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【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?
いろいろな費用が上がった場合の値上げの明細について【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?で説明しました。
この見積を元に顧客に値上げをお願いすると「高すぎる」と言われることがあります。顧客から「高すぎる」と言われると、いくらが「適正価格」なのだろうかと思います。
ある製品(部品)の適正価格は、あるのでしょうか。
自社の適正価格
結論から言えば、ある製品(部品)の絶対的な適正価格はありません。ただし、自社がつくった場合の適正な価格はあります。
自社の適正な価格とは?
自社の適正価格とは、製造原価、販管費をカバーし、必要な利益がある価格です。
この価格であれば、必要な経費をまかなって利益が出ます。残った利益を借入金の返済や老朽化した設備の更新に充てることができます。
利益まっくすで計算した原価は、その工場で発生した費用にもとづくもので、これは「真実」です。従って時間(段取時間、加工時間)が適正であれば、これが自社の適正価格です。
会社が違えば、適正価格は違う
しかし会社が異なれば直接製造費用と間接製造費用の比率、販管費レートが違います。つまり適正価格も違います。
規模の異なる会社の原価の比較
そこで規模の異なる架空の機械加工の会社A社とB社の原価を比較します。
2社とも、マシニングセンタ、NC旋盤などによる部品加工と組立を行っています。ただし2社は規模が違います。
A社 売上7億円、社員43人、うち間接は14人
B社 売上30億円、社員193人、うち間接は87人
A社に比べて、B社は外注品も多く、購買や生産管理など間接部門に多くの人がいます。技術や品質管理の人も多く、品質管理や工程管理の体制は充実しています。
構成と売上、製造原価、販管費、利益
A社の構成を図1に、B社の構成を図2に示します。
A社の売上、製造原価、販管費、利益を図3に示します。
B社の売上、製造原価、販管費、利益を図4に示します。
アワーレート、販管費レートの比較
NC旋盤の現場の間接製造費用を含んだ人と設備のアワーレートの合計 アワーレート間(人+設備)を比較します。
NC旋盤のアワーレート間(人+設備)
A社 アワーレート間(人+設備) : 4,620円/時間
B社 アワーレート間(人+設備) : 7,670円/時間
(アワーレート間(人+設備)の計算については【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?を参照してください。)
人件費と設備の費用(償却費とランニングコスト)は同じです。それでもアワーレートがこれだけ違うのは、間接部門の人件費と工場の経費の違いによるものです。
決算書の製造原価と販管費から計算した販管費レートを以下に示します。
A社 販管費レート : 0.25
B社 販管費レート : 0.057
B社はA社より工場の規模は大きいのですが、販管費はそれほど大きくありませんでした。その結果、B社の販管費レートはA社より小さくなりました。
見積金額の比較
NC旋盤で加工するA1製品の見積金額を比較します。
(見積金額の計算については【製造業の値上げ交渉】3. 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?を参照してください。)
製造時間 : 0.075時間
製造費用
製造費用=アワーレート間(人+設備)×製造時間
A社製造費用=4,620×0.075=346円
B社製造費用=7,670×0.075=575円
製造原価
A1製品 材料費330円 外注費50円
製造原価=材料費+外注費+製造費用
A社製造原価=330+50+346=726円
B社製造原価=330+50+575=955円
販管費
販管費=製造原価×販管費レート
A社販管費=726×0.25=182円
