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【製造業の値上げ交渉】21. 少し高くても受注するには1 内製も含めた他の選択肢
【製造業の値上げ交渉】20. 値上げのチャンスとは? で、値上げできる機会とそれの活用について説明しました。
値上げが成功するかどうかは取引先に他の選択肢があるかどうかです。
他の選択肢があれば、取引先は強気で交渉します。
つまり交渉での最大の力は「選択できること」です。
競合の情報が重要
取引先は今の仕入先以外に選択肢がなければ、仕入先の価格交渉は有利です。従って他の選択肢、つまり競合の情報が欲しいところです。
では、自社の競合はどこでしょうか?
競合の価格はいくらでしょうか?
これは簡単には分かりませんが、購買の担当者との会話や同業者からの情報などで競合となっている会社の情報を集めます。
値上げ交渉では転注の可能性
値上げ交渉の場合、取引先が値上げを受け入れられなければ、他社に転注しなければなりません。しかし、
- 転注できる仕入先がない
- 転注すれば品質リスクがある
- 転注品の評価や検証が必要
であれば、転注するより値上げを受け入れます。
例えば下図のように仕入先が受注金額988円の製品を、88円値上げを要請しました。この値上げ金額は、材料費、外注費、人件費などの経費の上昇分から計算した適正な値上金額です。
しかし取引先は88円の値上げは受け入れがたいため、他の仕入先に見積を取ったところ、ある仕入先は材料費以外は従来と同等として、1021円の見積でした。
ただしこの仕入先に転注すれば、初品確認、初期流動確認など転注に伴う費用が取引先内部で発生します。(ただしこういった内部費用は取引先自身も把握していないことが多いです。)
低すぎる価格の問題
新規の引合では、取引先から希望価格(指値)が出されることもあります。
この指値は低すぎることが多く、指値では赤字になってしまいます。
なぜ赤字価格で受注するのか?
ところが指値で受注する競合があると購買から聞かされます。
なぜでしょうか?
同じような設備、同じような時間で製造する場合、それでも低い価格で受注するのは、いくつかの理由が考えられます。
適正価格が低い
企業の規模が小さく、間接費や販管費が低い場合です。
取引先の求める品質管理、納期管理、トレーサビリティ管理などを行うと、間接部門の人数が増え、間接費が高くなります。営業や管理部門の人も必要であれば、販管費も高くなります。
しかし競合が数人の会社で、全員現場で作業すれば間接費や販管費は少なくて済みます。必要な利益が得られる適正価格も低くなり、指値でも利益が出ます。
(この適正価格の違いについては【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?を参照願います。)
受注が少ないため赤字でも受注
現在、競合は受注が少なく、工場の稼働を維持するため、たとえ赤字でも受注しようとしている場合です。
受注不足で売上が少なければ工場の経費や人件費など固定費が回収できません。そこで今は少しでも固定費を回収するため、赤字の案件でも積極的に受注します。
この場合、売上が増えて固定費が回収できれば、このような儲からない案件はもう受注しません。
もし競合が赤字でも受注しようとして受注した場合、この実績金額は、本来であればどこも受注しようとしない赤字金額です。
廃業した会社の案件
中には赤字受注が続き、事業を断念する会社もあります。
そうなると取引先はこの製品をつくってくれる他の仕入先を探します。
知人の経営者に聞きましたが、こうして他から回ってきた案件を取引先から打診された場合、打診された価格の2~3倍の金額でなければ受けられないそうです。
つまり廃業された会社は、値上げできずに赤字を我慢した結果、他社が受けている価格に比べて大幅に低い価格でつくっていたのです。
安値受注競争を避けるには?
価格だけで発注すれば、自社よりも低い見積を出す競合が大抵はあります。そこと競えば安値受注競争になってしまいます。
本当に価格だけで決まるのでしょうか?
取引先は本当に最安値の仕入先に発注したいのでしょうか?
ものづくりは価格だけではありません。
購買の仕事は、QCDを総合して最適な部材を調達することです。
そのためには価格だけでなく品質や供給能力も含めて選定しなければなりません。
価格は低いが品質や供給能力に問題がある仕入先に発注すればどうなるのか、経験豊富な購買はわかっています。(ただ価格交渉の場では、価格だけにフォーカスし、そのようなことは決して言いませんが)。
そのために必要なこと
そのためには自社は取引先からどのように評価されているのか、自社の強みは何なのか、理解しておく必要があります。
SWOT分析では不足
その場合、一般的なSWOT分析では不足する点があります。
SWOT分析は、自社の内部環境(強み、弱み)、外部環境(機会、脅威)を分析するフレームワークです。しかしこのフレームワークには「取引先から見た強みと弱み」がありません。
取引先から見て、
- 自社はどの点で評価されているのか
競合に対して、
- 優れている点と劣っている点
を調べます。
これは結構難しいです。
技術の洗い出し
例えば「技術力」は
- 取引先が求める技術
- 自社の持っている技術
- 競合が持っている技術
これらを洗い出します。
しかし技術という定性的なものを見えるような形にするのは大変です。
実際は
取引先が求める技術 →取引先から出た図面・仕様
自社の持っている技術 →受注した図面・仕様、断った、あるいは受注できなかった図面・仕様
自社の持っていない技術 →断った、あるいは受注できなかった図面・仕様
競合が持っている技術 →自社が断った、あるいは受注できなかった図面・仕様で競合が受注したもの
これらを洗い出して俯瞰すれば、見えてくる場合もあります。
品質の洗い出し
取引先が行うまとめるサプライヤーの評価には、仕入先の不良件数や内容がまとめられ、仕入先のランキングがつくられています。
自分の経験(品証部)では、技術的に難易度が高い部品をつくっている仕入先は不良も多かったです。
対して簡単な部品をつくっている仕入先は不良件数が少なかったです。
しかし不良件数が少ないからと言って、簡単な部品をつくっている仕入先の品質が高いわけではありません。
不良件数よりも不良発生後の対処が重要
不良件数が多いことよりも、不良が出た後の対処が問題になりました。
代品の供給や原因分析、再発防止の取組などが仕入先の評価になりました。
不良が出た後の対処が遅く、対策が不十分で不良が再発した仕入先は低い評価でした。
品質の評価は定性的
こういった評価は定性的です。何かデータが出てきて、仕入先を順にランキングして決められるものではありません。
価格が高い原因をPR
リコールや自主回収などメーカーは不良品を販売すれば、多額の費用をかけて対処しなければなりません。
そのため品質に対する要求は厳しくなっています。
それに応えるには仕入先は、品質管理、工程管理、納期管理などの体制を整備しなければなりません。間接部門の人員も多くなっています。
その結果、コストは上がり、自社の適正価格は高くなります。
価格だけで比較すれば、数人の会社で全員作業者の会社の方が低くなります。
そこで取引先の要望に応えて上記のような取り組みをしてきた場合、それを簡単な文書にまとめて取引先にPRすることをお勧めします。
言われないことは、取引先はわかりません。
特に購買は価格だけ見ているからです。
なぜ品質が高いのか、自身もわからない
私の経験ですが、ある仕入先は品質が高く、不良はめったに出ませんでした。しかし工場に行って工程管理や品質管理を監査しても他の仕入先と大きな違いはありませんでした。
違いは人にありました。
この会社では「不良品かもしれない」と思うと、取引先の品質管理部署に必ず連絡してきました。
「気になる傷があるのですが、これは納品してよいか見て欲しい」と品物を送って来ました。
このようなことは他の仕入先ではありませんでした。
こうした品質に対する姿勢、不安があれば必ず確認するという姿勢が高い品質の原因だったのです。
しかしこれは仕入先自身も気づいていません。このように強みをみつけるのはなかなか難しいようです。
内製部門が競合
特殊な設備や工程があるため、競合となる仕入先がない場合があります。
ところが取引先が内製できました。
つまり取引先の内製加工部門が競合だったのです。
これは双方で誤解があります。
内製加工の原価は低くなる
取引先は仕入先の見積と内製加工部門の価格を比較します。そして内製加工した方が安くなります。仕入先に
「内製すれば○○円、○○円より高ければ内製する」
と言います。
なぜそうなるのでしょうか?
原因は見積条件が違うためです。
内製加工品は社内で取引されるため、外注品のような販管費や利益が含まれません。
(社内販売価格と社外販売価格の違いは【製造業の値上げ交渉】14. なぜ取引先は販管費が高い、利益が多いと言うのだろうか?を参照願います。)
従って見積の基準が違うため、同じ時間、同じ人件費で製造しても外注加工の方が高くなるのです。
なぜなら内製すれば、内製品の価格は製造原価だけです。しかし外注加工品は仕入先の販管費や利益が製造原価にプラスされます。
ただし実際は、仕入先の人件費や工場の経費が取引先よりも低いことが多く、外注化すれば原価が下がることも多いのです。そのため取引先、仕入先のどちらも外注化すれば安くなると誤解します。
しかし理論的には製造原価が同じであれば、外注すれば高くなるのです。
内製しない理由
本当に安くつくりたければ、取引先は内製すべきです。
なぜ内製しないのでしょうか?
