Posts Tagged ‘IT’

技術革新

AI、IoTなど様々な技術革新やそれによるイノベーションは今後どのよう変革をもたらすのでしょうか?

そこで最新の様々な技術やこれまでのイノベーションや技術革新の歴史、発想法など様々なテーマを取り上げました。
 

イノベーションとは何だろうか?それを実現する方法はあるのだろうか?

 

イノベーションを実現する組織とは?その1 ~イノベーションとルーンショット~

イノベーションを起こすような革新的な技術やアイデア「LOON SHOT」は、生まれた直後は実現できるとは思えない「醜い赤ん坊」 です。これを育み育てるのがルーンショット養成所です。アメリカでは国防高等計画局(国防高等計画局(DARPA))がこの役割を果たし、インターネット、GPS、音声認識などのイノベーションが生まれました。

このルーンショット養成所について、サフィ・バーコールの「LOON SHOTS」から2回に分けて説明します。1回目は、王立協会、OSRDの果たした役割についてです。
 

イノベーションを実現する組織とは?その2 ~新しいアイデアを実現する仕組み~

イノベーションを実現する組織について2回目は、イノベーションで起きる偽の失敗とこれを乗り越える方法、そしてルーンショット養成所の考えを中小企業に活かす方法についてです。
 

これから10年で起こる、社会の劇的変化

コンピューターの進歩、SNSの発達により、今日では情報は急速に拡散します。市場の変化も早くなり、人気の商品が短期間に陳腐化してしまいます。この市場の変化は、私たちの仕事や事業にどのような影響をあたえるのでしょうか?そして、人ができる仕事、働き方はどうなるのでしょうか?社会の変化と格差の拡大について考えました。
 

これから10年で起こる、ものづくりの劇的変化

コンピューターの急速な進歩により今まで何十年も研究し、コンピューターには困難と考えられていた音声認識、翻訳、自動運転の実現が目前に迫ってきました。その結果、ものづくりはどう変わるのか?人ができる仕事、働き方はどうなるのか?人工知能やロボットの進化と雇用、社会での格差の拡大について考えました。
 

イノベーターの敗北、真の勝者は模倣者か?

優れたイノベーターが画期的な製品を開発して市場を占有するという話はドラマチックです。しかし実際は、新たな技術を開発してイノベーションを起こした企業が、後から参入した模倣者に市場を奪われてしまうことも多いのです。はたしてイノベーションは企業を強くするのか、モルモットに終わるのか。企業の模倣戦略について考えました。
 

デジタルトランスフォーメーションの真実と本当の怖さ

昨今マスコミに頻繁に登場するデジタルトランスフォーメーション(DX)、どんな意味なのか、漠然としか理解していない方も多いのではないでしょうか?その一方、 「DXに乗り遅れるな!」と多くの企業がDX推進部をつくり予算を投入しています。はたしてDXとは何でしょうか?そこで今回は、DXを取り上げ、DXの話題と実体、そして静かに進行する本当の変革について考えます。
 

「事務ロボットがホワイトカラーの仕事を奪う!」~話題のRPAの特徴と課題~

2015年野村総研とマイケルAオズボーン氏の研究によれば、日本では49%の仕事がロボットやAIに代替可能ということです。今、定型業務を自動的に処理する事務ロボットRPAが大きな話題となっています。このRPAによりどこまでの仕事がコンピューターに代替できるのか?話題のRPAの特徴とその課題について考えました。
 

「人工知能AIの発達で仕事はどう変わるのか」  ~その1 知能とは何か?AIの知能は人を超えるのか?~

AIが進化すれば、なんでもできるようになるかのようにマスコミは報道しています。しかし、知性や感情、人の意識とは何なのか、我々はよくわかりません。知性と感情、意識について、認知心理学とサイバネティクスの観点から、将来AIで世界はどう変わるのか、AIとは何なのか2回に分けて考えました。1回目は意識と知性についてです。
 

「人工知能AIの発達で仕事はどう変わるのか」  ~その2 第三次人口知能ブームの技術とシンギュラリティ~

知性と感情、意識について、認知心理学とサイバネティクスの観点から、将来AIで世界はどう変わるのか、AIとは何なのか2回に分けて考えた2回目、今のAI技術と知性の発達、シンギュラリティについてです。
 

発想法と特許

 

独創的な考えを生み出す柔軟的思考

独創的なアイデアを出すには頭がぼーっとしている方がよいと言われています。脳が疲れて左脳が働かない時の方が右脳が活発に働き革新的なアイデアを出るからです。レナード・ムロディナウ著「柔軟的思考」を元に独創的なアイデアを出す方法について考えました。
 

なぜアイデアが出ないのか?製品開発と発想法の関係

新しいアイデアを出すための発想法は、ブレインストーミングやKJ法など様々な方法が紹介されています。実は創造的な活動は「アイデア出し」に入る前の活動が重要なのです。東京大学 中尾教授の「システムで思考する」、京都大学 逢沢気陽樹の「結果が出る発想法」から、新しいものを生み出すアイデア出しと発想プロセスについて考えました。
 

独創的なアイデアを生み出すための発想法 その1

新製品や新事業だけでなく、日常起きる問題点の解決や改善など様々な場面でアイデアが求められます。そのためには新しいアイデアを生み出す方法が必要です。そこでアイデア発想法を学ぶとともに、偉大な発明家の成功から、ひらめきに加えて必要なことを考え、どのように自分達が発想力を豊かにするかを2回に分けて考えました。1回目はひらめきを生み出す手順についてです。
 

独創的なアイデアを生み出すための発想法 その2

アイデア発想法を学ぶとともに、偉大な発明家の成功から、ひらめきに加えて必要なことを考え、どのように自分達が発想力を豊かにするかを2回に分けて考えた2回目、予想外の事態に対処する柔軟さとコラボレーションの力についてです。
 

リチウムイオン電池における特許をめぐる戦い

特許を取っても技術を独占使用できるとは限りません。後発企業がより良い製品を開発して市場に参入するからです。そこで世界に先駆けリチウムイオン電池を実用化した旭化成の吉野氏の著作から、どうして特許で防ぐことができないのか悪魔のサイクルについて考えました。さらに特許から見た次世代電池開発競争についても考えました。
 

その他先端技術や知識

 

カオス理論が常識を覆す~バブルは再発し、野生動物は激減する、難解なカオス理論を易しく解説~

金融工学は様々なリスクを最小にして利益を最大化するようつくられてます。しかし本当は証券や通貨の変動は金融工学が考える前提より激しく変動していたのです。なぜなら多くの事象は金融工学が前提とする確率と統計よりも、カオス理論に従うからです。そこでマンデルブロ氏の「禁断の市場」より、現在の金融工学の問題点と、難解でわかりにくいカオス理論について説明しました。
 

次世代移動体通信5Gでビジネスはどう変わるか?

ZTE、ファーウェイに対するアメリカの厳しい措置を発端とした米中貿易摩擦は、次世代通信規格5Gの普及とその機器メーカーの問題と合わせて、日本、ヨーロッパを巻き込んだ争いになりました。この5Gとはどのようなものか、その特徴と可能性について考えました。
 

インターネット以来の大発明ブロックチェーンその1 ~ビットコインの成り立ちと特徴~

2009年、サトシ・ナカモトという人物の書いた9ページの論文から生まれた、ビットコインは多くの人々を熱狂させ、ビットコインバブルを生み出しました。その一方で、彼の考えたブロックチェーン技術は、インターネット以来の発明といわれ、今やメガバンクや各国の中央銀行がその仕組みの導入を検討しています。このブロックチェーンとは何なのか、世界はどう変わるのか2回に分けて考えました。1回目は通貨の役割とビットインについてです。
 

インターネット以来の大発明その2 ~ビットコインの技術、マイニングとプルーフオブワーク~

ブロックチェーンとは何なのか、世界はどう変わるのか2回に分けて考えた2回目は、ビットコインの革新的なところ、セキュリティの仕組みとマイニングについてです。
 

インターネット以来の大発明、ブロックチェーンその3 ~フィンテックとスマートコントラクト~

ブロックチェーンとは何なのか、世界はどう変わるのか2回に分けて考えた3回目は、ブロックチェーン技術の将来性と中央銀行が暗号通貨に取り組む理由、そして最新のフィンテックについてです。

インダストリー4.0はものづくりを変えるのか? その1

インダストリー4.0は、昨年あたりからマスコミにさかんに取り上げられ、「ものづくりが変わる!」とセンセーショナルに書かれています。でも具体的には何なのか、良く分からない方も多いと思います。本当にイノベーションが起きるのか、それともかつてのFMSやCIMのように忘れ去られてしまうものなのか2回に分けて考えました。1回目はインダストリー1.0から4.0までの流れとインダストリー4.0の技術についてです。
 

インダストリー4.0はものづくりを変えるのか? その2

インダストリー4.0でイノベーションが起きるのか、それともかつてのFMSやCIMのように忘れ去られてしまうものなのか2回に分けて考えました。2回目はインダストリー4.0の実例と課題についてです。
 

ゲームのルールが変わる、コモディティ化 その1

突然ビジネスのゲームのルールが変わり、それまで市場のトップにいた企業が一気に転落することがあります。そのひとつがコモディティ化です。ルールが変わると今まで築いた優位性がなくなります。取引先の商品がコモディティ化すれば業績が急速に悪化し、自社の仕事にも影響します。そこでコモディティ化とは何か、どうしてコモディティ化は起きるのか、どう対処すればよいのか、2回に分けて考えました。1回目はゲームのルールが変わった例とコモディティ化についてです。
 

ゲームのルールが変わる、コモディティ化 その2

コモディティ化とは何か、どうしてコモディティ化は起きるのか、どう対処すればよいのか、2回目はコモディティ化のメカニズムとコモディティ化に陥らないようにする方法についてです。
 


デジタルトランスフォーメーションの真実と本当の怖さ

最近よく聞く言葉がデジタルトランスフォーメーション(以降DX : Digital Transformation)、新聞やマスコミ、ネットニュースで聞かない日はありません。多くの記事には「世界中でデジタル化が急速に浸透する中、多くの日本企業は遅れている」とも書かれています。

しかしそもそもDXとは何でしょうか?
今何をしなければならないのでしょうか?

DXの本質について考えました。
 

1.DXとは何か

DXとはどのような意味があるのでしょうか?

DXの定義は実は明確ではありません。
 

【広義のDX】

広い意味では、今現在私たちが直面している変化です。それは

「情報技術によって、様々な現実が融合され、結び付き、全てが繋っている世界へと変わっていきます。それは私たちの現実に対する理解、あるいは認識を変えていきます。従来の物理的なものに加えてデジタル化したもの(成果物)がよりインテリジェントになり、現実世界に大きく影響するようになり、個人の関心毎や価値観に変化を与えます。」

スウェーデンのウメオ大学教授エリック・ストルターマン氏が2004年に書いた論文「Information Technology and the Good Life」の主旨です。この論文で初めてDigital Transformationという言葉が使われました。エリック・ストルターマン氏の論文は思想的、哲学的な内容を含んでいて、その解釈は人によって様々です。
 

【狭義のDX】

「企業がAIやIoT、ビッグデータなどのデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務を変革する抜本的な取り組み」

を指しています。

ここでAIやIoT、ビッグデータは必須でありません。従来の情報通信技術(IT : Information Technology)を活用して、業務の効率化や競争優位を獲得することも含まれます。
 

経産省のDXレポート

DXという言葉が広く知られるきっかけのひとつが経済産業省(経産省)のレポートです。

経産省は2018年に「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本質的な展開~ を発表しました。2020年には続編として「DXレポート2 (中間とりまとめ) 」を発表しました。2018年のDXレポート1には

あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネス・モデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起きつつある。こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められている。

このような中で、我が国企業においては、多くの経営者がDXの必要性を認識し、DXを進めるべく、デジタル部門を設置する等の取組が見られる。

しかしながら、PoC(Proof of Concept: 概念実証、新しいプロジェクト全体を作り上げる前に実施する戦略仮説・コンセプトの検証工程)を繰り返す等、ある程度の投資は行われるものの実際のビジネス変革には繋がっていないという状況が多くの企業に見られる現状と考えられる。

と書かれています。そして

今後DXを本格的に展開していく上では、DXによりビジネスをどう変えるかといった経営戦略の方向性を定めていくという課題もあるが、そもそも、既存システムが老朽化・複雑化・ブラックボックス化する中では、データを十分に活用しきれず、新しいデジタル技術を導入したとしても、データの利活用・連携が限定的であるため、その効果も限定的となってしまうという問題が指摘されている。

と続き、その後は既存ITシステムの老朽化、複雑化、ブラックボックス化し、レガシーシステム(古くなったコンピュータシステム)となっている点を指摘しています。
 

レガシーシステムの問題?

このDXレポート1を読むとDXの主題は「レガシーシステムの問題」でした。

これについてDXレポート2ではDX の定義として、

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立する」

として、レガシーシステムの問題でなく、デジタル技術を活用して変化に柔軟に対応できていないことが問題としています。

ところがDXレポートに書かれている変化は、

  • 業務のオンライン化(テレワーク)
  • ペーパーレス化
  • DXの推進体制やITベンダーの役割

です。

これは競争優位につながるような変化なのでしょうか?

ではDXがもたらす変化とは何でしょうか?

DXがもたらす真の変化について調べました。
 

2.DXは目的か手段か

DXに関して多くの書籍(DX本)が出版されています。このDX本にはどのようなことが書いてあるのでしょうか。
 

DXの本にある劇的な変化

多くのDX本には、現在社会には以下の3つの大きな潮流があると書かれています。

  • データのデジタル化の推進
  • IoTなど人やモノがネットワークでつながる
  • コンピューターの中の仮想世界とリアルな現実がシームレスでつながる

 
これらが新しい体験や新しい価値を生み出し、従来の事業を崩壊「ディスラプション(disruption)」させると主張します。
 

図1 社会を変化させる3つの潮流

図1 社会を変化させる3つの潮流

しかし具体的に、どのような崩壊が起きるのか、書かれていません。
 

目的と手段の順序が違う

DXは、先に述べた「AIやIoT、ビッグデータなどデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務を抜本的に変革する」ことで、新たな事業が生まれ、従来の事業が崩壊するといわれています。

つまり図2のようにデジタル化という「手段」を使うことで、大きな変革を生み出し、競争優位の確立することがDXです。

しかし競争優位の確立は目的でしょうか?

本来は、事業変革の目的は
対象(顧客)の課題の解決や利便性向上など
新たな価値の創出です。

そのための手段がデジタル化やITによる変革(DX)です。

その結果得られるものが競争優位です。
 

図2 DXの定義

図2 DXの定義

目的と手段の取り違いが、DXに関する議論を読んでもピンと来ない原因ではないでしょうか。

目的があいまいでも、DXというツールを導入すれば新たな価値は生まれるのでしょうか?

またDX本には「デジタル化(テレワーク)で浮いたコストや時間を使って新しいビジネスへ投資する」とも書かれています。しかし実際は逆です。

「新たな事業に取り組まなければならない必然性」
があって「どうしてもリソースが足らない」から、DXでも何でも使って余力をつくるのです。

そうでなければDXで生まれた余力は有給消化や人員削減などで消えてしまいます。

あるDX本には「ITを使って変化を起こし売上や利益を伸ばす仕組みをつくる」とありました。しかし、

  • ITを使えばどのような変化が起き
  • どのような売上や利益を伸ばす仕組みができるのか

具体的なものはありませんでした。
企業や組織がそれまでに築いた仕事のやり方、企業文化は堅牢です。
コンサルティングの現場で、何度もこの堅牢な壁に阻まれ、変革を起こすことができませんでした。
それがITやDXに取組めば変革を起こせるのでしょうか?
 

図3 DXによって新しい価値を生む

図3 DXによって新しい価値を生む

突然出てくる「アジャイル」とは?

DX本を読んでいるとなぜか「アジャイル開発とウォーターフォール開発」というソフトウェアの開発手法が突然出てくることがあります。

【アジャイル開発】
アジャイル(Agile)とは、『素早い』『機敏な』『頭の回転が早い』という意味です。システムやソフトウェア開発の手法で、全体を一気に構築するのでなく、小さな単位でシステム構築とテストを繰り返して開発する方法です。

メリット

  • 柔軟で臨機応変な対応ができるため開発スピードが早い
  • WEBサービスのように、最初にサービスの一部をつくって顧客の反応を見ながら改良するものに向いている
  • 小さな機能単位で実装とテストを繰り返すため、効率がよく、修正の手間が少ない

 

デメリット

  • 新たな機能をつくるときに前につくった機能の修正が発生する
  • 最初につくった機能をやり直すなど作業の重複や無駄が発生する
  • 要件ごとに計画を立てるため、プロジェクトの全体像が見えにくく、いつまでに完成するのかわかりにくい

 

図4 アジャイル開発

図4 アジャイル開発

【ウォーターフォール開発】
従来のITシステムの構築方法です。最初の段階で、機能仕様を決定し、『企画』『設計』『実装』『テスト』などを決められた担当者が行います。

メリット

  • 作業の重複や無駄がない
  • 全体の計画や進捗がわかりやすい

 

デメリット

  • どこかの工程で遅れが生じると全体が遅れる
  • 仕様など上流工程で変更があると、大きな後戻りが生じ、コストも大幅に上がる

 

図5 ウォーターフォール開発

図5 ウォーターフォール開発

アジャイル開発が最新の手法で、ウォーターフォール開発が古い手法というわけではありません。

開発するシステムの機能や性質によりアジャイル開発に向くシステムとウォーターフォール開発に向くシステムがあります。

なぜソフトウェア開発の手法がDXなのか理解に苦しみます。
 

DX本の内容と30年前のBPRの類似性

DX本では、DXを推進するためにDX推進本部を設立して全社的に進めることを提言します。しかし目的や課題があいまいなまま業務効率化のためにDXを推進して変革は生まれるのでしょうか?
競争優位の本質は

  • 商品が優れているか
  • 商品の提供方法が優れているか
  • 今までない商品やサービスで顧客に新たな価値をもたらすか

です。

アップルのiPodが売れた大きな要因は、スティーブジョブズがアメリカのレコード会社とタフな交渉を行い、自社の音楽ダウンロードソフトiTunesからアルバムの曲を1曲1曲バラで買うことができたことがありました。それを実現したのはジョブズの信念とタフな交渉力でした。

DX本に書いてある主旨は、30年前のBPR(Business Process Reengineering)の本の趣旨ととても似ています。

1990年代、元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマーと経営コンサルタントのジェイムス・チャンピーの両氏がBPRを提唱しました。

BPRは、優れた企業をお手本(ベンチマーク)にして自社の業務を洗い出し、最も効率的なやり方(ベストプラクティス)に変えることで業務の効率化とコスト削減を実現する手法です。アメリカで大流行し多くの企業がコンサルタント会社にBPR推進のコンサルティングを依頼しました。

しかし短期的な成果を強く求める経営者によりBPRリストラ(人員整理)の代名詞となり不評を買いました。

図6 BPRの構成例

図6 BPRの構成例

3. DXで新しい価値を生む

一方、AI、VR、AR技術の進歩により今までにない製品やサービスも生まれています。さらにデジタル化で発生する大量のデータを活用すれば新たな価値を生むことができます。
 

AR技術を活用したLIXIL

住宅設備メーカーLIXILから独立した株式会社 K-engine(ケイエンジン)は、リフォームするキッチンやリビングの3D画像や見積を短時間で作成することができます。設備や部材の変更もその場で可能です。

LIXILグループには300万点以上の機器のデータや膨大なリフォームのデータがあります。 K-engineはこれを活用し、AR技術を使って実際の住宅の写真に新しい玄関の画像を貼って、リフォーム後のイメージを確認できます。
 

JR東日本のSuicaのデータ活用

日清食品はSuicaのデータから社員の出張旅費を自動的に清算するシステムを自社で開発しました。このシステムは他社でも利用できるため、日清食品はJR東日本と提携し外販を開始しました。

実は鉄道鉄道会社やバス会社の持っている時間帯別、曜日別の乗降客のデータは、新規出店や既存店の仕入れ予測、売上予測に活用できる非常に価値のあるデータです。2022年1月、JR東日本はこうしたSuicaのデータを今後は外販すると発表しました。

自動車が走っている時の振動やカメラの画像から道路やインフラの補修の判断を行う試みも検討されています。車のドライブレコーダーは常時街中の画像を取得していて、このデータを求めている企業に売れば大きなビジネスの可能性があります(プライバシーへの配慮は当然必要になりますが)。
 

4. デジタルマーケティングは新たな価値を生むか?

