「SDGsの真実2」~温暖化に対する様々な意見と温暖化対策の難しさ~

前回、SDGsの取り組みについて説明しました。
「SDGsの真実1」~環境だけじゃない。17の目標と温暖化対策の目標~はこちらをご参照ください。
 

地球温暖化に対し割れる意見

地球温暖化対策はSDGsの17の目標のうちその1テーマにしか過ぎません。しかし経済活動、社会生活に与える影響は他の16テーマと比べて極めて大きいものがあります。しかもその根拠は「地球温暖化」という科学的に完全に解明されているとは言えないものです。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)(注)の報告書は誇張されている」と考える専門家もいます。

図1 地球温暖化とその原因に対する考え
図1 地球温暖化とその原因に対する考え
 

注) IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change : 気候変動に関する政府間パネル)
国際連合環境計画と世界気象機関が1988年に共同で設立。地球温暖化に関する科学的知見の集約と評価が主要業務。地球温暖化に関する「評価報告書」を発行している。本来は世界気象機関(WMO)の一機関で国際連合の気候変動枠組条約とは関係のない組織であったが、条約の交渉にIPCC報告書が活用されたこと、また、条約の実施にあたり科学的調査を行う専門機関の設立が遅れたことから、国際的な地球温暖化問題への対応策を科学的に裏付ける組織として、間接的に大きな影響力を持っている。(Wikipediaより)
 

IPCCによる温暖化と日本の対応

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2018年10月に「1.5℃特別報告書」を発行し、2030年から2050年までの間に1.5度気温が上昇する可能性が高い(ワーストシナリオ) と発表しました。さらにIPCC第5次評価報告書は、今後二酸化炭素排出量を削減できなければ2100年には気球の平均気温は2.6~4.8度上昇する可能性が高い(ワーストシナリオ)と述べました。

温室効果ガスによる地球温暖化は、将来の気候変動に大きな影響をもたらす可能性があります。そして人々や生態系に対し広範囲に深刻な影響が生じる可能性があります。
 

図2は世界の平均地表気温の変化を予測したものです。温暖化の大部分は二酸化炭素の累積排出量によるものとされ、今後21世紀の間、地表気温は上昇すると予測されます。

図2 世界平均地上気温の変化 (出典 環境省ホームページ)
図2 世界平均地上気温の変化 (出典 環境省ホームページ)
 

地球温暖化が進むと多くの地域で熱波が頻繁に、しかも長く発生します。また、集中豪雨のような極端な降雨がより頻繁に発生するようになります。

そうした気候変動の影響は、例え温室効果ガスの排出が停止しても何百年も持続します。

図3 1850~900年を基準とした気温上昇の変化 (出典 環境省ホームページ)
図3 1850~900年を基準とした気温上昇の変化 (出典 環境省ホームページ)
 

各国の首脳は、2030年を目標年とする貢献(NDC)のさらなる引き上げや、2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ、石炭火力発電のフェードアウトなどについて言及しています。日本では菅総理大臣が「地球規模の課題の解決に大きく踏み出します」と述べ、2030年には2013年比で温室効果ガスを46%削減する目標を表明しました。

図4 我が国の温室効果ガス削減の中期目標と長期目標の推移 (出典 環境省ホームページ)
図4 我が国の温室効果ガス削減の中期目標と長期目標の推移 (出典 環境省ホームページ)
 

温暖化反対派の中には「このまま温暖化が進めば破滅的な未来になる」と警告します。

では地球温暖化は、これまで地球が経験したことのない温度でしょうか?
 

二酸化炭素濃度上昇と地球温暖化は初めてではない

実は気温の測定するようになったのは最近のことです。

1850年頃から温度計による観測が行われ、信頼できる気温が記録されるようになりました。

データから、1910年から1945年、1976年から2000年の間に大規模な温暖化が起こったことがわかっています。

図5 計測器による地球表層の気温データ (Wikipediaより)

図5 計測器による地球表層の気温データ (Wikipediaより)

それ以前の気温の記録は、木の年輪の幅やサンゴの成長線、氷床コアの同位体などから得られます。

この手法により北半球でのヤンガードライアス期(1000年間続いた寒冷期)終了以降のデータが得られました。これによると完新世の1万年の期間のうち最も暖かい時期は、気温が20世よりも高いことが分かりました。

図6 過去1万2000年の気候変化 (Wikipediaより)
図6 過去1万2000年の気候変化 (Wikipediaより)
右が現在。横軸の単位は1000年前
 

