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【原価計算と見えない赤字】1.高い設備は原価が高いのか

 
【原価計算と見積の基礎】では、原価計算、アワーレート計算の基礎と見積金額の計算について説明しました。

【原価計算と見えない赤字】では、この原価を活用して現場で発生する損失を金額で表示し、見える化します。

例えば、大きな設備と小さな設備で原価はどのように変わるのでしょうか?

設備の大きさの違いによる原価に関して、以下の5点について述べます。

  1. アワーレート(設備)と設備の費用
  2. 設備の違いによって現場を分けるかどうか
  3. 設備がラインになっている場合
  4. アワーレート(設備)の間接製造費用の影響
  5. 具体的な原価の違い

 

1. アワーレート(設備)と設備の費用

 
アワーレート(設備)は、

本コラムでは設備の年間費用は、決算書の減価償却費でなく実際の償却費を使います。ランニングコストには以下のものがあります。

設備の購入費用 : 実際の償却費
ランニングコスト : 光熱費、消耗品費、修理代、保守料など


図1
 

ランニングコスト

 
ランニングコストは設備を動かすのに必要な電気代など光熱費、消耗品費、修理代、保守契約費用などです。

この中で設備の差が大きいものをアワーレート(設備)に入れます。今回は電気代のみランニングコストに入れました。

それ以外の費用は金額が少なく設備毎の差も小さいので、間接製造費用として各現場に分配しました。

設備の年間費用が高ければアワーレート(設備)も高くなります。

では設備によって現場を分けた方がいいのでしょうか。
 

2. 違う設備は現場を分けた方がいいか

 

これは設備の機能・能力で判断します。

設備の価格やランニングコストが違っていても、同じ加工であれば生み出す付加価値も同じです。従って、同じ現場にします。
 

A社の場合

 

機械加工A社は、小型のマシニングセンタ4台と大型のマシニングセンタ4台があります。(図2)

この4台は導入時期が異なり、減価償却が残っている設備もあります。ただし加工能力はこの4台の間で差はありません。

大型のマシニングセンタは、大きな部品が加工できるため単価の高い製品が受注できます。

一方、小型のマシニングセンタよりスピードが劣るため、小さな部品は原価が高くなります。

そのため現場はこの2つを使い分けしています。そこで小型のマシニングセンタと大型のマシニングセンタは別の現場とします。

ただし同じ製品を、ある時は大型のマシニングセンタ、ある時は小型のマシニングセンタと、現場が使い分けしていなければ同じ現場にします。

つまり、現場を分けるかどうかは「実際に使い分けしているかどうか」です。

図2

では、複数の設備がラインになっている場合はどうでしょうか。
 

3. 設備がラインになっている場合

 

図3aは、複数の設備を連結してひとつの製造ラインになっています。設備の配置は固定されラインの構成を変えません。この場合、全体を1つの設備と考えます。

逆に設備を常に移動してライン構成が頻繁に変わる場合は、ひとつひとつの設備をそれぞれの現場とします。

図3 ラインを1つの現場と考える場合とそうでない場合

 

違いはサイクルタイム

 

これはサイクルタイム(タクトタイム)〈注1〉によっても変わります。

図3aの場合、各設備のサイクルはライン全体で同期され、ライン全体のサイクルタイム(タクトタイム)は1分でした。この場合、ライン全体で1つの現場と考えます。

対して図3bの場合、各設備のサイクルタイムはバラバラです。工程の順序も常に工程1→工程2→工程3→工程4になるとは限りません。

この場合は、それぞれを別々の現場と考えます(本当は各設備のサイクルタイムがバラバラだと仕掛品が増えて望ましくないのですが)。


〈注1〉
サイクルタイムとタクトタイムの定義は、企業や人によって異なります。本コラムでは以下のように定義します。
【サイクルタイム(CT:Cycle Time)】
1つの工程の開始から完了まで1サイクルにかかる時間のことです。

