これからの企業はどんな組織、どんな人材が必要だろうか?~グーグル、アマゾンと日本企業の比較~

多くの日本企業が世界のトップシェアを占有した1980年代、終身雇用と年功序列賃金は日本企業の強さとして世界から注目されました。

終身雇用と年功序列賃金は企業が拡大成長している時は安定したシステムでした。しかしバブル崩壊後、企業がそれまでの成長が維持できなくなると、ポストの不足、人件費の上昇などの問題が生じました。

そこで一部の企業は成果主義を導入しましたが、この成果主義も多くの問題がありました。

日本企業と大きく異なるグーグル、アマゾンの人材の考え方

一方、2000年以降、グーグルやアマゾンなど情報技術(IT)をベースに新たな製品やサービスをグローバルで提供し急拡大する企業が出てきました。(ここでは、これらの企業をテクノロジー企業と呼ぶことにします。) テクノロジー企業は、従来の企業とは人材に対する考え方が異なり、組織、賃金、評価の仕組みも異なっています。

日本企業を取り巻く事業環境の変化

今日では多くの事業分野においてIT技術の進歩により事業環境が大きく変わってきています。インターネットが新聞、雑誌にとってかわり、音楽はCDからダウンロード販売に変わりました。新たな企業が今までにない製品やサービスを提供し、既存の企業に取って代わりました。このような事業環境の中で生き残るには、企業は環境の変化をいち早くとらえて自ら変化しなければなりません。

従来の方法では育成が困難に

また人も変わってきています。若者たちは、今までとは異なる価値観、考え方を持っていて、従来の方法では育成がうまくいかなくなっています。さらに少子高齢化のため外国人を技術職や管理職に登用している中小企業もあります。

彼らが十分に力を発揮し、変化に迅速に対応する会社にするにはどのようにすればよいでしょうか?

海外のテクノロジー企業の取り組みと、これまでの日本企業を比較して考えます。
 

テクノロジー企業と日本企業はどんな点が違うのだろうか?

テクノロジー企業はどんなビジネスなのだろうか?

利益より規模(スケール)

グーグル、アマゾンなどのテクノロジー企業は、高度なIT技術をベースに革新的な製品やサービスを開発し、それを圧倒的な低価格や無料で提供し市場を席巻しています。グーグルの検索エンジン、アマゾンの通販システムは、検索や通販の入り口として多くの人が利用するプラットフォームの役割を果たすため、プラットフォームビジネスと呼ばれています。

その特徴は、利益よりも規模(スケール)を重視することです。最初は利益が出なくても誰もが使うプラットフォームを構築できれば、それを使って後から広告などで収益を生むことができます。
 

失敗を恐れず新製品をリリースし、ダメなら即撤退

一方技術の進歩は非常に早く、製品が他社に劣っていたり開発スピードが遅ければ、グーグルやアマゾンでも他社に市場を奪われてしまいます。

グーグルのSNSグーグル+(プラス)は、フェイスブックなどのライバルのSNSに勝てず2019年に撤退しました。グーグルのマイクロブログサービスGoogle Jaikuはツイッターに敗れて2012年に撤退しました。

アマゾンも2014年に携帯電話「ファイアフォン」、2019年にAmazon Dashボタンから撤退しました。他にもアマゾン・オークションズなどのすでに終了したサービスや撤退した事業は多くあります。
 

図1 アマゾン ファイアフォン(Wikipediaより)

図1 アマゾン ファイアフォン(Wikipediaより)

図2  Amazon Dashボタン(Wikipediaより)

図2 Amazon Dashボタン(Wikipediaより)

このように彼らは失敗を恐れず、次々と新しい製品やサービスをリリースします。そしてうまくいかないと分かれば直ちに撤退します。こうして常に新たなビジネスチャンスを常に探しています。
 

正しい決定よりも、スピードを重視

このアマゾンの企業文化は、創業者のジェフ・ペゾスの

「Every Day is still Day One (毎日が常に1日目)」

というメッセージに表されています。このDay Oneは創業した日のことです。社員には創業した日のつもりで行動することを求めています。

このDay One に対してDay 2は停滞です。

Day 2の状態にあればアマゾンはゆっくりと衰退しいずれ死に至るとペゾスは諫めています。

市場調査を信用しない

またペゾスは

「顧客は欲しいものをわかっていないから、顧客が満足したからといって納得してはいけいない」

「市場調査や顧客満足度調査をうのみにしてはいけない」

と語っています。なぜなら

「素晴らしい顧客体験は市場調査には表れない」

からです。

そのためには決断が遅くなっていないか常に目を光らせます。もし必要な情報が集まるまで決断を待っているようであれば、それはDay 2の始まりと言っています。
 

軍艦の従来企業と航空機のテクノロジー企業

このスピード感は既存の企業とは異質のものです。

従来の事業、例えば製造業の製品開発は設計から試作、評価など発売までに何年もかかります。さらに量産に専用設備が必要になれば設備投資も必要です。もし発売しても売れなければ大きな損失が発生します。そのため新たな製品や事業に取り組む際はとても慎重です。