さらに南極ボストークの氷床コアの調査から、42万年前まで遡った記録が得られています。またEPICAコアからは80万年前まで掘削・解析が進みました。

これらのデータによると、地球の平均気温が今より3度以上高い期間が複数回あったと推定されます。

図7 南極の2地点で復元された気温と、
氷床体積の地球規模での変動曲線 (Wikipediaより)

図7 南極の2地点で復元された気温と、
氷床体積の地球規模での変動曲線 (Wikipediaより)
右が現在。横軸の単位は1000年前


 

温暖化派と懐疑派

今後、地球が温暖化しても、その温度は地球が直面する初めての温度ではありません。中世期は今よりも暖かく二酸化炭素も多かったのです。これが巨大な恐竜やその食物となる植物の活発な生育を促しました。

また図3から二酸化炭素濃度は、一定以上増えてもそれ以上気温は上昇せず均衡することがわかります。温暖化反対派の「このまま二酸化炭素排出量が増加すれば『ディッピングポイント(臨界点) 』を超える」という主張に科学的な根拠はありません。この点で「過去にない危機的状況」「環境や健康に大きな懸念」と煽るメディアの姿勢は疑問があります。

ただし、過去の地球温暖化は何千年もかけてゆっくりと変化しました。それが今回はわずか数十年の間に平均気温が1度近く上昇しています。この急激な変化に動物や植物は対応できず、絶滅する種が出るかもしれません。
 

一方地球温暖化は、人為的な二酸化炭素排出が本当に原因かどうかという問題があります。これについては賛成派、懐疑派の激しい議論が交わされています。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』にも「地球温暖化に対する懐疑論」があり、様々な考え方が示されています。

2009年にはイーストアングリア大学気候研究所のメールがハッキングされ、論文の改ざんをにおわせる記述が流出しました。(クライメートゲート事件) 改ざんの事実は否定されましたが「ネイチャー」に載った(現代になって急激に温度が上昇したとする)「ホッケースティック曲線」は、IPCC第4次評価報告書には使用されなくなり、中世に温暖期(中世気候異常)があったことが明記されました

こういった学術分野の研究は、新たな事実が発見される度に旧来の学説が覆され、激しい議論になります。地球温暖化の問題は、実験で確かめることができないため、観測データの地道な積み重ねから結論を導かなければなりません。そして今後も新たな事実が見つかれば、これまでの学説が覆される可能性もあります。科学の進歩には、こうした多様な研究と健全な議論が不可欠なのです。

地球が温暖化しているのかどうか、その原因は、人為的な二酸化炭素排出がどうかは非常に重要な問題です。なぜなら、二酸化炭素排出量削減は、多くの国に経済的な損失と経済成長の阻害と言う痛みを強いるからです。

しかも空気に国境はありません。一部の国が多額のコストをかけて二酸化炭素排出量を削減しても、他の国が大量に二酸化炭素を排出すれば、一部の国の努力は効果がありません。
 

一方、野心的な温暖化対策を推進するヨーロッパの国々は、地球温暖化を「決まったこと」と考えています。その影響もありヨーロッパの国々の政策や発表は、現状を無視した誇大なものになる傾向があります。

また一部の環境保護団体は、異なる見解を断固として排除する「環境原理主義」の様相を呈しています。2014年にイギリスBBCが「最近の異常気象は人間起源の気候変動が原因か」というラジオ番組を放送した結果、環境団体から「出演者は気候変動対策を否定している。科学者でもない者を番組に出演させるな」という抗議が殺到しました。一部には中世の異端審問の様な状況になっています。

このヨーロッパの動向に対し日本のメディアは「欧州は温暖化対策の優等生であり、欧州に学ぶべき」と迎合的な報道を行っています。

本来は温室効果ガス削減のための政策は、冷静に様々な方法を議論する必要があります。SDGsの17のテーマに示されるように世界には様々な課題があり、各国の事情も異なっています。その上で温暖化対策にどの程度のリソースを割くべきなのか、どの程度のコストを許容するのか、SDGsの他のテーマとの兼ね合いや各国の事情も考慮して、総括的に国際間で話し合わなければなりません。