【タクトタイム(TT:Takt Time)】
ピッチタイムとも呼ばれ、1つの製品の製造にかかる時間です。

ラインで生産する場合は、ライン全体のサイクルタイムです。ラインを構成する設備のサイクルタイムが完全に一致することはめったにありません。

ラインの中にはサイクルタイムの短い設備や長い設備があります。そこで、ラインのタクトタイムはラインを構成する設備の中で最も長いサイクルタイムになります(図4 参照)。

図4 サイクルタイムとタクトタイム


サイクルタイムのばらつきの分、ラインの生産性は低下します。これは以下の式で計算します。

例えば、3台の設備でラインを構成し、各設備のサイクルタイムは
設備1 : 8分
設備2 : 9分
設備3 : 10分
の場合、ラインのタクトタイムは10分です。ラインの効率は

各設備のサイクルタイムのばらつきを縮めない限り、現状では10%のロスが必ず発生します。これは複数の設備に工程分割すれば必ず発生するロスです。

実際は、アワーレートの計算には直接製造費用だけでなく、間接製造費用も含まれます。

間接製造費用はアワーレート(設備)にどのように影響するのでしょうか。
 

4. 間接製造費用の影響

 

この間接製造費用を現場に分配する場合、様々な方法があります。本コラムは、

  • 現場の直接製造費用に比例
  • 現場の直接製造時間に比例

この2つを使います。

この間接製造費用を含めたアワーレートがアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)で、これは以下の式で計算します。

では設備の大きさによって、原価はどう変わるでしょうか。具体的な数値で検証します。
 

5. 具体的な原価の違い

 

機械加工A社

 
図5に示すA社の2つの現場(マシニングセンタ1(小型)とマシニングセンタ2(大型))のアワーレート(設備)や原価を比較します。

図5 A社のマシニングセンタのアワーレート

マシニングセンタ2(大型)の1台の年間費用280万円はマシニングセンタ1(小型)140万円の2倍でした。アワーレート(設備)も2倍になりました。

ここでは、間接製造費用を各現場の直接製造費用に比例して分配しました。

これは「直接製造費用の高い現場は付加価値の高い製造をするため、間接製造費用を多く負担する」考え方です。

その結果、分配した間接製造費用は、

マシニングセンタ1(小型) : 145万円

マシニングセンタ2(大型) : 185万円

でした。

間接製造費用を分配したアワーレート間(設備)は、

マシニングセンタ1(小型) : 1,720円/時間

マシニングセンタ2(大型) : 2,850円/時間

1.7倍に差は縮みました。

この違いが原価にどう影響するのでしょうか。A社 A1製品の原価を図6に示します。

図6 A1製品の受注条件と原価、利益

A1製品は

製造費用
マシニングセンタ1(小型) : 380円

マシニングセンタ2(大型) : 470円 (+90円)

利益
マシニングセンタ1(小型) : 50円

マシニングセンタ2(大型) : ▲60円

マシニングセンタ1(小型)では50円の利益が、マシニングセンタ2(大型)では60円の赤字になりました。このように大きな(年間費用の高い)設備は原価が上がります。

実際マシニングセンタ2(大型)は製造費用が90円増えました。しかし、この90円の多くは固定費(実際の償却費)です。つまり赤字でも本当にお金が出ていくわけではありません。

もし、マシニングセンタ2(大型)でも加工できる製品があり、マシニングセンタ2(大型)が空いていれば、マシニングセンタ2(大型)で加工すべきです。

そうすれば原価計算上は赤字でも会社の利益は増えます。この点は誤解する現場の人も多いので注意します。
 

樹脂成形加工B社

 

B社は大きさの異なる50トンから450トンまでの射出成形機があります。

一般的には樹脂成形は成形機の大きさでアワーレートを変えます。顧客も同様に成形機の大きさに応じて見積を査定します。そこで大きさの異なる4種類の成形機のアワーレートを計算します

