中小企業のものづくり改善 ~5Sについて その2
前回は5Sのうち、【整理】について述べました。
今回は、【整頓】について述べます。
この【整頓】とは、「必要なもの」を置き場を決めて表示することです。
つまり「置く場所を決める」とともに「表示すること」が必要です。
この置くルールに3定があります。
これは、
〈定位〉 どこに (置く場所)
〈定品〉 何を (置く品物)
〈定量〉 どれだけ (置く量)
のことです。
表示の対象は、日常で良く使用される原材料、製品、又は仕掛品、さらに工具や刃物、治具などです。
まず、【整頓】が全くできていない場合は、〈定量〉は後回しにして、どこに、何を、置くかを明確にして、置き場所に表示します。
これも大企業の整頓の例を見ると、
工具等がすべて整然と壁に掛かっていたり、
置き場所がウレタンで工具の形にくり抜かれていたり、
素晴らしい例があります。
しかし最初からそれを達成するのは無理がありますので、置き場所や収納場所を決めて、テプラやカンバンで表示するまでとします。
そして使い終わったら必ずそこへ戻すように全員に指導します。
特に工具や刃物などは、一日の作業が終了した後は必ず正しい位置に戻すように指導します。
それでも時間の経過とともに正しい置き場所になかったり、表示と置いてあるものが異なったりします。
従って定期的に置き場所の点検を行ない、表示を直したり正しい場所に移動したりします。
この定期的なチェックを怠ると、最初はきれいに置いてあったのが、いつの間にか元に戻ってしまいます。
これは、誰かが工具や製品を正しく置かずに乱雑な状態にしておくと、「忙しいときはルールを破って適当において良い」というメッセージをその品物が発するからです。
その結果、他の作業者も次々と置き場所を守らなくなり、形骸化します。
これを「壊れ窓理論」(ブロークン・ウィンドウズ理論)と言います。
業務が形骸化する原因の多くは、この「壊れ窓理論」で説明されます。
この「壊れ窓理論」については、以下を参照ください。
ブロークン・ウィンドウズ理論は、米国ルドガーズ大学の刑事司法学者ジョージ・ケリング教授の理論です。
ケリング教授は世界中の警察活動を調査・分析して、ブロークン・ウィンドウズ理論に至りました。
これは1969年にスタンフォード大学のフリップ・ジンバルド教授(心理学者)によって行なわれた実験によります。
カリフォルニア州の住宅街に自動車を放置し、
(1)ナンバープレートを外し、ボンネットを空けたままにしたが、最初の1週間は何も無かった。
(2)そこで、フロント・ガラスを壊してみた。すると、すぐにバッテリーが持ち去られ、その後、多くの部品が持ち去られてしまった。
(3)2週間が終わる頃には、落書きが書かれ、ほとんどの窓ガラスが割られ、車は完全に破壊されてしまった。
ケリング教授は、この実験を以下のように理論付けました。
どのステップにおいても『自分だけではない』と言う気持ちを犯罪者に与えており、そのことが以下のステップを徐々に進め犯罪が増加するのです。
(1)落書きが放置されていると、小さな行動にも罪悪感が薄れやすくなる。
(2)軽犯罪が多発し、治安が悪くなる。
(3)この街は、警察の監視がない場所だと判断され、より凶悪な犯罪者が寄り付く。
(4)犯罪がエスカレートし、凶悪事件が発生する。
ニューヨーク市は1980年代からアメリカ有数の犯罪多発都市となっていたが、1994年にジュリアーニ市長は治安回復のために、地下鉄の落書きなど軽微な犯罪を徹底的に取り締まりました。
その結果、凶悪犯罪も大幅に減少、治安が回復し、ニューヨークは安心して暮らせる街になったといわれています。
モノづくり改善 ~中小企業の5Sについて その3はこちらからご覧ください。
ものづくり改善 段取り時間短縮については、こちらから参照いただけます。
ものづくり改善 リードタイム短縮については、こちらから参照いただけます。
ものづくり改善 品質改善については、こちらから参照いただけます。
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