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【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?
いろいろな費用が上がった場合の値上げの明細について【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?で説明しました。
この見積を元に顧客に値上げをお願いすると「高すぎる」と言われることがあります。顧客から「高すぎる」と言われると、いくらが「適正価格」なのだろうかと思います。
ある製品(部品)の適正価格は、あるのでしょうか。
自社の適正価格
結論から言えば、ある製品(部品)の絶対的な適正価格はありません。ただし、自社がつくった場合の適正な価格はあります。
自社の適正な価格とは?
自社の適正価格とは、製造原価、販管費をカバーし、必要な利益がある価格です。
この価格であれば、必要な経費をまかなって利益が出ます。残った利益を借入金の返済や老朽化した設備の更新に充てることができます。
利益まっくすで計算した原価は、その工場で発生した費用にもとづくもので、これは「真実」です。従って時間(段取時間、加工時間)が適正であれば、これが自社の適正価格です。
会社が違えば、適正価格は違う
しかし会社が異なれば直接製造費用と間接製造費用の比率、販管費レートが違います。つまり適正価格も違います。
規模の異なる会社の原価の比較
そこで規模の異なる架空の機械加工の会社A社とB社の原価を比較します。
2社とも、マシニングセンタ、NC旋盤などによる部品加工と組立を行っています。ただし2社は規模が違います。
A社 売上7億円、社員43人、うち間接は14人
B社 売上30億円、社員193人、うち間接は87人
A社に比べて、B社は外注品も多く、購買や生産管理など間接部門に多くの人がいます。技術や品質管理の人も多く、品質管理や工程管理の体制は充実しています。
構成と売上、製造原価、販管費、利益
A社の構成を図1に、B社の構成を図2に示します。
A社の売上、製造原価、販管費、利益を図3に示します。
B社の売上、製造原価、販管費、利益を図4に示します。
アワーレート、販管費レートの比較
NC旋盤の現場の間接製造費用を含んだ人と設備のアワーレートの合計 アワーレート間(人+設備)を比較します。
NC旋盤のアワーレート間(人+設備)
A社 アワーレート間(人+設備) : 4,620円/時間
B社 アワーレート間(人+設備) : 7,670円/時間
(アワーレート間(人+設備)の計算については【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?を参照してください。)
人件費と設備の費用(償却費とランニングコスト)は同じです。それでもアワーレートがこれだけ違うのは、間接部門の人件費と工場の経費の違いによるものです。
決算書の製造原価と販管費から計算した販管費レートを以下に示します。
A社 販管費レート : 0.25
B社 販管費レート : 0.057
B社はA社より工場の規模は大きいのですが、販管費はそれほど大きくありませんでした。その結果、B社の販管費レートはA社より小さくなりました。
見積金額の比較
NC旋盤で加工するA1製品の見積金額を比較します。
(見積金額の計算については【製造業の値上げ交渉】3. 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?を参照してください。)
製造時間 : 0.075時間
製造費用
製造費用=アワーレート間(人+設備)×製造時間
A社製造費用=4,620×0.075=346円
B社製造費用=7,670×0.075=575円
製造原価
A1製品 材料費330円 外注費50円
製造原価=材料費+外注費+製造費用
A社製造原価=330+50+346=726円
B社製造原価=330+50+575=955円
販管費
販管費=製造原価×販管費レート
A社販管費=726×0.25=182円
B社販管費=955×0.057=54円
販管費込み原価
販管費込み原価=製造原価+販管費
A社販管費込み原価=726+182=908円
B社販管費込み原価=955+54=1,009円
目標利益率 : 0.087 (A社、B社共)
目標利益
目標利益=販管費込み原価×目標利益率
A社目標利益=908×0.087=80円
B社目標利益=1,009×0.087=88円
見積金額
見積金額=販管費込み原価+目標利益
A社見積金額=908+80=988円
B社見積金額=1,009+88=1,097円
A社とB社では、会社の規模、直接製造費用と間接製造費用の比率、販管費レートが違います。その結果、同じ賃金、同じ費用の設備でも間接製造費用を含んだアワーレートは大きく違いました。
そして見積金額、つまり適正価格も
A社 988円
B社 1,097円
と異なりました。950円の受注金額では利益は、
A社 : 利益=950-908=42円
B社 : 利益=950-1,009=▲59円
A社は42円の利益がありましたが、、B社は赤字でした。
以上の結果を図5に示します。
管理がしっかりしている会社は原価が高くなる傾向
A社に比べてB社は、以下の特徴があります。
- 工程管理に専任者がいて、手順書や治具の整備、製造条件の記録や管理がしっかりできている。品質は安定し、製品の製造履歴(トレーサビリティ)も記録・保管している。
- 品質管理の人員、及び検査・測定機器が充実し、必要な個所はすべて社内で測定・評価できる。
- 製造技術の専任者がいて技術的に難易度の高い製品も製造条件を工夫して実現できる。
- 特殊な治具が必要な場合、治具を自社で設計できないため社外に頼まなければならない。
- 検査・測定機器が十分になく、社内で測定・評価できない項目がある。
- 製造履歴(トレーサビリティ)を記録・保管する体制がない。
対してA社は価格は低いのですが以下の弱い点があります。
製品によって適した仕入先が変わる
従って製品の要求精度、要求品質、技術的な難易度によって、適切な仕入先は変わります。
A社でも問題なく製造できる製品
難易度が低く、高度な工程管理、製造履歴管理、品質管理が必要でない製品の場合、最適な仕入先はA社です。こういった製品をB社に発注すれば製品は高くなります。
高くてもB社に発注すべき製品
技術的な難易度が高く、不良品が発生すれば重大な問題が起きる製品は、A社ではリスクが高いです。
安いからとA社に発注すれば、手順書が整備されていなかったり、重要な工程の工程管理が不十分だったりして思わぬミスや不良が起きるかもしれません。しかもトレーサビリティがとられていないため、問題が起きた場合、影響範囲を絞り込むことができません。
このような製品は、価格が高くてもB社に発注します。
つまりA社とB社の得意な製品は異なります。これを図6に示します。
市場価格
適正価格のもうひとつの考え方は市場価格です。この市場価格は需要と供給で決まります。例えば卵は市場価格が日々変わります。需要が増加し供給不足になれば価格は上昇します。製造業でも多くの工場でつくれるものは市場の影響を受けます。
製造業、中でも下請け企業の場合、景気が減速して受注不足に陥れば、少しでも固定費を回収するため、多くの企業は赤字でも受注します。その結果、市場価格は低下します。
しかし実際は発注先と長期的に取引していれば、景気が良くなった時に値上げが困難になるため極端な値下げはしません。
逆に景気が良くなり中小企業の多くが受注が一杯になれば、赤字でも受注する企業はなくなります。その結果、市場価格は上昇します。
短時間に見積を出すサービス
最近は三次元データがあれば見積金額を計算するシステムもあります。ミスミのAIプラットフォーム メビー(meviy)は、三次元データを送れば、板金、溶接、切削加工の部品の見積を1分で出してくれます。
多くの取引先がこういったサービスを利用すれば、将来はこれらがひとつの市場価格を形成するかもしれません。
自社のポジションは?
自社はA社でしょうか?
B社でしょうか?
自社に合った製品はどのようなものでしょうか?
そこで自社に原価の仕組みを構築し、製品毎の適正価格(適正な見積金額)を算出します。この価格が現在の自社の実力値です。この価格で受注しなければ必要な利益が確保できません。
失注が多い場合
「適正価格」で見積を出して失注が多ければ、競合がいくらで受注したのか調べます。競合と比べて自社の見積が明らかに高ければ、以下のいずれかが考えられます。
製造コストが高い
製造コストが高い原因は
- 製造工程が多い
- 製造時間が長い
- 設備や人の費用が高い
などが考えられます。製造工程の見直し、製造時間の短縮、ランニングコストの削減に取り組みます。
自社の間接製造費用、販管費の見直し
どの製品も競合よりも自社の適正価格が高い場合、間接部門や工場の経費、販管費が大きい可能性があります。自社の間接部門や事務の人員、工場の経費が適正か、削減できないか検討します。
例えば、売上が大きく減少すると、売上に対して間接部門の費用や販管費が高くなります。もし一時的な売上低下でなく、今後もこの売上が続くようであれば、それに合わせて間接部門や事務の体制を変えなければなりません。
これは決して簡単ではありませんが、かつて同じような売上だった時代があれば、その時の組織・体制を参考にし、削れるところはないか検討します。
自社に適した製品を受注できていない
A社でもできる製品の見積金額はB社は高くなります。B社に向いている製品はもっと難易度が高くA社に向いていない製品です。A社でできるような製品をA社と競合して価格を下げれば、B社の経営は苦しくなります。
ブラックボックス化
こういった競合との価格競争を避ける方法は「ブラックボックス化」です。
自社しかできない工程、取引先もわからない工程は取引先にとってブラックボックス化します。相見積が取れないため、その価格が適正かどうかも取引先はわかりません。
あるいは取引先が困っていたことを解決すれば、そのノウハウはブラックボックスにできます。そのためには取引先の困りごとをヒアリングし、それを自社で工夫して解決します。現場で創意工夫したことは自社の強みになります。その場合、カギとなるところは隠しておきます。
この適正価格に対し、工程や検査が追加されれば原価は上がります。ではいくら上がるのでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか?を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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【製造業の値上げ交渉】13. なぜ取引先はアワーレートが高いというのだろうか?
値上げ交渉では値上げの根拠を求められることがあります。
これについて【製造業の値上げ交渉】12. 取引先から値上の根拠を求められた。どうすればいいのだろうか?を参照願います。
そこで値上げの根拠の資料を持って行くと、資料を見て「アワーレートが高い」と言われることがあります。
このアワーレートは先期の費用に基づいて適切に計算したアワーレートです。
(自社のアワーレートの計算方法は【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?を参照願います。)
なぜ取引先はアワーレートが高いと言うのでしょうか?
