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【製造業の値上げ交渉】24. 発注先の選定 品質の重要さ
値上げ交渉は価格が争点です。値上げ金額が高いのかどうか、取引先と議論します。
しかし価格以外に、品質管理などの管理体制も仕入先によって違います。これについては製造業の値上げ交渉23 少し高くても受注3 高い価格を受け入れてもらうには?を参照願います。
ものづくりは価格だけではありません。QCDの3つが良くなければいいものはつくれません。
中でも重要なのは品質です。
理由は、一度不良が起きれば多額の損失が発生するからです。
リコールは多額の費用
2023年度の自動車のリコール件数は、国産車169件、輸入車180件、総対象台数は国産車、輸入車合わせて810万台でした。
食品は2021年度に1453件のリコール(自主回収)がありました。
リコールには多額の費用がかかります。1回で数億円もかかることも珍しくありません。
価格が低くても品質管理の不十分な仕入先に発注すれば、不良品が市場に流出する可能性があります。リコールになれば部品価格の少々の違いは吹き飛んでしまう損失が発生します。
他にも発生する費用
リコール費用は、不良品を回収して良品を提供するための費用です。
他にもリコールは、原因調査、対策のための費用(主に人件費)がかかります。対策会議を開けば、それも新たなコストです。実際はこれらの費用は集計していないメーカーもあります。その場合はこれらは見えないコストです。
さらに仕入先自身でも費用が発生します。これは
- 不良品を廃棄・修正する費用
- 取引先に行って、回収、選別する費用
- 代品を作成する費用
- 不良の原因分析、対策のためのテストや会議の費用
- 再発防止にかかる費用
このような費用が発生します。
不良品の損失金額は
- 不良品を廃棄する場合、廃棄した部品の原価
- 不良品を修正する場合、修正費用
実際は修正費用を集計しないため、修正費用は損失と思っていない工場もあります。
他にも流出防止・再発防止のために、担当者が活動している時間も損失です。
仕入先が中小企業の場合、多くはありませんが、大きな不良ではメーカーから損害賠償を請求されることもあります。
自動車メーカーは、部品メーカーが原因でリコールが生じた場合、リコール費用の一部、又は全額を部品メーカーが負担します。
不良が原因で経営破綻
あるいは不良品が原因で事故が起きれば、メーカーの存続にかかわります。
13,420人が食中毒を起こした旧雪印乳業、異常破裂が原因で死亡事故を起こしたエアバッグのタカタ、いずれも品質問題が原因で会社分割や経営破綻に至りました。
では品質が悪い仕入先とは取引しないで、品質が良い仕入先とだけ取引すればよいのでしょうか。
それが、そう簡単ではないのです。
なぜなら、品質はコストのように定量化できないからです。
不良率を使えば品質は数値化できます。
では不良率が低ければよいかというと、そう簡単ではないのです。それはヒューマンエラーによる突発的な不良もあるからです。
そして不良が発生した後の再発防止も重要です。
不良品が市場で発生した場合
不良品が取引先に流出すれば、再発防止と流出防止が必要です。
例えば、寸法、形状などの品質は、10±0.01ミリのように公差で規定されます。製品を測定し、この範囲にあれば合格、外れれば不良です。
検査員のミスで不良品を取引先に納入すれば、その部品を組み込んだ製品は不良品です。
もし取引先が完成品を出荷検査して不良に気づけば出荷されません。
しかし気づかなければ不良品が出荷されてしまいます。しかし誰もそれが不良品であることに気づきません。
メーカーの動き
顧客がこの製品を買って、動作不良などが起きれば、販売店に修理(保証期間内なら無償修理)を依頼します。そして製品がメーカーに送られます。そこで部品が不良品であることが分かります。
ここからが大変です。
メーカーは、この部品(不良品)が他の製品にも組み込まれていないか調査します。
そのためには、
- なぜ仕入先が不良品を製造したのか
- なぜ仕入先は不良品を出荷したのか
原因を調査します。仕入先と協議して、不良品を製造した原因、検査が見逃した原因を調べます。
そして不良品を組み込んだ製品が、問題を起こした製品のみという確信が持てれば、その製品のみの問題とし、その製品を修理、又は新品と交換します。
リコール可否の判断
不良品を組み込んだ製品が他にもある場合は大変です。
使用者がけがをしたり、発火したりするなど問題が深刻であればリコール(自主回収)をします。販売店などを通じて、購入した顧客に連絡して、回収・修理をします。
自動車の場合、リコールは保安基準に適合しなくなるおそれがある問題が対象です。
ということは保安基準に適合すれば、不良品でもリコールにはなりません。
車が調子が悪くなってディーラーに持っていくと、無料で部品を交換してくれることがあります。
これは原因がメーカーでもわかっていて、対策品も用意してあるためです。それでも保安基準に適合しているのでリコールにはならないのです。
対象範囲の特定
リコールになった場合、メーカーはリコールの台数をできる限り少なくするため、対象台数を絞り込みます。
仕入先が不良品を製造した原因、あるいは仕入先の検査が不良品を見逃した原因を調査し、それが一定の期間に製造した部品であることを特定します。
ところが原因が特定の設備や作業者と分かっても、
- いつ、
- どの設備で、
- 誰が製造したのか、
記録がなければ、問題の部品の範囲を限定できません。その結果、対象台数は増えてリコール費用は増加します。
トレーサビリティ管理の必要性
そのため、最近では仕入先に、いつ、どの設備を、誰が製造したのか、記録する製造履歴管理(トレーサビリティ管理)を取引先から要求されます。
図では
設備1はAさん、設備2はBさんが担当しました。
A2製品の不良の原因はBさんの設定ミスでした。
○月1日から3日 Bさんが作業した設備2の設定ミスが分かりました。その結果、○月1日から3日にかけて設備2が製造した部品が対象になります。
しかしこうした記録がなければ、設備1で製造した部品も対象になってしまいます。
不良は数値化できるのか
こうした不良品発生の過程では
仕入先の現場 : 工程内検査 工程内不良率
出荷検査 : 不良率
メーカー : 製品の不良率
こういったデータがあります。
最近は品質に対する要求が厳しく、メーカーの検査で不良が見つかり、原因が仕入先の部品の場合、大問題になります。
メーカーから仕入先に、不良品を納入した原因の調査と再発防止が求められます。
その際、まずは、なぜ出荷検査が見逃したのかを調査します。
それだけでなく、不良が多ければ見逃しする確率が高くなるため、不良自体を減らすことが求められます。具体的には工程内不良率を調べ、製造工程を改善して工程内不良を減らすように求められます。
大量生産での数値化
この時、大量生産では工程能力指数というものが用いられます。
これは製品の特性値が目標値に対してどれだけばらついているかを示す指標で、Cp, Cpkで表します。
Cp, Cpkは測定結果の平均値と標準偏差から以下の式で計算します。
これは測定結果から統計を用いて不良品の発生確率を推測する方法です。
Cpは平均値のずれを無視して、公差範囲に対するデータのばらつきのみを表します。
Cpkは公差の中心に対するデータの平均値の偏りと、公差範囲に対するデータのばらつきを表します。
一般的には平均値の偏りも考慮してCpkで説明します。Cpkの値と発生する不良率を上図に示します。またCpkと工程能力を下表に示します。
Cpkの値 | ばらつきの幅 | 工程能力 | 検査 |
1.00 | ±3σ | 不安定 | 全数検査 |
1.00~1.33 | ~±4σ | まあ安定している | 抜取検査 |
1.33~1.67 | ~±5σ | 安定している | 緩い抜取検査 |
1.67以上 | ±5σ以上 | 十分安定している | 無検査 |
この表よりCpkが1.33以上であれば工程能力は十分なため、抜取検査に移行できることがわかります。
実際にはCpk1.33は公差範囲に対してばらつきは非常に少なく、Cpk1.33を達成するには工程を安定させてばらつきをかなり抑えなければなりません。
仕入先の品質が工程能力のみで評価できれば、Cp, Cpkを比較すれば、仕入先の品質を比較できます。
実際は、そう簡単ではありません。
それは突発的に発生する不良があるからです。その原因は人のミス、ヒューマンエラーです。
人のミス、ヒューマンエラーによる不良
現場における人の要素は今でも大きく、例え自動化された設備でも、その設備を設定するのは人です。設備は問題なくても設定をミスすれば、不良品を製造します。
しかも今日の現場は、熟練の正社員以外に、派遣社員、外国人研修生、パート社員などさまざまな人がいます。精密な切削加工品を、日本語で書かれた図面を元に、図面の読み方がわからない外国人が検品していることは珍しくありません。
つまりヒューマンエラーが起きる要素はあちこちにあるのです。
とてもきれいな工場で、手順書やマニュアルも整備され、工程内不良や出荷検査の不良も少なく、品質に問題ないと思えるような工場から、
ある日突然、不良品が入ってきて現場は気づかずに出荷してしまった。
その結果、市場で大きな問題になった、
このようなことを私は品質保証部門にいた時に何度も経験しました。
こういったヒューマンエラーによる不良は、原因は以下の4つです。
- 正しい作業が決まっていない、ルールがない
- ルールを守らない
- ヒューマンエラー
- 人には向いていない
従って
- 正しい作業が決めて、ルール化(標準化)する
- ルールを守る組織にする
- ヒューマンエラー対策を行い、発生したヒューマンエラーに対し再発防止を徹底する
- 人には向いていない作業は極力自動化、システム化する
こういったことに地道に取り組まなければなりません。
つまりばらつきを抑えることとヒューマンエラー対策は品質という車の両輪なのです。
精度が高いものは、加工だけでなく、測定の管理も重要
要求精度が高くなれば、高い管理能力も必要です。例えば寸法精度の場合、精度が厳しくなると、温度管理も必要です。なぜなら金属は温度によって伸び縮みするからです。
1ミクロンを保証する大変さ
100ミリの鉄は、1℃変わると1ミクロン寸法が変化します。室温が10℃変われば10ミクロン、0.01ミリも変わってしまいます。しかも加工直後の部品は温度が50℃以上になることもあります。こういった温度による寸法の変化も考慮して測定しなければ、1ミクロンの精度の部品はできません。
他にも1ミクロンの寸法精度を保証するには、測定機の誤差も管理しなければなりません。
自社の測定機と取引先の測定機に1ミクロンの誤差があれば、自社では公差ギリギリで良品だったものが、取引先では不良品になることがあります。この1ミクロンは、測定機や測定の仕方によって簡単に変わってしまいます。
つまり1ミクロンを保証するためには
- 温度管理
- 高い測定技術(設備、人)
- 測定のバラツキの管理(機器の校正)
これらが必要です。
今の工作機械は優秀なので、プログラムを入れればどの会社でも加工できます。しかし、それを測定し、精度を保証するには測定方法や測定機の管理などにレベルの高い管理が必要です。
他にも不良を防ぎ、品質を管理するために重要なのは、変化点を管理することです。
不良を防ぐための変化点管理
今の生産設備は自動化が進み、スタートボタンを押せばどんどん生産します。
