現場で役立つ原価のはなし | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 数人の会社から使える原価計算システム「利益まっくす」 Tue, 28 Jan 2025 05:03:48 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.7.5 https://ilink-corp.co.jp/wpst/wp-content/uploads/2021/04/riekimax_logo.png 現場で役立つ原価のはなし | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 32 32 【実務における原価の疑問】 37 値上げ交渉と国の支援策 https://ilink-corp.co.jp/7745.html https://ilink-corp.co.jp/7745.html#respond Fri, 29 Apr 2022 02:39:12 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=7745 原材料や光熱費の上昇は利益を大きく減少させます。こうした中企業が存続するには値上げは不可欠です。

しかし顧客はなかなか値上げを受け入れてくれません。この値上げ交渉に必要なポイントについて「中小企業の原価計算と見積 値上げ交渉のポイント1 顧客の弱点とは?」で、B to Bで必要な価格以外の要因や顧客の課題、それらをうまく使って値上げ交渉を進めるポイントについて説明しました。
 

一方、中小の下請事業者が低い価格を強要される問題は、国も問題視していて法律の他、国もいろいろな情報を提供しています。

法律(下請法)は伝家の宝刀なので簡単には抜けませんが、こういった情報を知っていれば顧客の担当者にプレッシャーをかけることはできます。

図1 下請けからの提案を受け入れてもらうためには

図1 下請けからの提案を受け入れてもらうためには


 

では、国の支援策にはどんなものがあり、どんな使い方ができるのか、国の支援策を武器にする方法を説明します。
 

国の支援策

下請法

下請代金支払遅延等防止法(通称 下請法)は、下請け業者が「支払の遅延」や「代金の引き下げ」といった不利益を被った場合、禁止行為や罰則が定められています。
 

中小企業・小規模事業者のための価格交渉ノウハウ・ハンドブック(以降、価格交渉ハンドブック)

価格交渉事例集です。
法令違反となる取引行為や親事業者とうまく交渉するための価格交渉ノウハウ等を記載したハンドブックと価格交渉の事例集です。

図2 価格交渉

図2 価格交渉


 

下請適正取引等の推進のためのガイドライン

下請事業者と親事業者との間で、適正な下請取引が行われるように国が策定したガイドラインです。望ましい取引事例(ベストプラクティス)や、下請代金法等で問題となり得る取引事例等が具体的に記載してあります。
 

下請法のポイント

図3 下請法の仕組み

図3 下請法の仕組み


 

親事業者の義務

下請取引の公正化及び下請事業者の利益保護のため,親事業者には次の4つの義務があります。
 

1.書面の交付義務
発注の際は,直ちに書面を交付する、その書面には納入場所、金額、支払期日などを明記すること。

2.支払期日を定める義務
下請代金の支払期日は、物品を受領後60日以内に定めること。

3.書類の作成・保存義務
下請取引の内容を記載した書類を作成し,2年間保存すること。

4.遅延利息の支払義務
支払が遅延した場合は日数に応じ未払金額に年率14.6%を乗じた額の遅延利息を支払うこと。
 

親事業者の禁止行為

次の11項目の禁止事項が親事業者に課せられます。下請事業者の了解を得ていても,これらの規定に触れれば下請法違反になります。
 

1.受領拒否
下請事業者に責任がないのに、注文した物品の受領を拒むこと。

2.下請代金の支払遅延
物品の定められた支払期日まで(受領後60日以内のこと)に支払わないこと。

3.下請代金の減額
発注時に決定した下請代金を「下請事業者の責に帰すべき理由」がないにもかかわらず発注後に減額すること。

4.返品
下請事業者に責任がある場合,受領後速やかに不良品を返品するのは問題ない。しかし,それ以外でも受領後に返品すること。

5.買いたたき
類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。

6.購入・利用強制
親事業者が指定する製品や原材料を強制的に購入させたり、サービスを強制的に利用させること。

7.報復措置
下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由として、その下請事業者に対して,取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。

8.有償支給原材料等の対価の早期決済
有償で支給した原材料等の対価を,その原材料等を使用した製品の下請代金の支払期日より早い時期に支払わせたり、下請代金から相殺すること。

9.割引困難な手形の交付
一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形で支払うこと。

10.不当な経済上の利益の提供要請
下請事業者に金銭,役務その他の経済上の利益を提供させること。(例 受注内容にない検品など)

11.不当な給付内容の変更及び不当なやり直し
下請事業者に責任がないのに,費用を負担せずに発注の取消、若しくは発注内容の変更を行い、又は受領後にやり直しをさせること。
 

国の対応

公正取引委員会や中小企業庁は、下請取引が公正に行われているか、親事業者、下請事業者に対して書面調査を行っています。中小企業庁から定期的に送られてくるアンケートがそうです。このアンケートに問題事例を報告すると、中小企業庁からヒアリングがある場合があります。また必要があれば、取引記録の調査や立入検査も行っています。
 

下請法で禁止されている行為をしていると判断された場合、

  • 禁止行為の取りやめ
  • 原状回復
  • 再発防止措置

などを求める勧告を受けます。勧告を受けた親事業者は「改善報告書」を提出しなければなりません。
 

勧告に従わなかった場合は、独占禁止法に基づく「排除措置命令」や「課徴金納付命令」が出されます。

勧告を受けると、勧告の内容に従うかどうかに関わらず、企業名、違反内容、勧告内容が公表され、下請法に違反したことが広く世間に知られることになります。

違反事例を公開している公正取引委員会のホームページがあります。ぜひ参考にしてください。
公正取引委員会違反事例
 

中小企業庁に違反事例を報告すると、自社が報告したことがばれるのではないか

中小企業庁によれば、違反事例の報告があったからといって、すぐに取引記録の調査や立入検査は行わないそうです。こういった報告事例が何件もある企業は、時期を見て取引記録の調査や立入検査を行うそうです。従ってどの下請事業者が報告したか、親事業者にはわからないので報復を受ける可能性は低いです。
 

親事業者のダメージは?

自社の資材調達部門が公正取引委員会の立入検査を受け、下請法違反の指摘を受けて、ホームページで公表されることは、親事業者にとってとても恥ずべきことです。親事業者の経営者から購買部門の部門長が責を受けたり、人事評価に影響が出る可能性もあります。従って彼らに購買部門にとってダメージは小さくありません。(下請法違反を推奨しているような経営者がいれば別ですが。)
 

中小企業、小規模事業者のための価格交渉ハンドブック

法令違反となる取引行為や親事業者とうまく交渉するための価格交渉ノウハウなどを記載したものです。中小企業・小規模事業者が取引条件を改善するための参考となるために作成されました。

下請法にある11項目の禁止行為をより具体的に記載してあります。
 

例 合理的な説明のない価格低減要請

発注者が、自社の予算単価・価格のみを基準として、通常支払われる対価に比べ著しく低い取引価格を不当に定めることは下請法違反になります。 

例 (抜粋)

  • 不況時や為替変動時に、協力依頼として大幅な価格低減を要求
  • 品質が異なる安価な海外製品を引き合いに出して、取引価格引き下げを要求
  • 発注者は改善等の協力が全くないのに、受注者の努力によるコスト削減効果を一方的に取引対価へ反映させる

 

例 原材料価格、エネルギーコスト、労務費などの上昇の取引価格への反映

原材料価格、エネルギーコスト、労務費などの上昇や、環境や安全面での規制対応に伴うコスト増であるにもかかわらず、不当に従来の取引価格で納入させた場合、下請法や独占禁止法に違反するおそれがあります。
 

例 (抜粋)

  • 自社の企業努力では吸収しきれないコスト増分の転嫁を発注者に求めたにもかかわらず、取引価格が据え置かれている

 

例 大量発注を前提とした単価設定

大量発注を前提とした見積りに基づいて取引単価を設定したにもかかわらず、見積り時よりも少ない数量を見積り時の予定単価で発注することは、下請法や独占禁止法に違反するおそれがあります。
 

例 合理的な理由のない指値発注

合理的な説明をせずに、通常支払われる対価に比べ著しく低い取引価格を不当に定めることは、下請法や独占禁止法に違反するおそれがあります。
 

例 発注者が負担すべきコストの受注者負担

発注者の都合で取引条件が変更され、それに伴いコストの増加が生じたにもかかわらず、受注者にそのコストを不当に負担させることは、下請法や独占禁止法に違反するおそれがあります。
 

例 (抜粋)

  • 発注者の都合により、一括納品から分割納品へ変更し、製品の運賃負担が増したにもかかわらず、従来と同様の下請代金

 

例 事後的な仕様変更・工程追加に要する費用の受注者負担

発注者が、自己の都合で発注内容を変更したにもかかわらず、当該発注内容の変更のために受注者が要した費用を全額負担しないなど、受注者の利益を不当に害することは、下請法や独占禁止法に違反するおそれが
 

価格交渉3つのポイント

そこで中小企業が望ましい取引を行うための価格交渉のノウハウとして、以下の3つのポイントを記載されています。
 

価格根拠を上手に伝える

コストに関する客観的なデータを提示します。

原材料価格、エネルギーコスト、労務費などの値上がりに伴うコストの上昇分を価格に転嫁し、合理的な製品価格を設定します。
品質や返品の対応などの条件を加味し、品質に応じた対価を保証されるようにします。
 

取引条件に関するルールを決める

不利な条件下で取引が行われないよう、取引条件に関するルールを策定し、価格設定方法などについて発注者側と合意を取っておきます。
 

  • 原材料価格、エネルギーコスト、労務費などの値上がりに伴うコストの上昇分を価格に転嫁し、合理的な製品価格を設定する
  • 不況時や為替変動時において、一時的に引き下げた取引価格を元の価格に戻す
  • 見積価格の前提となる発注数量を明確にし、発注数量が一定水準以上変動した場合は、単価を再設定する旨を見積書に記載する
  • 製品の運送経費について、発着地・納入頻度(回数)などを明確に提示した上で、発注者が負担する輸送料率をあらかじめ見積書に記載する

 

取り決めたルールや交渉経緯を書面に残す

取引条件に関するルールを発注者と取り決めた際には、 その「日時」「場所」「担当者(自社・取引先双方)」「方法(対面・電話など)」を書面(議事録など)に記載します。
 

以上、中小企業、小規模事業者のための価格交渉ハンドブックより抜粋しました。

この「中小企業、小規模事業者のための価格交渉ハンドブック」は、下請事業者が事前に交渉場面で言われることを理解し対応策を立てるために作成されました。経営コラム「中小企業の原価計算と見積 値上げ交渉のポイント1 顧客の弱点とは?」でも述べたように、交渉を有利に進めるために事前のリハーサルは重要です。こういったハンドブックを活用して交渉のリハーサルを行うことをお勧めします。
 

下請適正取引等の推進のためのガイドライン

以下の19の分野について、それぞれ具体的なガイドライン(pdf)が無料で公開されています。

表 ガイドラインの19分野


 

以下にガイドラインの一部から紹介します。
 

自動車産業適正取引ガイドライン

問題となる事例~自動車産業~

原材料価格、エネルギーコスト、労務費等の価格転嫁

原材料価格、エネルギーコスト(燃料費、電気料金)、労務費等の値上がりや、環境保護等のための規制強化に伴うコスト増が取引先から認められず、従来の価格の納入を要求される事例を紹介します。
 

下請事業者は、電気・ガス料金の上昇が企業努力で吸収できる範囲を超えたので、その上昇分値上げしたいと発注先に求めても「自社の納入先が転嫁を認めない」、「前例がない」、「他社からはそのような相談がない」、「1社を認めると他も認めなければならない」、「値上げ分は定期コストダウンと相殺する」などの理由を挙げて価格を据え置かれてしまいました。
 

これに対しガイドラインでは、望ましい取引慣行として、

  • 原材料価格、エネルギーコスト(燃料費、電気料金)、労務費等の値上がりや、環境保護等のための規制の強化に伴うコスト増のため、今後の価格の動向も踏まえて、明確な算出根拠を基に、製品単価は合理的に設定することが望ましい
  • 算定方法は、双方が十分に協議を行い、あらかじめ合意するのが望ましい
  • 合意がない項目は、外的要因によるコスト増加が「経営努力の範囲内で対応可能なものであるか慎重に検討し」、経営努力を超えるものは、適切に転嫁できるように発注先、受注先で十分に協議を行うことが望ましい

などの対応が提示されています。
 

一方的な原価低減率の提示

「○年後までに製品コスト○%減」という自動車メーカーとの協議を経て定めた自己の目標を循に、発注先の一次部材メーカー(ティア1)は、半年毎に加工費の○%の原価低減を要求し、受注先の下請事業者と十分な協議をすることなく、一方的に発注価格を決定しました。
(現実には発注価格の決定は、双方の合意の元にされていますが、この価格でなければ転注するといわれ、受け入れざるえない状況なってしまうため、ガイドラインに抵触したと言い難いのですが。)
 

上記の望ましい取引慣行として、以下が提示されています。

  • 発注価格は、品質や返品の対応などの条件を加味し、発注先、受注先が十分に協議を行い、合理的な価格を設定することが望ましい

 

他にも様々な問題事例と国の考える望ましい姿が示されているため、自動車部品以外の企業も一読することをお勧めします。
 

食品製造業・小売業の適正取引推進ガイドライン

食品製造業や小売業には、小規模な事業者も多く、その多くは地域での商品の提供や雇用を担っています。一方、長年の取引慣行という理由で、法令違反のおそれのある取引を行っている例もあり、ガイドラインは、日配品で日持ちがせず、特売の対象になりやすい豆腐・油揚製造業を対象に実態調査を行いました。
それを元に問題となる取引事例と望ましい取引慣行をガイドラインにまとめました。
 

問題となり得る事例~豆腐・油揚製造業~

包材(フィルム等)の費用負担

小売業者側が数か月先までの分のPB商品の製造を委託し、これを踏まえて製造業者が発注を受けた数量分の包装フィルムを一括で購入したものの、当該PB商品の販売不振により小売業者から突然発注の一部取消しを告げられました。残存分のフィルムについては再利用の見込みもないため、製造業者から小売業者に対してフィルムの購入に要した費用を含む製造業者が要した費用の負担を求めましたが、受け入れてもらえませんでした。

委託事業者が受託事業者に対して、受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、受託事業者が要した費用を負担することなく発注を取り消すことは、下請法第4条第2項第4号
の「不当な給付内容の変更及び不当なやり直し」に該当するおそれがあります。
 

上記の望ましい取引慣行として、以下が提示されています。

  • 小売業者が、使用予定の包材(フィルム等)の一括調達を含む発注を行っていたのであれば、当該包材の費用は、製造業者が印刷業者等へ発注又は購入を行った時点で速やかに製造業者へ一括して支払われることが望ましい

 

原材料価格や労務費の上昇時の取引価格改定

問題となり得る事例には以下のようなものがあります。

  • 平均価格の数十%以上もの大幅な原材料価格高騰に当たり、資料を基に値上げ要請をしたが、販売価格を一方的に据え置かれた
  • 小売業者の要望により、商品の仕様において割安な輸入品から国産品に原材料が変更になったものの、価格は一方的に据え置かれた
  • 急な発注量の増加に対応するため深夜操業を余儀なくされ、コストが上昇したが、それが適切に反映されない価格を一方的に押しつけられた

 

ガイドラインを武器として活用

このように下請適正取引等の推進のためのガイドラインは、それぞれの業界において、問題となる取引事例や望ましい取引慣行などが具体的に書かれています。
発注する側、受注する側のいずれも自社の業界の下請適正取引等の推進のためのガイドラインを読んでおくことをお勧めします。
 

実際はガイドラインに違反したからといって下請法のように強制的な指導や勧告があるわけではありませんが、顧客との交渉の場面でガイドラインに違反していることをやんわりと指摘して、交渉を有利に持っていく道具にはなります。
 

多くの場合、値上げを認めず、一層のコストダウンを強要するのは、取引先の方針以外に取引先の担当者の資質によるものが大きいからです。彼らにとって低い価格で発注できれば自分の成績になる反面、自分が起因となって下請法違反で会社が立ち入り検査を受ける事態になれば大きなダメージを受けます。実際の交渉場面では、これまでの事例にあるような好ましくないケースがあるかもしれません。

下請事業者は、こういったガイドラインやハンドブックを勉強しておけば、交渉場面でこれは「好ましくないケース」に該当し下請法に違反する可能性があることをやんわりと指摘することで、交渉を有利にできる可能性があります。
 

一方、ガイドラインでも指摘しているように、原材料や人件費の上昇を取引価格に転嫁するためには、具体的にどれだけ上昇したのか、金額で示す必要があります。

そのためには個別原価の仕組みが不可欠です。
 

こういった製造業の値上げ金額の計算と値上げ交渉のポイントについては下記リンクを参照願います。

 

他にも製造業の原価計算の考え方と見積、損失の見える化については下記リンクを参照願います。

 
 

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【実務における原価の疑問】 36 値上げ交渉のポイントと進め方 https://ilink-corp.co.jp/7735.html https://ilink-corp.co.jp/7735.html#respond Fri, 29 Apr 2022 01:42:13 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=7735 「中小企業の原価計算と見積 原材料、人件費の上昇と製造原価への影響」で述べたように、原材料や光熱費の上昇は、利益を大きく減少させます。利益の出ない低い価格を強要され、設備の更新や採用ができず、廃業する企業もあります。
 

従って企業が存続するためには値上げは不可欠です。

しかし値上げを要請しても顧客は値上げをなかなか受け入れてくれません。
 

どうすれば値上げ交渉がうまくいくのでしょうか?