DXと一緒に広まっているデジタルマーケティング、これはどんなものでしょうか?

DX、デジタルマーケティングに関連して様々なカタカナ用語が氾濫しています。その意味を整理してみます。
 

デジタルマーケティング

Webサイトのユーザー行動に加えて、スマートフォンやタブレットや公式アプリの行動履歴、商品に搭載されたIoT機能から送られるデータ、これらバーチャルのデータに加えて、イベントでの来店データや販売履歴などリアルな活動データも併せて収集・分析します。これを活用して個々の顧客に対して、WEBマーケティングとリアルマーケティングを合わせて総合的にマーケティングすることです。
 

WEBマーケティング

公式Webサイトを訪れた顧客の、サイト内での行動を追跡して、顧客がどのような情報を求めているのかを探ります。そして顧客が情報に満足して購買につながるようにWebコンテンツを改善します。
 

オムニチャネル

従来のリアルなチャネルとWebを合わせたチャネル(顧客との接点)のことです。マス広告や実店舗に加えて、インターネット広告やメール、SNSなどデジタルツールも活用して顧客と多くの接点をつくります。
 

カスタマージャーニー

「顧客が商品を知った点から購入して実際に利用するまでのプロセス」を指し、一般的にはカスタマージャーニーマップとして図式化します。顧客との接点を図式化し、購買までの顧客の感情の変化を誘導して効果的な販売促進を行います。

図8 カスタマージャーニー

図8 カスタマージャーニー

データドリブン

データに基づいてマーケティングを組み立てます。データドリブンは以下の4つのアクションから成り立っています。

  1. データ収集
  2. ・社内のあらゆるデータを収集し、精査・統合
    ・場合によってはデータ管理ツールの導入

  3. データを「見える化」
  4. ・データを効率よく分析するため、集めたデータ分析しやすい形に加工(「見える化」するという)

  5. データ分析
  6. ・見える化されたデータを分析し、課題の設定や具体的な取組を引き出す
    ・データサイエンスとマーケティングの両方の知識が必要

  7. 実行する
  8. ・具体的なアクションプランを実行する
    ・実行するだけではなくPDCAをまわしてデータドリブンマーケティングを深化する

例 アスクルの一般消費者向けサイト「ロハコ」
自社のウェブサイトがどのように閲覧され使われているか、分析し、表示するシステムを導入しました。その結果、顧客が商品を探す時のニーズと、企業が売りたいものがずれていることがわかりました。

企業は「これを買ってください」とプッシュしていましたが、顧客は「毎日サイトを見に行けるし、さらに買い物ができるお店」を求めていた。クリックしても買わずにおいておく商品が多くあり、買うときはまとめて買います。こういった顧客は1回のサイト訪問で購入する比率は低くなります。

そこで同社は来訪者が購入に至る比率(コンバージョンレート)は追い求めないことにしました。
 

MA(マーケティングオートメーション)

マーケティングを自動で行うツールです。顧客の名前やメールアドレスを取り込むと、あらかじめ作成したメール文面を自動的に顧客に送信し、営業活動を自動化します。
 

Web解析ツール

Webサイト上での顧客の行動や、WEBサイトの検索順位などを分析するツールです。PV(ページビュー)数やUU(ユニークユーザー)数、直帰率など、サイトの訪問者数や行動データを細かく集計・分析できます。主なツールは、「Google Analytics」や「Adobe Analytics」などです。

図9 ウェブサイトは解析されている

図9 ウェブサイトは解析されている


 

SFA(セールスフォースオートメーション)

営業管理システムとも呼ばれ、営業プロセスや営業の進捗状況をチーム全体で管理し、効率化を図るツールです。案件の管理や営業レポートの作成など、営業業務を効率化するための機能があります。
 

エコシステム

元は生態系の用語です。ある領域(地域や空間など)の生き物や植物がお互いに依存しながら生態を維持する関係をエコシステムと呼びます。

例 iPhoneのエコシステム
iPhoneのエコシステムの画期的な点はAppStoreで誰でもiPhoneアプリを開発し、iPhoneで売ることができることです。これにより多くのアプリ開発者がアプリを開発し、短期間に膨大な機能をiPhoneは得ました。

初期のアプリ開発者の中には一人で開発したアプリがヒットして多額の売上を得た人もいます。開発されたアプリはアップルが審査して不正なアプリを排除したため顧客も安心して利用できました。

これは今までの携帯電話やPCにはなかったシステムです。
 

ツールが主役? 忘れられた顧客

そもそもマーケティングとは

企業などの組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念

顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、仕組み、プロセス

(Wikipediaより)

ピーターFドラッカーは
「マーケティングの理想は、販売を不要にするものである。」
マーケティングとは

  • 顧客のニーズに合った商品を、適切な顧客層に発信するための、「商品開発から販売戦略の策定、広告宣伝に効果検証までのプロセスを管理すること」
  • そして商品が「売れる仕組み」をつくること

これにより「買ってください!」とお客様にプッシュせずとも、お客様が買いたくなる状態になることです。
 

マーケティング本来の意味と比較すると、デジタルマーケティングは手法が先になってしまいます。そして本来PRを受ける顧客の考えや立場が置いてかれていかれています。

コンテンツが隠れるネット広告や、一度クリックすると何度も同じ広告を表示するターゲッティング広告などがいい例です。

実際、展示会でマーケティングオートメーション(MA)の会社と名刺交換すると、MAツールのPRメールが頻繁に来ます。しかしたまたま展示会で興味があって質問しただけなのかもしれません。それなのに何回も送られてくるMAツールのPRメールは効果があるのでしょうか? 
 

最近広まったお問合せフォームへの営業メール

企業のお問合せフォームに営業メールを送る手法が広まっています。これがRPA (Robotic Process Automation)などで自動化されれば、営業メールの洪水になりかねません。そうなると、お問合せフォームにRPAが入力できないようbot対策が必要になってきます。

注) RPA (Robotic Process Automation)とは、コンピューター上で行われる業務プロセスや作業を人に代わり自動化する技術です。人間が繰り返し行うクリックやキーボード入力など定常的な業務が自動化できる
 

見直されるデジタル広告

個人情報をもとに広告を配信するデジタル広告は、その広告を不快と感じる読者が増加しつつあります。さらに個人情報を補足する「Cookie」も広く使われています。アドネットワークの普及で、広告が質より量という考え方に変化し、ページビューを追い求める動きが加速しています。広告を掲載することでサイトの質が問われます。再び広告の質が問われています。

現状ではデジタルマーケティングはツールとして進歩しましたが、販売を大きく変革するわけではなく、革新的マーケティングではありません。しかしデジタルマーケティングは、

実は私たちの消費行動を変えてしまう怖さがあります。

 

デジタルマーケティングの本当の怖さ

なぜなら顧客が知りたい情報(記事やニュース)に自社の有利な情報を入れれば顧客の関心を誘導できるからです。Yahooニュースなどのネットニュースは顧客の嗜好に合わせて最適なニュース記事を表示します。顧客が自動車の記事を多くクリックすれば、自動車に関するニュースや記事を多く表示します。

A社が自社のある車を売りたければ、その車の記事をクリックした顧客に、その車に関連した記事、その車に乗っている著名人の感想、その車で行った旅行記事、その車の開発ヒストリーの記事を頻繁に表示します。

記事を目にする機会が増えれば、いつの間にか顧客はその車のファンになっています。そしてある日ディーラーで契約書にサインしています。

これはステマ(悪質なステルスマーケティング)ではありません。正しい記事を顧客の嗜好に合わせてて供しただけです。

実は私自身、yahooニュースを見ていて、気が付いたらある車種が気になって買おうとしたことがあります。少し古い車でしたが、その車の良さを語るいろいろな記事を見ているうちに、以前は全く興味がなかったその車が欲しくなっていたのです。結局中古車しかなく、希望に合うものがなかったので断念しました。そして買えなかった後、もう欲しいという気持ちがなくなりました。

気づかぬうちに、欲望を操作されたような気がします。

実は顧客の欲望を生み出す点はマス広告も同じです。ただWEBの場合、表示される記事やニュースを個人ごとに調整(最適化?)できる点がで費用対効果が非常に大きくなります。

ネットでは各個人が関心を持つ事柄の情報が各個人に集まります。物語性のある広告、著名人のレビューやその商品を使ったユーチューブ動画などさまざまなコンテンツを表示し、その商品に少しでも関心がある顧客が見れば、ファンを増やすことができます。そして買いたい気持ちを起こすことができます。これはグルメ番組を見て、その料理を食べたくなるのと同じメカニズムです。

しかもネットは情報量が多いため、影響は顕著に表れます。

巧妙にコンテンツを設計すれば、個人の嗜好や考え方まで操作できるのです。

 

商品でなく企業を知ってもらうために企業自らコンテンツを制作

一方広告ではなく、企業が自らコンテンツを制作し、コンテンツを通じて自社を知ってもらう取組があります。池江璃花子選手の競技復帰までのストーリーを描いたSK-II STUDIOの5分22秒の動画は、SK-Ⅱを販売するP&Gプレステージ合同会社が作成しました。

監督には是枝裕和氏を起用し、2021年3月29日に公開して、6月9日で再生回数1,990万回を記録しています。

テレビ放送の場合、視聴率1%は国民の1%, 125万人です。実際は世帯の1%であり、1%は関東地区では約40万人、関西地区では約16万人です。対して上記の動画は約2,000万人、しかも世界中の人が見ています。しかも費用は制作費のみのため、テレビ放送と比較して費用対効果は非常に高いといえます。

かつては東芝の「サザエさん」のように1社単独でテレビ番組のスポンサーになることで、自社の知名度を高めるとともに、テレビ番組のイメージを自社のイメージに重ね合わせていました。

これをネット上でも行われているのです。

こうしたファンほ増やす試みで成功したのがスバルです。

北米スバルは2007年よりアメリカで『LOVEキャンベーン』を広告展開しました。オーナーの愛車への思い入れ(=LOVE)を強調した宣伝活動は、共感する人が増え、結果として認知度やブランドバリューがアップしました。

従来からSNSを使って企業と顧客が交流しファンを増やす試みは行われていました。今後は、動画や様々なコンテンツを企業が自ら制作し、知名度を高めるだけでなく、積極的にファインを増やすことが増えると予想されます。
 

5. DXの例

では、具体的にDXによって変わったビジネスにはどのようなものがあるのでしょうか?
 

ペーパーレス、テレワークはDX?

DX関連の記事は、目的と方法の順序が逆になっています。例えばテレワークはコロナ禍の今日、国からもテレワークを強く要請されているため、テレワーク自体が目的になってしまいました。

しかしグーグルやアップルは、社員同士のコミュニケーションや、非公式の会話から生まれる気づきやひらめきを重視して、

職場に集まることに重きを置いています。

日本は和を重視する文化のため活発な議論がなかなかお菊ません。その上テレワークで非公式の会話もなくなれば新たな発想や気づきが生まれるのでしょうか。

そもそもペーパーレスは何のために行うのでしょうか。ペーパーレスでも決済欄が10個もあれば決済に時間がかかります。承認した10人の管理者のうち、何人がプロジェクトの失敗を引き受けるのでしょうか?

しかも効率的なペーパーレス化には印鑑を廃して電子印鑑の仕組みが不可欠です。しかし企業でもまだ決裁印が必要なところもあります。銀行はメガバンクでは口座開設に銀行印は不要になりました。しかし行政の印鑑登録と印鑑証明はそのままです。

図10 なくならない印鑑

図10 なくならない印鑑


 

AR・VR技術への期待

テレワーク、WEB会議の普及でモニター越しの会議が一般化しましたが、対面での対話と比べて、言語外の情報量が不十分です。相手の感情をゆすり、共感を得るようなコミュニケーションは困難です。人は言葉だけで会話するのでなく、表情やしぐさ、場の雰囲気など言語外の情報量が多いためです。

VR会議はこれまでのWEB会議と異なり、以下のメリットがあります

  • 非言語情報の伝達
  • これまでの資料に加えて3Dイメージの活用

  • 高い臨場感
  • 没入感が高いため会議への集中力が高まり、意思決定が速くなる

  • コミュニケーションの活性化

アバターで会議を行うことで、リアルに対面するよりも話しやすくなり、発言量が増える

これらの技術はNEC、NTTデータ、(株)Synamon等が取り組んでいます。
 

「話す、聞く」をシステムで対応

株式会社RevCommのMieTelは、AIで電話営業の会話を録音し、自動文字起こし、分析を行い、顧客情報の共有と営業トークの改善を行うシステムです。会話の抑揚、速度、説明と聞く時間の比率を分析し担当者にフィードバック、自ら振り返ることで自主的に多岐に渡り改善します。

一方、将来音声認識の能力が向上すれば、AIがコールセンター業務を行うことも可能になります。AIは多数の受け答えを全て学習できるので効果的に学習でき、多くの問い合わせに的確に応えることができます。また顧客から質問があったことをWEBサイトのQ&Aや取説のQ&A集に入れることで問い合わせ自体も減らすことができます。コールセンターのオペレーターは、顧客からひどい言葉を言われるなど労働環境が厳しく離職率が高い職種ですが、AIのメンタルは決して壊れません。
 

「調べる」をシステムで対応

アメリカのamplified ai, inc.(アンプリファイド エーアイ)はAIを用いた特許調査プラットフォーム「Amplified」を提供し、特許調査の時間を85%短縮しました。費用は1件当たり2万円です。特許調査には専門知識が必要で、出願前の先願調査は専門家に依頼すると多額の費用がかかります。「Amplified」は、特許の複雑な長文を比較し、類似順に整理する独自のAIを持ち、ある概念を文章で入力すると世界中の特許1億3000万件から類似特許を検索して、類似順に並べてリスト化します。これにより類似特許検索のスピードとコストが飛躍的に削減できました。
 

「助言」をシステムで対応

株式会社STANDING OVATIONはAIコーディネート提案アプリ「XZ(クローゼット)」を無料で提供しています。手持ちの洋服を登録してクローゼットの中身をデジタル化でき、世界最大級のオンライン・クローゼットとして成長しました。

特徴
クローゼットの総価値をグラフ表示します。着用回数をランキングで表示し、着用回数の少ない服や1年間着ていない服に気づくことができます。

着ていないアイテムを使ったコーデ提案や、AIが着ていない服を手持ち服と組み合わせ新しいコーディネートを提案します。

今後は店舗が無料のアプリを提供し、自社製品のコーディネートを確認できれば、顧客は安心して購入ができ、さらに靴やアクセサリなど追加購入も実現します。コーディネートは顧客の年齢、性別、嗜好に合わせて変えることができるので、実際の店員よりも対応範囲が広くなります。
 

6. 製造業のDX 

実は製造業の方が、DXによって大きな変革が起きる可能性があります。
 

キーワードは最適化

製造業はDXと相性が良い職種です。なぜならプロセスが明確で各プロセスからきれいなデータが手に入るからです。これを使って様々な取組ができます。キーワードは、モデル化(シミュレーション)と最適化です。

工業製品は金属など硬くて安定した材料が多くシミュレーションと相性が良いです。曲げや液体の流動などの物理現象をシミュレーションするツールも整っています。例えば以下の取組はすでに行われています。
 

構造解析

製品や構造物の静的強度、振動などのデジタルモデルをつくり、強度や振動特性をシミュレーションします。実物をつくる前に特性を評価し、不十分な場合は対策します。すでに自動車ではシミュレーションを十分に行い、最初の試作を行わない「試作レス」に取り組んでいます。これは現物を試作したからといって、問題点を全て洗い出せるわけでなく、シミュレーションの方が確実に評価できるからです。
 

流動解析など加工プロセスの分析

鋳造、ダイキャスト、樹脂成形での金型内での金属や樹脂の流れ、プレス加工での金属の変形や応力の変化は、現物の評価が困難です。そこでコンピューターでモデルをつくり樹脂や金属の流れやプレス加工時の金属の変形や絞りをシミュレーションします。これにより最適な形状の金型や製造条件を調べ、最初から適切な加工条件できます。

ものづくりでは、解析技術の進歩により今まで見えなかった物理現象が見えるようになりました。そしてこれまで何回もトライ&エラーを繰り返して探求してきた加工条件を少ない回数で実現できるようになりました。
 

プロセスの最適化

製造ラインも同様で、実際の設備をつくる前に3Dのモデルで実際の工場のモデルをコンピューターの内部で実現し、動かして評価します。ダッソーシステムズの「DELMIA」はコンピューターの中の3Dモデルで構成した設備を本番と同じPLCのプログラムで動かすことができます。コンピューターの中で正しく動けば、そのプログラムは実際の生産ラインにすぐに投入できます。

BMWは、グラフィックボードのリーダー企業NVIDIAと組んで最新のバーチャルファクトリーを構築しました。NVIDIAの「Omniverce」というプラットフォームは、人やロボット、部品、搬送などをコンピューターの中でリアルにシミュレートできます。しかも世界中のどこからでもリアルタイムにアクセスできます。工場設計エンジニアはこの仮想空間で工場のレイアウトや設備、人の配置、生産活動やモノの流れを決めて、リアルな再現度でシミュレートします。将来は、設計と企画、生産チームが連携して、実際の生産活動をすべてシミュレーションしてから、現実の生産がスタートできるようになる予定です。

シミュレーションできればどういった条件が最適か短時間で見つけることができます。例えば将棋や囲碁は、コンピューターの能力が向上し、プロに勝つまでになりました。コンピューターはこれまで人間が考え付かなかった打ち手を繰り出します。現在プロ棋士はコンピューターのこういった新たな打ち手を勉強し、対局の準備をしています。コンピューターによる最適化技術が進歩すれば、

熟練の技術者でも思いつかない製造条件の組合せが生まれる可能性があります。

 

変種変量生産の不良分析

モーター、ロボットの大手 安川電機の入間事業所は、サーボモーター400種類、サーボアンプ600種類を変種変量生産しています。生産中に発生する不良は、同じ不良でも機種が違えば内容が違うため、単純に比較できません。

そこで、製造工程で発生するデータと不良を引き起こす要因を分析し、FTA(故障の木解析)を活用して不良の因果関係の分析を行いました。その結果、従来はデータが少ないため不明だった不良の原因が特定できるようになりました。また、個別の製造不良と設計不良の見極めが容易になり、製造部門から設計部門へのフィードバックが増えました。

異音検査は熟練の作業者が耳で聞いて判定するため、その育成には最低でも9か月を要します。そこでモーターの振動を測定しAI(機械学習)で判定させました。AIで判定できないものだけを人が判定するようにしました。
 

生産ラインの見える化

住友ベークライトは樹脂原料の製造ラインに従来の100個/ラインのセンサーを300~500個/ラインに増やし、取得したデータはPLCを経由して一元管理しました。製造ラインの制御を細かくかつ自動化することで作業者の半減を実現しました。各工程のPLCからのデータはエッジPCの「Edgecross」というソフトで収集し、社内サーバーのAI推論モデルが正常かどうかを判定、異常があれば担当者に連絡します。
 

生産計画の最適化

どういった順番でどの製品をどの設備で生産するか、生産管理(あるいは工程管理)は変数が多く、最適な答えを出すのが難しい業務です。

しかしこういった多くの条件の最適解を出すのはコンピューターの得意分野です。厳密に言えば条件が多いと組合せ爆発が起きて、とてつもない計算量になってスーパーコンピューターでも解けなくなります。しかし実際は全ての条件を評価する必要はなく、現実的な条件に範囲を狭めれば実用的な答えを出すことができます。

