多品種少量生産が進む現代において、生産ロットの減少は製品原価を上昇させます。これは、生産量に関わらず発生する固定費(減価償却費、人件費など)を少数の製品で分担するためです。ロットが減ると、製品あたりの固定費負担が大きくなります。また、段取り替え時間や材料費も増加する可能性があります。このコスト増を正確に把握し、価格設定に反映させることが、多品種少量生産における重要な経営課題となります。
自動化や多台持ちにより原価は大幅に下がりました。
では、ロットの大きさが変われば原価はどのくらい変わるでしょうか。
ここでは機械加工A社、樹脂成形加工B社のロットの違いによる原価の違いを比較します。
機械加工A社、樹脂成形加工B社のロットの違いによる原価の違い
1個の製造時間は
ロットが大きくなれば、1個当たりの段取時間が短くなります。加工時間に比べて段取時間の長い製品は、ロットが変わると原価も大きく変わります。
では、ロットの違いにより原価はどのように変わるのでしょうか。具体的な数値で検証します。
機械加工A社
多品種少量生産の例として機械加工A社について考えます。A社のA1製品のロットが100から20に減少しました。ここで
段取時間 : 0.5時間
加工時間 : 0.07時間
です。製造時間と製造費用を図1に示します。

製造費用 利益
ロット100 : 380円 ロット100 : 50円
ロット20 : 480円 ロット20 : ▲70円
ロットが100から20に減少したことで1個当たりの段取時間は5倍になりました。その結果、製造費用は100円増加しました。
ロット100個では50円の利益がありましたが、ロット20個では70円の赤字になりました。
このように中小ロットの場合、ロットの大きさがわずかに変わっても原価が大きく変わります。では大量生産ではどうでしょうか。
樹脂成形加工B社
樹脂成形加工B社 B1製品のロットが10,000個から1,000個に減少しました。
段取時間 : 1時間
加工時間 : 0.0167時間 (1分)
製造費用と利益を図2に示します。

製造費用 利益
ロット10,000 : 14.1円 ロット10,000 : 3.3円
ロット1,000 : 16.7円 ロット1,000 : 0.2円
このように段取時間が長くても、ロットが大きければ1個当たりの段取費用は小さくなります。
しかしロットが減少すれば、1個当たりの段取費用が増えて原価が上昇し、利益は0.2円に減少しました。
ロットが大きくても小さくても、ロットの減少は原価に影響する
中少量生産でも大量生産でも、ロットの大きさが変われば原価は変わります。しかしロットの小さい製品は、ロットの大きさが変わっても担当者は原価が大きく変わるとは思っていません。
発注先が1つの単価しか設定できない場合、ロットが変わっても同じ単価で発注されます。しかし、ロット100とロット20では原価は大きく違います。ロットが減少すれば価格交渉しなければなりません。
一方、納期に間に合わせるため、現場がロット100をロット20に分けて生産することもあります。ロットを分割すれば原価が上がることを現場に理解してもらい、現場が適切に判断できるようにします。では段取時間によって原価はどれだけ変化するのでしょうか?
段取時間の変化と外段取化については【原価計算と見積の基礎】11.段取時間の短縮を参照願います。
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本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。
「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】
- 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
- 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
- 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
- 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
- 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
- 第6章 間接製造費用と販管費の分配
- 第7章 個々の製品の原価計算
【実践編】
- 第1章 製造原価の計算方法
- 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
- 第3章 原価を活かした工場管理
- 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
- 第5章 意思決定への原価の活用
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【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

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