値上げ交渉に必要なポイントについて説明します。
 

顧客の窓口(購買部)の問題

値上げ交渉をする相手は、多くの場合顧客の購買担当です。彼らは、工場が使用する原材料や部品を適切なQCD(品質、価格、納期)で購入するのが仕事です。
 

仕様の決定権がない

ところが購入するものの仕様を決めるのは彼らではないことも多いです。設計など技術が決めます。そのため購買担当が品質について細かく関与できない、その結果、調達する部品の仕様や作り方もよくわからないことがあります。

本来はより良いものを適正な価格で購入しようとすれば、仕様まで踏み込んで議論しなければなりません。なぜなら仕様が変われば価格も大きく変わるからです。
 

そしてどうしても価格を下げたければ仕様を見直す必要がありますが、購買の担当者は仕様に関し決定権がないため、仕様の見直しはその都度技術部門にお伺いを立てなければなりません。

その結果、彼らが重視するのは価格と納期(あるいは供給能力)です。その結果、どうしても相見積をとってできるだけ価格を下げようとします。
 

適正価格に対する誤解

相見積をとれば一番低い価格がわかり、それが適正価格という誤解があります。
 

しかし製造業は固定費の比率の高い業種です。例えばその顧客の下請け(以降、協力会社と呼びます。)のグループをサプライチェーンと呼び、そのサプライチェーン内で閑散期にある企業は工場の稼働率を上げるために赤字でも受注します。そのサプライチェーンの中で、時期によりそれぞれ別の会社が閑散期に入り、赤字受注をすれば、実績価格は赤字価格ばかりになります。あるいはそのサプライチェーンに新たな企業が参入する場合、とにかく取引をしたいので通常よりも低い価格を提示することがあります。

図1 繁忙状況により変わる受注金額

図1 繁忙状況により変わる受注金額


 

顧客は過去に実績があるのだからできるはずと考えますが、その実績価格が本当に利益を含んだ価格なのか、赤字受注価格なのか、そこまでは顧客はわかりません。
 

コストテーブルを基準とする問題

購買担当は見積が適正かどうか、見積査定を行います。現場の経験が豊富な購買担当者は図面を見ればおよその価格を推定できます。

しかし現場経験のない購買担当者は図面を見ても、どのように工程で製造されるのかわからず、価格は想像できません。そこでその部品の大きさ、重量などの特徴と過去の実績価格と相関があれば、大きさや重量から見積価格を計算することができます。これがコストテーブルです。

図2 コストテーブルが合わない範囲の例

図2 コストテーブルが合わない範囲の例


 

コストテーブルのパラメーターには、長さや面積、体積、重量、部品点数など様々なものがあります。顧客の中にはこのコストテーブルを重視し、適切にコストテーブルを作成すれば確実に見積査定はできると考える人もいます。
 

コストテーブルは代替特性

しかしコストテーブルは、あくまでその部品や製品の代表特性から価格を推定するツールです。代表特性と価格との相関がなくなる場合は、適正な価格はわかりません。

例えば鋳物は重量(kg単価)がコストテーブルとしてよく使われます。しかし大型で薄肉の鋳物は、手間がかかる割に重量が少ないため、kg単価で計算すれば価格が合わなくなります。(私も前職で非常に薄肉の鋳物を設計したことがありますが、値段が合わないと協力会社の人から泣かれました。)
 

メンテナンスの問題

また実績価格は年々変化します。加工方法や加工機械も進歩します。そのためコストテーブルは常にメンテナンスが必要です。しかしできるだけ正確な良いものを作ろうと担当者が頑張ってつくったコストテーブルほど、内容が複雑でメンテナンスに手間がかかり、担当者が移動すると誰も引き継げず、形骸化します。
 

また実績価格が曲者で、前述のように閑散期のため仕方なく赤字で受注した場合、他の利益の高い製品と抱き合わせで受注するので赤字で受注した場合があれば、実績価格は赤字価格が並んでしまいます。
 

自動見積の誤解

一方、この見積査定に時間がかかるため、これを人工知能(AI)で行う動きがあります。生産財メーカーのミスミは3Dデータを送れば、AIが自動的に見積を行い、無料で金額を教えてくれるサービス「メビー」を提供しています。

これによりある部品の価格は、形状が決まれば必然的に決まると考える人が増えるかもしれません。
 

会社が違えば原価は変わる

実際は同じ形状の部品でも、工場によって加工物のセットの仕方、刃物の選定で原価は違います。加工時間も異なり同じ価格にはなりません。
 

ただし多品種少量生産や単品生産では、へたをすると加工時間より見積時間の方が長くなってしまうため、多少甘めの見積でも短時間に計算できれば、その方が経済的にもメリットがあります。ミスミは元々金型部品など多品種少量生産や単品部品の製造から始まったため、そのような考え方になったと思われます。

(前職で治具を設計した時も、1個だけ作るのであれば、わざわざ図面を書いて発注するよりも、ミスミの標準部品を使用した方が安かった経験があります。ただし量産する製品は施策の際はミスミを使用しても、利用さんに入るとすべて見積を取りなおしていました。)
 

従って、多品種少量生産や単品生産では、「メビー」の価格参考になりますが、量産部品の場合は個別に見積を取った方がより低い価格になると思います。
 

大企業の中小企業経営に対する理解不足

現在、中小企業も損失や環境マネジメントシステムの管理や気密情報管理など様々な間接業務があり、製造以外の人員が増えています。これは製造間接費や販管費が増加しています。しかし顧客の見積査定の販管費や利益が低く、中小企業の経営の実態と合わないという問題があります。

図3 中小企業の販管費と利益

図3 中小企業の販管費と利益


 

私がこれまで多くの中小企業の決算を見たところ、製造業の販管費は製造原価に対して15~30%でした。つまり製造原価が1,000円の場合、販管費として150~300円を乗せなければ赤字になってしまいます。
 

また中小企業は売上規模が低いため、必要な利益を確保しようとすれば、利益率も高めになります。例えば、売上高2億円の場合、利益率10%でも営業利益2,000万円、そこから借入金の利息など営業外費用を引いて経常利益が1,500万円だったとします。そこから法人税を引いた残りの金額から、借入金の返済を行います。そう考えれば10%の利益率は決して高すぎないことがわかります。
 

対して顧客が大企業の場合、顧客の利益率はそこまで高くないことがあります。そうなると協力会社が製造原価に必要な販管費や利益を加えた場合、その見積は販管費や利益が多すぎるということになってしまいます。
 

実は顧客は正しい原価がわかっていない

またこういった誤解の原因のひとつに顧客の大企業が、原価を工場の製造原価しか見ていない場合もあります。顧客が事業部制をとっていて、事業部間、工場間で内製加工部品を取引する場合、そこには販管費(この場合本社経費)を入れません。ですから工場原価1,000円の部品は1,000円でできると購買担当は考えてしまいます。
 

しかし本社費用が40%発生していれば、1,000円の部品を社外に販売する場合は、1,400円にする必要があります。そして協力会社から購入する価格は、自社でいえば本社費用を含んだ1,400円なのです。

図4 事業部内取引と外販の違い

図4 事業部内取引と外販の違い


 

見積を作文せざるを得ない

こうした条件があるため、協力会社が取引先に出す見積は、本当の販管費や利益が書けません。しかし顧客の要求する販管費や利益では赤字になってしまうため、製造原価を作文(水増し)せざるを得ません。

図5 見積書と実際の製造原価

図5 見積書と実際の製造原価


 

これが価格交渉やコストダウンの打ち合わせで本当の工程、製造時間が言えない原因になります。
 

本来は「いくら販管費が必要なのか」、「いくら利益を取るのか確保するのか」は、協力会社の経営の問題です。購買担当はそこには踏み込まず、製造工程についてはオープンに話し合い「いかに少ない時間で製造できるか」そこに両者が協力すべきだと思うのですが。
 

コストダウンの誤解

最初は製造に時間がかかっていても経験を重ねるにつれて製造時間が短縮される現象を「経験曲線」と呼ばれます。量産メーカーによっては、最初は赤字でも生産を継続する間にコストが下がり利益が出るようになります。

図6 経験曲線

図6 経験曲線


 

例えばソニーが初めてトランジスタラジオを販売したとき、トランジスタを量産するメーカーはまだなく、ソニー自らトランジスタを量産しました。当初の歩留まりは非常に悪かったのですが、歩留まりが3%(100個中97個が不良)になったとき、社長の井深大氏は量産にGOサインを出しました。3%まで上がれば、後はどんどん良くできると直感したからです。
 

つまり新しい工法、製造プロセスは経験曲線が働き、製造している間にコストが下がります。多くのメーカーが協力会社に対し、定期的な値下げを要求するのは、生産している間に経験曲線、あるいは改善により製造時間を短縮し、コストダウンを図ることを要求しているからです。
 

しかしこれまでと同じ作り方の部品の場合、これまでさんざん改善を行ってきたため、改善できる余地はあまりありません。つまり定期的な値下げを要求された場合、改善によるコストダウンでなく、実質的な値下げになってしまいます。

こういった背景の中、顧客に対し値上げ交渉を行うのは容易ではありません。
 

価格交渉のポイント

値上げ幅の決定

まず計画を立てます。
重要なのは、これまでに上昇した価格分だけでよいのか、今回値上げした後、次回の値上げ交渉がいつになるかです。

それが1年後であれば、今後1年間の原材料価格の上昇分を見込んで値上げしなければ、これから原材料価格が上昇するとまた利益が減ってしまいます。

図7 値上げ金額の決定

図7 値上げ金額の決定


 

また原材料価格の上昇や製造費用が上昇すれば、販管費も比例して高くなります。ただし製造原価が上昇したため販管費も高くなるということは顧客からはなかなか理解が得られません。その場合販管費の上昇分製造原価を水増しするか、今回は実際に増加した分のみ価格を改定し、販管費の増加分は断念するか、この方針も必要です。

図8 販管費の値上げの問題

図8 販管費の値上げの問題


 

対象製品の決定

また値上げする対象製品を選定します。値上げすると場合によっては顧客はほかの協力会社に転注するリスクがあります。転注された結果、売上が大きく下がれば経営に大きなダメージを与えます。

表 値上げする製品の選定
表 値上げする製品の選定
 

この表からA3製品は赤字額が大きく、限界利益の合計は少ないため、値上げした結果失注しても経営のインパクトは少ないため、A3製品を優先して値上げします。
また顧客によっても対応が変わります。そういった点を考えて、最初にどの顧客のどの製品から値上げするのか、その顧客の製品はどれだけ値上げするのか、計画を立てます。
 

値上げのステップ

値上げは顧客にとっても大きな影響があるため、いきなり文書を提出したりせず、最初は顧客の担当者に何度か口頭で伝えます。その上で値上げの根拠と金額を明記した文書をつくり渡します。顧客の中でも値上げについては様々な人が関係するため、いちいち担当者が説明しなくてよいように文書を渡します。また回答については期限を切ってお願いします。
 

  1. 口頭で意思を伝える
  2. 値上げの文章を作成
  3. 回答期限を切って渡す
  4. 回答を求める

 

競合の情報収集

顧客は自社の値上げを受け入れない場合、他にどんな選択肢があるのか、競合の情報を収集します。競合は値上げをするのか、そもそも競合の価格は安いのか、品質や供給能力に問題はないのか、情報を収集し、転注のリスクを調べます。
 

一般的に品質、コスト、納期(供給能力)のいずれも競合よりも上回っている企業は多くありません。価格が安くても品質に問題があったり、供給能力に問題があったりします。したがって顧客はコストを優先して品質に問題がある企業に発注するか、品質を重視してコストが少し高い企業に発注するか悩むことになります。

図9 競合の情報

図9 競合の情報


 

実際は品質で大きな問題が起きれば、部品が少しぐらい安くその結果増えた利益は、品質問題に対策する費用で吹き飛んでしまいます。自動車では品質問題が原因でリコールになればさらに多額の費用が掛かります。
 

転注も含めて変更は大変

多くの製品は開発から発売に至るまでに、多くの試験やチェックを行います。そして試験結果を社内で協議し、販売しても大丈夫か審査します。これを設計審査(DR デザインレビュー)と呼びます。機能的に重要な部品は、製造メーカーや材質を変更した場合、品質に問題ないか評価を行います。場合によっては、再度設計審査DR)を行うこともあります。

注) DR(design Review) 設計審査
開発の各段階で設計結果が設計要求を満足していることを確認し、次の段階に進めるかを審査すること

 

あるいは半導体製造装置では、最初に審査。承認した仕様から許可なく変更してはならないという要求(Copy Exactly)というものもあります。そうなると転注や変更そのものが許可されない場合もあります。

図10 商品企画から量産までのプロセスの例

図10 商品企画から量産までのプロセスの例


 

このように顧客の立場で考えれば、転注は非常に手間のかかる作業です。しかも転注すれば品質不良のリスクもあります。そのような背景があれば、値上げの原因は原材料価格の上昇など不可避なもので、値上げ幅も許容できれば値上げを認める可能性があります。
 

価格交渉のポイント1 リハーサル

価格交渉を行う人が百戦錬磨の交渉の経験があればこれは必要ありません。

そうでなければ価格交渉本番の前に自社でリハーサルをすることはとても効果があります。
 

交渉では、価格について妥当性を議論し、双方が満足する解決策を見つけることです。顧客は価格の妥当性に対し様々な質問をします。そして価格を下げるように説得します。それに対し、こちらはその都度合理的な理由を挙げなければなりません。