B社販管費=955×0.057=54円
販管費込み原価
販管費込み原価=製造原価+販管費
A社販管費込み原価=726+182=908円
B社販管費込み原価=955+54=1,009円
目標利益率 : 0.087 (A社、B社共)
目標利益
目標利益=販管費込み原価×目標利益率
A社目標利益=908×0.087=80円
B社目標利益=1,009×0.087=88円
見積金額
見積金額=販管費込み原価+目標利益
A社見積金額=908+80=988円
B社見積金額=1,009+88=1,097円
A社とB社では、会社の規模、直接製造費用と間接製造費用の比率、販管費レートが違います。その結果、同じ賃金、同じ費用の設備でも間接製造費用を含んだアワーレートは大きく違いました。
そして見積金額、つまり適正価格も
A社 988円
B社 1,097円
と異なりました。950円の受注金額では利益は、
A社 : 利益=950-908=42円
B社 : 利益=950-1,009=▲59円
A社は42円の利益がありましたが、、B社は赤字でした。
以上の結果を図5に示します。
管理がしっかりしている会社は原価が高くなる傾向
A社に比べてB社は、以下の特徴があります。
- 工程管理に専任者がいて、手順書や治具の整備、製造条件の記録や管理がしっかりできている。品質は安定し、製品の製造履歴(トレーサビリティ)も記録・保管している。
- 品質管理の人員、及び検査・測定機器が充実し、必要な個所はすべて社内で測定・評価できる。
- 製造技術の専任者がいて技術的に難易度の高い製品も製造条件を工夫して実現できる。
- 特殊な治具が必要な場合、治具を自社で設計できないため社外に頼まなければならない。
- 検査・測定機器が十分になく、社内で測定・評価できない項目がある。
- 製造履歴(トレーサビリティ)を記録・保管する体制がない。
対してA社は価格は低いのですが以下の弱い点があります。
製品によって適した仕入先が変わる
従って製品の要求精度、要求品質、技術的な難易度によって、適切な仕入先は変わります。
A社でも問題なく製造できる製品
難易度が低く、高度な工程管理、製造履歴管理、品質管理が必要でない製品の場合、最適な仕入先はA社です。こういった製品をB社に発注すれば製品は高くなります。
高くてもB社に発注すべき製品
技術的な難易度が高く、不良品が発生すれば重大な問題が起きる製品は、A社ではリスクが高いです。
安いからとA社に発注すれば、手順書が整備されていなかったり、重要な工程の工程管理が不十分だったりして思わぬミスや不良が起きるかもしれません。しかもトレーサビリティがとられていないため、問題が起きた場合、影響範囲を絞り込むことができません。
このような製品は、価格が高くてもB社に発注します。
つまりA社とB社の得意な製品は異なります。これを図6に示します。
市場価格
適正価格のもうひとつの考え方は市場価格です。この市場価格は需要と供給で決まります。例えば卵は市場価格が日々変わります。需要が増加し供給不足になれば価格は上昇します。製造業でも多くの工場でつくれるものは市場の影響を受けます。
製造業、中でも下請け企業の場合、景気が減速して受注不足に陥れば、少しでも固定費を回収するため、多くの企業は赤字でも受注します。その結果、市場価格は低下します。
しかし実際は発注先と長期的に取引していれば、景気が良くなった時に値上げが困難になるため極端な値下げはしません。
逆に景気が良くなり中小企業の多くが受注が一杯になれば、赤字でも受注する企業はなくなります。その結果、市場価格は上昇します。
短時間に見積を出すサービス
最近は三次元データがあれば見積金額を計算するシステムもあります。ミスミのAIプラットフォーム メビー(meviy)は、三次元データを送れば、板金、溶接、切削加工の部品の見積を1分で出してくれます。
多くの取引先がこういったサービスを利用すれば、将来はこれらがひとつの市場価格を形成するかもしれません。
自社のポジションは?
自社はA社でしょうか?
B社でしょうか?
自社に合った製品はどのようなものでしょうか?