これは従来の企業は海図を元に市場をゆっくりと攻略する軍艦です。重厚な装備(多くの部門や人材)を持ち簡単には沈みません。しかし動きはゆっくりで向きを変えるには時間がかかります。そこで海図や羅針盤で慎重に行き先を決めて進みます。

対するテクノロジー企業は飛行機です。高速で瞬時に目的地を変更し、機動的に行動します。スピードが落ちれば墜落するため、高出力のエンジン(卓越した人材)を積み、余分な装備(人材)は積まず軽量化に徹しています。

従来の企業とテクノロジー企業とでは、組織や文化、人材に求める能力などが大きく違います。
 

日本企業との比較

かつてはアメリカも定年まで同じ会社に勤める人は多かった

日本企業は定年までひとつの会社に勤める終身雇用制が一般的ですが、これは日本固有のものではありません。アメリカでも大企業に勤める社員の多くは、かつては定年まで同じ会社に勤めました。これをThe Organization Man(組織人)と呼び、デュポン、IBMなどの大企業は社員の多くは自分の会社に誇りと愛着を持っていました。
 

自己が組織と同一化

終身雇用では社員は成人してからの時間の大半を会社で過ごします。その結果、社員は会社という共同体の一員として同じ価値観や考え方を持つようになります。そして自己が組織と同一化します。○○マンや○○人(○○に社名が入る)という言い方がありますが、これは自己と組織の同一化を示しています。

終身雇用制のため、かつての日本は転職市場が小さく、転職は容易でありませんでした。(今でも中高年の転職は厳しいものがありますが) 何らかの事情で会社を辞めた場合は、賃金や生活環境の面で非常に不利になります。加えて共同体の一員というアイデンティティを失います。
 

転職の機会を奪う年功序列賃金

年功序列賃金は、社員が若い時は賃金を低く抑え、中高年になって家族が増え多くの収入が必要になると賃金を手厚くする仕組みです。賃金は「仕事の成果に対して支払われる」のではなく、「共同体の一員として生活を保証するため」に支払われています。

家族が増え支出が増える中高年の収入を手厚くすることで、社員は住宅や自動車などの高額商品を購入でき、住宅や自動車市場は活性化しました。
 

賃金が高く「使えない」人材

しかしバブル崩壊とその後の景気低迷により、企業は新卒の採用を控えました。そして過剰な中高年と少ない若年者といういびつな年齢構成になり、企業の人件費は上昇しました。

IT技術の進歩とともに仕事の内容が大きく変化しました。例えば工作機械はNC工作機械に、設計は手書きからCADに変わりました。新しい仕事に適応するには新たなスキルが必要です。しかし中高年は定年までの年数が長くなく、企業も本人も新しいスキルの習得には消極的でした。

こうして賃金が高く「使えない」人材が企業に増えました。会社の業績が悪化すると真っ先に彼らが人件費削減の対象となりました。しかし解雇の制約が厳しい日本では解雇でなく「リストラ」 (解雇せず、自己都合による退職の強要) が行われました。

注) 「リストラ」は、本来は事業再構築(restruturing リストラクチャリング)の略称で、事業全体を見直し、不採算事業を整理し、採算性の高い事業を伸ばす経営改善の手法です。しかし日本では「事業再構築=人員整理」の場合が多く、「リストラ=人員整理」となってしまいました。
 

企業は人材にどんな能力を求めるのだろうか?

 

グーグル、アマゾンなどのテクノロジー企業は人材に非常に高い能力を求め、採用も非常に厳しいことで有名です。アマゾンジャパンは10年間に1,000人を超える面接を行い、採用したのは50人でした。

グーグルは数千人の応募者から絞り込んだ10人あまりにさらに面接を繰り返し、時には30回以上面接した後、採用を断念することもあります。

なぜテクノロジー企業はそこまで社員の能力にこだわるのでしょうか。
 

テクノロジー企業が求める傑出した人材とは?

