イノベーターの敗北、真の勝者は模倣者か?
なぜたびたびイノベーションを取り上げるのか?
中小企業経営に対するイノベーションのインパクト
この経営コラムでも、イノベーションについていろいろと記事を書いてきました。理由は、大きなイノベーションが起こると、それまで広くつくられてきた製品が一気に変わってしまうからです。
これは自社製品を持たず、メーカーに部品や設備を納入する下請け企業には大きな影響があります。時には売上の大半を占める企業の製品がイノベーションの波にのまれ消えてしまい、自社の売上が激減することもあります。
愛知県豊橋市のプラスチック成形の中小企業 樹研工業の松浦社長は、たまたま新幹線で乗り合わせたエリクソンの社員が日本の東北に部品を買い付けに行っていることを知ります。そして日本ではまだ珍しかった携帯電話が世界的に広まっていることを知りました。それをきっかけに調べたところ、欧米ではゼニス、RCAなど名だたる家電メーカーがことごとく、家電から撤退していることを知ります。
受注の大半を家電メーカーに依存していた樹研工業の松浦社長は、将来大きな危機が来ることを予感しました。そこで小型で精密な樹脂成形技術の開発に取り組み、10万分の1グラムの歯車を試作し、展示会に出展しました。これをきっかけに時計メーカーと取引を開始し、家電の売上比率は減少しました。その直後、国内の家電メーカーは円高のため大挙して工場を海外へ移転し、廃業する下請けの中小企業も出ました。同社の事業転換は、会社の存続にギリギリ間に合いました。
かつて世界を席巻した日本の半導体、日本の独自開発で特許のほとんどを押さえていたDVD、世界的な発明といわれた青色LED、これらの製品の現在の主要メーカーはどこでしょうか?
では、自動車はどうでしょうか?他業種、他社からのイノベーションによりシェアを失うことはないのでしょうか?
私たちは、松浦社長のように常にアンテナの感度を高くして、来る変化を見逃さないようにする必要があるのではないでしょうか?
企業が生き残るのに本当にイノベーションが必要?
近年、イノベーションの重要性が強く叫ばれています。大企業は、
「生き残るためには新たなチャレンジに取り組みイノベーションを起こさなければならない」
と言われています。
日本では国が2007年に長期戦略指針として「イノベーション25」を策定しました。
欧米でも同様で、
「イノベーションか、死か」
とまでいわれています。
イノベーション理論は「後出しじゃんけん」ではないか?
では、本当にイノベーションを起こした企業が発展し、生き残っているのでしょうか?
後述するように画期的なイノベーションを起こした企業が後発企業に市場を奪われた例は少なくありません。そう考えると、多くの書籍や経営学の論説は、成功した結果に後から理論を当てはめた「後出しじゃんけん」になっていないでしょうか?
- 日本はすり合わせ型ものづくりに強い
パソコンのように個々に互換性のある製品を組合せて完成する「モジュール型製品」に対し、デジタルカメラのように画像センサーと画像処理回路などを高度に微調整(すり合わせ)しなければならない「すり合わせ型製品」は、すりあわせに高度な技術が必要なため、日本は優位といわれていました。その「すり合わせ型製品」のデジカメ、中でもコンパクトデジカメは、スマートフォンに市場を奪われ、価格競争が激化し、日本はシェアを急速に落としました。では「すり合わせ型製品」の自動車はどうでしょうか?
- 技術開発で先行し、技術を特許で守れば勝てる?
DVDは日本が独自開発した技術で、主要特許の大半を日本が押えています。しかし日本製のDVDプレーヤーは今やほとんどありません。
- 専門家の誤謬
破壊的イノベーションの理論を打ち立てたクリステンセン氏は、2007年iPhoneが登場した際、次のように評しました。
「私の理論でいくと、アップルはiPhoneで成功しない。彼らは同じ産業の既存のプレーヤー同士の異常なまでに競合するということが動機になっているにすぎない。それでは本当に破壊的とは言えない。歴史を見る限り、成功の可能性は限られている。」
クリステンセン氏でさえ、iPhoneの破壊的な要素に気がつきませんでした。
クリステンセン氏も気づかなかったiPhoneの破壊的な点は、外出先でもどこでも手軽にインターネットを使えるようにしたことです。これをタッチパネルという新しいユーザー・インターフェースで実現しました。そしてご承知のように「どこでもインターネットを使える」ことで、私たちの生活は激変しました。
クリステンセン氏のようにイノベーションを研究している専門家でさえ誤るとしたら、誰が画期的な製品や革新的な技術を見出すのでしょうか?
