段取 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 数人の会社から使える原価計算システム「利益まっくす」 Sat, 27 Sep 2025 12:06:25 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.7.4 https://ilink-corp.co.jp/wpst/wp-content/uploads/2021/04/riekimax_logo.png 段取 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 32 32 【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか? https://ilink-corp.co.jp/10532.html https://ilink-corp.co.jp/10532.html#respond Mon, 29 Jan 2024 01:11:20 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=10532
このコラムの概要

多くの製造業は価格設定を慣例や競合に頼りがちですが、真に適正な価格を決定するには、精密な原価計算が不可欠です。個々の製品原価、アワーレート、間接費など、すべてのコストを包括的に把握し、客観的な「正味の原価」を算出します。この原価に適正な利益を上乗せすることで、自信を持って提示できる「正しい価格」が生まれ、企業の競争力と持続的な成長の基盤となります。

 
いろいろな費用が上がった場合の値上げの明細について【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?で説明しました。

この見積を元に顧客に値上げをお願いすると「高すぎる」と言われることがあります。顧客から「高すぎる」と言われると、いくらが「適正価格」なのだろうかと思います。

ある製品(部品)の適正価格は、あるのでしょうか。
 

自社の適正価格

 
結論から言えば、ある製品(部品)の絶対的な適正価格はありません。ただし、自社がつくった場合の適正な価格はあります。
 

自社の適正な価格とは?

 自社の適正価格とは、製造原価、販管費をカバーし、必要な利益がある価格です。

この価格であれば、必要な経費をまかなって利益が出ます。残った利益を借入金の返済や老朽化した設備の更新に充てることができます。

利益まっくすで計算した原価は、その工場で発生した費用にもとづくもので、これは「真実」です。従って時間(段取時間、加工時間)が適正であれば、これが自社の適正価格です。
 

会社が違えば、適正価格は違う

 しかし会社が異なれば直接製造費用と間接製造費用の比率、販管費レートが違います。つまり適正価格も違います。
 

規模の異なる会社の原価の比較

 そこで規模の異なる架空の機械加工の会社A社とB社の原価を比較します。

2社とも、マシニングセンタ、NC旋盤などによる部品加工と組立を行っています。ただし2社は規模が違います。

A社 売上7億円、社員43人、うち間接は14人
B社 売上30億円、社員193人、うち間接は87人

A社に比べて、B社は外注品も多く、購買や生産管理など間接部門に多くの人がいます。技術や品質管理の人も多く、品質管理や工程管理の体制は充実しています。
 

構成と売上、製造原価、販管費、利益

 
A社の構成を図1に、B社の構成を図2に示します。

図1  A社の構成

 

図2  B社の構成

A社の売上、製造原価、販管費、利益を図3に示します。

図3  A社の売上、製造原価、販管費、利益
図3  A社の売上、製造原価、販管費、利益

B社の売上、製造原価、販管費、利益を図4に示します。

図4 B社の売上、製造原価、販管費、利益


 

アワーレート、販管費レートの比較

 NC旋盤の現場の間接製造費用を含んだ人と設備のアワーレートの合計 アワーレート間(人+設備)を比較します。

NC旋盤のアワーレート間(人+設備)

A社 アワーレート間(人+設備) : 4,620円/時間
B社 アワーレート間(人+設備) : 7,670円/時間

(アワーレート間(人+設備)の計算については【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?を参照してください。)

人件費と設備の費用(償却費とランニングコスト)は同じです。それでもアワーレートがこれだけ違うのは、間接部門の人件費と工場の経費の違いによるものです。

決算書の製造原価と販管費から計算した販管費レートを以下に示します。

A社 販管費レート : 0.25
B社 販管費レート : 0.057

B社はA社より工場の規模は大きいのですが、販管費はそれほど大きくありませんでした。その結果、B社の販管費レートはA社より小さくなりました。
 

見積金額の比較

 NC旋盤で加工するA1製品の見積金額を比較します。

(見積金額の計算については【製造業の値上げ交渉】3. 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?を参照してください。)

