「イノベーションを実現する組織とは?その1」~イノベーションとルーンショット~

目次
    1. 中小企業とイノベーション
    2. イノベーションの呼び方
      1. ムーンショット
      2. ルーンショット
      3. 持続型イノベーションと破壊型イノベーション
      4. パラダイム破壊型イノベーション
      5. 破壊的かどうかは結果論
      6. イノベーションという言葉自体が後付けではないか
    3. イノベーションを生み乱す組織「ルーンショット養成所」
      1. ルーンショット養成所1「イギリス王立協会」
      2. ルーンショット養成所2「ベル電話研究所」
      3. ルーンショット養成所3「科学研究開発局 (OSRD)」
      4. ルーンショットを受け入れようとしない軍
      5. ルーンショット養成所4「アメリカ優位の礎となった(DARPA)」
      6. 参考文献
    4. 経営コラム ものづくりの未来と経営
    5. 中小企業ができる簡単な原価計算手法
      1. 書籍
      2. セミナー
      3. 原価計算システム

イノベーション実現の物語の多くは、
「画期的なアイデアを生み出した人が主役となり、苦難の末実現する」
というものです。
実際は主の他に脇役に当たる人も舞台上には数多くいます。

そうした中で生まれた新しいアイデアは不完全な点の多い「醜い赤ん坊」です。多くの組織では、この醜い赤ん坊は無視され、イノベーションの機会は失われます。

ところがこれをシステマティックに「醜い赤ん坊を育み、実現した組織」がありました。このイノベーションを実現する組織について考えました。
 

中小企業とイノベーション

イノベーションは「技術革新」とも訳されたこともあって、どうしても革新的な製品、例えばソニー ウォークマンやアップル iPhoneなどを想像します。そして中小企業にはイノベーションは関係がないと思ってしまいます。

しかしこれまでやったことのない取組や方法、新しい市場や新しい商圏への挑戦は、中小企業にとってはリスクの高い挑戦です。中小企業がこれらに取り組むことは、大企業がイノベーションに取組むのに匹敵する困難さ、内部の抵抗、リスクがあります。
 

「業況の悪化に経営者が意を決して新たな事業に取組んでも、社員の反応は鈍く積極性が感じられない」、あるいは「熱心な社員が新たな顧客へ販売や新しい商品の提案をしても、経営者が拒絶し、その社員は会社を去ってしまう。」
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

企業には

アイデアを生み出す人(アーティスト)既存事業をうまく回す人(ソルジャー)

という全く異なるタイプの人材がいます。2つは価値観が全く異なり常に衝突しトラブルを起こします。

ところが2つの人材の良さをうまく活かし、数々のイノベーションを実現した組織があったのです。それらの組織に共通するのは「あるルール」です。

サフィ・バーコールは、その著書「LOON SHOTS」で、そのルールを

「ブシュ・ヴェイル ルール」

と名付けました。この「ブシュ・ヴェイル ルール」とはどんなルールでしょうか?
 

イノベーションの呼び方

サフィ・バーコールは「LOON SHOTS」でイノベーションを2種類に分けています。
 

ムーンショット

月ロケットの打ち上げのようなビッグプロジェクトことです。「大きな意義を持つと誰からも期待される、野心的でお金のかかる目標」です。実現するにはこれまでの取組を着実に積み上げた土台に、新たなブレイクスルーを加える必要があります。
 

ルーンショット

Loonとは、「頭がいかれた、変な」という意味です。バーコールは、

「誰からも相手にされず、頭がおかしいと思われるが、実は世の中を変えるような画期的なアイデアやプロジェクト」

つまりブレイクスルーです。

つまり
ムーンショットは目標、
ルーンショットはやり方
と言えるでしょう。

ルーンショットには以下の2種類があります。
 

◆Pタイプルーンショット

製品(Product)の驚くべきブレイクスルーです。このタイプのルーンショットに対し、最初人々は
「ものになりそうにない」「ヒットしようがない」
と思います。
ところがふたを開けると大ヒットします。そして古い製品は駆逐され、新しい製品やサービスが取って代わります。これまでのビジネスは「突然死」し、劇的な変化が起きます。
 