理由は、内製には人や設備が必要だからです。現在の人や設備で製造できなければ、増員や設備投資が必要です。その結果、固定費が増えます。
人は、派遣社員を活用すれば使えば変動費にできます。しかし設備が足らなければ設備投資を行わなければなりません。その分固定費が増えます。設備が高価であれば資金も必要です。さらに減価償却費が増えて利益が減少します。
しかも設備は一旦導入すれば償却が終わるまではずっと稼働しなければ設備投資を回収できません。製品や技術の変化の激しい今日、償却が終わるまでその製品を生産する保証はありません。
従って取引先は、設備投資や増員が必要な製品は外注化できれば外注化しようとします。
これは言い換えれば、設備投資の必要な部品を外注化することは、設備投資のリスクを外部に移転することです。
内製化の課題を理解して交渉
つまり取引先は内製すれば安くても内製するとは限りません。
そこでこのような場合、まずは適正な原価計算を行い、自社の適正価格を計算します。
そして取引先と価格交渉します。
取引先が自社の内製価格を出して「社内なら○○円でできる」と言う場合、自社の適正価格を主張します。
そして、自社に発注しなければ、取引先は設備投資をしてまで内製するのか、それとも「だったら内製する」と言う言葉が本当かどうか、その可能性を見極めます。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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【製造業の値上げ交渉】20. 値上げのチャンスとは?
材料費、人件費、エネルギー費など様々な費用が上昇し、値上げは避けられません。しかし規模の劣る中小企業が取引先と値上げ交渉するのは困難さが伴います。
そこで国は中小企業を支援すべく様々な施策を打ち出しています。
この国の取組については【製造業の値上げ交渉】】19. 下請法や国のガイドラインを値上げ交渉に活かす方法で説明しました。
2024年には国は仕入先からの適正な値上げを認めないのは「下請法違反」という見解を示しています。
そのため取引先も仕入先からの値上げを認めざるを得ない状況にはなってきています。
値上げのチャンスとは?
それでも値上げはなかなか大変です。ところが値上げを認めてもらえる絶好の機会があります。それは
- 特急・短納期
- 発注先の仕様変更・設計変更
- 他社ができないもの
なぜ値上げのチャンスなのか?
それはこのような時は、価格が高くても価格以外の事情が優先されるからです。
ところがこのような機会を活かしきれない企業もあります。
こういった機会があってもそれを活かして値上げしなければ、利益は変わりません。
ではどうすればいいのでしょうか?
値上げの機会を活かす1 特急・短納期
取引先がとても短い納期で依頼することがあります。
このような超短納期でつくるためには、今ある製品を止めて割り込ませたり、残業や休日出勤で対応したりしなければなりません。できればやりたくない仕事です。
取引先の事情
こうした場合、取引先には超短納期で手配しなければならない事情があります。例えば
(1) 試作・開発品
開発日程に間に合わせるために、どうしても○日までのこの部品が欲しい
試験・評価中に問題が見つかった。至急対策品をつくって確認したい。
(2) 生産中のトラブル
新機種を立上げ中に問題が発生。至急対策品をつくらないと生産が止まってしまう。
(この対策品は、製品の部品、製造設備の部品、治具や金型の部品など様々)
(3) 市場クレーム
商品が市場で問題を起こした。至急対策品を評価して切り替えなければならない。
あるいは至急対策品に切り替えないと生産が止まったままになっている
超短納期では部品コストよりも損失金額がはるかに大きい
特急・短納期を依頼する背景にはこういったことがあります。いずれにしてもこの問題の損失金額は大きく、早く解決しないと損失は膨らむ一方です。
従って最も重要なのは、必要な納期に「良品を確実に入れてもらうこと」です。価格は二の次です。
【私の経験】
週末に問題が分かり、どうしても答えが月曜日までに必要になりました。評価チームは土曜日に出勤することになりました。ところが評価に使う部品の形状に問題があり、修正が必要でした。
金曜日の夜、購買の担当者と一緒に仕入先に行って修正してもらい、形状を確認して土曜日の評価に間に合わせました。
金曜日中に修正できなければ、評価チームが土曜日に出勤しても無駄になってしまいます。さらに評価結果が1日遅れれば工場の生産が1日止まってしまいます。生産を1日止めれば損失金額は何百万円にもなりました。
(これが自動車メーカーでは1日で何億円にもあります。)
必要なのは価格よりも…
このような場合、超特急で依頼したものの価格が普段の2倍であっても問題ではありません。問題なのは急いでつくったものが不良品の場合です。
実際、超特急でつくったものを組込みテストした結果、いいデータが取れなかったことがありました。そこで部品を調べたら、寸法が図面公差から外れた不良品でした。仕入先に作り直してもらい、再度評価しました。これで数日時間を失いました。
超特急で1個だけつくる場合、その工程は普段とは違う工程です。うっかりミスしやすいのです。
せっかく急いでつくったのに、不良品であれば、評価にかけた時間が無駄になり、再度作り直すために、時間もかかります。損失はさらに膨らみます。
だったら高くてもちゃんとしたものをつくってくれるところに頼みたいと思います。
購買は背景を知らない場合
超特急で間に合わせるため、仕入先は他の仕事を止めて人手をかけてつくります。当然高くなります。
ところが後日仕入先から請求書が来ると、購買の担当者から私に
「こんなに高い請求書が来たけど、これは合っているのか」
と問い合わせされることがありました。
通常の納期であればあり得ない高い値段でした。
しかし上記の背景を考えれば、納期通りに良品を入れれば、金額は問題なかったのでした。
最初に値段を言う
そこで超特急・短納期で受注する際は
「最初に価格を言っておく」
ことです。
取引先が抱えている問題や損失の大きさを考えれば、部品が少々高くても問題ありません。しかもその納期でつくってくれるところは他にないのです。
しかし価格を言わなければ取引先はこれまでと同じ価格だと思います。そこで最初に値段を言えば後でもめることはありません。
今は下請法があるため価格を明記しなければ取引先は発注できません。従って最初の交渉が重要です。
そこで事前に特急・短納期は、何割増しと決めておきます。そして価格が合わなければ、受注する前に交渉します。特急でつくるのは現場にも負担がかかりますし、他の製品の生産にも影響します。
それでも儲かるような価格にします。
もし低い価格を強要される場合、他の仕入先にやってもらえばいいのです。
しかし中には、取引先の依頼を聞くと「なんとか間に合わせたい」と考え、材料手配やどうやってつくるかを真っ先に考えてしまう仕入先もあります。そして値段の交渉をしないでつくってしまいます。
高くなる理由は必要
高い値段をつけた時、
「なぜ通常納期に比べて、これだけ高くなるのか」
取引先から聞かれるかもしれません。その時に理由が言えなければ、取引先の購買も納得しません。理由は、
1個だけつくるために段取時間やプログラム作成時間、準備時間が余分にかかる、
作業者を2人投入など、
取引先が納得すればなんでもよいです。
発注先の仕様変更・設計変更
仕様変更や設計変更で価格が上がる要素があれば、値上げのチャンスです。
適度な値上げ
新規に受注する場合、厳しい指値や相見積の競争で受注までに適正価格よりも値下げしたかもしれません。そこで設計変更の機会に少しでも利益を戻したいところです。
そこで上げすぎと思われない程度に値上げをします。その際、「どうしたこの値段になったのか」取引先に聞かれた場合、説明できるようにします。
交渉力は選定
価格交渉の最大の力は「選定」です。
取引先は新規に発注する際は相見積を行い、購買は選定という力を駆使して仕入先を競争させ価格を引き下げます。
しかし仕様変更や設計変更が出た時点では、仕入先の選定は終わっています。値上げ金額が高いからといって、仕入先を変えるのは大きなエネルギーが必要です。しかも値上げを認めざるを得ない理由があります。
新規に受注する場合は、相見積で価格を比較されますが、設計変更の値上げは比較する対象がありません。そこで取引先が納得する理由を述べて、上げすぎと思われない程度に値上げすれば、値上げは通る可能性があります。
他社ができないもの
価格交渉で発注先が最も交渉力を発揮できるのは、最初の選定の段階です。
どこでもできるものは発注側の力が強い
その製品をつくれる仕入先は数多くあり、どの仕入先も供給能力が十分あれば、発注側の力は強くなります。相見積で価格を競わせ、最も安いところに発注できます。
そういった仕入先が少なければ価格競争は弱くなります。もし1社しかできなければ仕入先の価格で発注するしかありません。そこが断れば調達できなくなるからです。
これは技術的にできることに加えて、品質と供給能力も必要です。品質が良くなければ不良品のリスクがあります。供給能力が不十分であれば生産に支障をきたします。
ヒントは創意工夫
私の経験では、「他社でできないもの」は長年研究開発した高度な技術でなくてもありました。取引先が困っている課題を一緒に考え工夫して解決すれば、それが他社ができないものになりました。
例えば以下のようなものはつくり方がわからず、仕入先にもアイデアを出してもらって何とか実現しました。
- 薄い金属と薄いゴムを強固に接合
- 細いピンと細いパイプの接合
- うまくクランプできない形状を切削加工
新たな製品を開発する際は、様々な課題が出ます。そこでいろいろとアイデアを出して、テストも行い、解決に協力してくれる仕入先はとてもありがたかったです。
大事なところは見せない
大切なことは、創意工夫した「キモ」の部分は取引先に見せないことです。取引先に見せれば、それは他の取引先に伝わります。他社ができないものでなくなってしまいます。
2社購買が必要な取引先も
自然災害の多い日本は、1社しかできない部品があると、その1社が災害に遭えば部品の供給が止まってしまいます。
そこで1社が災害に遭っても生産が継続できるように、2社発注の体制を進めている取引先もあります。つまり取引先にとっては「他社ができないもの」があるのは都合が悪いのです。
かといって創意工夫した内容を全く見せなければ、取引先から信頼されなくなってしまいます。そこである程度まで見せて、その技術の肝心の「キモ」となる点は隠します。
このノウハウをどこまで見せて、どこまで秘匿するかは、発注先と仕入先の価格交渉の力関係を決める大切な要素です。
(現実には工夫してうまくできたことは嬉々として取引先に話してしまう経営者もいますが…)
一方このような値上のチャンスがいつもあるとは限りません。普段は「値上げするなら他に出す」と脅されます。では取引先は他に選択肢があるのでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉】21. 少し高くても受注するには1 内製も含めた他の選択肢を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
中小企業でもできる簡単な原価計算のやり方
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経営コラム ものづくりの未来と経営
人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中
ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?
