「SDGsの真実1」~環境だけじゃない。17の目標と温暖化対策の目標~

SDGsとは

SDGsという言葉を報道などで耳にする機会が増えています。「SDGs登録制度」を設けている県もあり、国はSDGs達成に向けた取組を行っている企業を増やし、SDGsの普及を目指しています。

では、SDGsとはどのような取組なのでしょうか。

私たちは何をすればいいのでしょうか。

SDGsを環境問題と思っている人もいます。しかしSDGsは環境だけではありません。しかもSDGsの中には、矛盾する内容もあるのです。

このSDGsについて、詳しく調べました。
(本コラムは、未来戦略ワークショップのテキストから作成しました。)

図1 SDGs 17の目標
図1 SDGs 17の目標
 

SDGsの成り立ち

SDGs(Sustainable Development Goals)とは

「持続可能な開発目標」

のことです。2016年から2030年までの15年間で世界が達成すべき

17の目標と169のターゲット

で構成されています。

このSDGsは、これまでの【MDGs(ミレニアム開発目標)】と、【リオ+20(国連持続可能な開発会議)】という2つの大きな流れが融合し、作られました。
 

【MDGs】
MDGsは、2000年9月の国連ミレニアム・サミットで採択された【国連ミレニアム宣言】と、1990年代に国際会議やサミットで採択された【国際開発目標】を統合したものです。以下の8つのゴールが設定されました。

1 極度の貧困と飢餓の撲滅
2 初等教育の完全普及の達成
3 ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
4 幼児死亡率の削減
5 妊産婦の健康の改善
6 HIV/エイズ、マラリア、そのほかの疾病の蔓延の防止
7 環境の持続可能性確保
8 開発のためのグローバルなパートナーシップの推進

そのテーマ、「経済成長を通じて貧困を削減する」ものです。その結果、極度の貧困に苦しむ人々の割合は、1990年には世界の人口の36%だったものが、2015年には12%(3分の1)まで減少しました。これにより10億人以上が極度の貧困から脱し、子供の死亡率は半分以下に減少しました。

こうして一定の目標は達成しましたが、その一方で格差の拡大、特に女性、子供、障害者、高齢者、難民など立場の弱い人たちへの格差がクローズアップされています。
 

【リオ+20】
1992年にブラジル・リオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議」(地球サミット)では、「環境と開発に関するリオ宣言」が採択されました。

さらにその行動計画「アジェンダ21」が採択され、気候変動枠組条約や生物多様性条約の署名が行われました。

その20年後、2012年6月に開催された「国連持続可能な開発会議」(リオ+20)では、グリーン経済への移行、「持続可能な開発」のための新たな枠組みの議論が行われました。そして「我々の求める未来」がまとめられました。この議論がMDGsと統合され、SDGsになりました。
 

SDGs 17の目標

SDGsには、17の目標と169のターゲットがあります。全部紹介するのは大変なので、169のターゲットの要点のみ解説します。
(詳細は、末尾の参考文献やSDGsの解説本を参照してください。

 
1.貧困をなくそう

あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

《ターゲットの概要》
2030年までに

  • 極度の貧困(1日1.25ドル未満で生活)をなくす
  • 極度の貧困以外でも貧困状態にある人を半減させる
  • 貧困層への《社会保障制度、権利(財産・相続、金融サービスを受ける権利)》を確保する
  • 病気、失業、災害など予期せぬ事態に対する個人の強靱性(レジリエンス)を強化する。そのために途上国支援や開発投資を促進する

 

表1 日本の貧困率の推移

1991 2003 2006
相対的
貧困率(%)
13.5 14.9 15.7
中央値
(万円)
270 260 254
貧困値
(万円)
135 135 127
2009 2012 2015
相対的
貧困率(%)
16.0 16.1 15.6
中央値
(万円)
250 244 245
貧困値
(万円)
125 122 122

 

表2 世界の地域別貧困率の変化

1990
貧困率
(%)
貧困層の人数
(百万人)
東アジア
太平洋地域
60.23 965.9
ラテンアメリカ
カリブ海地域
15.84 71.21
南アジア地域 44.58 505.02
サブサハラ
アフリカ地域
54.28 276.08
途上国全体 42.01 1840.47
世界全体 34.82 1840.47
2013
貧困率
(%)
貧困層の人数
(百万人)
東アジア
太平洋地域
3.54 71.02
ラテンアメリカ
カリブ海地域
5.40 33.59
南アジア地域 15.09 256.24
サブサハラ
アフリカ地域
40.99 388.72
途上国全体 12.55 766.01
世界全体 10.67 766.01