イノベーションは会社や上司から理解されない
イノベーションは「革新的であるがゆえに、誰もそれが革新的なことが分からない」という一面があります。
そのため、多くのイノベーターたちは、上司から認められることなく、あるいはこっそりと隠れて(通称 闇研)何年も革新的な技術やアイデアを開発してきました。
- VHSビデオを開発したビクターの高野氏は、開発費の削減を迫る本社の目をごまかすために、水増しした販売予測や事業計画を作って予算をつなぎとめました。
- カメラ事業からコピー機事業に軸足を移しつつあった小西六写真工業で、オートフォーカスカメラの研究を続けた百瀬氏は、とうとう研究費も失いました。それでも百瀬氏の上司は、隠れ蓑となる研究テーマを彼に与え、会社には内密で研究費を捻出し、研究を続けさせました。そして彼の研究は「ジャスピンコニカ」として大成功を収めました。
このように革新的な製品や技術を生み出したイノベーター達は、その研究を続けるのに大変な苦労をしました。
冷ややかな反応だった初代ウォークマンのマスコミ発表
たとえ製品化しても、革新的な製品はそれを受け入れる市場がありません。そのため市場を創るところから始めなければなりません。
ソニーが最初にウォークマンを発売した時、発表会での反応は散々でした。それまで歩きながら音楽を聞く習慣がなかったため、記者たちもこの製品をどう評価してよいのかわかりませんでした。顧客の反応も悪く、発売後1か月はほとんど売れませんでした。
そこでソニーは、販売員にウォークマンを持たせて、ヘッドフォンで音楽を聞きながら東京の繁華街を歩いてPRしました。そして発売して2か月ほど経ったころ、若者たちの間で「音楽を聴きながら歩くのがかっこいい」という流れができて爆発的ヒットしました。
イノベーションよりイミテーション
それなら自らイノベーションを起こさずに「イノベーターが切り開いた道をあとからついていった方が良い」かもしれません。
現実にイノベーター達が大変な苦労をして開拓した市場の多くは、後から参入した模倣者に奪われています。
マネシタ電器
この模倣戦略を徹底していたのが、かつての松下電器(現在のパナソニック)です。
創業者の松下氏は、ランチェスター戦略も学んでいました。このランチェスター戦略は、シェア1位の企業は常に2位以下の企業に気を配り、彼らが新たな製品を開発したら間髪を入れず対抗製品を出して1位の座を守ります。松下氏も常々社員に「しっかりまねしているか」と激励していたそうです。
松下氏は、
「うちはソニーという研究所が東京にありましてなあ、ソニーさんがね、何か新しいものをやってね、こらええなとなったら、われわれはそれからやりゃあいい」
と語っていました。
マネをするにも技術がいる
多くの日本企業もかつては模倣者でした。戦後から高度成長期にかけて、技術では欧米に後れを取っていた日本企業は、まず欧米の技術を導入し、製品をマネしました。ただ、例え原理や技術が分かっても、実現するためには多くの苦労がありました。マネをするにも技術が必要でした。
トランジスタの製法から開発したソニー
ソニーは、トランジスタラジオを開発するために、米国ウェスタンエレクトリック社からトランジスタの特許を巨費を投じて買いました。つまり技術を買ったわけです。
しかし、トランジスタの製造方法の情報はわずかしかありませんでした。トランジスタは各社で製造に取り組み始めたばかりで、量産技術は確立していませんでした。ソニーは特許は買ったものの、製造は自前で量産技術を開発し、ラジオをつくることを決意します。
ソニー創業者のひとり、井深大氏は以下のように語っています。
「トランジスタの歩留まりが100個のうち5個になったとき、ラジオの生産に踏み切った。当たり前の企業家だったらこんな無茶な計画は立てるわけがない。しかし、歩留まりは必ず向上する目算があったので、私は思い切って決断した。
もしあのとき、アメリカでものになってからとか、欧州の数字を見てからこれに従ってなどと考えていたとしたら、日本がトランジスタラジオ王国になっていたかどうかは甚だ疑わしく、今日のソニーもあり得なかっただろうし、この無謀は貴重な無謀だったと考えている。」