4台の成形機の年間費用とアワーレートを図7に示します。

図7 A社のマシニングセンタのアワーレート

450トンの成形機1台の年間費用380万円は、50トンの成形機70万円の5.4倍でした。

年間費用から計算したアワーレート(設備)も450トンの成形機は700円/時間、50トンの成形機の5.4倍でした。

小型の成形機も大型の成形機も、電気代を除けば工場で消費する経費は大きく変わりません。そこで、間接製造費用を各現場の直接製造時間に比例して分配しました。

これは「直接製造時間の多い現場はそれだけ工場のリソースを多く使用しているため、間接製造費用を多く負担する」考え方です。

間接製造費用を分配したアワーレート間(設備)は、

50トン : 830円/時間
1850トン : 930円/時間
280トン : 1,190円/時間
450トン : 1,400円/時間 (50トンの1.7倍)

でした。

450トンの成形機のアワーレート間(設備)は、50トンの成形機の1.7倍まで差が縮みました。

この違いは、原価にどう影響するのでしょうか。B1製品の原価を図8に示します。

図8 B1製品の受注条件と原価、利益

B1製品は

製造費用
50t : 14.1円
180t : 15.9円 (+1.8円)
280t : 20.2円 (+6.1円)
450t : 23.7円 (+9.6円)

利益
50t : 3.3円
180t : 1.2円
280t : ▲4.0円
450t : ▲8.1円

50トンでは3.3円あった利益が、450トンでは8.1円の赤字になりました。ただし、この8.1円の大半は固定費です。赤字でも本当にお金が出ていくわけではありません。

もし450トンの成形機が空いていて、450トンの成形機で製造できる製品があれば、450トンの成形機で製造すべきです。そうすれば原価は赤字でも会社の利益は増えます。

このように設備毎の原価の違いを計算できました。

では設備を自動化すれば原価はどう変わるでしょうか?

設備の自動化と多台持ち、ロボットの活用については【原価計算と見えない赤字】2.自動化とロボットの活用を参照願います。

経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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【原価計算と見積の基礎】6.設備のアワーレートの計算方法(2)

 
【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)ではアワーレート(設備)の計算に必要な減価償却費について説明しました。

ここではアワーレート(設備)の具体的な計算について説明します。
 

アワーレート(設備)の計算

 

アワーレート(設備)の計算に使用する設備の年間費用は、実際の償却費とランニングコストです。アワーレート(設備)の計算は以下の式です。

複数の設備がある場合、複数の設備を平均した現場の平均アワーレート(設備)を計算します。

 

A社 マシニングセンタ1(小型)の現場の場合

 

A社のマシニングセンタ1(小型)の現場の設備を(図1)に示します。

図1 A社マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート(設備)

計算を簡単にするため4台とも

購入価格 : 2,100万円
ランニングコスト : 18.4万円
年間操業時間 : 2,200時間
稼働率 : 0.8
実際の耐用年数 : 15年

とします。実際の償却費は

現場の平均アワーレート(設備)は

マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート(設備)は900円/時間でした。

4台の設備は導入後、それぞれ4年目、8年目、11年目、12年目でした。

決算書の減価償却費は

4年目 : 215万円
8年目 : 138万円
11年目 : 0円
12年目 : 0円

従って減価償却費から計算したアワーレート(設備)は

減価償却費から計算したマシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート(設備)は600円/時間でした。
 

24時間稼働した場合

 

人は24時間働けませんが、設備は24時間稼働できます。24時間稼働すれば稼働時間が長くなり、アワーレート(設備)は低くなります。

A社のマシニングセンタ1(小型)を24時間稼働させた結果、

年間操業時間 : 2,200時間 → 6,000時間

年間の電気代 : 18.4万円 → 50.2万円

年間の電気代は50.2万円に増加しました。アワーレート(設備)は

電気代は増えましたが稼働時間が大幅に増えたため、アワーレート(設備)は

昼勤のみ: 900円/時間

24時間 : 400円/時間

昼勤のみの44%になりました。高価な設備はアワーレート(設備)が高くなりますが、24時間動かせばアワーレート(設備)を低く抑えられます。
 

年に半分しか稼働しない場合

 