そこで自社に原価の仕組みを構築し、製品毎の適正価格(適正な見積金額)を算出します。この価格が現在の自社の実力値です。この価格で受注しなければ必要な利益が確保できません。
失注が多い場合
「適正価格」で見積を出して失注が多ければ、競合がいくらで受注したのか調べます。競合と比べて自社の見積が明らかに高ければ、以下のいずれかが考えられます。
製造コストが高い
製造コストが高い原因は
- 製造工程が多い
- 製造時間が長い
- 設備や人の費用が高い
などが考えられます。製造工程の見直し、製造時間の短縮、ランニングコストの削減に取り組みます。
自社の間接製造費用、販管費の見直し
どの製品も競合よりも自社の適正価格が高い場合、間接部門や工場の経費、販管費が大きい可能性があります。自社の間接部門や事務の人員、工場の経費が適正か、削減できないか検討します。
例えば、売上が大きく減少すると、売上に対して間接部門の費用や販管費が高くなります。もし一時的な売上低下でなく、今後もこの売上が続くようであれば、それに合わせて間接部門や事務の体制を変えなければなりません。
これは決して簡単ではありませんが、かつて同じような売上だった時代があれば、その時の組織・体制を参考にし、削れるところはないか検討します。
自社に適した製品を受注できていない
A社でもできる製品の見積金額はB社は高くなります。B社に向いている製品はもっと難易度が高くA社に向いていない製品です。A社でできるような製品をA社と競合して価格を下げれば、B社の経営は苦しくなります。
ブラックボックス化
こういった競合との価格競争を避ける方法は「ブラックボックス化」です。
自社しかできない工程、取引先もわからない工程は取引先にとってブラックボックス化します。相見積が取れないため、その価格が適正かどうかも取引先はわかりません。
あるいは取引先が困っていたことを解決すれば、そのノウハウはブラックボックスにできます。そのためには取引先の困りごとをヒアリングし、それを自社で工夫して解決します。現場で創意工夫したことは自社の強みになります。その場合、カギとなるところは隠しておきます。
この適正価格に対し、工程や検査が追加されれば原価は上がります。ではいくら上がるのでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか?を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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【原価計算と見えない赤字】4.段取時間の短縮
ロットが減少すれば利益が少なくなります。これについては【原価計算と見えない赤字】3.ロットの減少によるコストアップで説明しました。
それでも利益を出すためには、段取費用を削減します。
これには段取時間の短縮や外段取化があります。ここでは
- 段取の種類
- 段取時間の短縮
- 外段取化
- 段取時間の短縮と外段取化のコスト削減効果
について述べます。
1.二種類の段取
一般的に「段取」と呼ばれる作業は、二種類あります。1つは「品種の切替」、もう1つは「新たな製品の生産準備」です。
品種の切替
現在生産中の製品を「すでに実績がある別の製品」に切り替えることです。
今日では製品の種類が増え、大量生産の工場も以前より頻繁に段取を行っています。
多品種少量生産では段取の頻度はさらに高くなっています。そのため段取時間は生産性に大きく影響します。
段取で行うことは加工方法によって変わります。具体的には以下のような内容です。
【機械加工】
加工プログラムの切替、刃物の交換、加工治具の準備、設定値の入力など
【樹脂成形】
金型の交換、樹脂原料の入れ替え、射出成形機の設定など
【プレス加工】
金型の交換や材料の入れ替え
段取後は、テスト生産を行い品質を確認します。問題があれば製造条件を調整します。品質に問題がなければ生産を開始します。
すでに実績がある製品なので製造条件は確立し、作業手順も決まっています。そのためできるだけ短時間に行います。できれば目標時間を決め、実際にかかった時間を記録します。
新たな製品の生産準備
これは「今まで実績のない製品」の生産準備です。以下の作業が増えます。
【機械加工】
加工プログラムの作成やテスト加工
単品生産や多品種少量生産では、日々新たな製品を生産します。日常の段取の多くはこの「新たな製品の生産準備」です。
【プレス加工、樹脂成形加工】
新しい金型を使ったテスト加工、加工条件の調整です。量産の現場ではそれほど多くありません。
プレス加工、樹脂成形加工など量産工場では、「品種の切替」を段取と呼び、新たな製品の生産準備は「生産立ち上げ」や「生産準備」と呼ぶこともあります。
この新たな製品の生産準備は、時間よりも作業の正確さとその後の生産の品質が安定していることが重要です。最初の設定に問題があれば、その後不良品を大量に生産してしまいます。
このように、2種類の段取では内容や要求されることが違います。では段取時間はどうやって短縮すればよいでしょうか。
2. 段取時間短縮の方法
実際に段取作業を観察すると、様々な課題が見つかります。