これは生産スケジューラとして商品化されていますが価格が高く、生産現場をモデル化するのが大変なため、あまり普及していません。しかしこの点を改善し、低価格で使えるクラウド型のソフトが出れば広く普及する可能性があります。今まで生産管理を行ってきた熟練社員が退職し、また製造工程の条件が増えてくると人が最適化するのは困難になるからです。
 

仮想工場で作業環境の最適化

3Dモデルを作成し、仮想空間で製造現場が構築できると、実際の作業者を仮想空間で作業させ、作業性や生産性を事前に評価することができるようになります。これはAR技術とVR機器の進歩により、作業者にVRゴーグルをつけて、あたかも実際に作業しているような感覚でコンピューターの仮想空間で作業を体験します。その中で、作業ミスをしやすい点、危険な点等を事前に発見し、改善することができます。

遠隔からの顧客に対し、AR技術を使って設備の立会を行う試みもあります。設備や製品など現物はPCのモニターからの情報だけでは、本当に良いかどうか判断できません。音声や視覚に現れない情報、実際の動きなどを見るために、重要な設備や製品は「立ち合い」が効果的です。そこでVR・AR技術を用いて、スピーカーやモニターだけでは伝えきれない情報を伝えることで、あたかも現場にいるかのように遠隔での立ち合いが実現します。

ドローンを使って工場の外観、内部を撮影すれば、今までとは別の視点で観察でき、現地での立ち合いよりも多くの情報を伝えられる可能性があります。
 

7. 静かに始まっている本当の変化

このように考えると、

  • リアルな現場がある
  • 自動化、試作レス、事前検証などデジタル化の強いニーズと問題意識
  • データやモデルが十分にあり、最適化のロジックが組める

こういった条件に合致する製造業はDXが最も進歩する分野といえるでしょう。実際これら紹介した取り組みは多くの工場ですでに行われています。

図11 DXで仕事は変わるでしょうか

図11 DXで仕事は変わるでしょうか


 

「すり合わせ型ものづくり」優位論

日本の製造業の優位性「すり合わせ型ものづくり」、これは言い換えれば、個人(や組織)の高い能力が様々な製品や製造工程を最適化できることです。しかし考慮すべき条件が増えて複雑化すると、人による最適化は限界に達します。

将棋や囲碁の例でもわかるようにコンピューターの能力が向上すれば、最適化の能力はコンピューターが人を上回ります。この時日本の「すり合わせ型ものづくりの優位性」は維持できるのでしょうか。

データを集めてアルゴリズムで処理して最適条件を見つけるのは、熟練の技術がなくてもできます。その点では、ものづくりの歴史の浅い新興国でも優位に立つことができます。

例えば半導体はかつて、すり合わせ型のものづくりをしていました。しかし設備が進歩し、それぞれの製造工程が前後の工程に影響せず、独立をして調整すればよくなった結果、工場の能力の優劣は、工場内の設備の負荷の調整という最適化の結果で決まるようになりました。その結果、台湾、中国の半導体メーカーと、日本メーカーの差はなくなりました。
 

プロセスとデータサイエンスの融合

一方、どのようなデータを収集し、どのような観点で分析するかは、プロセスとデータ分析の両方に深い知識がなければできません。その点で優れた生産技術者、プロセス管理者が多い日本企業にアドバンテージがあります。

熟練の生産技術者にデータサイエンティストが協力して、現場で発生するビッグデータを使って最適化の仕組みをつくります。今まで人がやっていたよりもはるかに効率の良い工場や現場の構成ができ、運用できる可能性があります。

コンピューターの特徴は高速性です。現場でPDCAを回すには、実際に現場のレイアウトを変えて、生産してデータを取る必要があります。少なくとも数日、工場によっては何ヶ月もかかります。しかしコンピューターがそのレイアウトの結果を出すのは数秒もかかりません。

そして結果が悪ければモデルを組み直せばよく、しかもモデルを組み直すロジックもアルゴリズム化することもできます。コンピューターが自動でモデルを組み直せばPDCAを短時間に何万回も回すことができます。これは熟練の管理者でも適いません。

Google DeepMindが開発した「AlphaGo」は2016年に世界トップ棋士の一人の李世乭 (Lee Sedol) と戦い、4勝1敗と勝ち越しました。

2017年10月に発表された4代目の「AlphaGo Zero」は、棋譜やビッグデータを必要とせず自己対局によって強化します。全くの初心者の状態から3日間でプロのレベルに到達し、21日目に2代目「AlphaGo」 と肩を並べました。40日間の学習後は、2代目「AlphaGo」 に100戦全勝しました。

「AlphaGo」は、これまでプロ棋士が考えつかなかったような斬新な打ち手を数々打ち出し、囲碁界に大きな衝撃を与えました。今ではプロ棋士が「AlphaGo」などコンピューターの打ち手を研究し、それが流行の布石・定石となり、囲碁の考え方に変革を起こしました。
 

逆に、人の能力と人による管理に固執すると、システムによる最適化やビッグデータの活用が進みません。コンピューターが計算した最適化の結果は今までの常識に反するかもしれません。その結果に対する根拠はコンピューターすらわかりません。
同様に保守的な管理者が

AIの出した常識外れの方法を受け入れるかどうかは管理者次第です。

 

加速する日本の優位性の喪失

「熟練の職人」、「高度な技術」と言っても、その多くはトップアスリートの技術や人間国宝の技ほど高度ではありません。そこまで高度なものを必要とすれば、安定した品質の工業製品を大量に生み出せません。つまりものづくりの高度な技能とは、長年の経験の積み重ねによる知識、判断、使いこなしの部類といえるでしょう。

これまではそれを人が所有していたため模倣が困難でした。また、人がそれを実行するためには、それを実行するような組織文化も必要になります。文化がなければいくら良い手法を指導しても、定着は困難です。

しかし多くの生産プロセスはNC化、自動化、コンピューター制御化しています。これらの条件を最適化するのはコンピューターでもできます。しかも高速で人よりも最適解を出せる可能性があります。NC工作機械やロボット、無人搬送車、自動倉庫で構成された工場をシミュレーションし、最適化するのは人かコンピューターのどちらが有利でしょうか。

そこに気が付きいち早く取り込んだ国に対し、日本はアドバンテージを保ちうるのでしょうか。

以下は人が手放したものです。人とコンピューター、どちらが有能かどうか、考えるまでもないでしょう。

  • 最適な道順 カーナビ
  • 構造体の強度 応力解析
  • 飛行機の操縦 フライバイワイヤシステム
    (B-2など最新の軍用機はコンピューターによる制御がなければ真っ直ぐですら飛べない)

 
本記事は未来戦略ワークショップのテキストから作成しました。
 

参考文献

Information Technology and the Good Life Eric Stolterman, Anna Croon Fors
「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」経済産業省
「DXレポート2 (中間取りまとめ)」経済産業省
「いちばんやさしいDXの本」 亀田重幸、遠藤経著 インプレス
「デジタルトランスフォーメーションで何ができるのか」西田 宗千佳 著 講談社
「テクノロジーを持たない会社の攻めのDX」内山悟志 著 クロスメディア・パブリッシング
「イラスト&図解でわかるDX」兼安暁 著 彩流社
「世界一わかりやすいDX入門」各務茂雄 著 東洋経済新報社
「現場が輝くデジタルトランスフォーメーション」長谷川康一 著 ダイヤモンド社
日経ものづくり 2020年8月号
 

経営コラム ものづくりの未来と経営

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ロボットは人の仕事を奪う? ~産業ロボットの歴史と最新のロボット技術~

3年前に訪問した中国 湖南省のプレスメーカーは、日本の中小企業と同様に人が設備を動かしていました。今、全てのラインにロボットが導入され、自動化されました。

中国ではロボットの導入が急速に進み、日本を追い越す勢いです。このロボット化が進めば、製造現場の人の仕事はどうなるでしょうか?

そもそも産業ロボットとはどのようなもので、どうして日本で発展したのでしょうか?そしてこれからロボットはどのように進化するのでしょうか?

産業用ロボットの歴史と最新のロボット技術から、これからのものづくりを考えます。
 

産業用ロボットの歴史

 

原点はからくり人形

人の形をした機械は、日本のからくり人形や西洋のオートマタなどが中世に作られていました。中でも日本のからくり人形は独自の発展を遂げ、江戸末期に作られた田中久重の「弓曳童子」などは自働機械と呼べるほど精密で複雑な動作を実現しました。

オルガンを演奏するオートマトン(Wikipediaより)

オルガンを演奏するオートマトン(Wikipediaより)


 

弓曳童子(Wikipediaより)

弓曳童子(Wikipediaより)

一方「ロボット」という言葉は1920年にチェコの作家カール・チャペックの戯曲「R.U.R. ロッサム・ユニバーサル・ロボット会社」で初めて使われました。

SF小説でのロボット三原則

1930年にアメリカのSF作家アイザック・アシモフが「I, Robot (私はロボット)」を発表し、その中で以下のロボット三原則を示しました。

  • 人間に害を与えない
  • 人間の命令に従う
  • 自らの存在を守る

産業用ロボットとは

このようにロボットは、人型の自働機械というイメージがあります。しかし、世界で最も広く使用されているロボットは、人とは全く異なる形の産業用ロボットです。

産業用ロボットは、厳密にはティーチングプレイバックという方法で動作する機械を指します。国際標準化機構(ISO)では「3軸以上の自由度を持つ、自動制御、プログラム可能なマニピュレーター(腕)」と定義しています。

産業用ロボットは、主に自動車や電子部品を生産する工場などで使用されています。自動車工場では、スポット溶接、ボディ塗装、部品取り付けなどに使われています。人間が行うには、単調な繰り返し動作、重量物の運搬などや、霧散している塗料を吸い込むなど、体に負担の大きい作業や作業環境の場合、作業者への負担軽減や作業ミスの削減、品質安定の面からも用いられています。

産業用ロボットの市場は、富士経済研究所の調査によると、2019年の業務・サービスロボットの世界の市場規模が1兆9819億円で、2025年には2019年の2.2倍、2兆2727億円になると予想しています。

ロボット産業全体では、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) によれば、2035年には9.7兆円の市場規模になると予想しています。特に今後はサービス分野で著しい成長が見込まれています。

ロボット産業の将来市場予測(出典:NEDOホームページ)

ロボット産業の将来市場予測(出典:NEDOホームページ)


 

この産業用ロボットで日本企業は世界シェア50%(2012年)と圧倒的な強さがあります。

代表的な日本メーカーは、安川電機、ファナックで、これにスイスのABB、ドイツのKukaの4社が世界の4大ロボットメーカーと呼ばれています。日本では他に川崎重工、不二越、エプソンなどがあります。

オムロンは、世界第10位のアメリカのアデプトテクノロジー社を2015年に買収しました。一方4大ロボットメーカーのひとつKukaは2016年に中国の家電メーカー美的集団に買収されました。

この産業用ロボットは構造から以下の種類に分類されます。

  1. 直交座標型
    X(前後),Y(左右),Z(上下)の3方向に水平移動するロボット
  2. 円筒座標型
    X(前後),Z(上下)する機構を旋回するロボット
  3. 極座標型
    X移動(前後)する機構を、左右旋回と上下旋回するロボット
  4. 多関節型 (水平 (スカラ) 型)
    水平方向に旋回する2軸を持ち、先端が上下するロボット
  5. 多関節型 (垂直型)
    6軸を制御することで人間の腕の動きに近いロボット
  6. パラレルリンクロボット
    リンク機構を並列に配列し、小型のワークを高速で搬送できるロボット

 

初期のロボット

1956年、31歳のエンゲルバーガ氏は、あるパーティーでG.C.デボル氏と出会いました。デボル氏は、ティーチング(教示)とプレイバック(再生)によって動作する「プログラムド・アーティクル・トランスファー」(プログラム可能な物品搬送装置)を特許申請していました。デボル氏はエンゲルバーガ氏にこの発明を説明したところ2人はすぐに意気投合しました。エンゲルバーガ氏は出資者を探し出して1959年にプロトタイプを完成させます。

ユニメートの外観 (Wikipediaより)

ユニメートの外観 (Wikipediaより)


 

これにゼネラルモーターズ社が興味を示し、ダイキャストマシンのワークの取出しに使用しました。エンゲルバーガ氏は、1961年にデボル氏と共同でユニメーション社を設立、1962年には世界初の本格的な産業用ロボット「ユニメート」を完成させました。

エンゲルバーガ氏は、人間の腕の代わりに仕事をするこの機械にアシモフの「I,Robot」からロボットと名付けました。しかし「ユニメート」はGM社のダイキャストマシンのワーク取出しに使われた程度で、その後の普及は進みませんでした。

アメリカの自動車工場では、労働者は溶接、プレス加工などの職能別に組織された労働組合に所属していました。 溶接ラインに「ロボットを導入すれば溶接工が職を失う」ため、労働組合はロボットの導入に強く反対しました。
 

アメリカで普及しなかったロボット、日本で爆発的に広がる

1966年エンゲルバーガ氏は、日本で産業用ロボットの講演を行いました。「30人程度だろう」と思われた講演会には200人あまりの経営者が聴講し、講演終了後の質疑は2時間も続きました。

高度成長期にあった当時の日本は、将来若年労働力が不足する恐れがありました。それを補うためにロボットに高い関心がありました。また当時アメリカの工業技術は世界の最先端にあり、その技術をコピーすれば日本で新事業を興すことができました。

こうして日本のロボット熱は高まり、ピーク時は200社もの企業がロボットに取り組みました。

こうした中、1973年には川崎重工が日産自動車、トヨタ自動車のスポット溶接ラインにユニメートを納入しました。日本ではアメリカと異なり労働組合は、企業別組合で、しかも終身雇用制の為、ロボットを導入して「仕事がなくなっても他の仕事に就く」ことができました。

発達するセンサ、エレクトロニクス技術を追い風に発展

実際はロボットを導入することで、作業者は危険、きつい、汚い仕事から解放される一方、ロボットの調整のような新たな仕事が生まれました。

当時、日本がロボットの開発に有利だったのは、ロボットに必要なエレクトロニクス、コンピューター、ソフトウェア、サーボ、センサなどの技術が大きく進歩し、以前は困難だった「高性能なロボットを製造し、使いこなすことが容易になった」ことでした。

1968年に川崎重工はユニメーション社より技術導入し「ユニメート」を国産化しました。しかしユニメートは様々な問題点があったため、川崎重工は独自にユニメートを改良しました。

さらに安川電機、スター精機、会田鉄工(現アイダ)、石川島、不二越、東京計器、クロガネクレーンなど多くのメーカーがロボットの開発に参入しました。

電子部品実装機もロボットの仲間

松下電器はプリント基板に電子部品を挿入するパナサートを開発しました。このとき電子部品実装機も産業用ロボットに分類されました。今でもロボット上の統計には電子部品実装機が含まれています。しかし汎用的な産業ロボットに対し、プリント基板の製造に特化した電子部品実装機を産業用ロボットの市場に含めるのは問題があるため、統計によっては産業用ロボットの市場から電子部品実装機を除外しています。
 

こうしてアメリカで生まれた産業用ロボットは、日本で大きく発展しました。

ロボットは高度成長期に人手不足と生産量の拡大に迫られた自動車メーカーによって、スポット溶接、アーク溶接、ワーク取出しなどに導入され、日本は稼働台数が世界一のロボット王国になりました。
 

ロボットの電動化と様々な分野への展開

 

こうして日本の工場に広く普及した産業用ロボットは、その後センサーやエレクトロニクスの発展により、より複雑で高度な作業ができるようになりました。

油圧サーボから電動化へ

当初ロボットの駆動は油圧サーボでした。その後、サーボモーターの性能が向上し、ロボットの駆動は油圧から電動化されました。これにより、より複雑で正確な制御が可能になりました。

1972年にはマイクロプロセッサが開発され、1970年にはプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC 通称シーケンサ)が発売されました。PLCの出現で、これまで固定されたリレー回路での制御がPLC内部のプログラムに代わり、制御の変更が格段に容易になりました。そして現場の技術者が短時間でロボットの動作を変更できるようになりました。

1970年代後半には、DCサーボモーターでロボットの可変速運転ができるようになり、「ハーモニックドライブ」のような高減速比の減速機が登場したことでロボットの位置決め精度が向上しました。位置検出にはインクリメンタルエンコーダーが採用され、今まで起きていた速度検出器の断線による暴走がなくなりました。

ロボットでは後発の安川電機は、スウェーデンASEA社垂直多関節ロボットIRB-6をお手本にサーボモーターを使用した電動式のMotomann L-10を開発しました。

電動式のロボットは油圧サーボ方式に比べ安価で使いやすいため、自動車部品のアーク溶接用に多くの中小企業が導入しました。

ファナックは、工作機械用NC技術を応用してロボットに参入しました。特に天井走行型のロボットを開発して複数の工作機械の間のワークをロボットで搬送し、機械加工の自動化・無人化を実現しました。
 

溶接以外の分野へ広がり

多関節ロボットは、事前にティーチングした位置へ正確に停止すればよいため、絶対的な移動距離の正確さは必要ではありません。しかし停止位置の繰り返し精度は必要です。

しかしネジ締めに多関節ロボットを使用すると、先端の剛性が十分でないため停止位置の繰り返し精度が安定しないという問題がありました。これを解決するために山梨大学の牧野洋教授はアームの剛性の高い水平多関節方式のスカラ型ロボットを開発しました。

1980年代、日本の半導体は好調でクリーンルーム内でウェハーを搬送するために発塵を極力抑えたロボットが求められていました。
繰り返し精度が高く発塵の少ないスカラ型ロボットが半導体工場に大量に導入されました。

こうして産業用ロボットは用途に合わせて様々に進化していきました。
 

ロボットの様々な用途

 

こうして高性能になったロボットは、これまで人が行っていた作業にも導入されるようになりました。

スポット溶接

初期の溶接ロボットはユニメートのような油圧サーボ駆動の極座標ロボットでした。
その後、より複雑な動作を実現するために電動化されました。しかし重い(100kg)溶接ガンを短時間に移動し正確に位置決め(±0.25mm)するには、モーターの停止時間の短縮と停止時の振動抑制が必要でした。
ロボットメーカーの要求にこたえるためモーターメーカーは現代制御理論を用いてサーボモーターの制御の高度化に取組み、制御技術は飛躍的に進歩しました。

自動車製造ラインに配備されたKUKA製産業用ロボット (Wikipediaより)

自動車製造ラインに配備されたKUKA製産業用ロボット (Wikipediaより)


 

アーク溶接

アーク溶接は、ロボットアーム先端の溶接部がワークに沿って連続的になめらかに移動して溶接します。ティーチングは作業者が手動でロボットを動かすティーチングプレイバック方式で行います。

糊付け・シーリング

自動車の窓ガラスの接着のため、窓ガラスに接着剤を連続的に塗布するロボットです。ガラスの局面に沿って移動するロボットの先端部は一定の速度でないと接着剤の塗布量がばらついてしまいます。そのため現代制御理論を取り入れ、どのような角度でも一定の速度になるようにしてします。
 

ロボットの進化とソフトウェア技術

 

現在の産業用ロボットは、強力な磁石の開発、制御理論の発展により、さらに高性能になりました。

一方今後は、ロボットのハードウェアよりソフトウェアの重要性が高まっています。このソフトウェアについては、プラットフォームをオープン化する試みがされています。

モーターの進化と現代制御理論の発展

1982年にネオジウム(希土類)を使用した強力なマグネットが日本で開発され従来より小型で強力なモーターが実現できました。加えて巻き線方式を改良することでモーターの小型高出力化が加速しロボットの高速化が実現しました。

一方ロボットが高速化されると相対的にアームの剛性不足が起き振動が起きるようになりました。そこで従来のPID制御などの古典制御理論に対し、状態変数という概念を導入した現代制御理論がロボットの制御に使われるようになりました。