逆に設備を動かさなければアワーレート(設備)は上昇します。

マシニングセンタ1(小型)の現場で、購入11年目と12年目の設備が半分しか稼働しない場合(図2、図3)

図2 年に半分しか稼働していない設備

図3 2台は年に半分しか稼働しない場合

アワーレート(設備)は以下のようになります。

アワーレート(設備)は1,200円/時間、約1.3倍になりました。

将来更新する設備は使わなくても費用が発生しています。そのため使わない時間が長ければアワーレート(設備)は高くなります。
 

高い設備と安い設備がある場合

 

価格の高い設備と低い設備は、アワーレート(設備)が違うのでしょうか。

A社のマシニングセンタ1(小型)の現場で、高性能な設備(例えば5軸マシニングセンタ)を1台導入した場合を考えます。この設備は、複雑な加工ができる反面、価格が4,200万円と高価でした。

図4に示すマシニングセンタ1(小型)の現場で購入4年目の設備が4,200万円の場合

図4 1台が高価な設備の場合



4,200万円のマシニングセンタは

実際の償却費 : 280万円 (2倍)

マシニングセンタ単体の
アワーレート(設備) : 1,700円/時間

それまでの2倍近くになります。そのため現場の平均アワーレート(設備) は、1,100円/時間 になり、200円/時間上昇しました。その分見積も高くなります。

高価な設備は価格に見合った付加価値を生むことができれば問題ありません。

しかし、従来の設備と同じ付加価値しか生まなければコストアップになってしまいます。
 

価格の高い設備は原価が高くなる?

 

4,200万円のマシニングセンタと2,100万円のマシニングセンタでは、アワーレート(設備)は異なります。

つまり価格の高い設備で製造すれば原価も高くなります。

そのため単価の低い加工は、安い設備を使うように指示する管理者もいます。では安い製品は高い設備を使うべきではないのでしょうか。

アワーレート(設備)の主な違いは、実際の償却費です。実際の償却費はすでに過去に払ったお金です。例え高い設備を使っても新たにお金が出ていくわけではありません。高い設備も使わなければお金は稼ぎません。

つまり設備が高くても、どんな仕事でも入れて設備を動かした方が利益は増えるのです。

そこで設備の価格が違っても同じ能力であれば同じ現場と考えます。そしてその現場の平均アワーレート(設備)を使用します。そうすればどの設備を使用しても原価は同じです。
 

設備を増やしたらどうなるのか?

 

設備を増やせば、その分、減価償却費・実際の償却費は増えます。それに応じて受注を増やさなければお金は増えません。

つまり設備を増やすということは、工場全体の費用を増やすことです。その分受注を増やして設備の稼働率を維持しなければなりません。設備が増えても受注が増えなければ、設備の稼働率が下がり原価が上昇します。

一方、測定器のように直接生産しない設備を増やせば、アワーレート(設備)が上昇します。そして工場のコスト競争力は弱くなります。それでも必要であれば測定機は入れなければなりません。その分現場は高コストになっていくので、より付加価値の高い受注を増やさなければなりません。

間接的に使用する設備を増やすとアワーレート(設備)はどうなる?

現場にはボール盤やグラインダーのように日常の生産には使用せず、部品の修正や治具の作成に使用する設備もあります。(図5)

常時使用されて付加価値を生む設備に対して、これらは生産をサポートする設備です。本コラムはこれを「補助的に使用する設備」と呼びます。

図5 補助的に使われる設備

補助的に使用する設備は、使用頻度が低く更新期間も長いため、その費用はアワーレート(設備)には入れません。ただし、高額でしかも短期間に更新する設備の場合、その設備の実際の償却費を設備の年間費用に加えて、アワーレート(設備)を計算します。

例えば、図6のマシニングセンタ1(小型)の現場で、検査のため500万円のデジタルマイクロスコープを導入しました。デジタルマイクロスコープの実際の耐用年数は10年でした。このデジタルマイクロスコープはマシニングセンタの現場のみで使用します。

