8. 高い設備は本当に原価が高いのか?設備の価格と原価への影響

このコラムの概要

高い設備を導入すると、原価は上がるのでしょうか。
設備価格だけを見ると高く感じますが、実際にはそれだけで原価は決まりません。
本コラムでは、アワーレートの考え方をもとに、設備投資が原価にどのように影響するのかを解説します。
設備の価格に惑わされず、正しく判断するための考え方が理解できます。

大きな設備と小さな設備で原価はどのように変わるのでしょうか?設備の大きさの違いによる原価に関して、以下の5点について述べます。

  1. アワーレート(設備)と設備の費用
  2. 設備の違いによって現場を分けるかどうか
  3. アワーレート(設備)の間接製造費用の影響
  4. 具体的な原価の違い

1. アワーレート(設備)と設備の費用

 アワーレート(設備)は、

本コラムでは設備の年間費用は、決算書の減価償却費でなく実際の償却費を使います。ランニングコストには以下のものがあります。

設備の購入費用 : 実際の償却費
ランニングコスト : 光熱費、消耗品費、修理代、保守料など


図1
 

ランニングコスト

 ランニングコストは設備を動かすのに必要な電気代など光熱費、消耗品費、修理代、保守契約費用などです。この中で設備の差が大きいものをアワーレート(設備)に入れます。今回は電気代のみランニングコストに入れました。

それ以外の費用は金額が少なく設備毎の差も小さいので、間接製造費用として各現場に分配しました。

設備の年間費用が高ければアワーレート(設備)も高くなります。では設備によって現場を分けた方がいいのでしょうか。 

2. 違う設備は現場を分けた方がいいか

 これは設備の機能・能力で判断します。

設備の価格やランニングコストが違っていても、同じ加工であれば生み出す付加価値も同じです。従って、同じ現場にします。 

A社の場合

 機械加工A社は、小型のマシニングセンタ4台と大型のマシニングセンタ4台があります。(図2)この4台は導入時期が異なり、減価償却が残っている設備もあります。ただし加工能力はこの4台の間で差はありません。

大型のマシニングセンタは、大きな部品が加工できるため単価の高い製品が受注できます。
一方、小型のマシニングセンタよりスピードが劣るため、小さな部品は原価が高くなります。

そのため現場はこの2つを使い分けしています。そこで小型のマシニングセンタと大型のマシニングセンタは別の現場とします。

ただし同じ製品を、ある時は大型のマシニングセンタ、ある時は小型のマシニングセンタと、現場が使い分けしていなければ同じ現場にします。つまり、現場を分けるかどうかは「実際に使い分けしているかどうか」です。

図2

です。ラインの効率は

各設備のサイクルタイムのばらつきを縮めない限り、現状では10%のロスが必ず発生します。これは複数の設備に工程分割すれば必ず発生するロスです。実際は、アワーレートの計算には直接製造費用だけでなく、間接製造費用も含まれます。
間接製造費用はアワーレート(設備)にどのように影響するのでしょうか。

3. 間接製造費用の影響

 この間接製造費用を現場に分配する場合、様々な方法があります。本コラムは、

  • 現場の直接製造費用に比例
  • 現場の直接製造時間に比例

この2つを使います。

この間接製造費用を含めたアワーレートがアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)で、これは以下の式で計算します。

では設備の大きさによって、原価はどう変わるでしょうか。具体的な数値で検証します。 

4. 具体的な原価の違い

機械加工A社

図5に示すA社の2つの現場(マシニングセンタ1(小型)とマシニングセンタ2(大型))のアワーレート(設備)や原価を比較します。

図5 A社のマシニングセンタのアワーレート

マシニングセンタ2(大型)の1台の年間費用280万円はマシニングセンタ1(小型)140万円の2倍でした。アワーレート(設備)も2倍になりました。ここでは、間接製造費用を各現場の直接製造費用に比例して分配しました。

これは「直接製造費用の高い現場は付加価値の高い製造をするため、間接製造費用を多く負担する」考え方です。その結果、分配した間接製造費用は、

マシニングセンタ1(小型) : 145万円

マシニングセンタ2(大型) : 185万円

でした。間接製造費用を分配したアワーレート間(設備)は、

マシニングセンタ1(小型) : 1,720円/時間

マシニングセンタ2(大型) : 2,850円/時間

1.7倍に差は縮みました。この違いが原価にどう影響するのでしょうか。A社 A1製品の原価を図6に示します。

図6 A1製品の受注条件と原価、利益

A1製品は、製造費用
マシニングセンタ1(小型) : 380円

マシニングセンタ2(大型) : 470円 (+90円)

利益
マシニングセンタ1(小型) : 50円

マシニングセンタ2(大型) : ▲60円

マシニングセンタ1(小型)では50円の利益が、マシニングセンタ2(大型)では60円の赤字になりました。このように大きな(年間費用の高い)設備は原価が上がります。

実際マシニングセンタ2(大型)は製造費用が90円増えました。しかし、この90円の多くは固定費(実際の償却費)です。つまり赤字でも本当にお金が出ていくわけではありません。

もし、マシニングセンタ2(大型)でも加工できる製品があり、マシニングセンタ2(大型)が空いていれば、マシニングセンタ2(大型)で加工すべきです。

そうすれば原価計算上は赤字でも会社の利益は増えます。この点は誤解する現場の人も多いので注意します。 

このように設備毎の原価の違いを計算できました。

では設備を自動化すれば原価はどう変わるでしょうか?

設備の自動化と多台持ち、ロボットの活用については自動化とロボット導入によるアワーレート計算を参照願います。

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