このアワーレートについて取引先が誤解している可能性があります。
それは
- アワーレートは間接費を含まない
- 稼動率は100%
- 減価償却が終われば設備の費用はゼロ
これについて説明します。
1.アワーレートは間接費を含まないと思っている
これはアワーレートが「人や設備で直接発生した年間費用を人や設備の年間時間で割ったもの」と取引先が思っている場合です。
本コラムではアワーレートは「各現場の人や設備の直接製造費用に、分配した間接製造費用を加えたものを人や設備の年間時間で割ったアワーレート間」です。
このアワーレート間には、間接製造費用も含まれています。
具体的な計算例 アワーレート(人)
架空のモデル企業A社の例で説明します。
(A社の詳細は【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?を参照願います。)
A社 NC旋盤の現場
(アワーレートの計算方法は【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?で説明しました。)
アワーレート(人)の計算
直接製造費用
4人の労務費合計 1,672万円
間接製造費用を含んだアワーレート間(人)の計算
NC旋盤の現場の人の間接製造費用の分配は、544万円でした。従ってアワーレート間(人)は、
3,150円/時間で、間接製造費用を含めたアワーレート間(人)は、775円/時間増加しました。
注記)
本コラムでは、数字をわかりやすくするためにアワーレートは一桁目を四捨五入しています。実際に計算する際は正確な値を使用してください。
具体的な計算例 アワーレート(設備)
NC旋盤の現場の設備の費用は
- 設備償却費 : 100万円/台
- 電気代 : 23.2万円/台
- 設備(NC旋盤) : 計4台
間接製造費用を含んだアワーレート間(設備)の計算
NC旋盤の現場の設備の間接製造費用の分配は、544万円でした。従ってアワーレート間(設備)は、
1,470円/時間で、間接製造費用を含めたアワーレート間(設備)は、770円/時間増加しました。
人と設備が同時に作業する場合
NC旋盤の現場は人と設備が同時に作業するためアワーレートは、アワーレート(人)とアワーレート(設備)の合計になります。
直接製造費用のみアワーレート(人+設備)は
アワーレート(人+設備)=アワーレート(人)+アワーレート(設備)
=2,375+700=3,075円/時間
間接製造費用を含むアワーレート間(人+設備)は、
アワーレート間(人+設備)=アワーレート間(人)+アワーレート間(設備)
=3,150+1,470=4,620円/時間 (+1,545円/時間)
間接製造費用を含むことで、アワーレート間(人+設備)は1,545円/時間 増加しました。
取引先は何を現場のアワーレートとしているか
取引先に原価の知識があり、自社の工場のアワーレートが直接製造費用のみのアワーレートの場合、アワーレートを計算する基準が違います。そのため見積書に書かれたアワーレートが高すぎると言います。これは直接製造費用のみで原価を考えている可能性があります。
この時、どちらのアワーレートの計算方法が正しいのか、議論をしても水掛け論になってしまいます。
取引先が直接製造費用のみでアワーレートを計算している場合
その場合、直接製造費用のみのアワーレートで製造費用を計算に、別に間接製造費用を加えて原価とします。
直接製造費用と間接製造費用の比率を計算
そこで各現場の直接製造費用のみのアワーレートと、間接製造費用を含んだアワーレートの比率から、直接製造費用と間接製造費用の比率を計算します。
例えばA社 NC旋盤の現場の例を以下に示します。
- 直接製造費用のみのアワーレート(人+設備) : 3,075円/時間
- 間接製造費用を含んだアワーレート間(人+設備) : 4,620円/時間
比率は1.50でした。
直接製造費用を計算
A社 NC旋盤の現場のアワーレート(人+設備)は3,075円/時間
A1製品の製造時間 : 0.075時間
直接製造費用=直接製造費用のみのアワーレート(人+設備)×製造時間
=3,075×0.075=230.6円
直接製造費用のみで計算したA1製品の製造費用は230.6円でした。
間接製造費用を含んだ製造費用
間接製造費用を含んだ製造費用は、直接製造費用にこの比率をかけて計算します。
間接製造費用を含んだ製造費用=直接製造費用×比率
=230.6×1.5=345.9≒346円
直接製造費用のみのアワーレートは3,075円/時間です。A1製品の製造費用は230.6円でした。しかしこれには間接製造費用が入っていません。
間接製造費用は、先の計算から直接製造費用の50%なので115.4円でした。その結果、製造費用は直接製造費用と間接製造費用を加えた346円でした。このように説明して製造費用が正しいことを理解してもらいます。
2.稼働率が入っていない
もうひとつの可能性は、顧客がアワーレートを計算する際に稼働率を入れていないことです。実際の現場の1日は図5のようになっています。
1日現場にいる作業者でもその中で朝礼、会議といった付加価値を生んでいない時間があります。この時間も人件費は発生しています。この費用もアワーレートに入れなければ、アワーレートが低すぎてしまいます。
そこで本コラムではアワーレートを計算する際に稼働率を分母にかけます。
この稼働率は、年間就業時間に対し付加価値を生んでいる時間(稼働時間)の比率です。
A社の例では、稼働率を0.8としました。もし顧客が稼働率100%でアワーレートを計算していれば、その分アワーレートは低くなります。
A社 NC旋盤の現場では
直接作業者の稼働時間合計=2,200×4×0.8(稼働率)=7,040時間
稼動率100%では
直接作業者の年間時間合計=2,200×4×1.0=8,800時間
設備の年間時間も同じでした。
アワーレート(人+設備)=アワーレート間(人)+アワーレート間(設備)
=2,520+1,180=3,700円/時間 (▲920円/時間)
稼動率80%では4,620円/時間だったので、稼動率100%にすることで920円/時間低くなりました。
稼働率100%はありえない
稼動率は工場によりさまざまです。大量生産の工場は常に人や設備が稼働するようにして稼働率100%を目指します。それでも材料の供給が間に合わなかったり後工程が遅れたりして稼働率は100%にはなりません。多品種少量生産では、製品の切替えが頻繁に発生し、稼働率は大量生産の工場より低下します。
一方取引先が自社の工場のアワーレートを稼働率100%で計算することがあります。しかし生産していない時間も費用は発生しています。その分も見積に含めなければ赤字になってしまいます。
自社の工場の稼働率が現実に80%ならば、稼働率80%で計算した原価が「適正価格」です。
3.減価償却が終わっている
法定耐用年数を過ぎた設備の減価償却費はゼロです。そうなると設備の費用はランニングコストのみになってしまいます。
しかし本コラムではアワーレート(設備)に使用する設備の償却費は、将来の更新を考えて「実際の償却費 (購入金額を本当の耐用年数で割った金額)」を使用します。
A社 NC旋盤の現場の場合、購入金額1,500万円、本当の耐用年数15年のため、実際の償却費は100万円でした。
NC旋盤の現場の4台の設備が、すべて減価償却が終わっている場合、設備の費用はランニングコスト23.2万円のみです。その場合、アワーレート間(設備)は以下のようになります。
実際の償却費から計算したアワーレート間(設備)は1,470円/時間でした。決算書の減価償却費でアワーレート間(設備)を計算すれば、570円/時間も低くなりました。
これについては発注側、受注側どちらも誤解していることがが多いです。
しかし高額の設備を使用する工場では、設備の更新に多額の資金が必要です。更新の時点で「必要な資金が会社に内部留保されている」、「新たに借入できるだけの十分な自己資本とキャッシュフロー」のいずれかが必要です。減価償却が終わった設備でも更新まで考えれば、費用は決してゼロではないのです。
アワーレートは考え方によって違う
このようにアワーレートは計算する条件によって値が大きく違います。アワーレートは、どの条件で計算するのかで大きく変わります。
本コラムで述べた「稼働率を入れる」、「実際の償却費を使って計算する」は正しいのですが、これを納得してもらうには「なぜそうなのか」理由を理解してもらう必要があります。これはなかなか大変です。
取引先が納得しなければ、取引先が考える条件に合わせてアワーレートを変えます。
例えば、稼働率100%で稼働率80%と同じアワーレートになるように年間費用や時間を調整します。そして見積金額は変えないようにします。
原価は真実
本コラムで述べた原価は、決算書の数字を元にした真実です。
(ただし算出条件が変われば値も変わるため、唯一無二ではありません。)
A社 A1製品の製造原価は726円、販管費182円、販管費込み原価は908円です。これだけの費用が発生していることを前提に、必要な利益が得られるように交渉します。
ただし受注が少なければ、固定費の回収を優先して赤字でも受注することもあります。それでもA1製品は販管費も含めて908円の費用が発生していることは変わりません。
他にもアワーレート以外に販管費や利益が高いと言われることがあります。
販管費や利益が高いと言われる原因について【製造業の値上げ交渉】14. なぜ取引先は販管費が高い、利益が多いと言うのだろうか?を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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製造原価、アワーレートを決算書から計算する独自の手法です。中小企業も簡単に個々の製品の原価が計算できます。以下の書籍、セミナーで紹介しています。
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経営コラム ものづくりの未来と経営
人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中
ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?
経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
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【原価と見積の疑問】1.間接費用の分配とは?
工場で発生する費用には、直接製品を製造する人や設備で発生する直接製造費用の他、間接部門の人件費や工場の製造経費のように間接的に発生する間接製造費用があります。
間接製造費用はどうやって分配するのか?