◆Sタイプルーンショット

戦略(Strategy)の驚くべきブレイクスルーです。特に新しい技術はなく、新しいビジネスのやり方や既存製品の新しい応用です。
このタイプのルーンショットは、市場の複雑な振る舞いに隠されてしまい、外からは変化がわかりません。いつの間にか市場を席巻したグーグルやフェイスブックなどがこれに当てはまります。
 

【フランチャイズ】
バーコールは「従来の事業をひたすら拡大する組織」をフランチャイズと呼びました。
フランチャイズでは、ルーンショットは無視されるか、実現が阻害されます。
 

持続型イノベーションと破壊型イノベーション

C.M.クリステンセンは著書『イノベーションのジレンマ』で、イノベーションに持続型イノベーションと破壊型イノベーションの2つがあると述べました。
 

◆持続型イノベーション

既存企業が行う顧客の要望に忠実に改良を組み重ねていくことです。
 

◆破壊型イノベーション

「破壊的イノベーション」には、下記の2種類があります。多くの場合は、この2種類のイノベーションが複合しています。
 

【ローエンド型破壊】
既存市場において「オーバーシューティング」に陥ったリーダー企業は、より高価格・より高機能な製品に軸足を移していきます。
これに対し新たな企業が“破壊的技術”で、低価格や使いやすさを実現して、空白になりつつあるローエンド市場に参入します。そしてローエンド市場で圧倒的なシェアを獲得します。
そこから改良を重ね、徐々により上位の市場の顧客のニーズを満たすようになり、遂にはハイエンド市場にも進出します。最終的には既存のリーダー企業は、限られた上位機種の市場へと逃避し、最後は駆逐されてしまいます。

一時、世界市場で高いシェアを誇ったテレビなど日本の家電製品は、高品質、高機能を求めていくうちに、より高機能、高価格になっていきました。そして製品の機能が顧客のニーズを超えてしまい(オーバーシュート)、韓国、中国の低価格品にローエンド市場を奪われ、最後にはハイエンド市場も失いました。
 

【新市場型破壊】
“破壊的技術”を用いた製品で、これまでとは異なる市場に参入することです。その多くは、これまで消費のない状況「無消費」に消費を起こすイノベーションです。
かつて任天堂はゲーム機市場ではプレイステーションに性能で押されていました。そこで、Wiiでは「体を動かして楽しむ」、あるいは「家庭でのフィットネス」を前面に打ち出しました。それまでゲーム機に縁がなかった女性や高齢者という新たな市場を開拓しました。
 

パラダイム破壊型イノベーション

クリステンセンの「破壊的イノベーション」は、より性能の低い製品が従来の製品の市場を奪うもので「性能をイノベーションの起点」としています。京都大学大学院 総合生存学館 山口栄一教授は、この性能による破壊とは別に、パラダイム破壊型のイノベーションについて述べています。
 

◆パラダイム破壊型イノベーション

パラダイム(paradigm)とは、特定の分野、その時代において規範となる「物の見方や捉え方」を指します。
パラダイム破壊型イノベーションとは、これまでの価値観を破壊するイノベーションのことで、技術開発を継続し、今まで科学的にできないとされてきたことをできるようにするものです。

例えば青色LEDの開発では、当時すでに技術が確立していたセレン化亜鉛結晶を使った研究はなかなか進ま見ませんでした。NTT(松岡氏)、松下電器(赤崎氏、名大へ移籍)は開発を中止し、東芝、日本電気、ソニーも最後までセレン化亜鉛結晶では青色LEDは実現できませんでした。
これに対して窒化ガリウム結晶に取組んだ赤崎氏(名大)、中村氏(日亜化学)が青色LEDの開発に成功し、窒化ガリウム結晶というパラダイム破壊を実現しました。
対して、従来の手法の延長線上で性能向上したものは「パラダイム持続型イノベーション」とも呼びます。
 

破壊的かどうかは結果論

このように数々の新製品や新ビジネスが従来のビジネスを「破壊」し、既存企業が退出しています。
しかしバーコールは

『破壊的かどうか』は、後付け、結果論に過ぎない

といいます。
 

●トランジスタ

1947年点接触型トランジスタが発明されました。トランジスタは、当時増幅器やリレースイッチの耐久性を高めるために開発されました。しかしできたものは、真空管よりはるかに高価で、増幅できる電流は真空管よりもはるかに微弱で、どう使えばいいのかわからない代物でした。当初は軍隊など限られたユーザーしかありませんでした。
ソニー(当時、東京通信工業(株))は、アメリカから高額なトランジスタの特許を購入し、自らトランジスタを製造しトランジスタラジオを実現しました。
 