これはコンピューターの計算能力が飛躍的に高まったことで、現代制御理論を取り入れた外乱オブサーバーやフィルタなど様々な機能が可能になったことも要因です。これらの機能はサーボモーターと制御装置に一体化して組み込まれていてユーザーは手軽に利用できるようになりました。

この制御理論の進歩と、それを実現する電子回路、ソフトウェア技術の進歩は、目立たないところでロボットの性能向上に大きく貢献しました。
 

ソフトウェアへの比重の増加とオープン化

コンピューターの進歩によりロボットは複雑な動作や多くの機能が実現され、これを制御するソフトウェアの開発がロボット開発の中で高い比重を占めるようになりました。

一般的なWindowsやMacOSなどのOSはCPUは命令を逐次処理するためリアルタイムでの動作が保証できません。そのため高速で動作するロボットの制御には向いていませんでした。

そこで各ロボットメーカーはロボット制御に適した制御システムを独自に構築してきました。しかしロボットメーカーのソフトウェア開発費は増加する一方で、中にはソフトウェア開発費を回収できずロボットから撤退するメーカーも現れました。こうしてロボット業界の再編が進みました。

このような状況の中、ロボット開発のプラットフォームをオープンソースで行う取り組みが行われています。最初は大学などの研究機関でロボットを使用するために開発したミドルウェアをオープンソースにしたものが始まりで、それが商業分野にも使用されるようになりました。

ROS(Robot Operating System)

ROSはロボット用のソフトウェアプラットフォームで、OSではなく既存のOS上で動くミドルウェアやソフトウェアフレームワークです。

ROSはスタンフォード大学が開発した「Switchyard」が起源で、アメリカのウィローガレージ社が開発を引き継ぎ、2010年にリリース版が公開されました。その後、ROSの開発は「オープンソースロボット財団」が引き継ぎ、オープンソースソフトウェアとして世界中から多くの人々が開発に参加しています。

ROSが動作するOSはLinuxが中心で、一部はmacOS、Windows、Androidにも対応しています。ハードウェアの抽象化、低レベルのデバイス制御、汎用的な機能の実装、プロセス間のメッセージ通信、パッケージ管理などを行い、ソフトウェアの開発や実行のためのツールやライブラリも提供されています。

このROSはロボットアーム、ヒューマノイド、自動運転車やドローンなど様々なロボットに使われていて、次世代バージョン「ROS 2」の開発・リリースも始まっています。

OpenCV

OpenCV(Open Source Computer Vision Library)は、オープンソースのコンピューター・ビジョン・ライブラリで、画像や動画の処理に必要な、さまざまな機能が実装されています。BSDライセンスで配布されるため学術用途だけでなく商用目的にも利用できます。
Intelで開発され、その後、Willow Garageに開発が引き継がれた後、現在はコンピューター・ビジョンの技術開発を手掛けるItseezによって開発が進められています。

 OpenCVを使うと、主に以下のような機能を利用できます。

  • フィルタ処理
  • 行列演算
  • オブジェクト追跡(Object Tracking)
  • 領域分割(Segmentation)
  • カメラキャリブレーション(Calibration)
  • 特徴点抽出
  • 物体認識(Object recognition)
  • 機械学習(Machine learning)
  • パノラマ合成(Stitching)
  • コンピュテーショナルフォトグラフィ(Computational Photography)
  • GUI(ウィンドウ表示、画像ファイル、動画ファイルの入出力、カメラキャプチャ)

 

OpenCVアドオンの例を実行しているopenFrameworks (Wikipediaより)

OpenCVアドオンの例を実行しているopenFrameworks (Wikipediaより)


 

このようにOSやミドルウェア、画像処理がオープンソースで供給されるようになり、規模小さいメーカーでも高機能なロボットを開発できるようになりました。
 

力覚センサ

協働ロボットとは、強い力がかかった際にロボットを停止させ、人に危害を加えないようなロボットです。この時の力を検出するセンサが力覚センサです。力覚センサにはひずみゲージ方式、圧電方式、静電容量方式などがあり、ロボットにはXYZと回転3軸の合計6軸の力が測定できるセンサが使用されています。力覚センサのメーカーには、エプソン、サンエテックなどがあります。
 

協働ロボットによる利用範囲の拡大

 

ロボットの新たな活用として、人と一緒に作業する協業ロボットが注目されています。従来の産業用ロボットは大型かつ高速なため、人がロボットとぶつかれば重大な事故になります。そのため事故が起きないように安全フェンスや光電センサを使ってロボットの可動域内に人が入れないようにしていました。

一方先進国では大量生産の製品は減少し、多品種少量生産の割合が増加しています。今までのようにロボットが同じ製品を長い時間作ることができず、製品は頻繁に変わるようになりました。そこで頻繁に変わる製品に対応して人の作業をアシストするために人と同じエリアで動くことができるロボット(協働ロボット)が必要になってきました。

人と共存するロボット

このニーズに注目したデンマークのUniversal Robots社は、協働ロボットをいち早く開発しました。また掃除機ルンバを生んだiRobot社を創設したロドニー・ブルックスは、2008年にリシンク・ロボティクス社を設立し、協働ロボット「バクスター」と「ソイヤー」を発売しました。(しかしリシンク・ロボティクス社は、2018年10月に廃業しました。)

協働ロボットは、従来の産業用ロボットに比べスピードは遅く、人と接触しても自動的に停止するため安全です。外観も人とぶつかることを配慮して丸みを帯びたデザインになっています。

現在は、川崎重工のduAro2、カワダロボティクスのNEXTAGE、KUKAのLBR iisy、ABB YuMi、不二越のCZ10、ファナック CR-35iAなど各社が協働ロボットを発売しています。

協働ロボットの市場は富士経済によると2025年には日本で1,000億円、世界で5,900億円に成長すると予測されます。

一方日本ではロボットの安全に関する法改正が遅れたため、協働ロボットの導入はヨーロッパに比べ2~3年遅れています。

安全規格の改定

ヨーロッパに比べて遅れていた日本の安全規格の改定は、2013年末に労働安全衛生法が改正され、2015年にJIS B8433-2が制定されました。その結果、リスクアセスメントを行って危険がないと判定できれば、安全柵なしで協働ロボットを使用できるようになりました。

現在は a.のように柵はないけど人とロボットの作業領域は分けられています。今後は、b. のように人とロボットが協調して作業する領域を設けたり、c. のようにどの領域でも人とロボットが協調して作業すると考えられます。
 

a.柵を設置しないが協働ロボットと人間が働く領域は分けられている

a.柵を設置しないが協働ロボットと人間が働く領域は分けられている


 

b.協働ロボットと人間が一部の領域で協調して作業をしている

b.協働ロボットと人間が一部の領域で協調して作業をしている


 

c.協働ロボットが自由に移動し、人間の領域に入り込んで作業をしている

c.協働ロボットが自由に移動し、人間の領域に入り込んで作業をしている


 

協働ロボットの課題

恊働ロボットは今まで人は人、ロボットはロボットと分けられていた作業を、人とロボットが協調して作業を行うため、以下のような課題があります。

  1. 対象物が均一でない(大きさ、形状、固さ)
  2. ユーザー側にノウハウが無い
  3. 人が行う作業の自動化が困難
  4. 人に危害を加えない安全対策

これに対して、以下の取組が必要と考えられます。

  1. 対象物の認識と安定した把持
  2. 容易なロボットティーチングシステム
  3. 熟練作業者の動きの再現
  4. 接触検知と最適な制御

これを下記の表にまとめました。

課題 解決策 技術
対象物が均一でない 対象物の認識と安定した把持 力制御の進化
ユーザー側に運用ノウハウがない 容易なティーチングシステム
ロボット化が困難な作業 熟練作業者の動きの再現 AIの活用
人に危害を加えない安全対策 接触検知と最適な制御

 

人の作業を代替する双腕ロボット

現在多くのロボットメーカーが双腕ロボットを開発しています。その理由は、双腕ロボットは人に近い動作ができるため、今まで人が行っていた作業を代替できるからです。

スイスABB社のYuMiは、各アームが7軸、合計14軸の双腕ロボットです。可搬重量は 1アーム0.5kgと小さいものの位置決め精度は0.02mmと高く、重量も38kgと軽量です。限られたスペースで複雑な動きが実現できるため、画像検査では製品を様々な角度から検査して今までより正確な検査を行います。

また双腕にすることで片方のアームでワークを押さえ、片方のアームで組立てることができます。これにより従来は必要だった専用のワーク固定治具が不要になります。
 

今後求められる「人並みに器用な手先」

今後ロボットが安価で使い易くなっていくと、最も大変なのは人が行っている作業をどうやってロボットに移し替えるかということです。例えば、ビンの蓋を開けて、スポイトを使って中の液体を1cc取り出す作業は、人であれば片手でビンを持ち片手でふたを開けます。そして片手はビンを持ったままで、もう一方の手は、スポイトに持ち替え、液体をスポイトに吸わせます。

これをロボットが行うためにはふたを開く専用のロボットハンド、スポイト付きの専用のロボットハンドを用意し、作業中にロボットハンドを交換しなければなりません。この専用のロボットハンドの設計・製作と、専用のロボットハンドを使った作業のプログラミングがロボット導入の障害となっていました。

一方、ロボットハンドが5本の指であれば、人の手と同じようにロボットハンドを動かせば必要な作業ができます。そのためティーチングはとても簡単になります。あるいは人の指に印をつけて、カメラで作業を記録することで、そこから自動でプログラムをつくることもできます。

現在、医療用に様々な5本指の義手の開発が行われていています。これが実用化されれば、ロボットを5本指にすることで、これまで以上に人と同じ作業が可能になります。
 

協働ロボットの新たな活用例

 

以下に各分野での協働ロボットの活用事例を紹介します。

人とロボットの作業分担

ファナックでは、射出成型機のボールねじ(12~13kg)をベアリングを圧入する作業に自社の重可搬型協働ロボットCR-35iAを使用しています。協働ロボットはボールねじを保管
棚から取出し、ボールねじを圧入機の中で立てた状態で保持します。作業者はベアリングを圧入機にセットし圧入します。その際、圧入機のセンターにボールねじのセンターが来るようにロボットはボールねじを軽く支えています。

従来は男性作業者が行っていたボールねじの取出しとセットをロボットに置き換え、しかもボールねじをロボットが支えるため女性でも作業できるようになりました。しかも協働ロボットはフェンスが不要なため、作業スペースは従来と同じでした。

専用自動機の代わりにロボット

日立アプライアンスは、炊飯器の蓋の組立をUniversal Robots社の協働ロボットUR10 2台を使用して行っています。この工程は、今までは2人の作業者がセル生産を行っていました。しかし手作業では改善の限界が見えてきたため、自動化に取り組みました。

この工程を自動化する場合、従来は専用の自動機を開発していました。しかし自動機は安全柵が必要なためラインが長く、設備の立ち上げにも時間がかかりました。

そこで協働ロボット2台を導入し、1台で複数の組立工程を行うことで、コンパクトなラインを実現しました。ラインの費用は1,980万円と少ないため、稼働開始から2年2か月で投資が回収できます。

ロボットによるウサギ追い方式(1人巡回セル)

両替機や釣銭機を製造するグローリーは、組立工程を自動化するためにカワダロボティクスのNEXTAGEを導入しました。同社の製品は工程が多いため、従来のロボットでは、工程の数に応じて部品の供給装置を用意するため多くのスペースが必要でした。また多くの工程に分割するため、個々のロボットの作業時間の差が全体として大きなロスになりました。

そこで1台のロボットが全行程を行うようにして、このロボットが各工程を製品と一緒に巡回して製造するウサギ追い方式を導入しました。部品の供給部が各工程1箇所で済むためコンパクトなラインになりました。

一般的にはウサギ追い方式を導入すると、作業の遅れが作業者にプレッシャーとなり、焦りが生じて不良が多発します。しかしロボットは作業速度の差が少ない上、ロボットは焦らないのでることはありません。

検査時は、両アームで製品を持ち上げて、角度を変えて画像検査を行い、微小な表面の傷も正確に検査します。さらに様々な形状のワークを保持できるように、ワークを掴む際に爪が水平に移動するロボットハンドを開発しました。グローリーは、このノウハウを活用してロボットシステムインテグレーター事業(RSI)も行っています。

超低価格ロボットを使用

自動車部品メーカーのジヤトコ(株)は、中国Shenzhen Yuejiang Technologyの「Dobot Magician」を使って部品の整列作業に取り組んでいます。Dobot Magicianは14万円という超低価格のロボットです。そこで従来のロボットではコストがネックとなって自動化できない作業に導入する計画です。

例えば、生産に使用するボルトなどの部品をトレイに入れる作業は、従来はワークの種類と数が多いため人が行っていました。このような作業にDobot Magicianの導入を検討しています。

協働ロボットがたこ焼きをつくる

ハウステンボスでは、2018年7月にロボットがたこ焼きを焼く「OctoChef」がオープンしました。従来は2~3人の業務でしたが、OctoChefは従業員1人とロボット1台で実現しました。

人が具材の準備を行い、具材の投入、調理はロボットが行います。たこ焼きをひっくり返すのもロボットがピックを使って行います。ただし、うまくいかなかったり、ロボットの動作が間に合わない場合は、人が補助します。焼けたたこ焼きを器に入れる作業は人が行います。

このようにロボットが苦手な作業を人が行うことで、今までロボットの導入が困難な業務にロボットを導入しています。

ランドロイドはなぜ失敗したのか

ランドロイドは、セブン・ドリーマーズが2015年に発表した「洗濯物全自動折りたたみ機」です。大手家電メーカーなどが多額の出資を行い、注目を集めましたが2019年4月経営破綻しました。原因は2017年発売予定が延期を重ね資金がショートしたためでした。

ランドロイドは、洗濯物の種類をカメラが判別し、ロボットアームが衣類の種類に応じて折りたたみ、種類ごとに分けて収納する装置です。

しかし現在の認識技術、ロボットハンドでは人と同じ作業を完璧に行うのは困難です。

完璧にはできない前提で、人がアシストして目的を達成するなら、なおかつ価格に見合った性能ならば、結果は変わったと思います。しかしランドロイドのパートナー パナソニックとしては、そのような中途半端な製品は販売できませんでした。

ランドロイドの失敗は、事業として自動化に取り組む際に「どこまでのレベルを目指せばよいか」目標設定の難しさと、ベンチャー企業が大企業と提携することの相性の難しさを示しています。
 

ロボットは人の仕事を奪うのか

 

このように現在の産業用ロボットは、まだ完全に人の仕事を代替することはできません。これまでの産業用ロボットの進歩と今後の方向性は以下のようになります。現在は4, 5の段階です。

  1. アーム 溶接等 円筒型、極座標型
  2. 自由度の高いアーム 溶接、組立 多関節型
  3. 多機能なアーム 組立・検査 多関節型にセンサ、カメラ、多機能なハンド
  4. 2本のアーム 組立・検査 双腕型
  5. 認識制度の向上 AI、機械学習

ロボットアームの動きは正確に制御できるようになりましたが、人の手にあたるロボットハンドの性能は、まだ人に及びません。認識・判断の性能は現在のAIはまだ人に及びません。そのため「ロボットにできること」と「できないこと」は依然存在します。

ロボットが広く導入されても、ロボットができない仕事は人が行わなければなりません。

OctoChefでは、具材を切ったり、具材をトレイに並べたり、焼けたたこ焼きを器に盛るのは人が行っています。

このような作業までロボット化しようとすると、大変な労力がかかる上にトラブルも多発します。ロボットの活用においては、このロボット化する作業の見極めが極めて重要です。

進むロボット市場の2極化

今後ロボットは2極化が進むと考えられます。

ひとつはAIを活用して高度な画像認識を行い、人が行っている作業の多くを置き換える高度なロボットです。人からロボットに置変えることで、生産性や品質の向上が実現するため、価格がある程度高くても、大企業を中心に広く受け入れられていきます。

また人にとっては過酷な環境での作業もロボットに置き換えられていきます。高い温度や有機溶剤などの人に過酷な作業環境や、高所や水中などの人が行うには安全上の問題やコストが多くかかる作業は、ロボットの導入が進むと予想されます。

もうひとつは、Dobot Magicianのような低価格ロボットです。低価格のロボットが広く普及すれば、簡単な作業のロボットへの置き換えが進みます。スピードは遅くてもロボットは休まず作業するため、高い費用対効果が得られます。

このようなロボットのプログラミングは、現場の作業者が簡単にできる必要があり、ダイレクト・ティーチングや使いやすいプログラミングツールが必要です。

どうやって使うかが問題

今後ロボットは様々な機能を持つと予想されます。そのような高度な機能や画像処理・AIも外部のライブラリをうまく活用すれば、中小企業でも安価に利用できるようになるでしょう。

一方「ロボットを使った方がうまくいく作業」と「人が行った方がうまくいく作業」は依然存在します。

そのため、ロボットを導入するかどうかは、この点に注意して費用対効果を考慮して見極める必要があります。つまり「ロボットをどうやって使用するか」が重要になります。

これについて国もロボットシステムインテグレーター(RSI)の重要性を訴え、様々な支援策を打ち出しています。今後は、ロボットの特徴をよく理解した上で、適切にロボットを導入することが企業の競争力の源泉となるでしょう。

単純作業から解放

今後ロボットの導入が進めば同じ作業を繰り返す単純作業はロボットが行い、人が行うのは「原料を取ってきて袋から開けて装置に入れる」というようなロボットに向いていない作業か、「ロボットの調整をしたり、ロボットの導入を計画したり」といった高度な仕事になります。

一方、すべての作業者がこういった高度な仕事ができるわけではありません。

将来はこういった仕事に適応できない人材の対処が問題になるでしょう。

参考文献

「ロボットテクノロジー」 日本ロボット学会 著 Ohmsha社
「日経ものづくり2017年5月号」
「日経ものづくり2018年10月号」
「産業用ロボット技術発展の系統化調査」 楠田善宏 著 国立博物館 技術の系統化調査報告 第4集

 

経営コラム ものづくりの未来と経営

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「事務ロボットがホワイトカラーの仕事を奪う!」~話題のRPAの特徴と課題~

昨年あたりから急速にマスコミに登場したRPA (Robotic Process Automation)、ホワイトカラーの生産性が大幅に向上し、事務部門において大幅な省人化やコストカットの実績が報告されています。その成果を聞いて、導入を決定した企業も多くあります。
 

このRPAはどのようなものでしょうか?
そして本当にそのような大幅な効率アップが実現するのでしようか?
 

このRPAについて、調べました。
 

RPAとその特徴

RPAとは

RPAとはRobotic Process Automationの略で、事務作業を人に変わってソフトウェア・ロボットを用いて自動化することで、事務作業の効率化を図るものです。ここでソフトウェア・ロボットとは何でしょうか?
 