 
1990年に比べ世界全体の貧困率は大きく改善されました。特に東アジア、南アジアの貧困率の改善は大きく、世界全体でも貧困者数は2013年には766万人と1990年の半数以下になりました。

その一方アフリカ地域の貧困率は2014年でも40%もあり、大きな問題となっています。


2.飢餓をゼロに

飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する

《ターゲットの概要》
2020年までに

  • 国際間の種子の適正管理と、野生種の遺伝的多様性の維持

2030年までに

  • 飢餓の撲滅と5歳未満の子供の栄養不良を解消
  • 小規模食料生産者の生産性及び所得倍増
  • 災害への適応能力を高め、土壌を改善し強靭(レジリエント)な農業を実践

その他

  • 開発途上国の農村インフラ投資の拡大、農産物輸出補助金を撤廃し貿易制限や歪みを是正、食料市場及びデリバティブ市場への規制

 

表3 熱量消費量(単位 kCal/人・日)

2001 2009
日本 2746 2723
インド 2487 2321
フィリピン 2372 2580
アメリカ 3766 3688
イタリア 3680 3627
ギリシア 3754 3611
スーダン 2288 2326

1日のカロリー摂取量でみると、アメリカ、イタリアなど先進国は過剰摂取、対してインド、スーダンなどは2,500kcalを下回り、生存に必要な最低限のエネルギーしかありません。これは先の貧困問題とも関係しています。
 

表4 主要各国の自給率(2009年 単位 %)

穀類 野菜類 肉類
日本 23.2 83.2 56.1
中国 103.4 101.8 97.4
アメリカ 124.8 92.3 113.4
イギリス 101.0 43.4 68.0
オランダ 19.8 302.9 187.7
ドイツ 124.1 33.4 114.4
フランス 174.1 62.6 100.5
ロシア 128.9 76.8 72.0
オーストラリア 242.3 87.8 162.7

穀物は広い土地を必要とし、収穫量に比べ金額は低いため、国土の狭い国では生産量は多くありません。一方野菜や果物は、狭い土地でも収穫でき金額も高いため、日本でも自給率は高く、オランダは野菜の多くを輸出しています。

国により国土や経済力が違うため、農産物の生産性は国により異なります。関税を完全に撤廃したり、先進国が輸出補助金で農産物の輸出を促進したりすれば、生産性の低い国の農業は壊滅的な打撃を受けます。
 


3.すべての人に健康と福祉を

あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

《ターゲットの概要》
2020年までに

  • 交通事故による死傷者を半減

2030年までに

  • 妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満
  • 新生児死亡率を出生1,000件中12件以下、5歳以下死亡率を出生1,000件中25件以下
  • 新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶
  • エイズ、結核、マラリアなどの伝染病を根絶
  • 非感染性疾患による若年死亡率を3分の1減少、精神保健及び福祉を促進
  • 性と生殖に関する保健サービスを全ての人々が利用可能に
  • 有害化学物質、大気、水質及び土壌汚染による死亡や疾病を大幅に減少

その他

  • 全ての人々に質の高い保健サービスや安全で安価な必須医薬品とワクチンの利用を実現
  • 薬物乱用やアルコール依存症の予防や治療の強化
  • 全ての国々でたばこの規制の強化
  • 開発途上国の感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援
  • 開発途上国において保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着の大幅な拡大
  • 全ての国々の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告と管理能力を強化

図2 自殺死亡率の国別比較 (出所 : OECD)

図2 自殺死亡率の国別比較 (出所 : OECD)


今回の新型コロナウイルス感染症は、一旦感染症が拡大すれば被害を免れる国はないことを示しました。感染症の予防と撲滅は人類共通の課題です。

その一方、不十分な衛生環境や不十分な予防接種のため、先進国では抑えられている結核やマラリヤなどの病気が新興国では問題となっています。安全な飲み水の確保など衛生環境の整備や予防接種などの充実が新興国にも必要です。