●ウォルマート

サム・ウォルトンは、大都市のデパートのオーナーになるつもりでした。しかし妻の「大都市はやめて、1万人いれば十分」という意見のため、出店したのはアーカンソー州の人口3,000人の町でした。
そしてアメリカの小さな町には、数多くのビジネスチャンスがあることに気付いたのです。
 

●イケア

スウェーデンで雑貨の通信販売をしていたイングバル・カンプラードは、

通信販売の商品リストに家具を加えたところ、販売は非常に好調で、国内の家具店を脅かすほどになりました。
そこで家具店のオーナー達は、デザイナーがカンプラードと仕事をするのを禁じました。さらにカンプラードが新製品を開発するのも妨害しました。

カンプラードは仕方なく自らデザイナーを雇わざるを得なくなりました。そしてイケア独自のデザインが生まれました。

こうしてカンプラードが独自デザインの家具をつくり始めると、

家具店のオーナー達はイケアが国内の家具メーカーと取引するのを禁じました。
カンプラードは仕方なくポーランドに行き家具メーカーを探しました。そしてポーランドで製造した結果、原価が半分になったため、カンプラードはその分家具の価格も下げました。販売はさらに増加しました。

カンプラードは業界を「破壊」するつもりは全くありませんでした。生き残ろうと努力した結果、その努力が決定的な差別化につながりました。後年、カンプラードは

「スウェーデンの既存の家具店が堂々と戦いを挑んでいたら、こんなに成功できたかわからない」

と語っています。

図1 イケア創業者イングバル・カンプラード(Wikipediaより)
図1 イケア創業者イングバル・カンプラード(Wikipediaより)


 

イノベーションという言葉自体が後付けではないか

こうして様々な事例をみるとイノベーションと呼ばれるものが後付けではないかという気がしてきます。多くの企業は、事業活動において
「直面している問題」、「将来実現したい技術・製品」「満たされない顧客ニーズ」
といった課題に向き合ってきました。それが従来の技術や製品で解決できれば、特に目を引かなかったかもしれません。しかし最善の解決方法を探した結果、たまたまそれが新しい技術や製品だった場合、イノベーションと呼ばれたのではないでしょうか。

例えば自動車の燃費向上を目指すメーカーは、エンジンの燃焼効率アップや変速機の多段化・ワイドレシオ化、アイドリングストップなどの様々な改良や技術開発を行いました。(ある意味、持続的イノベーションです。) しかしトヨタ自動車は新たにプリウスでハイブリッド技術を開発しました。これはイノベーションと呼ばれました。

一方、技術的なブレイクスルーはなくても、イケアのように新たなビジネスが急速に発展し従来のビジネスを圧倒することもあります。 どの企業も企業間競争を勝ち抜くために常に新たな技術や製品・サービスに取組んでいます。その中で

たまたま大成功したものをイノベーションと呼ぶことで他のものとは違うものだと思ってしまう

のではないでしょうか。
 

なぜならイノベーションを起こした人たちは、

イノベーションを起こそうとしたわけではないからです。

ソニーの井深大氏はラジオには手を出さないと決めていました。当時の真空管式の大型ラジオは大手メーカーがすでに圧倒的に優位に立っていたからです。しかしトランジスタの技術を手にしたことで、ラジオに取り組みました。

イケアは家具の通信販売で既存企業から妨害されたため、自社でデザイナーを雇い、ポーランドのメーカーに委託したことで大きく差別化できました。

青色LEDの開発で日亜化学の中村氏は、すでに大手が取り組んでいるセレン化亜鉛結晶はたとえ成功しても勝ち目がないと考え、他がやっていない窒化ガリウム結晶に取り組みました。
 

イノベーションを生み乱す組織「ルーンショット養成所」

一方で世の中を変えた画期的なブレイクスルーの多くは、最初は誰からも相手にされず「頭がおかしい」と思われるようなアイデア「ルーンショット」から生まれました。
実は多くのルーンショットは、その奇抜さ、斬新さゆえに、多くの人から無視されて、葬られてきました。
ところがこのルーンショットを守り育てる「ルーンショット養成所」の役割を果たした組織があったのです。
 

ルーンショット養成所1「イギリス王立協会」

なぜ近代科学が中国、インド、イスラムでなくイギリスだったのでしょうか?

