アイシン・シロキ統合が意味するもの ~自動車部品メーカーの競争激化と下請け企業への影響~
12月20日の中日新聞にトヨタ自動車グループの大手部品メーカーアイシン精機が、
シロキ工業を完全子会社する記事が載っていました。
アイシン精機は、トランスミッション、カーナビで有名ですが、他にもブレーキや
シート骨格、窓枠なども製造しています。
一方でシロキ工業は、シート骨格やパワーウィンドウ、窓枠などを製造し、売上高は1,179億円(2014年3月期)です。
この統合により、アイシンの窓枠などの事業はシロキ工業に集約し、アイシン精機と
シロキ工業のシート骨格事業は、トヨタ紡織に移管されます。
下図はこの再編を示します。
アイシン精機の事業再編
2014年12月20日の中日新聞の記事を元に筆者が作図
この再編の理由は、自動車部品メーカー間の競争が激しくなっていることです。
外装・機能部品の最大手は、カナダのマグナ社ですが、これら大手から中国の部品メーカーまで多くの競合がトヨタ自動車をはじめとする日本メーカーへの参入を狙っています。
先日のポートメッセナゴヤで行われた「人とくるまのテクノロジー展」でも、マグナ社は出展していました。
「人とくるまのテクノロジー展」
またドイツのZF社は、アメリカのTRWオートモーティブ社を買収し、首位のドイツのボッシュ社に肉薄しました。
自動車メーカーは、特に価格の安い新興国向けには、既存の系列にこだわらず、
安いメーカーを採用する方針であり、すでに一部の案件では系列メーカーが
失注することも起きています。
このような環境下、自動車部品業界第五位のアイシンは、11月下旬デンソーからブレーキ事業を、トヨタ自動車からマニュアルトランスミッション事業の移管を受け、トヨタグループ内での事業を集約したばかりでした。
これはトヨタ自動車が部品の共通化を進め競争力を高める「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の影響もあります。
つまり自動車部品メーカー自体が、生き残りをかけた激しい戦いになっています。
この再編が地域の中小企業にどのような影響を及ぼすのか。
中小企業の中には、これらの部品メーカーに部品や金型を納めている企業もあります。
当面は発注先が変わっても発注量は変わらないかもしれません。
しかし会社によって購買管理も異なり、購買担当者のやり方も変わります。
また移管先にも同様の下請け企業があった場合、どちらかに発注が集約される可能性もあります。
さらに次のモデルの立ち上げのとき、従来通りの発注が得られかどうか、重要になります。
そのためには発注先の購買だけでなく、生産技術や開発とも密接な関係を築く必要があります。
そのためには、まず生産技術や開発を訪問し、彼らの求めていることを聞き出すことです。
下請け企業の営業の多くが、自社のPRと顧客の要求に応えることでした。
今後は、さらに進んで顧客との面談の中から、顧客が気付かないような課題を聞き出すことができれば、競合に先んじて提案することができます。
私自身、設計者として加工メーカーと面談した時、「もう少し掘り下げてくれれば…」と思うこともありました。
ぜひ、積極的に訪問し、課題を聞き出すことをお勧めします。
一方、これまでは自動車部品の下請け企業は、自動車メーカーの動向が最も気になることでした。
トヨタ自動車がどんな車種を何台生産するかが、自社の受注量を決める要素でした。
ところが今やトヨタ自動車が何台売れても、自動車部品メーカーが失注することもあります。
さらに自動車部品メーカーがその製品を扱わなくなるリスクも出てきました。
このような環境下で経営を安定させるには、
1.発注先を複数の部品メーカーや自動車メーカーに拡大する
2.自動車以外の業界にも取引先を拡大する
このいずれかを進めなければなりません。
ところが目下の受注は好調な部品メーカーも多く、今の陣容で如何に受注をこなすか(特に人手の確保)が、最大の課題の会社もあります。
それでも、他の取引先を如何に広げておくか、これが会社の命運を決めるかも知れません。
ある日、突然はしごを外されないためにも。
自動車メーカーの動向と大手自動車部品メーカーの今後の変化ついて書いた記事は、こちらから参照いただけます。
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