そこでデジタルマイクロスコープの実際の償却費50万円/年を、マシニングセンタ1(小型)の現場の間接製造費用とします。

図6 デジタルマイクロスコープを導入した場合

間接設備を含む平均アワーレート(設備)の計算は以下の式です。
(設備の年間費用合計は、実際の償却費+ランニングコストの合計)

アワーレート(設備) : 900円/時間 → 970円/時間

アワーレート(設備)は70円/時間増加しました。
 

どこまで細かく計算するのか? 設備のランニングコスト

 
設備のランニングコストには図7のようなものがあります。

図7 ランニングコストの例

その内訳は

  • エネルギーコスト
    電気、ガス、水道など水道光熱費
  • 消耗品
    オイル、クーラントなど液体
    二酸化炭素、アルゴン、窒素ガスなど気体
    ウェス、刃物、工具など固体
  • 修理・保守費用
    修理代、保守契約などサービス費用

これらの費用はどの設備でどれだけ発生したのか正確にはわかりません。そこで間接製造費用として、他の工場の経費と共に各現場に分配します。

ただし、設備によっては特定の費用がとても高いことがあります。その場合、その費用はその設備の直接製造費用としてアワーレート(設備)の計算に入れます。例えば

  • ヒーターがあるため消費電力がとても大きい設備。あるいは射出成型機など設備の大きさで消費電力が変わりアワーレート(設備)にも影響する場合。
  • 窒素、二酸化炭素やアルゴンガスなどのガスを多く消費する設備。
  • 食品製造設備のように終業後洗浄のため多量の水を使用する設備。
  • 刃物やオイルなどの特定の消耗品の使用量が多い設備。
  • 多額の修理費が発生する設備。
  • 多額の修理費に備えて毎年保険をかけている設備。又は高額な保守契約をメーカーと締結している設備。

これらの費用は、その設備、あるいは現場固有の費用として、アワーレート(設備)の計算に入れます。

人と設備以外の費用、間接製造費用と販管費の計算は、書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書【基礎編】」で詳しくご説明しております。

経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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【製造業の値上げ交渉】2. アワーレートはどうやって計算すればいいのだろうか?

【製造業の値上げ交渉】1. 原価はどうやって計算すればいいのだろうか?2で、製造原価の計算方法を説明しました。

ここでは人や設備のアワーレートの計算方法を説明します。
 

アワーレート(人)の計算方法

 

アワーレート(人)は、人の年間費用を年間の就業時間と稼働率で割って計算します。

人の年間費用

賞与や各種手当を含めた年間の総支給額に、会社が負担した社会保険料を加えた額です。
 

年間就業時間

残業も含めた勤務時間の年間合計です。

有給を取った場合、有給の間は生産していない(お金は稼いでいない)ので年間就業時間には入れません。
 

稼働率

就業時間のうち、実際に付加価値を生み出している時間の割合です。

付加価値を生んでいる時間とは、図1の段取時間と生産時間です。

図1に示すように、1日の中にはトイレのため離席したり、資材を探しに行ったりなど、付加価値を生み出していない「稼いでいない時間」があります。
図1 直接作業者の1日の例
図1 直接作業者の1日の例

付加価値を生んでいない時間も費用は発生しています。そこでアワーレートを計算する時間は就業時間から付加価値を生んでいない時間をマイナスします。本コラムではこれを稼働時間と呼びます。

稼働時間は年間就業時間に稼働率をかけて計算します。

稼働率という言葉は企業によって様々な意味で使われます。本書では稼働率は「稼働時間を就業時間で割ったもの」とし、以下の式で表します。
稼動率
稼動率は年間で平均して計算します。

これは1日ずっと現場にいる作業者でも80~95%くらいです。作業者でもリーダーの場合、もっと低くなります。
 

段取時間は稼働時間か?