個別原価を計算するためには、間接製造費用を各製品に分配しなければなりません。
間接製造費用は、原価の中で高い割合を占めます。間接製造費用の主なものは、
- 間接部門の人の費用
- 工場の製造経費
です。
A社の間接製造費用を図1に示します。
- 直接製造部門では
間接作業者や管理者 - 間接部門では
生産管理や品質管理 - また製造経費では
水道光熱費や修理費、家賃など様々な費用
があります。
間接作業者や間接部門は、直接製品を製造しません。つまりお金を稼いでいません。そのため、これらの費用は製品の売上で賄われます。
そして実際に製品をつくっているのは、直接作業者や製造設備です。つまり間接作業者や間接部門は、直接製造部門に支えてもらっているのです。(図2)
この間接製造費用はどうやって分配すればいいのでしょうか。
間接製造費用の分配
間接製造費用の分配1 製品に直接分配
ひとつの方法は、各製品の直接製造費用を計算し、この直接製造費用に何らかのルールで間接製造費用を分配する方法です。
原価計算の本には分配基準の例として、「直接材料費、直接労務費、直接製造費用、直接活動時間、機械稼働時間、生産量、売上高」がかかれています。
しかし直接材料費を基準にすれば、製品によって材料費の比率が異なると間接製造費用が変わってしまいます。
このようにそれぞれ一長一短があるため、本コラムは比較的問題の少ない直接製造費用を使用します。
本コラムでは、直接製造費用に対する間接製造費用の比率を間接費レートと呼びます。この間接費レートは決算書の直接製造費用と間接製造費用から計算します。
間接製造費用、製造費用は以下の式で計算します。
間接製造費用=直接製造費用×間接費レート
製造費用=直接製造費用+間接製造費用
=直接製造費用×(1+間接費レート)
間接製造費用の分配2 各現場に分配
間接製造費用を各現場に分配し、各現場の直接製造費用と間接製造費用からアワーレートを計算する方法です。
1) の製品に直接分配する方法では、すべての製品が同じ間接費レートになります。
もし間接製造費用が多い現場と少ない現場があれば、ひとつの間接費レートでは不十分です。
例えば、高額な設備が多い現場と作業者だけの現場があった場合、高額な設備の多い現場には間接製造費用を多く分配した方が適切です。
そこで、間接製造費用を各現場に分配します。そして現場毎の間接製造費用と直接製造費用の合計から、アワーレートを計算します。これを図3に示します。
各現場への間接製造費用の分配は、各現場の(1) 直接製造費用、もしくは(2) 直接製造時間に比例して計算します。
ただし、特定の現場でとても多く消費している費用があれば、その現場固有の費用とします。
(1) 直接製造費用に比例
直接製造費用が大きい現場は生み出す付加価値も高いため、間接製造費用をたくさん負担させるという考えです。
(2) 直接製造時間(人の稼働時間と設備の稼働時間の組合せ)に比例
直接製造時間が大きい現場は工場の資源(リソース)を多く使用するため、生み出す付加価値も高いと考えます。その分間接製造費用をたくさん負担させる考えです。
人の合計時間と設備の合計時間の組み合わせとは、
- 人の時間で分配する場合、無人加工の現場では人の加工時間はゼロです。そういった現場には設備の稼働時間で分配します。
- 設備の時間で分配する場合、設備がなく人だけで製造する現場では設備の時間がゼロです。その場合は人の稼働時間で分配します。
図4は、A社の各現場の稼働時間と間接製造時間の分配を示します。
どちらの分配ルールを採用するかでアワーレートは変わります。しかし、どちらが正解ということはないので、自社に合った方法を選択します。
間接製造費用も含めたアワーレート間は、
間接製造費用は大半が固定費です。固定費とはどのような費用でしょうか。
固定費と変動費、そして全部原価計算と直接原価計算については2.直接原価計算の方が良いと言われたが? を参照願います。
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【原価計算と見えない赤字】2.自動化とロボットの活用
設備の大きさによる原価に違いについて【原価計算と見えない赤字】1.高い設備は原価が高いのかで説明しました。
一方、今日では多くの設備がコンピューター制御化(NC化)され、起動ボタンを押せば自動で生産します。
この時、原価はどうなるのでしょうか。
この自動化・無人化に関し、以下の6点について述べます。
- 人と設備、段取と加工の組合せ
- 無人加工と有人加工の違い
- 無人加工中の作業者の費用
- 夜間かけっぱなしの場合
- 人をロボットに置き換えた場合
- 具体的な原価と利益
1. 人と設備、段取と加工の組合せ
人と設備が稼働する場合、どのように原価を計算するのでしょうか。
最初に図1に示すように製造費用を人と設備、段取と加工(製造)で分けて考えます。
図1で加工中の人と設備の組み合わせから
- 有人加工 (人と設備が同時に加工)
- 人のみ
- 無人加工 (加工は設備のみ)
この3つがあります。
無人加工の場合、段取は
内段取 : 設備を止めて段取
外段取 : 生産中に設備を止めずに段取
の2つがあります。
「人のみ」の現場で設備を一部使用する場合、設備の費用は、その現場の間接製造費用とします。そしてアワーレート間(人)の計算に入れます。
同様に「無人加工」の現場で一部人が関与する場合、人の費用はその現場の間接製造費用とし、アワーレート間(設備)の計算に入れます。
なお、本コラムで原価に段取費用を入れているのは、ロットの大きさが変わると原価も変わるためです。
ロットが少なくなれば1個当たりの段取費用が高くなり原価が上がります。これが原因で赤字になることもあります。
一方、大量生産で段取がほとんどない場合、段取費用は原価に入れません。その場合、段取は生産ロスと考えます。
2. 無人加工と有人加工の違い
有人加工 : 加工中、作業者が設備を常時操作する
無人加工 : 加工中、作業者は設備についていない
この違いを段取と加工に分けて説明します。
有人加工
【段取】
作業者は設備を止めて段取を行うため、人と設備の両方の費用が発生します。
【加工】
作業者は設備を常に操作するため、加工中も人と設備の両方の費用が発生します。
有人加工の場合、製造費用は人の費用と設備の費用の合計です。
人と設備の時間が同じであれば、アワーレートはアワーレート間(人)とアワーレート間(設備)の合計です。これをアワーレート(人+設備)と呼ぶことにします。
アワーレート間(人+設備)=アワーレート間(人)+間アワーレート(設備)
無人加工
【段取】
有人加工と同じです。
作業者は設備を止めて段取を行うため、人と設備の両方の費用が発生します。
【加工】
設備が自動で加工し、作業者は設備から離れます。加工中は設備の費用のみ発生します。
ただし無人加工での作業者の費用がゼロになるには、加工中、作業者は他の現場で「別のお金を稼ぐ仕事」をする必要があります。
「お金を稼ぐ仕事」とは「見積に入っているバリ取りや検査など」です。見積に入っていない検査や次の生産準備はお金を稼いでいません。
その場合は加工中も人の費用がかかると考えます。その場合、無人加工でも原価は有人加工と同じです。
設備が無人で加工を続けるには、材料の自動供給と製品の自動取出し(自動排出)の機能が必要です。
こういった機能がなく材料の供給と製品の取出しを作業者が行う場合はどうなるのでしょうか。
この時、作業者が複数の設備を担当することがあります。これが多台持ちです。
多台持ち
作業者が1人で複数の設備を担当することです。大量生産の工場でよく行われます。
1人で2台担当すれば2台持ち、3台担当すれば3台持ちと呼びます。以下は2台持ちの説明です。
【段取】
作業者は設備を止めて段取を行うため、人と設備、両方の費用が発生します。
【加工】
2台持ちの場合、作業者は2台の設備を担当します。
設備の費用は有人加工と同じですが、人の費用は1/2です。
A社のマシニングセンタ1(小型)の年間費用(実際の償却費)140万円です。これは正社員より低い金額です。
従って無人加工で人の費用がゼロになれば原価は大きく下がります。
2台持ちは人の費用が半分になります。有人加工より原価は低くなります。
一方、無人加工中作業者は他の現場で「別のお金を稼ぐ仕事」をする必要がありますが、これはなかなか難しいです。
実際は加工中作業者がその現場で設備の状態を監視したり、製品の検査や仕上げ作業を行ったりしています。
この場合、加工中の作業者の費用はどう考えたらよいでしょうか。
3. 無人加工の作業者の費用
この場合、無人加工中の作業者の費用は、設備の間接製造費用と考えます。
図5は、無人加工の設備が4台あり、2人の作業者が担当しています。
作業者は、設備の段取を順に行い、段取が完了すれば設備は無人で加工します。段取が終われば、作業者は次の段取の準備や完成品の品質確認を行います。
無人加工でも多くの現場はこのようにしています。
この場合、加工中も作業者の費用は発生します。ただし加工中作業者は複数の設備を担当し、作業者の費用がどの製品にどのくらい生じているのかわかりません。
そこで加工中の作業者の費用は、設備の間接製造費用とします。
アワーレート間(設備)は
図5の例では4台の設備に作業者が2名なので2台持ちと同じです。作業者の持ち台数が多くなれば、原価はさらに下がります。
作業者の費用は、加工中は設備の間接製造費用、段取中は直接製造費用です。
そこで作業者の日々の時間の中で段取時間と加工時間の割合が必要になります。
ただしこの比率を正確に調べるのは大変なので、数日間サンプルを取って代表値とします。これを図6に示します。
図6は設備が4台、作業者が2名の場合
作業者の段取時間と加工時間
段取 : 2,200時間 (50%)
加工 : 2,200時間 (50%)
設備は4台なので合計時間は
段取 : 2,200時間
加工 : 6,600時間
段取中は、人と設備の費用が両方発生するため、段取のアワーレートは、アワーレート間(人)とアワーレート間(設備)の合計です。
加工中は設備の費用のみです。ただし、人の費用は間接製造費用としてアワーレート間(設備)に含まれます。その結果
段取のアワーレート : 3,670円/時間 (2,610+1,060)
加工のアワーレート : 2,180円/時間
加工のアワーレートは低くなりました。
無人加工の設備は、帰る前に加工を開始し、夜間加工が終わったら設備は止まったままにする「かけ逃げ (又はかけ捨て)」ができます。
この場合の原価はどうなるのでしょうか。
4. かけ逃げ
かけ逃げの原価は、その現場が無人加工か、有人加工かで変わります。
図7に無人加工と有人加工の場合のかけ逃げを示します。
無人加工の場合
図7aの場合、元々無人加工なので、無人加工として原価を計算します。
かけ逃げのメリットは設備の稼働時間が長くなることです。かけ逃げの頻度が高ければ、年間の稼働時間は長くなります。
その結果、アワーレート(設備)が下がります。
年間の設備の操業時間の合計は
設備の操業時間合計=昼の操業時間合計+かけ逃げ時間の合計
有人加工の場合
有人加工でも「かけ逃げ」ができるタイミングがあればかけ逃げする場合、かけ逃げの間の加工費用は無人加工と同じです。
ただし、いつでもかけ逃げできるとは限らないため、原価は有人加工とします。
かけ逃げした分は「見えない利益」と考えます。
5. ロボットの導入
ロボットを導入して無人加工ができれば原価は下がります。
しかし、従来の産業ロボットは高価で安全フェンスのため広い場所も必要で、導入は容易ではありませんでした。
近年、スピードはそれほど速くないのですが、安価で安全フェンスも不要な協働ロボットが普及してきました。
こういったロボットを導入した場合、原価はどうなるのでしょうか。
500万円のロボットでも5年間使用すれば、年間のロボットの費用(実際の償却費)は100万円、パート社員と変わりません。
ただし協働ロボットは、スピードは遅いため人よりも時間は長くなります。
しかし、人は24時間働けませんが、ロボットは24時間働けます。ロボットは有休もとりません。
人は作業スピードが遅くなったり、トイレのために抜けたりしますが、ロボットは一定のスピードで動き続けます。
そこで現在の作業のままロボットを人と置き換えるより、スピードは劣っても24時間稼働できるロボットの特徴を生かして作業を見直しします。
ロボットを導入することで設備が長時間稼働できればアワーレート(設備)が下がり原価が低くなります。
ロボット化でどれだけ原価は下がるのでしょうか。
6. 有人加工・無人加工・2台持ち・ロボット化の具体的な比較
機械加工A社はA1製品をマシニングセンタ1(小型)で製造しました。
その場合の有人加工、無人加工、2台持ち、ロボット化の原価を比較します。
ロボットは
価格 : 500万円
耐用年数 : 5年
年間費用 : 100万円
としました。
(ロボットの法定耐用年数は、マシニングセンタ(金属加工機械)に取り付ければ、マシニングセンタの法定耐用年数10年が適用されます。今回は年間でフル稼働を想定し本当の耐用年数を5年としました)
この時のA1製品の製造費用と利益を図9に示します。
製造費用 利益
有人加工 : 350円 有人加工 : 90円
2台持ち : 240円 2台持ち : 230円
ロボット化 : 180円 ロボット化 : 300円
無人加工 : 130円 無人加工 : 360円
製造費用は
有人加工→2台持ち→ロボット化→無人加工
の順に低くなります。従ってロボット化の原価低減効果は高いことがわかります。
樹脂成形の有人加工と無人加工
樹脂成形の場合、ローダー付き成形機は無人加工ができます。
一方、毎回金型に部品をセットするインサート成型の場合は有人加工です。
有人加工と無人加工で原価はどれだけ違うのでしょうか。
B社 180トン成形機の無人加工と有人加工のアワーレートは
【段取】 【加工】
無人加工 : 2,950円/時間 無人加工 : 930円/時間
有人加工 : 2,870円/時間 有人加工 : 2,870円/時間
有人加工の場合、人の費用があるため加工のアワーレートは無人加工よりも大幅に高くなります。その結果、B1製品の原価を図10に示します。
製造費用 利益
有人加工 : 48.1円 有人加工 : ▲37.2円
無人加工 : 15.9円 無人加工 : 1.2円
加工のアワーレートは、有人加工は無人加工の約3倍のため、有人加工の製造費用は大幅に増加します。
その結果、無人加工では1.2円の利益が有人加工は37.2円の赤字でした。
つまり有人加工を無人加工にできれば大幅なコストダウンになります。
逆に、トラブルが起きて作業者が常に製品をチェックし、無人加工の現場が有人加工になっている場合、原価は大幅に増えています。
早急にトラブルを解決して無人加工にしなければ大きな損失になります。
夜間無人加工の原価
ワークの着脱まで自動化し、完全に無人加工ができれば、夜間無人加工できます。
そうすれば年間の稼働時間が大幅に増えます。アワーレート(設備)が低くなり原価が大きく下がります。
夜間無人加工をするためには、材料の自動供給と製品の自動取出しが必要です。例えば
- NC旋盤 バー材自動供給装置やローダー、ロボット
- マシニングセンタ パレットチェンジャー
- 射出成形機 自動取出し機(ローダー)
- プレス機 コイル材供給装置
などが必要です。
またワイヤーカット放電加工機は、最初から夜間無人加工を想定した設備です。
そこで図11にNC旋盤を夜間無人加工にした場合を示します。
夜間無人加工により
設備の稼働時間 : 2,200時間 → 6,800時間
3倍以上増加しました。その結果
加工のアワーレート(設備) : 1,720円/時間 → 1,020円/時間
アワーレートが大きく減少しました。
段取のアワーレートも下がり、人と設備合わせて2,930円/時間になりました。
夜間無人加工、無人加工、2台持ちの製造費用と利益を比較したものを図12に示します。
製造費用 利益
有人加工 : 350円 有人加工 : 90円
無人加工 : 130円 無人加工 : 360円
2台持ち : 240円 2台持ち : 230円
夜間無人加工 : 90円 夜間無人加工 : 410円
夜間無人加工により製造費用は90円になりました。従って夜間無人加工は高いコストダウン効果があります。
一方、ワイヤーカット放電加工機のように最初から夜間無人加工を前提にした設備は、夜間無人加工をしなければ原価が大きく上がってしまいます。
では製造ロットが変わると原価はどれだけ変化するのでしょうか?