経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
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経営コラム 製造業の原価計算と見積
製造業の原価計算と見積について、「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」から、抜粋しました。以下の3つのパートがあります。
【原価計算と見積の基礎】
原価計算の基本的な計算方法を説明しました
【原価計算と見えない赤字】
検査追加、ロットの変更など、現場て起きる問題を金額で示しました。
【原価計算と見積の疑問】
間接製造費用の分配、イニシャル費の回収などの考え方を示しました。
原価計算と見積の基礎
個々の製品の原価の計算方法、人と設備のアワーレートの計算方法、間接費や販管費の計算方法など基本的な計算をわかりやすく書きました。
【原価計算と見積の基礎】1. なぜ原価が必要なのか?
様々な費用が上昇する今日、原価が分からないと値上交渉ができません。他にも原価が分からないことで起きる問題は…
【原価計算と見積の基礎】2. 製造原価の計算方法(1)
製造原価を計算する費用は決算書の値を元にします。決算書には工場で発生する様々な費用が計上されています。例えば…
【原価計算と見積の基礎】3. 製造原価の計算方法(2)
個々の製品の見積に間接製造費用と販管費も入れる必要があります。間接製造費用は間接部門の労務費や工場の経費など…
【原価計算と見積の基礎】4. 人のアワーレートの計算方法
人のアワーレートは人の年間費用を実際に付加価値を生んでいる時間で割って計算します。一方各現場には賃金の異なる人がいるため…
【原価計算と見積の基礎】5. 設備のアワーレートの計算方法(1)
設備のアワーレートは設備の年間費用を実際に付加価値を生んでいる時間で割って計算します。この年間費用のうち設備の購入費用は…
【原価計算と見積の基礎】6. 設備のアワーレートの計算方法(2)
設備のアワーレートの具体的な計算を説明します。設備が年間で半分しか稼働しなければ…
以降、個々の製品の原価、工程別の原価については「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】にあります。
原価計算と見えない赤字
【原価計算と見えない赤字】1. 高い設備は原価が高いのか
設備の大きさ(価格)による原価の違い、設備によって現場を分けるかどうか、ラインの場合の設備の考え方などを説明しました。同じ設備でも大きさによって償却費やランニングコストが異なる場合は…
【原価計算と見えない赤字】2. 自動化とロボットの活用
無人加工と有人加工の違い、ロボットを導入した場合の原価を説明しました。有人加工は加工中、人と設備の費用が同時に発生しますが、無人加工の場合は…
【原価計算と見えない赤字】3. ロットの減少によるコストアップ
段取がある場合、製品1個の段取費用はロットが小さくなると大きくなります。具体的にどのくらい違うのか、機械加工A社樹脂成型加工B社の事例で…
【原価計算と見えない赤字】4. 段取時間の短縮
ロットが少なくなれば原価に占める段取費用が大きくなります。この段取時間を短縮すれば段取費用はどのくらい小さくなり原価はどうなるでしょうか?実は段取は2種類あり…
【原価計算と見えない赤字】5. 検査追加によるコストアップ
検査費用が最初から見積に入っていれば問題ありませんが、検査費用が見積に入っていない場合、検査を追加すれば原価は上がります。この検査には全数検査と抜取検査があり…
以降、材料歩留のスクラップ費用の影響、不良損失によるコストアップ、電気代、運賃上昇による原価の増加については「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【実践編】にあります。
原価計算と見積の疑問
【原価と見積の疑問】1. 間接費用の分配とは?
本コラムで説明する間接製造費用の分配は2種類あります。ひとつは直接製造費用に比例して間接製造費用を各現場に分配する方法です。もうひとつは…
【原価と見積の疑問】2. 直接原価計算の方が良いと言われたが?
「全部原価計算より直接原価計算の方が良い」「変動原価と固定原価を計算し、限界利益の総額を管理する」原価計算の本に書かれていますが、これはあまりお勧めしません。その理由は…
【原価と見積の疑問】3. イニシャル費の回収はどうすればいいのか?
イニシャル費は金型のように生産開始に先立って発生する費用です。顧客によってはイニシャル費として一括で支払わず、製品の価格に上乗せして支払う場合があります。これがイニシャル費の回収です。一方中には製品と金型の利益率が大きく違う場合があり…
他にも、赤字でも受注すべきか、内製・外製をどう判断するのか、設備投資や開発費の回収計算料については「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【実践編】にあります。
中小企業でもできる簡単な原価計算のやり方
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書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」
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【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?
いろいろな費用が上がった場合の値上げの明細について【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?で説明しました。
この見積を元に顧客に値上げをお願いすると「高すぎる」と言われることがあります。顧客から「高すぎる」と言われると、いくらが「適正価格」なのだろうかと思います。
ある製品(部品)の適正価格は、あるのでしょうか。
自社の適正価格
結論から言えば、ある製品(部品)の絶対的な適正価格はありません。ただし、自社がつくった場合の適正な価格はあります。
自社の適正な価格とは?