このように相当大きなリスクを取った上の決断でした。
そしてソニーがトランジスタラジオを発売し、大ヒットすると、直ちに国内メーカーが追随し激しい競争となります。一度できることが分かれば、「できることが分かっていることにチャレンジする」のは容易だからです。
評論家の大宅壮一氏は週刊誌に以下の記事を書きました。
「トランジスタでは、ソニーがトップメーカーであったが、現在ではここでも東芝がトップに立ち、生産高はソニーの2倍半近くに達している。つまり、儲かると分かれば必要な資金をどしどし投じられるところに東芝の強みがあるわけで、何のことはない、ソニーは、東芝のためにモルモット的役割を果たしたことになる」
これがソニーモルモット論です。
図1 ソニー製 トランジスタラジオ1号機(Wikipediaより)
これに対し井深氏は、
「私どもの電子工業では常に新しいことを、どのように製品に結び付けていくかということが、一つの大きな仕事であり、常に変化していくものを追いかけていくというのは、当たり前である。
決まった仕事を、決まったようにやるということは、時代遅れと考えなくてはならない。ゼロから出発して、産業と成りうるものが、いくらでも転がっているのだ。これはつまり商品化に対するモルモット精神を上手に生かしていけば、いくらでも新しい仕事ができてくるということだ。
トランジスタについても、アメリカをはじめとしてヨーロッパ各国が、消費者用のラジオなどに見向きもしなかった時に、ソニーを先頭に、たくさんの日本の製造業者がこのラジオの製造に乗り出した。これが今日、日本のメーカーのラジオが世界の市場で圧倒的な強さを示すようになった一番大きな原因である。これが即ち、消費者に対して種々の商品をこしらえるモルモット精神の勝利である」
とし、さらに
「トランジスタの使い道は、まだまだ私たちの生活の周りにたくさん残っているのではないか。それを一つひとつ開拓して、商品にしていくのがモルモット精神だとすると、モルモット精神もまた良きかなと言わざるを得ないのではないか」
と語っています。
1960年、井深の藍綬褒章受章を祝って、社員は井深氏に“モルモット”の像を贈りました。
ところが、21世紀に入りイノベーターがモルモットで終わり、模倣者が勝利する例が増えてきました。
模倣者の利点
模倣者はイノベーターに比べて以下の点で有利です。
- イノベーターが大変な労力をかけて新製品を顧客に認知させ、時には新たに創り出した市場にただ乗り(フリーライド)できる。
- すでに完成した技術をコピーするため研究開発費を節約できる。この研究開発費には、イノベーターが商品を当てるために費やした数々の失敗も含まれる。
- すでに市場があり、顧客に認知されているのでマーケティング費用も節約できる。
- ベータマックス対VHSのような覇権争いに巻き込まれることもなく、市場を制覇した陣営に最初から加わることができる。
- イノベーターの製品の欠点が分かっているので、最初からより優れた製品を提供できる。
- イノベーターは成功体験があるため自信過剰に陥り、顧客の声をよく聞き改良することをないがしろにすることがあるが、模倣者は商品の良さや使い勝手でイノベーターを凌駕しなければならないため、そのような自己満足に陥ることがない。
実際、松下電器の例でみても、ソニーの後追いで出した製品は、ソニーにない機能や利点を備えていて、使いやすかった記憶があります。
(私が流行り物は人より遅れて手に入れるタイプだったために、余計そう感じるかもしれません。)
模倣者の成功例
カルフォルニア州に本拠地を置く液晶テレビメーカー、ビジオ社は、60万ドルの資本金で立上げ、現在はアメリカ市場でサムソンと匹敵するシェアを確保しています。
同社は研究開発や製造に投資しておらず、株主である台湾のOEMメーカーと契約してコストコ、ウォルマート傘下の大規模小売店を通じて販売しています。
大規模小売店のネットワークを活用して競合企業より安く売ることで優位性を得ています。
アップルはイノベーターか?