大英帝国の黄金期に大きな役割を果たしたのがイギリス王立協会です。この王立協会はルーンショット養成所の役割を果たし、この王立協会はロバート・ボイル、ロバート・フック、アイザック・ニュートンなど近代物理学や数学に貢献した科学者を支援しました。
当時はまだ魔術や錬金術が幅をきかせていた17世紀に、ロバート・フックなどが行っていた実験を主体とした科学的な取組を会員が共有するようにしました。これがさらに新たなアイデアを生み出す下地となったのです。
 

1687年ロバート・ボイルの助手ドニ・パパンは圧力釜を使った料理法の本を出版しました。そこに空気ポンプにピストンをつける方法がひっそりと書かれていました。それは蒸気機関の原理そのものでした。

1712年これを見たニューコメンが世界初の蒸気機関を発明しました。その後多くの人がこぞって蒸気機関に取り組みました。

ニュートンが万有引力を発見し「プリンキピア」を著すまでに、

  • 惑星の動きに関しヨハネス・ケプラーが、
  • 万有引力に関してロバート・フックが、
  • 円運動と遠心力に関してクリティアーン・ホイヘンスが

アイデアを出していました。

ニュートンは、これらの考えを「合成」した上で体系化して「プリンキピア」を著しました。

王立協会というルーンショット養成所は、こういったアーティストたちを保護し、それらのアイデアを合成する環境を提供していたのです。

図2 ドニ・パパンの蒸気機関(Wikipediaより)

ルーンショット養成所2「ベル電話研究所」

グラハム・ベルがベル電話会社を設立してから30年、AT&Tと改称したベル電話会社は経営危機に陥っていました。当時、遠距離の電話は信号の減衰が大きく音が小さくてろくに聞き取れませんでした。電話は近距離の通話に限定され、しかも競合の電話会社が林立していました。

1907年J・P・モルガンがAT&Tの経営権を握ると、セオドア・ヴェイルが社長に就任しました。ヴェイルは問題を解決するためには、今までにないアイデアが必要と考えました。そしてこれを実現するために、ルーンショットを隔離・保護して研究に専念するベル電話研究所を設立しました。
このヴェイルの研究所は、その後半世紀の間にトランジスタ、太陽電池、CCD、初の連続動作レーザー、UNIX OS、C言語など数々のルーンショットをを生み出しました。所属した研究者らは合計8つのノーベル賞を受賞しました。こうしてAT&Tはアメリカ最大の企業に成長しました。

図3 セオドア・ヴェイル
図3 セオドア・ヴェイル(Wikipediaより)


 

ルーンショット養成所3「科学研究開発局 (OSRD)」

1930年代MIT副学長ヴェネヴァー・ブッシュは、来るドイツとの戦争には従来にない全く新しい技術が必要だと考えていました。しかし「巨大なフランチャイズ組織」である軍では、「銃と銃剣を装備した歩兵がいれば十分」と考えていました。海軍は、戦艦の数が重要だと考えていました。
ドイツとの技術格差が広がっていくことを懸念したブッシュは、「突飛なアイデアを自由に試す組織」が必要なことを大統領のアドバイザーに提言しました。そして科学研究開発局(OSRD)を設立しました。OSRDは、19の産業技術研究所、32の学術機関と126の研究契約を締結しました。

図4 ヴェネヴァー・ブッシュ(Wikipediaより)


 

このOSRDが生み出したものが、レーダー、近接信管、水陸両用トラック(DUKW)、そして原子爆弾です。

図5 水陸両用トラック(DUKW)と近接信管(Wikipediaより)
図5 水陸両用トラック(DUKW)と近接信管(Wikipediaより)


 

◆レーダー 偶然の発見

1922年ワシントンの海軍航空基地に勤務するレオ・ヤングとホイト・テイラーは、海上での船舶の交信を改良するため、ポトマック川の両岸に送信機と受信機を置いて高周波無線の実験を行っていました。そしてポトマック川を船が通過する際、音量が倍増し、その後、一旦途切れ、また倍増することに気付きました。こうして2人はレーダーの原理を発見したのです。2人は上司にレーダーの原理の手紙を書きました。しかし上司は無視しました。

