初めて展示会に出展するので業者に必要なものを見積もってもらうと、その金額に驚いてしまいます。
「こんなにお金をかけて本当に成果があるのだろうか?」
と疑問に思います。
そこで予算を少なくすると、ブースの装飾は限定されます。
しかし、そもそも中小企業と大企業では展示会に出展する目的が違います。大企業は自社の認知度と企業イメージを高めることが目的です。しかし中小企業が展示会に出展する目的は、優良なお客様と出会うことです。
では。そのためには、何が必要でしょうか?
お客様がブースに来たくなるものは何でしょうか
ブログ「展示会の活用 その2 人をひきつけるもの」で、お客様に注意を向けてもらうには、お客様が関心を持っていることを訴えることと書きました。それはあなたの会社の名前や製品でなく、お客様自身の課題や悩みです。それを解決するようなものがあれば、お客様は思わず目を留めます。
それをお客様に訴えるのがキャッチコピーです。
例えば、
- 体重が気になる人には、「10日間で3kg」
- 酸値が高い人には「プリン体ゼロ」
- ネジのゆるみに困っている人には、「緩まないネジ」
です。
それに対して自社の製品に全く関係のない派手な展示物やショーのような演出だと、確かに多くの人が来ますが、その大半は自社の製品に関心のないお客様です。これでは優良なお客様と出会うという目的が果たせません。

自社に関心のないお客様が多いと
では、どうしたらキャッチコピーに目を向けたお客様にブースに入っていただくことができるでしょうか?
あなたが展示会に行ったときはどうだったでしょうか?
おそらくブースに入る前に一瞬躊躇することはなかったでしょうか?
例えば
「早く帰りたいし、もしブースでスタッフにつかまって長々話されるといやだなあ」
と思ったことは…。
それでもブースに入ったのはなぜでしょうか?
ブースに入りたくなる理由1 貴重な情報
そのひとつは情報です。キャッチコピーに気が付いて、それに関心を持ったお客様は、それについてもっと知りたいと思います。ブースに行けば、さらに有益な情報が手に入ると分かればブースに来ます。
そこで通路からブースを見た時に、キャッチコピーとそれに関連した情報が展示パネルにあると良いです。そして展示パネルの文字、特にキャッチコピーにあたる部分は大きな文字にします。近くに寄ってみないと読めないような文字では、通路にいるお客様には分かりません。展示パネルに写真や図があるのも良いです。

キャッチコピーは通路からもわかるように
一方、今はインターネットにより様々な情報が容易に手に入ります。そのためお客様は無理に今ブースに入って調べなくても、帰ってからインターネットで調べればいいと思うかもしれません。私自身、大手メーカーの製品などは、ホームページで調べればわかるので、展示会でカタログやパンフレットをもらいません。ただし、中小企業の場合は、ホームページがない会社もあるので気になった製品の資料はもらうようにしていますが。
できれば「ここだけの情報、今しか手に入らない情報」があると良いです。そのひとつが展示物です。
ブースに入りたくなる理由2 展示物と体験
ホームページには、その製品やサービスのスペックや機能などの文字や画像情報の他、製品が動いている様子など動画もあります。しかし実際に製品を見て触ったり、サービスを体験するのは、展示会の会場でないとできません。製品やサービスを購入する場合は、そのようなリアルな情報も必要です。
そこで通路から良く見えるところに展示物や体験コーナーを設けます。キャッチコピーで関心を持ったお客様は、ブースに行って現物を見たり、触ったりできることが分かるとブースに入ってくれます。それは展示物に触ったり、サービスを体験したりするのは、そこでしか得られない限定したものだからです。
大型の機械や道具の場合は、その傾向がより強くなります。ものづくりに関わる人たちは、現地現物を重視する方が多いため、できるだけ自分の目で確かめようとします。しかし、大型の機械や道具は運ぶのが大変なので、展示会で見ておかないと現物を見るためにメーカーのショールームや工場にまで行かなければなりません。遠くの場合は大変なので、少しぐらい時間を割いても今見ておこうと思います。
忘れられない工夫
お客様がブースに来て、製品についていろいろ知ってもらって帰りました。しかしお客様は、その日多くのブースを訪れ、様々な情報を手に入れています。数日経ったら、あなたの会社のブースのことは、他の多くの情報に埋もれてしまい、忘れられてしまうかもしれません。
私の経験でも1日展示会にいると、非常に多くの情報が集まるため、頭の中は情報の洪水となり、インパクトの薄いブースのことは忘れてしまいます。せっかくお客様に製品やサービスを知ってもらったのに、忘れられてしまっては後につながりません。従ってブースに来たお客様に忘れられないような工夫が必要です。
資料やパンフレットを渡す
最も簡単なのは、パンフレットや資料を渡すことです。パンフレットは引き合いや購入につながるように、スペックや価格、販売ルートを入れておきます。新製品の場合は、発売時期なども書いておきます。
体験で印象付ける
他に忘れられない方法として「お客様に体験してもらう」、「触ってもらう」という方法があります。触ること、つまり触感は、人の五感の中で大きな要素を占めています。この五感が脳に占める割合を図式化したものが図のようなペンフィールドのホムンクルスです。