一方先進国では、若年者の自殺は大きな問題です。日本は人口10万人当たりの自殺死亡率は15.2人と世界でも高い数字です。

日本の15~39歳の死因の第1位(2019年)は自殺です。G7の中で若者の死因の第1位が「自殺」なのは日本だけで、これは社会問題となっています。
 


4.質の高い教育をみんなに

すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

《ターゲットの概要》
2020年までに

職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加

2030年までに

  • 全ての子供が、無償かつ質の高い初等教育及び中等教育を修了できる
  • 全ての子供が、乳幼児の発達・ケア及び就学前教育を受け、初等教育を受ける準備が整う
  • 全ての人々が、質の高い技術・職業教育及び高等教育(大学)を受けることが可能
  • 技術的・職業的スキルを習得し、仕事や起業に必要な技能を備えた若者を大幅に増加
  • 教育におけるジェンダー格差を無くす。障害者、先住民など脆弱層も教育や職業訓練受けることが可能
  • 全ての若者及び大多数の成人が、読み書き及び基本的計算能力を身に付けられる
  • 質の高い教員の数を大幅に増加

その他

  • 子供、障害及びジェンダーに配慮した安全で非暴力的な教育施設を提供

 

表5 初等教育修了率(2014年 単位 %)

男子 女子
欧・米・日本 99.6 99.4
南アジア 91.5 92.0
アフリカ(サブサハラ) 72.0 68.0

先進国では99%の子供が基本的な読み書きを習得する初等教育を受けています。しかしアフリカでは約70%、つまり3割の子供が初等教育を受けていません。

読み書きができないことが、職業選択を制限し、貧困から抜け出せない原因となっています。
 


5.ジェンダー平等を実現しよう

ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る

《ターゲットの概要》

  • 女性及び女児に対するあらゆる差別を撤廃
  • 人身売買や性的搾取などあらゆる形態の暴力を排除
  • 早期結婚、強制結婚及び女性器切除など有害な慣行を撤廃
  • 無報酬の育児・介護や家事労働を評価
  • 政治、経済などあらゆるレベルで公平な女性の参画の機会を確保
  • 女性に対し、所有権、土地、財産など経済的資源の権利を与えるための改革に着手
  • 女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする技術の活用
  • ジェンダー平等の促進のための政策や法規を導入・強化

 


6.安全な水とトイレを世界中に

すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する

《ターゲットの概要》
2030年までに

  • 全ての人々の安全で安価な飲料水へのアクセスを達成
  • 全ての人々の適切な下水施設へのアクセスを達成、野外での排泄をなくす
  • 排水の浄化と汚染の減少により水質を改善
  • 淡水の持続可能な供給を確保、水不足に悩む人々の数を大幅に減少
  • 国境を越えた協力を含む、統合水資源管理を実施
  • 山地、森林、河川を含む生態系の保護・回復を行う
  • 開発途上国における水と衛生分野の国際協力と能力構築支援を拡大

 

表6 世界の降水量、水資源量、取水量の関係
(単位 降水量mm/年 1人当り水資源量&1人当り取水量立方メートル/人、年)

降水量 1人当り
水資源量
1人当り
取水量
世界平均 780 7800 560
日本 1560 3030 680
サウジアラビア 30 0 720
インド 1080 1700 580
フランス 760 3000 570
インドネシア 2680 1450 380

世界の一人当たりの水資源量は、地域によって大きく異なります。世界平均では7,800立方メートル/年ですが、利用できない地域の工数もあるため、国別では日本は3,030立方メートル/年で世界で96位です。

農業や工業などに必要な水資源量は、1,700立方メートル/年とされ、これに満たない国が世界では55カ国もあります。
 


7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに

すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

《ターゲットの概要》
2030年までに

  • 安価かつ信頼できるエネルギーサービスを利用可能
  • 世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大
  • 世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増
  • エネルギー効率向上のための国際協力の強化、エネルギー技術への投資を促進
  • 開発途上国の全ての人々に持続可能なエネルギーサービスを供給できるようにインフラ拡大と技術向上

 

表7 世界の1人当り消費エネルギー(単位 kg/年)
(総務省統計局の資料 2013年)

1999 2008 2009
世界全体 1358 1493 1465
アジア 721 1042 1077
アメリカ 7973 6866 6486
南アメリカ 865 1029 1004
ヨーロッパ 2853 3231 3018
アフリカ 347 356 353
オセアニア 4269 4098 4108
日本 3665 3210 3003