製造時間 : 0.075時間

製造費用
製造費用=アワーレート間(人+設備)×製造時間

A社製造費用=4,620×0.075=346円
B社製造費用=7,670×0.075=575円

製造原価
A1製品 材料費330円 外注費50円
製造原価=材料費+外注費+製造費用

A社製造原価=330+50+346=726円
B社製造原価=330+50+575=955円

販管費
販管費=製造原価×販管費レート

A社販管費=726×0.25=182円
B社販管費=955×0.057=54円

販管費込み原価
販管費込み原価=製造原価+販管費

A社販管費込み原価=726+182=908円
B社販管費込み原価=955+54=1,009円

目標利益率 : 0.087 (A社、B社共)

目標利益
目標利益=販管費込み原価×目標利益率

A社目標利益=908×0.087=80円
B社目標利益=1,009×0.087=88円

見積金額
見積金額=販管費込み原価+目標利益

A社見積金額=908+80=988円
B社見積金額=1,009+88=1,097円

A社とB社では、会社の規模、直接製造費用と間接製造費用の比率、販管費レートが違います。その結果、同じ賃金、同じ費用の設備でも間接製造費用を含んだアワーレートは大きく違いました。

そして見積金額、つまり適正価格も
A社 988円
B社 1,097円

と異なりました。950円の受注金額では利益は、

A社 : 利益=950-908=42円
B社 : 利益=950-1,009=▲59円

A社は42円の利益がありましたが、、B社は赤字でした。

以上の結果を図5に示します。

図5 A1製品の見積金額


 

管理がしっかりしている会社は原価が高くなる傾向

 A社に比べてB社は、以下の特徴があります。

  • 工程管理に専任者がいて、手順書や治具の整備、製造条件の記録や管理がしっかりできている。品質は安定し、製品の製造履歴(トレーサビリティ)も記録・保管している。
  • 品質管理の人員、及び検査・測定機器が充実し、必要な個所はすべて社内で測定・評価できる。
  • 製造技術の専任者がいて技術的に難易度の高い製品も製造条件を工夫して実現できる。

対してA社は価格は低いのですが以下の弱い点があります。

  • 特殊な治具が必要な場合、治具を自社で設計できないため社外に頼まなければならない。
  • 検査・測定機器が十分になく、社内で測定・評価できない項目がある。
  • 製造履歴(トレーサビリティ)を記録・保管する体制がない。

 

製品によって適した仕入先が変わる

 従って製品の要求精度、要求品質、技術的な難易度によって、適切な仕入先は変わります。
 

A社でも問題なく製造できる製品

 難易度が低く、高度な工程管理、製造履歴管理、品質管理が必要でない製品の場合、最適な仕入先はA社です。こういった製品をB社に発注すれば製品は高くなります。
 

高くてもB社に発注すべき製品

 技術的な難易度が高く、不良品が発生すれば重大な問題が起きる製品は、A社ではリスクが高いです。

安いからとA社に発注すれば、手順書が整備されていなかったり、重要な工程の工程管理が不十分だったりして思わぬミスや不良が起きるかもしれません。しかもトレーサビリティがとられていないため、問題が起きた場合、影響範囲を絞り込むことができません。

このような製品は、価格が高くてもB社に発注します。

つまりA社とB社の得意な製品は異なります。これを図6に示します。

図6  A社とB社の得意分野
図6 A社とB社の得意分野


 

市場価格

 適正価格のもうひとつの考え方は市場価格です。この市場価格は需要と供給で決まります。例えば卵は市場価格が日々変わります。需要が増加し供給不足になれば価格は上昇します。製造業でも多くの工場でつくれるものは市場の影響を受けます。

製造業、中でも下請け企業の場合、景気が減速して受注不足に陥れば、少しでも固定費を回収するため、多くの企業は赤字でも受注します。その結果、市場価格は低下します。

しかし実際は発注先と長期的に取引していれば、景気が良くなった時に値上げが困難になるため極端な値下げはしません。

逆に景気が良くなり中小企業の多くが受注が一杯になれば、赤字でも受注する企業はなくなります。その結果、市場価格は上昇します。
 

短時間に見積を出すサービス

 最近は三次元データがあれば見積金額を計算するシステムもあります。ミスミのAIプラットフォーム メビー(meviy)は、三次元データを送れば、板金、溶接、切削加工の部品の見積を1分で出してくれます。

多くの取引先がこういったサービスを利用すれば、将来はこれらがひとつの市場価格を形成するかもしれません。
 

自社のポジションは?