交渉に慣れていない場合、まず相手の意見や質問を正しく理解し、それに対し適切な反論を考えて、それから説明しなければなりません。しかしとっさに反論が浮かばなければ相手に押し切られてしまいます。
 

そこで事前に社内でリハーサルを行い、自社の社員に顧客の役になってもらい、顧客になりきって様々な要求や質問をしてもらいます。

そうすれば本番では落ち着いて反論できます。交渉で顧客が出すと思われる質問や説得はあらかじめリストアップします。それを相手役の人に顧客になりきって説得してもらいます。
 

表 過去に価格交渉で出た説得

説得 対抗策
品質などでダメ出しする
予算がない
競合は○○で受けると言っている
なぜ安くできないのか、論理的に理由を聞く
御社しか発注しないので、この価格にしてほしい
部長が○円にしろと言っている

 

この方法の良い点は、リストにないことを交渉本番で言われた場合、会社に戻ってからリストに付け加えることができる点です。これを継続すれば、顧客から初めて言われることがなくなります。あらゆる説得が事前にリハーサル済みとなるため、本番では冷静に説明することができます。交渉が不慣れな社員でも、リハーサルを行うことで優秀な交渉担当者と同等の働きができるようになります。
 

価格交渉のポイント2 代案の提示

価格交渉のもう一つのポイントは、価格以外の解決策(代案)を提示することです。価格だけを焦点として交渉すれば、その価格を受け入れるか、受け入れないかの二者択一になります。値上げを受け入れることは、顧客にとっては相手に説得された「敗北」です。しかしそこで値上げ以外の選択肢、代案が示されれば、顧客にとって交渉は説得から選択に変わります。

図11 代案の効果

図11 代案の効果


 

例えば

  • 厳しすぎる品質基準を緩和する
  • より低コストで製造できる工程に変えてもらう
  • 原材料を支給してもらう、あるいは支給から自社調達に代えてもらう

などです。この場合、代案はコストが下がるような具体的な提案が必要です。
 

具体的な数字で示す

歩留まりが向上すれば原価はどれだけ下がるのか、工程を変更することで原価どれだけ下がるのか、具体的な数字で示す必要があります。
 

そのためにも個別原価の仕組みが必要です。

この下請事業者が低い価格を強要される問題は、国も問題視していて経済産業省が様々な資料を提供しています。

また下請代金支払遅延等防止法(通称 下請法)は、下請け業者が「支払の遅延」や「代金の引き下げ」といった不利益を被った場合、禁止行為や罰則が定められています。
 

こういった製造業の値上げ金額の計算と値上げ交渉のポイントについては下記リンクを参照願います。

 

他にも製造業の原価計算の考え方と見積、損失の見える化については下記リンクを参照願います。

 
 

中小企業でもできる簡単な原価計算のやり方

 
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経営コラム ものづくりの未来と経営

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ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?

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経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。

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【実務における原価の疑問】 32 人のアワーレート その2 派遣社員、間接作業者と稼働率 https://ilink-corp.co.jp/7564.html https://ilink-corp.co.jp/7564.html#respond Wed, 09 Mar 2022 02:45:45 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=7564 現場で人が1時間作業した時の費用 アワーレート(人)の計算方法を「中小企業の原価計算と見積  人のアワーレートはいくらなのだろうか?」で説明しました。

ここでは、その続きとして現場の派遣社員、間接作業者の費用と稼働率について説明します。
 

派遣社員や請負外注はどうなるのか?

現場に派遣社員や請負外注もいて、社員と同様に製造を行っていることがあります。
 

決算書の費目が外注費や委託費でも労務費と同等

彼らの費用は決算書では、労務費でなく外注費や委託費など別の費目になっていることがあります。この場合、社員と同様に製造を行っていれば、その現場の費用に含めてアワーレートを計算します。

問題は、社員と異なり就業時間が正確にはわからない場合があることです。また外注費の費目の中に、外注加工費も含まれていて、工場内で作業した請負外注の費用が正確にはわからないこともあります。

原価の視点で見れば、派遣社員も請負外注も社員と同じです。

従って各現場の派遣社員や請負外注の、人件費総額と個々の作業者の就業時間を記録します。できれば社内で作業する請負外注の外注費と、社外へ依頼する外注加工費は、費目を分けておくことをお勧めします。

図1 決算書の費目を分ける

間接作業者の費用

アワーレートを計算するのは、実際に製品を製造する組立作業者や設備のオペレーターのみです。しかし工場には、物流、資材調達、生産管理、受入検査など直接製造には関与しないが工場には不可欠な人たちがします。

彼らの費用はどうなるのでしょうか?
 

現場の間接作業者

機械加工、組立など直接製造する現場でも、製造の前準備をしたり、製造の記録を取ったりといった作業をする人たちがします。彼らは1時間作業しても、その分何か付加価値が生まれるわけではありません。
 

彼らの費用はその現場の間接製造費用とします。

あるいはその現場の管理者が全く現場の作業を行わず、管理業務のみであれば彼もその現場の間接製造費用です。従ってアワーレートの計算式は以下のようになります。

従って、

間接作業者や管理者が増員されれば、その現場のアワーレートは高くなります。

A社 現場1 機械加工の現場に間接作業者が1名いる場合

モデル企業A社 現場1 機械加工の現場は、下図のように設備が4台、作業者が4名でした。
この場合、作業者4名のみの場合のアワーレート(人)は経営コラム「中小企業の原価計算と見積  人のアワーレートはいくらなのだろうか?」で計算したように
アワーレート(人) 2,375円
でした。
 

この現場に材料の用意や製品の搬送、加工治具の準備など補助的な作業を行うパート社員が1名いました。
このパート社員は間接作業者でその労務費は、現場1の間接製造費用になります。

図2 A社 現場1


間接作業者も含めた現場1のアワーレート(人)は

現場1 機械加工 の間接作業者も含めた労務費と就業時間

労務費(万円) 就業時間(時間) 稼働率 稼働時間(時間)
352 2,200 0.8 1,760
352 2,200 0.8 1,760
440 2,200 0.8 1,760
528 2,200 0.8 1,760
パート 115.2 1,200
合計 1,787.2 8,800 7,040

 

間接作業者の労務費はアワーレート(人)の計算に追加しますが、間接作業者の時間は稼働時間に含まれません。その結果

労務費合計 1,787.2万円 稼働時間 7,040時間

間接作業者を含まない場合は、2,375円/時間だったので、間接作業者を含めるとアワーレート(人)は165円/時間 増加しました。
 

間接部門の労務費

生産管理、品質管理、資材管理など直接製造を行わず間接的な業務を行う部門もあります。これらの部門の労務費は、間接製造費用として各現場に分配します。この間接製造費用の分配は別のコラムでご説明します。


分配と配賦、賦課
このコラムでは、費用を割り振ることを「分配」という一般的な言葉で説明しています。会計の本を読むと、この割り振ることを「配賦」としています。この配賦も辞書では「割り当てること」です。会計では「配賦」のほかに「賦課」という言葉もあります。これは以下のような意味です。
配賦 製造原価を算出する際に、間接費を何らかの基準(配賦基準)を用いて振り分けること
賦課 製造原価を算出する際に、「何に」「どれだけ」使ったのかがわかる直接費を振り分けること
というように意味を使い分けていて、「直接費は賦課して、間接費は配賦する」と言います。本コラムは会計に詳しくない人を対象にしているため、定義の難しい会計用語を用いずに一般的な用語を極力使用しています。

 

間接作業者の増加と直接作業の間接作業化

一方、自動化の進んだ現在の工場は、かつてのように作業者が自ら機械を操作する、あるいは自ら手を動かして製造する、といったかつてのような直接作業者の仕事の割合は少なくなっています。

順送プレスや樹脂成形加工の工場では、段取など一部の作業は作業者が自ら行い、機械が生産を開始すれば作業者は様々な間接的な業務を行います。

(参考文献1)の調査によれば、上場企業200社のうち労務費全体の中で直接作業者の労務費の比率が50%以下の企業が28%でした。また直接作業者と間接作業者の区別をつけずにすべて間接作業者としていた企業も10.5%ありました。

このように工場の労務費に占める間接製造費用の比率が高くなれば、原価は各製品に分配される間接製造費用の大きさによって大きく変わります。ただ間接製造費用の分配は、各製品の製造時間や製造費用に比例して行うため、正確な原価を出すためには各製品の製造時間や製造費用の把握は重要です。
 

アワーレート(人)の稼働率の影響

アワーレート(人)の計算は分母に稼働率が入っています。その結果、稼働率によってアワーレート(人)が変わります。

ヒマな年は翌年のアワーレートが高くなる

例えば、現場1 機械加工の現場の稼働率は、一昨年は0.8 (80%)でしたが、先期は0.7に低下した場合、アワーレート(人)は

現場1 機械加工 稼働率が0.7に低下した場合

労務費(万円) 就業時間(時間) 稼働率 稼働時間(時間)
352 2,200 0.7 1,540
352 2,200 0.7 1,540
440 2,200 0.7 1,540
528 2,200 0.7 1,540
パート 115.2 1,200
合計 1,787.2 8,800 6,160

 

間接作業者の労務費はアワーレート(人)の計算に追加しますが、間接作業者の時間は稼働時間に含まれません。その結果

労務費合計 1,787.2万円 稼働時間 6,160時間

稼働率0.8のアワーレート(人)は、2,540円/時間だったので、稼働率が0.7に低下したことでアワーレート(人)は360円/時間 増加しました。
 

従ってアワーレート(人)を計算する際

1年全体で受注が少なく、工場の稼働率が低かった場合、翌年のアワーレートは高くなります。

この場合は以下の2つの考え方があります。
 

アワーレートは高くしない(稼働率はそれ以前の値を使用)

ただでさえ受注が少ないのにアワーレートを高くすれば、さらに受注がしにくくなるため、稼働率はそれ以前の値を使用しアワーレートは高くしないでおきます。
受注が少ないことが問題なので、積極的に営業活動を行って受注を増やし、工場の稼働率を上げます。
 

アワーレートを高くする

時にはあえて稼働率を低くする場合があります。例えば特急対応を主とする場合、急な依頼に対応できるように人や設備の稼働率をあまり高くできません。自社の事業がこういった分野に「転換」した場合、稼働率は低くなりアワーレートは高くなります。その分、見積も高くして、特急対応を打ち出して高い値段で受注できるようにします。
 

1年の中でもヒマな時はアワーレートを高くして利益を出すべきではないか

「1年の中でもヒマな時もあれば忙しい時もある。ヒマな時はアワーレートが高くなっているのだから、アワーレートを高くして利益を出すべきできないか」
いや
「ヒマな時は受注が少ないのだから、見積を低くしてでも受注して少しでも固定費を回収すべき」
このような考えもあります。

私は

アワーレートや見積価格は「事業活動の基準となる数値」なので、大幅な増員や設備投資で環境が大きく変わらない限り「年間で固定すべき」

と考えます。

その上でヒマな時は
「工場の稼働率を上げるためにどこまで赤字で受注するか」
を判断します。
受注価格の決定は経営そのものです。原価は経営判断に必要な情報を提供するツールと考えます。

ツールはぶれずに正しい情報を伝えます。

受注の意思決定する時に「どこまで赤字で受注するか」を判断します。
 

業務量が増えたので増員する予定、アワーレートは変わるのか?

増員しても稼働率が変わらなければ、アワーレートは変わりません
 

新人は最初フル稼働しない

増員して労務費が増えてもアワーレートは変わりません。
実際、新人は最初の頃は他の社員と同様の出来高が出ないので、最初はアワーレートが高くなります。慣れてきて他の作業者と同じ出来高になればアワーレートは同じになります。

注意が必要なのは、先に述べたように「一見働いているように見えて、『稼いでいない』時がある」ことです。

機械は止まっていれば稼いでいないことがわかります。

ところが人の場合は、本人も「遊んではいけない」と思い何か仕事をします。見た目には働いているように見えますが、「加工する」、「組立てる」といった付加価値を生み出す仕事でなければ「稼いで」いません。

現場の整理をしたり、白線を引いたりといった作業は、必要かどうかは別として、付加価値は生んでいません。増員した作業者がそのような作業を行っていれば稼働率は低下しています。
 

稼働率を使うと計算が煩雑なので入れないで計算したい

稼働率は算出が大変で、例えばサンプルを測定して80%と決めても、1年間そうなっているのか不安です。稼働率を使わない方が楽な気がします。
 

稼働率を使わないと計算がより煩雑になる

稼働率を使わなければ、人のアワーレートを算出は楽になります。そして稼働率を入れない分、アワーレートは低くなります。これは非稼働時間が除かれたためです。では非稼働時間の費用はどこに行ってしまうのでしょうか?

この非稼働時間も見積に反映させないとその分見積が安くなってしまいます。そこで各作業者の非稼働時間を集計して、この時間の費用を間接製造費用に加えます。そして他の間接製造費用と一緒に各現場に分配します。

図3 非稼働時間を間接製造費用に加える

そのためには

個々の作業者の非稼働時間を記録する必要があり、却って計算が煩雑になります。

稼働率は現場の管理者になじみやすい指標です。日常管理者は稼働率を意識して、稼働率を高めるように現場を管理する方が分かりやすいです。

(参考1)
「現場で使える原価計算」 清水孝 著 中央経済社
 

こういった製造業の原価計算の考え方と見積、損失の見える化については下記リンクを参照願います。

 

他にも製造業の値上げ金額の計算と値上げ交渉のポイントについては下記リンクを参照願います。

 
 

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【実務における原価の疑問】 30 設計・開発費について https://ilink-corp.co.jp/7217.html https://ilink-corp.co.jp/7217.html#respond Wed, 20 Oct 2021 03:03:42 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=7217 製品を製造する前に設計が必要なものがあります。
 

あるいは設計だけでなく、試作や評価などの開発を行ってから、生産するものもあります。
 

これについてはどう考えたらよいでしょうか?
 