その理由は彼らが優秀な人材でなく、「傑出した人材」を求めているからです。

DVDレンタルのネットフリックスは、ドットコムバブルがはじけた2001年、業況が悪化し倒産の危機に見舞われました。そのため社員の1/3を解雇せざるを得ませんでした。ところが社員を解雇した直後、DVDプレーヤーの価格が下がりDVDレンタルの市場が急拡大しました。仕事は2倍に増えましたが、2/3の残った優秀な社員は2倍の業務をこなし、以前よりも効率は大幅に向上しました。この体験からネットフリックスは優れた能力を持った人材(ハイパフォーマー)を採用に力を入れるようになりました。
 

スマートクリエイティブとは今までにない製品・サービスを生み出せる人

テクノロジー企業が求める人材は、一般的に言われる「優秀な人材」ではなく「傑出した人材」、つまりとびきり優秀な人材です。グーグルではこれを

「スマートクリエイティブ」

と呼んでいます。グーグルは技術をベースに製品を開発しているため、優れた製品を生み出すには優れた技術が不可欠です。そのためには高い技術力を持った人材が必要です。そして世界のトップシェアを維持するには、世界トップレベルの技術力を持った人材が必要です。

高い創造性が求められる

また優れた製品を生み出すためには、技術力だけでなく新しいものを創造する力も必要です。

テクノロジー企業同士の競争は激しく、他社にない優れた製品を創造できればば高い価値を生みますが、他社にもあるような凡庸な製品では生き残ることもできません。これには製品やサービスをリリースするタイミングも重要です。いくら優れた製品でもリリースまでに何年もかかっていては、ライバルに先を越されてしまいます。

「高い技術力を持ち、今までにない製品やサービスを考え出し、それを短期間で実現しライバルに先んじて市場に投入することができる人材」

が彼らの求める傑出した人材です。
 

傑出した人材が会社にもたらす利益は12倍

傑出した人材を求め続けるグーグルは、社員がもたらす成果はべき乗則に従うと考えています。本来、人の思考力、読解力、発想力などの分布は、対象とする母集団の数が非常に多ければ正規分布になります。しかしグーグルが社員の成果を分析した結果、ごく一部の社員が非常に大きな利益を生み出していることがわかりました。

なぜそうなるのでしょうか?

ひとつのサービス・製品が非常に高いインパクトがある

テクノロジー企業の製品やサービスは世界中に広く提供され非常に大きな影響力を持ちます。その結果、たったひとつの優れた機能でも非常に大きな収益を会社にもたらします。

例えばフェイスブックのユーザー数は約24億人(2019年時点)、フェイスブックが開発した新たなサービスをユーザーの半分が利用すれば、その利用者は12億人です。このサービスに広告を表示し、その結果一人当たり100円/月の収益を生み出せば、1か月に1200億円の収益をもたらします。こういったサービスは傑出した社員がいれば数名のチームで開発できます。その費用はわずかな金額で費用対効果が非常に高く、経済学でいうところのレバレッジ (てこの作用) が非常に大きいのです。

h6>傑出した社員のレバレッジは極めて大きい

例えば、優秀な社員と、傑出した社員の開発した製品の出来栄えに3倍の差がありました。そして製品の性能が2倍になると獲得する市場が8倍になるとします。その結果

  • 優秀な社員が開発した製品 : 性能は1、獲得する市場は 1
  • 傑出した社員が開発した製品 : 性能は3、獲得する市場は 12

 

つまり会社にもたらす収益は12倍になります。このようにレバレッジが極めて大きいため傑出した人材がもたらす価値は非常に大きくなります。
 

図3 人材の能力と成果

図3 人材の能力と成果

才能はべき乗則に従う

ミュージシャンなどアーティストもべき乗則に従う世界です。一握りの優れたミュージシャンが市場を広く占有し、他の多くのミュージシャンはその他の市場を分け合っています。米津玄師のようにボカロから出発して、幅広く曲が売れるミュージシャンがいる一方で、CDを発売してもほとんど売れずダウンロード販売も少ないプロのミュージシャンもいます。

ミュージシャンの場合はある一時期に優れた創作を行い、それ以降は輝きを失ってしまうこともあります。(一発屋ともいわれます) ITでもゲームソフトはこれが当てはまります。

何が成功するかわからないから、数を打つ

テクノロジー企業もグーグルやアマゾンのようにリリースした製品が短期間で撤退することは珍しくありません。成功する可能性のある事業に次々に取り組み、ダメと分かれば直ちに撤退します。

製造業は試作するにも多額の費用と多くのメンバーが必要ですが、テクノロジー企業はプロトタイプの開発に費用は多くかからず開発は容易です。この製品が成功するかどうかは、製品の出来栄えに大きく依存し、それは開発を担当する社員の能力によります。
 

個の力の影響力が大きいテクノロジー企業

なぜならテクノロジー企業の製品は、一人一人の役割が大きく特定の個人の力が関与する部分が大きいからです。自動車のような複雑な製品は、一人の技術者が傑出した力を持っていてもチーム全体の力が弱ければ優れた成果を上げることはできません。しかしテクノロジー企業では一人の技術者でカバーできる範囲が広く、アルゴリズムは創造的な要素が高いため人材の能力が大きく影響します。

従来の工業製品の開発が8人乗りの競技ボートとすれば、テクノロジー企業の開発はカヌースラロームです。8人乗りのボートは8人が同じタイミングでオールを入れて漕がなければなりません。一人だけ速いピッチで漕いでもスピードは上がりません。一方スラロームは、一人乗りで急流やポールなどの障害を避けて、瞬間的に素早く判断していかなければならず、個人の力が問われます。
 