地球温暖化対策は、複数の答が存在する社会科学的な政策論の問題なのです。

なぜなら二酸化炭素排出量削減とは、経済成長をあきらめることになるからです。

なぜそうなるのか、産業別の二酸化炭素排出量を見てみます。
 

CO₂排出量削減に必要なこと

二酸化炭素の排出量が大きい産業

図8 部門別・業種別にみた我が国のCO₂排出量(2019年度)(出典 環境省資料より著者作成)

図8 部門別・業種別にみた我が国のCO₂排出量(2019年度)(出典 環境省資料より著者作成)

図8は、2019年度における我が国の二酸化炭素排出量を部門別・業種別に見たものです。左の円グラフは部門別のCO₂排出量で、全体の35%を「産業部門」が占めていることが分かります。

その産業部門の二酸化炭素排出量は、鉄鋼業界が40%を占め、2番目の化学工業に3倍の差をつけています。2019年度の鉄鋼業界の二酸化炭素排出量(間接排出)は約1億5500万トンでした。つまり低炭素化社会の実現には、鉄鋼業界の二酸化炭素排出削減が不可欠です。

産業部門の中でも、鉄鋼、化学工業は生産時のエネルギー使用量が多く、二酸化炭素の排出も多くなっています。そして鉄鋼などの生産が活発なのは、中国、韓国、日本などアジアの国々です。アメリカやヨーロッパなど先進国は、中国や日本が二酸化炭素を排出してつくった製品を買っています。二酸化炭素排出量を削減するには、コストをかけて二酸化炭素を排出しない生産をするか(技術的に難しい)、生産を縮小しなければなりません。その影響は、アメリカやヨーロッパなど先進国にも及びます。
 

私たちが消費する様々な商品は、企業が多くのエネルギーを使用して生産したものです。さらに流通や販売活動でも二酸化炭素は消費します。つまり二酸化炭素の排出は、生産と消費活動そのものです。

ところが二酸化炭素排出量削減というと、私たちは太陽光発電や電機自動車の問題と考えています。決してそうではなく、個人の消費の問題です。

しかも商品は生産時だけでなく、廃棄の際も焼却炉で燃やされ、二酸化炭素を排出します。

これはリサイクルすれば解決するのでしょうか。
 

リサイクルでは解決しない

現在、プラスチックのリサイクルの大半はサーマルリサイクル、つまり燃料として燃やしています。中でも一部の質の高いプラスチックは、ペレットに加工されて製鉄所の燃料になります。一方質の良くないプラスチックは自治体や廃棄物処理業者が焼却処分します。

つまりマテリアルリサイクルを実現しない限り、プラスチックや化学繊維を製造すれば最後には二酸化炭素を排出して熱になるのです。

図9 我が国における物質フロー(2018年度)(環境省ホームページより)
図9 我が国における物質フロー(2018年度)(環境省ホームページより)
注:含水等:廃棄物等の含水等(汚泥、家畜ふん尿、し尿、廃酸、廃アルカリ)及び経済活動に伴う土砂等の随伴投入(工業、建設業、上水道業の汚泥及び鉱業の鉱さい)

図9で我が国における物質のフローを示しました。二酸化炭素排出削減のためには、生産プロセスにおける二酸化炭素排出量を削減するとともに、最終処分で廃棄されるものを減らすことが必要です。
ただし、プラスチックはリサイクルされたものが回収業者に引き渡されればリサイクルしたものと扱われます。実際はその中で海外に輸出される、または廃棄されるものもあります。
 

経済成長に伴い今後排出量は増加

しかも二酸化炭素排出削減どころか、今後も経済成長に伴い、二酸化炭素の排出はまだまだ増えるのです。

なぜなら新興国の人口は増加し、GDPも増加するからです。GDPの増加に伴い、二酸化炭素の排出も増えます。図10に2050年GDP予測と人口のデータを示しました。

図10 2050年のGDP順位出典:2019年のGDP、2020年の人口(国連統計)

図10 2050年のGDP順位
出典:2019年のGDP、2020年の人口(国連統計)
2050年のGDP(Pwc調査レポート「世界の経済秩序は2050年までにどう変化するのか?」)


 

2050年の世界の人口は97億人、現在の1.24倍と予想されています。これに伴いGDPも増加します。これまでは開発途上国だった国が人口増加と共に経済も成長します。GDP4兆ドル以上の国は、欧米に加えて、インドネシア、ブラジル、メキシコ、サウジアラビア、ナイジェリア、エジプト、パキスタンが加わります。