設計・開発費の考え方

設計・開発費の扱いに大きな影響があるのが、開発要素と生産量です。
 

開発の要素

今までない全く新しい製品、新しい技術や材料・製造方法であれば、製品を完成させるまでに時間がかかります。その分費用も高くなります。開発要素が多ければ、設計だけでなく、試作や評価も必要になるため、それらの費用もかかります。
 

加えて「未知の要素」が多いと、完成までの時間が不確実になります。1か月でできると思っていたものが2年かかってしまうこともあります。極端な例では高分子化学などの新しい材料の開発では10年以上かかるものもあります。
 

一方新しく作るものでも、全ての要素が過去に経験のあるものであれば、不確実さは低くなります。想定した期間内で設計できるため、費用も管理しやすいです。またこういった製品は試作や評価も必要ない場合が多いです。例えば衣類や食品の新製品は、今までと同じ材料や製造方法であれば、予定通りに製品が完成し量産に入れます。
 

生産量

多額の設計・開発費用がかかっても、その製品が大量に生産、販売されれば、製品が生み出す利益で設計・開発費用を賄うことができます。製品の原価に対し、設計・開発費用の割合は低いため、計画よりも設計・開発費用が増加しても軽微な影響にとどまります。例えば、VTR、DVDなどは長い開発期間と開発費がかかりました。しかし技術が完成し製品化されれば、今までにない製品なので多くの顧客が購入し、多額の利益が得られました。
 

逆に生産量が少なければ、設計・開発費用の影響は顕著に表れます。特に「一品物」と呼ばれる毎回設計しなければならない製品は、設計費用が増えれば、全て原価の増加になります。
 

開発要素と生産量の関係

この開発要素と生産量によって、設計・開発費に対する扱いが変わってきます。この開発要素と生産量の関係を図1に示します。
 

図1 開発費と生産量の関係

図1 開発費と生産量の関係


 

【開発要素 高い】【生産量 大】

発売前のVTRやDVDのように世の中にこれまでなく、技術開発に時間がかかる場合です。開発費は高額になりますが、生産量も多いため、回収は容易です。
 

自動車は毎回新しい製品を開発し開発費も高額ですが、新しい技術要素はそれほど多くなく開発は計画通りに行われます。一方生産量は非常に多いため、1台当たりの開発費は高くありません。
 

【開発要素 低い】【生産量 大】

衣類や食品などで、これまで同じ材料や製造方法で製造する場合です。開発費は低く、生産量は多いため、開発費は無視できます。
 

【開発要素 高い】【生産量 少ない】

顧客の要望に基づいて、技術的な難易度の高い製品を製造する場合です。高度な製造設備、航空・宇宙の製品などが該当します。開発は原価と考え、適切な金額をもらわないと赤字になってしまいます。一方開発要素が高ければ、費用の不確実さも高く、当初の見積通りにできなければ赤字になってしまいます。
 

実際、開発要素はそれほど高くないが、全て新規設計する製品も多く、工場内の搬送装置や製造装置の多く(専用機と呼ばれています)はこれに該当します。開発・設計費用は原価と考え、適切な金額を見積に入れなければなりません。ただし開発要素が少なくても、新規に設計するため、予想外のトラブルや設計ミスで設計・開発費用が増加することもあります。
 

【開発要素 低い】【生産量 少ない】

オーダーメイドの洋服、注文住宅などが該当します。設計費用は見積に含まれます。不確実さは低く、当初の予定通りにできます。
 

開発の段階

全く新しい技術や製品を開発する場合、製品の設計に取りかかる前に、必要な要素技術の開発をすることもあります。要素技術の開発を行い、技術が完成してから、販売する製品の設計・開発に取りかかります。この場合、図2に示すような段階を経て製品化されます。
 

図2 研究開発費と開発費

図2 研究開発費と開発費


 

研究開発

大きな開発テーマでは、最初から製品をつくるようなことはせず、必要な要素技術をまず先に開発します。
 

実験機(通称 ベンチテストやテストベンチ)を作って新しい技術を確認します。「必要な性能が得られるか」、「性能は安定しているか」を確認し、ここで製品化が困難と判断すれば開発は中止します。
 

実際に販売する製品をつくるには外観も含めて全ての機能が完成していなければなりません。それには多くの時間と費用がかかります。その前に簡単なテストベンチをつくり、必要な技術や機能かを確認します。こうすれば、その技術が実現可能かどうか早く確認できます。失敗しても早く次の方法を考えることができ、結果的に開発は早くなります。
 

図2では、研究開発の結果、テーマ1は失敗し、テーマ2は研究開発は成功したが他の事情で製品化は断念しました。テーマ3は製品化することになり、新製品Cの開発がスタートします。
 

製品開発

技術的に製品化の見通しが立てば、発売までのスケジュールを決めて製品開発を行います。試作機を設計・製造し、その評価を行います。製品によっては、試作を何段階も行ったり、評価品を顧客に渡してフィールドテストを行ったりします。この場合、製品を設計。評価するだけでなく、製造原価、生産体制、販売体制、アフターサービスまでの体制を構築します。
 

製品発売後

標準品を生産する場合、製品を発売後は設計・開発の費用はかからないはずです。しかし実際は販売後も発生する不具合の対応や製造上の問題の対応などで一定の費用が発生することも多いようです。
 

また標準品でも製品の一部を顧客の要望に応じて変更する製品もあり、この場合は発売後も設計には一定の負荷がかかります。
 

開発費・研究開発費の計上

この開発にかかる費用は財務会計と税法では異なります。
 

財務会計 研究開発費

「研究開発費等に係る会計基準」によれば、「研究」「開発」は以下のように定義されています。
 

【研究】

新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究
 

【開発】
  • 新しい製品・サービス・生産方法の計画や設計
  • 既存の製品等を著しく改良するための計画や設計、そのために研究の成果やその他の知識を具体化すること

 

この研究や開発で発生した費用が研究開発費です。研究開発費は発生した期に費用(一般管理費)として処理します。
 

なお、企業会計原則は上場企業や大企業に適用されるもので、中小企業は従わなくても問題ありません。
 

税法 試験研究費と開発費

税法では「試験研究費」と「開発費」が以下のように定められています。
 

【試験研究費】税額控除の対象

製品の製造、技術の改良や考案、発明に係る試験研究に要する一定の費用が対象で、これには人件費も含まれます。企業会計原則にある「新しい」は税法では必須ではありません。
試験研究費は一般管理費、又は製造原価として発生した期に費用として処理します。
この試験研究費は税額控除の対象になります。税額控除を受けるためにはそれぞれの試験研究テーマで発生した費用を他の費用と分けて管理しなければなりません。
 

【開発費】繰延資産化が可能

「開発費」は新たな技術や新たな経営組織の採用、資源の開発、又は市場の開拓のために特別に支出する費用です。企業会計原則にある「著しい」は税法の開発費では必須でないため、企業会計原則よりハードルは低くなっています。
 

この開発費は繰延資産にすることが可能です。製品が発売される前の開発段階では、製品はまだ収益を生まないため、それまでに開発にかかった費用を回収できません。そこで開発費は「将来の期間に影響する特定の費用」として貸借対照表に繰延資産として計上し、その期の費用(損益計算書)から除外することができます。その結果、製品を開発している期は開発費が発生しますが、その期の費用にならないため、その分キャッシュフローがマイナスします。(つまり現金が少なくなります。) 
 

開発費は製品を発売後、製品を販売している期間に合理的に分配して回収します。この期間は企業が決めることができ、開発費を繰延資産とするかどうかも企業自身で決めることができます。
 

開発費の繰延資産化は税法では認められていますが、「研究開発費等に係る会計基準」にはないため大企業では行われません。
 

表1に研究開発費、試験研究費、開発費の違いをまとめました。
 

表1 研究開発費、試験研究費、開発費の違い

研究開発費
(企業会計)
【研究】
新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究
【開発】
・新しい製品・サービス・生産方法の計画や設計
・既存の製品等を著しく改良するための計画や設計、そのために研究の成果やその他の知識を具体化すること
試験研究費
(税法)
製品の製造、技術の改良や考案、発明に係る試験研究に要する一定の費用(「新しい」は必須でない)
開発費
(税法)
新たな技術や新たな経営組織の採用、資源の開発、又は市場の開拓のために特別に支出する費用(「著しい」は必須でない)

 

研究開発費・開発費の考え方

このように研究開発費、試験研究費、開発費は企業会計と税法での扱いが異なるため、わかりにくくなっています。これは下記のように考えることができます。
 

研究開発

大きな開発テーマでは、必要な要素技術のみを先に開発します。
 

これは企業会計の「研究開発費」、財務会計の「試験研究費」とします。この費用は、「研究開発費」又は「試験研究費」として発生した期の費用として処理します。
 

これは特定の製品で発生する費用でなく、企業が成長発展するための無形の投資になります。従って毎期予算を組んで一定額を研究開発に投入します。
 

試験研究費として税額控除を受ける場合は、他の費用と明確に区別して管理します。
 

開発費

実際に販売する製品の開発にかかる費用です。開発費は開発した製品を発売後、その製品が一定期間生み出した収益で回収します。開発費が多く、製品の販売量が少なければ開発費の回収ができなくなります。そうならないように開発費のコントロールと予定した販売量の達成に力を入れます。
 

ただ開発費の回収は机上での計算のみです。実際に発売前の製品の開発の費用を、「発売後の未来」から持ってくることはできません。では発売後に回収する開発費の意味は何でしょうか?
 

これは次の製品の開発の原資です。
製品が予定した量売れず開発費が回収できなければ、次の製品を開発するための原資がありません。この状態が続けば製品を開発できず、企業は衰退します。
 

一方中小企業は開発費を繰延資産化することもできます。開発中の製品は費用が発生しますが、発売前なので売上はゼロです。そのためその期は赤字になることもあります。そこで開発費として繰延資産化し、製品を発売後、費用計上すれば赤字を避けることができます。この場合の開発費は設備投資に似ています。ただ繰延資産化すれば設備投資と同様に現実のお金の動きと損益計算に乖離が生じます。実際のお金の動きはキャッシュフローと計算書を見ないと分からなくなるので注意します。
 

開発費の繰延資産化の例

A社は新製品を開発しました。その期は新製品を発売できないため、開発費として繰延資産にしました。表2にA社の決算書の一部を示します。
 

表2 A社決算書(一部抜粋) 単位 : 万円
 表2 A社決算書(一部抜粋)
 

製品開発時

A社の製造部門がかかった費用は4億6,000万円でした。その中に新製品の開発費1,500万円がありました。
 

この開発費は繰延資産(開発費)として損益計算書からマイナスし、貸借対照表に無形固定資産(開発費)として計上しました。
 

その結果、損益計算書の製造原価は4億4,500万円になり、営業利益は5,000万円になりました。
 

実際にかかった費用よりも1,500円製造原価が少なくなり、その分利益は増えました。
 

この1,500万円の支出は損益計算書には計上されないため、キャッシュフローは1,500万円マイナスになります。(現金が1,500万円少なくなる。)
 

製品発売後

翌年、新製品を発売したため、先期の開発費1,500万円を費用として計上しました。(表3)
この開発費は損益計算書の営業外費用に計上されます。(A4製品の開発費は翌期に全額償却するものとします)
 

1,500万円の費用はかかっていないのに営業外費用に1,500万円計上されるため、キャッシュフローは1,500万円プラスになります。(現金が1,500万円増える。)
 

表3 A社の翌期の決算書 単位 : 万円
表3 A社の翌期の決算書 単位 : 万円
 

開発費の繰延資産化は固定資産の取得に似ている

 
このように製品を発売前に発生する開発費は「開発費」として繰延資産化すれば、会計上も開発費の回収を適切に処理できます。

ただし、これは税法では認められていますが、会社法では認められていないため、上場企業など大企業ではできません。

一方開発費を繰延資産化すれば、費用の発生とお金の動きがずれるためキャッシュフローはわかりにくくなります。

この開発費の繰延資産化は固定資産の取得に似ています。

従って開発費を繰延資産化した場合は、固定資産の取得と同様に資金繰りに問題が生じないようにキャッシュフローを押さえておく必要があります。

一方、自社で開発テーマを持たず、顧客からの要望に応えることで新たな技術やノウハウを蓄積する会社もあります。その場合の失敗や後戻り費用はある意味で開発費です。
 

こういった製造業の原価計算の考え方と見積、損失の見える化については下記リンクを参照願います。

 

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【実務における原価の疑問】28「検査追加によるコストアップ」 https://ilink-corp.co.jp/7047.html https://ilink-corp.co.jp/7047.html#respond Tue, 17 Aug 2021 05:58:58 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=7047 なぜ個別原価計算が必要なのか?
それは

  • 適切な価格の決定 (見積)
  • 実際の原価を調べて、製造工程の問題を早く発見する

この2点です。
 

知らない間に起きているコストアップも、見積原価と実績原価を比較すれば発見できます。

知らない間に起きているコストアップとは、いったい何でしょうか?
 

コストアップの要因

 

実際に製造すると、見積原価ではできない要因には以下のようなものがあります。

  • 見積より時間がかかる
  • 見積時と製造ロットが異なる
  • 全数検査など見積時より工程が増えた
  • 材料ロスが見積時より多い
  • 不良率が見積時より高い

製造ロットが異なることによるコストアップは「製造業の個別原価計算24 段取とロット数の原価への影響」で述べました。

不良の増加によるコストアップは「製造業の個別原価計算23 不良による損失」で述べました。

ここでは検査追加によるコストアップについて述べます。
 

不良ゼロは理想論?

 

メーカーから見れば、購入した部品に不良が入っていれば問題です。

それが機能的に重要な部品で、しかも自社の工程で不良を検出できなければ、不良品を組み込んだ製品が市場に出荷されてしまいます。

その製品が市場で問題になれば、リコール(製品回収)になってしまいます。

たった1個の不良品のために、何千台もの製品がリコールの対象になることもあり、損失金額は莫大な金額になります。

私自身、設計や品証を経験しているので、その怖さ、痛みは何度も経験しました。

ですからメーカーはサプライヤーに対して「100%良品納入」を要求します。

一方ロットの数が多い場合、全部の部品を検査(全数検査)するのは、コストや手間がかかりすぎます。

そこで抜取で検査(抜取検査)します。

しかし抜取検査は100%良品を保証できません。

例えば1,000個ロットの製品から、10個抜き取って検査した場合、

例え不良ゼロのみを合格としても、1,000個の中の不良がサンプルに必ず入っているとは限りません。

抜取検査

抜取検査

ロット1,000個の中に不良が10個あった場合、9.4%の確率でサンプルの不良がゼロになり合格となってしまいます。

これは品質管理の基礎ですが、意外と理解していない現場の人もいます。

品証の時に不良品を納入したサプライヤーの方が、

「ちゃんと検査したんで不良品のはずはない」と言うので

「どうやって検査したんですか?」と聞いたら

「抜取検査」という答えでした。

つまり100%良品を求めるのであれば

  • 抜取検査でも不良品が出ないように工程能力を高める
  • 全数検査する

のいずれかです。

全数検査はそれなりにコストがかかるため、抜取検査で品質が保証できるようにするためには、

  • サプライヤーが要求(公差)に対して、十分な工程能力を持つ
  • 十分な工程能力が維持できるように、機能上重要でない個所は厳しすぎる要求をしない

この2つのバランスを取る必要があります。
 

寸法公差や幾何公差で規定されている箇所は、十分な工程能力になるように現場が努力しなければなりません。

一方キズや色ムラなどは、厳しすぎると全数検査しか品質を保証できなくなります。

以下に述べる事例には、こういった背景があります。
 

全数検査追加

 
 

全数の検査の追加が顧客の要望であれば、検査費用は見積に追加できます。

しかし自社が不良品を納入してしまい、対策として全数検査を行えば費用は自社の負担になります。

検査費用は製造原価を増加させ利益を圧迫します。

従ってできるだけ早く再発防止を行って、不良品が出ないようにして全数検査の中止を顧客にお願いしたいところです。

では、全数検査の追加は製造原価をどれだけ増加させるのでしょうか?
 

