【原価計算と見えない赤字】3.ロットの減少によるコストアップ
自動化や多台持ちにより原価は大幅に下がりました。
では、ロットの大きさが変われば原価はどのくらい変わるでしょうか。
ここでは機械加工A社、樹脂成形加工B社のロットの違いによる原価の違いを比較します。
機械加工A社、樹脂成形加工B社のロットの違いによる原価の違い
1個の製造時間は
ロットが大きくなれば、1個当たりの段取時間が短くなります。加工時間に比べて段取時間の長い製品は、ロットが変わると原価も大きく変わります。
では、ロットの違いにより原価はどのように変わるのでしょうか。具体的な数値で検証します。
機械加工A社
多品種少量生産の例として機械加工A社について考えます。A社のA1製品のロットが100から20に減少しました。ここで
段取時間 : 0.5時間
加工時間 : 0.07時間
です。製造時間と製造費用を図1に示します。
製造費用 利益
ロット100 : 380円 ロット100 : 50円
ロット20 : 480円 ロット20 : ▲70円
ロットが100から20に減少したことで1個当たりの段取時間は5倍になりました。その結果、製造費用は100円増加しました。
ロット100個では50円の利益がありましたが、ロット20個では70円の赤字になりました。
このように中小ロットの場合、ロットの大きさがわずかに変わっても原価が大きく変わります。では大量生産ではどうでしょうか。
樹脂成形加工B社
樹脂成形加工B社 B1製品のロットが10,000個から1,000個に減少しました。
段取時間 : 1時間
加工時間 : 0.0167時間 (1分)
製造費用と利益を図2に示します。
製造費用 利益
ロット10,000 : 14.1円 ロット10,000 : 3.3円
ロット1,000 : 16.7円 ロット1,000 : 0.2円
このように段取時間が長くても、ロットが大きければ1個当たりの段取費用は小さくなります。
しかしロットが減少すれば、1個当たりの段取費用が増えて原価が上昇し、利益は0.2円に減少しました。
ロットが大きくても小さくても、ロットの減少は原価に影響する
中少量生産でも大量生産でも、ロットの大きさが変われば原価は変わります。しかしロットの小さい製品は、ロットの大きさが変わっても担当者は原価が大きく変わるとは思っていません。
発注先が1つの単価しか設定できない場合、ロットが変わっても同じ単価で発注されます。しかし、ロット100とロット20では原価は大きく違います。ロットが減少すれば価格交渉しなければなりません。
一方、納期に間に合わせるため、現場がロット100をロット20に分けて生産することもあります。ロットを分割すれば原価が上がることを現場に理解してもらい、現場が適切に判断できるようにします。
では段取時間によって原価はどれだけ変化するのでしょうか?
段取時間の変化と外段取化については【原価計算と見えない赤字】4.段取時間の短縮を参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
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