図4 ボート競技 (エイト)(Wikipediaより)

図4 ボート競技 (エイト)(Wikipediaより)


図5 カヌースラローム(Wikipediaより)

図5 カヌースラローム(Wikipediaより)

システム的な思考能力と創造力が求められる

このように考えると従来の企業の考える技術とテクノロジー企業の考える技術は大きな違いがあります。テクノロジー企業の技術は問題を解決する「システムを考える技術」であり、そのシステムを実現し問題を解決する「アルゴリズムの構築」です。

この点は自動車や半導体など物理的な製品の開発と異なります。物理的な製品の開発は、基礎となる幅広い知識と様々な試験や実験の経験から、具体的な解決方法を考えます。それを実験で検証します。ひとつひとつの実験の結果が出るまでに時間がかかり、実験もチームで行います。

問題解決に必要な創造力

対してテクノロジー企業では、コンピューター工学や情報処理の知識は必要ですが、それだけでなく問題を解決する創造力が強く求められます。

例えば、正しい検索結果という目的を達成するには、現在の検索エンジンの問題と目指すべき検索エンジンの姿を明らかにしなければなりません。その上でWEBから収集できるデータから、どういう考え方で分析すれば、目的にあった検索結果が出せるのか、考えます。これは問題解決です。考え方が分かれば、それを実現するアルゴリズムを創造します。この問題解決の積み重ねが優れた検索エンジンにつながります。そして問題解決の様々な手法(テクニック)が技術に相当します。
 

社内政治に長けた「悪党」は排除される

このような傑出した人材(スマートクリエイティブ)が集まり、世界トップレベルの仕事を行う組織は、彼らがその能力を十分に発揮できる組織が必要です。それにマイナスなのが

「事実を偽り自分に都合の良い情報を周りに流す」社内政治に長けた人間です。

グーグルは彼らのことを「悪党」と呼んでいます。こういった気質の人間は入社後に改めることはできません。大切なのはこのような人間は組織に入れないことです。もし悪党を入れてしまい、組織の中で悪党が一定の割合に達すると

「悪党のように行動しなければこの会社では成功できない」

という気風ができてしまいます。
 

多くの人とアイデアを交換し合うコミュニケーション能力も必要

たとえ傑出した人材でも一人だけでは素晴らしい仕事をできません。創造的な仕事はいろいろな人間とアイデアを公開し刺激し合うことが必要だからです。そのためには他人と気軽に意見交換できるコミュニケーション能力が必要です。
 

とてつもなく大きな目標を立てろ!

革新的な製品を生み出すには、大きな目標が必要です。大きな目標は例え到達できなくても大きな成果を生み出します。対して小さな目標からは小さな成果しか生まれません。そして大きな目標を掲げるには、目標を掲げる本人に前向きな考え方がなければなりません。消極的、ネガティブな考え方から大きな目標は生まれません。例えば、グーグルの開発している新しいネットワークプロトコルは25年後に必要になる「惑星間のインターネット!」のためのものです。
 

求めるのはグローバルクラスの傑出した人材

このような傑出した人材は、難易度の高い大学の卒業生やMBAなどの資格では測ることができません。またそれまでの実績や経歴もあてになりません。そこでグーグルは、多くの面接や難解な試験を行って、グローバルクラスの傑出した人材を選別しているのです。

グローバルクラスの人材とはどのような人なのでしょうか?

例えば台湾のIT担当大臣 唐鳳(オードリー・タン)氏はグローバルクラスの人材の代表かもしれません。

唐鳳氏は8歳からプログラミングを始めましたが、学校にはなじめずに14歳で中学を中退しました。15歳で起業し、ソフトウェアFusionSearchを約800万個販売しました。16歳で台湾の液晶ディスプレイメーカーBenQの顧問になり、またプログラミング言語Perl 6の開発や様々なオープンソースコミュニティに貢献しました。35歳で台湾最年少のIT大臣に抜てきされ、今回のコロナ危機ではボランティアを動員して数日間で「マスクの在庫マップ」を完成させるなど、そのアイデアと実行力は際立っています。2019年には『フォーリン・ポリシー』誌のグローバル思想家100人に選出されるなど世界から注目されています。
 

図6 唐鳳(オードリー・タン)氏

図6 唐鳳(オードリー・タン)氏

和を重視する日本企業

こうしたテクノロジー企業に対し、終身雇用の日本企業では、社員にとっての「会社」は自分自身が所属する共同体の中で最も重要なものです。会社という共同体は人の入れ替わりも少なく、共同体における社員自身の立場(ポジション)は非常に重要です。共同体での自分のポジションを維持するには、他のメンバーとの関係性が重要ですが、この関係性は職制や社内での経歴、個人的な交友関係が合わさった複雑なパワーバランスから成り立っています。