ロットの減少によるコストアップについては【原価計算と見えない赤字】3.ロットの減少によるコストアップを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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設備・現場のアワーレートの違いが容易に計算できます。
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経営コラム ものづくりの未来と経営
人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中
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【原価計算と見えない赤字】1.高い設備は原価が高いのか
【原価計算と見積の基礎】では、原価計算、アワーレート計算の基礎と見積金額の計算について説明しました。
【原価計算と見えない赤字】では、この原価を活用して現場で発生する損失を金額で表示し、見える化します。
例えば、大きな設備と小さな設備で原価はどのように変わるのでしょうか?
設備の大きさの違いによる原価に関して、以下の5点について述べます。
- アワーレート(設備)と設備の費用
- 設備の違いによって現場を分けるかどうか
- 設備がラインになっている場合
- アワーレート(設備)の間接製造費用の影響
- 具体的な原価の違い
1. アワーレート(設備)と設備の費用
アワーレート(設備)は、
本コラムでは設備の年間費用は、決算書の減価償却費でなく実際の償却費を使います。ランニングコストには以下のものがあります。
設備の購入費用 : 実際の償却費
ランニングコスト : 光熱費、消耗品費、修理代、保守料など
図1
ランニングコスト
ランニングコストは設備を動かすのに必要な電気代など光熱費、消耗品費、修理代、保守契約費用などです。
この中で設備の差が大きいものをアワーレート(設備)に入れます。今回は電気代のみランニングコストに入れました。
それ以外の費用は金額が少なく設備毎の差も小さいので、間接製造費用として各現場に分配しました。
設備の年間費用が高ければアワーレート(設備)も高くなります。
では設備によって現場を分けた方がいいのでしょうか。
2. 違う設備は現場を分けた方がいいか
これは設備の機能・能力で判断します。
設備の価格やランニングコストが違っていても、同じ加工であれば生み出す付加価値も同じです。従って、同じ現場にします。
A社の場合
機械加工A社は、小型のマシニングセンタ4台と大型のマシニングセンタ4台があります。(図2)
この4台は導入時期が異なり、減価償却が残っている設備もあります。ただし加工能力はこの4台の間で差はありません。
大型のマシニングセンタは、大きな部品が加工できるため単価の高い製品が受注できます。
一方、小型のマシニングセンタよりスピードが劣るため、小さな部品は原価が高くなります。
そのため現場はこの2つを使い分けしています。そこで小型のマシニングセンタと大型のマシニングセンタは別の現場とします。
ただし同じ製品を、ある時は大型のマシニングセンタ、ある時は小型のマシニングセンタと、現場が使い分けしていなければ同じ現場にします。
つまり、現場を分けるかどうかは「実際に使い分けしているかどうか」です。
では、複数の設備がラインになっている場合はどうでしょうか。
3. 設備がラインになっている場合
図3aは、複数の設備を連結してひとつの製造ラインになっています。設備の配置は固定されラインの構成を変えません。この場合、全体を1つの設備と考えます。
逆に設備を常に移動してライン構成が頻繁に変わる場合は、ひとつひとつの設備をそれぞれの現場とします。
違いはサイクルタイム
これはサイクルタイム(タクトタイム)〈注1〉によっても変わります。
図3aの場合、各設備のサイクルはライン全体で同期され、ライン全体のサイクルタイム(タクトタイム)は1分でした。この場合、ライン全体で1つの現場と考えます。
対して図3bの場合、各設備のサイクルタイムはバラバラです。工程の順序も常に工程1→工程2→工程3→工程4になるとは限りません。
この場合は、それぞれを別々の現場と考えます(本当は各設備のサイクルタイムがバラバラだと仕掛品が増えて望ましくないのですが)。
〈注1〉
サイクルタイムとタクトタイムの定義は、企業や人によって異なります。本コラムでは以下のように定義します。
【サイクルタイム(CT:Cycle Time)】
1つの工程の開始から完了まで1サイクルにかかる時間のことです。
【タクトタイム(TT:Takt Time)】
ピッチタイムとも呼ばれ、1つの製品の製造にかかる時間です。
ラインで生産する場合は、ライン全体のサイクルタイムです。ラインを構成する設備のサイクルタイムが完全に一致することはめったにありません。
ラインの中にはサイクルタイムの短い設備や長い設備があります。そこで、ラインのタクトタイムはラインを構成する設備の中で最も長いサイクルタイムになります(図4 参照)。
サイクルタイムのばらつきの分、ラインの生産性は低下します。これは以下の式で計算します。
例えば、3台の設備でラインを構成し、各設備のサイクルタイムは
設備1 : 8分
設備2 : 9分
設備3 : 10分
の場合、ラインのタクトタイムは10分です。ラインの効率は
各設備のサイクルタイムのばらつきを縮めない限り、現状では10%のロスが必ず発生します。これは複数の設備に工程分割すれば必ず発生するロスです。
実際は、アワーレートの計算には直接製造費用だけでなく、間接製造費用も含まれます。
間接製造費用はアワーレート(設備)にどのように影響するのでしょうか。
4. 間接製造費用の影響
この間接製造費用を現場に分配する場合、様々な方法があります。本コラムは、
- 現場の直接製造費用に比例
- 現場の直接製造時間に比例
この2つを使います。
この間接製造費用を含めたアワーレートがアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)で、これは以下の式で計算します。
では設備の大きさによって、原価はどう変わるでしょうか。具体的な数値で検証します。
5. 具体的な原価の違い
機械加工A社
図5に示すA社の2つの現場(マシニングセンタ1(小型)とマシニングセンタ2(大型))のアワーレート(設備)や原価を比較します。
マシニングセンタ2(大型)の1台の年間費用280万円はマシニングセンタ1(小型)140万円の2倍でした。アワーレート(設備)も2倍になりました。
ここでは、間接製造費用を各現場の直接製造費用に比例して分配しました。
これは「直接製造費用の高い現場は付加価値の高い製造をするため、間接製造費用を多く負担する」考え方です。
その結果、分配した間接製造費用は、
マシニングセンタ1(小型) : 145万円
マシニングセンタ2(大型) : 185万円
でした。
間接製造費用を分配したアワーレート間(設備)は、
マシニングセンタ1(小型) : 1,720円/時間
マシニングセンタ2(大型) : 2,850円/時間
1.7倍に差は縮みました。
この違いが原価にどう影響するのでしょうか。A社 A1製品の原価を図6に示します。
A1製品は
製造費用
マシニングセンタ1(小型) : 380円
マシニングセンタ2(大型) : 470円 (+90円)
利益
マシニングセンタ1(小型) : 50円
マシニングセンタ2(大型) : ▲60円
マシニングセンタ1(小型)では50円の利益が、マシニングセンタ2(大型)では60円の赤字になりました。このように大きな(年間費用の高い)設備は原価が上がります。
実際マシニングセンタ2(大型)は製造費用が90円増えました。しかし、この90円の多くは固定費(実際の償却費)です。つまり赤字でも本当にお金が出ていくわけではありません。
もし、マシニングセンタ2(大型)でも加工できる製品があり、マシニングセンタ2(大型)が空いていれば、マシニングセンタ2(大型)で加工すべきです。
そうすれば原価計算上は赤字でも会社の利益は増えます。この点は誤解する現場の人も多いので注意します。
樹脂成形加工B社
B社は大きさの異なる50トンから450トンまでの射出成形機があります。
一般的には樹脂成形は成形機の大きさでアワーレートを変えます。顧客も同様に成形機の大きさに応じて見積を査定します。そこで大きさの異なる4種類の成形機のアワーレートを計算します
4台の成形機の年間費用とアワーレートを図7に示します。
450トンの成形機1台の年間費用380万円は、50トンの成形機70万円の5.4倍でした。
年間費用から計算したアワーレート(設備)も450トンの成形機は700円/時間、50トンの成形機の5.4倍でした。
小型の成形機も大型の成形機も、電気代を除けば工場で消費する経費は大きく変わりません。そこで、間接製造費用を各現場の直接製造時間に比例して分配しました。
これは「直接製造時間の多い現場はそれだけ工場のリソースを多く使用しているため、間接製造費用を多く負担する」考え方です。
間接製造費用を分配したアワーレート間(設備)は、
50トン : 830円/時間
1850トン : 930円/時間
280トン : 1,190円/時間
450トン : 1,400円/時間 (50トンの1.7倍)
でした。
450トンの成形機のアワーレート間(設備)は、50トンの成形機の1.7倍まで差が縮みました。
この違いは、原価にどう影響するのでしょうか。B1製品の原価を図8に示します。
B1製品は
製造費用
50t : 14.1円
180t : 15.9円 (+1.8円)
280t : 20.2円 (+6.1円)
450t : 23.7円 (+9.6円)
利益
50t : 3.3円
180t : 1.2円
280t : ▲4.0円
450t : ▲8.1円
50トンでは3.3円あった利益が、450トンでは8.1円の赤字になりました。ただし、この8.1円の大半は固定費です。赤字でも本当にお金が出ていくわけではありません。
もし450トンの成形機が空いていて、450トンの成形機で製造できる製品があれば、450トンの成形機で製造すべきです。そうすれば原価は赤字でも会社の利益は増えます。
このように設備毎の原価の違いを計算できました。
では設備を自動化すれば原価はどう変わるでしょうか?