 
自社はA社でしょうか?

B社でしょうか?

自社に合った製品はどのようなものでしょうか?

そこで自社に原価の仕組みを構築し、製品毎の適正価格(適正な見積金額)を算出します。この価格が現在の自社の実力値です。この価格で受注しなければ必要な利益が確保できません。
 

失注が多い場合

 「適正価格」で見積を出して失注が多ければ、競合がいくらで受注したのか調べます。競合と比べて自社の見積が明らかに高ければ、以下のいずれかが考えられます。
 

製造コストが高い

 製造コストが高い原因は

  • 製造工程が多い
  • 製造時間が長い
  • 設備や人の費用が高い

などが考えられます。製造工程の見直し、製造時間の短縮、ランニングコストの削減に取り組みます。
 

自社の間接製造費用、販管費の見直し

 どの製品も競合よりも自社の適正価格が高い場合、間接部門や工場の経費、販管費が大きい可能性があります。自社の間接部門や事務の人員、工場の経費が適正か、削減できないか検討します。

例えば、売上が大きく減少すると、売上に対して間接部門の費用や販管費が高くなります。もし一時的な売上低下でなく、今後もこの売上が続くようであれば、それに合わせて間接部門や事務の体制を変えなければなりません。

これは決して簡単ではありませんが、かつて同じような売上だった時代があれば、その時の組織・体制を参考にし、削れるところはないか検討します。
 

自社に適した製品を受注できていない

 A社でもできる製品の見積金額はB社は高くなります。B社に向いている製品はもっと難易度が高くA社に向いていない製品です。A社でできるような製品をA社と競合して価格を下げれば、B社の経営は苦しくなります。
 

ブラックボックス化

 こういった競合との価格競争を避ける方法は「ブラックボックス化」です。

自社しかできない工程、取引先もわからない工程は取引先にとってブラックボックス化します。相見積が取れないため、その価格が適正かどうかも取引先はわかりません。

あるいは取引先が困っていたことを解決すれば、そのノウハウはブラックボックスにできます。そのためには取引先の困りごとをヒアリングし、それを自社で工夫して解決します。現場で創意工夫したことは自社の強みになります。その場合、カギとなるところは隠しておきます。
 

この適正価格に対し、工程や検査が追加されれば原価は上がります。ではいくら上がるのでしょうか?

これについては【製造業の値上げ交渉】8. 取引先から検査追加の要望があった。いくら高くなるのだろうか?を参照願います。

この記事を書いた人

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【原価計算と見積の基礎】13.段取時間の短縮 https://ilink-corp.co.jp/9579.html https://ilink-corp.co.jp/9579.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:30:25 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9579
このコラムの概要

製造業において、多品種少量生産が進む中、段取時間の短縮は極めて重要です。この取り組みは、生産停止時間を減らすことで設備の稼働率を高め、製品あたりの固定費を削減します。また、人件費や在庫コストの削減、さらにはリードタイム短縮による顧客満足度向上にも繋がります。段取時間の短縮は、単なる効率化に留まらず、企業の競争力強化に不可欠な経営戦略です。

 
ロットが減少すれば利益が少なくなります。これについては【原価計算と見積の基礎】12.ロットの減少によるコストアップで説明しました。

それでも利益を出すためには、段取費用を削減します。これには段取時間の短縮や外段取化があります。ここでは

  1. 段取の種類
  2. 段取時間の短縮
  3. 外段取化
  4. 段取時間の短縮と外段取化のコスト削減効果

について述べます。

1.二種類の段取

一般的に「段取」と呼ばれる作業は、二種類あります。1つは「品種の切替」、もう1つは「新たな製品の生産準備」です。 

品種の切替

 現在生産中の製品を「すでに実績がある別の製品」に切り替えることです。

今日では製品の種類が増え、大量生産の工場も以前より頻繁に段取を行っています。
多品種少量生産では段取の頻度はさらに高くなっています。そのため段取時間は生産性に大きく影響します。段取で行うことは加工方法によって変わります。具体的には以下の内容です。