 


8.働きがいも経済成長も

すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する

《ターゲットの概要》
2020年までに

  • 就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす

2025年までに

  • 児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅

2030年までに

  • 持続可能な消費と生産に関する10年計画に従い経済成長と環境悪化の分断を図る
  • 若者や障害者を含む全ての男女の、完全な雇用及び人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成
  • 持続可能な観光業を促進する政策を立案し実施

その他

  • 強制労働を根絶
  • 移住労働者など不安定な雇用形態の労働者の権利を保護
  • 一人当たり経済成長率を持続、後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率
  • 多様化、イノベーションを通じた高いレベルの生産性を達成
  • 開発重視型の政策を促進するとともに、中小零細企業の設立や成長を奨励する
  • 国内の金融機関の能力を強化し、全ての人々の金融サービスへのアクセスを促進・拡大
  • 開発途上国に対する貿易の援助を拡大

 


9.産業の技術革新の基礎を作ろう

強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る

《ターゲットの概要》
2020年までに

  • 開発途上国において普遍的かつ安価なインターネットアクセスを提供

2030年までに

  • 雇用及びGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加。後発開発途上国については同割合を倍増
  • 資源利用効率の向上とクリーン技術及びインフラ改良により持続可能性を向上
  • イノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、科学研究を促進し、技術能力を向上

その他

  • 質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発
  • 開発途上国における小規模の製造業その他の企業への金融サービスへの利用可能性を拡大
  • アフリカ諸国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、インフラ開発を促進
  • 産業の多様化や商品への付加価値創造などを通じて、開発途上国の技術開発、研究及びイノベーションを支援

 


10.人や国の不平等をなくそう

国内および国家間の格差を是正する

《ターゲットの概要》
2030年までに

  • 各国の所得下位40%の所得成長率の国内平均を上回る数値を達成
  • 年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教に関わりなく、能力強化を促進
  • 移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃

その他

  • 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、並びに適切な関連法規、政策などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正
  • 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大
  • 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリング
  • 国際経済・金融制度の意思決定に開発途上国の参加や発言力の拡大
  • 秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進
  • 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施
  • 政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進

 


11.住み続けられる街づくりを

都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする

《ターゲットの概要》
2020年までに

  • あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施

2030年までに

  • 安全かつ安価な住宅へのアクセスを確保しスラムを改善
  • 全ての人々に、安全かつ安価で持続可能な輸送システムを提供
  • 都市化を促進し、全ての国々が持続可能な人間居住計画・管理能力を強化
  • 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する
  • 水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減
  • 都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減
  • 人々に安全で利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供

その他

  • 開発計画を通じて、都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援
  • 財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国の持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援

 


12.つくる責任つかう責任

持続可能な消費と生産のパターンを確保する

《ターゲットの概要》
2020年までに

  • 化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減

2030年までに

  • 人々が持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つ
  • 天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成
  • 世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させる
  • 廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減

その他

  • 持続可能な消費と生産に関する10年計画(10YFP)を実施し全ての国々が対策を講じる
  • 大企業や多国籍企業などは持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励
  • 持続可能な公共調達の慣行を促進
  • 開発途上国に対し持続可能な消費・生産形態の促進のため科学的・技術的能力の強化を支援
  • 持続可能な観光業に対して開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入

 


13.気候変動に具体的な対策を

気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る

《ターゲットの概要》
2020年までに

  • 開発途上国のニーズに対応するため年間1,000億ドルを共同で動員するUNFCCCのコミットメントを実施し、速やかに資本を投入して緑の気候基金を本格始動させる

その他

  • 気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化
  • 気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む
  • 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する

※国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が、気候変動への世界的対応について交渉を行う一義的な国際的、政府間対話の場であると認識している。

表8 主な国・地域の温室効果ガス削減目標

削減比率と期限 備考
日本 2013年比 2030年までに26% 2050年に80%削減を閣議決定
アメリカ 2005年比 2030年までに26~28% 2017年6月にパリ協定離脱
推移目標も取り消し
EU 1990年比 2030年までに40%
中国 2005年比 2030年までに60~65% GDP当りのCO₂排出量
インド 2005年比 2030年までに33~35% GDP当りのCO₂排出量

 