自社の適正価格とは、製造原価、販管費をカバーし、必要な利益がある価格です。
この価格であれば、必要な経費をまかなって利益が出ます。残った利益を借入金の返済や老朽化した設備の更新に充てることができます。
利益まっくすで計算した原価は、その工場で発生した費用にもとづくもので、これは「真実」です。従って時間(段取時間、加工時間)が適正であれば、これが自社の適正価格です。
会社が違えば、適正価格は違う
しかし会社が異なれば直接製造費用と間接製造費用の比率、販管費レートが違います。つまり適正価格も違います。
規模の異なる会社の原価の比較
そこで規模の異なる架空の機械加工の会社A社とB社の原価を比較します。
2社とも、マシニングセンタ、NC旋盤などによる部品加工と組立を行っています。ただし2社は規模が違います。
A社 売上7億円、社員43人、うち間接は14人
B社 売上30億円、社員193人、うち間接は87人
A社に比べて、B社は外注品も多く、購買や生産管理など間接部門に多くの人がいます。技術や品質管理の人も多く、品質管理や工程管理の体制は充実しています。
構成と売上、製造原価、販管費、利益
A社の構成を図1に、B社の構成を図2に示します。
A社の売上、製造原価、販管費、利益を図3に示します。
B社の売上、製造原価、販管費、利益を図4に示します。
アワーレート、販管費レートの比較
NC旋盤の現場の間接製造費用を含んだ人と設備のアワーレートの合計 アワーレート間(人+設備)を比較します。
NC旋盤のアワーレート間(人+設備)
A社 アワーレート間(人+設備) : 4,620円/時間
B社 アワーレート間(人+設備) : 7,670円/時間
(アワーレート間(人+設備)の計算については【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?を参照してください。)
人件費と設備の費用(償却費とランニングコスト)は同じです。それでもアワーレートがこれだけ違うのは、間接部門の人件費と工場の経費の違いによるものです。
決算書の製造原価と販管費から計算した販管費レートを以下に示します。
A社 販管費レート : 0.25
B社 販管費レート : 0.057
B社はA社より工場の規模は大きいのですが、販管費はそれほど大きくありませんでした。その結果、B社の販管費レートはA社より小さくなりました。
見積金額の比較
NC旋盤で加工するA1製品の見積金額を比較します。
(見積金額の計算については【製造業の値上げ交渉】3. 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?を参照してください。)
製造時間 : 0.075時間
製造費用
製造費用=アワーレート間(人+設備)×製造時間
A社製造費用=4,620×0.075=346円
B社製造費用=7,670×0.075=575円
製造原価
A1製品 材料費330円 外注費50円
製造原価=材料費+外注費+製造費用
A社製造原価=330+50+346=726円
B社製造原価=330+50+575=955円
販管費
販管費=製造原価×販管費レート
A社販管費=726×0.25=182円
B社販管費=955×0.057=54円
販管費込み原価
販管費込み原価=製造原価+販管費
A社販管費込み原価=726+182=908円
B社販管費込み原価=955+54=1,009円
目標利益率 : 0.087 (A社、B社共)
目標利益
目標利益=販管費込み原価×目標利益率
A社目標利益=908×0.087=80円
B社目標利益=1,009×0.087=88円
見積金額
見積金額=販管費込み原価+目標利益
A社見積金額=908+80=988円
B社見積金額=1,009+88=1,097円
A社とB社では、会社の規模、直接製造費用と間接製造費用の比率、販管費レートが違います。その結果、同じ賃金、同じ費用の設備でも間接製造費用を含んだアワーレートは大きく違いました。
そして見積金額、つまり適正価格も
A社 988円
B社 1,097円
と異なりました。950円の受注金額では利益は、
A社 : 利益=950-908=42円
B社 : 利益=950-1,009=▲59円
A社は42円の利益がありましたが、、B社は赤字でした。
以上の結果を図5に示します。
管理がしっかりしている会社は原価が高くなる傾向
A社に比べてB社は、以下の特徴があります。
- 工程管理に専任者がいて、手順書や治具の整備、製造条件の記録や管理がしっかりできている。品質は安定し、製品の製造履歴(トレーサビリティ)も記録・保管している。
- 品質管理の人員、及び検査・測定機器が充実し、必要な個所はすべて社内で測定・評価できる。
- 製造技術の専任者がいて技術的に難易度の高い製品も製造条件を工夫して実現できる。
- 特殊な治具が必要な場合、治具を自社で設計できないため社外に頼まなければならない。
- 検査・測定機器が十分になく、社内で測定・評価できない項目がある。
- 製造履歴(トレーサビリティ)を記録・保管する体制がない。
対してA社は価格は低いのですが以下の弱い点があります。
製品によって適した仕入先が変わる
従って製品の要求精度、要求品質、技術的な難易度によって、適切な仕入先は変わります。
A社でも問題なく製造できる製品
難易度が低く、高度な工程管理、製造履歴管理、品質管理が必要でない製品の場合、最適な仕入先はA社です。こういった製品をB社に発注すれば製品は高くなります。
高くてもB社に発注すべき製品
技術的な難易度が高く、不良品が発生すれば重大な問題が起きる製品は、A社ではリスクが高いです。
安いからとA社に発注すれば、手順書が整備されていなかったり、重要な工程の工程管理が不十分だったりして思わぬミスや不良が起きるかもしれません。しかもトレーサビリティがとられていないため、問題が起きた場合、影響範囲を絞り込むことができません。
このような製品は、価格が高くてもB社に発注します。
つまりA社とB社の得意な製品は異なります。これを図6に示します。
市場価格
適正価格のもうひとつの考え方は市場価格です。この市場価格は需要と供給で決まります。例えば卵は市場価格が日々変わります。需要が増加し供給不足になれば価格は上昇します。製造業でも多くの工場でつくれるものは市場の影響を受けます。
製造業、中でも下請け企業の場合、景気が減速して受注不足に陥れば、少しでも固定費を回収するため、多くの企業は赤字でも受注します。その結果、市場価格は低下します。
しかし実際は発注先と長期的に取引していれば、景気が良くなった時に値上げが困難になるため極端な値下げはしません。
逆に景気が良くなり中小企業の多くが受注が一杯になれば、赤字でも受注する企業はなくなります。その結果、市場価格は上昇します。
短時間に見積を出すサービス
最近は三次元データがあれば見積金額を計算するシステムもあります。ミスミのAIプラットフォーム メビー(meviy)は、三次元データを送れば、板金、溶接、切削加工の部品の見積を1分で出してくれます。
多くの取引先がこういったサービスを利用すれば、将来はこれらがひとつの市場価格を形成するかもしれません。
自社のポジションは?
自社はA社でしょうか?
B社でしょうか?
自社に合った製品はどのようなものでしょうか?
そこで自社に原価の仕組みを構築し、製品毎の適正価格(適正な見積金額)を算出します。この価格が現在の自社の実力値です。この価格で受注しなければ必要な利益が確保できません。
失注が多い場合
「適正価格」で見積を出して失注が多ければ、競合がいくらで受注したのか調べます。競合と比べて自社の見積が明らかに高ければ、以下のいずれかが考えられます。
製造コストが高い
製造コストが高い原因は
- 製造工程が多い
- 製造時間が長い
- 設備や人の費用が高い
などが考えられます。製造工程の見直し、製造時間の短縮、ランニングコストの削減に取り組みます。
自社の間接製造費用、販管費の見直し
どの製品も競合よりも自社の適正価格が高い場合、間接部門や工場の経費、販管費が大きい可能性があります。自社の間接部門や事務の人員、工場の経費が適正か、削減できないか検討します。
例えば、売上が大きく減少すると、売上に対して間接部門の費用や販管費が高くなります。もし一時的な売上低下でなく、今後もこの売上が続くようであれば、それに合わせて間接部門や事務の体制を変えなければなりません。
これは決して簡単ではありませんが、かつて同じような売上だった時代があれば、その時の組織・体制を参考にし、削れるところはないか検討します。
自社に適した製品を受注できていない
A社でもできる製品の見積金額はB社は高くなります。B社に向いている製品はもっと難易度が高くA社に向いていない製品です。A社でできるような製品をA社と競合して価格を下げれば、B社の経営は苦しくなります。
ブラックボックス化
こういった競合との価格競争を避ける方法は「ブラックボックス化」です。
自社しかできない工程、取引先もわからない工程は取引先にとってブラックボックス化します。相見積が取れないため、その価格が適正かどうかも取引先はわかりません。
あるいは取引先が困っていたことを解決すれば、そのノウハウはブラックボックスにできます。そのためには取引先の困りごとをヒアリングし、それを自社で工夫して解決します。現場で創意工夫したことは自社の強みになります。その場合、カギとなるところは隠しておきます。
この適正価格に対し、工程や検査が追加されれば原価は上がります。ではいくら上がるのでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか?を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
中小企業でもできる簡単な原価計算のやり方
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【製造業の値上げ交渉】9. 運賃が上昇すれば、いくら高くなるのだろうか?
人件費、電気代など工場の経費の上昇で原価がどれだけ上がるのかについて、
【製造業の値上げ交渉】4. 人件費が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?
【製造業の値上げ交渉】5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?
【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか?
他にも運賃や梱包資材も高くなっています。これについてはどのように交渉すればよいのでしょうか?
出荷に伴う費用
製品を出荷する際、梱包資材の費用や運賃がかかることがあります。一般的には、これは販管費と考えられます。
では梱包費用はどのように計算するのでしょうか?
