減価償却費の意味を誤解することで、現場が誤った判断をする例についてご紹介します。
減価償却費の特徴
減価償却費は、税法や会社法の影響を受け、実際の設備の価値の低下とずれています。
また減価償却費は、設備や資産を購入した費用ですが、そのお金は購入した年に使ってしまっています。
しかし会計上の費用は、それ以降も毎年発生します。
ということは、実際のお金で考えると、減価償却をどういじっても、出ていくお金はもう変わりません。
購入した年にお金は使ってしまっているからです。
減価償却より、実際の生産を上げる
では、どうしたら儲かるのか?
それは今ある設備をフルに動かして、少しでも多くの製品を短時間で生産することです。
その場合、減価償却費の高い低いは関係ありません。
つまり減価償却費の高い設備を使おうが、安い設備を使おうが、会社から出ていくお金は全く変わりません。
細かく原価計算すると、製造原価は変わります。
しかしそれは会計の世界で数字が変わるだけで、現実の生産には影響ありません。
レートの高い設備は高い?
こんなことを言う人がいます。
「そんな簡単な仕事は、マシニングセンタのようなレートの高い機械を使わないで、ボール盤でやれ!」

この場合、現場の判断基準が「早くつくること」でなく、機械の減価償却になっています。
しかし設備を買ってしまったら、減価償却のことは、現場は忘れて、生産性を上げる事だけを考えた方が良いのです。
実際には、単純な穴明けは、マシニングセンタよりボール盤の方が早い場合もあるかもしれません。
しかし穴明けのためだけに、マシニングセンタから降ろして、ボール盤に乗せ替え、作業者が1個1個手で加工していては生産性が上がりません。
あるいはマシニングセンタはフルに稼働しているから、ボール盤で済む仕事はボール盤で行い、マシニングセンタはマシニングセンタしかできない仕事をするのであれば、正しいと思います。
そうでなければ、いかに短時間でできるか、生産性の追求に注力すべきです。
設備導入時に注意すべきこと
一方、設備を導入する場合、設備の価格により減価償却費は大きく変わります。
特に昨今は高機能かつ高価格の設備が多くなっています。
今までの設備を更新する場合、新しい設備が高価な設備だとその分減価償却費は増加します。その結果、賃率が上がります。
そうなると今までより単価が高く、利益率の高い仕事を受注する必要があります。
今までと同じ仕事では、利益が低下します。
高い設備は価格競争力が低下
例えば、5軸加工の必要がなければ、5軸マシニングセンタの導入はコストアップと価格競争力低下の原因となります。

板金加工でも、タレパン・レーザー複合機は、タレパンだけの機械よりも高価です。

しかし一度に使用できるのは、タレパンかレーザーのどちらかです。
高価な機械に見合った付加価値の高い仕事を受注できれば良いのですが、今までタレパンでできていた仕事をタレパン・レーザー複合機に置き換えるとコスト競争力が低下します。
そうかといって、今までと同じ設備ばかり更新していれば、技術の進歩から取り残されてしまいます。
設備に見合った付加価値の高い受注
ではどうしたら良いのでしょうか?
従来の一般的な加工は、改善を継続しコストダウンを進めていきます。
その上で、今後導入したい高機能な設備を選定し、それに見合った受注価格を考えます。
そしてそのような高付加価値の仕事が受注できるような取り組みを行います。
今後難易度の低い部品は、新興国へ流れていくことは止められません。
しかし難易度の高い高付加価値の部品を製造できれば、それと合わせて低付加価値の仕事も受注できます。
そのような長期的な視点での取組が必要になってきます。
その上で、今後の製品や技術の変化や動向に注意を払い、慎重に選定します。
設備の不利な点
経営コンサルタントの一倉定氏は、以下のように述べています。
設備投資のまず第一の不利は、設備資金の金利、減価償却、維持費などの増加と、設備を使う人の人件費などの固定費増加による損益分岐点の上昇である。
第二には、設備資金の返済による資金繰りの圧迫である。
不況による売り上げ減少時などに、本当に骨身にこたえるという経験をお持ちの方は、相当いる筈である。
第三の、そして最も重大な不利は、変化に対応する機動力と弾力性がなくなっていくことである。設備は、これが順調に働いてくれてこそ武器である。働かない設備ほど始末の悪いものはない。
そしてその危険は常に外部にあるのだ。
市場は変化する。お客様の好みは変わってゆく。得意先の方針が変わる場合もある。
いつ、わが社の設備でつくられた商品が陳腐化したり、あるいは全く売れなくなるか分ったものではない。
(一倉定の経営心得より)
単発プレスを並べたトランスファーライン、NC旋盤とローダーを組合せた量産ライン、ツールが少ないマシニングセンタ、完全自動の組立ライン、
現場の片隅でホコリをかぶっていた設備の例です。
その多くが、生産品種が増加し、段取り替えが増えたために使えなくなってしまったものです。
少なくとも償却期間が終わる時点の外部環境や製品の変化を予測して、設備は導入する必要があります。
予測が当たるとは限りませんが…。



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