本コラムは段取時間を稼働時間に入れています。

その理由は、多品種少量生産の場合段取費用も見積に入れるためです。

段取時間も見積に入っているため、段取時間も「お金を稼いでいる時間」です。

多品種少量生産で段取時間が長い場合、原価に占める段取費用の比率は高くなります。

しかもロットの大きさが変われば段取費用が大きく変わります。

そのため段取費用を見積に入れ、ロットが変わった場合原価に反映するようにします。

一方、大量生産で段取の頻度が少なければ、段取費用は見積に入れません。

その場合、段取時間は非稼働時間です。
 

人によって賃金が異なる場合

 

現場では賃金の異なる作業者もいます。

賃金が異なればアワーレート(人)も異なります。その結果、原価も変わります。

そうなると「誰が、どの製品を製造したのか」を把握しなければなりません。
 

平均アワーレート(人)を計算

 

現実にはそれは困難なので、その現場全体で平均した「平均アワーレート(人)」をその現場のアワーレート(人)とします。

平均アワーレート(人)は以下の式で計算します。
平均アワーレートの計算式

具体的なアワーレート(人)の計算

 

A社のNC旋盤の現場は、作業者は図2の構成でした。

A~Dさんまで作業者は4人でした。

年間総支給額は352~528万円と幅がありました。

年間就業時間と稼働率は、計算を簡単にするため全員同じにしました。
年間就業時間 : 2,200時間
稼動率 : 0.8
NC旋盤の現場の構成
図2 NC旋盤の現場の構成

年間費用合計は

作業者の年間費用合計=352+352+440+528=1,672 万円

平均アワーレート(人)は
平均アワーレート(人)

平均アワーレート(人)は、2,380円/時間でした。

この2,380円/時間であれば、誰がつくっても同じ原価になります。
 


注記)
本コラムでは、数字をわかりやすくするためにアワーレートは一桁目を四捨五入しています。実際に計算する際は正確な値を使用願いします。

工場全体で平均アワーレート(人)を計算

 

応援のために現場間で頻繁に人が移動する工場もあります。そうなると現場の平均アワーレート(人)も頻繁に変わります。

そのような工場では工場全体の平均アワーレート(人)を使用します。

現場間のアワーレート(人)の差がそれほど大きくなければ、工場全体の平均アワーレート(人)でも問題ありません。大企業でも工場全体の平均アワーレート(人)で原価を計算する場合があります。
 

アワーレート(設備)の計算

 

アワーレート(設備)は、設備の年間費用を設備の稼働時間で割って計算します。
アワーレート(設備)の計算式
 

設備の年間費用

 

設備の年間費用は

  • 設備の購入費用→減価償却費
  • ランニングコスト→動力費、水道光熱費、消耗品、保守費など

ランニングコストは主に電気、ガスなどエネルギー費ですが、他にも図3に示すように消耗品、保守費、修理費などがあります。
図3 ランニングコストの例
図3 ランニングコストの例

これらの費用は、決算書 (製造原価報告書) の「製造経費」に示されていますが、大半はどの設備にどのくらいかかったのか正確にわかりません。そこで間接製造費用として各現場に一定の比率で分配〈注〉します。
もし特定の設備が修理や保守のために多額の費用がかかる場合、その現場固有の費用とします。


〈注〉
会計では固定費を割り振ることを「配賦」と呼びますが、本コラムは難しい会計用語でなく、一般的な「分配」を使用します。

 

年間操業時間

 

残業時間も含めて設備を動かしている時間の年間の合計です。

設備の場合、人と違って年間で半分しか稼働しない場合もあります。その場合はアワーレート(設備)は高くなります。
 

稼働率

 

年間操業時間の中で実際に付加価値を生み出している時間の割合です。稼働率の考え方は人と同じです。設備の稼働率は、日報から調べたり、設備のモニターに表示されていることもあります。わからない場合は、仮に〇%と決めて計算します。
 

平均アワーレート(設備)

 

人と同様に設備の費用が異なれば、アワーレート(設備)も異なります。同じ製品でも設備が異なれば原価が異なります。

実際は「どの設備が、どの製品を製造したのか」把握するのは大変です。

そこで現場の「平均アワーレート(設備)」をその現場のアワーレート(設備)とします。

平均アワーレート(設備)は以下の式で計算します。
平均アワーレート(設備)
 