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ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
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経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
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【原価計算と見積の基礎】6.設備のアワーレートの計算方法(2)
【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)ではアワーレート(設備)の計算に必要な減価償却費について説明しました。
ここではアワーレート(設備)の具体的な計算について説明します。
アワーレート(設備)の計算
アワーレート(設備)の計算に使用する設備の年間費用は、実際の償却費とランニングコストです。アワーレート(設備)の計算は以下の式です。
複数の設備がある場合、複数の設備を平均した現場の平均アワーレート(設備)を計算します。
A社 マシニングセンタ1(小型)の現場の場合
A社のマシニングセンタ1(小型)の現場の設備を(図1)に示します。
計算を簡単にするため4台とも
購入価格 : 2,100万円
ランニングコスト : 18.4万円
年間操業時間 : 2,200時間
稼働率 : 0.8
実際の耐用年数 : 15年
とします。実際の償却費は
現場の平均アワーレート(設備)は
マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート(設備)は900円/時間でした。
4台の設備は導入後、それぞれ4年目、8年目、11年目、12年目でした。
決算書の減価償却費は
4年目 : 215万円
8年目 : 138万円
11年目 : 0円
12年目 : 0円
従って減価償却費から計算したアワーレート(設備)は
減価償却費から計算したマシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート(設備)は600円/時間でした。
24時間稼働した場合
人は24時間働けませんが、設備は24時間稼働できます。24時間稼働すれば稼働時間が長くなり、アワーレート(設備)は低くなります。
A社のマシニングセンタ1(小型)を24時間稼働させた結果、
年間操業時間 : 2,200時間 → 6,000時間
年間の電気代 : 18.4万円 → 50.2万円
年間の電気代は50.2万円に増加しました。アワーレート(設備)は
電気代は増えましたが稼働時間が大幅に増えたため、アワーレート(設備)は
昼勤のみ: 900円/時間
24時間 : 400円/時間
昼勤のみの44%になりました。高価な設備はアワーレート(設備)が高くなりますが、24時間動かせばアワーレート(設備)を低く抑えられます。
年に半分しか稼働しない場合
逆に設備を動かさなければアワーレート(設備)は上昇します。
マシニングセンタ1(小型)の現場で、購入11年目と12年目の設備が半分しか稼働しない場合(図2、図3)
アワーレート(設備)は以下のようになります。
アワーレート(設備)は1,200円/時間、約1.3倍になりました。
将来更新する設備は使わなくても費用が発生しています。そのため使わない時間が長ければアワーレート(設備)は高くなります。
高い設備と安い設備がある場合
価格の高い設備と低い設備は、アワーレート(設備)が違うのでしょうか。
A社のマシニングセンタ1(小型)の現場で、高性能な設備(例えば5軸マシニングセンタ)を1台導入した場合を考えます。この設備は、複雑な加工ができる反面、価格が4,200万円と高価でした。
図4に示すマシニングセンタ1(小型)の現場で購入4年目の設備が4,200万円の場合
4,200万円のマシニングセンタは
実際の償却費 : 280万円 (2倍)
マシニングセンタ単体の
アワーレート(設備) : 1,700円/時間
それまでの2倍近くになります。そのため現場の平均アワーレート(設備) は、1,100円/時間 になり、200円/時間上昇しました。その分見積も高くなります。
高価な設備は価格に見合った付加価値を生むことができれば問題ありません。
しかし、従来の設備と同じ付加価値しか生まなければコストアップになってしまいます。
価格の高い設備は原価が高くなる?
4,200万円のマシニングセンタと2,100万円のマシニングセンタでは、アワーレート(設備)は異なります。
つまり価格の高い設備で製造すれば原価も高くなります。
そのため単価の低い加工は、安い設備を使うように指示する管理者もいます。では安い製品は高い設備を使うべきではないのでしょうか。
アワーレート(設備)の主な違いは、実際の償却費です。実際の償却費はすでに過去に払ったお金です。例え高い設備を使っても新たにお金が出ていくわけではありません。高い設備も使わなければお金は稼ぎません。
つまり設備が高くても、どんな仕事でも入れて設備を動かした方が利益は増えるのです。
そこで設備の価格が違っても同じ能力であれば同じ現場と考えます。そしてその現場の平均アワーレート(設備)を使用します。そうすればどの設備を使用しても原価は同じです。
設備を増やしたらどうなるのか?
設備を増やせば、その分、減価償却費・実際の償却費は増えます。それに応じて受注を増やさなければお金は増えません。
つまり設備を増やすということは、工場全体の費用を増やすことです。その分受注を増やして設備の稼働率を維持しなければなりません。設備が増えても受注が増えなければ、設備の稼働率が下がり原価が上昇します。
一方、測定器のように直接生産しない設備を増やせば、アワーレート(設備)が上昇します。そして工場のコスト競争力は弱くなります。それでも必要であれば測定機は入れなければなりません。その分現場は高コストになっていくので、より付加価値の高い受注を増やさなければなりません。
間接的に使用する設備を増やすとアワーレート(設備)はどうなる?
現場にはボール盤やグラインダーのように日常の生産には使用せず、部品の修正や治具の作成に使用する設備もあります。(図5)
常時使用されて付加価値を生む設備に対して、これらは生産をサポートする設備です。本コラムはこれを「補助的に使用する設備」と呼びます。
補助的に使用する設備は、使用頻度が低く更新期間も長いため、その費用はアワーレート(設備)には入れません。ただし、高額でしかも短期間に更新する設備の場合、その設備の実際の償却費を設備の年間費用に加えて、アワーレート(設備)を計算します。
例えば、図6のマシニングセンタ1(小型)の現場で、検査のため500万円のデジタルマイクロスコープを導入しました。デジタルマイクロスコープの実際の耐用年数は10年でした。このデジタルマイクロスコープはマシニングセンタの現場のみで使用します。
そこでデジタルマイクロスコープの実際の償却費50万円/年を、マシニングセンタ1(小型)の現場の間接製造費用とします。
間接設備を含む平均アワーレート(設備)の計算は以下の式です。
(設備の年間費用合計は、実際の償却費+ランニングコストの合計)
アワーレート(設備) : 900円/時間 → 970円/時間
アワーレート(設備)は70円/時間増加しました。
どこまで細かく計算するのか? 設備のランニングコスト
設備のランニングコストには図7のようなものがあります。
その内訳は
- エネルギーコスト
電気、ガス、水道など水道光熱費 - 消耗品
オイル、クーラントなど液体
二酸化炭素、アルゴン、窒素ガスなど気体
ウェス、刃物、工具など固体 - 修理・保守費用
修理代、保守契約などサービス費用
これらの費用はどの設備でどれだけ発生したのか正確にはわかりません。そこで間接製造費用として、他の工場の経費と共に各現場に分配します。
ただし、設備によっては特定の費用がとても高いことがあります。その場合、その費用はその設備の直接製造費用としてアワーレート(設備)の計算に入れます。例えば
- ヒーターがあるため消費電力がとても大きい設備。あるいは射出成型機など設備の大きさで消費電力が変わりアワーレート(設備)にも影響する場合。
- 窒素、二酸化炭素やアルゴンガスなどのガスを多く消費する設備。
- 食品製造設備のように終業後洗浄のため多量の水を使用する設備。
- 刃物やオイルなどの特定の消耗品の使用量が多い設備。
- 多額の修理費が発生する設備。
- 多額の修理費に備えて毎年保険をかけている設備。又は高額な保守契約をメーカーと締結している設備。
これらの費用は、その設備、あるいは現場固有の費用として、アワーレート(設備)の計算に入れます。
人と設備以外の費用、間接製造費用と販管費の計算は、書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書【基礎編】」で詳しくご説明しております。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
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【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)
【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法ではアワーレート(人)の計算について説明しました。
ここではアワーレート(設備)の計算について説明します。
アワーレート(設備)の計算式
第3章で説明したアワーレート(人)の計算式は以下の式でした。
アワーレート(設備)も同様に設備の年間費用を「年間操業時間〈注1〉×稼働率」で割って計算します。
〈注1〉アワーレート(人)の場合、就業時間でしたが、設備を「就業」とは言わないので操業時間としました。意味は同じです。
設備の年間費用は、設備の購入費用と年間のランニングコストです。
この設備の購入費用は、減価償却費として計上されています。
この減価償却費はどのような費用でしょうか。
減価償却費とは?