梱包費用
梱包費用は、梱包資材の費用と梱包にかかる人件費です。
梱包資材の費用
梱包資材の費用を原価とするかどうかは、梱包資材の費用によって変わります。
製品価格に比べ梱包資材の費用が低ければ、原価には入れず間接製造費用とします。
製品価格が低く、製品のかさが大きければ、梱包資材の費用の比率が高くなります。
例えば、1個100円の製品を段ボールに6個入れて出荷する場合、段ボールの価格が120円の場合、製品1個当たりの段ボール費用は20円です。これは製品価格100円の20%にもなります。
あるいは1個1万円の製品でも、2メートル以上の大きな製品の場合、段ボールや保護シートの費用は高くなります。
今まで梱包資材の費用を計算していなければ、一度梱包資材の費用を計算して、原価に含めるのかどうか判断することをお薦めします。
梱包資材の費用を原価に含めた場合、梱包資材が値上げすれば、原価も上昇します。時には値上げ交渉をしなければなりません。
一方、梱包資材が段ボールのような使い捨てでなく、繰り返し使用できる通い箱の場合、生産開始時に必要な数の通い箱を購入します。その費用は金型や治具と同様にイニシャル費と考えます。
梱包作業の費用
人が梱包作業を行う場合、梱包費用が発生します。この費用は、作業時間が短かければ間接製造費用と考えます。
一方梱包作業に時間がかかる製品、例えば、大型の製品を傷がつかないように保護シートで保護して箱に入れる場合、梱包作業の時間がかかります。そこで作業時間とその現場のアワーレート(人)から梱包費用を計算して見積に加えます。
あるいは梱包作業の費用を見積に入れなければ、その分製造原価を多くします。そうしないと利益が少なくなってしまいます。
加工や組立のような作業は、少しでも作業時間を短くするようにカイゼンします。しかし梱包のような間接的な作業は、カイゼンが進んでいないことがあります。しかし梱包作業も費用は発生しています。梱包費用がかかる製品は、梱包資材の使用量や梱包時間を「見える化」して、カイゼンに取り組みます。
運賃
主に製品を顧客に運ぶ費用です。自社が運賃を負担する場合、
- 製品の価格に比べて運賃が低ければ、運賃は販管費の中に含めます。
- 製品の価格に比べて運賃が多ければ、製品毎に運賃を計算し見積に加えます。
梱包費用と同様に、製品価格が低くかさが大きい製品は、価格が高くても運賃も高くなります。そのような場合、運賃を一度計算し見積に入れるかどうか判断することをお薦めします。
運賃の計上
本コラムの原価計算は、先期の決算書の値からアワーレート、アワーレート間、販管費レートを計算します。
その際、運賃や梱包費用の計上は、経理や会計事務所の処理によって変わります。
運賃
製品を顧客に送る費用は、会計上は販管費です。一方原材料を工場に運ぶ費用や、工場間での物流費用は製造原価です。
実際は同じ運送業者が顧客への輸送も工場間の物流も行っている場合、どちらも販管費(あるいは製造原価)に計上されていることもあります。(請求書が一緒になっているため)
梱包費用
厳密に言えば、梱包費用は、いつ梱包したかによって、製造原価か販管費かが変わります。
- 製品が完成しても梱包しないで社内の通い箱に保管し、出荷が決まった後、梱包して出荷する場合、梱包資材や梱包作業の費用は販管費です。
- 製品が完成した時点で梱包・箱詰めし、倉庫に保管する場合、梱包作業は製造作業です。梱包資材や梱包作業の費用は製造原価です。
見積に梱包費用として入れる場合、1.の場合は注意が必要です。
1.で梱包資材の費用が工場の消耗品になっている場合、実際は販管費です。そこで販管費レートを計算する際は、梱包資材の費用は製造原価から販管費に移します。
具体的な計算例
架空のA社 A1製品の梱包費用と運賃を計算します。
(A社の詳細は【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?を参照願います。)
梱包費用
A1製品
- 6個1箱
- 段ボール : 120円
- クッションシート : 12円(テープ等の他の資材は消耗品)
- 梱包時間 : 10秒 (0.00278時間)
- 梱包のアワーレート間(人) : 1,920円/時間
梱包費用=梱包のアワーレート間(人)×梱包時間
=1,920×0.00278=5円
梱包費用合計=22+5=27円
運賃
製品1個の運賃はトラック1台の費用と1台に積める量から計算します。
A社 A1製品
- 1パレット : 250個
- トラック1台 : 10パレット
- トラック1台の費用 : 50,000円
1個の運賃は20円でした。
輸送条件が異なる場合
同じ製品でも輸送条件が異なる場合があります。
例えば
- 条件1 量が多ければ1台チャーターできるが、少ない場合は混載便になる
- 条件2 顧客の工場が2か所あり距離が異なる。H工場20km、K工場200km
毎回、運賃を計算して請求できれば問題ありません。それが難しい場合、それぞれの比率から平均運賃を計算します。
過去の実績から比率を調べます。
【納品場所】
- H工場まで50km 60%
- K工場まで300km 40%
【チャーター、混載比率】
- チャーター便 80%
- 混載便 20%
この比率から全体の比率を計算したものを表1に示します。
表1 工場と輸送方法の組合せ
輸送方法 | 比率 | 全体比率 | ||
---|---|---|---|---|
H工場 | 60% | チャーター便 | 80% | 48% |
混載便 | 20% | 12% | K工場 | 40% | チャーター便 | 80% | 32% | 混載便 | 20% | 8% | 合計 | 100% |
チャーター便のH工場とK工場の運賃を図7に示します。
チャーター便の運賃は、H工場20円、K工場40円でした。
混載便でのA工場とB工場の運賃を図8に示します。
図8 混載便でのH工場とK工場の運賃
混載便の運賃は、H工場50円、K工場100円でした。
集計結果を表2に示します。
表2 工場と輸送方法の組合せ
運賃 | 全体比率 | 運賃×比率 | |||
---|---|---|---|---|---|
H工場 | チャーター便 | 48% | 20 | 48% | 9.6 |
混載便 | 12% | 50 | 12% | 6 | K工場 | チャーター便 | 32% | 40 | 32% | 12.8 | 混載便 | 8% | 100 | 8% | 8 | 合計(平均運賃) | 36.4 |
その結果、平均運賃は36.4円でした。
販管費レートの変更
運賃、梱包費用を販管費とは別に見積に記載する場合、販管費から運賃、梱包費用を除外します。
例 A社
販管費 : 7,700万円
部品の輸送費の年間合計 : 2,000万円
運賃を除外した販管費 : 5,700万円
図9では、運賃2,000万円を販管費から除外し、販管費は5,700万円、販管費レートは25%→18%になりました。
A1製品の見積金額
運賃、梱包費用を別にした場合の、A1製品の見積金額を計算します。A1製品の製造原価は726円でした。これについては【製造業の値上げ交渉】3. 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?を参照願います。
- 製造原価 : 726円
- 販管費レート : 0.18
販管費=726×0.18=131円
- 梱包費用 : 27円
- 平均運賃 : 36円
見積金額=製造原価+販管費+梱包費用+運賃
=726+131+27+36=920円
見積の記載例
梱包費用、運賃を見積に記載した例を図10に示します。
この見積書の金額は自社の正しい販管費、目標利益です。顧客によってはこの金額を認めない場合もあります。その場合は、数字の修正が必要なので注意してください。
(これについては【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?を参照願います。)
値上げ計算
このように見積書に運賃、梱包費用を別に記載すれば、運賃、梱包費用が値上げした場合の値上げ交渉が容易になります。
計算例
- 運賃 : 30%上昇
- 梱包資材 : 10%上昇
運賃=36×(1+0.3)=47円
梱包費用=22×(1+0.1)+5=29円
値上げ金額=47―36+29-27=13円
13円値上げすれば、運賃の上昇と梱包資材の上昇をカバーできます。
図10の見積書の記載例に値上げ金額も記載しました。
では、運賃や梱包費用が上昇した場合、値上げ交渉はどのようにすればいいのでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉】10. 値上げ交渉は初めて、どう進めていけばよいのだろうか?を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
中小企業でもできる簡単な原価計算のやり方
製造原価、アワーレートを決算書から計算する独自の手法です。中小企業も簡単に個々の製品の原価が計算できます。以下の書籍、セミナーで紹介しています。
書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」
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経営コラム ものづくりの未来と経営
人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中
ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?
経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
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【製造業の値上げ交渉】15. いくら値上げするのが適切だろうか?
原価を見直したら大幅な赤字だったため、値上げ交渉を行いました。
取引先から「値上げは検討するが、この金額は高すぎる」と言われました。どうすればいいでしょうか?
これまで値上げできなかったことが原因
こうなった原因は、これまで様々な費用が少しずつ上がっていたのに、それが価格に反映できなかったためです。
その結果、「自社の現在の見積金額」と受注金額との乖離が大きくなってしまいました。しかもこれまで「コストダウンはあっても値上げはあり得ない」という状況だったため値上げができませんでした。その結果、値上げ金額が大きくなってしまいました。
例えば、架空の企業A社 A1製品は
受注金額が860円、販管費込み原価が908円のため、48円の赤字でした。
(A社の詳細は【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?を参照願います。)
目標利益を得るには、価格を988円に
つまり128円の値上げが必要でした。これを図1に示します。
実はA1製品は、〇年前の見積は860円でした。
販管費込み原価は800円、60円の利益でした。
しかしその後、材料費、外注費、人件費、工場の経費が上昇し、
現在の販管費込み原価は908円、860円の受注金額では48円の赤字になってしまいました。
適切な値上げ金額とは?