最初に設定をミスすれば不良品を大量に生産してしまいます。
そこで重要なのが、最初の設定時の確認です。こういった変化点を確認する手法には、4M変更管理と3H管理があります。
4Mとは以下の4つのことです。
- Man (作業者)
- Machine (設備)
- Material (材料)
- Method (製造方法)
頭文字の4つのMから「4M変更管理」と呼ばれます。他にも4Mに製品(Product)を加えて、4M+Pを管理することもあります。
4Mは品質が変化する要素ですが、品質が変化するタイミングは初めて(Hajimete)、変更(Henkou)、久しぶり(Hisashiburi)の3つがあります。3H管理とは、この3つの頭文字をとったものです。
4m変更管理(4M+P)と3H管理を組み合わせれば下表のようなマトリックスができます。
表 変化点管理の例
変化 | 変化のタイミング | ||
項目 | 初めて | 変更 | 久しぶり |
Man (人) |
新人 | 配置転換 | 職場復帰 |
Machine (設備) |
新規の設備・金型・治具 | 修理・仕様変更 | 長期間使用していない設備 |
Material (材料) |
新規の材料 | 材料・メーカー変更 | 長期間発注がない材料、長期保管した材料 |
Method (方法) |
初めての製造・検査・管理の方法 | 製造・検査・管理の方法の変更 | 長期間実施していない方法 |
Product (製品) |
新製品 | 設計変更 | 長期間製造していない製品 |
このような変化点では、問題を未然に防ぐために以下の取組を行います。
- いつもより入念な検査
- 一時的に抜取から全数検査へ切替
- 製造工程の入念な確認
品質の高いものづくりは、工場の総合力
このように不良が出ない、品質の高いものづくりを実現するには、不良率や工程能力指数といった指標だけでなく、
- 正しいやり方を決め、ルール化してルールを守らせる
- ヒューマンエラー対策を行う
- 変化点管理など
様々な取組が必要です。
それは一朝一夕ではできません。時間をかけて工場の総合力を高める必要があります。
しかもこの総合力は、大量生産と多品種少量生産で、重視されるものが違います。
品質管理は、品質に関するこのような総合的な能力です。
定期的にPR
この工場の総合的な能力は、不良率のような指標では表しきれません。そのため自社の取組を取引先に分かってもらうには、自らPRする必要があります。自社のこういった取組をまとめた資料をつくり取引先に渡してPRします。
自らPRしないと、品質について総合力の高い工場と、そうでない工場は、取引先から見れば同じです。そして価格だけで総合力の低い取引先に発注されてしまいます。
設備保全、人材教育、工程の管理に力を入れて、日々細心の注意を払っても不良は起きます。
価格だけで総合力の低い仕入先に発注すれば、取引先は将来重大な品質不良のリスクを抱えているのです。
その結果、どうなるか、過去の破綻の例が示しています。
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【製造業の値上げ交渉】23. 少し高くても受注3 高い価格を受け入れてもらうには?
値上げをお願いすると「値上げするなら他に出す」と言われます。
実際は安くても品質管理に問題があったりして、出すのをためらう仕入先だったりします。
あるいは他に出すところが本当はないかもしれません。私の経験でも指値では発注できないこともありました。
この指値については製造業の値上げ交渉22 少し高くても受注2 指値とコストダウンを参照願います。
一方取引先にとって値上げを受け入れることは、他の仕入先よりも高い価格を受け入れることにもなります。
他社よりも少し高い価格
なぜなら多くの仕入先があれば、そのサプライチェーンの中では値上げした金額よりも安くつくる仕入先があるからです。
再び相見積を取って、安いところに発注すれば値上げしなくてすみます。
つまり他の仕入先よりも少し高い自社と「取引した方がよい」という理由が必要です。
この取引先の価格が厳しい原因は、厳しい原管理と指値にあります。
指値とは?
各メーカーとも価格競争は厳しく、原価を抑えなければなりません。そのため開発段階から目標原価を管理する原価企画を行います。製品の目標原価を部品単位に展開し、個々の部品の目標価格を決めます。これを指値として仕入先に提示します。
この指値は仕入先にとって厳しい価格です。指値でつくれる根拠は取引先にあるのでしょうか。
指値の根拠
まだつくったことのない部品の指値は、大抵は過去の類似部品の実績や製品の目標原価から計算されます。
(参考 私が過去に行った原価企画では、類似部品の価格を調べてこれを参考に新たに製作する部品の価格をおよそ見積っていました。)
この場合、具体的な製造時間や製造工程を考慮せずに指値を決めていれば、金額に具体的な根拠はありません。
また例え製造工程や製造時間から予測原価を概算したとしても、仕入先のアワーレートや管理費、利益はわかりません。
そのため指値が仕入先の原価とは乖離します。
原価の7~8割は設計で決まる
実際は原価の7~8割は設計で決まると言われています。
ある機能を実現する製品の原価は、設計が決まればおよそ決まります。
その結果、原価が高ければ、図面や仕様を見直して、安くつくれる図面や仕様にしなければなりません。そのためにはつくる側と発注する側の双方がアイデアを出し合う必要があります。
しかし発注先を選定する部署(例えば 購買)は、図面や仕様を変える権限がありません。
それでも安く調達しようとすれば、その図面や仕様でかかる原価よりも低い価格で発注することになります。これは下請法の「買いたたき」になります。
適正価格は企業によって違う
実は原価はどの仕入先も同じではありません。会社の規模やつくり方によって変わるからです。私の経験でも、同じ図面や仕様でも見積価格は仕入先によって違っていました。傾向として規模の大きい会社は原価が高く、規模の小さな会社は原価が低くなります。
規模の違いによる原価の違い
規模の大きなA社は、設備が新しく減価償却費も多額です。生産管理や品質管理など間接部門の規模が大きく、その分間接人員の人件費も多くなります。工場の経費も高く、原価に占める間接費用が高くなっています。
対して規模の小さなB社は、大半の設備は償却が終わっています。設備の費用はゼロです。生産管理や品質管理の専任者はおらず、社長以下全員が生産活動に従事しています。規模が小さいため工場の経費も多くありません。
両社を比較すると、A社は、設備の費用や賃金が高いためアワーレートが高くなります。間接費用も大きいため、その分原価も高くなります。
B社は、設備の費用や賃金が低くアワーレートは低くなります。間接費用も小さく、原価は低くなります。
その結果、同じ製品でも見積金額は違います。
これについては【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?を参照願います。
品質が問われる部品、どちらに出したいですか?
では、ある部品をA社かB社のどちらに出したらよいでしょうか?
これは部品によります。
A社は品質管理や工程管理がしっかりしているので、数が多いものも品質が安定しています。技術的に難しいものも治具や加工方法を工夫して製造します。
B社は昔ながらの職人的なものづくりのため、数が多いものは品質に不安があります。統計的手法を駆使した品質管理や工程能力の把握は困難です。もし不良品が混入すれば、自社で見つけることができず取引先に流出する可能性があります。
従って不良品が流出すれば重大な問題が起きる部品は少々高くてもA社に発注します。もし市場で問題が起きれば、多額の損失が発生し部品単価の違いは吹き飛んでしまいます。
そうなればその仕入先を選定した購買の責任も問われます。
ポイントはヒューマンエラーの管理
先日、個人的にある部品(小さなカラー)が必要になったため、個人が依頼できる部品発注サイトを使って発注しました。
出来上がった部品は、寸法はOKでしたが、1箇所 面取りが図面指示と異なっていました。図面指示は、C0.1~0.3でしたが、現物はピン角(面取りなし)でした。自分が使う分には問題ないので検収を上げました。
しかしこの部品を企業に納品した場合、これは不良品です。
1個だけつくる場合、その品質は作業者のスキルや注意力に依存します。作業者がどれだけ注意を払って作業するかが重要です。たかが面取りと思われるかもしれません。
しかしたった1箇所の面取りで機械が壊れることもあるのです。
もし企業がこの会社に発注すれば、こうした作業者のミスは、自社の受入検査や現場の担当者が目を光らせて見つけなければなりません。それでも少し安い会社に発注したいでしょうか。
適正価格を説明
例えば、ある部品の適正価格は、
A社700円
C社600円
でした。
取引先は、価格のみを比較し、A社に「700円は高い」と言います。A社は「C社と比較されても…」と思いつつ、自社の価格が「適正」と主張しません。
この100円高い理由は、品質管理や工程管理の体制、最新の設備の投資によるものです。それは安定した品質をもたらします。
そうであればA社はそれを取引先に説明しなければ取引先に伝わりません。
それでも取引先が600円で調達したければ、C社に発注すればよいのです。その結果、不良品が発生しても、それは取引先の選択した結果です。
買いたたきは下請法違反
問題は、取引先が600円で、A社に発注しようとする場合です。
600円ではA社は、利益がゼロ、販管費もカバーできない金額です。
これは仕入先に不当に低い価格を強要することになります。しかし取引先はC社の600円の見積を見ているので、600円は不当に低い価格とは思いません。
適正価格をていねいに説明
A社は製造工程と各工程の費用を示し、700円が適正な価格であることを説明します。これは暗に無理に700円を要求すれば「買いたたき」になることを示唆します。
原価の根拠を丁寧に説明し、見積は適切で水増しはないことをわかってもらいます。
駆け引きしない方が建設的な話し合いができる
価格交渉では、値下げ要求分を見越して、見積を水増しするなど様々な駆け引きがあります。しかし駆け引きをすれば、交渉はお互いの腹の探り合いになってしまいます。
ものづくりは多数の部品が集まって製品になります。ひとつひとつの部品を製造する仕入先の工夫やアイデアも欠かせません。それにはお互いがアイデアを出し合い、協力しなければなりません。
そのためには仕入先は原価の理由を説明して、見積金額は適正価格であり水増しはないことを理解してもらいます。その上でもっと安く調達したければ、図面や仕様の変更も含めて安くつくる方法を取引先と協議して、よりよいものづくりを目指すのが望ましい姿です。
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【製造業の値上げ交渉】21. 少し高くても受注するには1 内製も含めた他の選択肢
【製造業の値上げ交渉】20. 値上げのチャンスとは? で、値上げできる機会とそれの活用について説明しました。
値上げが成功するかどうかは取引先に他の選択肢があるかどうかです。
他の選択肢があれば、取引先は強気で交渉します。
つまり交渉での最大の力は「選択できること」です。
競合の情報が重要
取引先は今の仕入先以外に選択肢がなければ、仕入先の価格交渉は有利です。従って他の選択肢、つまり競合の情報が欲しいところです。
では、自社の競合はどこでしょうか?