実際のコストアップの例

 

架空の樹脂成形加工B社とプレス加工C社で全数検査の追加によるコストアップを計算します。
 

樹脂成形加工B社

B社の樹脂製品B2製品で顧客から外観のキズ不良を指摘されました。そこで全数検査でキズのある製品を取り除きました。

検査時間は8秒/個で、検査はパート社員に行いました。

B2製品の製造条件と費用
ロット8,000個として
製品1個の段取時間 0.000125時間 (0.45秒)
製品1個の加工時間 0.0083時間 (30秒)
製品1個の検査時間 0.0022時間 (8秒)
製品1個当たりの抜取検査の時間 0.0000022時間 (0.008秒)

抜取検査は、ロット8,000個に対し、8個を抜き取ります。従って8,000個の製品1個当たりの検査時間は、
8秒×8個÷8,000個=0.008秒
になります。

段取のアワーレート 4,350円/時間
加工のアワーレート 1,500円/時間
検査のアワーレート 2,800円/時間

段取は作業者が設備を停止して行うため、人と設備の費用が発生するため、アワーレートは高くなります。

加工は設備が自動で行い、作業者は別の作業を行うため、アワーレートは低くなります。

これらのアワーレートは、B社の間接部門の人件費や工場の間接費部門の費用も入ります。

そのため検査は、作業者の人件費のみであればアワーレートは1,850円/時間でしたが、間接費用が加わるため、2,800円/時間になりました。

この時の製造費用と検査費用を表1に示します。

表1 製造費用と検査費用

時間 (時間) アワーレート (円/時間) 費用 (円)
段取 0.000125 4,350 0.54
加工 0.0083 1,500 12.45
検査(全数) 0.0022 2,800 6.16
検査(抜取) 0.0000022 0.0006

従って段取費用と加工費用を足した製造費用は
製造費用=0.54+12.45=13.0 円

抜取検査費用は極めて小さいので無視できます。

全数検査の場合の製造費用は

製造費用=0.54+12.45+6.16=19.2円

B2製品の
材料費35円
受注金額が57円
製造原価に対する販管費の比率 13%

この場合の全数検査と抜取検査の利益を表2に示します。

表2 B2製品 全数検査と抜取検査の利益     単位 円

製造費用 製造原価 販管費 利益
抜取検査 13.0 48.0 6.2 2.8
全数検査 19.2 54.2 7.1 ▲4.3

全数検査を追加したために、それまで2.8円利益があった製品が、4.3円の赤字になってしまいました。

B2製品は、加工は設備が自動で加工するため、人の費用がかからないのでアワーレートは1,500円/時間です。

これに対して検査は人が行うため、アワーレートは2,800円と加工よりも高くなります。

その結果、全数検査8秒が追加されたため製造原価は大きく増加しました。

現実にはどのような製品も細かく見ればキズは必ずあります。

従って最初に受注条件を決める際にキズについて、許容できる限度を決めておきます。もし条件が非常に厳しければ、全数検査や歩留の悪化は避けられません。その場合は、その分も原価に入れておきます。(その価格が通るかどうかという問題はありますが)

そうしておかないと量産が始まってから「キズがあるものは不良だから受け入れられない」と不利な条件を押し付けられ、全数検査や歩留の悪化により、赤字になってしまいます。
 

プレス加工C社

同様にプレス加工C社のプレス製品C2製品で、全数検査追加によるコストアップを検討します。

プレス加工は、加工中に微小なバリが脱落して金型と製品に挟まれキズや打痕が発生します。こういった小さなキズや打痕を完全になくすのは難しくプレス加工では悩みの種です。

そこで全数検査でキズのある製品を除外した場合のコストアップを計算します。
検査はパート社員がプレス機の横で短時間に行い、検査時間は2秒/個です。

C2製品の製造条件と費用
ロット8,000個として
製品1個の段取時間 0.0000625時間 (0.225秒)
製品1個の加工時間 0.00028時間 (1秒)
製品1個の検査時間 0.00056時間 (2秒)
製品1個当たりの抜取検査の時間 0.00000056時間 (0.002秒)

段取のアワーレート 5,350円/時間
加工のアワーレート 2,500円/時間
検査のアワーレート 2,800円/時間

段取は作業者が設備を停止して行うため、人と設備の費用が発生するため、アワーレートは高くなります。

C社のプレス機は順送プレスなので加工は自動で行うため、アワーレートは低くなります。

これらのアワーレートは、C社の間接部門の人件費や工場の間接費部門の費用も入ります。

検査のアワーレートは、2,800円/時間です。

この時の製造費用と検査費用を表3に示します。

表3 製造費用と検査費用

時間 (時間) アワーレート (円/時間) 費用 (円)
段取 0.0000625 5,350 0.33
加工 0.00028 2,500 0.7
検査(全数) 0.00056 2,800 1.57
検査(抜取) 0.00000056 0.00157

従って段取費用と加工費用を足した製造費用は
製造費用=0.33+0.7=1.0 円

抜取検査費用は極めて小さいので無視できます。

全数検査の場合の製造費用は
製造費用=0.33+0.7+1.57=2.6円

C2製品の
材料費30円
受注金額が37円
製造原価に対する販管費の比率 13%

この場合の全数検査と抜取検査の利益を表4に示します。

表2 B2製品 全数検査と抜取検査の利益     単位 円

製造費用 製造原価 販管費 利益
抜取検査 1.0 31.0 4.0 1.6
全数検査 2.6 32.6 4.2 0.2

全数検査を追加したため、1.6円あった利益が0.23円になってしまいました。

この例は、検査時間が2秒と短時間だったため赤字にはなりませんでした。

しかしプレス加工は、他の加工方法と比べて加工時間が短いため、全数検査の追加は他の加工方法よりも顕著に原価に影響します。
 

面倒でも事前に取り決めを行う

 

ミクロの視点では、どんな製品も誤差がゼロではありません。

そのため寸法や形状は、図面に公差を入れて許容できるばらつきを決めています。

同様にキズや色など外観品質もばらつきがあります。

従って、許容できるキズや色のばらつきなども、事前に顧客と取り決めが必要です。

ばらつきの範囲が狭ければ、全数検査や選別が必要になり、コストが上昇します。その分を見積に反映しなければなりません。

事前に取り決めがないと、キズや色などが問題になった時

「キズや色違いは不良だから、受け入れられない」

と発注側に都合の良い論理で押し切られてしまいます。

逆に発注する立場の場合、サプライヤーへの要求が過剰なものになっていないか、注意が必要です。

「顧客からクレームが来ると不安だから」と何でもサプライヤーに要求すれば、結果的にコストの高いものになってしまいます。

かつて、品証として自社の設計とサプライヤーの間に入って調整した時、こういったことはとても多かったです。
 

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https://ilink-corp.co.jp/7047.html/feed 0
【実務における原価の疑問】 25 間接費を配賦しない直接原価計算ではだめなのか? ~管理会計と個別原価の関係~ https://ilink-corp.co.jp/6397.html https://ilink-corp.co.jp/6397.html#respond Wed, 07 Apr 2021 02:13:10 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=6397 個別原価の計算は、製品1個あたりの材料費、外注費、労務費など直接製造費用を計算し、これにその他経費や販管費などを加えて計算します。
その際、その他経費など間接費用は、どの製品にどのくらいかかったのか正確にはわからない費用です。
そこで何らかのルールを決めて、製品1個あたりの金額を計算します。
 

固定費の分配の問題

これらの費用の大半は生産してもしなくても発生する固定費です。
固定費を個別原価に割り振る「固定費の配賦」(配賦は会計の専門用語なので、以降は一般的な分配を使用します。)は原価計算の大きな課題です。
 

原価計算の専門書では、固定費の配賦基準として、例えば、調達部門の費用は資材の調達回数、生産管理費用は生産計画回数、検査費用は検査回数で分配する例が書かれています。
実際に「個別原価計算の事例1 『原価計算基準』に則った個別原価計算との比較」では、この方法で個別原価を計算してみました。
 

しかしこの方法は複雑で中小企業が行うのは困難です。
「利益まっくす」では、「直接製造費用に比例」「稼働時間に比例」の二つの方法で分配します。
 

そもそも固定費とはどのような費用なのでしょうか?
 

長期的には全て変動費

固定費と変動費の違いは

  • 変動費 生産量に比例して増加する費用
  • 固定費 生産量に関係なくかかる費用

 

つまり固定費は生産量が減少しても減らすことができない費用です。
 

1か月以内で考えれば、材料費、外注費以外の費用は生産量が減少しても減らすことができません。派遣社員も大抵は3か月単位で契約するため、1か月では固定費です。
しかし長い期間で考えれば、こういった費用も変動費になります。
建物や設備の固定費も、売上の低迷が長期化すれば、小さな工場へ移転したり設備を売却したりします。
つまり固定費か、変動費かは、図1に示すように期間をどのくらいに考えるかにより、変わります。
 

図1 期間の違いによる固定費と変動費

図1 期間の違いによる固定費と変動費


 

変動費の固定費化

逆に変動費が固定費化することもあります。
 

例えば、原料を調達する際に価格を下げるために、一定期間一定量を購入する契約をすれば、生産量が減少しても購入量を減らすことができず、変動費のはずの材料費が固定費化します。
 

あるいは、増産のため規模の小さな外注先に大量に発注を続けた結果、その外注先はその会社からの仕事で手一杯になり他の会社の仕事が受けられなくなります。そうなると生産量が減少しても外注へ発注を止めることができなくなります。止めればその外注先が倒れてしまうからです。時には自社工場の生産よりも外注への発注を優先することにもなります。
その結果、外注化して固定費を増やさずに増産できるようにしたはずが、社外に固定費的な外注先を抱える結果になり、変動費であるはずの外注費が固定費化します。
 

固定費は少ないほど良い?

このように固定費が多いと生産量が減少した時に、赤字が大きくなるため、固定費は少ない方が生産量の減少に強くなり経営は安定します。
 

では固定費は少なければ少ない方が良いのでしょうか?
 

固定費は付加価値の源泉

固定費の中身は、建物、設備、社員などです。
これは工場そのものであり、この固定費が付加価値を生みだします。
つまり固定費が低ければ生み出す付加価値も低く、利益率も低下します。製造原価の固定費がゼロになれば、その工場は自社では新たな付加価値を全く加えない商社や卸の形態になります。その場合、利益率も商社や卸と同等になります。
 

一方現状の固定費(建物、設備、人員)ではどこかで生産量の上限に達し、それ以上売上を増やすことはできなくなります。
そこでさらに生産量を増やすためには固定費を増やして、つまり人や設備に投資をしなければなりません。この場合固定費は生産量の応じて増やすことはできず、段階的に増加します。人は人数単位で増加し、設備は1台単位で増加します。そして固定費を増やした直後、すぐに生産量が増加しなければ、その間は利益が減少、あるいは赤字になります。
この関係を図2と表1に示します。
 

図2 固定費の増加と利益の関係

図2 固定費の増加と利益の関係


 

表1 固定費の増加と利益の関係   単位 万円

現状 設備投資後予測
売上 76,000 100,000
変動費 35,000 46,000
変動費比率 46% 46%
固定製造原価 29,000 34,000
販管費 9,000 9,000
営業利益 3,000 11,000
限界利益 41,000 54,000
限界利益率 54% 54%

 

架空のA社の設備投資の結果

図2は、架空のA社の損益分岐点線図(CVP線図)です。
 

A社は現状の固定費は固定製造原価が2億89万円、販管費が9千万円の合計3億8千万円でした。変動費は3億5千万円で、売上7億6千万円、利益は3千万円でした。現在は設備と人はフル稼働でこれ以上生産量を増やすことはできません。
 

そこで人や設備に合計1億円を投資しました。これにより生産能力は増大し、売上高は最大10億円に達する見込みです。売上高10億円の時、9千万円の利益になります。
一方設備投資直後は固定費の増加に見合った売上が得られず赤字になります。
また損益分岐点売上高は、設備投資前の7億円から9億3千万円に増加します。従って利益を出すためには売上は9億3千万円以上にします。
 

製造業は固定費の管理が重要

従って製造業は、設備投資の意思決定は非常に重要です。
 

加えて設備投資した後は、設備と人の稼働率を管理し、常にフル稼働するようにします。
 

つまり設備投資した後は、その固定費で利益を最大化するようにします。
設備や人の稼働率を高めて稼ぐ時間を増やします。
 

実は工場の利益を増やす方法は

  • 稼働率を最大化する
  • 1個当たりの製造時間を短縮する
  • 材料費を削減する
  • 高く受注する

の4点しかありません。この中で稼働率は原価に大きな影響があるため重要な指標です。
 

部門別の固定費の管理

大企業が固定費の分配を行うのは、部門別に予算管理を行うためでもあります。
大企業は様々な事業部、工場、部門があります。部門ごとに予算管理をしなければ、費用のコントロールが適切にできません。図3に部門別の予算管理の例を示します。
 

図3の例は、複数の事業部があり、各事業部には複数の工場があります。
各工場には製造部など直接製造を行う直接部門と、品証部、生産管理部などの間接部門があります。この場合、本社共通費の一定額が各事業部に分配されます。そして本社共通費の一部と、事業部共通費の一定額が各工場に分配されます。
各工場の製造部門は、これら本社や事業部の共通費と、工場の間接部門費用の一部を負担した上で、一定の利益を出さなければなりません。この条件を元に各部門の予算が立てられます。
 

これに対して中小企業では事業部や部門は少なく、工場全体で予算管理すれば十分です。従って大抵の企業では部門別予算管理は不要です。
 

図3 部門別予算管理

図3 部門別予算管理


 

ただし中小企業でも複数の事業があり、収益構造も異なる場合は、事業部毎に予算管理をした方が便利です。
例えば製品の種類や市場が全く違う、生み出す付加価値も大きく違う場合です。
事業部毎に予算管理をする(個別原価や利益管理も異なる)場合は、材料費、外注費、その他経費などの費用を事業部別に仕分けし集計すれば、その後の計算が楽になります。
 

実は固定費は「変動費」として計算されている

間接製造費用を直接製造費用に比例して分配する場合、個別原価は以下の式で計算します。
 


 

直接製造費用は製造時間に比例して増えるため変動費です。
間接製造費用も直接製造費用に比例して計算するため、変動費です。販管費も同様に変動費です。
間接製造費用や販管費は生産量が増えても変わらない固定費のはずです。
これはどういうことでしょうか。
 

これは以下のように考えます。
 

例えば、ある会社は様々な製品を生産しています。ある製品の生産量が減少すれば、その製品が負担している固定費が減少します。そこで工場の稼働率を維持するために新たに別の製品を受注します。
図4のように工場の1か月に固定費は決まっているため、これを埋めるように努力します。もし全て埋まらなければその月の固定費を全て賄うことができず、その月は赤字になります。
従って個別原価を計算する際は、必要な受注量は確保できているという前提です。一方工場全体で考えれば、受注が不足すれば固定費を賄えず赤字になります。
 

つまり

  • 個別原価では、全ての費用は変動費
  • 工場全体では固定費と変動費は異なる

ということになります。
 

しかし製品の種類が少なく、ある製品の受注が減少しても他の製品の受注でカバーできない場合は、その節品の固定費の負担が増えて、その製品が赤字になります。例えば1種類の製品しか製造していなければ、固定費はその製品しか負担しないため、生産量が減少すれば固定費の割合が増え、製品1個当たりの利益が減少します。
 

図4 固定費の変動費化

図4 固定費の変動費化


 

固定費を分配しない管理会計

これまで見てきたように固定費の分配には正解がありません。そのため、固定費を分配した結果の個別原価も「これが正しい」と言えるものがありません。
 

いっそ固定費を分配しなければ、そのような問題は起きません。
そこで固定費を分配せず、変動費のみで原価を計算するのが管理会計で使われる原価計算「直接原価計算」です。
直接原価計算では、製造原価は変動製造原価と固定製造原価に分け、それ以上は細かく計算しません。表2にA社の決算書を全部原価計算と直接原価計算で比較したものを示します。
 

表2 全部原価計算と直接原価計算の比較
(1) 全部原価計算      単位 万円    

売上高 76,000
製造原価
材料費 33,500
外注費 1,500
労務費 23,000
その他費用 6,000
製造原価合計 64,000
売上総利益 12,000
販管費 9,000
営業利益 3,000

 

(2) 直接原価計算   単位 万円

売上高 76,000
変動費
材料費 33,500
外注費 1,500
変動費合計 35,000
変動利益 41,000
固定費合計 38,000
営業利益 3,000

 

直接原価計算は、全部原価計算の製造原価を変動費と固定費に分け、製造原価の固定費と販管費を合計したものが固定費となります。売上高から変動費を引いたものが変動利益は限界利益(marginal profit)とも呼ばれます。
限界利益は、売上が1単位増えることで増える利益を示し、次の式で表されます。
 