一方、値上げは取引先の立場も考えなければなりません。取引先は仕入部品の価格が上昇すれば、それを製品の価格に転嫁しなければならないからです。
取引先が自社製品を販売するメーカーの場合、値上げすれば競合との競争に負けて市場シェアを失うかもしれません。
取引先も製品をメーカーに納める下請けだった場合、仕入部品が値上げした分、今度は取引先が値上げ交渉しなければなりません。これはとても大変なことです。
経済産業省の「自動車産業適正取引ガイドライン」には、ティア1など下請け部品メーカー(といっても大企業)が取引先の自動車メーカーに対し、
「仕入価格の上昇を価格転嫁ができない」、
「値上げすると次のサプライヤー選定に影響すると言われた」という事例が載っています。
こういった背景があるため、取引先が大幅な値上げを受け入れるのは難しいのです。
《私の経験》
(機械メーカーで、設計、品質保証に24年間従事しました。)
私の経験でも仕入部品の値上げはある程度は許容しましたが、大幅に上がれば他の仕入先を探しました。大幅な値上げは製品の原価を大きく上げるからです。
その場合、まず今の仕入先に対し「以前と同じ価格でつくるためにはどうしたらよいか」を協議しました。それがうまくいかなければ他の仕入先を探しました。それでも値段が高くなるような場合は、以前の価格でできないか設計変更を検討しました。
しかし設計変更は品質リスクを伴います。仕入先を変えて同じ価格でできるのであれば、そうしました。
失注のリスク
つまり大幅に値上げすれば、失注するリスクがあります。また大幅な値上げは取引先との関係が悪化し、その後の取引にも影響します。
どうしたらよいでしょうか?
適正価格を示して交渉
このような場合、値上げは取引先が受け入れられる(と思われる)金額にとどめておく必要があります。
ただし、本当に必要な金額は取引先に提示します。そして「原価はこれだけかかっているため、本当はここまで値上げしたい。しかし大幅な値上げは難しいことは理解しているので、これだけは上げてほしい」と交渉します。
例えばA社では、
A1製品をいきなり128円値上げするのが困難であれば、取引先に
「当社の適正価格は988円ですが、いきなりその価格にするのは難しいでしょうから、せめて80円値上げして940円にしてもらえませんか?」
と交渉します。
940円であれば、赤字は解消し32円の利益になります。目標利益ではありませんが、赤字で受注するよりはましです。
(実際の金額は自社と取引先との関係で変わります。この数字はあくまで参考値です。)
コストダウン提案も入れる
できれば
「できる限り値上げ金額を低くするようにコストダウンのアイデアを考えるから図面や仕様の見直しに協力してほしい」、
論点をコストダウン協議に変えます。
それには日頃から図面指示や形状に注意して、コストダウンできる箇所を探します。
例えばA1製品では、コストダウンを検討した結果、「公差を緩和し、検査基準を変える」ことで、製造時間を短くできることが分かりました。その結果
人件費 : マイナス20円
製造経費 : マイナス3円
が見込まれました。
これにより値上げを60円、値上げ後の金額920円に抑えても、40円の利益が出ます。これを図2に示します。
他社がやらない製品
一方、何らかの理由があって他社がやらない製品であれば、取引先も値上げを受け入れざるを得なくなります。その場合は、取引先が受け入れる値上げ金額はもう少し高くなります。ただし値上げ金額があまり高いと、取引先は他にできるところを探し始めますので、さじ加減は必要です。ただし他社がやらないものなのかどうかは、日頃から情報を集めていないとわかりません。
「なぜこれは当社に発注するのですか?」
「この図面の○○はとても難しいのですが、他にやるところはないのですか?」
取引先の担当者と日々の会話の中で「他に競合はあるのか」、「競合があれば価格や品質面ではどうか」などさりげなく質問して情報を収集します。
失注しても影響の少ない製品
あるいは受注が潤沢にあり、例えこの製品を失注しても業績への影響が小さければ、値上げ幅を大きくすることもできます。値上げ交渉は失注のリスクがゼロではありません。受注が少なく、ひとつ失注しても業績に大きく影響すれば、値上げ交渉は消極的になります。つまり営業活動がどれだけ成果を上げていて、受注がどれだけあるかが、値上げ交渉に影響します。
一方ずっと前に受注して、同じ価格でつくり続けている製品もあります。例えば15年前に受注して、受注価格は15年間変わっていない製品です。
これはどうすればよいでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉】16. 15年前の製品、赤字がひどくやめたいを参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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【原価計算と見積の基礎】3.製造原価の計算方法(2)
【原価計算と見積の基礎】2.製造原価の計算方法(1)では工場で発生する必要と製造原価の構成について説明しました。
ここでは間接製造費用と販管費、見積金額の計算について説明します。
間接製造費用も原価の一部です。そこでこれらの費用も製品の原価に組み込みます。
では、どうやって間接製造費用を原価に組み込むのでしょうか。
間接製造費用の分配1 製品に直接分配
最も簡単な方法は直接製造費用に何らかのルールで分配〈注1〉する方法です。
〈注1〉
本コラムでは、間接製造費用を割り振ることを「分配」と呼びます。会計では割り振ることを「配賦」と呼びます。この配賦も「割り当てる」という意味です。
会計では「配賦」のほかに「賦課」という言葉もあり、以下のように使い分けています。
配賦:製造原価を計算する際に、間接費を何らかの基準(配賦基準)を用いて振り分けること
賦課:製造原価を計算する際に、「何に」「どれだけ」使ったのかがわかる直接費を振り分けること
「直接費は賦課して、間接費は配賦する」という表現します。しかし、本コラムでは難しい会計用語を用いず、一般的な「分配」を使用します。
原価計算の本には、分配基準の例として以下のものがあります。
- 直接材料費
- 直接労務費
- 直接製造費用
- 直接活動時間
- 機械稼働時間
- 生産量
- 売上高
これらの分配基準は一長一短があります。
例えば「直接材料費に比例して分配する方法」は、製品によって材料費の比率が異なると間接製造費用が変わってしまいます。
そこで本コラムはこのような問題の比較的少ない「直接製造費用に比例する方法」を使用します。直接製造費用に対する間接製造費用の比率を、本コラムは「間接費レート」と呼びます。
間接費レートは、決算書の直接製造費用合計と間接製造費用合計から計算します。
間接製造費用は、直接製造費用に間接費レートをかけて計算します。
間接製造費用=直接製造費用×間接費レート
製造費用は、直接製造費用と間接製造費用の合計です。
製造費用=直接製造費用+間接製造費用
=直接製造費用×(1+間接費レート)
この方法は、どの製品も直接製造費用に比例して間接製造費用を計算します。
しかし現場によっては間接製造費用がたくさん発生した現場とそうでない現場があります。その場合、次の方法で間接製造費用を各現場に分配して原価を計算します。
間接製造費用の分配2 各現場に分配
間接製造費用を部門別に計算し、各現場に分配する方法です。
例えばA社では、資材発注部門は、原材料を使う加工や組立の現場には関係しますが、検査や設計には関係しません。
そこで資材発注部門の費用は、加工と組立の現場に分配します。
このようにして各現場の直接製造費用と間接製造費用を計算し、その合計からアワーレートを計算します。これを図1に示します。
財務会計の計算方法
財務会計では、この部門別の費用の計算は以下のように行います。
- 水道光熱費、消耗品費、修繕費などを各現場と間接部門に分配する
- 共用部の減価償却費、保険料、賃借料など共用部の費用を何らかの
分配基準で各現場と間接部門に分配する(分配基準の例 人数、床専有面積、光熱費など) - 間接部門の費用を各現場に分配
実際は、消耗品費や水道光熱費などは、各現場や間接部門がどれだけ使っているのか正確にはわかりません。またこれらの費用を各現場や部門に分配しても金額は低いので、そこに労力をかけてもメリットは多くありません。
直接時間、又は直接製造費用に比例して分配
そこで本コラムは、間接製造費用(製造経費と間接部門費用)は各現場の「直接時間」、または「直接製造費用」に比例して分配します。
例えば、A社の資材発注の費用は、加工と組立の各現場それぞれの直接製造費用に比例して分配します。ただし特定の現場が多く消費している費用があれば、その現場の費用を増やします。
間接製造費用を含んだアワーレート
こうして計算した間接製造費用と直接製造費用を現場毎に合計し、稼働時間で割ってアワーレートを計算します。
なお本コラムは、直接製造費用から計算したアワーレートと、直接製造費用と間接製造費用の合計から計算したアワーレートを区別するために、これをアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)と表記します。
アワーレート間(人)の計算方法は、【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法、
アワーレート間(設備)の計算方法は、【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)、
で説明します。
製造費用の計算式
間接製造費用を含んだ製造費用は以下の式で計算されます。
製造費用(人)=アワーレート間(人)×製造時間(人)
製造費用(設備)=アワーレート間(設備)×製造時間(設備)
製造費用(人+設備)=製造費用(人)+製造費用(設備)
本コラムでは、製造費用は製造費用(人+設備)を指します。もし人と設備が同じ時間製造すれば、製造費用は以下の式になります。
製造費用=(アワーレート間(人)+アワーレート間(設備))×製造時間
=(アワーレート間(人+設備))×製造時間
ここでアワーレート(人+設備)は、アワーレート間(人)とアワーレート間(設備)を合計したものです。
A社のアワーレート間
この方法で計算したA社のアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)を表1の右側に示します。
表1 アワーレート間(人)、アワーレート間(設備) 単位 : 円/時間
アワーレート | アワーレート間 | |||
---|---|---|---|---|
人 | 設備 | 人 | 設備 | |
マシニングセンタ1(小型) | 2,380 | 900 | 3,360 | 1,720 |
マシニングセンタ2(大型) | 2,380 | 1,800 | 3,420 | 2,850 |
NC旋盤 | 2,380 | 700 | 3,150 | 1,470 |
ワイヤーカット | 2,250 | 400 | 2,400 | ※550 (890) |