競合の価格はいくらでしょうか?
これは簡単には分かりませんが、購買の担当者との会話や同業者からの情報などで競合となっている会社の情報を集めます。
値上げ交渉では転注の可能性
値上げ交渉の場合、取引先が値上げを受け入れられなければ、他社に転注しなければなりません。しかし、
- 転注できる仕入先がない
- 転注すれば品質リスクがある
- 転注品の評価や検証が必要
であれば、転注するより値上げを受け入れます。
例えば下図のように仕入先が受注金額988円の製品を、88円値上げを要請しました。この値上げ金額は、材料費、外注費、人件費などの経費の上昇分から計算した適正な値上金額です。
しかし取引先は88円の値上げは受け入れがたいため、他の仕入先に見積を取ったところ、ある仕入先は材料費以外は従来と同等として、1021円の見積でした。
ただしこの仕入先に転注すれば、初品確認、初期流動確認など転注に伴う費用が取引先内部で発生します。(ただしこういった内部費用は取引先自身も把握していないことが多いです。)
低すぎる価格の問題
新規の引合では、取引先から希望価格(指値)が出されることもあります。
この指値は低すぎることが多く、指値では赤字になってしまいます。
なぜ赤字価格で受注するのか?
ところが指値で受注する競合があると購買から聞かされます。
なぜでしょうか?
同じような設備、同じような時間で製造する場合、それでも低い価格で受注するのは、いくつかの理由が考えられます。
適正価格が低い
企業の規模が小さく、間接費や販管費が低い場合です。
取引先の求める品質管理、納期管理、トレーサビリティ管理などを行うと、間接部門の人数が増え、間接費が高くなります。営業や管理部門の人も必要であれば、販管費も高くなります。
しかし競合が数人の会社で、全員現場で作業すれば間接費や販管費は少なくて済みます。必要な利益が得られる適正価格も低くなり、指値でも利益が出ます。
(この適正価格の違いについては【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?を参照願います。)
受注が少ないため赤字でも受注
現在、競合は受注が少なく、工場の稼働を維持するため、たとえ赤字でも受注しようとしている場合です。
受注不足で売上が少なければ工場の経費や人件費など固定費が回収できません。そこで今は少しでも固定費を回収するため、赤字の案件でも積極的に受注します。
この場合、売上が増えて固定費が回収できれば、このような儲からない案件はもう受注しません。
もし競合が赤字でも受注しようとして受注した場合、この実績金額は、本来であればどこも受注しようとしない赤字金額です。
廃業した会社の案件
中には赤字受注が続き、事業を断念する会社もあります。
そうなると取引先はこの製品をつくってくれる他の仕入先を探します。
知人の経営者に聞きましたが、こうして他から回ってきた案件を取引先から打診された場合、打診された価格の2~3倍の金額でなければ受けられないそうです。
つまり廃業された会社は、値上げできずに赤字を我慢した結果、他社が受けている価格に比べて大幅に低い価格でつくっていたのです。
安値受注競争を避けるには?
価格だけで発注すれば、自社よりも低い見積を出す競合が大抵はあります。そこと競えば安値受注競争になってしまいます。
本当に価格だけで決まるのでしょうか?
取引先は本当に最安値の仕入先に発注したいのでしょうか?
ものづくりは価格だけではありません。
購買の仕事は、QCDを総合して最適な部材を調達することです。
そのためには価格だけでなく品質や供給能力も含めて選定しなければなりません。
価格は低いが品質や供給能力に問題がある仕入先に発注すればどうなるのか、経験豊富な購買はわかっています。(ただ価格交渉の場では、価格だけにフォーカスし、そのようなことは決して言いませんが)。
そのために必要なこと
そのためには自社は取引先からどのように評価されているのか、自社の強みは何なのか、理解しておく必要があります。
SWOT分析では不足
その場合、一般的なSWOT分析では不足する点があります。
SWOT分析は、自社の内部環境(強み、弱み)、外部環境(機会、脅威)を分析するフレームワークです。しかしこのフレームワークには「取引先から見た強みと弱み」がありません。
取引先から見て、
- 自社はどの点で評価されているのか
競合に対して、
- 優れている点と劣っている点
を調べます。
これは結構難しいです。
技術の洗い出し
例えば「技術力」は
- 取引先が求める技術
- 自社の持っている技術
- 競合が持っている技術
これらを洗い出します。
しかし技術という定性的なものを見えるような形にするのは大変です。
実際は
取引先が求める技術 →取引先から出た図面・仕様
自社の持っている技術 →受注した図面・仕様、断った、あるいは受注できなかった図面・仕様
自社の持っていない技術 →断った、あるいは受注できなかった図面・仕様
競合が持っている技術 →自社が断った、あるいは受注できなかった図面・仕様で競合が受注したもの
これらを洗い出して俯瞰すれば、見えてくる場合もあります。
品質の洗い出し
取引先が行うまとめるサプライヤーの評価には、仕入先の不良件数や内容がまとめられ、仕入先のランキングがつくられています。
自分の経験(品証部)では、技術的に難易度が高い部品をつくっている仕入先は不良も多かったです。
対して簡単な部品をつくっている仕入先は不良件数が少なかったです。
しかし不良件数が少ないからと言って、簡単な部品をつくっている仕入先の品質が高いわけではありません。
不良件数よりも不良発生後の対処が重要
不良件数が多いことよりも、不良が出た後の対処が問題になりました。
代品の供給や原因分析、再発防止の取組などが仕入先の評価になりました。
不良が出た後の対処が遅く、対策が不十分で不良が再発した仕入先は低い評価でした。
品質の評価は定性的
こういった評価は定性的です。何かデータが出てきて、仕入先を順にランキングして決められるものではありません。
価格が高い原因をPR
リコールや自主回収などメーカーは不良品を販売すれば、多額の費用をかけて対処しなければなりません。
そのため品質に対する要求は厳しくなっています。
それに応えるには仕入先は、品質管理、工程管理、納期管理などの体制を整備しなければなりません。間接部門の人員も多くなっています。
その結果、コストは上がり、自社の適正価格は高くなります。
価格だけで比較すれば、数人の会社で全員作業者の会社の方が低くなります。
そこで取引先の要望に応えて上記のような取り組みをしてきた場合、それを簡単な文書にまとめて取引先にPRすることをお勧めします。
言われないことは、取引先はわかりません。
特に購買は価格だけ見ているからです。
なぜ品質が高いのか、自身もわからない
私の経験ですが、ある仕入先は品質が高く、不良はめったに出ませんでした。しかし工場に行って工程管理や品質管理を監査しても他の仕入先と大きな違いはありませんでした。
違いは人にありました。
この会社では「不良品かもしれない」と思うと、取引先の品質管理部署に必ず連絡してきました。
「気になる傷があるのですが、これは納品してよいか見て欲しい」と品物を送って来ました。
このようなことは他の仕入先ではありませんでした。
こうした品質に対する姿勢、不安があれば必ず確認するという姿勢が高い品質の原因だったのです。
しかしこれは仕入先自身も気づいていません。このように強みをみつけるのはなかなか難しいようです。
内製部門が競合
特殊な設備や工程があるため、競合となる仕入先がない場合があります。
ところが取引先が内製できました。
つまり取引先の内製加工部門が競合だったのです。
これは双方で誤解があります。
内製加工の原価は低くなる
取引先は仕入先の見積と内製加工部門の価格を比較します。そして内製加工した方が安くなります。仕入先に
「内製すれば○○円、○○円より高ければ内製する」
と言います。
なぜそうなるのでしょうか?
原因は見積条件が違うためです。
内製加工品は社内で取引されるため、外注品のような販管費や利益が含まれません。
(社内販売価格と社外販売価格の違いは【製造業の値上げ交渉】14. なぜ取引先は販管費が高い、利益が多いと言うのだろうか?を参照願います。)
従って見積の基準が違うため、同じ時間、同じ人件費で製造しても外注加工の方が高くなるのです。
なぜなら内製すれば、内製品の価格は製造原価だけです。しかし外注加工品は仕入先の販管費や利益が製造原価にプラスされます。
ただし実際は、仕入先の人件費や工場の経費が取引先よりも低いことが多く、外注化すれば原価が下がることも多いのです。そのため取引先、仕入先のどちらも外注化すれば安くなると誤解します。
しかし理論的には製造原価が同じであれば、外注すれば高くなるのです。
内製しない理由
本当に安くつくりたければ、取引先は内製すべきです。
なぜ内製しないのでしょうか?
理由は、内製には人や設備が必要だからです。現在の人や設備で製造できなければ、増員や設備投資が必要です。その結果、固定費が増えます。
人は、派遣社員を活用すれば使えば変動費にできます。しかし設備が足らなければ設備投資を行わなければなりません。その分固定費が増えます。設備が高価であれば資金も必要です。さらに減価償却費が増えて利益が減少します。
しかも設備は一旦導入すれば償却が終わるまではずっと稼働しなければ設備投資を回収できません。製品や技術の変化の激しい今日、償却が終わるまでその製品を生産する保証はありません。
従って取引先は、設備投資や増員が必要な製品は外注化できれば外注化しようとします。
これは言い換えれば、設備投資の必要な部品を外注化することは、設備投資のリスクを外部に移転することです。
内製化の課題を理解して交渉
つまり取引先は内製すれば安くても内製するとは限りません。
そこでこのような場合、まずは適正な原価計算を行い、自社の適正価格を計算します。
そして取引先と価格交渉します。
取引先が自社の内製価格を出して「社内なら○○円でできる」と言う場合、自社の適正価格を主張します。
そして、自社に発注しなければ、取引先は設備投資をしてまで内製するのか、それとも「だったら内製する」と言う言葉が本当かどうか、その可能性を見極めます。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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経営コラム ものづくりの未来と経営
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ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?
経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
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【製造業の値上げ交渉】20. 値上げのチャンスとは?
材料費、人件費、エネルギー費など様々な費用が上昇し、値上げは避けられません。しかし規模の劣る中小企業が取引先と値上げ交渉するのは困難さが伴います。
そこで国は中小企業を支援すべく様々な施策を打ち出しています。
この国の取組については【製造業の値上げ交渉】】19. 下請法や国のガイドラインを値上げ交渉に活かす方法で説明しました。
2024年には国は仕入先からの適正な値上げを認めないのは「下請法違反」という見解を示しています。
そのため取引先も仕入先からの値上げを認めざるを得ない状況にはなってきています。
値上げのチャンスとは?