ロボット(robot)とは、人の代わりに何等かの作業を自律的に行う装置、もしくは機械のこと(ウィキペディアより)です。この定義だと、装置もしくは機械を指しますが、今日では、物体としては存在しないが「人の代わりになんらかの作業を、ある程度の工程や手順を自動的行うもの」という意味で、コンピューター言語によるプログラムやソフトウェアもロボットの範疇に含まれます。そこでRPAもロボットとされています。
 

RPAの3段階

このRPAの中に認知技術(ルールエンジン・機械学習・人工知能等)を活用したロボットで、人間を補完して業務を遂行できる仮想知的労働者(Digital Labor)を指す場合もあります。ソフトウェアと仮想知的労働者ではずいぶん違いますが、これは以下の表のようにRPAには3段階の発展があるからです。
 

表1 RPAの3段階

クラス 主な業務範囲 具体的な作業範囲や
利用技術
クラス1 定型業務の自動化 人が行っているマウスやキーボード操作をロボットが自動的に行うことで定型業務を自動化。WEBやメール、伝票などからの情報取得や入力作業などに適用される。
クラス2 一部非定型業務の自動化 AIを活用して定型業務だけでなく、判断を伴う業務や非定型業務にも活用できるもの。音声認識や手書き文字読取、画像解析や過去のデータと照合して判断を行う業務に期待されている。
クラス3 高度な自律化 定型業務の自動化だけでなく、業務プロセスの改善や意思決定まで行うもの。まだ実現していない。

 

現在、広く利用されているのはクラス1の定型業務の自動化です。その中で一部のRPAに手書き文字認識や音声認識にAIが使われ、クラス2に近いものが使われ始めました。一方クラス3の時期は未定ですが、2030年には実現するという説もあります。
 

RPAの導入が促進した背景

日本でRPAを積極的に導入しているのは金融機関です。大手金融機関は顧客との間に膨大な数の取引があります。業務の多くがシステム化されましたが、人手による部分もまだ残っています。厳しい経営環境に直面している金融機関は、AIやビッグデータとともにRPAも早くから研究し、その導入による業務効率化や生産性向上を研究してきました。その成果が明らかになるにつれて、他でも導入に取り組む企業が増えています。
 

そのため調査機関によれば2020年にはRPAの国内市場は2兆円を超えると予測されています。最も大企業がRPAを導入する場合、予算規模は数十億円とも言われ、大手が導入するだけでも市場は容易に1兆円に達します。
 

RPAが注目される背景には、少子高齢化により将来の労働人口が減少することがあります。内閣府によると、2014年は6,587万人の労働力人口が、2060年には3,795万人に減少します。総人口に占める労働人口の割合は、2014年の約52%から2060年には約44%に低下する見通しです。
 

RPAで人間でなくてもかまわない定型業務を自動化すれば、人間が行うべき業務が精査され、より効率的に業務を遂行することが可能となり、日本の労働人口減少の問題解決に貢献するといえます。
 

RPAと従来のITシステムの違い

RPAはロボットと呼ばれますが、実態はソフトウェアです。なぜ、ここにきてRPAという新たなソフトウェアが脚光を浴びたのでしょうか? それは従来のITシステムの成り立ちとも関係があります。
 

ITシステムの成り立ち

従来のITシステムは、会計、受発注管理、生産管理などの業務を、それぞれ仕様を作成し、プログラムを組んで構築しました。30年以上前のオフコン全盛の時代は、ソフトウェアはオフコン導入の際にユーザーの要求に合わせて製作するのが主流でした。
 

現在ではソフトウェアに対する要求が高度化し、開発に時間と費用が掛かるようになりました。そのため、その都度製作していたのでは高価になるので、市販のソフトウェアを購入するケースが増えています。それでも、今でも自社の業務に合わせて一から作ることもあります。(フルスクラッチといいます)
 

市販のソフトウェアは、会計、受発注管理、予算管理、顧客管理、在庫管理などそれぞれの機能に特化して製作されています。会社の業務全体をシステム化するには、複数のソフトウェアを統合して運用する必要がありました。
 

現在は、基幹業務システム(ERP)が導入され、これらの業務は統合されるケースが増えてきました。それでもデータ入力や異なった業務へのデータ転送などは、人による作業がまだ多く残っています。これらの作業の多くは、作業内容は決まっている定型化した作業であり、コンピューターに置き換えることができるものでした。
 

ITシステム、RPA、エクセルマクロ・VBAの違い

RPAとよく似たものにエクセルマクロとVBAがあります。エクセルマクロはエクセル上で動くプログラムのことです。これを活用すればエクセル上の操作を自動化できます。プログラムはエクセルでの操作を記録するだけで可能です。またVBAはエクセルに標準で搭載されているプログラムでエクセル以外にも、ワードやパワーポイントとの間の処理を自動化することができます。
 
エクセルマクロ・VBAが、エクセルやオフィスソフト内での自動化を得意とするのに対して、RPAは他のソフトとの間、さらにWEBアプリとの間の作業を自動化します。
 

一方、RPAで自動化している作業の中には、わざわざRPAで操作しなくても、元々のITシステムを改造した方が、使いやすいこともあります。以下に、作業の自動化に対して、ITシステムの改造、RPA、エクセルマクロ・VBAの特徴と違いを述べます。
 

ITシステムの改造、又はモジュールの追加

  • 動作は安定し、高速
  • 専門知識が必要で、対応に時間と費用がかかる
  • 改造に情報システム担当者が要件定義や仕様打合せなどの手間を取られる
  • 複数のベンダーのITシステム間に改造やモジュールを追加する場合、コミュニケーションのコストが増加する

 

RPA

  • プログラミングの専門知識は不要、教育を受ければ現場の担当者でもプログラミングが可能
  • 自社で対応できるため、対応が早く費用もかからない
  • 担当者に相応のスキルが必要
  • 情報システムが担当すると、業務負荷が増加する
  • 条件によっては、動作が不安定になったり、エラーが起きたりする

 

エクセルマクロ・VBA

  • 自社で対応できるため、外部費用がかからない
  • 担当者に相応のスキルが必要だが、現場でも可能
  • エクセル内(エクセルマクロ)、オフィス内(VBA)の制約がある
  • プログラムによっては動作が不安定になる

 

このように考えると、事務の効率化=RPA と短絡的に考えるのではなく、エクセルマクロ・VBAの方が向いているものと、既存のITシステムを改造した方が良いものがあり、適切に判断する必要があります。
 

RPAの利点

RPAをエクセルマクロ・VBAやITシステムの改造と比較すると以下の3
あります。
 

  • 辞めない、休まない、夜間に自動処理が可能
  • 働き続ける、集中力が低下しない
  • 変化に強く、同じ間違いを繰り返さない

 

【辞めない、休まない、夜間に自動処理が可能】

人のように突発的に休みを取ったり、退職したりしません。また24時間働き続けることができるので、時間のかかる業務は夜間に行うことができます。またカレンダー機能があり、決まった時間に自動的に開始するため、作業忘れがありません。
 

【働き続ける、集中力が低下しない】

長時間稼働しても人のように集中力が低下してミスをすることがありません。大量のデータを処理する場合、人はどこかでミスをするのでその予防や対策が必要ですが、RPAはプログラムが正しければミスがありません。
 

【変化に強く、同じ間違いを繰り返さない】

相手のアプリケーションごとに変わる業務や、日ごとに変わる業務など変化が激しい時もプログラムを切り替えることで柔軟に対応できます。また同じ間違いを繰り返すこともありません。
 

このような特徴があるため、ある程度の手順が決まっている、いわゆる「定型作業」に対しては、RPAはミスなく効率を大幅に向上することができます。「ITシステムによる改善を検討したが費用対効果が見合わず断念した」「そもそも自動化はできないとあきらめていた」業務などにも、改善と改革の可能性を与えてくれる技術です。
 

RPAを導入する5つのメリット

RPAを導入することで得られるメリットは、以下の5つです。
 

  1. ホワイトカラー業務の自動化・効率化
  2. 従来人手に頼っていたオフィス業務を効率化・自動化を実現できます。
     

  3. 人的ミスの防止
  4. 人間が集中力を持続できる時間は限られており、特に何度も繰り返し行う作業では、ミスが発生することが避けられません。
     

  5. 生産性向上
  6. 従来人間が行っていた定型業務をRPAに代行させることで、担当者を他の業務に時間を割くことができ、全体の生産性が向上します。また今後人手不足が深刻化すると、生産性向上が喫緊の課題となり、RPAを導入がその解決策となります。
     

    図1 RPAの自動化の効果

    図1 RPAの自動化の効果


     

    また月に数日しかないが、その間は作業量が多くミスが許されない業務は、担当者の負担が大きく、ミスが担当者に大きな負担となることがあります。
    RPAは一度記録した作業を正確に実行するため、人的ミスの防止になります。またRPAは長時間作業しても、人間のように集中力が途切れ精度が下がることがありません。
     

  7. コスト削減

5分かかる作業がRPAで3分となっても、単体での時間短縮効果は限られています。しかし日々の業務や複数の人が関係する業務では、わずかな時間の短縮も蓄積すれば大きな効果を生みます。またRPAが自動的に行うことで管理の手間がなくなり、曜日・時間に関わらず作業を行うため、全体として大きな工数削減が実現し、その結果、人件費削減につながります。
 

事務業務のアウトソーシングとの比較

データ入力などの事務業務を海外、特に新興国や発展途上国へ委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が、事務業務の効率化の方法として普及しています。しかし、これらは人が行うため、担当者の教育やスキル向上が必要で、スタッフが退職したりすると引き継ぎがうまくいかず、品質が低下したり、納期がかかるなどの問題が生じます。
 

新興国や発展途上国へ委託する場合、これらの国々の人件費が上昇すれば、コストも上がります。さらに正確性が求められる業務は、二重三重のチェックが不可欠となり、コストと時間がかかる問題もありました。
 

RPAは、このようなBPOの人に関する問題がなく、品質とコストが維持できる点に違いがあります。
 

RPA導入の効果と注意点

効果の4段階

RPAの導入は以下のように4段階の効果があるといわれています。
 

  1. RPAソフトウェアの特性 一次効果
  2. コンピューター処理のため、以下の効果が得られます。
    ① 効率化
     ● ミスがない
     ● 見直しや確認が不要
    ② 生産性
     ● 処理速度が早い
     

  3. ロボットファイルの設計ノウハウ 二次効果
  4.  ● 反復処理を実装する、スケジュールに沿って実行する、などを組み込むことで、生産性を向上
     ● プロクラムを部品化・モジュール化し、社内で共用することで、業務を横展開できる、二次効果
     

  5. システム全体としての効果 三次効果
  6. OCR、AIと合わせて導入することで、相乗効果が生まれ自動化が促進します。
     

  7. 導入活動による効果 四次効果

RPAを導入するために、業務全体を見直し、定型化された業務とそうでない業務を洗い出すことで、業務全体の見直しや改善が進みます。
 

実際にRPAを導入すると、一次や二次の効果よりも三次や四次の効果の方が大きいといわれています。
 

導入にあたっての注意点

【RPAへの正しい理解】
大手企業のRPA導入事例やコスト削減効果に踊らされず、RPAのできることを正しく理解します。企業によっては、前述のように当初は時間短縮の効果はそれほど大きくありません。セミナー参加や他社の導入事例集を集めるのも理解を深めるのに良い方法です。
 

【RPA自動化に適した業務の洗い出し】
導入する部門の業務を洗い出し、定型化されている業務やルール化されている業務の中で、情報が電子化されている業務を候補に挙げます。また時間短縮やミス防止など効果のわかりやすいものから取り組みます。
 

【RPAの導入の準備】
プロジェクト等推進体制をつくりリーダーを決定します。特に情報システム担当には負荷がかかるので、前向きな人を選びます。最初は小さな業務から取り組み(スモールスタート)、徐々に対象範囲を拡大します。
 

RPAを使う際の注意点

RPAを使う上で注意すべきことは、RPAで自動化できることは定型的な業務に限定されることです。人間が判断するような業務は、現状のRPA クラス1ではできません。
 

また定型的な業務でも、文字や画像の識別、音声の識別などコンピューターが苦手とする識別はRPAには向いていません。多くのRPAは、文字認識(OCR)や音声認識は搭載しておらず、それらは別のソフトウェアを使用することになります。従って業務がスムーズにいくかどうかは、それらのソフトウェアに依存します。
 

具体的な注意点 ユーザックシステムのブラウザ名人 の例

RPAは、販売管理システムや勤怠管理システムなどのソフトウェアをRPAという別のソフトウェア(RPAでは、ロボットといいますが)で操作します。従って、RPAが安定して動作するためには、RPAが認識しやすいように動作を設定する必要があります。
 

【安定性を確保するために】
RPAが安定した動作をするために、通常はプログラミングの際、マウスを操作し選択や入力を行う場合は、RPAはマウスがhtmlのどこを操作しているか認識し、htmlのタグとしてプログラミングしています。
 

キーボードで操作する場合も、キーボード入力を認識してプログラミングしています。
対して画像内の座標を指定した場合は、サイトによってはPC環境に応じて画像サイズを変える場合があり、座標が違ってしまう可能性があります。
 

画面全体の座標を指定した場合、画面表示はPCのディスプレイの設定により異なるため、思ったように動作しない場合があります。
 

RPAのベンダー

Biz Robo / Basic Robo (Kofax Kapow10)

Kapow社が提供していたツールをKOFAX社が買収・統合したもので、RPAテクノロジー社からはBiz Robo / Basic Roboとして提供されていますが、他のベンダーからはKofax Kapow10として提供されています。
 

サーバー上で稼働し、複数のロボットを同時に使用でき、Webによる大規模なデータ処理アプリケーションに適しています。国内では100社を超える企業に導入され、トリンプインターナショナル社、日本生命、オリックスグループなどに導入されています。費用は、一例として年間利用料の場合60万円~となっています。
 

Ui Path

マイクロソフトのWorkflow FoundationやXAML書式を適用したRPAツールで、動作シナリオ作成、実行、管理支援などをモジュール化し、別々に提供することで、小規模~大規模企業まで幅広く対応する製品です。国内で555社に導入され、三井住友フィナンスグループ、電通、早稲田大学などに導入されています。価格は、最小構成単位で年間利用料87.5万円、自動実行を含めた開発・実行・管理機能の最小単位の年間利用料が385.5万円となっています。
 

Blue Prism

2001年に設立されたRPAの老舗で、金融、医療など高度なセキュリティが必要な分野に強く、日本ではDeNA、住友商事など金融機関や広告代理店、Web企業など30社に導入されています。価格は年間利用料が120万円~です。
 

Automation Anywhere

世界市場では、Blue Prism社、Ui Path社と並んで 3大RPAプロバイダーの1社です。事務処理業務のRPAプラットフォームAutomation Anywhere Enterpriseの他に機械学習/コグニティブ技術によって非構造化データ解析を行い、意味を理解し、必要なアクションをRPAに渡すIQ Bot、リアルタイムでデータからの洞察を得るBot Insight、仮想技術により業務量に応じてボットの数をオンデマンドで調整するBot Farmなどのツールを提供しています。
国内では、横河電機、サントリービジネスシステム、第一生命保険などが導入し、価格は最小構成で100万円/年、標準的な構成で1,300万円/年です。
 

WinActor

NTTの研究所で生まれた純国産RPAツールで、ほぼすべてのWindowsデスクトップアプリケーションに対応し、Webアプリケーションにも対応しています。デスクトップ型でサーバーを必要としないのでPC1台から始めることができ、画面イメージによる機能に特徴があります。2000社を超える企業が導入し、価格はフル機能版が90.8万円、実行機能のみが24.8万円です。
 

Autoジョブ名人

ユーザックシステム社が開発したWebシステム向けの国産RPAツールです。元々Web EDIの受信システムを10年以上にわたり販売していてWebからのデータ処理に強みがあります。ブラウザ操作に特化したAutoブラウザ名人、メール処理を中心としたAutoメール名人もあります。価格は年間60万円、スクリプト実行版は年間18万円です。
 

CELF RPAオプション

SCSK社が開発したもので、Excelの知識でWebアプリケーションを作ることができるクラウドサービスCELFにRPAオプションとして追加されたものです。ほぼすべてのWindowsデスクトップアプリケーション、およびWebアプリケーションに対応しています。Excel内の処理やデータベース連携を得意とし、RPAで行う処理を単純化することができます。価格は、CELFの年間利用料が17.5万円、RPAオプションが3.5万円です。
 

RPAの実施例

投資信託の口座開設業務の自動化

ゆうちょ銀行は、これまで人が行っていた投資信託の口座開設業務に、富士通が開発した業務自動化システムを導入しました。OCRとRPA ( Kofax社の「Kapow(カパウ)」) を活用して、紙に記入した口座開設申込書の読み取り、内容確認、口座開設手続きを自動化し、作業時間を1/3に短縮しました。
 

この作業は、口座開設申込書と顧客の口座情報をひも付けを行い、口座の情報や顧客の個人情報を行員が比較・確認し、システムに手で入力しています。
 

これを読み取った申請書をOCR「DynaEye(ダイナアイ)」を活用し、印字された文字や手書きした文字を高精度に認識し、文字のつぶれなどで読めない時はエラーを返します。未記入部分などがあればエラーを出力し、行員は該当部分のみを確認して修正します。
 

読み取った申請書の情報は、普通口座の顧客情報と合わせて登録し、内容を照合して確認、投資信託システムへの入力から完了通知までをRPAで実施することで、これまでに投資信託の口座開設にかかっていた時間を3分の1に短縮しました。
 

定型化した業務にRPAを導入

社内の業務を洗い出し、定型化している業務にRPAを導入し、残業時間の削減を目指します。業務を洗い出した結果、59業務にRPAの適用を決め、21業務のRPA化が完了しました。例えば、勤怠管理の自動化、顧客への納期解答書の作成、請求書の確認業務などです。
 

Web EDIデータのダウンロード

Web EDIのデータを取引先のWebサイトからダウンロードしますが、発注が365日あり取引先の数も多いため、高い業務負荷でした。取引先ごとにWebサイトの画面が異なるため、操作方法も異なり、作業ミスや漏れが発生していました。
 

RPAに取引先ごとのデータのダウンロード作業をプログラム化し、自動的にダウンロードし、基幹システムに転送するようにした結果、受注ミスと休日出勤がなくなりました。
 

銀行の入金データのダウンロード

(ジャパネット銀行)
クレジットカードやデビッドカードの決済のため銀行のWebサイトにアクセスし入金データをダウンロードし確認していますが、決済の増加により業務量が増え、ミスや漏れが発生していました。銀行のWebサイトの操作に時間がかかるため、人員が増加する半面、ミスが許されないため離職者も増えていました。
 

RPAにより銀行のWebサイトに自動的にアクセスし入金データをダウンロードすることでミスがなくなり、時間も短縮されました。
 

勤怠情報をメール

(外食チェーン)
働き方改革で残業を規制するため、本部の勤怠管理システムで時間超過者をリストアップし、各店舗の店長に手作業でメールを送信していました。作業忘れや送信漏れが起き、作業工数もかかっていました。
RPAで警告メールを自動送信しました。
 

We価格調査

(タイヤのネットショップ)
毎日社員4名が専任して競合店の価格を調査していました。ミスの発生や社員のモチベーション低下の課題がありました。
価格調査をRPAにプログラムし自動化しました。
 

事例のまとめ

多くの事例では、中小企業はRPAの導入による削減時間は、1か月あたり数分から数百分、コストダウン効果で見れば、1か月数千円から数万円にすぎません。費用対効果で考えれば、RPAよりも人で行った方が良い場合もあります。
 

従ってRPAの導入はコストダウンだけでなく、社員の負担を少なくすることで、より付加価値の高い業務に注力できることや、業務負荷が増大した時にも柔軟に対応できなど、総合的に判断する必要があります。
 

専門的なプログラミング技術は不要ですが、業務の自動化とはプログラム化することなのでプログラミングのセンスがあった方が望ましいです。できればエクセルマクロなどの経験があると良いです。
 

RPAかソフトの改造か

このようにRPAの実施例を見ると、わざわざRPAを導入しなくても、現在使用しているITシステムを改造する、あるいはモジュールを追加した方が使いやすい場合があります。RPAは、既存のITシステムを別のソフトウェアで操作するため、RPA自体の不安定さが内在します。またRPAのプログラムの管理が発生します。大がかりな改造でない場合、既存のITシステムに追加のモジュールをアドオンすれば対応できる場合、RPAよりもこちらの方が、操作が簡単で動作も安定していることがあります。
 

逆にRPAの利点は、エンドユーザーが自分でプログラムできる点です。そのため迅速に立ち上げることができ、変更も容易です。またRPAはひとつで多くのソフトウェアを操作できるため、個々にITシステムを改造するよりも少ない費用でできます。
 

RPAを用いた業務効率化とその将来

効果は企業規模により異なる

RPAは定型化された業務が多ければ導入することで、業務を効率化することができます。しかし中小企業の場合、単純な定型業務に一人が専念していることは稀です。そのため業務を効率化しても人員削減までには至りません。
 

これが大企業では、定型業務にある程度の人員が投入されている場合があり、この場合はRPAを導入することで、人員削減とコスト削減が実現します。
 

またRPAを導入することで情報システム担当者の業務量は増加します。情報システム担当者が業務効率化に積極的でない場合、不満が大きくなります。
 

大企業の場合は、自部門の業務を洗い出し、定型化している業務、RPA導入で効果が見込める業務を抽出し、プロジェクトとして推進します。ある程度投資できればOCRや音声認識も導入することで、従来はコンピューターに置き換えできなかった業務も置き換えることができます。
 

中小企業の場合は、定型化できる業務をある程度ピックアップしますが、大企業のように時間とお金をかけて、業務を洗い出すようなことは、時間も人も不足です。そこでそれほど大がかりでないRPAを導入して、まずはRPAに置き換えられる業務をいくつか試してみます。それで効果が確認されれば、現場主導で置き換えできる業務を見つけて置き換えていきます。その際、最初は小さな業務から始めて、できるだけ大きな問題が起きないところから進めていきます。
 

定型的な業務で社外に発注している業務(business Process Outsource : BPO)は、RPAの導入により外注費の削減が可能です。
 

RPAの将来は?