この安定した関係性を維持するために重視されるのが相互の「和」です。この和には組織の安定も含まれます。時には、法規やコンプライアンスよりも組織の安定、組織の和が重視されます。そして和を乱すものは非難・排斥されます。
 

強い横並び意識

年功序列賃金制度は、これまで社員の能力や成果に差があっても賃金に大きな差をつけませんでした。みかけは平等な処遇に見えるため、社員に強い横並び意識が生まれます。同期に入社した誰もが昇進の夢を持って働きます。実際は、企業によっては早い段階から幹部候補の選別を行っているのですが。

足の引っ張り合いで「傑出した人材」が居ずらい組織

この「和を重視する文化」と「強い横並び意識」の組織では、傑出した人材は横並び意識を破壊し和を乱します。そのため共同体から浮いてしまいます。出る杭は打たれることになります。
 

「傑出した人材」よりも強いチームワークが必要な製造業

製品開発はチームで行い、お互いに協力して結果を出します。例え一人の設計者が素晴らしい製品を設計しても、それを製品化するには製造や調達、試験評価など関係する様々な人たちが、協力してアイデアを出さなければ実現できません。一人のスーパースターだけでは成り立たないのです。
 

専門スキルも社内で育成し、外部で学んだスキルは低くみられる

年功序列賃金、職能制度の日本企業は、仕事のスキル、職務能力は企業での職務経験によって高められます。他の企業で様々なスキルを習得していた人が入社しても、そのスキルは低く評価され、社内での経験が一定以上なければ重要な仕事を任されません。

スキルに普遍性がない

なぜなら業務に必要なスキルが企業ごと大きくに異なり普遍性がないからです。特に職制が上がると管理業務の比率が高くなります。他部門との折衝など社内での調整業務が増えます。

こういった社内の調整業務は、その共同体の文化、メンバーの考え方の理解や円滑な人間関係が不可欠です。例え高い能力を持った管理者が転職してきても、他部門の人はおいそれと動いてくれません。特に中高年になると大半の社員が実務より管理・間接業務になるため、その傾向が強くなります。

そして共同体において、この調整能力が自分のために使われると、それは自分のための「社内政治」になり、

グーグルの忌み嫌う「悪党」に変わります。
 

優秀な人ほど現場を離れる

また優れた能力があっても職位が上がると管理業務の比率が増えて現場から離れていきます。しかし実務で優れた能力の人材が管理能力が高いとは限らりません。管理職に登用された後、管理者としての能力が不十分であれば、評価が下がり活躍の機会を失います。

そして技術、開発、研究の現場では、経験豊富なスペシャリストは順次管理職となって現場を離れていきます。現場から経験豊富なスペシャリストが減っていき、過去の経験や知識が継承されなくなります。
 

創造性を高めるにはどんな組織が良いのだろうか?

これから日本企業も創造性の高い仕事が必要になった時、どのような人材、組織にすればよいのでしょうか。

参考にテクノロジ―企業の取組を述べます。

独創性を生み出すにはカオスが必要

今までにないものを生み出すには一人の優れた人間の発想だけではできません。様々な見方や考え方、バックグラウンドを持つ人材が自分たちの意見を積極的にぶつけて新しい発想を生み出す必要があります。こうして生まれた数々のアイデアのプロトタイプを作って評価し優れたアイデアが生き残ります。それも市場の洗礼を受けて消えてしまうかもしれません。

テクノロジー企業はこうしたアイデアが無数に生み出せるように会社の中にあえてカオスな部分を作っています。

例えばアメリカ企業の一般的なオフィスは個室や壁で仕切られたキュービクルですが、グーグルのオフィスは仕切りのないぎゅうぎゅう詰めのレイアウトです。チームごとに人と人とを狭い空間に押し込めてエネルギーと交流を最大化するようにしています。
 

図7 生産性は高いが対話がない

図7 生産性は高いが対話がない


図8 対話は多いが気が散る

図8 対話は多いが気が散る

組織のはざまの社員から独創的なアイディアが生まれる

独創的なアイデアをもたらす社員は、開発や販売の中心にいる人物でなく、それらの組織と組織をつなぐ立場の社員ということもあります。こういった組織と組織のすきまの立場にいる人は、様々な部署から異なる情報が入ってくるため、今までにない見方や考えが生まれやすくなっています。
 

図9 構造の隙間がアイデアを生む

図9 構造の隙間がアイデアを生む

会話がなければアイデアは生まれない!