14.海の豊かさを守ろう

海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する

《ターゲットの概要》
2020年までに

  • 強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う
  • 漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了
  • 国内法及び国際法に則り、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全
  • 過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃

2025年までに

  • 海洋ごみや富栄養化を含むあらゆる種類の海洋汚染を防止し大幅に削減

2030年までに

  • 漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大

その他

  • 海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する
  • 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させる
  • 開発途上国に対する適切かつ効果的な待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、海洋の健全性の改善と、開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う
  • 小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する
  • 海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する

 


15.陸の豊かさも守ろう

陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る

《ターゲットの概要》
2020年までに

  • 森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系の保全、回復及び持続可能な利用を確保
  • 森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加
  • 外来種の侵入を防止し、これらによる陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入
  • 生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む
  • 絶滅危惧種を保護し、絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる

2030年までに

  • 砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復
  • 生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う

その他

  • 国際合意に基づき、遺伝資源への適切なアクセスを推進
  • 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じる
  • 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う
  • 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための資源を動員
  • 地域コミュニティ経済能力を高め、密猟及び違法な取引を防ぐための支援を強化

 


16.平和と公正をすべての人に

持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

《ターゲットの概要》
2030年までに

  • 違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、あらゆる形態の組織犯罪を根絶
  • 全ての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供

その他

  • 全ての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少
  • 子供に対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅
  • 国家及び国際的な法の支配を促進し、全ての人々に司法への平等なアクセスを提供
  • あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少
  • 有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展
  • 対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保
  • グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化
  • 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障
  • 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関する能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化
  • 持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進、実施

 


17.パートナーシップで目標を達成しよう

持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

《ターゲットの概要》
【資金】

  • 課税及び徴税能力の向上、国内資源の動員を強化
  • 先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%という目標を完全に実施する。少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標を奨励
  • 複数の財源から、開発途上国のための追加的資金源を動員
  • 必要に応じた負債による資金調達、債務救済及び債務再編の促進を目的とした政策により、開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、重債務貧困国(HIPC)の対外債務への対応により債務リスクを軽減する
  • 後発開発途上国のための投資促進枠組みを導入及び実施する

 

【技術】

  • 科学技術イノベーション(STI)及びこれらへのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上
  • 開発途上国に対し、譲許的・特恵的条件などの相互に合意した有利な条件の下で、環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進
  • 2017年までに、後発開発途上国のための技術バンク及び科学技術イノベーション能力構築メカニズムを運用し、情報通信技術(ICT)をはじめとする実現技術の利用を強化

 

【キャパシティ・ビルディング】

  • 開発途上国における持続可能な開発目標を実施するための効果的かつ的をしぼった国際的な支援を強化

 

【貿易】

  • WTOの下での普遍的でルールに基づいた、公平な貿易体制を促進
  • 開発途上国による輸出を大幅に増加させ、特に2020年までに世界の輸出に占める後発開発途上国のシェアを倍増
  • 世界貿易機関(WTO)の決定に矛盾しない形で、全ての後発開発途上国に対し、永続的な無税・無枠の市場アクセスを適時実施

 

【体制面】

  • 政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進
  • 持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する
  • 貧困撲滅と持続可能な開発のため政策の確立・実施にあたっては、各国の政策空間及びリーダーシップを尊重

 

【マルチステークホルダー・パートナーシップ】

  • 全ての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する
  • さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する

 

【データ、モニタリング、説明責任】

  • 2020年までに、開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる
  • 2030年までに、持続可能な開発の進捗状況を測るGDP以外の尺度を開発する既存の取組を更に前進させ、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する

 

環境だけでなく、世界が直面する様々な問題への取組

このようにSDGsは、環境だけでなく世界が直面している様々な問題を解決するための取組を低減しています。

その一方、経済発展と環境のように相反するテーマもあります。その中で、どのように折り合いをつけてそれぞれの問題を解決するのか、それには各国の知恵と、世界での協調が不可欠です。
 

地球温暖化とパリ協定

パリ協定

パリ協定とは、2015年にパリで開かれた「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で合意された、温室効果ガス削減に関する国際的取り決めのことです。
パリ協定では、次のような世界共通の長期目標を掲げています。

  • 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
  • できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる

日本も批准手続きを経て、パリ協定の締結国となりました。この国際的な枠組みの下、主要排出国が排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成長の両立を目指すとしています。