それでも値上げはなかなか大変です。ところが値上げを認めてもらえる絶好の機会があります。それは
- 特急・短納期
- 発注先の仕様変更・設計変更
- 他社ができないもの
なぜ値上げのチャンスなのか?
それはこのような時は、価格が高くても価格以外の事情が優先されるからです。
ところがこのような機会を活かしきれない企業もあります。
こういった機会があってもそれを活かして値上げしなければ、利益は変わりません。
ではどうすればいいのでしょうか?
値上げの機会を活かす1 特急・短納期
取引先がとても短い納期で依頼することがあります。
このような超短納期でつくるためには、今ある製品を止めて割り込ませたり、残業や休日出勤で対応したりしなければなりません。できればやりたくない仕事です。
取引先の事情
こうした場合、取引先には超短納期で手配しなければならない事情があります。例えば
(1) 試作・開発品
開発日程に間に合わせるために、どうしても○日までのこの部品が欲しい
試験・評価中に問題が見つかった。至急対策品をつくって確認したい。
(2) 生産中のトラブル
新機種を立上げ中に問題が発生。至急対策品をつくらないと生産が止まってしまう。
(この対策品は、製品の部品、製造設備の部品、治具や金型の部品など様々)
(3) 市場クレーム
商品が市場で問題を起こした。至急対策品を評価して切り替えなければならない。
あるいは至急対策品に切り替えないと生産が止まったままになっている
超短納期では部品コストよりも損失金額がはるかに大きい
特急・短納期を依頼する背景にはこういったことがあります。いずれにしてもこの問題の損失金額は大きく、早く解決しないと損失は膨らむ一方です。
従って最も重要なのは、必要な納期に「良品を確実に入れてもらうこと」です。価格は二の次です。
【私の経験】
週末に問題が分かり、どうしても答えが月曜日までに必要になりました。評価チームは土曜日に出勤することになりました。ところが評価に使う部品の形状に問題があり、修正が必要でした。
金曜日の夜、購買の担当者と一緒に仕入先に行って修正してもらい、形状を確認して土曜日の評価に間に合わせました。
金曜日中に修正できなければ、評価チームが土曜日に出勤しても無駄になってしまいます。さらに評価結果が1日遅れれば工場の生産が1日止まってしまいます。生産を1日止めれば損失金額は何百万円にもなりました。
(これが自動車メーカーでは1日で何億円にもあります。)
必要なのは価格よりも…
このような場合、超特急で依頼したものの価格が普段の2倍であっても問題ではありません。問題なのは急いでつくったものが不良品の場合です。
実際、超特急でつくったものを組込みテストした結果、いいデータが取れなかったことがありました。そこで部品を調べたら、寸法が図面公差から外れた不良品でした。仕入先に作り直してもらい、再度評価しました。これで数日時間を失いました。
超特急で1個だけつくる場合、その工程は普段とは違う工程です。うっかりミスしやすいのです。
せっかく急いでつくったのに、不良品であれば、評価にかけた時間が無駄になり、再度作り直すために、時間もかかります。損失はさらに膨らみます。
だったら高くてもちゃんとしたものをつくってくれるところに頼みたいと思います。
購買は背景を知らない場合
超特急で間に合わせるため、仕入先は他の仕事を止めて人手をかけてつくります。当然高くなります。
ところが後日仕入先から請求書が来ると、購買の担当者から私に
「こんなに高い請求書が来たけど、これは合っているのか」
と問い合わせされることがありました。
通常の納期であればあり得ない高い値段でした。
しかし上記の背景を考えれば、納期通りに良品を入れれば、金額は問題なかったのでした。
最初に値段を言う
そこで超特急・短納期で受注する際は
「最初に価格を言っておく」
ことです。
取引先が抱えている問題や損失の大きさを考えれば、部品が少々高くても問題ありません。しかもその納期でつくってくれるところは他にないのです。
しかし価格を言わなければ取引先はこれまでと同じ価格だと思います。そこで最初に値段を言えば後でもめることはありません。
今は下請法があるため価格を明記しなければ取引先は発注できません。従って最初の交渉が重要です。
そこで事前に特急・短納期は、何割増しと決めておきます。そして価格が合わなければ、受注する前に交渉します。特急でつくるのは現場にも負担がかかりますし、他の製品の生産にも影響します。
それでも儲かるような価格にします。
もし低い価格を強要される場合、他の仕入先にやってもらえばいいのです。
しかし中には、取引先の依頼を聞くと「なんとか間に合わせたい」と考え、材料手配やどうやってつくるかを真っ先に考えてしまう仕入先もあります。そして値段の交渉をしないでつくってしまいます。
高くなる理由は必要
高い値段をつけた時、
「なぜ通常納期に比べて、これだけ高くなるのか」
取引先から聞かれるかもしれません。その時に理由が言えなければ、取引先の購買も納得しません。理由は、
1個だけつくるために段取時間やプログラム作成時間、準備時間が余分にかかる、
作業者を2人投入など、
取引先が納得すればなんでもよいです。
発注先の仕様変更・設計変更
仕様変更や設計変更で価格が上がる要素があれば、値上げのチャンスです。
適度な値上げ
新規に受注する場合、厳しい指値や相見積の競争で受注までに適正価格よりも値下げしたかもしれません。そこで設計変更の機会に少しでも利益を戻したいところです。
そこで上げすぎと思われない程度に値上げをします。その際、「どうしたこの値段になったのか」取引先に聞かれた場合、説明できるようにします。
交渉力は選定
価格交渉の最大の力は「選定」です。
取引先は新規に発注する際は相見積を行い、購買は選定という力を駆使して仕入先を競争させ価格を引き下げます。
しかし仕様変更や設計変更が出た時点では、仕入先の選定は終わっています。値上げ金額が高いからといって、仕入先を変えるのは大きなエネルギーが必要です。しかも値上げを認めざるを得ない理由があります。
新規に受注する場合は、相見積で価格を比較されますが、設計変更の値上げは比較する対象がありません。そこで取引先が納得する理由を述べて、上げすぎと思われない程度に値上げすれば、値上げは通る可能性があります。
他社ができないもの
価格交渉で発注先が最も交渉力を発揮できるのは、最初の選定の段階です。
どこでもできるものは発注側の力が強い
その製品をつくれる仕入先は数多くあり、どの仕入先も供給能力が十分あれば、発注側の力は強くなります。相見積で価格を競わせ、最も安いところに発注できます。
そういった仕入先が少なければ価格競争は弱くなります。もし1社しかできなければ仕入先の価格で発注するしかありません。そこが断れば調達できなくなるからです。
これは技術的にできることに加えて、品質と供給能力も必要です。品質が良くなければ不良品のリスクがあります。供給能力が不十分であれば生産に支障をきたします。
ヒントは創意工夫
私の経験では、「他社でできないもの」は長年研究開発した高度な技術でなくてもありました。取引先が困っている課題を一緒に考え工夫して解決すれば、それが他社ができないものになりました。
例えば以下のようなものはつくり方がわからず、仕入先にもアイデアを出してもらって何とか実現しました。
- 薄い金属と薄いゴムを強固に接合
- 細いピンと細いパイプの接合
- うまくクランプできない形状を切削加工
新たな製品を開発する際は、様々な課題が出ます。そこでいろいろとアイデアを出して、テストも行い、解決に協力してくれる仕入先はとてもありがたかったです。
大事なところは見せない
大切なことは、創意工夫した「キモ」の部分は取引先に見せないことです。取引先に見せれば、それは他の取引先に伝わります。他社ができないものでなくなってしまいます。
2社購買が必要な取引先も
自然災害の多い日本は、1社しかできない部品があると、その1社が災害に遭えば部品の供給が止まってしまいます。
そこで1社が災害に遭っても生産が継続できるように、2社発注の体制を進めている取引先もあります。つまり取引先にとっては「他社ができないもの」があるのは都合が悪いのです。
かといって創意工夫した内容を全く見せなければ、取引先から信頼されなくなってしまいます。そこである程度まで見せて、その技術の肝心の「キモ」となる点は隠します。
このノウハウをどこまで見せて、どこまで秘匿するかは、発注先と仕入先の価格交渉の力関係を決める大切な要素です。
(現実には工夫してうまくできたことは嬉々として取引先に話してしまう経営者もいますが…)
一方このような値上のチャンスがいつもあるとは限りません。普段は「値上げするなら他に出す」と脅されます。では取引先は他に選択肢があるのでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉】21. 少し高くても受注するには1 内製も含めた他の選択肢を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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そこで値上を妨げる3つの障害と、それを突破する3つの策について書きました。
詳細は以下のモノづくり通信第76号を参照願います。
モノづくり通信 Vol.76 「価格転嫁と値上げ交渉」 ~値上げの3つの障害とそれを突破する3つの策~
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【製造業の値上げ交渉】19. 下請法や国のガイドラインを値上げ交渉に活かす方法
製造業の場合、中小企業の取引先が大企業の場合も多く、発注側と受注側、大企業と中小企業という立場の違いから、不利な条件で受注させられることもあります。国はこれを問題と考え、支援策を提供しています。これはどのようなもので、支援策をどう活用すればよいのでしょうか?
国の支援策とその活用方法を説明します。
国の支援策
国の支援策には以下のようなものがあります。
◆法律
下請代金支払遅延等防止法 (以降、下請法)
◆ガイドライン等
下請適正取引等の推進のためのガイドライン (以降、ガイドライン)
価格交渉ノウハウ・ハンドブック (以降、ハンドブック)
下請法は、発注先がやってはいけない禁止事項が決められ、違反した場合は、公正取引委員会からの勧告や罰金が定められています。
【報告があった場合】
中小企業庁に確認しましたが、もし理不尽な要求や問題のある行動の報告があっても、公正取引委員会は直ちにその企業に調査に入りません。彼らは日頃からこうした情報を収集していて、問題のある報告が多い企業に対し、時機を見て調査に入るそうです。(この調査件数は年間で5,000件を超えます。) 従ってどの仕入先からの報告で調査に入ったのか取引先はわかりません。
一方、ガイドラインには罰則はありませんが、国が考える望ましい取引の事例と、望ましくない取引の事例が具体的に書かれています。従ってガイドラインに抵触するような取引は、取引先に対して「そのような要求はガイドライン抵触しませんか」とやんわりとけん制することができます。
また原材料、エネルギー費用などの上昇を取引価格に転嫁している状況は、国が定期的に大手企業に対し調査を行っています。調査結果は公表され、価格転嫁に消極的な企業は実名が公表されます。その結果、大手企業にも価格転嫁を認める状況になってきています。
どのように活用するのか?