図7 レーダー原理の発見
図7 レーダー原理の発見


 

8年後レオ・ヤングは、技師ローレンス・ハイランドとともに、地上の発信器から電波を発信しました。すると上空2,400メートルを飛ぶ飛行機が検知できることを発見しました。再びレーダーの原理を確認したヤングは、提案書を提出しました。しかし軍の反応は鈍く、それから5年経って専任者がようやく1人ついただけでした。

しかしOSRD設立後、ブッシュが強力に後押ししたことでレーダーの開発は加速しました。レーダーは完成し、戦況に大きな影響を与えました。
ドイツとイギリスが航空機で対決したバトル・オブ・ブリテンでは、レーダーによりイギリスはドイツ軍機をレーダーで事前に検知できました。その結果、上空に待機した戦闘機がドイツ軍機を待ち伏せできたのです。

その後開発されたマイクロ波レーダーは航空機に搭載できるようになりました。しかもこのレーダーは潜水艦の潜望鏡まで検知できました。

開戦初期にドイツのUボートは猛威を振るいました。イギリスに物資を運ぶ輸送船はことごとく沈められました。これをレーダーは変えました。
マイクロ波レーダーによりUボートを航空機から発見し攻撃できるようになりました。1943年5月にはドイツは1ヶ月で41隻のUボートを喪失しました。そしてドイツはUボートによる通商破壊を断念しました。

OSRDが開発した近接信管は、目標に命中しなくても目標の15メートル以内に近づくだけで爆発しました。これは砲撃の効果を7倍に高めました。さらに近接信管は航空機に対する防空射撃にも飛躍的に効果を高めました。

ルーンショットを受け入れようとしない軍

ところが巨大なフランチャイズ組織の軍は、こうしたルーンショットを受け入れようとしません。

近接信管に全く関心を示さない陸軍に対し、ブッシュはヨーロッパの戦線まで行き、参謀長に直言しました。陸軍がレーダーに関心を持たなかったため、ブッシュは陸軍長官スティムソンに直接電話もしました。

一方でブッシュは、ルーンショットを確実に現場に移転するために、開発チームに対し現場からのフィードバックを重視させました。初期の航空機用レーダーが使われなかった時、パイロットに「なぜ使わないのか」開発チームに説明させました。そして初期のレーダーは、戦闘中に扱うには操作が複雑すぎることを開発チームに納得させ、改良させました。
 

ルーンショット養成所4「アメリカ優位の礎となった(DARPA)」

数々の画期的な兵器を生み出したOSRDですが、ブッシュの描いていたOSRDを国立研究所にするという構想は、大戦終了後トルーマン大統領に否定されてしまいました。
OSRDは解体されブッシュも退きました。アメリカは基礎研究を欧州など他国に依存するようになりました。

その12年後、アメリカに衝撃が走ります。

1957年ソ連が衛星スプートニク1号の打ち上げに成功したのです。新たに国防長官に就任したニール・マッケロイ(元P&GのCEO)は、斬新なアイデアに資金を出す国直属の組織が必要なことを当時のアイゼンハワー大統領に強く提案しました。この提案は大統領に承認され、マッケロイはかつてブッシュと共に仕事をした人たちからアドバスを受け、高等研究開発局(ARPA、その後DARPAに改称)を設立しました。ブッシュの描いた構想は実現したのです。

DARPAは、数多くの風変わりなプロジェクトに資金を提供し、失敗の山を築きました。しかしその中からインターネットやGPS、音声認識(Siri)など多くのイノベーションが生まれたのです。そしてこれが現在のIT先進国アメリカの礎となったのです。
 

参考文献

「LOON SHOTS」 サフィ・バーコール著 日経BP
 

本コラムは「未来戦略ワークショップ」のテキストから作成しました。

経営コラム ものづくりの未来と経営

IoT、DX、AI、次々と新しい技術が生まれ、新聞やネットで華々しく報道されています。しかし中には話題ばかり先行し具体的な変化は?なものもあります。経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、それぞれの技術やテーマを掘り下げ、その本質と予想される変化を深堀したコラムです。

このコラムは「未来戦略ワークショップ」のテキストを元にしています。過去の過去のコラムについてはこちらをご参照ください。

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