【機械加工】
加工プログラムの切替、刃物の交換、加工治具の準備、設定値の入力など

【樹脂成形】
金型の交換、樹脂原料の入れ替え、射出成形機の設定など

【プレス加工】
金型の交換や材料の入れ替え

段取後は、テスト生産を行い品質を確認します。問題があれば製造条件を調整します。品質に問題がなければ生産を開始します。
すでに実績がある製品なので製造条件は確立し、作業手順も決まっています。そのためできるだけ短時間に行います。できれば目標時間を決め、実際にかかった時間を記録します。

新たな製品の生産準備

 これは「今まで実績のない製品」の生産準備です。以下の作業が増えます。

【機械加工】
加工プログラムの作成やテスト加工

単品生産や多品種少量生産では、日々新たな製品を生産します。日常の段取の多くはこの「新たな製品の生産準備」です。

【プレス加工、樹脂成形加工】
新しい金型を使ったテスト加工、加工条件の調整です。量産の現場ではそれほど多くありません。

プレス加工、樹脂成形加工など量産工場では、「品種の切替」を段取と呼び、新たな製品の生産準備は「生産立ち上げ」や「生産準備」と呼ぶこともあります。

この新たな製品の生産準備は、時間よりも作業の正確さとその後の生産の品質が安定していることが重要です。最初の設定に問題があれば、その後不良品を大量に生産してしまいます。

このように、2種類の段取では内容や要求されることが違います。では段取時間はどうやって短縮すればよいでしょうか。

2. 段取時間短縮の方法

 実際に段取作業を観察すると、様々な課題が見つかります。

  1. 段取に必要な治具や金型が近くにないため、遠くまで取りに行っている。あるいは治具や金型が見つからず探している。
  2. 治具や金型を取り付ける位置が定まっていないため、調整や芯出しをしている。
  3. 交換部分がユニット化されていないため、交換に時間がかかる(例 マシニングセンタのツールホルダの数が十分になく、ツールホルダの交換でなく、ツールホルダの刃物を交換している)。
  4. 段取作業中、締め付けるボルトの数が多く、締め付けに時間がかかっている。
  5. 段取の手順が作業者によってバラバラで、段取時間も作業者によって異なる。

このような課題を改善します。一方、段取時間は同じでも、段取を生産中に行えば、設備の停止時間を短くできます。これが外段取化です。

3. 外段取化

 外段取とは、生産中に次の生産の段取を行うことです。

例えばプレス加工や樹脂成形加工では、生産中に次の金型を運びます。樹脂成形加工では、すぐに生産できるように予めヒーターで金型の温度を上げておきます。

このように生産中に行う段取を「外段取」と呼びます。これに対して設備を止めて行う段取を「内段取」と呼びます。「内段取」の一部を「外段取化」すれば、段取中の設備の停止時間を短くできます。

図1では、金型交換1時間のうち、30分を外段取化しました。その結果、内段取時間は30分に短縮できました。

図1 射出成形機の外段取化

マシニングセンタの外段取

 マシニングセンタには、図2に示すようにワークをパレットと呼ばれる治具に固定し、このパレットを自動で交換するものがあります。

パレットを自動で交換する装置をパレットチェンジャー(PC)と呼びます。パレットの交換は自動で行いますが、パレットからのワークの着脱は作業者が行います。パレットには異なるワークを取り付けることができるため、パレットを交換すれば品種を切り替えることができます。またパレットチェンジャーに多くのパレットをセットすれば、夜間無人で生産できます。

図2 パレットチェンジャー

4. 段取時間短縮と外段取化のコスト削減効果

射出成型加工の外段取化の効果

 樹脂成形加工B社 B1製品 (ロット1,000個)、外段取化によって原価がどれだけ改善されるのでしょうか。

【従来】
段取時間(内段取) 1時間

【改善後】
外段取時間0.5時間 内段取時間0.5時間

外段取は生産中、作業者が空いている時間を使って行います。そのため外段取の人の費用はゼロです。

ロット数 : 1,000個
加工時間 : 0.0167時間 (1分)