【クラス1】
クラス1の機能では、中小企業では高額なRPAを導入しても効果は少ないと思います。RPAの効果は、情報システム担当者のスキルに依存するため、まずは安価なRPAを導入し、情報システム担当者のスキルアップを図ると良いでしょう。
 

この部分がどんどん使いやすくなれば、情報システム担当者だけでなく、一般の社員も簡単にプログラミングできるようになり、RPAを使う場面が増えます。データの入力に2時間の作業でもプログラミングが30分であれば、RPAの動作は短時間に終了するため、作業時間は半分以下になります。
 

そう考えると、RPA普及のポイントは、RPAの使いやすさの進化と、使う側のスキルの向上です。使う側がプログラミングに慣れていないと、RPAは面倒に感じられ、時間をかけてでも単純作業を続ける人が出るかもしれません。
 

例えば三次元測定機は、一度測定動作をすれば、自動で測定を繰り返すプログラミング機能が30年以上前からありました。そのため三次元測定の担当者にとってプログラミングは当たり前となっています。従って、環境が整えば多くの人がRPAのプログラミングになじむかもしれません。
 

【クラス2】
今後、OCRや音声認識がさらに普及すれば、クラス2は実現可能です。実際は、FAXや紙の帳票や伝票をデータ化して、オンラインで受け取れば、OCRは必要ありません。現実には、取引先とのシステムの違いやセキュリティの問題から、紙でのやり取りは依然としてあります。特に行政機関とのやり取りは印鑑での決済があるため、当分はデータ化しない、データ化してもpdfどまりと予想されます。
 

その場合、OCRがRPAに組み込まれ、エラーのノウハウを広く共有して識別制度が向上すれば、RPAはさらに様々な業務に適用できます。
 

クラス2の例として、請求書のスキャンデータから、AIにより書式を判断して項目を整理し、データベース化するものがあります。初めての書式でも類似の書式から判断したり、スキャンデータと過去の情報を比較してご認識を修正したりして、高い精度を実現しています。
 

【RPAとAIを組み合わせての発展】
RPAツールは導入してからが勝負、スモールスタートで始めて大きく育てる方が良いと言われています。わかり易いRPAから始めてIT活用率を高めていくことが手堅いと考えられます。ここでは、RPAから始めるAI活用の第一歩をご紹介します。
 

【RPAツールで扱うデータ等を拡大】
AI-OCRやAIスピーカーなどの技術を利用して、紙や画像、音声などの情報を、RPAが扱えるような形式のデータに変換し、自動化できる業務の範囲を広げます。非構造化データを構造化する、というような言い方もされます。RPAツールという自動化ロボットに、AI-OCRという優れた目を与えたり、AIスピーカーという優れた耳を与えたりするイメージです。
 

【審査等の判断業務との連動】
RPAでAIのような高度な判断まで行おうとする場合は、高度な判断をする特化型AIと組み合わせるのが現実的です。例えば与信審査判断力を鍛えた特化型AIに、以下のように組み合わせます。
 

  1. RPAが与信審査AIに所得等の情報を渡し、この人にお金を貸しても大丈夫かと問う
  2. 与信審査AIは、受け取った情報から貸与可否を審査判断する
  3. RPAは与信審査AIから戻ってきた審査判断に応じた処理を行う
      (貸与可であれば、貸し出す業務を自動実行する)

 

今後は、何かしらの目的に特化したAI商品が増えていくと予想されます。実用段階に達した特化型AIをRPAと組み合わせることで、それまではRPAには難しい業務を自動化できるようになります。RPAという自動化ロボットに、審査AI等の相談相手を付随するわけです。
 

クラス3の実用化は…

クラス2のRPAでのAIの役割は、OCRの認識精度を高めたり、取得したデータの項目を見て、適切な処理を判断したりするものです。これは、すでに音声認識や検索エンジンでAIの恩恵を受けている私たちにも馴染みやすいものです。また今後AIの活用としては、与信管理や融資の可否にAIやRPAの活用が予想されます。
 

より高度な非定型業務を判断するには、判断の元となるデータが蓄積されていなければなりません。今後RPAが普及し、様々な業務においてデータが蓄積されれば、それらのデータを活かして、AIが判断できる場面が出てくると予想されます。
 

今後どのような場面でAIを活用して、RPAが自動的に判断し、遂行できるような業務があるのか? もし、そのような業務が急速に増えればホワイトカラーの仕事が半減するかもしれません。
 

クラス3よりも重大な変化

むしろ、クラス1、あるいはクラス2のRPAが大量に普及することで、雇用環境に重大な変化が起きるかもしれません。
 

現在のホワイトカラーの仕事の多くは定型業務です。もしこれらがRPAに置き換わると残った仕事は創造的な仕事だけになってしまいます。これは設計でも例外ではありません。設計作業では多くの時間を過去の設計の複写や改変に割いており、本当に新しいものを考える時間は多くありません。
 

このような定型業務に対しクラス2のRPAをアシスタントとして導入すれば、作業効率は飛躍的に高まるでしょう。その半面、設計者は常に頭を動かすことに追われます。あるいは従来5時間かかっていた定型業務をRPAが5分で終わらせてしまえば、設計者は3時間創造的な業務に取り組むだけで同じ成果が出せるかもしれません。
 

一方、ホワイトカラーの中で創造的な業務に向いていない人材は、職場での居場所を失う可能性があります。すでに製造業の現場では、自動化された設備の設定やプログラム、改善のできる人材と、製品の着脱など単純作業しかできない人材とで待遇に格差が生じています。このような状況がホワイトカラーの職場でも、より深刻化するかもしれません。
 

そして、仕事をあまりに創造的なものだけにすることは、別な面で創造性の支障になる可能性があります。優れた研究者や開発者は、膨大なデータを手間をかけて整理・分析し、その過程でデータの中から神がかり的な直感でもって、新たな発見をすることがあります。そこまででなくても、ベテランはデータを眺めていて他の人が気づかない異常や問題点を発見します。
 

このような能力は、一見すると非効率に見える定型的な作業の繰り返しの中から生まれています。かといって、今更かつてのやり方に回帰できないでしょうが、生のデータを扱う時間を補完することも必要かもしれません。
 

参考文献

「絵で見てわかる RPAの仕組み」 西村 泰洋 著 翔泳社
 

 

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次世代移動体通信5Gでビジネスはどう変わるか?

次世代移動体通信5Gとは? その特徴

5Gとは「第5世代移動通信システム」を意味する言葉です。GはGenerationを表します。
 

移動体通信は1979年に始まったアナログ方式(1G)から、1993年のデジタル方式(2G)によりメールなどテキストデータの送信が可能になりました。そして2001年に3Gが始まり高速化・大容量化によりウェブサイトや写真などのコンテンツがストレスなく使えるようになりました。
 

さらに2010年から始まった4G(LTE)により高速化・大容量化が加速し、動画やゲームコンテンツなどのリアルタイム視聴がストレスなくできるようになりました。
 

図1 移動体通信の変遷

5Gの特徴1 高速大容量通信

通信速度は4Gの110Mbps~1Gbpsに対して、5Gは下り20Gbps、上り10Gbpsとなり、100倍以上の高速化が実現するといわれています。これにより2010年に対して1,000倍以上のトラフィックに対応できます。
 

5Gの特徴2低遅延

通信の遅延は4Gの10msに対し、5Gは1msと1/10になり、よりリアルタイムでの情報収集や機器の制御が実現します。
 

5Gの特徴3多数同時接続

基地局に同時接続可能な端末は、4Gの10倍以上の100万台/㎢で、IoT機器も含め多くの端末が同時に使用できます。
 

[caption id="attachment_5746" align="alignnone" width="450"]図2  5Gの特徴 図2 5Gの特徴


 

【5Gの技術】

  • 高い周波数

より多くの信号を送信するために電波の周波数を、4Gの3.5GHzに対し、5Gはより高い周波数帯(3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯)を使用します。周波数6GHz未満の「Sub6」(3.7GHz帯と4.5GHz帯)と、高周波帯「ミリ波」(28GHz帯)を組み合わせ、通信の制御部分はSub6でエリアを広くカバーし、コンテンツ部分にミリ波を使用して高速・大容量通信を実現します。
 

一方、周波数が高くなると電波の直進性が高くなり、遠くまで届きにくく、ビルなどの障害物の影響を受けやすくなります。
 

そこで5Gは、MIMO(multiple-input and multiple-output、マイモ)「超多素子アンテナ技術」を使い、送信側と受信側で複数のアンテナを用いて複数に分割された異なるデータを同時に送信、また受信をして通信速度を上げます。このMIMOは4Gで既に使われていましたが、5Gではこれを発展させたMassive MIMOを使用、多数のアンテナを使ったビームフォーミング(電波の放射技術)により、従来複数でシェアしていた電波をひとりひとりに割り当てることができるようになります。
 

これにより駅や繁華街など人が多く集まる場所でも通信速度が遅くならず快適なモバイル通信が提供できます。Massive MIMOはソフトバンクなど、一部の4Gサービスで実運用が始まっています。
 

図3 現在の状況と5Gの違い

図3 現在の状況と5Gの違い


 

  • エッジコンピューティング

5Gでは基地局と機器の通信の遅延は1msになります。しかし基地局とサーバーとの通信時間はもっと長いことがあり、これが問題になります。今まで映像の符号化や復元処理をサーバーで行うため、サーバーと端末の通信時間がかかっていました。
 

そこで基地局の近くにエッジ・サーバーを設置し、エッジ・サーバーで処理するMEC(Mobile Edge Computing)により低遅延を実現します。これは今後自動運転や遠隔医療、機械の遠隔操作など高いリアルタイム性を求められるところで不可欠な技術です。
 

図4 エッジ・サーバーで処理する方法へ

図4 エッジ・サーバーで処理する方法へ


 

  • ネットワークスライシング

従来の移動体通信はどの機器に対しても、ひとつのネットワーク、同じ基準で運用されていました。(通信速度による価格の差はありましたが) 
 

ネットワークスライシングは、用途に応じてデータを送る単位を変えて、通信速度とデータ量のニーズを満たす方法です。低遅延が必要な用途では一度に送るデータのサイズを小さくし、大容量のデータ伝送が必要な用途では一度に送るデータの帯域を大きく取り通信速度よりも伝送時間を優先します。
 

図5 ネットワークスライシング

図5 ネットワークスライシング


 

自動運転などで低遅延を実現するには、エッジ・サーバーとネットワークスライシングが不可欠です。
 

【5Gの普及】

5G対応デバイスが普及するためには、基地局の整備が必須です。当面は基地局があるところは5G、ないところは4Gでの運用になりますが、基地局が少なければユーザーは5Gの恩恵が受けられず普及が進みません。一方5Gは4Gよりも建物の影の影響を受けやすく、より多くの中継点が必要になります。
 

5Gの今後

スマホと動画

今後5Gが普及することで成長が期待されるサービスは、スマホアプリ、テレビ、動画、ビデオゲームなど既にある市場です。5Gは高速・大容量ですが、際立って新しいサービスはなく、業界の盛んなPRほどには顧客は買い替えしないかもしれません。
 

ハイプ・サイクル

新技術に対する期待と失望をガートナー社はハイプ・サイクル、つまり過度の興奮や誇張(hype)、それに続く失望として説明しています。
 

  1. 黎明期
  2. 新製品の発表の報道やイベントにより、世間の注目を浴び関心が高まります。

  3. 流行期
  4. 世間の注目が大きくなり、人々に興奮と非常に大きな期待が生じます。一方で成功事例も出ますが、多くは失敗に終わります。

  5. 幻滅期
  6. 宣伝されたほどの成果が出ないため、人々に失望が広がり幻滅期に入ります。報道も取り上げなくなり、人々の関心が失われます。

  7. 回復期
  8. 具体的な成功例が増えて人々はその製品の良い点と活用方法を徐々に理解しますが、保守的な顧客は様子を見ています。

  9. 安定期
  10. 多くの人々にメリットが認知され、広く宣伝され受け入れらます。製品や技術はより安定し、さらに改良したものが現れます。一方、その製品の市場でのボリュームは、広い市場に波及するものか、ニッチ市場に限定されるかは、製品によって異なります。

 

図6

図6 ハイプ・サイクルと5Gの流れ (Wikipediaより)

 

5G普及後の世界

経営コンサルタントのクロサカタツヤ氏は、5Gによって変わる未来の特徴を以下のように述べています。
 

① 周囲と溶け込む

ウェアラブル・デバイスやスマートスピーカー、他の様々なIoTデバイスが広まり、それまでのような「コンピューターやスマートフォンを使う」という意識がなく、気づかない間に自然に動いている社会になります。
 

② 境目のない世界

様々な機器が常時サーバーとつながったフルコネクテッドな状態が当たり前になります。これらの機器から送られた情報を元に、シミュレーションや予測を当たり前のように受け取るようになります。私たちの意識にリアルとバーチャルの境目がなくなっていきます。
 

③ 予測を前提とした社会

フルコネクテッドな機器から収集した大量のデータをAIを活用して分析することで、未来の出来事を高い確率で予測できるようになり、予測結果を元に最適な行動を取るようになります。例えば病院や飲食店の混雑や渋滞などを事前にすべて予測し、ストレスのない旅行計画を立てることができます。
 

5Gを光ファイバーケーブル網の代用に

日本の光ファイバーケーブル網(FTTH)の利用可能世帯率は98%、ほぼ全国のエリアがカバーされています。しかしアメリカでは30%、70%の家庭が高速通信網のサービスが受けられません。そこで5Gを高速・大容量の固定回線サービスとして使う動きがあります。
 

新たなサービス

コンサートやスポーツなどのライブ中継で、多数のカメラで正面以外に「上から」「クローズアップ」等様々な視点での映像を、視聴者が自分で選択するサービスが生まれます。会場で観戦しているよりも、様々な体験ができることで高い付加価値が生まれます。
 

コマツと大林組は、災害現場など危険な場所での建機の運転を5Gを使って遠隔で行う取り組みを行っています。5Gではスマホなどの端末と基地局に求められる仕様が近づくため、スマホのハードウェアを多数使用することで基地局のコストを飛躍的に下げることができます。
 

同様に様々な産業機器の通信部分もスマホの技術を活用することで価格を大幅に下げることができます。
 

特定の範囲のみで独自の5Gネットワークを構築するローカル5G技術は、独自のSIMを発行して、他から全くアクセスできないようにできます。それには独自のハードウェアが必要ですが、高いセキュリティが実現します。
 

図7  ローカル5G

図7 ローカル5G


 

当面の間、5Gは主に従来から需要のある動画配信やゲームなどに活用されると予想されます。
 

一方、高速・大容量、低遅延、同時多数接続という5Gの特徴は今後様々な分野に活用される可能性があります。そのひとつひとつは動画配信など市場に比べて大きくないかもしれませんが、こういったロングテール的な用途の中から新たな市場が生まれる可能性があります。
 

図8

図8 5Gの用途

 

参考文献

「5Gでビジネスはどう変わるか」 クロサカタツヤ 著 日経BP
 

本コラムは2020年10月18日「未来戦略ワークショップ」のテキストから作成しました。
 

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「人工知能AIの発達で仕事はどう変わるのか」  ~その2 第三次人口知能ブームの技術とシンギュラリティ~

第三次人工知能ブーム

1980年代の第二次人工知能(以降、AI)ブームは、

  • 当時の記憶装置はエキスパートシステムに入れる知識ベースに限りがあること
  • 形式化(言語化)されていない知識を扱うことが容易でない

そのため、広く普及するには至りませんでした。
 

ところがムーアの法則に従いコンピューターの演算能力、記憶容量は指数関数的に増加し、今まではできなかった大量のデータ処理ができるようになりました。インターネットが普及し、当時のエキスパートシステムでは望めなかった大量のデータ(知識ベース)が手に入るようになりました。
 

1997年にはIBMのAI ディープ・ブルーがチェスの世界チャンピオン カスパロフを破り、2016年にはグーグル傘下のAlphaGoが世界トップのイ・セドルに勝利しました。2011年にはIBMのワトソンがアメリカのクイズ番組「ジュパティ」で勝利しました。
 

こうして身近にAIが使われるようになり、再び第三次人工知能ブームが訪れました。そのカギとなる技術は機械学習とディープラーニング、ビッグデータ解析です。
 

ニューラルネットワーク

図1に示すように、生物の神経細胞をモデルにして人工のニューロンを相互に接続して学習を行うのがニューラルネットワークです。画像の入力に対して各ニューロンを通って出た答えを判定します。正しい答えを出したニューロンの重みづけを増やし、間違った答えを出したニューロンには、その重みづけを減らします。再度同じ入力を処理して、正解に近づけば再び重みづけを増やします。これを繰り返せば、常に正しい答えを出せるように「学習」します。
 

実はグーグルの創設者セルゲイプリンとラリーペイジはこのニューラルネットの研究者でした。ここからインターネットのウェブサイトの評価を重みづけするという検索エンジンの考えが生まれました。
 

図1 人工ニューロンとニューラルネット

図1 人工ニューロンとニューラルネット
 

機械学習

それまでのコンピューターは計算や思考をある語リズんで表し、プログラムを作らないと動作しません。コンピューターはプログラム以上のことはできず、自ら学習することはできませんでした。
 

心理学では「強化学習」というものがあります。これは生物の報酬系に働きかけることで、うまくいったことを強化し、失敗したことは弱めて学習します。この考え方をコンピューターに取り組み、うまくいった状態をコンピューターに理解させ、うまくいった方法に対し変数を変えて目標値に近づけば、これを繰り返して正解を出せるようになります。
 

図2の例では複数の人工ニューロンに入力されたデータの結果は、最初の状態はランダムなため間違いが含まれます。
 

この出力と正解との差に対し、重みづけをさかのぼって修正します。(逆伝播 : バックプロパゲーション と言います。) (図3) 一度、逆伝播で学習しているので、今度はより正解に近づきます。これを繰り返して精度を上げていきます。(図4)
 

図2では女性の画像は約18万のニューロンに分解され、それぞれのニューロンにランダムに重みづけがされた後、各ニューロンが男か女を判定します。各ニューロンの判定結果を集計します。ランダムに重みづけするため、最初は男性90%女性10%と、答えは間違っています。
 

正解は男性0%女性100%なので、出力に正解を入れた場合、今の答えと正解の差から正しい重みづけの値に修正します。(逆伝播:バックプロパゲーション)(図3)
 
再度女性の画像を入力して結果を判定すると、男性60%女性40%と前よりも正解に近づきます。(順伝播:プロパゲーション)(図4)
 

欲しい精度で判定できるようになるまで、これを繰り返します。
 

図2 機械学習の順伝播の仕組み

図2 機械学習の順伝播の仕組み
 

図3 機械学習の逆伝播の仕組み
図3 機械学習の逆伝播の仕組み
 

図4 機械学習の繰り返し

図4 機械学習の繰り返し
 

図5 ディープラーニング

図5 ディープラーニング
 

機械学習には、今まで述べたようにお手本がある教師あり学習と、お手本がなく、類型化(クラスタリング)により目的に近づく教師なし学習があります。機械学習が可能になった背景には、コンピューターの速度が向上し、記憶装置の容量も大きくなったため、膨大なデータを短時間で処理できるようになったことがあります。
 

深層学習(ディープラーニング)

深層学習(ディープラーニング)は、この機械学習の隠れ層を多層化したものです。(図5)
 

これにより、複雑な情報に対応できるようになり、分析精度が飛躍的に向上しました。今では機械学習で層が深くなると、誤差が小さくなりすぎて学習できなくなりした。
 

しかしオートエンコーダーなど技術により困難だった4層以上の多層ニューラルネットを学習できるようになりました。
 

このニューラルネットワークの多層化は、従来は時間と計算コストがかかる点が問題でしたが、コンピューターの高性能化や単純な演算の並列処理に優れたGPUを活用することで実用的になりました。
 

こういった技術の進歩により、特に画像認識の性能は飛躍的に向上しました。2010年から行われている「ILSVRC : Imagenet Large Scale Visual Recognition Challenge (イメージネット大規模画像認識チャレンジ)」という画像認識コンテストでは、2012年トロント大学がディープラーニング (畳み込みニューラルネット) を使用して前年の正解率74.3%に対して84.7%と他と大差をつけて優勝しました。2015年にはマイクロソフトのチームが95.18%と人間の正解率94.9%を初めて超えました。
 

2012年にはグーグルブレインはユーチューブからランダムな画像1000万枚を読み込み、猫の顔を自動(教師なし学習)で認識することに成功しました。さらにグーグルの「ニューラルイメージキャプションジェネレーター」は画像に注釈をつけることに成功しました。またフェイスブックは、逆にテキストから画像を生成することに成功しました。
 

コンピューターの自然言語理解

音声認識や自動翻訳ができるようになったコンピューターは言葉を理解できるようなったのでしょうか?
 