- 段取に必要な治具や金型が近くにないため、遠くまで取りに行っている。あるいは治具や金型が見つからず探している。
- 治具や金型を取り付ける位置が定まっていないため、調整や芯出しをしている。
- 交換部分がユニット化されていないため、交換に時間がかかる(例 マシニングセンタのツールホルダの数が十分になく、ツールホルダの交換でなく、ツールホルダの刃物を交換している)。
- 段取作業中、締め付けるボルトの数が多く、締め付けに時間がかかっている。
- 段取の手順が作業者によってバラバラで、段取時間も作業者によって異なる。
このような課題を改善します。
一方、段取時間は同じでも、段取を生産中に行えば、設備の停止時間を短くできます。これが外段取化です。
3. 外段取化
外段取とは、生産中に次の生産の段取を行うことです。
例えばプレス加工や樹脂成形加工では、生産中に次の金型を運びます。樹脂成形加工では、すぐに生産できるように予めヒーターで金型の温度を上げておきます。
このように生産中に行う段取を「外段取」と呼びます。これに対して設備を止めて行う段取を「内段取」と呼びます。「内段取」の一部を「外段取化」すれば、段取中の設備の停止時間を短くできます。
図1では、金型交換1時間のうち、30分を外段取化しました。その結果、内段取時間は30分に短縮できました。
マシニングセンタの外段取
マシニングセンタには、図2に示すようにワークをパレットと呼ばれる治具に固定し、このパレットを自動で交換するものがあります。
パレットを自動で交換する装置をパレットチェンジャー(PC)と呼びます。パレットの交換は自動で行いますが、パレットからのワークの着脱は作業者が行います。
パレットには異なるワークを取り付けることができるため、パレットを交換すれば品種を切り替えることができます。またパレットチェンジャーに多くのパレットをセットすれば、夜間無人で生産できます。
4. 段取時間短縮と外段取化のコスト削減効果
射出成型加工の外段取化の効果
樹脂成形加工B社 B1製品 (ロット1,000個)、外段取化によって原価がどれだけ改善されるのでしょうか。
【従来】
段取時間(内段取) 1時間
【改善後】
外段取時間0.5時間 内段取時間0.5時間
外段取は生産中、作業者が空いている時間を使って行います。そのため外段取の人の費用はゼロです。
ロット数 : 1,000個
加工時間 : 0.0167時間 (1分)
この時の改善前と改善後の製造費用、利益を図3に示します。
製造費用 利益
段取1時間 : 16.7円 段取1時間 : 0.2円
段取0.5時間 : 15.2円 段取0.5時間 : 2.0円
ロット1,000個では0.2円しかなかった利益が、段取時間を短縮したことで2.0円に増加しました。全体の製造時間も短くなり、時間当たりの出来高も増えました。
この外段取化のコスト低減は、作業者が空いている時間に行うことで人の費用がゼロになったためです。
生産中作業者が手一杯で、外段取のため他から応援してもらう場合は、人の費用が発生します。そうなると外段取化のコスト低減効果は大幅に減少します。
実は外段取化の最大のメリットは、設備の稼働時間が長くなることです。
しかし、それをお金に変えるには、稼働時間が長くなった分、生産量を増やす、つまり受注を増やさなければなりません。外段取化を進めても受注が増えなければ利益は増えません。
パレットチェンジャーの効果
機械加工A社はA1製品の生産にパレットチェンジャー付きマシニングセンタを使用しました。パレットチェンジャー付きマシニングセンタで段取時間がゼロになれば原価はどうなるのでしょうか。
これも先の場合と同様に、パレット上のワークの着脱を誰が行うのかによります。
加工中に手の空いている作業者がワークの着脱を行えばワーク着脱の人の費用はゼロです。しかし、加工中作業者の手が塞がっていて、別の作業者が行えば人の費用が発生します。
A1製品をパレットチェンジャー付きマシニングセンタで生産した場合の原価を図4に示します。
製造費用 利益
PCなし : 480円 PCなし : ▲70円
PC有(増員有) : 440円 PC有(増員有) : ▲20円
PC有(増員なし) : 360円 PC有(増員なし) : 80円
ロット20の場合、利益は▲70円赤字でした。これがPC有、増員有の場合、▲20円でした。つまり段取のために増員して人の費用が発生すれば、外段取化してもコストダウン効果は高くありません。
パレットチェンジャーによる外段取化の最大のメリットは、段取作業をまとめて行うことで夜間無人運転ができることです。そうすれば設備の稼働時間が長く(2倍以上)なります。稼働時間が長くなれば設備のアワーレートが下がります。
従って、パレットチェンジャー付きマシニングセンタを導入した場合、夜間無人運転を必ず行います。同様に他の設備でも、高価なワーク自動交換装置を導入した場合、必ず夜間無人運転を行います。
この外段取化は、工程の品質が安定していて、段取後に加工条件の細かな調整が不要でなければなりません。品種切替後、作業者が加工状況を観察したり、切替後の初品を検査して補正値を入力していれば夜間無人運転はできません。
では検査が追加されると原価はどれだけ変化するのでしょうか?
