【製造業の値上げ交渉】11. 社員がなかなか値上げ交渉を進めない

 
値上げ交渉の基本的な手順について【製造業の値上げ交渉】10. どのように値上げ交渉すればよいのか?具体的な交渉の手順で説明しました。

この手順を理解して、社員に値上げ交渉を指示しました。ところが中々進みません。なぜでしょうか?
 

誰が交渉を行うのか?

 
理由として、本音はやりたくないということがあります。

営業の仕事は「注文を取ってくる」ことです。ところが値上げをすれば、注文を取るどころか失注するかもしれません。

つまり値上げ交渉は、これまでの営業の仕事とは真逆の仕事なのです。
 

時代の変化に対応できないマインド

 
実は時代が変わり営業活動も変わっています。
 

かつての営業活動

 
製造業は右肩上がりが長く続いた時代がありました。その時代に重要なのは「受注を増やすこと」です。

受注が増えれば売上も増えて、固定費の比率が下がって利益が増えます。受注増加に伴い設備投資が必要な時もありますが、設備投資の回収は容易です。

当時の一番の問題は失注です。金額が少々低く利益が少なくても、失注しなければ売上は増えます。しかも営業は売上で評価されます。少々安く受注しても売上が大きければ評価は高くなります。

こういった環境で営業をしてきた人にとって、今の環境は正反対です。
 

今の営業活動

 
大幅な売上の増加は望めず、しかも費用は上がっています。利益は減少し、このままでは設備の更新も困難になります。

このような環境で優先すべきは売上よりも利益です。例え売上が大きくても利益がなければ会社が成り立ちません。

その一方受注が全くなければ固定費が回収できないため、赤字でも受注しなければなりません。つまり受注残高に応じてアクセルとブレーキを踏み分けなければなりません。

しかも様々な費用が上がっているため、以前の感覚で決めた価格では利益がありません。

ある会社では、ベテランの営業Aさんは、製造原価の10%を「販管費+利益」として見積もりしていました。しかしこの会社の販管費は製造原価の30%もありました。つまり見積の段階ですでに赤字だったのです。
 

値上げ交渉は経営者の仕事

 
このような意識の社員の場合、値上げ交渉は難しいです。値上げ交渉は「失注するかどうか」というギリギリの駆け引きが必要だからです。

「失注するかもしれないが、このまま値上げをしなければ会社が立ち行かなくなってしまう」

この判断は経営者でなければできません。

値上げ交渉のための資料作成や準備は社員に任せても、顧客の交渉は経営者が行います。利益が年々減少していれば値上げは最優先事項です。

まず経営者が覚悟を持って粘り強く顧客と交渉します。結果が出れば社員に引き継ぐことも可能です。
 

値下げ交渉はナンバー2以下

 
逆に顧客からの値下げ要求など顧客からの要望を受けて返事をしなければならない場合は、経営者でなく営業部長などナンバー2以下が行います。

そうすれば顧客から不利な条件を要求されて困った時、
「私の一存では決められないので、社に戻って社長と相談します」と回答を保留し、時間を稼ぐことができます。

しかし経営者は最終決定権者です。回答を保留できません。最終決定権者とナンバー2では、この違いがあります。

私の経験でも、価格交渉や不良品の損失補填などお金が絡む交渉では、必ず経営者に来てもらいました。経営者が来れば結論がその場で出るからです。特に中小企業は、経営者に来てもらわないと決まらないことも多かったです。

こうして値上げ資料を持って交渉に行くと、値上げの根拠を聞かれることがあります。これはどのようすればよいでしょうか?

これについては【製造業の値上げ交渉】12. 値上げの根拠とは?どこまで出せばよいのか?を参照願います。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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