5. 値上げ分は見積書にどう反映させればよいのか?

値上げ後の見積書は通常の見積書と同じ形式です。
しかし実際の値上げ交渉では、見積書だけではなく、値上げの根拠となる費用明細の提出を求められることがあります。
本記事では、その費用明細の作り方と、見積書への反映方法を解説します。

値上げの根拠を示す資料と見積書への反映方法について、説明します。

1. 値上げの根拠を示す資料とは?
2. 値上げの根拠となる費用明細の作り方
3. 見積書への反映はどうすればいいのか?
4. 値上げの根拠を求められた場合
5. 適正な販管費、利益が認められない場合

値上げ交渉のまとめサイト
このテーマ以外にも交渉の進め方や取引先への説得について、以下のまとめサイトから参照いただけます。
値上げ交渉・価格交渉の進め方まとめ ~価格の根拠の伝え方と取引先への対応を解説~

1. 値上げの根拠を示す資料とは?

「経費の上昇により10%値上げ」とお願いしても、10%は何を元に出した数字なのかと問われます。
その場合、以下の表のようなデータを示します。

項目 金額 (円) 上昇率 (%) 値上げ金額 (円)
人件費 224 8 17.9
電気代 32 30 9.6
消耗品費 13 15 2
その他 77 0
合計 346 29.5

2. 値上げの根拠となる費用明細の作り方

「製造業の値上げ交渉 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?」では、A社 A1製品は、図1に示すように費用が増加しました。

図1 A1製品の費用の増加
図1 A1製品の費用の増加
  • 人件費 : 8%
  • 電気代 : 30%
  • 消耗品費 : 15%
  • 修理費 : 10%

が増加したため、製造費用は

  • 人件費 : 17.9円
  • 電気代 : 9.6円
  • 消耗品費 : 2円
  • 修繕費 : 1円

合計30.5円上昇しました。他にも

  • 材料費 : 10%
  • 外注費 : 5%

上昇したため

  • 材料費 : 33円
  • 外注費 : 2.5円

合計35.5円上昇しました。値上げ前の製造費用は346円なので、値上げ後の製造費用は

製造費用=346+30.5=376.5 円

値上げ前の材料費・外注費合計は380円なので、値上げ後の製造原価は

製造原価=380+35.5+376.5=792 円

これに伴い、販管費、目標利益も増えます。販管費レートは0.25なので、

販管費=792×0.25=198 円 (+16円)

販管費込み原価=製造原価+販管費=792+198=990 円

目標利益は、利益率0.087なので

目標利益=990×0.087=86 円 (+6円)

値上げ金額の合計=30.5+35.5+16+6=88 円

値上げ金額の合計は88円になりました。見積金額988円に対し、88円値上げできれば上昇する費用をカバーして、利益が確保できます。

販管費、利益の増加の値上げは難易度が高い

実際は88円の値上げ金額のうち、22円は販管費、利益の増加です。取引先から見れば、この値上げを受け入れるのは難しいかもしれません。
A社は、先期は製造原価の25%の販管費が発生したのは事実です。新たに見積をする場合は、製造原価の25%で販管費を計算します。そうしないと販管費をカバーできず赤字になってしまいます。

しかし取引先から
「今受注している製品は、値上げ前は988円で必要な利益は出ています。原価が上がったからといって、販管費も上げなければならないことはないはずです。」
と言われる可能性があります。

A社の場合、新たに見積計算する場合は、製造原価の25%を販管費、製造原価+販管費の8.7%を利益としますが、値上げ交渉の場合は、実際に増加した費用、材料費35.5円、製造費用30.5円、合計66円の値上げができればOKと考えます。

賃上げによっていくら値上げしなければならないのか、具体的な値上げ金額の計算はこちらから
人件費が上がると原価はいくら上がるのか?

3. 見積書への反映はどうすればいいのか?