検査の追加によるコストアップについては【原価計算と見えない赤字】5.検査追加によるコストアップを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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経営コラム ものづくりの未来と経営
人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中
ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?
経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
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【原価計算と見えない赤字】3.ロットの減少によるコストアップ
自動化や多台持ちにより原価は大幅に下がりました。
では、ロットの大きさが変われば原価はどのくらい変わるでしょうか。
ここでは機械加工A社、樹脂成形加工B社のロットの違いによる原価の違いを比較します。
機械加工A社、樹脂成形加工B社のロットの違いによる原価の違い
1個の製造時間は
ロットが大きくなれば、1個当たりの段取時間が短くなります。加工時間に比べて段取時間の長い製品は、ロットが変わると原価も大きく変わります。
では、ロットの違いにより原価はどのように変わるのでしょうか。具体的な数値で検証します。
機械加工A社
多品種少量生産の例として機械加工A社について考えます。A社のA1製品のロットが100から20に減少しました。ここで
段取時間 : 0.5時間
加工時間 : 0.07時間
です。製造時間と製造費用を図1に示します。
製造費用 利益
ロット100 : 380円 ロット100 : 50円
ロット20 : 480円 ロット20 : ▲70円
ロットが100から20に減少したことで1個当たりの段取時間は5倍になりました。その結果、製造費用は100円増加しました。
ロット100個では50円の利益がありましたが、ロット20個では70円の赤字になりました。
このように中小ロットの場合、ロットの大きさがわずかに変わっても原価が大きく変わります。では大量生産ではどうでしょうか。
樹脂成形加工B社
樹脂成形加工B社 B1製品のロットが10,000個から1,000個に減少しました。
段取時間 : 1時間
加工時間 : 0.0167時間 (1分)
製造費用と利益を図2に示します。
製造費用 利益
ロット10,000 : 14.1円 ロット10,000 : 3.3円
ロット1,000 : 16.7円 ロット1,000 : 0.2円
このように段取時間が長くても、ロットが大きければ1個当たりの段取費用は小さくなります。
しかしロットが減少すれば、1個当たりの段取費用が増えて原価が上昇し、利益は0.2円に減少しました。
ロットが大きくても小さくても、ロットの減少は原価に影響する
中少量生産でも大量生産でも、ロットの大きさが変われば原価は変わります。しかしロットの小さい製品は、ロットの大きさが変わっても担当者は原価が大きく変わるとは思っていません。
発注先が1つの単価しか設定できない場合、ロットが変わっても同じ単価で発注されます。しかし、ロット100とロット20では原価は大きく違います。ロットが減少すれば価格交渉しなければなりません。
一方、納期に間に合わせるため、現場がロット100をロット20に分けて生産することもあります。ロットを分割すれば原価が上がることを現場に理解してもらい、現場が適切に判断できるようにします。
では段取時間によって原価はどれだけ変化するのでしょうか?
段取時間の変化と外段取化については【原価計算と見えない赤字】4.段取時間の短縮を参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
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経営コラム ものづくりの未来と経営
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ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?