下請法の違反事例やガイドラインに反する行為は、取引している中小企業が報告しなければわかりません。またこういった問題行為は、取引先企業の方針だけでなく、担当者個人の問題もあります。
実際には理不尽な要求があったから公正取引委員会に報告しても、すぐに是正されるわけではありません。しかしこうした取引先の問題行動を各社が報告し、公正取引委員会が動くことで、理不尽な要求や優先的地位の濫用が減少し、公正な取引の実現に向かいます。
そのためには、取引にかかわる中小企業の関係者は、法律やガイドラインを読んで「どのような要求が下請法やガイドラインに抵触するのか」理解しておく必要があります。つまり下請法やガイドラインは、立場の弱い中小企業が「自らを守るための武器」なのです。
詳細は、国の資料を見ていただくとして、以下に概要とポイントを説明します。
下請法
親事業者<注記>が下請事業者に製造やサービスを委託した時に、親事業者の義務と禁止事項を定めた法律です。
違反すれば、罰金や公正取引委員会の勧告措置が定められています。勧告措置を受けた場合、違反した企業は、社名、違反内容がホームページで公開されます。
この下請法には図1に示すように4つの義務と11の禁止行為が定められています。
<注記> 親事業者とは
下請法の親事業者と下請事業者は事業者の資本金規模で以下のように定義されます。
注意が必要なのは、資本金が1,000万円を超える場合、中小企業であっても仕入先に対して親事業者になる場合があることです。その場合、自社が仕入先に対して下請法に抵触しないように注意しなければなりません。
下請法のポイント
詳細は下請法を読んでいただくとして、実務で問題となりやすい点を説明します。
発注書面の交付義務
「委託後、直ちに、給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法等の事項を記載した書面を交付する義務」のことです。従って発注は注文書など書面で必ず行い、注文書には発注単価が記入されていなければなりません。
これは良い面と悪い面があります。
◆良い面
単価の取り決めなしで注文を受けて、あとで安い金額とされることを防ぐことができる。受注する時点で単価が低すぎれば交渉できる。
◆悪い面
納期が短いため図面だけFAXで送ってもらって材料の手配をしたい。しかし注文書が発行できないと図面を送ってもらえない。
このように不便な面もありますが、仮単価でも金額が入ると、それが基準になってしまいます。そこでできるだけ金額を決めて受注するようにします。
受領拒否の禁止
「下請事業者に責任がないにもかかわらず受領を拒むこと」です。
納期を守るために、手配に時間がかかる部材を仕入先の判断で先行手配することがあります。本来は取引先から書面で内示をもらうべきですが、内示の手配数で不足する場合、仕入先が先行手配を上積みします。同様に仕入先が自主的に在庫を持つ場合もあります。
これは順調に受注があればよいのですが、景気が急減速し内示が取り消されると問題になります。
ガイドラインでは
「取引先から『参考情報』として提示された場合でも、それが実際の部材手配や製造着手につながる場合は、事実上の発注とみなされる」
と書かれています。実際に大量の部材を抱えてしまった場合、引き取ってもらわないと経営に影響します。しかしこのガイドラインを示して引取りを求めるのはなかなか大変です。
そこで先行手配や在庫を持つ場合、予め先行手配の記録をします。具体的には取引先と打合せし「『参考情報』を元に先行手配をする」という旨の議事録をつくり、取引先のサインをもらいます。もしサインが拒否されれば、先行手配はしない方がいいです。その場合、「リードタイムはこれだけかかるのだから、それ以上の短納期は無理」ということを書面に残します。
下請代金の支払遅延の禁止
「支払代金を、支払期日までに支払わないこと」です。
最近は月末締の翌月払いの企業も増えて、検収が上がればスムーズに支払われるようになりました。
問題は検収がなかなか上がらない場合です。特に装置や金型は取引先が問題なく生産を立ち上げて検収になります。中には問題の解決に何か月もかかり、それまで検収が上がらないこともあります。
そこで、取引先と契約する際に進捗度に応じて何割かを支払ってもらう方法があります。
例えば、建設業は工事代金が大きく、自社も工事中に業者へ支払いしなければなりません。そのため、こういった方法が一般的です。ただし最後の支払いは、完成・引き渡しが条件です。
このような方法を取れば資金的に楽になりますし、取引先も検収を上げるまで支払いは残るので安心できます。
買いたたきの禁止
「通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」です。
「通常支払われる対価」とは、「その下請事業者の属する取引地域において一般的に支払われる対価」を指します。
「著しく低い下請代金」は解釈によって変わりますが、ガイドライン、ハンドブックによれば、
- 一方的な指値
- 一律・一定率での発注価格の減額(コストダウン要請)
- 材料費・加工費・人件費などのコスト増加を無視した価格据え置き
などが挙げられています。取引先からの定期的な原価低減要請でも、原価低減できるネタがないのに一方的に価格を引き下げれば買いたたきになります。
不当なやり直しの禁止
「下請事業者に責任がないにもかかわらず、給付の内容を変更させたり、給付をやり直させること」です。
例として合否判定が曖昧な傷や外観について、一方的に「傷があるものは不良だから受け取れない」とされる場合、取引先の事情で手直しを依頼されたが、その費用を支払われない、などです。
下請適正取引等の推進のためのガイドライン
親事業者と下請事業者の間の取引において「望ましい事例」と「望ましくない事例」を示すことで、公正な取引を促すことを目指したものです。
ガイドラインは以下の20の業種について、それぞれ作成されています。
(1)素形材
(2)自動車
(3)産業機械・航空機等
(4)繊維
(5)情報通信機器
(6)情報サービス・ソフトウェア
(7)広告
(8)建設業
(9)建材・住宅設備産業
(10)トラック運送業
(11)放送コンテンツ
(12)金属
(13)化学
(14)紙・加工品
(15)印刷
(16)アニメーション制作業
(17)食品製造業
(18)水産物・水産加工品
(19)養殖業
(20)造船業
自社の業種が20に当てはまらない場合も、近い業種のガイドラインを読んでおくことをお薦めします。
例えば、プレス、切削など金属加工の場合、
(2)自動車
(3)産業機械・航空機等
(5)情報通信機器
この3つを印刷して読んでおくことをお薦めします。
(情報通信機器は、受注や書面の交付、支払などがQ&A形式で具体的に書かれているので参考になります。)
参考例 自動車のガイドラインの場合
ガイドラインの内容の参考例として、「(2) 自動車」の一部を紹介します。
補給品の価格決め
自動車のような大量生産品の場合、現行モデルで使用する部品は毎月一定量が発注されます。しかしそのモデルが販売中止になると、その部品は補給品扱いになり、発注量が大幅に少なくなります。それでも依然と同じ価格で発注されれば単価が合いません。
これについてガイドラインでは
少量の補給品を以前と同じ価格で発注することは下請法の買いたたきに該当する恐れがあると明記しています。
問題は、自動車は部品の共通化が進み、今受注している部品が量産品なのか補給品なのかわかりづらいことです。例えばある車種はモデルチェンジでその部品は使用しなくなったが、ある車種はまだ使用しているため、発注量が1/3になっても発注が定期的に行われることもあります。
そのような場合は、補給品・量産品と区別せずに発注量に応じて価格を設定するように取引先と交渉します。
自動車メーカーによっては、量産終了時に一括買い上げなどの制度があるメーカーもあります。しかし二次以降の下請けに、そういった情報も入ってこないこともあります。その場合は取引先を通じてこういった情報を収集します。
型取引の適正化
金型の保管費用
金型費用を一括で支払わず、部品の価格に上乗せして支払う場合、金型は自社の資産です。自社の資産ですが、その部品の発注がなくなっても生産再開の可能性があるため、金型を保管しなければなりません。その場合、金型を無償で保管させることは、ガイドラインでは
下請法の不当な経済上の利益の提供要請に当たる恐れがあると明記されています。
一方、保管費用をもらっても金型が増える一方であれば、保管場所の確保や管理費用が増えていきます。本来、取引先が保管すれば、その後の使用可能性を考えて見切りをつけて廃棄するはずです。そのような金型でも保管費用を払っているからと保管を続けさせられます。
そのような場合、今後も保管する金型は増え続けると考え、保管スペースの費用、管理費用を計算し、保管すれば利益が出る金額を設定します。そして「今後も金型を保管し続ければこれだけかかりますがいいですか」と費用を請求します。支払いが拒否されれば「差し上げます (大抵償却は終わっている) ので取引先で保管してください」とお願いします。
金型図面の提出
金型を納入する際に「保守のために必要だから」と図面を要求される場合があります。図面を提出するかどうかは、取引先が設計費用を払ったかどうかが基準になります。
設計費用を払えば、設計の成果物である図面は取引先の所有物です。
設計費用を払わなければ、金型代は金型に対して支払われただけで、図面は自社の知的財産です。もし図面を要求されれば設計費用を請求します。
設計費用を払わないのに図面も要求する場合、
下請法のかいたたきに該当する恐れがあるとガイドラインに明記されています。
あるいは「メンテナンスのために金型図面が必要」と取引先が言えば、メンテナンス(再研など)に必要な個所だけ、寸法が入った図面を渡します。それ以外の箇所は寸法の入っていない外形図でもメンテナンスは十分できます。もしそれでは不十分だと取引先が言えば、明らかに次回以降の金型を他社でつくらせる意図があります。
配送費用の負担
部品の配送費用が仕入先の負担になっている場合、配送費用があいまいになっていることがあります。しかし定期的な配送便に間に合わず、営業担当者がライトバンで数個納品すれば、余分に配送費用がかかっています。その費用も仕入先の負担です。
あるいは仕入先が有償支給品(材料)を取引先から引取りする場合、納品の帰りの便に積めればよいのですが、積み切れずに別便で引き取りしなければならない場合、余分に費用が発生します。
その場合、自社の配送費用がどのくらい発生しているかを明確にし、その費用が取引先から適切にもらえているか調べます。できれば見積に管理費とは別に配送費用、梱包費用を入れます。そして運賃が上がった場合、値上げ交渉します。
本来は、取引先の都合で別便で納品した場合、追加の配送費用を請求すべきです。現実には難しいことも多く、別便で納品することが多ければ、その分見積の配送費を膨らませてカバーする必要があります。
原材料価格、エネルギーコスト、労務費等の価格転嫁
原材料価格の上昇が発注価格に反映されても、反映されるタイミングが遅ければ、その間利益は少ないままです。また原材料価格以外の費用、エネルギーコスト、副資材、労務費は価格に反映されていない場合もあります。