そこで現在の各国のGDP当たりの二酸化炭素排出量を元に、2050年の二酸化炭素排出量を私の方で計算したものを図11に示します。

図11 各国のGDP当たりの二酸化炭素排出量から換算した2050年の二酸化炭素排出量
図11 各国のGDP当たりの二酸化炭素排出量から換算した2050年の二酸化炭素排出量
 

GDPに対する二酸化炭素排出量を現状と同じとすると、

2050年の二酸化炭素排出量は2020年の約4倍

にもなります。もし現状と同程度の二酸化炭素排出量に抑えるには、

GDP当たりの二酸化炭素排出量を現在の1/4にしなければなりません。

それでも現在と同等の二酸化炭素が排出されるのです。

一方2019年のGDP当たりの二酸化炭素排出量は国によって大きな違いがあります。これはその国の産業構造が

  • 製造業主体か、サービス業主体か
  • 製造業の中でも鉄鋼、化学の比率が高いかどうか

で変わります。ただしそれを抜きにしてもイラン、ベトナム、ロシア、サウジアラビアなどは、GDP当たりの二酸化炭素排出量が高いため、改善の余地は大きいでしょう。
 

開発途上国の声

コロラド大学の気象学者ロジャー・ピールキ・ジュニア教授は、欧米の環境保護団体を「途上国を貧困のままにおこうとする『グリーン(緑)帝国主義』の活動家だ」と批判しました。

「グローバル開発センターの報告によれば、1000億円をつぎ込むサヘル地域(サハラ砂漠南部)の再生可能エネルギー事業は、3000万の住民に電気を送ることができます。しかし、同じ1000億円で天然ガス火力発電をしたら、9000万の住民に送電できます」

インド政府は国連の二酸化炭素削減に反発して、2009年に国連にこう申し入れました。

「国民の40%が電気を使えない現在、二酸化炭素排出削減に努めよとは、無慈悲というものだろう」

途上国の開発を願って活動する南アフリカの作家レオン・ルーは、以下のように発言しています。
「第三世界は、先進国がやったのと同じことをしていい。天然資源を活用して都市を作り、湿地帯を住宅地に変え、木材の生産・利用を進め、鉱物資源を掘り、天然資源を利用する。

先進国を豊かにしたそんな政策が、いま貧困国には閉ざされているのだ」

 

環境活動家のビル・マッキベン氏は、貧困国は「化石資源時代を通らず、一足飛びに再生可能エネルギー時代になるべきだ」と主張します。そして太陽光や風力など再生可能エネルギーが「持続可能な開発」に役立つと言います。本当にそうでしょうか。

エネルギー関連の活動家スティーブ・ミロイ氏は「通信の分野であれば、電話線の時代無しに携帯電話時代を迎えた貧困国もある。しかしエネルギーだと、化石資源の時代無しにはすまない。

火力のバックアップがなければ無風の夜に電気は来ない。

また、再生可能エネルギーの電気は高いので、先進国なら莫大な補助金を使って運用できる。しかし貧困国にはそんなお金はない」
と述べています。

環境論の始祖、かつては温暖化の恐怖を煽ったジェームス・ラブロック氏は「持続可能な開発」を戯言と斬り捨てます。今では

「私たちは、よくも考えずに再生可能エネルギーに走った。絶望的に非効率だし悪趣味、とりわけ風力は許しがたい」

と発言しています。実は電力が安定して供給されている先進国の人々は問題がわかりません。しかし新興国の脆弱な電力インフラは、しばしば停電を起こします。停電しないまでも電圧が不安定な国も多く、そうした不安定な電源では先進国の製品や装置は正しく動作しません。外国資本の工場すら誘致できないのです。ジェームス氏は

「フラフラ電源でも構わない用途ならローカル電源として役に立つ。だが、基盤電源の補佐役でしかない風力をどしどし建てる欧州のやり方は、極悪の蛮行として人類史に残る」

と指摘しています。
 

低炭素製鉄とCO2貯留と回収技術

 
それでは、産業界で最も二酸化炭素排出量の多い鉄鋼業界ではどのような取組がされているのでしょうか。

鉄鋼メーカーは、以下のようなCO₂排出量削減の取組を行っています。

  • 高炉の割合を減らして、スクラップを溶かす電炉製鉄の比率を増やす
  • 高炉でのプロセスに水素還元方法を導入
  • 発生した二酸化炭素を分離・回収する

国際エネルギー機関(IEA)は、製造工程のCO2排出量が実質ゼロとなる「グリーンスチール」の市場が、2050年時点では約5億トンになり、2070年には生産される鉄鋼のほとんどが、グリーンスチールにかわると予測しています。
 