経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
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【原価計算と見えない赤字】2.自動化とロボットの活用
設備の大きさによる原価に違いについて【原価計算と見えない赤字】1.高い設備は原価が高いのかで説明しました。
一方、今日では多くの設備がコンピューター制御化(NC化)され、起動ボタンを押せば自動で生産します。
この時、原価はどうなるのでしょうか。
この自動化・無人化に関し、以下の6点について述べます。
- 人と設備、段取と加工の組合せ
- 無人加工と有人加工の違い
- 無人加工中の作業者の費用
- 夜間かけっぱなしの場合
- 人をロボットに置き換えた場合
- 具体的な原価と利益
1. 人と設備、段取と加工の組合せ
人と設備が稼働する場合、どのように原価を計算するのでしょうか。
最初に図1に示すように製造費用を人と設備、段取と加工(製造)で分けて考えます。
図1で加工中の人と設備の組み合わせから
- 有人加工 (人と設備が同時に加工)
- 人のみ
- 無人加工 (加工は設備のみ)
この3つがあります。
無人加工の場合、段取は
内段取 : 設備を止めて段取
外段取 : 生産中に設備を止めずに段取
の2つがあります。
「人のみ」の現場で設備を一部使用する場合、設備の費用は、その現場の間接製造費用とします。そしてアワーレート間(人)の計算に入れます。
同様に「無人加工」の現場で一部人が関与する場合、人の費用はその現場の間接製造費用とし、アワーレート間(設備)の計算に入れます。
なお、本コラムで原価に段取費用を入れているのは、ロットの大きさが変わると原価も変わるためです。
ロットが少なくなれば1個当たりの段取費用が高くなり原価が上がります。これが原因で赤字になることもあります。
一方、大量生産で段取がほとんどない場合、段取費用は原価に入れません。その場合、段取は生産ロスと考えます。
2. 無人加工と有人加工の違い
有人加工 : 加工中、作業者が設備を常時操作する
無人加工 : 加工中、作業者は設備についていない
この違いを段取と加工に分けて説明します。
有人加工
【段取】
作業者は設備を止めて段取を行うため、人と設備の両方の費用が発生します。
【加工】
作業者は設備を常に操作するため、加工中も人と設備の両方の費用が発生します。
有人加工の場合、製造費用は人の費用と設備の費用の合計です。
人と設備の時間が同じであれば、アワーレートはアワーレート間(人)とアワーレート間(設備)の合計です。これをアワーレート(人+設備)と呼ぶことにします。
アワーレート間(人+設備)=アワーレート間(人)+間アワーレート(設備)
無人加工
【段取】
有人加工と同じです。
作業者は設備を止めて段取を行うため、人と設備の両方の費用が発生します。
【加工】
設備が自動で加工し、作業者は設備から離れます。加工中は設備の費用のみ発生します。
ただし無人加工での作業者の費用がゼロになるには、加工中、作業者は他の現場で「別のお金を稼ぐ仕事」をする必要があります。
「お金を稼ぐ仕事」とは「見積に入っているバリ取りや検査など」です。見積に入っていない検査や次の生産準備はお金を稼いでいません。
その場合は加工中も人の費用がかかると考えます。その場合、無人加工でも原価は有人加工と同じです。
設備が無人で加工を続けるには、材料の自動供給と製品の自動取出し(自動排出)の機能が必要です。
こういった機能がなく材料の供給と製品の取出しを作業者が行う場合はどうなるのでしょうか。
この時、作業者が複数の設備を担当することがあります。これが多台持ちです。
多台持ち
作業者が1人で複数の設備を担当することです。大量生産の工場でよく行われます。
1人で2台担当すれば2台持ち、3台担当すれば3台持ちと呼びます。以下は2台持ちの説明です。
【段取】
作業者は設備を止めて段取を行うため、人と設備、両方の費用が発生します。
【加工】
2台持ちの場合、作業者は2台の設備を担当します。
設備の費用は有人加工と同じですが、人の費用は1/2です。
A社のマシニングセンタ1(小型)の年間費用(実際の償却費)140万円です。これは正社員より低い金額です。
従って無人加工で人の費用がゼロになれば原価は大きく下がります。