イノベーションは会議室の企画会議からではなく、社員同士の何気ない会話から起きています。グーグルアドセンスは異なるプロジェクトメンバーの社員同士がビリヤードをしている中から生まれました。こうした

「社員同士の対話が自然に起きる」

ようにグーグルでは仕事中に無料のスナックやドリンクを提供しています。

アップルのスティーブジョブズがピクサー社を買収した際、本社の中央にアトリウムを設け、そこに会議室、メールボックス、カフェテリア、トイレをまとめて設置しました。当初、トイレもそこ1個所だけにするとジョブズは言いましたが、それは社員の反対に遭い止めました。ジョブズは

「毎日社員がそこに行き、会話を交わさずにはいられない環境」

を作ろうとしたのでした。
 

学ぶこと・努力することに貪欲(アニマル)であれ!

ありきたりな目標に満足せず飛び切り高い目標を設定し、その実現に向かって自ら努力する人材を「ラーニングアニマル」と呼びます。

技術進歩の早いテクノロジー企業では、自分が持っている知識や技術は直に古くなってしまいます。常に最先端でいるためには絶え間ない努力が不可欠です。ではスマートクリエイティブはどうやってそのような能力を獲得するでしょうか?彼らは新しい技術を学ぶために会社が研修の機会を与えてくれるのをじっと待っていません。自ら新しい技術を調べて独学で習得していきます。それは卓越した能力を持つハッカーと同じです。

ラーニングアニマルは自ら知識と能力を求めて努力し続ける人です。そして最先端の知識と技術を身につければ、必ず「それを革新的な製品やサービスに試したい」と彼らは思うようになります。そういった場が与えられなければ、彼らはそういったチャンスのある企業へ移ってしまいます。傑出した人材、ラーニングアニマルを採用した後は、彼らが

「存分に力を発揮できるような機会を与える」必要があります。
 

テクノロジー企業はどうやって傑出した人材を採用しているのか?

 

テクノロジー企業は前述したように採用を最も重視しています。それは誤検出、つまり

「採用すべきでない人材を採用してしまう間違い」を防ぐためです。
 

採用の失敗は教育でカバーできない

当初はテクノロジー企業でも採用した後教育をすれば社員のパフォーマンスは上がると考えていました。しかし教育の効果を測定すると、期待したほどパフォーマンスは向上していませんでした。テクノロジー企業の求める創造性、技術の傑出した能力は教育では十分に得られなかったのです。

そこで採用後に教育するよりも、高いパフォーマンスを持った傑出した人材を採用することに力を入れることにしました。そして例え人材が不足しポストが空いても、能力を妥協して採用することはありません。逆にポストがなくても、傑出した能力の人材がいれば採用します。
 

グーグルはこの採用のモデルを学術界に求めています。大学の教授は解雇できないのでその採用は専門委員会で多大な時間をかけて慎重に検討します。グーグルも採用には時間を厭わず慎重に行います。そのための採用のルールを決め、縁故や情実で採用することはありません。
 

「知識」より「知力」だ!

テクノロジー企業が求める傑出した人材を採用するのに、大学のランクやMBAなどの資格はあてになりません。彼らが求めている傑出した能力は

「知識よりも知力」だからです。

ランクの高い大学の卒業生が傑出した知力を持っているとは限りません。この高い知力を求めるのは、今日では技術の進歩が指数関数だからです。このような技術の進歩に追従して新たな製品やサービスを生み出すには、社員にも指数関数的な発想力が必要です。しかし本来人間は一次関数的でしか物事を見ることができません。指数関数的な発想力には高い知力が必要です。

決して安定を求めず、変化に富んだ不安定な状況を理解し、スピーディに決断し行動できる人材です。
 

経験の時にはマイナス

このような知力を発揮する際に、時には経験はマイナスに作用します。強い成功体験があると人は次も同じ手法で解決しようとするからです。しかし変化の激しい今日では、同じ手法で次回も成功すると限りません。そのためグーグルでは過去に大きな実績を上げたかどうかは重視せず、

「経験がなくても能力だけで採用する」こともあります。
 

採用のシステム化するテクノロジー企業

グーグルでは、採用についての一連の評価をシステム化し、誰でも同じ評価で判定されるようにしています。その中には、技術力、知力、誠実さに加えて、「おもしろい人物かどうか」「ずっと一緒にいたいと思うかどうか」も採用の判断基準にしています。LAXテストとは、ロスアンゼルス国際空港(LAX)で6時間足止めを食らったときに楽しく過ごせるかどうかを評価するテストです。

別の会社では誠実さを評価するために面接者の印象を社内のアシスタント(受付)に聞いています。ある面接者は面接官には知的で申し分のない受け答えでしたが、アシスタントに横柄な態度をとったために不採用になりました。

社員の多様性も重視

高い知力と技術力を持ち、知的好奇心を刺激する会話でLAXテストに合格しました。人柄も誠実で問題ありませんでした。しかし面接官がその応募者を好きかどうかは別です。好みや感性が違うかもしれないし、政治や宗教についての考え方が違うかもしれません。しかしグーグルでは、こういった違いは組織に多様性をもたらし創造性を高めるとして歓迎します。

