段取り時間短縮 その2
前回は、段取り替え時間短縮の取組を機械加工工場をモデルにお話ししました。
今回は、樹脂の射出成型を例に取り、その取組のヒントをご紹介します。
段取り替え時間の短縮の5ステップは、
ステップ0 現状の段取り替え時間を測定します。
ステップ1 段取り替え作業を分析します。
ステップ2 内段取りと外段取りに分けます。
ステップ4 内段取りで行なわれている作業を外段取りで行なうようにします。
ステップ5 段取り作業自体を簡単にします。
でした。
実際には、当初は、ムダ取りから始めるケースが多いです。
例えば、成型機では、次の生産用の金型の置き場が整理されてなく、作業者が現場を歩き回って探している事があります。
金型に識別のラベルを貼り、すぐに分かるようにします。
また金型の置き場を、製品の種類毎や発注先毎にするなどのルールを決めてすぐに探せるようにします。
また必要な工具がキャビネットなどにしまわれていて、取り出すのに時間がかかる場合があります。
ある企業では外部から5Sの指導を受けた際に、整理整頓を励行するため、工具を工具キャビネットの中にしまうように指示を受けました。
しかし使用頻度が高い工具を遠くのキャビネットにしまうと、歩行距離が長くなり取り出す手間も増えたため、次第に守られなくなりました。
必要な工具を厳選して、作業する場所の近くに引っかけたり、置き場を設けると共に適切に表示して、すぐに取り出せるようにします。
次に内段取りの外段取り化に取組みます。
成型機などでは、金型の予備加熱にかかる時間が最も多くかかります。
予備加熱装置を購入して、予備加熱を外段取り化すれば段取り替え時間は大幅に削減されます。
一方これは費用もかかります。
そこで次に段取り替え時間の短縮に効果があるのは、金型交換後の試し打ち時間の短縮です。
製品の大きさや形状が変われば、金型温度や材料の射出圧力などの成型条件が変わります。
オペレーターは、試し打ちをしてできあがった製品を測定したり、外観を見て、成型条件を調整します。
この調整のやり方はオペレーターによって様々なやり方があり、試し打ち時間も異なります。
この調整方法を標準化すれば、試し打ち時間のばらつきを減らすことができ、生産に入ったときの品質を安定させることができます。
特に近年は、カケ、ソリ、キズ、バリなどの形状だけでなく、異物やウェルト、シルバーといった外観不良も厳しくなっている場合があります。
さらに一度不良を出すと全数検査が必要になってしまうときもあります。
一度全数検査になると、それを抜き取り検査に戻すのが容易でありません。
ある工場では、成型品質が安定しないため調査したところ、オペレーターによっては、できるだけ早く段取り替え作業を済ませたいという気持ちから、金型の昇温が不十分と感じつつも、圧力を高めにして生産を開始していました。
ところが生産を開始すると、金型の温度がさらに上昇するため、当初の圧力では高すぎてしまい品質がばらつきます。
それをさらに温度や圧力を調整するため、生産中の品質が不安定になっていました。
そこで生産開始する際の温度を決めておくと品質が安定しました。
成型機のように温度と圧力のようないくつものパラメーターを変えて調整する設備では、調整方法を作業者に任せておくと、作業者毎のやり方が発生してしまいます。
そして基準があいまいとなり、製品を出来映えを見ながら、あちこちのパラメーターを変えてしまい、製品の品質が安定しなくなります。
そこで調整する順序と、判断基準を明確にします。
さらに製品毎に調整結果を記録し、リピート生産の際は同じ調整値で行なうようにします。
私の経験でも、成形品の形状や外観不良が起きたときに、成型条件を見直すことは非常に多かったです。
従ってこの部分を改善することで、段取り替え時間の短縮だけでなく、製品品質の安定させることもできます。
このような取組は、樹脂成型だけでなく同様の設備を使用している現場に取り入れることができます。
ぜひ改善のヒントにして頂ければと思います。
段取り時間短縮 その1については、こちらから参照いただけます。
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