このような費用が上昇しているにもかかわらず、一方的に従来の価格を要求することは
下請法の買いたたきに相当する恐れがあるとガイドラインに明記されています。
一方ガイドラインによれば「妥当性のある要請であれば値上げを認める」と回答したメーカーもありました。原材料以外のエネルギーコスト、副資材、労務費の上昇による値上げも、要請すれば値上げできる可能性があります。
労務費の上昇(賃上げ)は、これまでは企業の自主的な判断とみなされてきました。しかし最低賃金は年々引き上げられています。さらに物価も上昇しており、一定の賃上げは必要なものと考えられます。これによる原価の上昇は不可抗力として交渉します。
取引条件の変更
品質改善のため工程の変更や検査が増えても当初の価格を求められることがあります。あるいは不良が出たため、工程や検査が追加になることもあります。
不良の場合は、仕入先に問題があることが多く、その費用が請求できません。これは以下のように取組みます。
自社の問題で検査や工程を追加した場合、「どうなれば検査や工程をなくせるのか」予め取引先と打合せしておきます。そして品質を高めてできるだけ早く追加した工程や検査をなくすように現場が努力します。
顧客の要望で検査や工程を追加した場合、その分原価が上昇したことを伝えて、値上げ交渉を行います。それでも価格を据え置くことは
不当に低い価格を強制することになり下請法に抵触します。
価格交渉ノウハウ・ハンドブック
下請法やガイドラインの内容を要約したものです。取引先と価格交渉を行う際の事前準備のための資料を意図して作成されました。
交渉は準備6割、本番4割とも言われ、本番前にどれだけ準備したかが成否を決めます。
交渉に関係する全員がハンドブックで学習し、どのような要求がガイドラインや下請法に違反するのか理解しておきます。さらにハンドブックが提示するポイントやテクニックを活用します。
以下、ハンドブックにある「こんな取引条件に要注意!」からいくつか紹介します。
合理的な説明のない価格低減要請
量産メーカーで行われる定期的なコストダウン要請、これについてハンドブックでは「発注者が、自社の予算単価・価格のみを基準として、通常支払われる対価に比べて著しく低い取引価格を不当に定めることは、下請法や独占禁止法に違反する恐れがあります。」と書かれています。
ハンドブックには事例として
「今年も5%の単価引き下げを頼むよ」という会話があります。
定期的な5%の単価引き下げも、コストダウンできる根拠がなければ、単なる値下げになってしまい下請法違反の可能性があります。
また「不況時や為替変動時に、協力依頼と称して大幅な価格低減が要求されていませんか」として、こういった価格協力要請も望ましくない取引として挙げられています。
大量発注を前提とし単価設定
価格交渉の中で
「では、ロットをまとめて発注するので安くしてください」
と言われることがあります。ところがこの約束が実行されず、見積よりも少ないロットで発注されてしまいます。
これについてもハンドブックでは
「大量発注を前提とした見積に基づいて取引単価を設定したにもかかわらず、見積時よりも少ない数量を見積時の予定価格で発注することは、下請法や独占禁止法に違反する恐れがあります。」と書かれています。
あるいは納期に間に合わず分納で入れることもあります。しかし分納が常態化すれば上記の事例に該当します。
合理的な理由のない指値発注
新たな製品の引合があった場合、取引先が指値をする場合があります。この指値についてハンドブックでは
「合理的な説明をせずに、通常支払われる対価に比べて著しく低い取引価格不当に定めることは下請法や独占禁止法に違反する恐れがあります」と書かれています。
実際は相見積なので指値より高ければ失注するかもしれません。
一方、品質・供給量の不十分な仕入先の見積を引合いに出して「A社はいくらで見積が出ている」と指値を迫られる場合もあります。
自社が高ければ本当にA社に発注するのか、見極めた上で、自社の適正価格を提示し、価格の根拠を示して交渉する方法もあります。
できればその際、指値でつくるためには
「どこをどう変えればいいのか」
コストダウンを提案します。そうすれば取引先は
- 品質・供給量に問題のあるA社に指値で発注
- 品質・供給量は問題ない自社に指値より高く発注
- コストダウン提案を受入自社に指値で発注
この3つから選択することになります。
またハンドブックには書面に残すべき内容を提示しています。
取引条件に関するルールを書面化した例
国は価格転嫁に非協力的な企業を公表するなど様々な取組を行っています。そのため取引先の担当者も仕入先の負担になるようなことは言いにくくなっています。
そこで取引先の要求は必ず書面化し、相手のサインをもらうようにします。
口頭では記録が残りませんが、文書にすれば理不尽な要求の記録が残ります。文書化することで理不尽な要求をけん制する効果があります。
以下はハンドブックに挙げられている例です。
- 原材料費が上昇した時の価格への反映
- 一次的な価格引下げに際し、元の価格に戻す際のルール・基準
- 見積の前提の発注数量を明確にし、発注数量が変動した時は、価格を見直す
- 取引先の都合で設計・仕様・納期の変更があった場合、取引先が追加費用を負担する
- 運送費は、発着地・納入頻度(回数)などを明確にし、どちらがどれだけ負担するのか明記
これらの記録は契約の一部です。できる限り打合せ当日に記録し、相手のサインをもらっておきます。
(サインするなら、なかったことにしてくれというかもしれません。)
社内での勉強会
国から提示されている内容は多岐にわたります。学習を個人に任せても進みません。そこで主に取引先と交渉する社員が、講師になって社内で勉強会を開きます。今まで挙げた事例には自社に関係がないものもあるかもしれません。そこで内容を厳選して
「自社が顧客と交渉する際に最低限知っておくべき内容」
をまとめてテキストをつくります。これを使って社内で勉強会を開けば、関係する社員全員の交渉力がアップします。もし違反事例があった場合、社内で共有し、中小企業庁に報告できます。
取引は本来は売り手と買い手が、対等の立場で取引条件を話し合い合意して行うものです。現実には限られた顧客と取引している仕入先は、「受注しなければ経営が成り立たたない」という弱い立場にあります。
そこで国は法律の制定やガイドラインの作成を通じて、不利な立場になりやすい下請企業を支援しています。
こういった国の施策を活用して、公平な取引の実現を願っています。
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経営コラム ものづくりの未来と経営
人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中
ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?
経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
こちらにご登録いただきますと、更新情報のメルマガをお送りします。
(登録いただいたメールアドレスは、メルマガ以外には使用しませんので、ご安心ください。)
経営コラムのバックナンバーはこちらをご参照ください。
【製造業の値上げ交渉】11. なぜ社員に任せたら値上げ交渉が進まないのだろうか?
値上げ交渉の基本的な手順について【製造業の値上げ交渉】10. 値上げ交渉は初めて、どう進めていけばよいのだろうか?で説明しました。
これを理解して、社員に値上げ交渉を指示したところ、中々進みません。なぜでしょうか?
誰が交渉を行うのか?
理由として、本音はやりたくないという場合があります。
営業の仕事は「注文を取ってくる」ことです。しかし値上げをすれば、注文を取るどころか失注するかもしれません。値上げ交渉は、これまでの営業の仕事とは真逆の仕事なのです。
時代の変化に対応できないマインド
時代が変わり営業活動も変わっています。
かつての営業活動
製造業はかつて右肩上がりが長く続きました。この時に重要なのは「受注を増やすこと」です。受注が増えれば、売上が増えて固定費の比率が下がります。利益も増えます。受注増加に伴い設備投資が必要な場合も設備投資の回収は容易です。
その時、一番の問題は失注です。価格が低く利益が少なくても、失注しなければ売上は増えます。しかも営業は売上で評価されるので、利益が少なくても売上が大きければ高く評価されます。
これまでこういった環境で仕事をしてきた人にとって、今は正反対です。
今の営業活動
今は売上の大幅な増加は望めません。しかも費用は年々上がっています。利益は減少し、このままでは設備の更新も困難になります。このような環境では優先すべきは売上よりも利益です。例え売上が大きくても利益がなければ会社が成り立ちません。
その一方、受注が全くなければ固定費が回収できず赤字になってしまいます。その場合は価格が低く赤字の製品でも受注しなければなりません。
つまり受注残高に応じてアクセルとブレーキを踏み分けなければなりません。
しかも様々な費用が上がっているため、以前の感覚で「これぐらいなら利益が出るだろう」という価格では赤字になってしまいます。
ある会社でベテランの営業Aさんは、製造原価の10%を「販管費+利益」として見積もりしていました。しかしこの会社の販管費は製造原価の30%もありました。つまり見積の段階ですでに赤字でした。
値上げ交渉は経営者の仕事
社員の意識がこのような場合、値上げ交渉は難しくなります。値上げ交渉は「失注するかどうか」ギリギリの駆け引きが必要だからです。
「失注するかもしれないが、思い切って値上げしなければ会社が立ち行かなくなってしまう」
この判断は経営者でなければできません。値上げ交渉の資料作成や準備は社員に任せても、取引先との交渉は最初は経営者が行います。利益が年々減少していれば値上げは最優先事項です。
まず経営者が覚悟を持って粘り強く取引先と交渉します。そして結果が出れば社員に引き継ぐことも可能です。
値下げ交渉はナンバー2以下
逆に取引先からの値下げ要求などは、経営者でなく営業部長などナンバー2以下が行います。そうすれば取引先から不利な条件を要求されて困った時、
「私の一存では決められないので、社に戻って社長と相談します」
と回答を保留し、時間を稼ぐことができます。
しかし経営者は最終決定権者なので、回答を保留できません。最終決定権者とナンバー2では、この違いがあります。
私の経験でも、価格交渉や不良品の損失補填などお金が絡む交渉では、必ず経営者に来てもらいました。経営者が来ればその場で結論が出るからです。特に中小企業は、経営者に来てもらわないと決まらないことが多かったです。
こうして値上げ資料を持って交渉に行くと、値上げの根拠を聞かれることがあります。これはどのようすればよいでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉】12. 取引先から値上の根拠を求められた。どうすればいいのだろうか?を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか?