「お気に入りだけで固めた同質化した組織」にならないようにしています。

グーグルの採用システムでは、こうしたチェック項目と評価結果をデータにして、面接官の判断でなく客観的なデータに基づいて採用の可否が決定されます。この基準は最高の人材を採用するために非常に高く設定されています。そして重要なことは

「自分より優れた人材であること」

です。多くの企業では、上司が部下となる人材を採用する際、自分より優れた人材は将来の自分の地位を脅かすために採用されません。それでは最高の人材を採用することができません。そのために誰もが納得できる客観的なデータを用いて判定します。また面接には上司だけでなく、部下や同僚となる社員も参加させ、上司からの判断が偏るのを防止します。
 

以下にグーグルの「採用のおきて」を引用します。

・ 自分より優秀な人物を採用せよ。学ぶもののない、あるいは手ごわいと感じない人物は採用してはならない。
・ プロダクトと企業文化に付加価値をもたらしそうな人物を採用せよ。両方に貢献が見込めない人物を採用してはならない。
・ 仕事を成し遂げる人物を採用せよ。問題について考えるだけの人物を採用してはならない。
・ 熱意があり、自発的で、情熱的な人物を採用せよ。仕事が欲しいだけの人物を採用してはならない。
・ 周囲に刺激を与え、協力できる人物を採用せよ。一人で仕事をしたがる人物を採用してはならない。
・ チームや会社とともに成長しそうな人物を採用せよ。スキルセットや興味の幅が狭い人物は採用してはならない。
・ 多彩で。ユニークな才能を持っている人物を採用せよ。仕事しか能がない人物を採用してはならない。
・ 倫理観があり、率直に意思を伝える人物を採用せよ。駆け引きをしたり、他人を操ろうとする人物を採用してはならない。
・ 最高の候補者を見つけた場合のみ採用せよ。一切に妥協は許されない。

 

数千人を数十人に絞り込む

それでもグーグルでは毎年数千人もの応募者があります。そこから書類審査で面接する候補者を数十名に絞り込みます。どのように絞り込むかは不明ですが、これまで述べたように大学のランクではあてにならないので、それまでの活動、実績などから絞り込むものと推測します。

もうひとつの方法は傑出した人材に探してもらうことです。傑出した人材は傑出した人材を何人かは知っているものです。あるいはソフトウェアエンジニアの場合、彼らのコミュニティにそうした人材に関する情報があることもあります。テクノロジー企業では、管理職などはこうしてほかの企業から人材を引き抜くこともあります。
 

報酬でなく仕事の内容で引き付ける

グーグルは、傑出した人材を採用するために最初から多額の報酬は提示しません。報酬でなく仕事の内容に関心を持ち、グーグルで働きたいという候補者を採用したいと考えています。ただし入社後の成績が素晴らしければ、それに対しては十分な報酬を支払います。
 

ゼロから育成する日本企業

これに対してこれまでの日本企業は、新卒を一括採用し大学に専門的な知識や能力の獲得を求めていません。入社試験を行っても基礎的な学力の試験で、地頭が良いかどうかを調べる程度です。むしろ自社の企業文化に合うかどうかを評価します。

入社後は最初は現場に配属し基本的な作業や業務を経験させ、そののち様々な部門を経験させて総合的な能力を身に着けさせます。その過程で共同体の一員として企業文化を身に着け、自社固有の考え方、判断力、調整力を身に着けます。

大企業も新人の育成が不十分になってきた

今日では、現場にホワイトカラーの新人を預かる余力がなく、配属先も新人をゆっくりと勉強させる余裕がなくなってきました。新人でも配属後すぐに戦力となることが求められます。その結果、かつて先輩たちが現場で実践する中で手にしたスキルを持たずに仕事に取り組んでいます。しかも新人ができる仕事は限られるため、与えられる仕事の幅も広くありません。

製品の製造方法がわからない設計者、サプライヤーの実情を知らない調達、製品が客先でどのように使われているのかわからない営業など、そうして自分のできる業務のみ経験を重ねていきます。

大手メーカーでも協力会社に仕様を渡して発注するだけの設計者もいます。
 

育成してもダメな場合

育成プログラムと水準に達しない社員

テクノロジー企業は、専門スキルよりも知力を重視していても採用した人材を教育しないわけではありません。自社の文化に早く慣れてチームのメンバーと早く成果を上げられるようにするために様々な育成プログラムが組まれています。

しかし採用した社員が会社の求める成果を出せない場合もあります。グーグルは、このような社員に対し、成果が不十分なことを知らせ、スキルを高めるように教育します。そのための教育プログラムも用意されています。
 