出荷検査 | 1,720 | - | 2,350 | - |
組立 | 1,530 | - | 1,920 | - |
設計 | 2,750 | - | 3,220 | - |
※ ワイヤーカットは段取のアワーレート、( )内は加工のアワーレート
マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート間(人)は、
(直接製造費用のみの)アワーレート(人) : 2,380円/時間
(間接製造費用を含めた)アワーレート間(人) : 3,360円/時間
間接製造費用を含めると980円/時間増加しました。
アワーレート間(設備)は、
(直接製造費用のみの)アワーレート(設備) : 900円/時間
(間接製造費用を含めた)アワーレート間(設備) : 1,720円/時間
間接製造費用を含めると820円/時間増加しました。
製造原価の計算
複数の工程で製造する場合は、各工程の製造費用を合計します。
A1製品の製造原価
図2に複数の工程で製造したA社 A2製品の例を示します。
3工程の製造費用の合計は1,060円でした。製造原価は製造費用に材料費と外注費を加えたものです。
製造原価=材料費+外注費+製造費用
図2は、材料費450円、外注費50円なので、
製造原価=450+50+1,060
=1,560円
製造原価は1,560円でした。
見積金額の計算
販管費は製造原価に一定の比率(販管費レート)をかけて計算します。
販管費=製造原価×販管費レート
製造原価に販管費を加えたものを本コラムでは「販管費込み原価」と呼びます。(会計では「総原価」と呼びます。)
販管費込み原価=製造原価+販管費
見積金額は、販管費込み原価に目標利益を加えたものです。
目標利益は、販管費込み原価に「販管費込み原価利益率」をかけて計算します。
目標利益=販管費込み原価×販管費込み原価利益率
見積金額=販管費込み原価+目標利益
販管費込み原価利益率の計算については、【原価計算と見積の基礎】8.販管費と利益の計算で説明します。
販管費、目標利益、見積金額
A社 A1製品 (マシニングセンタ1(小型)で製造)の原価、販管費、目標利益を図3に示します。
A社は、販管費レート25%、販管費込み原価利益率は8.7%でした。
販管費=製造原価×販管費レート
=760×0.25=190円
販管費込み原価=製造原価+販管費
=760+190=950円
目標利益=販管費込み原価×販管費込み原価利益率
=950×0.087=83≒80円
見積金額=販管費込み原価+目標利益
=950+80=1,030円
見積金額は1,030円でした。
アワーレートはどうやって計算するのでしょうか。
アワーレート(人)の計算方法は【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法で説明します。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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間接部門や工場の間接費用も適切に分配されます。
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人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中
ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?
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【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?
【製造業の値上げ交渉】5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?で説明した方法で計算すれば、それぞれの製品の値上げ金額が計算できます。
では、実際にいくら値上げしなければならないのでしょうか?
架空のモデル企業A社 A1製品について考えます。
A社の詳細は【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?」を参照願います。
値上げ金額の計算
「製造業の値上げ交渉5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?」では、A社 A1製品は、図1に示すように費用が増加しました。
- 人件費 : 8%
- 電気代 : 30%
- 消耗品費 : 15%
- 修理費 : 10%
が増加したため、製造費用は
- 人件費 : 17.9円
- 電気代 : 9.6円
- 消耗品費 : 2円
- 修繕費 : 1円
合計30.5円上昇しました。他にも
- 材料費 : 10%
- 外注費 : 5%
上昇したため
- 材料費 : 33円
- 外注費 : 2.5円
合計35.5円上昇しました。その結果、値上げ前の製造費用は346円なので、値上げ後の製造費用は
製造費用=346+30.5=376.5 円
値上げ前の材料費・外注費合計は380円なので、値上げ後の製造原価は
製造原価=380+35.5+376.5=792 円
これに伴い、販管費、目標利益も増えます。販管費レートは0.25なので、
販管費=792×0.25=198 円 (+16円)
販管費込み原価=製造原価+販管費=792+198=990 円
目標利益は、利益率0.087なので
目標利益=990×0.087=86 円 (+6円)
値上げ金額の合計=30.5+35.5+16+6=88 円
値上げ金額の合計は88円になりました。988円の受注金額から、88円値上げできれば上昇する費用をカバーして、利益が確保できます。
販管費、利益の増加の値上げは難易度が高い
実際は88円の値上げ金額のうち、22円は販管費、利益の増加です。取引先から見れば、この値上げを受け入れるのは難しいかもしれません。
A社は、先期は製造原価の25%の販管費が発生したのは事実です。新たに見積をする場合は、製造原価の25%で販管費を計算します。そうしないと販管費をカバーできず赤字になってしまいます。
しかし取引先から
「今受注している製品は、値上げ前は988円で必要な利益は出ています。原価が上がったからといって、販管費も上げなければならないことはないはずです。」
と言われる可能性があります。
A社の場合、新たに見積計算する場合は、製造原価の25%を販管費、製造原価+販管費の8.7%を利益としますが、値上げ交渉の場合は、実際に増加した費用、材料費35.5円、製造費用30.5円、合計66円の値上げができればOKと考えます。
値上げの根拠を求められた場合
実際の値上げ交渉では、値上げの根拠を求められることもあります。例えば先に説明したA社 A1製品の場合、
- 人件費 : 8%
- 電気代 : 30%
- 消耗品費 : 15%
- 修理費 : 10%
が増加したため、製造費用は
- 人件費 : 17.9円
- 電気代 : 9.6円
- 消耗品費 : 2円
- 修繕費 : 1円
合計30.5円上昇しました。他にも
- 材料費 : 10%
- 外注費 : 5%
上昇したため
- 材料費 : 33円
- 外注費 : 2.5円
- 人件費 : 17.9円
- 電気代 : 9.6円
- 消耗品費 : 2.0円
- 修繕費 : 1.0円
- 直接製造費用のみのアワーレート : アワーレート(人)、アワーレート(設備)
- 間接製造費用を含んだアワーレート : アワーレート間(人)、アワーレート間(設備)
- 間接部門の費用は労務費のみとする。
- 間接部門の費用は、その部門が関与する現場のみに分配する。
- 製造経費は間接部門には分配せず、各現場に直接分配する。
- 販売費 : 商品や製品を販売するための費用
- 一般管理費 : 会社全般の業務の管理活動にかかる費用
- アワーレート計算に使用する設備の費用とは?
- 間接部門の費用をどうやって原価に組み込むのか?
- 段取は原価なのか、ロス時間なのか?
- 電気代が30%上昇すれば、原価はいくら上がるのか?
-
合計35.5円上昇しました。
これを文章にします。
明細が必要な場合
より詳細な資料を求められた場合、1例として、以下のようにアワーレート、製造時間、値上げ金額を記載した明細をつくる方法もあります。
一方資料が詳しければ詳しいほど、取引先は根拠をいろいろと質問します。例えば、
「人件費、電気代等が上昇した時、以下の値上げ金額はどうやって計算したのですか?」
この場合は、以下のように回答します。
「大企業は、間接部門の人件費、電気代、消耗品、賃借料などの間接費は、各部門の専有面積や人数に比例して配賦しているかもしれません。
しかし弊社のような中小企業はそのような詳細な計算はできないので、各部門の時間に比例して一律に配賦しています。その結果、下図のような比率になっています。この費用構成は先期の決算書の数値を元に計算したのでほぼ正しいと考えています。」
もし弊社の利益まっくす、及び値上げ計算シートを利用されている場合
「当社が使用している原価計算システムは、比率計算のアルゴリズムが非公開となっているため、弊社でもわかりません。」
以下の決算書の販管費、製造経費を元に比率を計算しています。
適正な販管費、利益が認められない場合
ここまで説明した値上げ金額は、先期の決算書から計算しました。従って原価は「真実」と言えます。
取引先の中には見積書の販管費〇%、利益〇%と決めている場合もあります。それ以上の販管費、利益が認めてもらえません。その場合は、取引先が認める販管費、利益にした上で製造原価を修正する必要があります。
A1製品の見積を修正した例
そこで取引先が認める販管費、利益にしたA1製品の見積を図7に示します。
見積金額は、図2と同じです。
この例では利益率3%、販管費レート7%が取引先の指定でした。図7では、その分製造費用が大きくなりました。段取時間、加工時間は同じ場合、アワーレートが大きくなりました。
現実にはA社は図2の見積書にある販管費や利益が必要です。しかしそれだけの販管費や利益が認められないならば、このような作業が必要になります。
この販管費、利益の問題については【製造業の値上げ交渉】3. 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?を参照願います。
では、この値上げ金額をどのように交渉すればよいのか、これについては【製造業の値上げ交渉】10. 値上げ交渉は初めて、どう進めていけばよいのだろうか?を参照願います。
では図面や仕様にない検査や工程が後から追加された場合はどうすればよいでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
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ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?