限界利益=売上高-変動費
限界利益=固定費+営業利益
 

限界利益とよく似た言葉に貢献利益があります。これは限界利益から製造に直接関与する固定費を引いたものです。
貢献利益 = 売上高 - 変動費 - 直接固定費
 

限界利益総額を管理

利益を最大化するには、限界利益を増やすことです。限界利益総額が固定費を上回れば利益が出ます。
逆に価格を下げても受注量が増えれば、限界利益総額は高くなります。極端な場合、赤字で受注しても良いです。
 

赤字でも受注量を確保

A社は先期の限界利益は4億1千万円でした。今期利益を増やすにはそれ以上の限界利益を上げなければなりません。
もし見積価格では受注できないが値下げすれば受注できれば、値下げして受注します。値下げしても限界利益があれば固定費が回収できるからです。
 

図5でA1製品100個ロットは
見積金額1,600円
100個ロットの限界利益合計129,000円
でした。しかし競争が厳しいため1,400円に値下げして何とか受注しました。それでも
限界利益合計109,000円
それだけの固定費が回収できます。
 

図5 限界利益と固定費の回収

図5 限界利益と固定費の回収


 

最終的に限界利益合計が固定費を上回れば黒字になります。この限界利益はどの製品から取ってもよいです。売上高の大きい製品は赤字でも限界利益が大きいため、限界利益総額の増加に貢献します。
 

ただし小売業や卸、商社の場合、販売量を大幅に増加することは可能ですが、製造業の場合、現在の固定費で生産能力は決まってしまうため、やみくもに価格を下げても限界利益総額ら達するまでの生産量が得られません。
(生産能力を超えた分は外注化することでカバーできますが、その場合変動費率が悪化して、限界利益率も悪化します。)
 

限界利益増額のコントロールの例

限界利益総額をコントロールして積極的に受注する具体例を、個別原価と直接原価計算で比較したものを図6に示します。
 

図6 限界利益率と見積金額

図6 限界利益率と見積金額


 

A1製品は従来の原価計算では、
材料費 310円
製造費用 1,020円
販管費 140円
目標利益 150円
見積金額 1,620円
でした。
 

顧客と交渉した結果、1,600円で受注しました。この時
変動費 310円
限界利益 1,290円
限界利益率 80%でした。
 

変動費比率が異なる問題

直接原価計算の場合、変動費と限界利益から見積金額を決定します。
A1製品は、限界利益率80%なので、変動費を0.2で割れば見積金額が計算できます。
 

しかしどの製品も変動費比率80%とは限りません。例えば図6のA2製品は
見積金額は同じ1,620円
材料費900円
変動費比率56%
でした。
 

もしA1製品と同じ限界利益率で見積金額を計算すれば、
A2製品4,500円
になってしまいます。
直接原価計算は全体の利益管理には使えますが、個別原価の見積計算にはこのような問題があります。
 

自社で値段が決められない製品

実は製造業の製品には自社が値段を決められない製品もあります。
例えば、スーパーなどで売られている商品は、価格は市場価格で決まります。原価が高いからと言ってメーカーが競合よりも高い価格をつければ当然ですが売れません。また家電製品は小売店が価格を決定するためメーカー希望価格の表示のないオープン価格です。
 

こういった製品では、利益管理に直接原価計算が使えます。
図7にこの例を示します。
 

図7 価格が市場で決まる場合

図7 価格が市場で決まる場合


 

原価構成はA1製品と同じです。
市場価格の下落により受注金額は
9月1,600円、
10月以降1,500円
になりました。
 

価格が先に決まるため、利益を増やすには販売量を拡大します。価格を下げて販売量が大きく増えれば、製品1個の利益は減少しても限界利益総額は増えます。
 

なお図5は限界利益でなく、貢献利益になっています。
 

貢献利益=限界利益-製造に直接かかわる固定費 (直接固定費)
直接固定費=直接作業者製造時間×アワーレート(人)
 

直接固定費は、現場が改善を行って製造時間を短縮すれば少なくなります。つまり変動費と直接固定費を管理することで、原価低減を見える形にできます。
 

限界利益だけでは、どこまで下げればいいのかわからない

価格が市場価格で決まり、価格を下げれば売上が増える場合、価格を下げても販売量を増やした方が全体の利益は増えます。そこで製品毎の限界利益を計算し、会社全体の限界利益総額を増やすように価格と販売量をコントロールします。この限界利益は固定費の分配がないので、固定費の分配方法に悩むこともありません。
 

今期スタートした時点で固定費は決まっています。利益を増やすには固定費の総額に対しそれ以上の限界利益総額が必要です。
そこで毎月の限界利益総額が目標をクリヤするように管理します。
 

しかし変動費比率が変われば限界利益率も変わってしまうため、限界利益率だけでは適切な見積価格がわかりません。表4、図8に変動費比率が変わった場合の限界利益率の違いを示します。
 

表4 変動費比率が変わった場合の限界利益率の違い

変動費
(円)
変動費比
率 (%)
固定費
(円)
利益
(円)
営業利益
率(%)
限界利益
(円)
限界利益
率(%)
100 9 900 100 9 1000 91
300 27 700 100 9 800 73
500 45 500 100 9 600 55
700 64 300 100 9 400 36
900 82 100 100 9 200 18

 

図8 変動費比率と限界利益率

図8 変動費比率と限界利益率


 

この製品は
受注金額 1,100円
営業利益 100円
売上高営業利益率 9%
でした。
 

表4の各行はどれも受注金額1,100円、利益100円です。
 

しかし変動費と固定費の比率が異なり、変動費比率が大きくなれば限界利益率が小さくなります。
限界利益のみで受注する場合は、営業利益率の目標値から変動費比率に応じた限界利益率の目標値を決めます。そして値下げの際は限界利益率をどこまで下げるか決めます。そうしておかないと限界利益率の目標値50%だけでは、どこまで下げれば赤字かわからないからです。これでは顧客との厳しい価格交渉で押し切られてしまいます。
 

図9に個別原価と限界利益の比較を示します。
 

図9 個別原価と限界利益の比較

図9 個別原価と限界利益の比較


 

受注が少なく赤字になる可能性が高い時、値下げしても受注したいのは限界利益額の大きい製品です。その分固定費の無回収が大きいからです。
ただし顧客と継続的な取引がある場合、一時的な値下げにとどまらず、その後もずっと値下げさせられる可能性があるため慎重に行います。
 

製品のタイプで変わる

個別原価を限界利益で管理するのか、従来の営業利益で管理するか
 

これは、
価格が市場で決まるものなのか、
見積で都度決まるものか、
価格を下げれば受注量が増えるのか
このタイプにより変わります。
 

表3に製品のタイプと個別原価の管理を示しました。
 

表3 製品のタイプと個別原価の管理 

価格決定 価格弾力性
(価格を下げれば)
管理指標 事例
1 市場価格 下げても
増えない
コストダウン
(新規開拓)
販路が限定される
汎用部品
顧客が大企業の
消耗部品等
2 市場価格 下げれば
増える
限界利益合計
(コストダウン)
消費者向け製品
BtoB汎用製品
3 見積価格 下げれば
増える
個別利益
+工場稼働率
(コストダウン)
多くの会社で
できる受注部品
自社の顧客が
多い場合
4 見積価格 下げても
増えない
個別原価+
価格交渉
(新規開拓)
顧客仕様に
よる受注生産

 

1. 価格は市場価格で決まり価格を下げても販売量は増えない

  • B to Bで他社も製造している部品・製品で販路が限定されている場合
  • 大企業の顧客が購入する消耗品や小物加工品など

が該当します。
 

様々な調達ルートがあり価格が広く知られているため価格は市場で決まります。
その価格で利益が出るように生産する必要があります。
しかも販路が限定されているため、市場よりも安い価格にしても販売量が大きく増えるわけではありません。
 

こういった製品の場合、市場価格でも利益が出るように、コストダウンを優先します。
また販路が限られているとリスクが高いため、販路開拓に取り組みます。
 

2. 価格は市場価格で決まり価格を下げれば販売量は増える

1.と同じB to Bの部品・製品より汎用的なもので多くの競合がいる場合や一般消費者向けの製品などです。
市場価格が存在し、価格を下げれば販売量が増加します。
価格により販売量が大きく変わるため、緻密に見積価格を計算するよりも、限界利益総額を管理します。
販売量が少なければ、価格を下げれば販売量が増えて全体の利益が増えます。小売業などはこの条件になります。
 

3.見積価格で受注し価格を下げれば販売が増える

個別受注製品・部品で多くの会社が製造できる製品・部品は、他社との価格競争になります。
正確な見積が利益に大きく影響するため、見積の精度を高めるようにします。受注量の管理は限界利益総額よりも、工場の稼働率や月間の売上で管理します。
 

4.見積価格で受注し価格を下げても販売は増えない

顧客の仕様による受注生産がこのタイプになります。
見積の精度を高めるとともに、希望の見積価格で受注できるような価格交渉が重要です。
また取引先が限られていると高いリスクがあるので新規開拓を行います。
 

このように中小企業の個別原価計算で必要なことは、業界や商品の特性によって変わります。
自社で価格を決められず生産量の変動も大きい場合、見積作成に労をかけるよりも、販売量の増加と原価低減に力をかけた方が得策です。
 

一方顧客から個別に引き合いがあってその都度見積をつくる企業の場合は、原価計算を元にした精度の高い見積と、見積金額で生産することが重要です。加えて工場全体の稼働率維持に努めます。そこで工場全体の変動費と固定費を管理すればよいです。
 

製品種類が少なく生産量が増えれば固定費の負担が減少し原価も下がる場合、価格を下げれば販売利用が増えるのであれば、利益を最大化する価格を探します。この場合、個別製品の変動費と固定費も必要です。
 

原価計算のものさしを固定する

ここで個別原価計算に使用する稼働率は、前年の稼働率を参考に1年間固定します。アワーレートも1年間同じ値です
理由は、アワーレートは見積の基準となる数字であり、稼働率に合わせてアワーレートが変わるとその見積が高いのか安いのかわからなくなるからです。
 

実際は、現場の稼働率は常に変化します。
暇で稼働率が低い時もあれば、多忙で稼働率が高い時もあります。その日その日で考えれば、稼働率は時々刻々変わり、原価も時々刻々変わっています。
そうなると、どの原価が正しいのでしょうか。
 

図10 稼働率の変化

図10 稼働率の変化


 

この問題は原価を使用する目的で変わります。
会計上での正確な製造原価を計算するためであれば、その時点の稼働率から原価を計算しなければなりません。
適切な見積の作成と実績原価の把握のためであれば、アワーレートが常に変化するのは好ましくありません。
あるいは工場の稼働率が低ければ価格を下げて受注を増やし、稼働率が高ければ価格を上げる会社もあります。その結果アワーレートも大きく変動します。
 

これはどう考えたらよいでしょうか。
 

財務会計と個別原価計算

財務会計の原価計算の目的は、利益の適切な計算です。この利益は会社全体の利益で、それは四半期、月次で変動します。
これに対し見積作成と実績原価の把握のための管理目的の個別原価は、アワーレートが変動していては何が正しいのかわかりません。
 

従って管理目的の個別原価と財務会計の原価計算とは相いれない部分があります。
 

この関係を図11 財務会計と個別原価に示します。
 

図11 見積・工場管理の原価計算と財務会計の原価計算

図11 見積・工場管理の原価計算と財務会計の原価計算


 

財務会計は年間の売上、費用、利益の計算で、これは決算書に表されます。これはどの会社も会計事務所や税理士が行っています。大企業は、これをさらに四半期、月次に細分化し、そこから部門別に展開して予算管理などに活用しています。この場合、アワーレートは月次で変動します。
 

個別原価は製品毎に原価、利益を計算し、見積金額を算出します。これは適切な見積の作成に活用されます。さらに個別原価から実績原価を算出し、実績原価から現場の問題点を見つけ改善活動を行います。
個別原価はアワーレートは年間で固定します。アワーレートは個別原価のものさしのため、ものさしが変動しては何が正しいのかわからなくなるからです。
市場で価格が決まる製品は、見積よりも限界利益額から固定費の回収を管理します。
 

このように財務会計と個別原価は目的が異なるため、これを統合するには大きな労力がかかります。そこで中小企業は財務会計と個別原価の整合を取るよりも、適切な見積を基にその価格で受注できるように顧客と交渉したり、見積価格で製造できるように現場の改善に力を注ぐべきと考えます。
財務会計は従来通り顧問税理士や会計事務所に任せて、大企業のような四半期や月次の決算を無理に行わず、個別原価は財務会計と分けることをお勧めします。
 

原価計算は細かくやればやるほど多くの数字が集まってきます。その数字をどう加工すれば、原価計算に使えるかといった手法も多くあります。
しかし出てきた数値を受注の増加や生産プロセスの改善に活用しなければ効果はありません。
マンパワーの限られる中小企業は多くのことに手をかけられません。
「一度はお金を数えなければならない。しかし2回以上数えてもお金は増えない」
お金を数えることに手をかけすぎないように注意します。
 

こういった製造業の原価計算の考え方と見積、損失の見える化については下記リンクを参照願います。

 

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https://ilink-corp.co.jp/6397.html/feed 0
【実務における原価の疑問】 23 不良による損失 https://ilink-corp.co.jp/6232.html https://ilink-corp.co.jp/6232.html#respond Wed, 13 Jan 2021 01:12:03 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=6232 トヨタ生産方式では、不良は最大のムダと言われています。

当たり前ですが、使えないものを生産していてはとても利益は出ません。
 

そこで不良を減らすために現場は常に努力をしているのですが、現実には不良が発生します。
 

その不良の原因には様々なものがあります。

例えば

  • 作業者のミス
  • 製造工程の能力不足
  • 元々顧客の要求に無理があった

等があります。
 

ではどのくらいの損失が発生しているのでしょうか?