「アップルは革新的」というイメージを抱いている人は多いと思います。しかし実はアップルから生まれた技術は多くはありません。その点、多くの技術を自前で開発したソニーとは好対照です。スティーブ・ジョブズ自身
「次の革命を起こそうとするな。スマートで手頃な消費者商品を作り出せば、それでいい」
と語っています。
実際、革新的なパーソナルコンピューターだったマッキントッシュは、その技術の大半はアップルで発明されたものでありませんでした。ビジュアル・インターフェースやマウスは、ゼロックスのパロアルト研究所を訪問した時に見たものから着想しました。その後パロアルト研究所から数人の研究者を雇い入れています。
つまりアップルはアッセンブリーイミテーションの達人であり、自社のアイデアと外部の技術を縫い合わせて、エレガントなソフトウェアとスタイリッシュなデザインをまとわせることに強みがありました。
そういった点で、アップルは技術のオーケストレーター、あるいはインテグレーターだったのです。
どこまでが模倣で、どこまでがイノベーションか?
アップルのように「既に世の中にあるものを使って新たな製品やサービスを生み出すこと」は模倣と定義すれば、全てのイノベーションは模倣となってしまいます。
トヨタ自動車のカンバン方式は、同社の大野氏がアメリカのスーパーマーケットを視察した時にヒントを得ました。言い換えればスーパーマーケットのやり方を生産工場に持ち込んだだけです。しかしそれが決して簡単でないことは、多くの企業がカンバン方式を導入して挫折した点から容易に推察できます。
セオドアレビットは、イノベーションの定義として
「世の中の初めての試みである」
ことと共に
「その業界や市場にとって、初めての試みである」
ことを挙げています。
このように模倣もイノベーションと考えれば、模倣とイノベーションの境界はあいまいになってきます。
模倣スピードの拡大
さらに近年は模倣のスピードが加速し、イノベーターの先行者利益が極めて小さくなってきています。
後発医薬品の例
1990年代初め、カルシウム拮抗薬「カルディゼム」は特許が切れてから、後発医薬品に市場の8割を奪われるまでに5年かかりました。しかしその10年後に開発した降圧剤「カルデゥラ」は、特許が切れてから9ヶ月で後発医薬品に市場の8割を奪われました。そしてイーライリリーの抗うつ薬「プロザック」は、特許が切れてからわずか2ヶ月で市場を後発医薬品に明け渡しています。
このように模倣のスピードは以下の表のように早まっています。
表 模倣の広まる期間
1877年~1930年 | 平均23.1年 |
---|---|
1930年~1939年 | 平均9.6年 |
1940年~ | 平均4.9年 |
表 模倣者が市場に参入するまでの期間
1961年 | 20年 |
---|---|
1981年 | 4年 |
1985年 | 1~1.5年 |
後発者が市場を奪ったPDA市場の例
PDA(携帯情報端末)市場は、アップル、シャープ、タンディ、カシオが先行し、その1年後にIBM、モトローラ、ソニー、ベルサウスが参入しました。しかし残ったのは、リサーチインモーション(RIM)、パームコンピューターでした。
リサーチインモーションは現在ブラックベリー・リミテッドと社名を変え、日本ではNTTドコモの3G及びGSMネットワークを直結し、企業向けソリューションとしてメールや自動車の車載システムなどの事業を提供しています。
模倣の容易性 デジタル化とモジュール化
様々な機能が水平分業化されたことで、従来は大企業でなければできなかった製品が零細企業でも容易にできるようになりました。
例1
パソコンはマザーボードと電源、増設ボード、ディスクドライブを組合せれば個人でも製作できるようになりました。デザインやインストールするソフトに特徴を持たせれば、容易に新しい製品ができます。
例2
携帯電話も無線集積回路、RISCチップ、アプリケーションソフトにモジュール化されているため、サードパーティモジュールを組合せて、中国のメーカーが新規参入し、中国市場の半分以上のシェアを獲得しました。
新興国プレーヤーの増加
中国などの新興国では、メーカーになって「一発当てる」ことを目指して多くの中小零細企業が切磋琢磨しています。彼らは「80%の確率で失敗するが、80回はトライする」といわれる粘り強さでチャレンジしています。
その理由の一つとして、先進国の製品が新興国の需要を取り込み切れていないため、空白の市場があるからです。先進国の製品は価格が高すぎ、新興国の需要を満たすことができません。機能を減らし、品質を落としてでも、価格を1/2、1/3にすれば、膨大な新興国の市場のニーズを満たすことができますが、今までの企業文化、新興国市場へのウェイトから、そのような製品を提供しません。一方新興国のメーカーは、もともとブランド力がなく、価格しか訴求すべき点がないため、徹底した低価格路線を貫きます。