経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
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【製造業の値上げ交渉】3. 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?
【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?」で人と設備のアワーレートの計算方法を説明しました。
原価を計算するには、各現場の費用に間接製造費用を加えたアワーレート間〈注1〉を計算する必要があります。
では、このアワーレート間はどうやって計算するでしょうか?
〈注1〉本コラムでは、間接製造費用を含んだアワーレートを区別するために、
と表記します。
またアワーレートは、直感的に理解しやすいように一桁目を四捨五入しています。(正確さよりもわかりやすさを重視しています。) 実際の計算では正確な数字を使用願います。
直接製造費用と間接製造費用
工場の費用は、直接製造費用と間接製造費用があります。
直接製造費用
ある製品を製造するのにどのくらいかかったのかが明確にわかる費用
(これは人の費用と設備の費用があります)
間接製造費用
どの製品にどのくらいかかったのかが明確にわからない費用
(間接部門の費用や消耗品など、他に工場全体で発生する費用)
この間接製造費用は意外と多く、原価のかなりの割合を占めます。
そこで各現場のアワーレートは、その現場の直接製造費に間接製造費用を加えて計算したアワーレート間を使用します。そのためには間接製造費用を各現場に分配〈注2〉する必要があります。これはどうすればよいでしょうか?
〈注2〉
これは固定費の配賦とも呼ばれます。本コラムでは難しい会計用語は使用せず、一般的な「分配」と呼びます。
間接製造費用の分配
間接製造費用の分配は、本コラムは以下のように行います。
これは各現場の直接時間、又は直接製造費用に比例して分配します。
分配の考え方
直接製造費用に比例して分配
直接製造費用の大きい現場には、間接製造費用を多く分配します。直接製造費用が大きい現場は、生み出す付加価値が高くたくさん稼ぐはずなので、間接製造費用をたくさん負担してもらう考え方です。
直接製造時間に比例して分配
直接製造時間の大きい現場に間接製造費用を多く分配します。直接製造時間が大きい現場は、工場の資源(リソース)を多く使用し、生み出す付加価値も高いと考え、その分間接製造費用をたくさん負担してもらう考えです。
どちらの分配ルールを採用するかでアワーレート間は変わりますが、どちらが正解ということはないので、自社に合った方法を選択します。
アワーレート間の計算
アワーレート間(人)、アワーレート間(設備)は、以下の式で計算します。
では、架空のモデル企業A社(機械加工)のNC旋盤の現場のアワーレート間を計算します。
実際の計算
モデル企業A社の詳細は「製造業の値上げ交渉1 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?」を参照願います。
アワーレート間(人)
NC旋盤の現場の人の費用とアワーレート間(人)を図2に示します。
NC旋盤の現場の作業者は4人、4人の人件費の年間合計は1,672万円でした。就業時間と稼働率は4人とも
就業時間 : 2,200時間
稼動率 : 0.8
でした。
A社は直接製造費用に比例して間接製造費用を分配しました。その結果、NC旋盤の人の現場の間接製造費用の分配は544万円でした。アワーレート間(人)は
でした。
NC旋盤の現場は
アワーレート(人) : 2,380円/時間
アワーレート間(人) : 3,150円/時間
間接製造費用を分配したことでアワーレートは770円/時間 高くなりました。
アワーレート間(設備)
NC旋盤の現場の設備の費用とアワーレート間(設備)を図3に示します。
NC旋盤の現場には4台のNC旋盤があり、実際の償却費、電気代、操業時間、稼働率は4台とも以下の値でした。
実際の償却費 : 100万円
電気代 : 23.2万円
操業時間 : 2,200時間
稼動率 : 0.8
NC旋盤の現場の設備の間接製造費用分配は、544万円でした。
NC旋盤の現場
アワーレート(設備) : 700円/時間
アワーレート間(設備) : 1,470円/時間
間接製造費用を分配したことでアワーレートは770円/時間 高くなりました。
実は見積金額を計算するには、販売費及び一般管理費も入れる必要があります。
これも必要、販売費及び一般管理費
企業で発生する費用のうち、製造に直接関係しない費用が販売費及び一般管理費 (以降、販管費)です。これは以下の二つの費用です。
図4 販管費の例
工場の人や設備の大半は製造のためのものです。一般管理費といってもその大半は製造のための管理費です。会計上の扱いが異なるため、製造原価と販管費は分けていますが、販管費がなければ工場は成り立ちません。
販管費も含めた金額が本当の原価
従って製造原価に販管費を加えたものが本当の原価です。会計ではこれを「総原価」と呼びます。本コラムではこれを「販管費込み原価」と呼ぶことにします。
販管費込み原価=製造原価+販管費
最近は中小企業も管理業務が増え、多くの中小企業は販管費が売上高の15~30%を占めています。従って、見積には販管費も入れて、必要な利益が出るような金額にします。
先期の決算書から比率を計算
それぞれの製品の販管費は、製造原価に一定の比率をかけて計算します。本コラムではこれを「販管費レート」と呼びます。
販管費レートは以下の式で計算します。
販管費=製造原価×販管費レート
ではA社の実際の販管費レートを計算します。
実際の販管費レートの計算
A社の製造原価と販管費は先期の決算書から
製造原価 3億960万円 販管費 7,700万円
販管費レートは25%でした。
見積金額は、この販管費込み原価に目標利益を加えて計算します。
見積金額=販管費込み原価+目標利益
では目標利益はいくらでしょうか。
目標利益
目標利益の決め方は企業によってそれぞれのやり方があります。参考までに前年度の営業利益率から計算する方法を紹介します。
目標営業利益率から計算する方法
先期の営業利益率は以下の式で計算します。
例えば、先期の営業利益率は3%、今期の目標営業利益率を8%としました。
見積書の目標利益は、図5に示すように販管費込み原価から計算します。そこで販管費込み原価に対する利益率(販管費込み原価利益率)を計算します。
販管費込み原価利益率は、以下の式で計算します。
実際の利益率の計算
図5から先期の営業利益率は3%、それを元に今期の目標営業利益率を8%とした場合
販管費込み原価利益率は8.7%でした。
目標利益は、販管費込み原価に販管費込み原価利益率をかけて計算します。
目標利益=販管費込み原価×販管費込み原価利益率
実際にある製品A1製品の見積金額を計算します。
A1製品の見積金額の計算
A1製品の製造原価は726円でした。
987円で受注すれば、製造原価、販管費をカバーして、さらに79円の利益が得られます。これを図6に示します。
原価は真実
以上の方法で計算した原価は、実際に工場で発生した費用(先期のですが)を元に計算した金額です。従ってこの原価は「真実」といえます。ただし間接製造費用の分配方法などが変われば原価は変わります。つまり真実ですが「唯一の値」ではありません。
この金額で受注しなければ目標利益は達成できない
製造業は人や設備が生産することで付加価値を生みます。しかし人や設備の生産能力には限りがあります。
当初想定した稼働率で人や設備が1年間生産すれば、目標の売上や利益を達成します。一方想定以上に受注があっても急に生産を増やすことはできません。(外注化すれば売上は増えますが付加価値は多くありません。)
つまり人や設備によって生産量が限られるため、会社が利益を出すにはひとつひとつの製品で利益がなければなりません。
この点が店舗や人を増やさなくても販売量を大きく増やすことができる小売業や卸売業と違う点です。小売業や卸売業は価格を下げて販売が大きく伸びれば利益は増えるからです。
さまざまな費用が上昇し原価が高くなっている場合
従ってそれぞれの受注で利益があるのか、管理する必要があります。
今日さまざまな費用が上がっています。改めて原価を計算すると赤字になっている製品があるかもしれません。
では、費用が上がると原価はどれだけ高くなるのでしょうか?
これについては以下のコラムを参照願います。
【製造業の値上げ交渉】4. 人件費が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?
【製造業の値上げ交渉】5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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原材料、電気代、消耗品、様々なものが値上がりしています。
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締切 : 2024年8月29日(木)
日時:2024年11月14日(木)14:00~16:00
定員 : 8名
締切 : 2024年11月7日(木)
日時:2024年12月12日(木)14:00~16:00
定員 : 8名
締切 : 2024年12月5日(木)
日時:2025年2月13日(木)14:00~16:00
定員 : 8名
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