問題の深刻さを理解し、早急に対策するために、不良を不良率でなく、損失金額に換算することはとても効果があります。

ここでは不良による損失金額の計算について述べます。
 

大量生産と多品種少量生産の不良

 
大量生産と多品種少量生産では、不良に対する考え方が違います。

【大量生産の不良】

大量生産は「不良があること」が前提です。
 

なぜなら、大量生産では不良が発生することは避けられないからです。現代の工場は品質がとても高くなっていますが、それでも不良がゼロではありません。

品質が世界中で評価されている自動車も、最終検査で不合格となった車があります。そうなった車は生産ラインから外れて修正します。

従って大量生産では、不良品が一定量発生するため不良コストを製造原価に組み込みます。ただし不良率が何ppmなど非常に小さくなれば、損失金額は無視できます。
 

例えば、ある部品メーカーがある部品を受注価格65円で月産30,000個受注しました。

部品の製造原価50円、販管費10円、営業利益は5円 (15万円/月) の場合
 

不良率0.2%の場合

不良60個

不良品は廃棄する場合

不良による損失金額=60×50=3,000円

真の利益は

真の利益=150,000-3,000=147,000 円
 

損失金額も含めた部品1個の真の製造原価は

真の製造原価=(1+0.002)×50=50.1 円

となります。部品1個の利益は4.9円です。
 

不良率2%の場合

製造工程に問題が発生し不良率が0.2%から2%に上昇しました。

その結果不良数は

不良600個

不良による損失金額=600×50=30,000円

真の利益=150,000-30,000=120,000 円

真の製造原価=(1+0.02)×50=51 円

となります。
 

従って部品1個の利益は5円マイナス1円で4円

つまり営業利益が20%マイナスします。
 

この不良率と損失金額、利益を下表に示します。
 

不良率と損失金額     単位 円

不良率 不良数 損失金額/月 不良込原価 利益
0% 0 0 50.0 5
0.2% 60 3,000 50.1 4.9
2% 600 30,000 51.0 4

 

不良率が0.2から2%と10倍になれば、担当者は当然対策をするはずです。

しかし時には対策が中々うまく行かない時があります。いつまでも生産を止めるわけにもいかず、不良対策を行いつつ、生産を優先せざるを得ない時もあります。

本来は解決できるまで生産を再開すべきでないかもしれません。

しかし下請けの部品メーカーの場合、不良の原因が元々部品の設計や仕様に問題がある場合もあり、そのような場合は製造で頑張っても解決できない時もあります。そのためやむなく高い不良率で生産を行うときもあります。

しかしこれでは毎月15万円の利益のはずが、3万円マイナスして12万円になってしまいます。そして、生産をしていると現場はいつしか2%の不良に慣れてきます。

そうならないためには不良を損失金額(万円)で表し、問題が深刻であることを関係者で共有します。

そして当面は高い不良率で生産していても、日程を決めて計画的に解決に取り組みます。
 

【多品種少量生産の不良】

一方多品種少量生産は生産数が少なく「不良はない前提」です。

そこで不良が発生すれば、不良は大きな損失になります。

しかし多品種少量生産でも人のミスは起きます。他にも様々な理由で不良は頻繁ではないけど発生します。

そこでこれを放置せず、確実に対策するためには、大量生産と同様に不良の損失金額を計算し不良の影響を金額で表します。

多品種少量生産でも、本当は「不良が発生した時点で直ちに対策すべき」ですが、納期に追われていると、現場は不良品を手直しして、とにかく納期に間に合わせることを優先します。(決して良いことではありませんが…)

そして出荷すると、つい不良の対策がなおざりになってしまいます。これを不良を放置しないために不良損失を金額で評価します。
 

不良品の種類とその対処

 

不良が発生した場合、その対処は、不良品がそのまま使える場合と、修正して使用する場合、再作成する場合の3つがあります。

下図に不良品の対処の分類を示します。
 

図1 不良品の対処の種類

図1 不良品の対処の種類


 

不良品がそのまま使える場合

軽微な不良は顧客にお願いしてそのまま納入することもあります。軽微な不良で機能に影響がなければ、顧客は納期を優先して、そのまま納入して使用します。

その場合、顧客は文書で「特別採用 (特採) 」を申請するように求めることもあります。不良品をそのまま納入する場合でも特採の申請や顧客との打合せにかかった時間は自社にとって損失コストです。これも金額を記録します。
 

不良品を修正して使える場合

不良品を修正して使える場合、会社によっては修正のために新たに製造指図書を発行します。新たに発行された製造指図書に記録された工数が損失金額になります。

新たに製造指図書を発行しない場合、修正にかかった時間を現在の製造指図書に記録しておき、後日集計します。
 

不良品が使えない場合

不良品が使えない場合、以下の対処を行います。
 

納入数を減らす

不良の数分、納入数を減らします。

この場合は完成数が減るため実質の製造費用は増加します。この時、損失金額を計算する際、使えない製品を廃棄する場合と、材料を再利用する場合があります。
 

《材料を再利用できる場合》
例えば樹脂の射出成形は不良品を粉砕して再利用できます。その場合は不良による損失は不良品の製造費用のみです。
 

《材料を再利用できない場合》

材料が再利用できない場合、損失金額はそれまでの製造費用と材料費です。
 

再作成する

再作成する際に製造指図書を発行した場合は製造指図書に再作成にかかった材料費や工数が記録されます。そのためそれを集計すれば損失金額がわかります。

製造指図書を発行しない場合は再作成のためにかかった工数と材料費を現在の製造指図書や日報に記録します。
 

修正にかかる費用

 

不良品の修正にかかる費用は、どの工程で修正するかによって変わります。下図に不良の発覚時点と修正、再作成費用の例を示します。
 

図2 製造工程と不良

図2 製造工程と不良


 

この図では

  1. 工程1で2個不良が発生、再度工程1を通して修正
  2. 工程2で1個不良が発生、製造指図書を発行して再作成
  3. 出荷検査で2個不良が発生、別工程3(平面研削)で修正して使用

の3つの場合がありました。
 

1. 工程途中で発覚、修正

A1製品100個を生産する過程で、工程1終了後、工程内検査で2個の不良が見つかりました。そこでこの2個を工程1の加工を再度行って修正しました。
 

製造指図書に工程1の実績数は102個と記録し理由として「2個NGのため再度工程1を通過」と記入します。

不良の発生が工程1の途中であれば、途中までの時間が損失金額になりますが、実際は工程の途中で不良となるケースは少なく不良の発生時点まで記録するのは大変なので、工程1の不良は全て工程1が完了したものとします。
 

2. 工程途中で発覚、再作成

工程2の工程内検査で1個不良が見つかりました、修正できないため再作成しました。新たに製造指図書が発行され、再作成の材料費、製造費用を記録します。損失金額は廃棄された1個の材料費と工程1から工程2までの製造費用です。
 

原価計算の本では「廃棄する場合、スクラップとして価値があれば金額分相殺する」と書いてありますが、大きな金額でなければ無視しても構いません。 

3. 最終検査で発覚、別工程で修正

また最終検査で1個不良が見つかり、別工程で修正しました。修正は従来の製造工程とは異なる工程(工程3)で行い、そのために製造指図書を発行しました。
 

実際の不良損失の計算

 

実際の不良の損失金額の計算を、架空の機械加工A社、樹脂成形加工B社、プレス加工C社について具体的な数値を入れて計算します。
 

廃棄する場合

A社はマシニングセンタ、NC旋盤など工作機械で金属を加工し、部品を製造する企業です。また部品加工以外に自社で加工した部品及び社外へ手配した部品を社内で組み立てる組立製品も製造しています。
 

図3  A社の組織と設備、人員の構成

図3 A社の組織と設備、人員の構成


 

A社のA3製品は社内がマシニングセンタ、NC旋盤、平面研削盤、ワイヤーカット放電加工、出荷検査(全数検査)、社外が熱処理と合計6つの工程があります。各工程の製造費用は下表に示します。
 

表 A3製品の製造原価     単位 円

順序 工程 通常工程
製造費用
不良発生
(平面研削盤で発覚、廃棄)
材料費 10,000 10,000
マシニングセンタ 7,100 7,100
NC旋盤 3,300 3,300
熱処理(外注) 1,600 1,600
平面研削盤 3,600 3,600
ワイヤーカット 7,200 0
出荷検査 900 0
合計 33,700 25,600

 

A3製品が出荷検査で不良が判明し、修正できずに廃棄する場合、損失金額は製造原価の33,700円です。
 

工程の途中で廃棄する場合

工程の途中で不良品が見つかり廃棄する場合は、損失金額は材料費プラス、その工程までの製造費用です。

例えば上記A3製品で4番目の平面研削盤の工程で不良となり廃棄した場合、損失金額は材料費プラスマシニングセンタから平面研削盤までの製造費用になります。
 

厳密には平面研削盤の工程のどこで失敗したかにより平面研削盤の工程の製造費用は変わりますが、実際にはそこまで細かく集計できないため、平面研削盤の工程は完了したものとします。
 

修正する場合

出荷検査で不良が判明し、修正すれば使用できる場合、損失金額は追加した修正費用のみになります。例えばA3製品で出荷検査で不良が判明し、平面研削盤で修正しました。この時の修正費用は下表示します。
 

表 平面研削盤の修正費用     単位 円

段取時間 段取費用 加工時間 加工費用 合計
1 7,000 1 7,000 14,000

 

修正の場合、1個だけの加工になるため段取費用の比率が高く、ロット生産に比べて製造費用が高くなります。
 

A3製品100個の損失金額

機械加工A社のA3製品100個について、以下のような不良が発生しました。この場合の損失金額と原価を計算します。
 

  • 1工程マシニングセンタで1個不良発生、材料は再利用可能(再度1工程から加工)
  • 2工程NC旋盤で1個不良発生、廃棄
  • 6工程出荷検査で1個不良発生、平面研削盤で修正。(段取1時間、加工1時間)

 

損失金額と原価を下表に示します。
 

1工程マシニングセンタでの不良1個の損失金額

1工程の製造費用のみ

A3製品生産中に再度加工した場合(段取費用は変わらず)

製造費用 7,100円 
 

2工程NC旋盤で1個不良発生し廃棄した場合の損失金額

材料費 10,000円

1工程の製造費用 7,100円

2工程の製造費用 3,300円

損失金額合計 20,400円
 

出荷検査で1個不良発生、平面研削盤で修正した場合

段取費用 7,000円

加工費用 7,000円

損失金額合計 14,000円
 

表 A1製品の不良と損失金額     単位 円
表 A1製品の不良と損失金額
 

正常工程(不良ゼロ)の場合の製造原価33,700円

損失金額を加味した製造原価は34,115円

損失金額のため製造原価は415円増加しました。

A3製品は材料費が1万円と高価なため不良により廃棄すると大きな損失が発生します。

別工程で修正した場合、段取費用の影響が大きいため損失金額が大きくなりました。
 

余分につくるコスト

A3製品のように100個ロットで受注した場合、不良のため廃棄すると再びゼロから加工しなければならず納期に納期に間に合わなくなる恐れがあります。また後から1個余分製造するのは段取の費用がかさむため原価が上昇します。
 

そこで不良を見込んで予め余分に製造することがあります。この後もリピートで受注することが確実であれば、余分につくった製品は次回に出荷できるので損失にはなりません。ただしリピート受注がなかったり、最後の注文では出荷されない製品が発生します。
 

例えば100個ロットの受注に対して101個製造すれば、製造原価は1.01倍になります。A3製品では

製造原価=33700×1.01=34037 円

337円原価が高くなります。また余分につくった場合は、その後リピート発注があった時に在庫を確認し生産数を管理しないと、いつまでも余分につくり過大な在庫を抱えとしまいます。
 

樹脂成形B社の損失金額と原価

射出成形機で樹脂製品を製造する企業です。製品は複数の大手メーカーに納入しています。B社の組織と設備、人員の構成を下図に示します。シフトは2直の昼夜勤務で設備は24時間稼働しています。
 

図4  B社の組織と設備、人員の構成

図4 B社の組織と設備、人員の構成


 

樹脂成形品B1製品の不良率は0.3%でした。不良品は粉砕して再利用します。ロット8,000個の場合の損失金額を計算します。

B1製品の材料費 35円

B1製品の製造費用 13円

損失金額(1個) 13円

損失数合計=8000×0.003=24 個

損失金額合計=24×13=312円
 

表 B1製品の不良と損失金額     単位 円

正常工程費用 損失金額
単価 合計 材料再利用
材料費 35 280,000
製造費用 13 104,000 312
合計 48 384,000 312
損失金額込みの製造原価 384,312
1個当たりの製造原価 48.04
不良損失による1個当たりの原価上昇分 0.04

 

樹脂成形品は材料が再利用できる場合は損失金額が大きくありません。そのため不良に対する現場の緊張感が希薄で、不良が増加しても現場は気にせず生産していることがあります。

そこで不良率が3%に上昇した場合はどうなるでしょうか。
 

不良数=0.03×8000=240 個

損失金額合計=13×240=3,120 円
 

表 B1製品の不良と損失金額     単位 円

正常工程費用 損失金額
単価 合計 材料再利用
材料費 35 280,000
製造費用 13 104,000 3,120
合計 48 384,000 3,120
損失金額込みの製造原価 387,120
1個当たりの製造原価 48.39
不良損失による1個当たりの原価上昇分 0.4

 

受注金額が57円の時、B1製品の利益は3円でした。不良率3%では利益は2.6円になりました。不良率が3%になると品質は不安定で常時不良が発生している状態です。早急に対策すべきですが、原価の上昇は0.4円、生産性の低下も3%のため、見過ごされてしまいます。
 

このように樹脂成形で材料が再利用できる場合は、不良が放置される可能性があるため、管理者は不良率の数字をしっかり監視し問題があれば早急に手を打たなければなりません。
 

プレス加工C社の損失金額と原価

C社はプレス加工で金属部品を製造する企業です。製品は複数の大手メーカーに納入しています。C社の組織と設備、人員の構成を下図に示します。シフトは2直の昼夜勤務で設備は24時間稼働しています。
 

図5  C社の組織と設備、人員の構成

図5 C社の組織と設備、人員の構成


 

プレス加工は材料は再利用できず材料費の比率も高いので、不良は大きな損失になります。下表にプレス加工C社 C1製品5,000個の不良と損失金額を示します。

そこでC1製品 ロット5,000個、不良率0.3%の場合の損失金額を計算します。
 

C1製品の材料費 30円

B1製品の製造費用 1.7円

損失金額(1個) 31.7円

損失数合計=5000×0.003=15 個

損失金額合計=31.7×15=475.5円
 

表 C1製品の不良と損失金額  単位 円

正常工程 損失金額
単価 合計 廃棄
材料費 30 150,000 450
製造費用 1.7 8,500 25.5
合計 31.7 158,500 475.5
損失金額込みの製造原価 158,975.5
1個当たりの製造原価 31.8
不良損失による1個当たりの原価上昇分 0.1

 

不良率0.3%で製造費用は0.1円増加し、利益も0.1円減少しました。受注金額37円の時の利益が2.3円なので、0.1円の減少は4.3%の減少です。

では不良率が3%に増加した場合はどうでしょうか。
 

C1製品の材料費 30円

B1製品の製造費用 1.7円

損失金額(1個) 31.7円

損失数合計=5000×0.03=150 個

損失金額合計=31.7×150=4,755円
 

表 C1製品の不良と損失金額   単位 円

正常工程 損失金額
単価 合計 廃棄
材料費 30 150,000 4,500
製造費用 1.7 8,500 255
合計 31.7 158,500 4,755
損失金額込みの製造原価 163,255
1個当たりの製造原価 32.7
不良損失による1個当たりの原価上昇分 1

 

不良率3%で製造費用は1円増加し、利益も1円減少しました。受注金額37円の時の利益が2.3円なので、1円の減少は43%の利益の減少です。
 

一方プレス加工の場合、不良品はスクラップとして引き取られます。スクラップ単価を15円/kg、製品重量0.1kgのとき、スクラップ費用は

スクラップ費用=0.1×150×15=30円

損失金額は4,755円なので、スクラップ費用を考慮した場合の損失金額は4,725円と0.6%減少します。それほど大きな金額ではないので無視してかまいません。
 

評価よりも対策

 

このようにすれば不良による損失は金額で定量的に評価できます。

これは財務会計では不良による損失 (仕損費) は、仕掛品、または完成品に仕損費として計上し、製造原価に組み込みます。不良品の個数と発生した工程が記録されていれば、仕損費として計上できます。
 

しかし実際には「その期やその月の不良損失がいくらか」よりも、

不良が発生した時点での的確な状況把握とスピーディーな対策が

品質を高めるためには最も重要です。
 

さらにロットごとの不良率と損失金額を監視して悪化するようであれば直ちに手を打ちます。

不良を減らせば確実に利益は増えます。
 

しかし、それは具体的なアクションが伴っている必要があります。何もアクションがなくても不良が減ることもありますが、それはたまたま減っているだけで、また何か要因が変化すればまた増えます。

実際の製造現場では発生する不良の原因は様々です。これに対しその都度真の原因を突き止めて確実に対策をしなければなりません。時には自社だけでなく、顧客にも協力してもらわないと解決できないことがあります。
 

例えば

  1. 製造プロセスが不安定
  2. 製品の設計品質が不安定
  3. 製造工程、検査工程のミス
  4. 顧客との見解・考え方に相違があるため不良となる

このような原因で発生する不良は、製造の担当者だけでは解決できません。
 

特に(4)などは上司、顧客も巻き込んで取り組む必要があります。こういったやっかいな問題を解決するためにも、不良による損失を金額で定量的に評価することは重要です。
 

こういった製造業の原価計算の考え方と見積、損失の見える化については下記リンクを参照願います。

 

他にも製造業の値上げ金額の計算と値上げ交渉のポイントについては下記リンクを参照願います。

 
 

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【実務における原価の疑問】 21 設備の大きさによるアワーレートの違い https://ilink-corp.co.jp/5675.html https://ilink-corp.co.jp/5675.html#respond Wed, 26 Aug 2020 01:45:52 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=5675 工場の設備は同じ工程でも、設備が大きく能力が高くなれば、設備の価格やランニングコストが高くなります。その結果、アワーレート(設備)も高くなります。では設備の大きさの違いによってアワーレート(設備)はどのくらい変わるのでしょうか?
 