環境への負荷を抑えるなら、鉄鉱石から鉄をつくるよりも、スクラップを活用すればよいです。しかし鉄鋼は自動車や各種インフラ、電子電気機器などの需要が2050年以降も大きく、それを十分に満たすだけのスクラップはありません。従って高炉による製鉄は将来も不可欠です。

日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の高炉3社と、日鉄エンジニアリングがNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)委託事業として行う「COURSE50」が取組んでいるのが、この水素還元法と二酸化炭素の分離回収の2つの技術です。2016年には日本製鉄・君津製鉄所に小型試験高炉を建設し、実証試験を進めてきました。
 

水素還元法

高炉内に水素を吹き込むことで水素還元の比率を増やして二酸化炭素を削減します。さらに、炉に入れるコークスを必要最小限度に抑え、製鉄過程で発生する水素以外に、外部からも水素を取り入れて投入量を大幅に増やし、より大規模な水素還元を行います。

製鉄方法には、「高炉法」のほかに「直接還元法」という方法もあります。直接還元法は、天然ガスを使用して鉄鉱石を固体のまま還元し、そのあとで電炉に移して溶解をおこなう方法です。コークスを使わないため、高炉よりもCO2の発生を低く抑えることができます。海外では天然ガスを用いた直接製鉄法(鉄鉱石から固体還元鉄を直接製造する方法)がすでに稼動しています。
 

二酸化炭素の分離回収

化学吸収法とは、「吸収塔」でアミン等のアルカリ性水溶液(吸収液)とCO2含有ガスとを接触させ、吸収液にCO2を選択的に吸収させた後、「再生塔」で吸収液を加熱して、高純度のCO2を分離・回収する技術です。

化学吸収法は、常圧のガスから大量のCO2を分離・回収するのに適していますが、これまで製鉄プロセスへの応用した実績がなく、新吸収液の開発やプロセスの最適化により、これまでの方法よりCO2分離・回収に要するエネルギーが約40%低い方法を実現しました。

さらに物理吸着法を製鉄プロセスに組み込み、高炉ガスから二酸化炭素を分離吸着して二酸化炭素回収率≧80% 、または二酸化炭素濃度≧90%を達成しました。

注) 「CCS」とは、「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれます。発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するというものです。
「CCUS」は、「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、分離・貯留したCO2を利用しようというものです。たとえば米国では、CO2を古い油田に注入することで、油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、CO2を地中に貯留するというCCUSがおこなわれており、全体ではCO2削減が実現できるほか、石油の増産にもつながるとして、ビジネスになっています。

図17 CCSの流れ


 

最も冷静な議論が必要な課題なのに、冷静な議論ができていない

 
地球温暖化の問題は過去の省エネと違い、日本だけが努力しても効果はありません。世界中で協調して取り組まなければなりません。これは二酸化炭素排出削減にかかるコストと経済成長の問題なのです。SDGsの他のテーマも合わせて、今後どのように進めていくのか、各国が冷静に議論を行い協調して取り組む必要があります。加えて途上国の負担するコストや成長の阻害をどうするのかも考えなければなりません。

残念ながらこうした問題に対し、今ある技術でどこまで二酸化炭素排出量を抑えられるのか、数値目標ばかり先行して冷静な議論が進みません。菅政権の46%削減にしてもどこまで技術的な裏付けがあるのか不明です。

リスクマネジメントの世界では、ある問題事象に対し対策費用が過大であれば、その問題を受け入れる選択もあります。

地球温暖化のリスクは、対策可能なのか、受入ざるを得ないのか、冷静が議論が求められます。
 

参考文献

「環境問題のウソとホントがわかる本」杉本裕明 著 大和書房
「図解SDGs入門」 村上芽 著 日本経済新聞出版
「異常気象と地球温暖化」鬼頭昭雄 著 岩波新書
「地球温暖化の不都合な真実」マーク・モラノ 著 日本評論社
「地球温暖化 そのメカニズムと不確実性」日本気象協会 朝倉書店
「SDGsとは何か 世界を変える17のSDGs目標」安藤 顯 著 三和書籍
「不都合な真実」アル・ゴア 著 ランダムハウス講談社
 

 

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