グーグルをクビになったことが、プラスのキャリアになる

一方ネットフリックスは、そのような社員に現実を知らせると自ら退社していきます。しかし人材の流動性の高いアメリカでは、ネットフリックスが求める能力が不十分でも、他社が求める能力は高い人材も多くいます。そうした人材は他の企業に写れば大いに活躍できることもあります。

実際、グーグルやネットフリックスを退社(解雇)された人間が、アップルやマイクロソフトで活躍していることは珍しくありません。
 

評価の低い社員を無理に雇用するのは不幸

アメリカでは評価が低い社員は、無理に留めおかず早期に解雇された方が、本人も早く自分に合った別の企業を探すことができます。低い評価の社員を無理に雇用し続けても、将来彼が中高年になった時、もし会社の業績が悪化すれば、彼は真っ先に解雇されてしまいます。本人からすれば「なぜもっと早く言ってくれなかったんだ」となります。

日本ではリストラは「アイデンティティの喪失」

一方日本では、社員は共同体の構成員です。解雇(リストラ)は社員自身のアイデンティティの喪失になります。また日本企業では、社員の能力はそれぞれの専門分野のスペシャリストでなく、様々な業務をこなせるゼネラリストです。そのためリストラで能力不足の烙印を押されることは、人間としての価値まで否定されることにもなります。
 

スキルと賃金が比例しない日本企業

日本企業は、採用した社員は時間をかけて育成し、入社後 10年くらいまでは給与や待遇の格差はほとんどありません。(実際はこの段階で社員の選抜を始まっていて、優秀な社員にはふさわしい仕事を与えてさらに実力を高めるようにしていますが。) つまり日本企業では仕事の報酬は、成果に応じた金銭でなく、より重要な仕事が報酬です。そして入社して10年以上経過すると徐々に上の役職に移行し、40前後で実務から離れて管理職になります。

一方実務者と管理者では必要なスキルが異なり、実務者としては優秀な人が管理職としては不適格ということもあります。また40代50代は技術者であれば、まだ十分に力を発揮できる年齢ですが、昇格により実務から離れると技術者の仕事ができなくなります。
 

賃金に見合った仕事がなければ、社内で失業

日本では社員を解雇することが容易でなく、その一方年功序列賃金のため年齢が高くなると賃金も高くなります。中高年になると高い賃金に見合った成果が求められますが、若い社員の何倍もの成果が出せるわけではありません。それはもともと年功序列賃金が成果でなく、生活の保障のための賃金制度だからです。

その結果、中高年になると、一部の社員はその高い賃金に見合った仕事がないため、社内失業になります。高度成長期は中高年の層が薄く会社も成長していたため、そのような人材を抱える余裕が企業にありました。しかし低成長で中高年の層の厚い今日では企業にその余裕がありません。

つまり年功序列賃金は「中高年に非常に厳しいシステム」なのです。
 

まとめ ~生存環境の全く異なるテクノロジー企業と日本企業~

 

このようにテクノロジー企業と日本企業では、その生存環境が大きく異なります。テクノロジー企業が傑出した人材を求めるのは彼らにとって自然な選択です。この傑出した人材とは、一般的に考えられているランクの高い大学卒業者でなく、高い知力と想像力を備えたグローバルクラスのスマートクリエイティブ、ハイパフォーマーです。

一方従来の企業の生存環境は、テクノロジー企業と異なり、もっと時間軸の長い変化のゆっくりとしたものです。しかし今日ではこうした既存事業にも激しい変化が押し寄せるようになり、これらの企業も変化に対応することが求められてきました。

一方終身雇用、年功序列賃金の日本企業は、一つの共同体として非常に同質な人材の集まりでした。しかしこの仕組みはすでに維持するのが困難になり中高年のリストラが相次いでいます。一方従来の事業にも大きな変化が押し寄せ、日本企業も変化に対応できる、新たな事業を生み出せる人材が必要になってきました。
 

図10 組織・人材マネジメントの変化

図10 組織・人材マネジメントの変化

今回は、人材の能力と採用、解雇にについて、テクノロジー企業と日本企業を対比して述べました。次回は、企業文化、組織、評価制度について考えます。
 

参考文献

「私たちの働き方とマネジメント」 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ 著 日本経済新聞出版社

「ワーク・ルールズ!」 ラズロ・ボック 著 東洋経済新報社

「amazonの絶対思考」 星健一 著 扶桑社

「NETFLIXの最強の人事戦略」 パティ・マッコード 著 光文社

「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」 アンドリュー・S・クローブ 著 日経BP社

「ホンネで動かす組織論」太田肇 著 ちくま新書

「外向きサラリーマンのすすめ」 太田肇 著 朝日新聞社

「選別主義を超えて」 太田肇 著 中公新書

「虚妄の成果主義」 高橋伸夫 著 日経BP社

「できる社員は『やり過ごす』」 高橋伸夫 著 文芸春秋

 

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