音声認識

アップルのSiri、グーグルの音声アシスタント、スマホの音声認識は高性能になり、日常の問い合わせに的確に答えます。では、「彼ら」は言葉を理解しているのでしょうか?
 

音声は情報の伝達手段としては正確性がなく極めて効率の悪い方法です。理由はまず個人ごとに声の大きさ、周波数(声紋)が異なります。それに言葉の切れ目にあたる音節の取出しが大変です。
 

実は現代の音声認識は「音声は聞き取れない」ことを前提に作られています。「聞き取れない」音を認識するのは確率論を用いて推測しているからです。具体的には文の並びのテンプレートを用意し、聞き取った音声が近いものを順に当てはめていきます。それも総当たりで行うと指数爆発を起こすので、過去に聞き取った音節から、次に聞こえる言葉を推測して待ち構える方法を取っています。これは膨大な音声情報があるからできる手法です。
 

グーグルの文書作成ソフト「グーグルドキュメント」に音声を入力するとこれがよく分かります。最初に聞き取った言葉が間違っていても、文を最後まで言い終わると、文の意味が正しくなるように言葉を修正します。
 

翻訳

コンピューターによる自動翻訳は第一次人工知能ブームの時から取り組まれていました。当時は元の文の構造を要素ごとに分解して、一語一語翻訳し、それを翻訳したい言語の文法に基づいて再度構成しました。しかし日本語と英語では分の構成要素が1対1にならず、主語がない日本語を、英文ではどうするかといった問題もありました。
 

現在のグーグル翻訳などは、文章の意味は無視して大量の過去の翻訳例を参照し近いものを当てはめています。論理学でいえば、演繹的でなく帰納的手法です。つまり膨大な例文から確率的に対応する言葉を見つけ、それを基に文章の構文と内容を推定しています。グーグル翻訳は決して正確ではありませんが、WEBサイトの情報を読む程度には使えます。しかも100種類以上の言語を短時間で翻訳するのは人間では不可能です。
 

第三次人工知能ブームでは、機械学習やディープラーニング、ビッグデータ解析により従来はできなかったことができるようになりました。その点でAIはかなり身近になってきました。一方、コンピューターはまだ言葉の意味を理解できないため、文脈を理解して論理を組み立てることはできません。それでも音声認識や翻訳はかなりの水準のものが実用化されています。
 

人工知能研究者の中には、飛行機の例えから「AIが言葉を理解しなくても理解しているように振舞えば、理解していると言える」という人もいます。
 

飛行機の例え

かつて発明家たちは当初鳥のように羽を羽ばたく機械を作ろうとしました。しかし成功できたのは自然に忠実にまねることを放棄して、プロペラで推力を得て滑空する方法に変えたからです。今日では巨大な飛行機が鳥よりも速く飛んでいます。AIも人間の脳とは異なる方法であっても同じ能力を持つことができると考えられます。
 

図6 鳥よりも早く飛ぶ飛行機

図6 鳥よりも早く飛ぶ飛行機
 

それでは、人間と違った方法でAIはどこまでできるようになったのでしょうか。
 

AIが小説を書いた

名古屋大学の佐藤理史教授は小説を書くコンピューター・プログラムを作成し、星新一賞に応募しました。コンピューターは文脈を理解できないため、モデルとなる文章を分解し、言葉を入れ替えても意味が通る文章をつくるようにアルゴリズムを構築しました。その結果、AIが書いた小説は一次選考は残りましたが、最終選考までは進めませんでした。
 

AIがつくったコピー

静岡大学の狩野芳伸氏は、AIによるネーミング作成ツールを開発しました。当初はほとんどがダメでした。しかし現在は作成したコピーを電通の社員に評価してもらったところ、「50%はコピーとして成立している」という評価でした。そしてAIが作成したコピーを「コピー大賞」に応募したところファイナルまで行きました。
 

AIは東大に入れるのか

新井紀子氏をリーダーに国立情報学研究所は、2011年から2016年にかけて「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトを立ち上げ、AIが東京大学に合格することを目指しました。2015年6月の模試では偏差値57.8をマークしましたが、東大合格を合格するには読解力に問題があり、これ以上の成績向上は不可能として中止しました。
 

その過程で、AIは検索による膨大な知識はあっても文章の読解力が致命的に弱い、AIは意味を理解できないなど「知識に比べ幼稚な知性」という課題が明らかになりました。一方、文章の読解力がない「東ロボくん」が全受験生の上位20%に入ったということで、高校生の読解力が危機的状況にあることが分かりました。
 

AIという技術はない

現在様々な場面でAIが活用されています。人そっくりに応答する場合もあり、将来AIが人に代わると思う人もいます。しかし今のAIは人の言葉は理解できず、事前につくられたプログラムに従って、その場面に適した応答を返しているにすぎません。
 

しかし、AIといってもその中身は機械学習、深層学習、ビッグデータ解析、音声認識、自動翻訳など異なった技術があります。その点で現在はAIというより、図のような個別技術の集まりと考えた方がよさそうです。
 

図7 AIという技術

図7 AIという技術
 

第一次人工知能ブームで、記号論理学による万能論理マシンという人工知能への挑戦は、指数爆発とフレーム問題のため、簡単なパズルしか解けないという結果に終わりました。
 

第二次人工知能ブームでは、万能論理マシンという遠大な目標はあきらめ、知識ベースを基にしたエキスパートシステムにより現実の問題解決に取り組みましたが、膨大な知識をコンピューターに教え込ませることの大変さと、依然として残るフレーム問題のため限られた用途しか活用されませんでした。
 

その後インターネットの普及により膨大な知識ベースが使えるようになり、機械学習やディープラーニングにより画像の判別など今までのコンピューターにはできなかったことができるようになりました。機械学習ではコンピューターが自ら特徴点を見つけ、処理結果を反映させて、判定を向上させる学習機能を獲得しました。
 

しかし翻訳や音声認識ができるようになっても、確率的な手法で適切な言葉を当てはめているにすぎず、言葉の文脈を理解できません。同様にセンター試験や小説を書くことも、人間のような言葉の意味を理解して考えるのでなく、確率的に適切なものを選んでいるにすぎません。一方、生物のふるまいから問題を解決する取り組みがあります。
 

生命工学的アプローチ

セルオートマトン

1952年に生物の自己複製機能をモデル化するため数学者のウラムとフォン・ノイマンによって考案されたものです。コンピューター上の複数のセルで構成され「隣に黒があれば黒になる」「両隣が白なら白になる」のようなある一定のルールに従った場合、コンピューター上のセルは生命のように自己増殖します。
 

余談ですが、1952年、まだコンピューターが簡単な計算を繰り返すことしかできなかった時代に、頭の中だけでこのセルオートマシンを考えたフォン・ノイマンという人は、天才的な頭脳も持ち主だったようです。
 

1982年スティーブン・ウルフラムとクリストファー・ラングトンはセルオートマトンの増殖のパターンは4つのパターンがあることを発見しました。
 

  • クラス1
  •  時間が経つと動きが全くなくなってしまう

  • クラス2
  •  周期的な動きを繰り返す

  • クラス3
  •  でたらめに見える模様が出現(カオス)

  • クラス4
  •  複雑なパターン(カオスの縁)

 

このクラス4は周期的でなく、かといってランダムでもない、生命に見られるような自己増殖を示しました。そしてこのクラス4は計算万能性を示すことが分かり、これはライプニッツの言う「人間が行うあらゆる論理的な思考」ができることを示しました。
 

群知能

コンピューターでも解くのが難しい「最短経路問題」などの最適化問題を、ミツバチなどの生物は集団で実現しています。ミツバチは巣に収まりきらないほど個体数が増えると、新しい場所を求めて引っ越しをします。その際、四方に散った働きバチは、魅力的な場所を見つけたハチは巣に戻り8の字ダンスをして仲間に場所を知らせます。このとき場所が魅力的なほどダンスの時間は長くなります。そうすると魅力的な場所に行くハチの数が徐々に増えて最も良い場所にハチの群れが集まります。つまり群れの力で最適化問題を解決しています。
 

1992年マルコ・ドリゴはコンピューター上でアリの群れを再現して最短経路を求めるアルゴリズム (蟻コロニー最適化法)を開発しました。さらに蟻コロニー最適化法を用いて巡回セールスマン問題を解く方法を考案しました。
 

遺伝アルゴリズム

生物進化の仕組みをアルゴリズム化し、コンピューター上で人工生命が進化していく仕組みを実現したもので、1975年ジョン・H・ホランドによって提案されました。これは以下のようなものです。
 

  1. 最初はランダムに生成されたプログラムがたくさんあるところからスタートする。
  2. 性能や適合度の高いプログラムは増殖させ、性能や適合度の低いプログラムは死滅させる。これは確率的に行う。(再生 : reproduction)
  3. 2つのプログラムを途中の部分で時々ランダムに入れ替えてつなぎ変える。(交差 : crossover)
  4. 時々プログラムに突然変異が起こり、1部分がランダムに書き換えられる。
  5. 再生、公差、突然変異を繰り返す

 

遺伝アルゴリズムは膨大な試行誤差をコンピューターで高速に行うことができ、創薬の開発に使われている他、航空機や建築物の設計にも使われています。
 

一方私たち生命は、実体として身体を持っています。私たちが対象を認識したり、意味を理解するためには、主体としての身体が欠かせません。
 

認識における身体の必要性

例えばグラスにワインが注がれている写真を見ても、コンピューターがそれを認識(理解)するのは困難です。グラスやワインは物体なのでその特性を定義すれば認識することはできるかもしれません。しかし注ぐというのは行為なので、行為する主体がなければ理解できません。
 
図8 グラスに注がれる赤ワイン

図8 グラスに注がれる赤ワイン
 

この認識するためには主体としての身体が必要なのは他の動物でも一緒です。

1963年ヘルドとハインは2匹の子猫を使ったゴンドラ猫の実験を行いました。生後歩けるようになったばかりの子猫を1日3時間、図15のような装置に入れました。違いは一方の猫は自分の脚で歩くことができますが、もう一方の猫は歩くことができません。2匹の見ている景色は全く同じです。
 
図9 ゴンドラ猫の実験

図9 ゴンドラ猫の実験

 
実験の結果、この装置から解放された直後、自分の脚で歩くことができた猫は視覚が正常に機能しました。しかし自分の脚で歩くことができなかった猫は空間認識能力に支障をきたし、ものにぶつかったり障害物を避けられなかったりしました。

つまり私たちが空間を正しく認識するためには視覚情報だけでなく、自分から運動する必要があるのです。
 

シンギュラリティはやってくる?

シンギュラリティとは

レイ・カーツワイル、ヴァーナーヴィンジなどは、今後もムーアの法則に従いコンピューターの能力が指数関数的に向上すれば、いずれ自らを進化させるプログラムを持つようになると考えます。それは人間の学習に比べて極めて高速に進行するため、この汎用AIはいずれ人間の知性を超える特異点を迎えると考えました。これがシンギュラリティです。レイ・カーツワイル氏は2045年、ヴァーナーヴィンジは21世紀半ばと予想しています。
 

36.8ペタフロップスという人間の脳の2倍のスピードで動作するコンピューター上で、AI「ビジーチャイルド」に自らを進化させるプログラムを入れます。このAIは自ら学習し、問題を解き、その結果を判定します。そして、より正しい問題を解けるように自らのプログラムを書き換え、デバッグもします。このAIがインターネットに接続し、何エクサバイトものデータを収集しつづければ、ついには人工超知能が誕生すると予言しました。
 

このシンギュラリティについてレイ・カーツワイルは、

特異点に到達すれば、我々の生物的な身体と脳の限界を超えることが可能になり、運命を超えた力を手にすることになる。死という宿命も思うままにでき、好きなだけ長く生きることができるだろう。(中略)特異点とは我々の生物としての思考と存在が、自らのつくりだしたテクノロジーと融合する臨界点であり、その世界は依然として人間的であっても生物としての基盤を超越している。特異点以降の世界では、人間と機械、物理的な現実とバーチャルリアリティとの間には区別が存在しない。

 

このシンギュラリティに対して、ビル・ゲイツ、イーロン・マスク、スティーブン・ホーキンスらは逆に人工知能の開発に強い懸念を示しています。

人間には、世界を内面化して、頭の中で「こうなったら、どうなるのだろう?」と考える能力がある。つまり、自然淘汰より何千倍も速く、たくさんの問題を解くことができる。シミュレーションをより高速に実行する手段を作り上げた人間は、人間と下等動物が全く違うのと同様に、我々の過去と根本的に異なる時代へと突入しつつある。人間の視点からすると、この変化は、ほとんど一瞬のうちにこれまでの法則をすべて破棄し、制御がほとんど不可能なくらいの指数関数的な暴走に向かっているに等しい
ヴァーナーヴィンジ 「テクノロジーの特異点」1993年

 

超インテリジェントマシンとは、どれほど賢い人間の知的活動をもすべて上回るほどの機械であるのだとしよう。機械の設計も、知的な活動の一つなので、超インテリジェントマシンなら、さらに高度な機械を発明することができるだろう。そうなると間違いなく、「知能の爆発」が起こり、人間の知能ははるか後方に取り残される。したがって、人間の超インテリジェントマシンの最初の1台だけ発明すれば、あとはもう何も作る必要はない
アーヴィングジョングッド 「超インテリジェントマシン1号機についての考察」1965年

 

現在は「シンギュラリティが来る」という考えと、「シンギュラリティは来ない」という考えがあります。
 

シンギュラリティ派の主張(汎用AIによる楽園)

コンピューターの進歩は指数関数的に進む。人間の論理、思考がコンピューターのプログラムに書き換えでき、今後はそれ以外の意識なども脳をリバースエンジニアリングすれば解明できる。そうすれば脳と同じ構成をコンピューターに実現し、脳をコンピューターにアップローディングすることで永遠に生き続けることができる。

さらにコンピューター(強いAI)に自らが進歩するプログラムを入れることで、人間を超越する知性をコンピューターが獲得し、人間はその体の一部をコンピューターと一体化して、超知能を獲得し争いのない平和な社会を実現する。
 

反シンギュラリティ派の主張(汎用AIが人類を滅ぼす)

そのような汎用人工知能を人間は制御することはできず、人類が滅亡する可能性もある。そのような開発は中断し、人工知能は、人類の知性を超えない人類と共存するものに限定すべきだ。
 

シンギュラリティは来ない派(弱いAI論者)

AIが実現できたのは、高速でのデータ処理演算と、画像認識に過ぎない。フレーム問題はいまだ解決されず画像を認識するためには膨大なデータを与えなければならない。翻訳や音声認識も統計的に正しい答えを見つけてきているだけで、意味を理解しているわけではない。

これは認識するための主体となる自己がないためである。今日は大量のデータ分析から人間に判断の元となる材料を提供してくれるが、考えたり判断したりする作業は今後も人間に求められる。
 

生命論的アプローチからのAI論者

人工生命の研究はこれからどんどん進み、記号論理学では解決できなかった問題も解決できるようになる。さらにAIに意識を持たせるためにロボットのような体を与えて、自らの行為とその反応から現実を認識し学習することで、意識を持ち人とコミュニケーションできるAIが誕生する。
 

あなたは未来をどう考えますか?
 

本コラムは2019年10月20日「未来戦略ワークショップ」のテキストから作成しました。
 

経営コラム ものづくりの未来と経営

人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中

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経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。

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「人工知能AIの発達で仕事はどう変わるのか」  ~その1 知能とは何か?AIの知能は人を超えるのか?~

今、再び人工知能が脚光を浴びています。

この人工知能について考える際、知能とは何かを明らかにする必要があります。
 

知能とは何でしょうか?

