薄型テレビ、半導体…、負けるべくして負けている!! 価格戦争という戦いを知らない日本企業
ソニー、パナソニックなど名だたる企業が、薄型テレビなど主力商品で、
市場シェアを大幅に落として、経営が悪化、
リストラを行っていることは、皆さんご存知だと思います。
では、なぜそのような事態になってしまったのでしょうか。
何が原因だったのでしょうか。
マスコミや専門家の記事を見ても私には、ピンときませんでした。
この答えが以下の本にありました。
「スマートプライシング ~利益を生み出す価格戦略~」
ジャグモハン・ラジュー、Z・ジョン・チャン 朝日新聞出版
日本企業の敗れた原因は、「価格戦争」でした。
これは、日本国内の「価格競争」のようにより良い商品を
安く提供しようとした結果安値競争するものではありません。
相手を倒すことを意図して、明確に仕掛けられた「戦い」です。
そして中国企業が仕掛ける価格戦争については、日本企業だけでなく、
欧米の経営者も理解していなかったのでした。
アメリカ産業界でも、「チャイナ・プライス」は脅威となっていたのでした。
この価格戦争は、最初中国国内でライバル企業を淘汰するために行われました。
1996年初頭、中国には130社のカラーテレビのメーカーがありました。
ほとんどメーカーが年間販売数12万台未満で規模の経済性が生かせず、
業務効率は高くありませんでした。
そして日本をはじめとする海外メーカーが中国で高品質なテレビの生産を始め、
高品質なテレビが中国市場にどんどん入ってくるようになりました。
そんな中、中国最大のテレビメーカー チャンホンは
市場シェア拡大のためにどのような戦略が取れるのか検討しました。
その結論が価格戦争でした。
中国市場は伸び盛りで価格を大幅に引き下げれば、
販売を大幅に増やすことができる可能性がありました。
そうすればライバルは市場シェアを落とし、
生産効率がより悪化し、市場から退出します。
そして日本を含む海外メーカーは、これに対抗して価格を引き下げれば
自社のブランド価値を損ない、利益が大幅に減少します。
そのためチャンホンは入念に準備をします。
事前に在庫を大幅に積み増し、需要の増加に応えられるようにします。
事前の入念なシミュレーションの結果、10%価格を引き下げれば、
海外ブランドに対する同社の価格差は30%に拡大、
そし多くの国内メーカーを赤字に追いやることができました。
1996年3月26日、チャンホンは自社のすべての製品を
8~18%値下げするという第一撃を放ちました。
中国のメーカーはチャンホンの攻撃に激怒しましたが、
対抗するのはためらっていました。
海外ブランドは、王道、すなわち価格でなく
品質と機能に力を入れることにしました。
この戦略は、成熟市場なら正しい判断でしたが、
急速に変化する中国市場では有効ではありませんでした。
価格戦争開始から3ヶ月で、チャンホンの市場シェアは、
16%から31%と大幅に上昇し、ライバルはシェアを大幅に落としました。
海外ブランドは、価格戦争前には64%のシェアがありました。
しかし価格戦争後の1997年には、残っていたブランドは、
フィリップスとパナソニックだけで合わせて10%しかありませんでした。
こうして価格戦争の戦い方を学んだ中国企業は、
電子レンジなど様々な製品で市場シェアを席巻し、中国の覇者となっていきました。
そして自動車も…
2005年には奇端汽車が価格戦争を展開し、
中国4位の自動車メーカーになりました。
こうしてみると、日本企業の優位性は、
「すりあわせ型のものづくり」
自動車の優位性は、当面続く
と、信じていいのか、疑問に思います。
実は私もサラリーマン時代に、
半分冗談で価格戦争を上司に提案したことがあります。
当時自分のいた会社は、業界第二位のシェアでした。
しかし3位以下の執拗な攻勢に苦戦していました。
会社は資金的に余裕がありましたので、
旧モデルを使って価格戦争を仕掛けて、
シェアを拡大してはどうかと提案しました。
笑って取り合ってはくれませんでしたが。
でも中国企業はまじめに検討し、現在の状況になりました。
今後、主戦場は東南アジア、インド、南米などに移ります。
そこで日本企業は、価格戦争という戦い方をマスターした
中国企業と戦っていかなければなりません。
日本企業の経営者が、「スマートプライシング ~利益を生み出す価格戦略~」
を読んでいることを祈っています。
なぜ優良企業が失敗するのか?「成功の罠」から抜け出す方法については、こちらから参照いただけます。
経営コラム ものづくりの未来と経営
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