この時の改善前と改善後の製造費用、利益を図3に示します。

図3 段取時間短縮の効果

製造費用          利益
段取1時間 : 16.7円   段取1時間 : 0.2円
段取0.5時間 : 15.2円    段取0.5時間 : 2.0円

ロット1,000個では0.2円しかなかった利益が、段取時間を短縮したことで2.0円に増加しました。全体の製造時間も短くなり、時間当たりの出来高も増えました。

この外段取化のコスト低減は、作業者が空いている時間に行うことで人の費用がゼロになったためです。生産中作業者が手一杯で、外段取のため他から応援してもらう場合は、人の費用が発生します。そうなると外段取化のコスト低減効果は大幅に減少します。

実は外段取化の最大のメリットは、設備の稼働時間が長くなることです。しかし、それをお金に変えるには、稼働時間が長くなった分、生産量を増やす、つまり受注を増やさなければなりません。外段取化を進めても受注が増えなければ利益は増えません。

では検査が追加されると原価はどれだけ変化するのでしょうか?

検査の追加によるコストアップについては【原価計算と見積の基礎】14.検査追加によるコストアップを参照願います。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

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【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

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経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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【原価計算と見積の基礎】12.ロットの減少によるコストアップ https://ilink-corp.co.jp/9576.html https://ilink-corp.co.jp/9576.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:28:48 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9576
このコラムの概要

多品種少量生産が進む現代において、生産ロットの減少は製品原価を上昇させます。これは、生産量に関わらず発生する固定費(減価償却費、人件費など)を少数の製品で分担するためです。ロットが減ると、製品あたりの固定費負担が大きくなります。また、段取り替え時間や材料費も増加する可能性があります。このコスト増を正確に把握し、価格設定に反映させることが、多品種少量生産における重要な経営課題となります。

 
自動化や多台持ちにより原価は大幅に下がりました。
では、ロットの大きさが変われば原価はどのくらい変わるでしょうか。

ここでは機械加工A社、樹脂成形加工B社のロットの違いによる原価の違いを比較します。
 

機械加工A社、樹脂成形加工B社のロットの違いによる原価の違い

 
1個の製造時間は

ロットが大きくなれば、1個当たりの段取時間が短くなります。加工時間に比べて段取時間の長い製品は、ロットが変わると原価も大きく変わります。

では、ロットの違いにより原価はどのように変わるのでしょうか。具体的な数値で検証します。

機械加工A社

 多品種少量生産の例として機械加工A社について考えます。A社のA1製品のロットが100から20に減少しました。ここで

段取時間 : 0.5時間
加工時間 : 0.07時間

です。製造時間と製造費用を図1に示します。

図1 ロットの違いによる製造費用と利益


製造費用          利益
ロット100 : 380円   ロット100 : 50円
ロット20 : 480円    ロット20 : ▲70円

ロットが100から20に減少したことで1個当たりの段取時間は5倍になりました。その結果、製造費用は100円増加しました。
ロット100個では50円の利益がありましたが、ロット20個では70円の赤字になりました。

このように中小ロットの場合、ロットの大きさがわずかに変わっても原価が大きく変わります。では大量生産ではどうでしょうか。 

樹脂成形加工B社

 樹脂成形加工B社 B1製品のロットが10,000個から1,000個に減少しました。

段取時間 : 1時間
加工時間 : 0.0167時間 (1分)

製造費用と利益を図2に示します。

図2 ロットの違いによる製造費用と利益

製造費用          利益
ロット10,000 : 14.1円   ロット10,000 : 3.3円
ロット1,000 : 16.7円    ロット1,000 : 0.2円

このように段取時間が長くても、ロットが大きければ1個当たりの段取費用は小さくなります。

しかしロットが減少すれば、1個当たりの段取費用が増えて原価が上昇し、利益は0.2円に減少しました。 

ロットが大きくても小さくても、ロットの減少は原価に影響する

 中少量生産でも大量生産でも、ロットの大きさが変われば原価は変わります。しかしロットの小さい製品は、ロットの大きさが変わっても担当者は原価が大きく変わるとは思っていません。

発注先が1つの単価しか設定できない場合、ロットが変わっても同じ単価で発注されます。しかし、ロット100とロット20では原価は大きく違います。ロットが減少すれば価格交渉しなければなりません。

一方、納期に間に合わせるため、現場がロット100をロット20に分けて生産することもあります。ロットを分割すれば原価が上がることを現場に理解してもらい、現場が適切に判断できるようにします。では段取時間によって原価はどれだけ変化するのでしょうか?