人の知能の源は心です。私たちは心により世界を認識します。
この「人は世界をどのように考えるか」は哲学の世界です。
 

プラトンの二元論

ギリシャの哲学者プラトンは、彼の打ち立てたイデア論において世界は二つ存在します。
 

ひとつは目に見える世界です。
もう一つは目に見えない理想的な形(イデア)の世界です。
 

プラトンによれば、このイデアではすべてが論理的に一貫した矛盾のない世界で、これはすべて数学によって表すことができます。この理想的な世界がまずあり、私たちが暮らす現実の世界はその投影にすぎません。
従って様々な概念、思想を数学によって論理的に一貫して説明できれば、それを投影したものが現実の世界にあるはずです。

図1 プラトンのイデア論

図1 プラトンのイデア論


 
この「すべてが論理的に矛盾のない首尾一貫した世界」という概念は、その後の西洋の哲学、思想、科学における基本的な概念として広く浸透しました。さらに今日の人工知能研究者に大きな影響を与えました。
 

一方、プラトンの弟子であるアリストテレスは「物事の本質は自然界の調査を通じて明らかになる」という経験主義を打ち立てました。このアリストテレスの経験主義は広く受け入れられ、多くの人が実験・実証を基に科学的な探求に取り組み、科学の大いなる発展をもたらしました。
 

つまりガリレオが地動説を確信したのは教会で瞑想したからではありません。「経験主義」に基づきひたすら望遠鏡をのぞき観察したからです。
 

科学から協会の足かせを外す

17世紀の哲学者デカルトは、それまでの「神と聖書」という絶対的な権威に変わり、個人にとって「何が確かなものか」を思索し続けました。そして

「我思う、ゆえに我あり」

という結論に達しました。
 

唯一確かなことは、今このことを思考している自分の心です。
こうしてデカルトは、肉体的存在(レス・エクステンティア)と精神的存在(レス・コギスタンス)を分離しました。
 

このデカルトの二元論によって科学は協会からの足かせを外され、科学者は
「世界は何からつくられているのか」
「どうしてすべてのものは今のような姿になったのか」
肉体的存在(レス・エクステンティア)を自由に探求できるようになりました。

図2 デカルトの二元論

図2 デカルトの二元論


 

その一方、精神的存在(レス・コギスタンス)はその後も教会の市墓にありました。心の問題は科学から置き去りにされてきました。こうして「どのようにして心が体に物理的な影響を及ぼすのか」という「心身問題」は20世紀に至るまで長い間の課題でした。
 

意識のハードプロブレム

私たちは赤いリンゴを見れば「赤い」と思います。
リンゴの形は網膜に投影され、視神経から脳に送られます。同様に色の情報も脳に送られます。
しかし、なぜその情報を私たちは赤いと思うのでしょうか。
 

デカルトの二元論に基づく人たちは、意識にクオリア(感覚質)というものが存在すると考えました。つまり心とは単なる脳細胞の神経伝達物質の移動という物理現象でなく、目に見えないクオリア(感覚質)によるものと考えています。

図3 クオリア

図3 クオリア


 

デビッド・チャーマーズはこのクオリアの解明を「意識のハードプロブレム」と呼びました。そして脳科学や生物学で研究されている課題「イージー・プロブレム」と比較し、クオリアの解明は解決困難な問題としています。
 

西洋の論理学

論理学とは、人間の推論についての形式や構造を研究する学問です。有名なのは演繹法や帰納法があります。論理学ではある事実を「命題」と呼びます。
アリストテレスは、複数の命題を組合せることで、正しい推論に達する方法を探求しました。
 
例えば三段論法は

「ソクラテスは人である。」

「人は死ぬ。」

よって「ソクラテスは死ぬ。」

という結果を得ます。
このような推論の方法には演繹法や帰納法があります。
 

演繹法
 真理をつないで推論を重ねる方法です。
 三段論法も演繹法の一つです。

帰納法
 個別の事実から一般的な法則を見出す方法です。
 演繹法では前提が真であれば結論も真ですが、
 帰納法では前提が真でも結論が真とは限りません。
 

論理を数式化! ブールの功績

この論理学を19世紀ジョージ・ブールは、言葉の代わりに数学の演算規則をあてはめ、代数式で記述する方法を考えました。(ブール代数)
 

ブール代数により頭の中で考えた論理的な思考を数式であらわすことができるようになりました。この数式は真と偽を1と0で表すため、コンピューターで処理ができ、後のコンピューターの演算の基礎となりました。
 
図4 ブール代数

図4 ブール代数
 

記号論理学の確立

さらにゴットロープ・フレーゲは、ブール代数で表現ができなかった多義的な表現を表す方法として、変数を含む述語論理という方法を発明しました。こうして論理表現の世界を大きく広げました。
 

フレーゲは述語論理に基づいて世界のありさまを分析的に記述することを目指しました。こうしてプラトンの考えたイデア(論理的に一貫した完全な世界)を実現する体系ができました。
 

この形式論理体系は

  • 体系内で他の真実と矛盾する真実があってはならず、首尾一貫していなければならない
  • 体系内では真の前提から偽の推論を導いてはならない
  • 体系内のある文が真なら、そのことを証明できなければならない「完全性」

となるはずです。
 

そこでドイツの数学者ダフィット・ヒルベルトは記号論理学を完成させるために世界中の数学者に

  • 「数学において真である命題は必ず証明できること」
  • 「公理から形式化された推論をどれだけ行っても、矛盾が示されることは絶対ないということ」

を証明してほしいと依頼しました。

このヒルベルトの「決定問題」によれば、以下のことが実現すると考えられました。
ある文を入力した時、その文が真かどうかを判定するアルゴリズムを示すことができれば、
それを実行する機械はあらゆる定理を証明する完全な論理的機械となる。
 

しかし1930年オーストリアのクルト・ゲーデルは
「『矛盾が起こるような命題が存在しない』とは、その理論によっては証明できない」
ことを彼の「不完全性定理」の中で証明しました。
 

これによりヒルベルトの「決定問題」は実現困難であることが証明されました。
 

図5 論理学体系

図5 論理学体系


 

このように「完全に首尾一貫した論理で表現した理想の世界」に対する西洋の哲学者、科学者の執念は、ブール代数や記号論理学の発展をもたらしました。そして論理学は今でも欧米の大学などでは重要な一般教養科目となっています。
 

それはまたあらゆる定理を証明する完全な論理的機械を求めることにもなりました。それを実現する機械は、別の要求から急速に発展しました。
 

17世紀から19世紀にかけて機械仕掛けの自動人形オートマタがヨーロッパで流行しました。音楽は生演奏しかなかった時代、機械仕掛けで音楽を演奏するオートマタは人々の楽しみでした。
 

計算機の誕生

1642年フランスのブレーズ・パスカルは歯車式計算機「パスカリーヌ」を考案しました。しかし加減算しかできなかったため売れませんでした。
 

ドイツの数学者ゴットフリート・ライプニッツは、独自の機構ライプニッツ・ホイールにより乗除算もできるようにパスカリーヌを改良しました。この改良した計算機は、その後60年間で1500台が販売されました。
 

またライプニッツは1698年に二進数の理論を確立しました。
 

図6 ライプニッツの計算機(Wikipediaより)

図6 ライプニッツの計算機(Wikipediaより)
 

幻のバベッジ機関

1822年イギリスのチャールズ・バベッジは計算機の乗除算(掛け算、割り算)が繰り返し計算であることに着目しました。そして階差方程式を使って繰り返し計算ができる階差機関の実験モデルをつくりました。
 

当時繊維機械は複雑なパターンの制御にパンチカードを使っていたことに着目しました。(現在でもパンチカード式のジャカード織機は使われています。)そこで計算プログラムをパンチカードに入れ、プログラムと機械を分離したバベッジ機関、つまり現在のコンピューターの基本となるものを考案しました。しかしバベッジは政府から多額の予算を受けながら開発はなかなか進まず、バベッジは完成する前に亡くなりました。
 

戦争が高めた計算機のニーズ

20世紀に入り第二次世界大戦が起きると高速計算のニーズが高まります。
 

ひとつは暗号解読です。暗号は複数の文字や数字の組み合わせから成り、その組み合わせを総当たりで調べるには、人よりはるかに高速で行う必要があります。この「総当たりで調べると時間がかかりすぎて解けない」という原理は現在のコンピューターの暗号技術も同じです。
 

もうひとつは大砲の弾道計算などで微分方程式を高速で解く必要がありました。
 

こうしてイギリスはドイツの暗号機「エニグマ」の暗号を解読するために、1943年1,500本の真空管を備えた世界最初のコンピューター「コロッサス マークⅠ」を開発しました。しかしイギリスは「コロッサス マークⅠ」の存在を最近まで秘匿していました。そのため世界最初のコンピューターとして広く知られているのは、アメリカの「ENIAC」です。
 

アメリカは1946年にコンピューター「ENIAC」を開発しました。これに関与していたのが天才的な頭脳を持つといわれたフォン・ノイマンでした。プログラムとデータをいったん記憶し逐次読みだして処理するコンピューターの原理は今も変わらず、この原理は「ノイマン型コンピューター」と呼ばれています。
 

孤高の天才チューリング

世界最初のコンピューター「コロッサス マークⅠ」の開発メンバーの一人が天才数学者アラン・チューリングでした。
チューリングはライプニッツの論理学に啓発され、「コロッサス マークⅠ」のはるか以前に、記号論理処理できる機械「チューリングマシン」を考案しました。
 

これはメモリ、演算機、記憶装置を備え、現在のコンピューターそのものでした。そして
「チューリングマシン」で処理できることはアルゴリズムで表すことができる
ことを数学的に証明しました。
 

さらに
「任意のアルゴリズムがいつ停止するのか」事前に決定するアルゴリズムはない
という「チューリング不完全」を証明しました。
 

これは論理推論を行って文の真偽を判定できる形式言語は存在しない
ことを示し、ヒルベルトの決定問題に対する決定的な反証となりました。
 

チューリングは、またコンピューターと知能について思索を深めていて
「機械は思考することができるか」を見分けるテスト
「チューリングテスト」を考案しました。
 

このテストは人間の審査員が1人の人間と1台のコンピューター(プログラム)に対して対話を行い、審査員が人間とコンピューターと区別がつかなかった場合、コンピューターは知能を持っていると判定する方法です。
 

このチューリングテストの効果について様々な意見がありますが、2014年にはロシアのチャットボット「ユージーン・グーツマン」がこのテストに合格しました。
 

図7 計算機の歴史

図7 計算機の歴史


 

コンピューターの発展と人工知能ブーム

1946年にENIACが開発され、それ以降コンピューターは急速に進歩、発展しました。
1950年代には、IBMなどがコンピューターを商品化し、各国の研究機関や大学に設置されるようになりました。
 

こうして暗号解読と弾道計算から始まったコンピューターは、科学の進歩とともに高速での計算を求める分野に盛んに利用されるようになりました。
こうしてコンピューターが広く利用されるようになると、記号論理学で考えられていた「あらゆる定理を証明する完全な論理的機械」の実現可能性が出てきました。
 

第一次人工知能ブーム

1956年ダートマス大学のジョン・マッカーシーは「人工知能(Artificial Intelligence)」に関する会議を主催し、マービン・ミンスキー、ネイサン・ロチェスター、クロード・シャノンらが参加しました。
 

この会議でアレン・ニューウェルとハーバード・サイモンは、初めての人工知能プログラム「ロジック・セオリスト」のデモを行い、有名な数学の本「数学原論」の定理をいろいろな公理をしらみつぶしに組み合わせて証明できることを示しました。こうして数値計算しかできなかったコンピューターが記号論理学を証明できることが分かりました。
 

プラトンに始まり、フレーゲ、ヒルベルトにつながる記号論理学では、複雑な論理問題を解決できることが知性と考えられていました。そしてデカルトの二元論以来、意識や心は科学の外に置かれていました。
当時、コンピューター学者、数学者などの科学者は「あらゆる定理を証明する完全な論理的機械」が実現できれば、それは人工知能と考えました。そして意識や感情は、重要ではない動物的な側面と考えました。
 

そしてコンピューターが複雑な論理問題を自ら解決できるようになり、今後コンピューターの性能が上がりより複雑な問題をより速く解決できれば、いずれ人間の知能を追い越すと当時のコンピューター学者は考えました。
当時は東西冷戦下の影響もあり、遅れを取るまいと人工知能の開発には多額の予算がつき第一次人工知能ブームが訪れました。
 

第一次人工知能ブームの挫折

しかしこの第一次人工知能ブームは2つの障害により挫折しました。ひとつは「指数爆発」もうひとつは「フレーム問題」です。
 

指数爆発

現代情報理論の基礎を構築したクロード・シャノンは、1949年に「チェスのためのコンピュータプログラミング」を発表しました。
シャノンのミニマックス法は、どの状態が自分にとって有利かを示す評価関数をつくり、自分と相手の交互の打ち手の組合せのすべての評価関数の結果から最適な打ち手を決定する方法です。
 

図8では白は今1, 2, 3の3つの選択肢があります。白が打った後、黒はそれぞれ1, 2の選択肢があります。その結果2手先には6つの結果があります。それぞれの評価関数の結果を青で示しました。その結果、白は1を選択すれば、次に黒が1でも7、2でも12となり、他の手よりも結果の平均は高くなります。(MAX) 一方白が1を選択すれば次の手の評価関数は7となり、白には最も高い評価ですが、黒にとっては最も低い評価です。(MIN) こうして最初の手は1が選択されます。
 

一方この方法は、はるか先までの打ち手を先読みしようとすると、組合せが指数関数で増加し、コンピューターの計算能力を超えてしまいます。
 

図8 ミニマックス法

図8 ミニマックス法


 

この探索空間の指数爆発は、コンピューターでは手に負えない問題です。

図9 組合せと計算回数

図9 組合せと計算回数


 

しかしカーナビは地図上で最短経路を示す必要があります。もしすべての組み合わせを計算すれば指数爆発を起こします。
1959年エドガー・ダイクストラは、スタート地点から一斉にスタートし、最も早くゴールに着いた経路が最短経路であるというアルゴリズム(ダイクストラ法)を考案しました。これは現在にカーナビに広く使われています。
 

一方よく似た問題で「巡回セールスマン問題」があります。
 
図10 巡回セールスマン問題
図10 巡回セールスマン問題
 

これは各都市とそれらをつなぐルートがわかっている時、これらの都市を全て通ってスタート地点に戻るルートのうち、最短のルートを求めるものです。
この問題は必ず指数爆発を起こすため、「NP困難な問題」と呼ばれています。
 

【実は計算できないゲーム理論】

「囚人のジレンマ」で知られるゲーム理論は、利己的なプレイヤーが自分の得になる事を優先して行動した場合、お互いの利害がどうなるかを示した理論です。
 

ここで相手がどのように戦略を変えても自分が得られるものが大きくなる条件が「ナッシュ均衡」です。これは経済学の教科書ではおなじみですが、実はナッシュ均衡の計算は指数爆発を起こします。そのためプレイヤーが多い場合のナッシュ均衡は理論上存在しても「計算できない」点です。
 

2009年にクリストス・パパディミトリウらがナッシュ均衡はNP困難な問題であることを証明し、現実的な時間内に答にたどり着くことは不可能であることを示しました。
 

適当に考えられない「フレーム問題」

1969年のジョン・マッカーシーが提言した問題で、コンピューターは問題を処理する際に全ての可能性を考えてしまうため、時間内に問題を処理できない問題です。
 

これに対して人間は結果に大きな影響を与えない事柄は取り除き、枠(フレーム)をつくって必要な事柄だけを枠の中に入れ、その中だけで思考します。
 

爆弾処理ロボットの悲劇

哲学者のデネットがこのフレーム問題を説明した例です。
 

【爆弾処理ロボット1号の悲劇】
人工知能搭載の爆弾処理ロボット1号は、人間の代わりに爆弾が仕掛けられている部屋から貴重な美術品を取り出す指令を受けました。爆弾処理ロボット1号は美術品が入った台車を押して部屋から出てきましたが、爆弾は台車に仕掛けられていたため、爆弾処理ロボット1号は爆発に巻き込まれました。
 

爆弾処理ロボット1号は美術品を取り出すために荷車を押せばよいことは分かったのですが,それによって,爆弾も一緒に取り出してしまうということは分からなかったためでした。
 
図11 爆弾処理ロボット1号

図11 爆弾処理ロボット1号
 

【爆弾処理ロボット2号の悲劇】
そこで改良した爆弾処理ロボット2号が製作され、再び美術品を取りに部屋に向かいました。爆弾処理ロボット2号は台車を動かしたときの影響を
 

もし台車を動かしても,天井は落ちてこない.

もし台車を動かしても,部屋の壁の色はかわらない.

もし台車を動かしても,部屋の電気は消えない.

もし台車を動かしても,壁に穴があいたりしない.

‥‥‥‥
 

と順番に考えている間に爆弾が爆発しました.
 

図12 爆弾処理ロボット2号
図12 爆弾処理ロボット2号
 

台車を動かしても天井は落ちてくることはないのですが、落ちてこないかどうかは爆弾処理ロボット2号は
「考えない」
とわかりません。
 

そして考えなければならないことは無数にあり、考えるのに時間がかります。その間に爆弾が爆発してしまいます。人間は影響のなさそうなことは考えずに排除しますが、コンピューターはどんな方法でも実際に考えなければ判断できません
 

チェスや将棋では予めチェスや将棋以外のことを考えないようにするためフレーム問題は生じませんが、いろいろな状況に対応する人工知能ではこの問題を無視できません。
こうして人工知能は当初の期待とは裏腹に現実の問題よりはるかに単純なパズル、迷路、チェスなどしか解けないことがわかりました。そして1970年代に入るとブームは急速に冷めていきました。
 

第二次人工知能ブーム

1980年代に入ると、ハードディスクなどコンピューターの外部記憶装置が進歩し、それまでよりはるかに大量のデータを扱えうことができるようになりました。そこで専門家(エキスパート)の知識をコンピューターに大量に入れたエキスパートシステムを使い、現実の複雑な問題をコンピューターで解くことが試みられました。
 

つまり第一次人工知能ブームの時のように論理学的アプローチで世界を完全に記述する汎用人工知能はとりあえずおいておいて、もっと限られた範囲で人間の知識をベースにコンピューターで問題を解決する取組でした。
 

医療現場での活用

スタンフォード大学では1970年代からエキスパートシステムに取り組み、エキスパートシステム「マイシン(Mycin)」は500ほどのルールでできた知識ベースを持ち、医師は質問に「はい/いいえ」で答えれば原因と思われる細菌のリストと推奨される抗生物質を示しました。
 

マイシンは正解率が65%で、細菌感染が専門でない医師よりはよい結果が出ました。しかし専門医の診断結果(80%)ほどではありませんでした。
 

現実世界の問題が解けるように見えたエキスパートシステムですが、そのためには専門家のあらゆる知識を教え込まなければならず、多数のルールを教えている間には互いに矛盾するルールも出てきました。
 

コンピューターは矛盾したルールにぶつかると止まってしまい、また教えていない事例に直面するとコンピューターは対処できませんでした。エキスパートシステムもルールが明確な簡単な事例にしか対処できず、複雑で例外も起こりうる現実世界には対処できませんでした。
 

こうして、今度こそはと思われた二回目のブームは深い失望とともに終結し、またしても人工知能は二回目の冬の時代に突入していきます。
 

世界トップを目指した日本の第五世代コンピューター

1980年代通産省は、産官学の最先端の研究者を集めて、欧米のコンピューターをしのぐ世界一斬新なコンピューターをつくるために、第五世代コンピューター開発プロジェクトを10年間500億円の予算で行いました。
これは「人間の言葉を理解し、人間とコミュニケートしながら問題解決するコンピューター」でつまり人工知能のことでした。
 

こうして出来上がった並列推論マシンは当時の技術では画期的なコンピューターでしたが「人間の言葉を理解し、人間とコミュニケートしながら問題解決」は実現できず、プロジェクトは失敗に終わりました。
 

強いAIと弱いAI

これは哲学者ジョン・サールが作った用語で、彼は強いAIは単なる道具ではなく、正しくプログラムされたコンピューターには精神が宿ると考えました。
 

【弱いAI】
人間の認知能力を必要としない問題解決や推論を行うコンピューターのことで、例としてディープ・ブルーのようなチェスプログラムがあります。弱いAIが意識を持ったり、人間並みの認知能力を示すことはないとされています。
 

【強いAI】
人間の知能に迫り人間の仕事をこなしたり、幅広い知識と何らかの意識を持つAIのことです。
 

【汎用人工知能(Artificial General Intelligence)】
汎用人工知能(AGI)は人間レベルの知能の実現を実現したAIのことです。
 

ここに至って、科学は人工知能を考えるうえで、今まで触れられなかった意識の問題を避けて通ることができなくなりました。
チューリングテストに合格すれば知能があると考えることに対して、哲学者のジョン・サールは以下の問いを投げかけました。
 

【中国語の部屋】

チューリングテストに合格したコンピューターは知能があるという考えに対して、哲学者ジョン・サールは1980年に発表した概念です。
 

英語しかわからない人が部屋にいて、その部屋には、中国語がわからなくても、中国語で書かれた問いかけに完全な回答ができる説明書がありました。すると部屋の人は英語しか分からなくても、中国語で書かれた質問の紙を見て、質問に適した中国語の回答を、説明書を見て中国語で書いて答えることができます。この場合、中国語で受け答えができるからといって中国語が分かるとは限りません。
 

同様に、チューリングテストに合格して知能があるような受け答えができたからといって、本当に知能があるかどうかは分からないという反論です。
 

こうして第二次人工知能ブームが終焉を迎えた後、2010年代に再び第三次人工知能ブームが訪れました。
 

では現在、知能とは何か?意識とは何か?

といった問題は解決したのでしょうか?

今使われている人工知能はどのような技術をもとにしているのでしょうか?
 

これについては、「人工知能AIの発達で仕事はどう変わるのか」  ~その2 第三次人口知能ブームの技術とシンギュラリティ~でお伝えします。
 

本コラムは2019年9月15日「未来戦略ワークショップ」のテキストから作成しました。
 

経営コラム ものづくりの未来と経営

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