値上げが必要になった原因として、当初より原価が高くなっていることがあります。例えば「検査が追加された」、「当初の見積にない工程が追加された」などです。
検査が追加された場合
例えば、見積した時点では検査費用は入っていませんでした。しかし生産が始まると取引先から「傷があるものは入れないでほしい」と言われました。そのため全数目視検査を追加しました。
この場合、検査費用の分、原価は上がっています。
検査費用の計算
この検査費用は、抜取検査と全数検査で金額が大きく違います。
そこで架空のA社 A1製品に抜取検査と全数検査を追加した場合の原価を計算します。
(A社の詳細は【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?を参照願います。)
A1製品
- 製造工程 : NC旋盤
- 製造時間 : 0.075時間
- 製造費用346円
- ロット : 100個
- 材料費 : 330円
- 外注費 : 50円
- 販管費レート : 0.25
検査なしの場合
製造原価=材料費+外注費+製造費用
=330+50+346=726円
販管費=製造原価×販管費レート
=726×0.25=182円
販管費込み原価=製造原価+販管費
=726+182=908円
受注金額が988円の場合、利益は
利益=受注金額-販管費込み原価
=988-908=80円
取引先の要求で全数検査を追加し、検査時間は3分(0.05時間)でした。
検査は人が行い設備は使用しないため、アワーレートはアワーレート間(人)のみです。
(アワーレート間(人)は間接製造費用を含んだ人のアワーレートという意味です。詳細は【製造業の値上交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?を参照願います。)
検査の現場はパート社員も多く、アワーレート間(人)は他の現場より低く、2,350円/時間でした。
全数検査を追加した場合の原価
全数検査を追加した場合、原価はいくら高くなるのでしょうか。
A1製品の検査費用は
検査費用=アワーレート間(人)×検査時間
=2,350×0.05=118円
製造原価=材料費+外注費+製造費用+検査費用
=330+50+346+118=844円
製造原価が増加したため、販管費も比例して増加します。
販管費=製造原価×販管費レート
=844×0.25=211円
販管費込み原価=製造原価+販管費
=844+211=1,055円
利益=受注金額-製造原価
=988-1,055=▲67円
全数検査を追加したため販管費込み原価は908円から1,055円と147円増えました。
その結果、80円の利益が67円の赤字になりました。そこで増加した147円の値上げを交渉します。
ただしこの147円のうち118円は検査費用ですが、29円は販管費の増加です。この販管費の増加分の値上げは顧客に認めてもらうのは難しいかもしれません。その場合は、検査費用の増加分118円の値上げは認めてもらうようにします。
抜取検査の場合
抜取検査は費用の増加は少なくなります。
A1製品の検査を抜取検査に変更しました。
抜取検査の条件 100個から5個抜取り
(本来はJISの抜取検査に従って抜取り数は決めます。ただし現場では上記のように適当に抜取り数を決める場合も多くあります。)
製品1個当たりの検査費用は6円でした。
製造原価=材料費+外注費+製造費用+検査費用
=330+50+346+6=732円
製造原価が増加したため、販管費も比例して増加します。
販管費=製造原価×販管費レート
=732×0.25=183円
販管費込み原価=製造原価+販管費
=732+183=915円
抜取検査を追加したため販管費込み原価は908円から915円と7円増えました。
その結果、80円の利益は73円に減少しました。
検査を減らすように交渉
全数権を追加した原因は、自社の製造工程で発生した傷のためでした。そのため価格を118円も上げてもらうのは容易ではありません。
そこで、検査で傷のある製品を除外するのでなく、製造工程を改良してできる限り傷を減らして全数検査から抜取検査に変えてもらいます。抜取検査であれば値上げしなくても利益は73円あります。
抜取検査は万全ではありません。しかしその傷は118円のコストをかけて完全に除外しなければならない傷でしょうか?それだけコストがかかっていることを取引先に伝えて、抜取検査への移行に理解を求めます。
それでも取引先は全数検査を要求することがあります。
検査にコストはかからないと思っている
理由は検査にコストはかからないと思っているからです。
顧客自身も自社の工場では検査費用を原価に入れていないことがあります。そうなると議論はかみ合いません。
本コラムで計算する原価は、決算書の数字を元に計算した「真実」です。
3分検査すれば実際に118円の費用が発生します。
その一方で、品質を高め良いものをつくるために「やったほうが良いこと」は、検査の他にもあります。時には取引先はそれを要求します。そしてその費用はつくる側(仕入先)が一方的に負担させられます。
そこで顧客が要求することを行えば原価がいくら上がるのかを具体的に金額を示して、「これだけコストが上がりますがそれでもやりますか」と交渉します。やったほうがよいが、コストをかけるまでもないことも案外多いのです。しかし金額を明示しなければ、いつの間にか「やること」になってしまいます。
具体的な金額を示したのに「値段を上げずにやってほしい」という要求は、これは国のガイドラインに抵触します。このガイドラインについては【製造業の値上げ交渉】19. 下請法や国のガイドラインを値上げ交渉に活かす方法を参照願います。
少なくとも検査費用を社内見積には入れる
一方、社内も検査にコストはかからないと思っていることがあります。それでは取引先から全数検査を要求されても問題だと思いません。
しかし検査を行えば費用は発生します。そこで、まず社内の原価計算に検査費用を入れます。見積にも検査費用を入れます。そうすれば「検査も原価」という意識が生まれます。原価がかかっていれば、現場は短時間に検査をするように努力します。
検査は慌てるとミスが起きるため、カイゼン活動の対象外になっている工場もあります。しかし検査も原価なのです。しかも検査は人が行うため、設備よりもアワーレート(人)が高いことが多く、原価の中で大きな割合を占めることもあります。
取引先と建設的な議論を
見積に検査費用を明記すれば、取引先もつくる側も検査費用を意識します。その上で「どうすれば検査費用を少なくできるか」お互い建設的な議論ができることが望ましいです。
検査以外にも運賃や梱包費用の上昇でどれだけ金額は変わるのでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉9. 運賃が上昇すれば、いくら高くなるのだろうか?を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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基本的な計算方法を解説した【基礎編】と、自動化、外段取化の原価や見えない損失の計算など現場の課題を原価で解説した【実践編】があります。
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数人の会社から使える個別原価計算システム「利益まっくす」
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経営コラム ものづくりの未来と経営
人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中
ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?
経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
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【製造業の値上げ交渉】10. 値上げ交渉は初めて、どう進めていけばよいのだろうか?
いろいろな費用が高くなっています。
これによりどのくらい原価が上昇するのか?
人件費、電気代などの上昇で原価がどれだけ上がるのか・
これについて、
【製造業の値上げ交渉】4. 人件費が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?
【製造業の値上げ交渉】5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?
【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか?
【製造業の値上げ交渉】9. 運賃が上昇すれば、いくら高くなるのだろうか?
で説明しました。
必要な値上げ金額が分かれば値上げ交渉しなければなりません。しかし「これまでコストダウンの話ばかりで、値上げの話はしたことがない」といった方もいます。デフレが続いた日本は、製品の価格を上げられないため、「いかにしてコストを下げるか」一辺倒でした。値上げは考えられないという時代が長く続きました。
では、値上げ交渉はどのようにすればいいのでしょうか。
値上げ交渉の手順
一般的な値上げ交渉の進め方を以下に示します。
- 事前準備① 国が発行する資料の理解
- 事前準備② 現状把握
- 方針決定 交渉する製品、値上げ金額、妥協点を決定
- 事前連絡 取引先に値上げが必要なことを伝える
- 値上げ資料作成 製品毎の値上げ金額、その明細、根拠の詳しい資料の作成
- 交渉準備 説明の練習、取引先からの要求に対する反論の準備
- 交渉
- 交渉後のフォロー
これは一般的な進め方の例です。取引先との関係によって進め方は変わるので注意してください。
1.事前準備①
まず値上げ交渉に必要な知識をインプットします。国が提供する以下の資料を読んで、交渉の基本や発注先が守るべき内容を理解します。
- 価格交渉ハンドブック
- 下請適正取引等推進のためのガイドライン (19のガイドラインのうち、自社に関係するもの)
- 下請代金支払遅延防止法(下請法)
この国の支援策の詳細は【製造業の値上げ交渉】19. 下請法や国のガイドラインを値上げ交渉に活かす方法を参照願います。
国は中小企業の価格転嫁(値上げ)に対し様々な支援をしています。中小企業庁は発注先企業の価格転嫁の状況を調べ、価格転嫁に消極的な企業は実名を公表しています。もし下請法に抵触すれば、公正取引委員会がその会社に調査に入ることもあります。
値上げ交渉の中でガイドラインや下請法に抵触するようなことがあれば、中小企業庁や公正取引委員会に報告することをお薦めします。こうした行動の積み重ねが、発注先企業の姿勢を変え、公正かつ適正な取引が広まることにつながります。
2.事前準備②
値上げ交渉の前に、どの製品をどれくらい値上げしなければならないか調べます。そのためには製品の適正価格を知る必要があります。これは製造原価、販管費をカバーし、必要な利益が得られる金額です。この金額で受注できれば、毎期の利益が確保できます。
図2に架空の企業A社 A1製品の製造原価と販管費、目標利益を示します。
主要な製品だけで良いので、受注価格と利益(赤字額)を調べます。それぞれの製品の年間受注量から、製品毎の年間売上と年間利益を計算します。調べると思っていたより違っていることがあります。例えば「大きな売上を占めていた大手企業からの受注は赤字だった。意外と売上の低い中小企業の受注は利益が大きかった」。
図3にA社 A1製品とA2製品の製造原価、販管費と受注金額、年間受注量を示します。
A1製品は受注金額820円で88円の赤字です。年間生産量は2万個あるため、年間での赤字額の合計は176万円あります。
対してA2製品は受注金額1,800円で170円の赤字です。年間生産量は1,000個のため、年間での赤字額の合計は17万円です。
この場合、会社全体の利益を改善するにはA1製品の値上げの方が効果が高いです。
3.方針決定
どの製品をどれくらい値上げするのか、値上げの方針を立てます。例えば、
- 初めて値上げ交渉する場合、失敗しても経営に影響の少ない売上の低い製品から行う。
- 赤字が累積し早急な改善が必要な場合、年間での赤字合計の大きな製品から取り組む。
次に値上げ金額を決めます。値上げの目標は必要な利益が出る金額です。
しかし必要な利益の出る金額が現在の受注金額から大きく乖離している場合、無理にその金額を要求すれば失注する可能性があります。
その場合は値上金額は失注しない程度の金額に抑えます。ただし必要な利益が出る金額を適正価格として顧客に示し、「そこまでの値上げはお願いできないので、今回はここまで上げさせてください」とします。
できれば値上げ交渉を行う製品をリストアップして、値上げがうまくいけば年間の利益がどれだけ改善されるかシミュレーションします。そうすれば「どれだけ頑張れば、会社の業績がどのように変わるのか」が見えてきます。