段取時間の変化と外段取化については【原価計算と見積の基礎】11.段取時間の短縮を参照願います。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化しました。
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【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

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経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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【原価計算と見積の基礎】11.自動化とロボットの活用 https://ilink-corp.co.jp/9574.html https://ilink-corp.co.jp/9574.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:27:55 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9574
このコラムの概要

製造業における自動化・ロボット導入は、人件費削減、生産効率向上、品質安定化を通じて製品原価を大幅に下げます。初期投資は高額ですが、24時間稼働による生産能力の最大化や従業員の安全確保など、長期的な視点でのメリットは多大です。これにより、企業の競争力強化に不可欠な戦略となります。成功には、適切な導入計画と原価分析が鍵です。

設備の大きさによる原価に違いについて【原価計算と見積の基礎】10.高い設備は原価が高いのかで説明しました。

一方、今日では多くの設備がコンピューター制御化(NC化)され、起動ボタンを押せば自動で生産します。この時、原価はどうなるのでしょうか。

この自動化・無人化に関し、以下の6点について述べます。

  1. 人と設備、段取と加工の組合せ
  2. 無人加工と有人加工の違い
  3. 無人加工中の作業者の費用
  4. 人をロボットに置き換えた場合

1. 人と設備、段取と加工の組合せ

 人と設備が稼働する場合、どのように原価を計算するのでしょうか。最初に図1に示すように製造費用を人と設備、段取と加工(製造)で分けて考えます。

図1 段取と加工

図1で加工中の人と設備の組み合わせから

  • 有人加工 (人と設備が同時に加工)
  • 人のみ
  • 無人加工 (加工は設備のみ)

この3つがあります。無人加工の場合、段取は

内段取 : 設備を止めて段取
外段取 : 生産中に設備を止めずに段取

の2つがあります。

「人のみ」の現場で設備を一部使用する場合、設備の費用は、その現場の間接製造費用とします。そしてアワーレート間(人)の計算に入れます。同様に「無人加工」の現場で一部人が関与する場合、人の費用はその現場の間接製造費用とし、アワーレート間(設備)の計算に入れます。

なお、本コラムで原価に段取費用を入れているのは、ロットの大きさが変わると原価も変わるためです。

ロットが少なくなれば1個当たりの段取費用が高くなり原価が上がります。これが原因で赤字になることもあります。一方、大量生産で段取がほとんどない場合、段取費用は原価に入れません。その場合、段取は生産ロスと考えます。

2. 無人加工と有人加工の違い

  有人加工 : 加工中、作業者が設備を常時操作する
無人加工 : 加工中、作業者は設備についていない

この違いを段取と加工に分けて説明します。

有人加工

 【段取】
作業者は設備を止めて段取を行うため、人と設備の両方の費用が発生します。

【加工】
作業者は設備を常に操作するため、加工中も人と設備の両方の費用が発生します。

図2 有人加工

有人加工の場合、製造費用は人の費用と設備の費用の合計です。

人と設備の時間が同じであれば、アワーレートはアワーレート間(人)とアワーレート間(設備)の合計です。これをアワーレート(人+設備)と呼ぶことにします。

アワーレート間(人+設備)=アワーレート間(人)+間アワーレート(設備)  

無人加工

 【段取】
有人加工と同じです。作業者は設備を止めて段取を行うため、人と設備の両方の費用が発生します。

【加工】
設備が自動で加工し、作業者は設備から離れます。加工中は設備の費用のみ発生します。

図3 無人加工

ただし無人加工での作業者の費用がゼロになるには、加工中、作業者は他の現場で「別のお金を稼ぐ仕事」をする必要があります。

「お金を稼ぐ仕事」とは「見積に入っているバリ取りや検査など」です。見積に入っていない検査や次の生産準備はお金を稼いでいません。その場合は加工中も人の費用がかかると考えます。その場合、無人加工でも原価は有人加工と同じです。

設備が無人で加工を続けるには、材料の自動供給と製品の自動取出し(自動排出)の機能が必要です。こういった機能がなく材料の供給と製品の取出しを作業者が行う場合はどうなるのでしょうか。