明細が必要な場合

以下は見積書への反映例です。実際の様式は取引先ごとに異なります。
1例として、アワーレート、製造時間、値上げ金額を記載した明細を示します。

図2 見積書の明細の例
図2 見積書の明細の例

一方、資料が詳しければ詳しいほど、取引先は根拠をいろいろと質問します。例えば、
「人件費、電気代等が上昇した時、以下の値上げ金額はどうやって計算したのですか?」

  • 人件費 : 17.9円
  • 電気代 : 9.6円
  • 消耗品費 : 2.0円
  • 修繕費 : 1.0円

この場合は、以下のように回答します。

「大企業は、間接部門の人件費、電気代、消耗品、賃借料などの間接費は、各部門の専有面積や人数に比例して配賦しているかもしれません。
しかし弊社のような中小企業はそのような詳細な計算はできないので、各部門の時間に比例して一律に配賦しています。その結果、下図のような比率になっています。この費用構成は先期の決算書の数値を元に計算したのでほぼ正しいと考えています。」

もし弊社の「利益まっくす」や値上げ計算シートを利用されている場合は、次のように回答します。


「当社が使用している原価計算システムは、比率計算のアルゴリズムが非公開となっているため、弊社でもわかりません。」

図3 アワーレート間(人)の経費の比率
図3 アワーレート間(人)の経費の比率
図4 アワーレート間(設備)の経費の比率
図4 アワーレート間(設備)の経費の比率

以下の決算書の販管費、製造経費を元に比率を計算しています。

図5 決算書(販管費)の費用構成
図5 決算書(販管費)の費用構成
図6 決算書(製造経費)の費用構成
図6 決算書(製造経費)の費用構成

▼ 値上げ金額を試算したい方へ
人件費や電気代の上昇を入力すると、値上げ金額の目安を簡単に計算できます。
値上げ金額を試算する(無料)

4. 値上げの根拠を求められた場合

実際の値上げ交渉では、値上げの根拠を求められることもあります。例えば先に説明したA社 A1製品の場合、

  • 人件費 : 8%
  • 電気代 : 30%
  • 消耗品費 : 15%
  • 修理費 : 10%

が増加したため、製造費用は

  • 人件費 : 17.9円
  • 電気代 : 9.6円
  • 消耗品費 : 2円
  • 修繕費 : 1円

合計30.5円上昇しました。他にも

  • 材料費 : 10%
  • 外注費 : 5%

上昇したため

  • 材料費 : 33円
  • 外注費 : 2.5円

合計35.5円上昇しました。これを文章にします。

電気代の上昇によっていくら値上げしなければならないのか、具体的な値上げ金額の計算はこちらから
電気代の上昇は原価にどれだけ影響するのか?

5. 適正な販管費、利益が認められない場合

ここまで説明した値上げ金額は、先期の決算書から計算しました。従って原価は「真実」と言えます。

取引先の中には、見積書の販管費率や利益率を〇%と指定している場合もあります。それ以上の販管費、利益が認めてもらえません。その場合は、取引先が認める販管費、利益にした上で製造原価を修正する必要があります。

A1製品の見積を修正した例

そこで取引先が認める販管費、利益にしたA1製品の見積を図7に示します。

図7 顧客が認める販管費、利益にした見積
図7 顧客が認める販管費、利益にした見積

見積金額は、図2と同じです。
この例では利益率3%、販管費レート7%が取引先の指定でした。図7では、その分製造費用が大きくなりました。段取時間、加工時間は同じ場合、アワーレートが大きくなりました。
現実にはA社は図2の見積書にある販管費や利益が必要です。しかしそれだけの販管費や利益が認められないならば、このような作業が必要になります。

関連して読む

なぜ取引先は適切な販管費や利益を認めないのか、その理由についてはこちらから
販管費や利益が高いと言われる理由とその対応方法

賃上げによっていくら値上げしなければならないのか、具体的な値上げ金額の計算はこちらから
人件費が上がると原価はいくら上がるのか?

関連するまとめコラム

【同じカテゴリ】値上げ交渉のポイントをまとめたコラムです
値上げ交渉の進め方(まとめコラム)

【関連知識】原価上昇の原因と値上げ金額の計算をまとめたコラムです
値上げ金額の計算(まとめコラム)

製品ごとの値上げ金額をExcelで毎回計算するのが大変な場合は、「利益まっくす」が役立ちます。
これは製品別の原価や、人件費や電気代上昇の値上げ金額まで計算できる中小企業向けのシステムです。
設定から立ち上げまで当社が行うため、「原価に詳しくない」、「専任人材がいない」という企業でもスムーズに導入できます。

利益まっくすの詳細を見る