設備を購入した場合、その費用は耐用年数で分割して減価償却費として毎年計上されます。図1では、2,100万円の設備を購入し、耐用年数は10年でした。
この場合、毎年210万円が費用として計上されます。(定額法の場合)
計上される費用とお金の動き
最初の年は設備を買ったため、2,100万円お金が出ていきました。
しかし費用として計上されるのは、減価償却費210万円のみです。
従って会社のお金は、その差額1,890万円分マイナスします。(キャッシュフローがマイナス1,890万円) これを図2に示します。
2年目以降はお金がプラス
2年目以降は、もうお金は出ていきません。しかし毎年減価償却費210万円が計上されます。支出がないのに210万円費用が計上されるため、お金は210万円増えます。(キャッシュフローがプラス210万円)
このように設備投資は、決算書の費用と実際のお金の動きが異なります。
どうしてこのようなことをするのでしょうか。
減価償却の考え方
これは会社の起源となった大航海時代を考えるとわかりやすいです。
胡椒などの香辛料はヨーロッパでは採れません。そのため、かつては東南アジアや中国からシルクロードを経由して運ばれ、極めて高価なものでした。
しかし16世紀に入るとヨーロッパから東南アジアへの貿易航路が開かれました。
当時の貿易航海は、多額のお金が必要な一大事業でした。そのため複数の資産家がお金を出して会社をつくって事業を行いました。
当初は1回の航海が終わると、会社を清算して出資者にお金を分配しました。しかし次も航海は行います。毎回会社を清算していては非効率です。
そこで一度航海が終わっても会社を清算せず、出資金は株式として残し事業を継続しました。これが株式会社の始まりです。
船の費用
ここで船の費用を考えてみます。
船は最初に購入しますが、その後何回も航海に使えます。船の費用をすべて1年目の費用にすると、1年目の航海は大きな赤字になります。
図4では、1年目は経費1億円で売上は4億円でした。しかし船の費用10億円あるため、収支はマイナス7億円でした。
対して2年目以降は船の費用はゼロです。そのため収支はプラス3億円でした。
船は10回の航海に使えるとします。そこで船の費用を10回の航海に分けて費用とした方が利益を適切に計算できます。これを図5に示します。
図5では、船の費用は毎年1億円です。収支は1年目からプラス2億円になります。
減価償却とは資産の価値が減少すること
これは航海に1度出る度に船が痛み、1億円ずつ価値が減っていくことです。
この事業を続けるには、毎年1億円ずつ10年間お金を貯めて、11年目には10億円で新たに船を買わなければなりません。これが減価償却費の意味するところです。〈注2〉
一方、減価償却費があると、毎期の利益と現金の動きが合わなくなります。利益が出ていても会社にお金があるとは限らないのです。
〈注2〉実際は大航海時代は、まだ固定資産や減価償却費の概念はありませんでした。
減価償却費が普及したのは、19世紀イギリスで蒸気機関車が発明され、鉄道が普及したためでした。鉄道は多額の初期投資が必要なため、初期投資した年は多額の赤字が発生します。それでは株主に利益を分配できないことから減価償却という概念が生まれました。
ただ固定資産の損耗という考え方は、船で考えるとわかりやすいので、貿易航海を例に説明しました。
財務会計の減価償却は税法に従う
従って減価償却の金額によって利益は変わります。
毎期の減価償却を企業が自由に決めることができれば、企業が自由に利益を増やしたり減らしたりできます。
これは税務署には都合が悪いため、減価償却については以下の2点が税法で決められています。
耐用年数
耐用年数(法定耐用年数)は、設備の種類に応じて税法で決められています。表1に国税庁の定める法定耐用年数の一部を示します。
表1 法定耐用年数の例
設備の種類 | 細目 | 耐用年数(年) | プラスチック製品製造業用設備 | 8 |
---|---|---|
金属製品製造業用設備 | 金属被覆及び彫刻業 又は打はく及び金属製 ネームプレート 製造業用設備 |
6 | その他の設備 | 10 | はん用機械器具製造業用設備 | 12 | 生産用機械器具製造業用設備 | 金属加工機械製造設備 | 9 | その他の設備 | 12 |
この法定耐用年数は、設備の区分が粗く、使用条件の違いも考慮していません。
実際は同じ設備でも、過酷な使い方をする場合とそうでない場合、1日24時間稼働と昼勤のみの場合で劣化は大きく違います。そのため法定耐用年数まで持たない設備もあれば、法定耐用年数よりずっと長く使える設備もあります。
設備でも金額が低いものは1年で償却(一括償却)されます。また設備以外に建物やソフトウェアも減価償却します。しかし土地は劣化しないので減価償却をしません。
定率法と定額法
減価償却の方法は、図6に示すように、毎年一定額を償却する定額法と、毎年一定率を償却する定率法があります。
どちらを採用するかは企業が前もって選択します。定率法を選択すればすべて定率法、定額法を選択すればすべて定額法です。(ただし建物はいずれの場合も定額法です。)
図6の場合
設備 : 2,100万円
法定耐用年数 : 10年
定額法 : 毎年210万円
定率法 : 1年目420万円、2年目336万円と年々減少
設備の劣化という点で考えれば定額法が適切です(海外は定額法が一般的)。しかし利益が多く出ている企業は、できるだけ早く減価償却をして利益を減らし、支払う税金を少なくしたいと考えます。
また毎年設備投資を行うと、定額法の場合、年々減価償却費が増えて利益を圧迫します。
定率法ならば減価償却費は2年目以降減少するため、こういったことが起きにくくなります。
そのため定率法を選択する中小企業が多いです。
一方大企業と違い、中小企業は減価償却をしなくても違法でありません。利益が出なければ無理に減価償却をしなくてもよいのです。ただし減価償却をしないで利益を増やして決算をよく見せることは、金融機関に対してはマイナスです。
アワーレート(設備)に減価償却費を使用する問題
アワーレート(設備)の計算に、この減価償却費を使用する場合、以下の問題があります。
- 定率法の場合、減価償却費が年々減少する
- 法定耐用年数を過ぎればゼロ
- 設備の更新を考えると
図4-6に示すように定率法の減価償却費は年々減少します。そしてアワーレート(設備)も年々低くなります。それでも利益は出ます。
法定耐用年数を過ぎて設備を使用できれば減価償却費はゼロです。アワーレート(設備)はさらに低くなります。
設備を更新すると新たに減価償却が発生し、アワーレート(設備)が高くなります。
減価償却が終わった設備が、その後は未来永劫使えるならアワーレート(設備)が低くても問題ありません。
例えば、現場で補助的に使っているボール盤やグラインダーなどは壊れない限り何十年も使用できるでしょう。
しかし、日常の生産に使用している設備は徐々に劣化します。そしていつか更新時期が来ます。最近の設備は制御にコンピューターや電子回路を使用するものも多く、コンピューターや電子回路は10~15年で寿命が来ます。
そしてその頃には補給部品もなくなります。 (これはメーカーによります。20年以上補給部品を供給するメーカーもあれば、10年未満でなくなるメーカーもあります。)
減価償却が終わった設備を更新すれば、新たに減価償却費が発生します。減価償却が終わってアワーレート(設備)を低くしていた場合、アワーレート(設備)を高くしなければ赤字になってしまいます。
しかし設備を更新したからといって、価格を上げることができるでしょうか。
更新を考慮した正しい設備の費用
こういったことを避けるためアワーレート(設備)に使用する設備の費用は、購入金額を本当の耐用年数で割った金額を使用します。これを本コラムは「実際の償却費」と呼びます。
例えば図6の設備は法定耐用年数が10年ですが、A社では、実際は15年くらい使用します。
そこで実際の償却費は
この140万円でアワーレート(設備)を計算すれば、設備を更新した後も同じアワーレート(設備)になります。
ただし、実際の償却費からアワーレート(設備)を計算した場合、問題がひとつあります。
それは、設備購入直後は実際の償却費より、決算書の減価償却費の方が高いことです。減価償却費の方が高いため、利益が低くなります。図7では、
実際の償却費 : 140万円
減価償却費(1年目) : 420万円
差額の280万円分利益がマイナスします。場合によってはこのために会社が赤字になるかもしれません。ただし、減価償却費420万円は、実際は現金の支出がない費用です。従って会社に残るお金はどちらも変わりません。
耐用年数に達したら更新に必要なお金がなければならない
この減価償却費は現金の支出のない費用です。そのため減価償却費の分だけ会社にお金が残ります。
図8に示すように毎年減価償却費でプラスしたお金を貯めていけば、設備が耐用年数に達した時、設備の購入金額分のお金が会社に残ります。
このお金で設備を更新します。
借入をして設備を導入した場合は、減価償却費でプラスになったお金で借入金を返済します。設備の更新が来れば、借入金の返済が終わり、新たな借入ができるようにします(実際は借入金の返済期間は耐用年数より短いため、返済にはもっとお金が必要です)。
減価償却が進むと安く受注しても利益が出る
注意しなければならないのは、減価償却が進むと会社全体の製造原価が下がり、「受注金額が低くても利益が出る」ことです。
顧客から価格引き下げの要求が厳しい場合、利益が出ているので、まだ値下げできるように思えます。しかし値下げを続ければ、次の設備の更新に必要なお金が残りません。しかも多くの工場では、そういった設備は1台ではありません。
例えば、図9の例は設備が4台あり、導入から14年目が1台、12年目が2台、11年目が1台、全て減価償却が終わっています。
4台はそれぞれ
1年後 : 設備1が15年目
3年後 : 設備2、3が15年目
4年後 : 設備4が15年目
になり、順に更新時期を迎えます。
自己資金で設備を更新する場合、今年の時点で8,400万円の内部留保がなければなりません(借入で購入する場合は、新たに借入しても返済できる利益が今年の時点で必要です)。
昨今、中小企業(製造業)の廃業の原因のひとつに設備の老朽化があります。
理由は厳しい値下げ要請に応え続けた結果、利益が減少して更新に必要な内部留保が残らなかったためです。
これを避けるには中期経営計画に設備の更新時期と必要な資金を盛り込んで、計画的に内部留保を積み上げます。
この設備の償却費を使用してアワーレート(設備)はどうやって計算するのでしょうか。
具体的なアワーレート(設備)の計算は【原価計算と見積の基礎】6.設備のアワーレートの計算方法(2)で説明します。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
中小企業でもできる簡単な原価計算のやり方
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【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法
【原価計算と見積の基礎】2.製造原価の計算方法(1)では工場で発生する必要と製造原価の構成について
【原価計算と見積の基礎】3.製造原価の計算方法(2)では間接製造費用と販管費、見積金額の計算について説明しました。
ここではアワーレート(人)の計算について説明します。
アワーレート(人)は稼働率を入れて計算
アワーレート(人)とは、1時間あたりの人の費用です。
これは時給とは違うのでしょうか?
アワーレート(人)の計算
アワーレート(人)は、人の年間費用を1年間の稼働時間(実際にお金を稼いでいる時間)で割って計算します。
1年間の稼働時間は、年間の就業時間に稼働率をかけて計算します。
従ってアワーレート(人)の計算は以下のようになります。
つまりアワーレート(人)は、稼働率の分、時給より高くなります。
A社 正社員Aさんのアワーレート(人)
A社の正社員Aさんの費用とアワーレート(人)を図1に示します。稼働率は80%とします。
Aさんの支給額は月20.23万円〈注1〉賞与含めて15か月分で303.5万円でした。
社会保険料の会社負担分は303.5万円の16%、49万円でした。
〈注1〉本コラムはできるだけ区切りがいい数字になるように金額を決めています。そのため、現実の費用と比べると高すぎる、あるいは低すぎることがあります。
Aさんの年間費用は
年間費用=20.23×15×(1+0.16)
=352 万円
Aさんのアワーレートは、
A社 パート社員Hさんのアワーレート(人)
パート社員Hさんの時給は、960円/時間、年間費用は115.2万円でした。(図2)
アワーレート(人)は、稼働率が0.8のため、Hさんのアワーレート(人)1,200円/時間でした。
正社員Aさんのアワーレート(人) : 2,000円/時間
パート社員Hさんのアワーレート(人) : 1,200円/時間
時給960円のHさんのアワーレート(人)は、稼働率0.8で割ったため1,200円です。
なぜアワーレート(人)の計算に稼働率をかけるでしょうか?
この稼働率は何を意味するのでしょうか?
稼働率の意味するところ
稼動率の意味は、企業や書籍により様々です。本コラムは、稼働率を「就業時間に対し付加価値を生んでいる時間(稼働時間)の割合」とします。
例えば、ある作業者の1日は図3のようになっていました。
この1日は以下のように分けられます。
【付加価値を生んでいる時間】
- 段取時間
- 生産時間
【付加価値を生んでいない時間】
- 朝礼
- 移動
- トイレのため離席
- 資材を探す
- 会議
- 片付け
ここで付加価値を生んでいる時間に段取時間が入っているのは、本コラムは段取費用も見積に入れているからです。
多品種少量生産では、ロットの大きさが違うと製品1個当たりの段取費用が大きく変わります。そのため原価に段取費用を入れます。
大量生産で段取の頻度が少なく、段取費用が見積に入っていない場合、段取時間は付加価値を生まない時間です。
作業者が1日忙しく働いていても、このような付加価値を生まない「稼いでいない時間」があります。しかしこの時間も費用(人件費)は発生しています。
そこで就業時間に対し付加価値を生んでいる時間の割合を稼働率とします。
アワーレート(人)は、人の年間費用を就業時間に稼働率をかけたもので割って計算します。受注が少なくなり稼いでいる時間も少なくなれば、稼働率は下がります。
1日フルに生産するだけの受注がなく、空いた時間に5S活動(整理・整頓)や改善活動を行っても、それは「お金を稼いでいない時間」です。その分、アワーレート(人)は高くなっています。
稼動率は、作業者の稼働時間と就業時間を集計すれば計算できます。
実際は1年を通して行うのは大変なので、数名を一定期間調べて全体の稼働率を推定します。稼働率の値は、1日現場に入っている作業者でも80~95%ぐらいです。
賃金、社会保険料、派遣、請負などの費用は?