税法の減価償却費と実際の減価償却費

 

設備の購入費用は、決算書には減価償却費として計上します。

減価償却費は、

  • 減価償却の方法は定額法と定率法の2種類あり企業が選択
  • 耐用年数は、「法定耐用年数」が税法で決められている

という特徴があります。
 

定率法と定額法

 

定率法と定額法は以下の違いがあります。

  • 定額法: 購入価格を法定耐用年数で割った金額で、毎年同じ金額を償却
  • 定率法 : 毎年簿価の一定割合を減価償却の金額とする、簿価は毎年下がるため減価償却の金額も毎年下がる(途中から一定金額になる)

1,500万円、法定耐用年数10年の設備を購入した場合の定率法と定額法の減価償却費を図4に示します。
図4 定率法と定額法の減価償却費
図4 定率法と定額法の減価償却費

この場合、定率法の減価償却費は年々減少し、6年目から定額になります。
定額法は10年間一定の金額です。
そしてどちらも法定耐用年数10年を過ぎれば減価償却はゼロになります。

定額法と定率法のどちらかにするかは企業が決めます。中小企業は定率法を採用する企業が多いです。
 

法定耐用年数

 

法定耐用年数は設備の種類によって税法で決められています。
しかし設備の使い方や稼働時間が考慮されていないため、法定耐用年数よりも長く使える設備もあれば、法定耐用年数の前に使えなくなる設備もあります。
 

減価償却費でアワーレート(設備)を計算する問題

アワーレート(設備)を計算する際、この税法の減価償却費を使用すると以下のようなことが起きます。
定率法では、減価償却費が年々減少する
法定耐用年数を過ぎて設備を使用した場合、減価償却費はゼロになる

定率法の場合、減価償却費が年々減少し、毎年アワーレート(設備)も減少します。
また法定耐用年数を過ぎれば減価償却費はゼロになります。

そうなるとアワーレート(設備)を低くしても利益が出ます。顧客からの値下げ要求が厳しい場合、価格を下げることもできます。

しかし設備はいつか更新します。更新すれば新たに減価償却費が発生します。

その結果アワーレート(設備)は高くなります。その分値上げしないと赤字になってしまいます。
 

実際の償却を使用

 

減価償却費からアワーレート(設備)を計算すると、このような問題が起きます。

そこで設備の購入費用を実際の耐用年数で均等に割った費用 (本コラムはこれを「実際の償却費」と呼ぶことにします) からアワーレート(設備)を計算します。多くの大企業は、実際の償却費で減価償却を行っています。(図3)

実際の償却費は以下の式で計算します。
実際の償却費の計算式

図5では、定額法の減価償却費は年間150万円(法定耐用年数10年)です。

本当の耐用年数が15年の場合、実際の償却費は100万円です。

図5 実際の償却費

図5 実際の償却費


図5 実際の償却費
 

実際のアワーレート(設備)の計算

 

A社のNC旋盤の現場を図6に示します。
図6  NC旋盤の現場の設備
図6  NC旋盤の現場の設備

計算を簡単にするため4台とも
購入価格 : 1,500万円
ランニングコスト : 23.2万円
年間操業時間 : 2,200時間
稼働率 : 0.8
実際の耐用年数 : 15年
とします。
 

アワーレート(設備)の計算

 

実際の償却費は
実際の償却費の計算

現場の平均アワーレート(設備)は
現場の平均アワーレート(設備)

NC旋盤の平均アワーレート(設備)は700円/時間でした。

実際に製造費用を計算する場合は、このアワーレート(人)、アワーレート(設備)に、その現場の間接製造費用を加えたアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)を使用します。

アワーレート間(人)、アワーレート間(設備)の計算は
【製造業の値上げ交渉】3. 間接費用や販管費はどう考えるのか?」
で説明します。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】の記事は下記リンクを参照願います。

 
経営コラム【製造業の原価計算と見積】の記事は下記リンクを参照願います。

 
 

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