2台持ちは人の費用が半分になります。有人加工より原価は低くなります。
一方、無人加工中作業者は他の現場で「別のお金を稼ぐ仕事」をする必要がありますが、これはなかなか難しいです。
実際は加工中作業者がその現場で設備の状態を監視したり、製品の検査や仕上げ作業を行ったりしています。
この場合、加工中の作業者の費用はどう考えたらよいでしょうか。
3. 無人加工の作業者の費用
この場合、無人加工中の作業者の費用は、設備の間接製造費用と考えます。
図5は、無人加工の設備が4台あり、2人の作業者が担当しています。
作業者は、設備の段取を順に行い、段取が完了すれば設備は無人で加工します。段取が終われば、作業者は次の段取の準備や完成品の品質確認を行います。
無人加工でも多くの現場はこのようにしています。
この場合、加工中も作業者の費用は発生します。ただし加工中作業者は複数の設備を担当し、作業者の費用がどの製品にどのくらい生じているのかわかりません。
そこで加工中の作業者の費用は、設備の間接製造費用とします。
アワーレート間(設備)は
図5の例では4台の設備に作業者が2名なので2台持ちと同じです。作業者の持ち台数が多くなれば、原価はさらに下がります。
作業者の費用は、加工中は設備の間接製造費用、段取中は直接製造費用です。
そこで作業者の日々の時間の中で段取時間と加工時間の割合が必要になります。
ただしこの比率を正確に調べるのは大変なので、数日間サンプルを取って代表値とします。これを図6に示します。
図6は設備が4台、作業者が2名の場合
作業者の段取時間と加工時間
段取 : 2,200時間 (50%)
加工 : 2,200時間 (50%)
設備は4台なので合計時間は
段取 : 2,200時間
加工 : 6,600時間
段取中は、人と設備の費用が両方発生するため、段取のアワーレートは、アワーレート間(人)とアワーレート間(設備)の合計です。
加工中は設備の費用のみです。ただし、人の費用は間接製造費用としてアワーレート間(設備)に含まれます。その結果
段取のアワーレート : 3,670円/時間 (2,610+1,060)
加工のアワーレート : 2,180円/時間
加工のアワーレートは低くなりました。
無人加工の設備は、帰る前に加工を開始し、夜間加工が終わったら設備は止まったままにする「かけ逃げ (又はかけ捨て)」ができます。
この場合の原価はどうなるのでしょうか。
4. かけ逃げ
かけ逃げの原価は、その現場が無人加工か、有人加工かで変わります。
図7に無人加工と有人加工の場合のかけ逃げを示します。
無人加工の場合
図7aの場合、元々無人加工なので、無人加工として原価を計算します。
かけ逃げのメリットは設備の稼働時間が長くなることです。かけ逃げの頻度が高ければ、年間の稼働時間は長くなります。
その結果、アワーレート(設備)が下がります。
年間の設備の操業時間の合計は
設備の操業時間合計=昼の操業時間合計+かけ逃げ時間の合計
有人加工の場合
有人加工でも「かけ逃げ」ができるタイミングがあればかけ逃げする場合、かけ逃げの間の加工費用は無人加工と同じです。
ただし、いつでもかけ逃げできるとは限らないため、原価は有人加工とします。
かけ逃げした分は「見えない利益」と考えます。
5. ロボットの導入
ロボットを導入して無人加工ができれば原価は下がります。
しかし、従来の産業ロボットは高価で安全フェンスのため広い場所も必要で、導入は容易ではありませんでした。
近年、スピードはそれほど速くないのですが、安価で安全フェンスも不要な協働ロボットが普及してきました。
こういったロボットを導入した場合、原価はどうなるのでしょうか。
500万円のロボットでも5年間使用すれば、年間のロボットの費用(実際の償却費)は100万円、パート社員と変わりません。
ただし協働ロボットは、スピードは遅いため人よりも時間は長くなります。
しかし、人は24時間働けませんが、ロボットは24時間働けます。ロボットは有休もとりません。
人は作業スピードが遅くなったり、トイレのために抜けたりしますが、ロボットは一定のスピードで動き続けます。
そこで現在の作業のままロボットを人と置き換えるより、スピードは劣っても24時間稼働できるロボットの特徴を生かして作業を見直しします。
ロボットを導入することで設備が長時間稼働できればアワーレート(設備)が下がり原価が低くなります。
ロボット化でどれだけ原価は下がるのでしょうか。
