万ドルずつ出資してレッドブル・トレーディング社を設立しました。

 

オートリアに戻ったマテシッツは、ヨーロッパ人の好む味に修正し、販売の為の認可を取るために奔走しました。

その間に35万ユーロ(約4500万円)あった彼の貯金は底をつきました。

そして1987年、ようやくオーストリアでレッドブルの販売の認可が下りました。

その年、数十万本が売れました。

売上高は、80万ユーロ(9400万円)でしたが、広告宣伝に100万ユーロも費やしました。

その後、3年目になってようやく黒字になりました。

 

マテシッツは、レッドブルを価格の高いハイエンド製品と考え、そのためのマーケティングに集中しました。

しかし、マテシッツは広告代理店を雇う金がなかったので、大学時代の同級生で広告代理店を営むヨハネス・カストナーに声をかけました。

そしてカストナーとマテシッツの果てしない議論の上に生まれたコピーが

「Red Bull gives you wings」(レッドブル翼を授ける)です。

そして発売から5年間、オーストリアだけで販売していたマテシッツは、1992年ハンガリー、1994年ドイツで販売します。

ドイツでは、爆発的に売れ、一時製造が追いつかなくなりました。

この時、ドイツでマーケティングに費やした費用は、750万ユーロ(8.9億円)、当時としては常識破りの金額でした。

 

このレッドブル社、工場も倉庫もありません。

実はレッドブル社は、マーケティング会社なのです。

製造は、オーストリアの企業、ラルフ・フルフトザフト社が独占的に行っています。

実は、皆さんが飲んでいるレッドブルは、ヨーロッパ製なのです。

 

このレッドブルの価値は何でしょうか。

 

レッドブルの価値は、あの牛の商標です。

世界中で52億本が売れているレッドブル、その売上の1/3を広告とブランドの育成に費やしているのです。

広告宣伝の費用は、広告宣伝費が日本最大のトヨタ自動車をも、大きく超えます。

しかし、イベントは広告代理店に丸投げせず、自社で開催しています。

そのために50以上もの子会社があり、それぞれイベントの企画やマーケティングを行っています。

従って、オーストリアの本社には300人しかいません。

そのレッドブルの広告は、飲み物「レッドブル」を一切宣伝していません。

レッドブルの商標をつけたイベントや大会、チームを宣伝しているのです。

対象となるスポーツは、ハンググライダー、マウンテンバイク、フリークライミング、スノーボードなど、危険性の高いエクストリームスポーツです。

マテシッツ自身もこういったスポーツが大好きで、自らを「爆音狂」と呼ぶほどエンジンのついた乗り物が大好きです。

air_race

マテシッツは、これらのスポーツを宣伝の為に利用するのではなく、大会を自ら開催し、選手をサポートし、選手の育成のための施設を作り、積極的に応援しています。

 

そしてエアーレース レッドブル・エアレース・ワールドシリーズが先日5月17日初めて日本で開催されました。

私たちがレッドブルを飲むとき、自分も危険な技に挑んで、クールに技を決める選手になった気がします。

 

そうレッドブルは、私たちの心に翼を授けるのです。

 

そして何よりマテシッツ自身が、毎日レッドブルを12本も飲むレッドブルのファンなのです。

 

多くのメーカーでは、良いものをより安くつくることに努力しています。

しかし海外からの安価な製品との競争により、苦しい戦いになっています。

それに対して、マテシッツは「今あるものに、価値を作ること」に成功しました。

 

価値とは何か?

大変興味深い事例です。

 

より詳しく知りたい方は、以下の本が参考になります。

「レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか」ヴォルフガング・ヒュアヴェーガー 著 日経BP社

 

経営コラム ものづくりの未来と経営

人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中

ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?

未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?

経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。

こちらにご登録いただきますと、更新情報のメルマガをお送りします。
(登録いただいたメールアドレスは、メルマガ以外には使用しませんので、ご安心ください。)

経営コラムのバックナンバーはこちらをご参照ください。
 

中小企業でもできる簡単な原価計算のやり方

 
製造原価、アワーレートを決算書から計算する独自の手法です。中小企業も簡単に個々の製品の原価が計算できます。以下の書籍、セミナーで紹介しています。

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」

中小企業の現場の実務に沿ったわかりやすい個別製品の原価の手引書です。

基本的な計算方法を解説した【基礎編】と、自動化、外段取化の原価や見えない損失の計算など現場の課題を原価で解説した【実践編】があります。

ご購入方法

中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書 【基礎編】

中小企業・小規模企業のための
個別製造原価の手引書 【基礎編】
価格 ¥2,000 + 消費税(¥200)+送料

中小企業・小規模企業のための
個別製造原価の手引書 【実践編】
価格 ¥3,000 + 消費税(¥300)+送料
 

ご購入及び詳細はこちらをご参照願います。
 

書籍「中小製造業の『製造原価と見積価格への疑問』にすべて答えます!」日刊工業新聞社

書籍「中小製造業の『製造原価と見積価格への疑問』にすべて答えます!」
普段疑問に思っている間接費・販管費やアワーレートなど原価と見積について、分かりやすく書きました。会計の知識がなくてもすらすら読める本です。原価管理や経理の方にもお勧めします。

こちら(アマゾン)から購入できます。
 
 

 

セミナー

原価計算と見積、価格交渉のセミナーを行っています。

会場開催はこちらからお願いします。

オンライン開催はこちらからお願いします。
 

 

簡単、低価格の原価計算システム

 

数人の会社から使える個別原価計算システム「利益まっくす」

「この製品は、本当はいくらでできているだろうか?」

多くの経営者の疑問です。「利益まっくす」は中小企業が簡単に個別原価を計算できるて価格のシステムです。

設備・現場のアワーレートの違いが容易に計算できます。
間接部門や工場の間接費用も適切に分配されます。

クラウド型でインストール不要、1ライセンスで複数のPCで使えます。

利益まっくすは長年製造業をコンサルティングしてきた当社が製造業の収益改善のために開発したシステムです。

ご関心のある方はこちらからお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

 


ページ上部へ▲

メニュー 外部リンク