この時、作業者が複数の設備を担当することがあります。これが多台持ちです。  

多台持ち

  作業者が1人で複数の設備を担当することです。大量生産の工場でよく行われます。1人で2台担当すれば2台持ち、3台担当すれば3台持ちと呼びます。以下は2台持ちの説明です。

【段取】
作業者は設備を止めて段取を行うため、人と設備、両方の費用が発生します。

【加工】
2台持ちの場合、作業者は2台の設備を担当します。

設備の費用は有人加工と同じですが、人の費用は1/2です。

図4 多台持ち

A社のマシニングセンタ1(小型)の年間費用(実際の償却費)140万円です。これは正社員より低い金額です。従って無人加工で人の費用がゼロになれば原価は大きく下がります。2台持ちは人の費用が半分になります。有人加工より原価は低くなります。

一方、無人加工中作業者は他の現場で「別のお金を稼ぐ仕事」をする必要がありますが、これはなかなか難しいです。

実際は加工中作業者がその現場で設備の状態を監視したり、製品の検査や仕上げ作業を行ったりしています。この場合、加工中の作業者の費用はどう考えたらよいでしょうか。

3. 無人加工の作業者の費用

 この場合、無人加工中の作業者の費用は、設備の間接製造費用と考えます。図5は、無人加工の設備が4台あり、2人の作業者が担当しています。

作業者は、設備の段取を順に行い、段取が完了すれば設備は無人で加工します。段取が終われば、作業者は次の段取の準備や完成品の品質確認を行います。無人加工でも多くの現場はこのようにしています。

図5 無人加工中の作業者

この場合、加工中も作業者の費用は発生します。ただし加工中作業者は複数の設備を担当し、作業者の費用がどの製品にどのくらい生じているのかわかりません。そこで加工中の作業者の費用は、設備の間接製造費用とします。

アワーレート間(設備)は

図5の例では4台の設備に作業者が2名なので2台持ちと同じです。作業者の持ち台数が多くなれば、原価はさらに下がります。

作業者の費用は、加工中は設備の間接製造費用、段取中は直接製造費用です。そこで作業者の日々の時間の中で段取時間と加工時間の割合が必要になります。ただしこの比率を正確に調べるのは大変なので、数日間サンプルを取って代表値とします。これを図6に示します。

図6 無人加工の作業者の費用

図6は設備が4台、作業者が2名の場合

作業者の段取時間と加工時間
段取 : 2,200時間 (50%)
加工 : 2,200時間 (50%)

設備は4台なので合計時間は
段取 : 2,200時間
加工 : 6,600時間

段取中は、人と設備の費用が両方発生するため、段取のアワーレートは、アワーレート間(人)とアワーレート間(設備)の合計です。
加工中は設備の費用のみです。ただし、人の費用は間接製造費用としてアワーレート間(設備)に含まれます。その結果

段取のアワーレート : 3,670円/時間 (2,610+1,060)
加工のアワーレート : 2,180円/時間

4. ロボットの導入

 ロボットを導入して無人加工ができれば原価は下がります。しかし、従来の産業ロボットは高価で安全フェンスのため広い場所も必要で、導入は容易ではありませんでした。

近年、スピードはそれほど速くないのですが、安価で安全フェンスも不要な協働ロボットが普及してきました。こういったロボットを導入した場合、原価はどうなるのでしょうか。

図8 ロボット化の場

500万円のロボットでも5年間使用すれば、年間のロボットの費用(実際の償却費)は100万円、パート社員と変わりません。ただし協働ロボットは、スピードは遅いため人よりも時間は長くなります。

しかし、人は24時間働けませんが、ロボットは24時間働けます。ロボットは有休もとりません。人は作業スピードが遅くなったり、トイレのために抜けたりしますが、ロボットは一定のスピードで動き続けます。

そこで現在の作業のままロボットを人と置き換えるより、スピードは劣っても24時間稼働できるロボットの特徴を生かして作業を見直しします。ロボットを導入することで設備が長時間稼働できればアワーレート(設備)が下がり原価が低くなります。
ロボット化でどれだけ原価は下がるのでしょうか。

では製造ロットが変わると原価はどれだけ変化するのでしょうか?

ロットの減少によるコストアップについては【原価計算と見積の基礎】12.ロットの減少によるコストアップを参照願います。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

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【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

 

 

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