法的保護の低下
国をまたいで競争するため、他国での自社の知財を保護しきれない問題があります。特許を出願しても、模倣コストを増加させる効果は、エレクトロニクス7%、化学20%、医薬品30%程度しかなく、模倣を遅らせる効果は限られています。
他国で特許を申請しても異議申し立てを受けて権利化できなかったり、特許を分析して迂回方法を発明したりします。さらに模倣者がその特許に手を加えて新たな特許を出願します。
新興国では裁判所も自国の企業に有利な判決を下すことがあり、例え特許を取得しても権利を守り切れないこともあります。
模倣のポイント
何を模倣し、何を模倣しないか、その選択は極めて重要です。
破綻したスカイバス航空
アメリカ オハイオ州コロンバスを本拠としていた超格安航空会社(LCC)スカイバス航空は、開業から1年で経営破綻しました。サウスウェスト航空やジェットブルー航空の優れた顧客サービスと、ライアンエアー航空の徹底したコスト削減の両方を取る戦略で、論理的に成り立たない複数の要素を模倣しようとしたためでした。
模倣する際の注意点
- 車輪を再発明しようとしない
既にあるものや使い道がほとんどないものを発明するには、膨大な時間と労力がかかる。
オリジナリティにこだわらず、すでにある技術や製品を活かしてより良いものを作ることに努力すべき。 - 類人猿に従え
生物的に決して強くない類人猿が今日まで生き残っているのは模倣能力があるからである。模倣は高度な能力であることを理解して、企業の模倣スキルを高める。 - すぐに頭に浮かぶものを集めるな
自社の専門分野以外も広く探索し、小さな企業だけでなく失敗した企業にも目を向ける。そして巷のイノベーターにも注意する。イノベーターのいるところ必ず模倣者もいる。 - 物事の脈略(ストーリー)を読み取れ
ある環境でうまく行っているものがほかでもうまく行くとは限らない。模倣する対象の脈略(誰に、何を、どのようにというストーリー)を理解し、異なる対象には、どのようなストーリーが適しているかよく吟味する。 - ピースを正しく合わせろ
ストーリーを正しく理解したうえで、必要な要素を分解して、適切に組み合わせること。 - より価値の高い新製品をつくれ
安い、質が良いだけでなく、より低コストでの製造なども模倣能力には必要である。
模倣からイノベーションを守る
日本企業の例 キャノン
同社は、創業間もない頃は設計の極意を会得するため、ライカなど海外の名機と呼ばれるものを隅から隅までデッドコピーしました。デッドコピーすることで、開発した人の設計思想を深く理解し、自分の中に取り込むことができます。そして、一流のものほど単純で美しいことに気づきました。
さらに同社は、コピー機事業で王者ゼロックスに立ち向かった時は、ゼロックスの中核特許を一字一句丸写ししました。そうすると良い特許には優れた製品設計と同様の美しさがあり、簡潔明瞭でありながら、適用範囲が広く、競合は簡単に突破できないようになっていました。
こうした学習の結果、同社は競合を困らせる手厚い特許を申請できました。こうしてコピー機市場は、主要特許がゼロックスとキャノンに押えられてしまい、他のメーカーは作っても高額なライセンス料をキヤノンとゼロックスに払わなければならないため、低い利益になってしまいました。
画期的な製品を開発しても模倣者に市場を奪われることもあります。
あなたの取引先の業界には、今後どのようなイノベーションが起きるのでしょうか?
そして勝者はイノベーターか、それたも模倣者でしょうか?
(参考)
「コピーキャット 模倣者こそがイノベーションを起こす」 オーデッド・シェンカー 著 東洋経済
【イノベーションについてのまとめ】
イノベーションとは何か、日本企業のイノベーションの例、画期的なアイデアとそれを実現する方法、そしてイノベーターを脅かす模倣者の戦略など、今までのコラムを
「過去のイノベーションとデジタル時代のイノベーションについて」
にまとめました。良かったら、こちらもご参照ください。
本コラムは2016年7月17日「未来戦略ワークショップ」のテキストから作成しました。
経営コラム ものづくりの未来と経営
人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中
ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
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経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
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