労務費には図4に示すように
- 賃金
- 賞与
- 退職金
- 各種手当
- 社会保険料(法定福利費)
- 福利厚生費
- 雑給
があります。
この労務費は、賃金、賞与、退職金、各種手当などが含まれます。
各現場の人の年間費用は、その現場に所属している人の労務費を集計します。
社会保険料は、全社員がまとめて計上され、個々の社員の金額はわからないことがあります。社会保険料の会社負担の合計はA社では約16%でした。そこで人件費の16%で概算しました。(これは業界によって異なりますので注意してください。)
派遣社員や請負の費用は労務費でなく、外注費や製造経費に入っていることもあります。
これらは原価計算では「労務費」なので、各現場の人の費用に入れ、その分、外注費や製造経費からマイナスします。
賃金の高い人のつくった製品の原価は高いのか?
正社員Aさんとパート社員Hさんのアワーレート(人)は
正社員Aさんのアワーレート(人) : 2,000円/時間
パート社員Hさんのアワーレート(人) : 1,200時間
パート社員Hさんのアワーレート(人)は正社員Aさんの60%です。その結果、同じ製品を1時間かけて製造した時の費用は
正社員Aさんが製造 : 2,000円
パート社員Hさんが製造 : 1,200円
パート社員Hさんが製造すればAさんの60%になります。
この計算は正しいのですが、現実には全く同じ製品を、つくった人が違うために異なる原価で管理するのは困難です。
そこで正社員Aさん、パート社員Hさんも含めた、その現場全体の平均アワーレート(人)を使います。
A社のマシニングセンタ1(小型)の現場の平均アワーレート
A社のマシニングセンタ1(小型)の現場は、図5に示すようにA~Dさんまで4人の作業者(正社員)がいました。年間総支給額も352~528万円と幅がありました。
ただし就業時間と稼働率は、計算を簡単にするため同じにしました。
マシニングセンタ1(小型)の現場の作業者の年間費用合計は
作業者の年間費用合計=352+352+440+528
=1,672 万円
マシニングセンタ1(小型)の現場の作業者の「就業時間×稼働率」の合計は
作業者の「就業時間×稼働率」の合計=2,200×0.8×4
=7,040 時間
平均アワーレート(人)は以下の式で計算します。
マシニングセンタ1(小型)の現場の場合
平均アワーレート(人)は、2,380円/時間でした。この2,380円/時間であれば、誰がつくっても同じ原価になります。
工場全体で平均アワーレート(人)とする場合
工場によっては、応援のために現場同士で人が頻繁に移動し、現場の作業者を固定できないことがあります。
その場合、工場全体の平均アワーレート(人)を計算します。現場毎のアワーレート(人)の差が大きくなければ、これでも十分です。大企業でも工場のアワーレート(人)はひとつのところもあります。
A社の現場と労務費を図6に示します。ここで実稼働時間合計は、就業時間×稼働率の合計です。稼働率は全て0.8としています。
直接製造部門の直接労務費合計 : 8,957万円
直接製造部門の間接労務費合計 : 115.2万円
直接製造部門の稼働時間合計 : 42,080時間
すべての現場の平均アワーレート(人)は2,160円/時間でした。
この2,160円/時間であれば、マシニングセンタ1(小型)、マシニングセンタ2(大型)、NC旋盤、ワイヤーカット、組立のどの現場も同じアワーレート(人)で原価を計算できます。
ではどういう時にアワーレート(人)を分ける必要があるのでしょうか。
必要ならば、事業分野、製品分野で分ける
例えば、工程や扱う製品が異なるため、アワーレート(人)を変えたい場合です。
例1 明らかに原価が違う
- 組立は付加価値が低いため、賃金の低いパート社員主体で製造
- 加工は付加価値が高く技術も必要なため、賃金の高い正社員が製造
この場合、組立と加工を同じ平均アワーレート(人)にすると、組立は加工の高い賃金の影響を受けてアワーレート(人)が高くなります。
見積も高くなってしまい、受注がしづらくなります。そこで組立と加工のアワーレート(人)を分けます。組立の現場のアワーレート(人)を図7に示します。
組立のアワーレート(人) : 1,530円/時間
マシニングセンタ1(小型)のアワーレート(人) : 2,380円/時間
マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート(人)は、組立の現場の約1.5倍でした。
例2 事業が違う
- 現場1は、大量生産品の製造、作業者は1日現場から離れず生産に従事
- 現場2は、多品種少量品の製造、作業者は生産の準備や打ち合わせなど現場から離れることが多い
この場合、現場1と現場2の作業者の賃金は同等でも、稼働率が大きく違います。そこで現場1と現場2で稼働率を変えてアワーレート(人)を計算します。
一方、現場には設備を操作する人や組立作業者など付加価値を生む作業者以外に、生産の準備をしたり、生産完了後の片づけをしたりする作業者もいます。
この人たちの費用はどうなるのでしょうか。
現場の間接作業者や管理者の費用はどうするのか?
生産の準備をしたり、生産完了後の片づけをしたりする作業者は、付加価値を直接生んでいません。しかし彼らがいなければスムーズな生産はできず、彼らも現場に不可欠な人たちです。
また現場の管理者も管理に専念していれば付加価値を生んでいません。
こういった人たちの費用は、その現場の間接製造費用としてアワーレート(人)の計算に入れます。
補助作業者の費用
例えば、図8のマシニングセンタ1(小型)の現場には、生産準備など補助作業を行うパート社員Hさん(間接作業者)がいました。
中小企業の工場には、管理者自ら生産を行うプレイングマネジャーもいます。彼らは管理業務もあるため、1日フルに生産ができません。
この場合は管理者の時間を
直接時間 : 生産している時間 (%)
間接時間 : 管理など生産していない時間 (%)
に分けます。
プレイングマネジャーの費用
図9の管理者 正社員Dさんは、直接50%、間接50%でした。間接50%は、その現場の間接製造費用とします。
間接製造費用の分、平均アワーレート(人)は上昇します。
その結果、2,900円/時間でした。
間接作業者や管理者が増えれば、アワーレート(人)の計算で分子(人件費)は増えますが分母(実稼働時間)は増えません。その分、アワーレート(人)は高くなります。
つまり直接生産しない人が増えれば原価は高くなるのです。
稼働率が低い年は翌年アワーレート(人)が高くなる?
忙しい月は人の稼働率が高く、暇な月は稼働率が低くなります。
その結果、忙しい月はアワーレート(人)が低くなり、暇な月はアワーレート(人)が高くなります。そうなると原価が変わってしまいます。
これでは製品が儲かっているのは
- 高く受注できた
- 短い時間で生産できた
- たまたまその月は稼働率が高かった
どれなのかわからなくなってしまいます。
アワーレート(人)は、原価を計算する「ものさし」です。
そこで稼働率は年間で一定とし、アワーレート(人)は一年間変わらないようにします。(この点が、毎月の稼働率から実際原価を計算する財務会計の原価計算と違う点です。)
一方、年によって繁忙状況が変わることもあります。
本コラムは、先期の決算書からアワーレートを計算します。そのため先期の稼働率が低ければ、翌期のアワーレート(人)は高くなります。
本当は、先期は受注が少なかったので、今期は受注を増やしたいところです。
しかし今期のアワーレート(人)が高ければ、見積も高くなってしまい、一層受注しにくくなります。
この場合は、工場が元々目標としている稼働率でアワーレート(人)を計算します。そしてその稼働率を達成できるように営業活動に力を入れます。
では、アワーレート(設備)はどうやって計算するのでしょうか。
アワーレート(設備)の計算方法は【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)で説明します。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
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【製造業の値上げ交渉】5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?
クイズです。
ある会社(A社) 受注金額1,000円の製品で、電気代が30%上昇した時、原価はどれだけ高くなるでしょうか?
1. 5円
2. 9円
3. 20円
正解は2.の9円でした。電気代上昇の影響は意外と大きかったのではないでしょうか?
これは架空のモデル企業の場合でしたが、自社ではどうでしょうか?
資源価格の高騰と電気代の変化
日本の場合、電気、ガスなどのエネルギー費は原油や天然ガスの価格に影響されます。この原油や天然ガスは、ロシアの産出量も多く、ウクライナ戦争の影響で価格が上昇しました。また大半が輸入のため為替の影響も受けます。また原油は市場で取引されますが、時には投機マネーが流入して価格が大きく跳ね上げることもあります。
2000年から2023年の間の原油価格の推移を図1に示します。
天然ガスの価格も図2のように乱高下しています。
その結果、電気代も上昇しています。電気代(kWh単価)は、2020年から3年間で2.1倍になりました。
これにより原価はどれだけ上昇したでしょうか?
電気代の上昇によるアワーレートの上昇
電気代が上昇した場合、以下の2つが増加します。
- アワーレート(設備)の計算に電気代が含まれている場合、その分の電気代の上昇
- 共用部分の電気代が上昇し、それによってる間接製造費用の分配つが増加
これについて架空のモデル企業A社 NC旋盤の現場のアワーレートと原価を計算します。
モデル企業A社の詳細は「製造業の値上げ交渉1 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?」を参照願います。
設備のアワーレートの上昇
A社 NC旋盤の現場
NC旋盤1台の年間電気代 : 23.2万円
電気代30%増加した場合
増加後のNC旋盤1台の電気代=23.2×(1+0.3)=30.2万円
NC旋盤の現場は、4台のNC旋盤がありました。この現場の平均アワーレート(設備)は
- 値上げ前 : 700円/時間
- 30%上昇後 : 740円/時間
40円/時間増加しました。
一方共用部分の電気代も上昇します。A社の年間の電気代は1,300万円、このうち共用部分の電気代は756万円でした。この756万円も30%増加します。
そのため、間接製造費用の分配は544万円→568万円と24万円増加しました。この間接製造費用の分配については「製造業の値上げ交渉3 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?」を参照願います。
従ってアワーレート間(設備) 〈注〉は
〈注〉本コラムでは、間接製造費用を含んだアワーレートを区別するために、
- 直接製造費用のみのアワーレート : アワーレート(人)、アワーレート(設備)
- 間接製造費用を含んだアワーレート : アワーレート間(人)、アワーレート間(設備)
と表記します。
またアワーレートは、直感的に理解しやすいように一桁目を四捨五入しています。(正確さよりもわかりやすさを重視しています。) 実際の計算では正確な数字を使用願います。
間接製造費用も含めるとアワーレート間(設備)は
- 値上げ前 : 1,470円/時間
- 30%上昇後 :1,550円/時間
80円/時間増加しました。
人のアワーレートの上昇
共用部分の電気代が上昇によって間接製造費用が増加すると、アワーレート間(人)も上昇します。NC旋盤の現場の人の間接製造費用分配は設備と同じ568万円でした。
その結果、アワーレート間(人)は
- 値上げ前 : 3,150円/時間
- 30%上昇後 :3,180円/時間
30円/時間増加しました。
電気代の上昇による原価・見積金額の増加
このアワーレートの上昇により原価はどうなるのでしょうか?