最大の二酸化炭素排出国アメリカは、ドナルド・トランプ米大統領が2017年6月にパリ協定から離脱を宣言し、2020年11月4日に正式離脱しました。その後、バイデン大統領に変わった2021年2月19日正式に復帰しました。
 

パリ協定が画期的といわれる2つのポイント

パリ協定は歴史的に重要な取組で、特に画期的な点は、途上国を含む全ての参加国に、排出削減の努力を求めたことです。

京都議定書では、排出量削減の法的義務は先進国のみ課せられました。しかし2016年の温室効果ガス排出の国別シェアは、中国が23.2%で1位、米国が13.6%で2位、EUが10.0%で3位、インドが5.1%でロシアと並んで同率4位です。日本の温室効果ガス排出量シェアは2.7%で8位です。

図3 世界のエネルギー起源Co²排出量(2018年)に占めるG20諸国の割合 (環境省ホームページより)

図3 世界のエネルギー起源Co²排出量(2018年)に占めるG20諸国の割合 (環境省ホームページより)

パリ協定では、途上国を含む全ての参加国と地域に、2020年以降の「温室効果ガス削減・抑制目標」を定めることを求めています。加えて、長期的な「低排出発展戦略」を作成することも求められています。

一方パリ協定は、各国が自主的に取り組むことが求められています。この自主的な取組はこれまでの国際交渉で日本が提唱してきたものです。その結果、各国が自国の国情を織り込み、

削減・抑制目標を自主的に策定する

ことが認められました。
 

日本の削減目標とビジネスへの影響

日本では、中期目標として、2030年度の温室効果ガスの排出を2013年度の水準から26%削減することが目標として定められました。「この目標は低いのではないか」という声もありますが、各国が自主的に定めた目標は基準年度や指標などがバラバラなので比較するには注意が必要です。表9は主要排出国の削減・抑制目標を比較したものです。日本の数値は一見低いように見えて、かなり高い目標だと分かります。

図4 各国の二酸化炭素排出削減目標(出典)主要国の約束草案(温室効果ガスの排出削減目標)の比較(経済産業省 作成)

図4 各国の二酸化炭素排出削減目標
(出典)主要国の約束草案(温室効果ガスの排出削減目標)の比較(経済産業省 作成)

・日本は2013年と比べた場合の数値、米国は2005年と比べた場合の数値、EUは1990年と比べた場合の数値を削減目標として提出
・比較する年度を「2013年」に合わせて数値を比べてみると、日本の目標は高いことが分かる
 

経済と両立しながら低排出型社会を目指す

経済産業省はこうした野心的な目標を達成するため、再生可能エネルギー(再エネ)の導入量を増やすなど低排出なエネルギーミックスの推進と、エネルギー効率化を追求しています。政府の2030年のエネルギーミックスは、再エネを22~24%、原子力を22~20%とするなどの電源構成を見通しています。

図5 エネルギーミックスにおける2030年の電源構成(出典)長期エネルギー需給見通し(経済産業省 作成)

図5 エネルギーミックスにおける2030年の電源構成
(出典)長期エネルギー需給見通し(経済産業省 作成)


 

地球温暖化対策はSDGsの17の目標のうちその1テーマにしか過ぎません。

しかし経済活動、社会生活に与える影響は他の16テーマと比べて極めて大きいものがあります。

ところがその根拠は「地球温暖化」という科学的に完全に解明されているとは言えない現象です。実際、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)(注)の報告書は誇張されていると考える専門家もいます。

なにより現在の地球温暖化の議論には重大な問題があります。

これについては、別の経営コラムでお伝えします。
 

参考文献

「環境問題のウソとホントがわかる本」杉本裕明 著 大和書房
「図解SDGs入門」 村上芽 著 日本経済新聞出版
「異常気象と地球温暖化」鬼頭昭雄 著 岩波新書
「地球温暖化の不都合な真実」マーク・モラノ 著 日本評論社
「地球温暖化 そのメカニズムと不確実性」日本気象協会 朝倉書店
「SDGsとは何か 世界を変える17のSDGs目標」安藤 顯 著 三和書籍
「不都合な真実」アル・ゴア 著 ランダムハウス講談社

 

 

経営コラム ものづくりの未来と経営

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