4.事前連絡
ある日突然、値上げした見積を持って来て「値上げをお願いします」と言われれば取引先もびっくりします。そこで事前に取引先に
- ○○が上がって、どうにも採算が合わない
- 現状の価格を維持するためにいろいろと努力したがどうにもならない
- こうなれば値上げをお願いせざるを得ない
- 対象製品と値上げ金額を精査しているので、〇日頃には資料を持参する
と伝えます。
取引先もこの話を受けて、上司に報告したり、課内で値上げ情報を共有します。仕入先が値上げすれば取引先の原価も上がります。それに応じて取引先も値上げや自社の取引先との値上げ交渉を考えなければなりません。
5.値上げ資料作成
取引先に提出する値上げ資料を作成します。どのくらい詳細な資料が必要かは取引先によります。最近は「何が原因で、何パーセント原価が上昇したのか」詳細な資料を求められることもあります。取引先(担当者)はその資料を精査し、値上げ金額が適正かどうかを上司や関係部署に説明しなければならないためです。
重要なのは「値上げ資料は適切な原価が計算され、値上げの根拠も明確になっている」ことです。そして取引先に「この金額が適正だ」と思ってもらうことです。そのために値上げ資料はできるだけ分かりやすく具体的な数値で説明します。
この値上げ資料の作成は【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?を参照願います。
おそらくこういった状況では他の仕入先も値上げを要請しているかもしれません。
その結果、取引先は多くの値上げ案件を精査しなければなりません。そのため値上げ資料は取引先の担当者が容易に理解ができて、そのまま上司や他部署に回すことができるものにします。
上司や他部署(例えば原価管理部門)は不明な点があれば、担当者に聞きます。担当者が分からなければ、仕入先に聞かなければなりません。こういったやり取りが複数の仕入先で発生すれば、担当者はこれに忙殺されます。そしてこういった案件は後回しになってしまいます。
6.交渉準備
交渉本番の前に「値上げ資料をどのように取引先に説明し、値上げを納得してもらうのか」プランを立てます。さらに取引先から「どのような反論や要求が出るか」を想定し、それに対する回答を考えておきます。
できれば社内で誰かに取引先役になってもらい、実際の交渉のロールプレイ(リハーサル)を行います。取引先の担当者は日々多くの仕入先と交渉を行っています。交渉の専門家から研修を受けている場合もあります。そういった相手と交渉するのですから、こちらが交渉に不慣れな場合、最初から交渉力に差があります。それを少しでも埋めるためにロールプレイは有効です。
中には取引先の事情により価格が上げられない製品もあります。その場合、代案としてコストダウン方法があれば用意します。
他にも取引先が本当に転注するかどうか、事前の情報収集も重要です。
例えばもっと規模の小さい〇社が低い価格で受注することもあります。値上げをお願いすると「値上げするなら〇社に転注する」と言われます。実際は規模の小さな〇社は、品質管理、納期対応や安定供給に問題があるかもしれません。しかしそのようなことは取引先は言いません。そこで交渉を有利にするためには、競合も含めた情報を事前に収集しておきます。今では企業の住所は簡単にわかります。競合の〇社を外から見るだけでもいろいろなことが分かります。
また交渉結果を予測し妥結点を考えておくことも重要です。具体的には
(1) 100%認められた
・適正価格で値上げを要求 → 大成功
・適正価格より低い金額で値上げ → 次回値上げの予告
(2) 認められたが100%でない
・妥結する
・交渉を継続する
・断る
(3) 全く認められなかった
・妥結する
・交渉を継続する
・断る
取引先の対応により、どうするのか方針を予め決めておけば、交渉をスムーズに行うことができます。これは製品によって変わることもあります。
7.交渉
以上の準備を行い交渉本番に臨みます。
交渉では、相手の立場を尊重した上で「適正価格」を主張して、値上げに理解を求めます。最後に「○○までに回答をいただけないでしょうか」と期限を切ります。
期限を切っておけば期限を過ぎて回答がなければ催促できます。もしそれでも回答を引き延ばすようであれば、これは国が定めたガイドラインに抵触しています。
8.交渉後のフォロー
値上げを認めてもらえた場合も再度訪問してお礼を言います。
値上げが認められず受注を断る場合も、再度訪問し、
- 取引先の希望価格とどれだけ乖離があったのか、
- どこに会社に転注したのか、
- そこは価格や品質に問題はないのか、
といった情報を収集します。
その上で「今後は取引先の希望価格に沿えるようにコストダウンに努力すること」を伝え、関係が悪化しないようにします。
適正価格で受注できる顧客かどうか
取引先の目的は目標価格での部品・資材の調達です。
現実には様々なものの値段が上がっているので、目標価格の調達は難しくなっているかもしれません。本来は、目標コストを実現するためには図面や仕様から見直して、より低コストでつくれるようにしなければなりません。
しかし取引先が図面や仕様を変えずに目標価格の調達に固執すれば、その価格は自社の適正価格から乖離します。その価格を受け入れれば経営が立ち行かなくなります。
一方間接費や販管費が上昇し、自社が高コストになっている場合もあります。これについては【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?を参照願います。
値上げ交渉の結果、適正価格での受注が困難な場合、
- 間接費、販管費の削減など自社の費用構造を変えて顧客の希望価格で受注できるようにする
- 今の顧客との取引を減らして、自社の適正価格で受注できる他の顧客を開拓する
これらの取組が必要です。
交渉の注意点
利益が出ないため困っているため値上げ交渉を行うわけです。ですから経営者が取引先と交渉に行くときは、会社のライトバンがお勧めです。取引先は意外なところを見ていることがあるからです。
このように値上げ交渉の手順を理解して、社員(幹部)に値上げ交渉を指示しました。ところがなかなか進みません。なぜでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉】】11. なぜ社員に任せたら値上げ交渉が進まないのだろうか?を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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【製造業の値上げ交渉】15. いくら値上げするのが適切だろうか?
原価を見直したら大幅な赤字だったため、値上げ交渉を行いました。
取引先から「値上げは検討するが、この金額は高すぎる」と言われました。どうすればいいでしょうか?
これまで値上げできなかったことが原因
こうなった原因は、これまで様々な費用が少しずつ上がっていたのに、それが価格に反映できなかったためです。
その結果、「自社の現在の見積金額」と受注金額との乖離が大きくなってしまいました。しかもこれまで「コストダウンはあっても値上げはあり得ない」という状況だったため値上げができませんでした。その結果、値上げ金額が大きくなってしまいました。
例えば、架空の企業A社 A1製品は
受注金額が860円、販管費込み原価が908円のため、48円の赤字でした。
(A社の詳細は【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?を参照願います。)
目標利益を得るには、価格を988円に
つまり128円の値上げが必要でした。これを図1に示します。
実はA1製品は、〇年前の見積は860円でした。
販管費込み原価は800円、60円の利益でした。
しかしその後、材料費、外注費、人件費、工場の経費が上昇し、
現在の販管費込み原価は908円、860円の受注金額では48円の赤字になってしまいました。
適切な値上げ金額とは?
一方、値上げは取引先の立場も考えなければなりません。取引先は仕入部品の価格が上昇すれば、それを製品の価格に転嫁しなければならないからです。
取引先が自社製品を販売するメーカーの場合、値上げすれば競合との競争に負けて市場シェアを失うかもしれません。
取引先も製品をメーカーに納める下請けだった場合、仕入部品が値上げした分、今度は取引先が値上げ交渉しなければなりません。これはとても大変なことです。
経済産業省の「自動車産業適正取引ガイドライン」には、ティア1など下請け部品メーカー(といっても大企業)が取引先の自動車メーカーに対し、
「仕入価格の上昇を価格転嫁ができない」、
「値上げすると次のサプライヤー選定に影響すると言われた」という事例が載っています。
こういった背景があるため、取引先が大幅な値上げを受け入れるのは難しいのです。
《私の経験》
(機械メーカーで、設計、品質保証に24年間従事しました。)
私の経験でも仕入部品の値上げはある程度は許容しましたが、大幅に上がれば他の仕入先を探しました。大幅な値上げは製品の原価を大きく上げるからです。
その場合、まず今の仕入先に対し「以前と同じ価格でつくるためにはどうしたらよいか」を協議しました。それがうまくいかなければ他の仕入先を探しました。それでも値段が高くなるような場合は、以前の価格でできないか設計変更を検討しました。
しかし設計変更は品質リスクを伴います。仕入先を変えて同じ価格でできるのであれば、そうしました。
失注のリスク
つまり大幅に値上げすれば、失注するリスクがあります。また大幅な値上げは取引先との関係が悪化し、その後の取引にも影響します。
どうしたらよいでしょうか?
適正価格を示して交渉
このような場合、値上げは取引先が受け入れられる(と思われる)金額にとどめておく必要があります。
ただし、本当に必要な金額は取引先に提示します。そして「原価はこれだけかかっているため、本当はここまで値上げしたい。しかし大幅な値上げは難しいことは理解しているので、これだけは上げてほしい」と交渉します。
例えばA社では、
A1製品をいきなり128円値上げするのが困難であれば、取引先に
「当社の適正価格は988円ですが、いきなりその価格にするのは難しいでしょうから、せめて80円値上げして940円にしてもらえませんか?」
と交渉します。
940円であれば、赤字は解消し32円の利益になります。目標利益ではありませんが、赤字で受注するよりはましです。
(実際の金額は自社と取引先との関係で変わります。この数字はあくまで参考値です。)
コストダウン提案も入れる
できれば
「できる限り値上げ金額を低くするようにコストダウンのアイデアを考えるから図面や仕様の見直しに協力してほしい」、
論点をコストダウン協議に変えます。
それには日頃から図面指示や形状に注意して、コストダウンできる箇所を探します。
例えばA1製品では、コストダウンを検討した結果、「公差を緩和し、検査基準を変える」ことで、製造時間を短くできることが分かりました。その結果
人件費 : マイナス20円
製造経費 : マイナス3円
が見込まれました。
これにより値上げを60円、値上げ後の金額920円に抑えても、40円の利益が出ます。これを図2に示します。
他社がやらない製品
一方、何らかの理由があって他社がやらない製品であれば、取引先も値上げを受け入れざるを得なくなります。その場合は、取引先が受け入れる値上げ金額はもう少し高くなります。ただし値上げ金額があまり高いと、取引先は他にできるところを探し始めますので、さじ加減は必要です。ただし他社がやらないものなのかどうかは、日頃から情報を集めていないとわかりません。
「なぜこれは当社に発注するのですか?」
「この図面の○○はとても難しいのですが、他にやるところはないのですか?」
取引先の担当者と日々の会話の中で「他に競合はあるのか」、「競合があれば価格や品質面ではどうか」などさりげなく質問して情報を収集します。
失注しても影響の少ない製品
あるいは受注が潤沢にあり、例えこの製品を失注しても業績への影響が小さければ、値上げ幅を大きくすることもできます。値上げ交渉は失注のリスクがゼロではありません。受注が少なく、ひとつ失注しても業績に大きく影響すれば、値上げ交渉は消極的になります。つまり営業活動がどれだけ成果を上げていて、受注がどれだけあるかが、値上げ交渉に影響します。
一方ずっと前に受注して、同じ価格でつくり続けている製品もあります。例えば15年前に受注して、受注価格は15年間変わっていない製品です。
これはどうすればよいでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉】16. 15年前の製品、赤字がひどくやめたいを参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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