A社のA1製品の原価と見積金額を計算します。
製造原価
A1製品
- 製造時間 : 0.075時間
- アワーレート間(人) : 3,180円/時間
- アワーレート間(設備) : 1,550円/時間
その結果、製造原価は
製造費用は
- 値上げ前 : 726円
- 30%上昇後 : 735円/時間
9円増加しました。
見積金額
販管費は製造原価に比例して計算するため、販管費も増加します。
A社の販管費レート : 0.25
販管費も増加したため、見積金額は
- 値上げ前 : 988円
- 30%上昇後 : 999円/時間
11円増加しました。これを図4に示します。
金額は低いが利益への影響は大
見積金額は988円から999円と11円増加しました。11円は988円に比べれば小さな金額です。値上げをお願いすると「それぐらい企業努力で何とかしてくれませんか」と言われかもしれません。
しかし電気代が30%上昇し、経費が390万円増加したのは事実です。この11円の値上げができなければ、390万円の利益を喪失します。11円の値上げは、実際の電気代の上昇に基づく金額であることを伝えて、この金額だけは認めてもらうようにします。
その際、販管費や利益の増加分2円を認めてもらうのは難しいかもしれません。しかしA社は製造原価の25%の販管費が発生しているのは事実です。新たに見積をする場合は、販管費は184円になります。
販管費の増加分を認めてもらうのが難しければ、製造費用の上昇分9円だけは認めてもらいます。
電気代以外の工場の経費の上昇
消耗品など工場で使用する工具や資材の価格も上昇しています。
例えば機械加工工場では、金属を切削する刃物(バイトやエンドミル)を毎月大量に消費します。刃物にはタングステンなどレアメタルを使用するものもあり、資源価格の上昇やウクライナ戦争によりロシアからの入手が困難になったため価格が上昇しました。
あるいは設備の老朽化により修理代が増えていることもあります。他にも工場の土地の賃借料や材料の運送費が上昇していることもあります。
これらは原価に影響するのでしょうか?
比率を計算すれば原価の上昇が計算可能
本コラムのアワーレート間の計算では、各現場に間接製造費用を分配して計算しました。
例えば、A社 NC旋盤の現場では間接製造費用の分配は544万円でした。この544万円は先期の決算書の費用を元に計算しました。
A社の決算書の製造経費は
- 電気代 : 1,300万円
- 消耗品費 : 400万円
- 修繕費 : 300万円
でした。この比率から、NC旋盤の現場のアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)に占める電気代、消耗品費、修繕費の比率が計算できます。
A社のNC旋盤の現場のアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)に占める電気代、消耗品費、修繕費の比率を図5、図6に示します。
なおこの計算は弊社の個別原価計算システム「利益まっくす」値上げ計算シート(オプション)から行いました。
詳細は「原価計算システム『利益まっくす』」の紹介サイトを参照願います。
A1製品の値上げ金額の計算
この比率から、A1製品の値上げ金額を計算します。
A1製品の材料費330円 外注費50円 製造費用346円
A1製品の費用の内訳
製造費用346円の内訳を図7に示します。
A1製品の製造費用346円の内訳は
- 人件費 : 224円
- 設備償却費 : 28円
- 電気代 : 31.7円
- 消耗品費 : 13円
- 修繕費 : 10円
- その他 : 39円
でした。
値上げ金額の計算
例えば
- 人件費 : 8%
- 電気代 : 30%
- 消耗品費 : 15%
- 修理費 : 10%
増加した場合
人件費=224×0.08=17.9円
電気代=32×0.3=9.6円
消耗品費=13×0.15=2円
修繕費=10×0.1=1円
値上げ金額合計=17.9+9.6+2+1=30.5≒30円
製造費用は30円上昇します。
製造費用=346+30=376円
A1製品は
材料費 : 330円
外注費 : 50円
なので、製造原価は
販管費は製造原価に比例して計算するため
A社の販管費レート : 0.25
見積金額は
- 値上げ前 : 988円
- 値上げ後 : 1,027円/時間
34円増加しました。これを図8に示します。
以上の計算は決算書の数値を元に計算したものであり、真実です。ただし、それだけの金額が値上げ交渉できるとは限りません。値上げ交渉は顧客が納得できる理由が必要だからです。
それでも様々な費用が上昇した結果、原価がどのように変わったのか知っておくことは価値があります。
一方値上げの資料にはどこまで記載すればよいでしょうか。
これについては【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
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経営コラム ものづくりの未来と経営
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【製造業の値上げ交渉】4. 人件費が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?
最低賃金が上昇し、人手不足もあって人件費が上昇しています。
また2022年以降、資源高、円安などの影響で物価も上昇しています。生活を維持するための賃上げも必要になってきました。
人件費の上昇
デフレが続く日本でも、これまでも人件費は上昇していました。
それは最低賃金が上がっているからです。
図1に2014年から2023年の間の最低賃金(全国加重平均)の推移を示します。
2014年から2023年の10年間で最低賃金は780円から1,004円と約3割(28.7%)上昇していました。
最低賃金は10年間で3割近くも上昇しています。
直近の3年間、2021年から2023年の間でも930円から1,004円と8%上昇しています。
加えて人手不足もあって、最近は最低賃金ではバート・アルバイトの雇用が難しくなっています。
賃金上昇でアワーレートは増加
人件費が上昇すれば、作業者の費用は増加します。さらに作業者の費用(直接製造費用)だけでなく、間接部門や販管費の人件費も上昇するため間接製造費用や販管費も押し上げます。
これにより原価はどれだけ増加するのでしょうか?
人件費の上昇によるアワーレートの上昇
架空のモデル企業A社を例に、会社全体の人件費が8%上昇した場合の原価の上昇を計算します。
モデル企業A社の詳細は「製造業の値上げ交渉1 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?」を参照願います。
平均アワーレート(人) (直接製造費用)の上昇
このA社のNC旋盤の現場は、作業者は4人、直接作業者の平均アワーレート(人)は2,375円/時間でした。
このアワーレートの計算は「製造業の値上げ交渉2 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?」を参照願います。
作業者4人の年間費用 : 1,672万円
人件費が8%上昇したため
作業者の年間費用=1,672×(1+0.08)=1,806万円
1,672万円が1,806万円に上昇しました。その結果
平均アワーレート(人)は、
- 上昇前 2,380円/時間
- 8%上昇 2,570円/時間
190円/時間増加しました。
間接部門費用も上昇
人件費が8%上昇したため、間接部門の労務費も増加します。その結果、NC旋盤の現場の間接製造費用の分配は、544万円から571万円に増加しました。
これにより間接製造費用を含んだアワーレート間(人)は〈注〉
〈注〉本コラムでは、間接製造費用を含んだアワーレートを区別するために、
- 直接製造費用のみのアワーレート : アワーレート(人)、アワーレート(設備)
- 間接製造費用を含んだアワーレート : アワーレート間(人)、アワーレート間(設備)
と表記します。
またアワーレートは、直感的に理解しやすいように一桁目を四捨五入しています。(正確さよりもわかりやすさを重視しています。) 実際の計算では正確な数字を使用願います。
アワーレート間(人)は、
- 上昇前 3,150円/時間
- 8%上昇 3,380円/時間
230円/時間増加しました。
アワーレート間(設備)も上昇
間接製造費用分配の増加は、アワーレート間(設備)にも影響します。
NC旋盤の現場の設備の間接製造費用の分配も544万円から571万円に増加しました。
アワーレート間(設備)は、
- 上昇前 1,470円/時間
- 8%上昇 1,510円/時間
40円/時間増加しました。
このアワーレート間の上昇により原価はどう変わるでしょうか?
A1製品の原価
A社 A1製品の原価を計算します。
- 製造時間 : 0.075時間
- アワーレート間(人) : 3,380円/時間
- アワーレート間(設備) : 1,510円/時間
製造費用は、
- 上昇前 346円
- 8%上昇 367円
21円増加しました。
その結果、製造原価は
製造原価も21円増加しました。
販管費の増加と見積金額
人件費の上昇により販管費の労務費も増加します。A社の販管費は7,700万円が7,868万円に増加しました。
販管費レートは増加するとは限らない
ただし、A社の場合、販管費の増加以上に製造原価が増加しました。その結果、販管費レートは25%から24.7%と、むしろ減少しました。
実際の販管費と見積金額
人件費8%上昇後の見積金額は、製造原価は747円なので
見積金額は
- 上昇前 988円
- 8%上昇 1,013円
25円増加しました。これを図2に示します。
このように人件費の上昇は原価全体に影響します。
3年前に見積した製品も高くなっている可能性
時給が最低賃金と同期して上がっている場合、3年前に988円で見積した製品は、現在は25円値上げしなければ、目標の利益が得られません。もしギリギリの価格で受注していた場合、今は赤字になっている可能性もあります。
この値上げ金額の計算は、利益まっくすの値上げ計算シートを使って計算することができます。
では、人件費以外に電気代や消耗品が上がった場合、原価はどうなるのでしょうか?
これについては【製造業の値上げ交渉】5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?」を参照願います。
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。
中小企業でもできる簡単な原価計算のやり方
製造原価、アワーレートを決算書から計算する独自の手法です。中小企業も簡単に個々の製品の原価が計算できます。以下の書籍、セミナーで紹介しています。
書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」
中小企業の現場の実務に沿ったわかりやすい個別製品の原価の手引書です。
基本的な計算方法を解説した【基礎編】と、自動化、外段取化の原価や見えない損失の計算など現場の課題を原価で解説した【実践編】があります。
中小企業・小規模企業のための
個別製造原価の手引書 【基礎編】
価格 ¥2,000 + 消費税(¥200)+送料
中小企業・小規模企業のための
個別製造原価の手引書 【実践編】
価格 ¥3,000 + 消費税(¥300)+送料
ご購入及び詳細はこちらをご参照願います。
書籍「中小製造業の『製造原価と見積価格への疑問』にすべて答えます!」日刊工業新聞社
普段疑問に思っている間接費・販管費やアワーレートなど原価と見積について、分かりやすく書きました。会計の知識がなくてもすらすら読める本です。原価管理や経理の方にもお勧めします。
こちら(アマゾン)から購入できます。
簡単、低価格の原価計算システム
数人の会社から使える個別原価計算システム「利益まっくす」
「この製品は、本当はいくらでできているだろうか?」
多くの経営者の疑問です。「利益まっくす」は中小企業が簡単に個別原価を計算できるて価格のシステムです。
設備・現場のアワーレートの違いが容易に計算できます。
間接部門や工場の間接費用も適切に分配されます。
クラウド型でインストール不要、1ライセンスで複数のPCで使えます。
利益まっくすは長年製造業をコンサルティングしてきた当社が製造業の収益改善のために開発したシステムです。
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経営コラム ものづくりの未来と経営
人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中
ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?
経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
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