ペンフィールドのホムンクルス (ウィキペディアより)

ペンフィールドのホムンクルス像 (ウィキペディアより)
これを見ると触感が、五感の中で非常に大きな割合を占めていることが分かります。そこでブースではお客様に積極的に触っていただき、ブースでの体験を脳に深く刻み込んでもらいます。例えば、軽いという特徴がある製品は、実際に持ってもらい軽さを実感してもらいます。できれば、従来品と比較すると良いです。強さが特徴の製品は、お客様に力をかけてもらい強さを実感してもらいます。
展示会でブースを回っていると、展示しているサンプルに「手を触れないでください」と表示していることがあります。お客様が触ることで、けがをしたり、展示物が壊れてしまうようなことがあれば、そのような表示は必要です。しかし触っても問題ないようなものでも、表示していることがあります。
これはもったいないです。
せっかく展示しているのですから、お客様には存分に触ってもらって、その分、心に深く刻んでもらい、後で思い出してもらうようにしましょう。
サンプルを渡す
他にお客様に忘れられないものとして、サンプルがあります。これは自社の加工技術やノウハウをPRするために製作したテストピースのようなものです。一般的に日本人はものを大切にする人が多いので、金属や樹脂の加工サンプルは捨てない人が多いようです。私の先輩の設計者も机の中に何十年も前のサンプルがずっとありました。私の経験では、処分される順序は、カタログ→名刺→サンプルで、サンプルが一番最後までありました。

サンプルは机の中で訴える
このサンプルは、お客様の机の中であなたの会社の存在をひっそりと訴えてくれます。そう考えると、サンプルは実用性がない方が良いです。せっかくのサンプルだから使ってもらおうと、キーホルダーなど実用的なものにする企業もありますが、実用性があるともらった人は使ってしまい、そのうちなくなってしまいます。実用性がなく、机の中に入れても邪魔にならない大きさで、なおかつ高度な技術やノウハウを表しているものが良いです。できればどこかに会社名を入れておくと、思い出した時に連絡しやすいです。
まとめ 展示会で用意するもの
以上のことをまとめると、展示会では、以下のものを用意します。
- 展示パネル
- 展示物
- お客様に渡す資料
- サンプル(できれば)
展示パネルは、キャッコピーが良く見えるように大きな文字で書きます。そして写真や図などで、そこに役に立つ情報があるようにします。
展示物は、そこでしか体験できない限定された情報です。キャッチコピーに関連するものをうまく見せて、お客様にブースに行ってみようという気持ちになってもらいます。
忘れられないために、資料などを渡します。あるいは、展示物を触ったり、体験したりして、心に刻んでもらいます。
実用性のない小さなサンプルは、お客様の机の中でずっと自社の存在をPRします。
それでは、このようにセットしたブースで、どのようにお客様にPRするのか、ブースでの活動について次回お知らせします。
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