6. 有人加工・無人加工・2台持ち・ロボット化の具体的な比較
機械加工A社はA1製品をマシニングセンタ1(小型)で製造しました。
その場合の有人加工、無人加工、2台持ち、ロボット化の原価を比較します。
ロボットは
価格 : 500万円
耐用年数 : 5年
年間費用 : 100万円
としました。
(ロボットの法定耐用年数は、マシニングセンタ(金属加工機械)に取り付ければ、マシニングセンタの法定耐用年数10年が適用されます。今回は年間でフル稼働を想定し本当の耐用年数を5年としました)
この時のA1製品の製造費用と利益を図9に示します。
製造費用 利益
有人加工 : 350円 有人加工 : 90円
2台持ち : 240円 2台持ち : 230円
ロボット化 : 180円 ロボット化 : 300円
無人加工 : 130円 無人加工 : 360円
製造費用は
有人加工→2台持ち→ロボット化→無人加工
の順に低くなります。従ってロボット化の原価低減効果は高いことがわかります。
樹脂成形の有人加工と無人加工
樹脂成形の場合、ローダー付き成形機は無人加工ができます。
一方、毎回金型に部品をセットするインサート成型の場合は有人加工です。
有人加工と無人加工で原価はどれだけ違うのでしょうか。
B社 180トン成形機の無人加工と有人加工のアワーレートは
【段取】 【加工】
無人加工 : 2,950円/時間 無人加工 : 930円/時間
有人加工 : 2,870円/時間 有人加工 : 2,870円/時間
有人加工の場合、人の費用があるため加工のアワーレートは無人加工よりも大幅に高くなります。その結果、B1製品の原価を図10に示します。
製造費用 利益
有人加工 : 48.1円 有人加工 : ▲37.2円
無人加工 : 15.9円 無人加工 : 1.2円
加工のアワーレートは、有人加工は無人加工の約3倍のため、有人加工の製造費用は大幅に増加します。
その結果、無人加工では1.2円の利益が有人加工は37.2円の赤字でした。
つまり有人加工を無人加工にできれば大幅なコストダウンになります。
逆に、トラブルが起きて作業者が常に製品をチェックし、無人加工の現場が有人加工になっている場合、原価は大幅に増えています。
早急にトラブルを解決して無人加工にしなければ大きな損失になります。
夜間無人加工の原価
ワークの着脱まで自動化し、完全に無人加工ができれば、夜間無人加工できます。
そうすれば年間の稼働時間が大幅に増えます。アワーレート(設備)が低くなり原価が大きく下がります。
夜間無人加工をするためには、材料の自動供給と製品の自動取出しが必要です。例えば
- NC旋盤 バー材自動供給装置やローダー、ロボット
- マシニングセンタ パレットチェンジャー
- 射出成形機 自動取出し機(ローダー)
- プレス機 コイル材供給装置
などが必要です。
またワイヤーカット放電加工機は、最初から夜間無人加工を想定した設備です。
そこで図11にNC旋盤を夜間無人加工にした場合を示します。
夜間無人加工により
設備の稼働時間 : 2,200時間 → 6,800時間
3倍以上増加しました。その結果
加工のアワーレート(設備) : 1,720円/時間 → 1,020円/時間
アワーレートが大きく減少しました。
段取のアワーレートも下がり、人と設備合わせて2,930円/時間になりました。
夜間無人加工、無人加工、2台持ちの製造費用と利益を比較したものを図12に示します。
製造費用 利益
有人加工 : 350円 有人加工 : 90円
無人加工 : 130円 無人加工 : 360円
2台持ち : 240円 2台持ち : 230円
夜間無人加工 : 90円 夜間無人加工 : 410円
夜間無人加工により製造費用は90円になりました。従って夜間無人加工は高いコストダウン効果があります。
一方、ワイヤーカット放電加工機のように最初から夜間無人加工を前提にした設備は、夜間無人加工をしなければ原価が大きく上がってしまいます。
では製造ロットが変わると原価はどれだけ変化するのでしょうか?
ロットの減少によるコストアップについては【原価計算と見えない赤字】3.ロットの減少によるコストアップを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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