この設備の大きさの違いによるアワーレート(設備)の違いは個別原価を計算する上で重要です。場合によっては、発注先(顧客)も同様に設備の大きさ毎に単価の指標を持っていることがあります。例えば、設備の大きさに応じて「1時間当たりの費用をいくら」と決めて、それを元に見積を査定します。
この場合、顧客の単価の指標と実際のアワーレート(設備)が同じとは限りません。顧客の単価の指標が小型の設備は自社の原価より大きめに出ることもあります。その場合は、小型の設備で製造する製品の方が、利益が出やすくなります。
 

そこで設備の大きさの違いによるアワーレートの違いを計算してみます。
 

1. 大きさの違う設備の例

工程は同じでも大きさの異なる設備として、樹脂射出成形機とプレス機を取り上げます。
 

樹脂射出成形機 (以降、射出成形機)

溶けた樹脂を金型に流し込んで樹脂を成形する設備で、インジェクションマシンとも呼ばれています。流し込んで固まった樹脂は、金型を開いて取り出します。樹脂は高圧で金型に押し込まれるため、二つの金型を押し付ける力 (型締め力) は強い力が必要です。
大きな金型は強い力が必要なため、射出成形機はこの型締め力で機械の大きさを表します。型締め力は小型の射出成型機で50トン、大型の射出成形機では500トンぐらい、超大型の射出成形機では2,000~3,500トンのものもあります。
 

図1 射出成形機とその原理 (wikipediaより)

図1 射出成形機とその原理 (wikipediaより)


 

プレス機

金属の板材を金型の間に挟み込み、短時間に板材を切断、曲げ、絞りなどの加工を行う機械で、機械の大きさは金型に加える加圧力の大きさ (トン数) で示します。小型のプレス機で50トン、大型のプレス機で500トン、自動車の車体などを成形する超大型のプレス機で2,000トンくらいです。トン数は樹脂射出成形機と似たような数字ですが、意味は異なるので注意が必要です。
 

2. 設備の費用

アワーレート(設備)は、その設備が年間にかかる費用を設備の実稼働時間で割って計算します。設備が年間にかかる費用は主に設備の購入費用とランニングコストです。
 

アワーレート(設備)=整備の年間費用(購入費用+ランニングコスト)/実稼働時間
 

設備の購入費用は減価償却費です。この減価償却費は次節で説明します。ランニングコストは、動力費、水道光熱費、消耗品、保守費などです。多くの設備では電気代がランニングコストの大きな割合を占めます。
 

電気代は設備の消費電力にkW単価をかけて計算します。消費電力は実際は時々刻々変化するため、これを一定期間でならした平均消費電力を取ります。この平均消費電力は電力測定器を用いて測定します。同じ設備でも使い方によって平均消費電力は異なるのでできれば測定することをお勧めします。
そこまでできない場合は、仮に設備の定格電力の〇%と決めて計算します。今回はこの方法で計算していますが、設備毎のアワーレート(設備)を比較する目的のため、絶対値は重要でないからです。
 

電気代以外に設備には消耗品、保守費、修理費などがかかっていることもあります。しかしこれらの費用は設備毎にどのくらいかかったのかわからないことが多いものです。また金額も電気代ほどかからないケースが大半です。そこでこれらの費用は間接製造費用として全体で集計し、設備毎に一定の比率で分配します。間接製造費用の分配については、4. 射出成型機の例で説明します。
 

表1 その他経費の例  単位 万円

電気代 3,300
水道光熱費 180
修繕費 300
賃貸料 60
保険料 100
消耗品費 390
租税公課 90
荷造運賃 180
保守料 220
雑費 250
リース料 230
減価償却費 1,400
その他経費合計 6,700

 

ただし特定の設備で大きな金額が発生した場合は、それを設備固有の費用に入れます。例えばある設備だけメーカーと年間保守契約を結んでいて大きな金額がかかっている場合などです。
 

3. 減価償却費

例えば、ある年に2,100万円の設備を購入しメーカーに代金を払います。しかしその年に費用として計上されるのは、購入金額2,100万円でなく減価償却費のみです。これは定額法であれば210万円、定率法であれば420万円です。(法定耐用年数10年とした場合) 定額法と定率法は、どちらを採用するか企業は予め決めてあります。2,100万円の設備費用の定率法と定額法の減価償却費を表2、図2に示します。
 

減価償却費の詳しい説明は、【製造業の個別原価計算8 「減価償却費とアワーレートの関係」】を参照願います。
 

表2 定率法と定額法の減価償却費 単位 円

年数 定率法 定額法
1年 4,200,000 2,100,000
2年 3,360,000 2,100,000
3年 2,688,000 2,100,000
4年 2,150,400 2,100,000
5年 1,720,320 2,100,000
6年 1,376,256 2,100,000
7年 1,376,256 2,100,000
8年 1,376,256 2,100,000
9年 1,376,256 2,100,000
10年 1,376,255 2,099,999

 

図2 定率法と定額法の減価償却費

図2 定率法と定額法の減価償却費


 

ここでアワーレート(設備)を計算する際に、減価償却費を使うことで2つの問題があります。
 

ひとつは、定率法では減価償却費が年々減少することです。定率法の減価償却費を用いてアワーレート(設備)を計算すると、毎年アワーレート(設備)が低下してしまいます。
 

もうひとつは、法定耐用年数を過ぎても設備は使われることです。法定耐用年数は国税局が定めた耐用年数で、実際の設備の使用状況や稼働時間を考慮していません。そのため3交代で24時間過酷な使われ方をしている設備では法定耐用年数に達する前に使えなくなります。あるいは稼働時間が少なく使われ方も激しくない場合、法定耐用年数よりもはるかに長く使われます。その場合、設備は使われているが減価償却費はゼロという状態になります。
 

減価償却費がゼロになればアワーレート(設備)を低くしても利益が出ます。顧客から値下げの要請が厳しければ値下げして受注量を確保することもできます。しかしその設備は未来永劫使えるわけでなく、いつか更新時期を迎えます。設備を更新すれば新たに減価償却費が発生します。そうなると値上げしなければ赤字になってしまいます。しかし設備を更新したからといって顧客は値上げを認めてくれるでしょうか?
 

決算書の減価償却費でアワーレート(設備)を計算するとこのような問題が発生するため、設備の購入費用を本当の耐用年数で均等に割って(本コラムでは、これを「実際の償却費」と呼ぶことにします。)、アワーレート(設備)を計算します。
 

図3 実際の償却費
図3 実際の償却費
 

実際に工場内で稼働しているそれぞれの設備のアワーレート(設備)をこの方法で計算する場合は、すべての設備について購入費用を実際の耐用年数で割って実際の償却費を計算しなくてはなりません。使用している設備の数が多いとかなり手間がかかります。そのため決算書の減価償却費からアワーレート(設備)を計算することも多いです。
 

それでも頻繁に設備を更新している工場では随時新たな減価償却費が発生するためアワーレート(設備)の変動はそれほど大きくないこともあります。これに関する詳細もついても【製造業の個別原価計算8 「減価償却費とアワーレートの関係」】を参照願います。
 

今回設備の大きさ毎のアワーレート(設備)を計算するには、設備の費用は重要なので、実際の償却費からアワーレート(設備)を計算します。
 

4. 架空の企業B社 射出成型の例

樹脂射出成形を行っている架空の企業B社の例です。
 

表3 B社の概要

売上高 5億5,000万円
製造原価 4億3,220万円
材料費 1億9,200万円
労務費 1億6,200万円
外注費 1,000万円
その他経費 6,700万円
売上総利益 1億1,780万円
販売費及び一般管理費 7,500万円
営業利益 4,280万円

 

設備と現場の構成

表4 設備概要

大きさ 備考 台数
50トン ローダー付き
(無人加工)
4
180トン 4
280トン 4
450トン 4
180トン インサート成形
(有人加工)
2
280トン 2

 

ローダー付きとは、成形した製品をロボットにより自動で取り出す装置です。ローダー付きの成形機は、加工中は無人で稼働することができます。
 

インサート成形とは、作業者が成形前に部品を金型にセットし、金型内部で部品と樹脂を一体で成形する方法です。このインサート成形では生産中は作業者が常に部品をセットしなければならないため、有人加工になります。
 

B社の組織と人の数を表5に示します。
 

表5  B社の組織と構成員

業務 社員数
製造課 製造一課 50トン ローダー付き 2
180トン ローダー付き 2
280トン ローダー付き 2
450トン ローダー付き 2
管理(課長) 1
製造二課 180トン インサート 5
280トン インサート 5
管理(課長) 1
管理(部長) 1
製造三課 組立 5
出荷検査 6
生産管理部 生産管理 2
資材発注 3
資材受入 1
品質管理部 品質管理 1
受入検査 2
合計 41

 

製造一課は50トンから450トンまで計16台の成形機が稼働し、これを8人の作業者が交代勤務で24時間稼働させています。実際の業務では、誰が50トン担当と明確に決まっていませんが、設備毎のアワーレート(設備)を計算するために、それぞれの設備に作業者を均等に割り付けました。
また管理者(課長)は直接製造を行っていませんが、その人件費は製造費用に含まれます。これは製造一課の間接製造費用に入れて、各設備に分配します。
 

B社は成形機の他に、成形品に部品を組み立てる作業と、成形品の検査を行う課があります。また製造部の管理者(部長)の人件費は、間接製造費用として製造一課から三課までの各現場に分配します。
 

他にB社は生産管理部と品質管理部の間接部門があります。これらの部門の業務は各製造現場を間接的に支援する仕事です。そのためこれらの部門の費用は間接製造費用として各現場に分配します。
 

アワーレート(設備)の計算

今回はローダー付きの各設備のアワーレート(設備)のみ計算します。
 

各設備の価格と実際の償却費と台数を表6に示します。ここで実際の耐用年数は10年としました。
 

表6 大きさと価格、実際の償却費   

大きさ 価格
(万円)
実際の償却費
(万円)
台数
50トン 600 60 4
180トン 1,200 120 4
280トン 2,400 240 4
450トン 3,600 360 4

 

設備の価格はメーカーや仕様により変わり、実際の耐用年数も使い方により変わるため、あくまで参考値としてください。
設備を導入してから年数が経っている工場では、決算書の減価償却費は表6よりもかなり少なくなっていることがあります。それと比較すると表6の実際の償却費はかなり高く感じます。しかし設備毎のアワーレート(設備)を適切に計算するためには表6の実際の償却費からアワーレート(設備)を計算しなければなりません。
 

ランニングコストは、今回は電気代のみで計算します。射出成形機は水も消費するため、より詳しく比較する際は水道代も計算します。
 

B社の設備毎の電気代の計算結果を表7に示します。
(ここでkWh当たりの単価を16円としています。)
 

表7 設備の大きさ毎と電気代   

大きさ 定格
(kw)
電気代/年
(万円)
50トン 5 30
180トン 11 65
280トン 20 120
450トン 25 140

 

樹脂成形工場では、材料の樹脂を乾燥するドライヤーや金型を冷却する水を冷やすチラーなどの様々な設備があります。これらの設備も電気を消費しますが、これらの設備はどの成形機にどれだけ関与しているか不明です。そこでこれらの費用は現場共通の費用として間接製造費用に入れます。
 

実際の償却費と電気代を合計したものを表8に示します。
 

表8 設備の費用合計   単位 万円

大きさ 実際の償却費 電気代/年 合計
50トン 60 30 90
180トン 120 65 185
280トン 240 120 360
450トン 360 140 500

 

実際の消費電力は、設備の違い、運転条件の違いにより変わります。kWh単価も電力会社や契約条件により変わりますので、表7は参考値としてください。
 

各設備の年間の操業時間と稼働率を表9に示します。
 

表9 年間の操業時間と稼働率   

大きさ 操業時間
(時間)
稼働率 実稼働時間
(時間)
50トン 5,500 0.8 4,400
180トン 5,500 0.8 4,400
280トン 5,500 0.8 4,400
450トン 5,500 0.8 4,400

 

B社は1日24時間生産、各設備の年間の操業時間(就業時間)は5,500時間でした。この5,500時間のうち、生産計画がなかったりトラブルなどで稼働しない時間があるので、実際の稼働率は0.8 (80%) でした。操業時間に稼働率をかけた実稼働時間は4,400時間でした。
 

実稼働時間=操業時間×稼働率
 

自社でアワーレート(設備)を計算する場合は、年間の操業時間や稼働率は日報などの記録や設備のメーターから調べます。どうしても稼働率がわからない場合は、仮に80%などと決めて計算します。
 

ただし今回の計算では段取時間は実稼働時間に入れています。一般的には段取中は生産をしてないため稼働時間に含めないこともあります。しかし利益まっくすでは段取の費用も計算し見積に含めるため、段取時間も生産時間と同じように扱って稼働時間に含めます。
 

表8で示す設備に直接かかる費用(直接製造費用)以外にも工場では様々な費用があります。
 

例えば

  • 消耗品、修理費などどの設備どのくらいかかったのかわからない費用
  • ドライヤー、チラーなどどの設備にどのくらいかかったのかわからない設備、工場の照明、空調など各現場で共通して使用している設備の電気代などランニングコスト
  • その他経費に含まれる建物の減価償却費や土地の賃貸料、税金など工場全体にかかる費用
  • 管理職(課長、部長)などの人件費
  • 間接部門(生産管理、品質管理)の人件費

 

これらの費用は間接製造費用として各現場に分配します。この費用の構造を図4に示します。
 

図4 間接製造費用の構造

図4 間接製造費用の構造


 

分配の方法は様々な方法がありますが、複雑な方法は中小企業には現実的ではありません。今回は設備の実稼働時間で分配します。
 

表10 年間の操業時間と稼働率   

大きさ 直接費用
(万円)
間接製造費用
(万円)
アワーレート(設備)
(円/時間)
50トン 90 353 1,010
180トン 18 353 1,220
280トン 360 353 1,620
450トン 500 353 1,940

 

表10から、設備毎の表はトン数の小さい設備では、直接費用よりも間接製造費用の方が大きいことがわかります。従って間接製造費用の分配の仕方によって、設備の大きさ毎のアワーレート(設備)は変わります。今回は設備の大きさが変わっても
 

  1. 消耗品は大きくは変わらない
  2. 工場の照明や空調など工場の資源の消費は大きく変わらない
  3. 間接部門や管理職などの負担は大きく変わらない

 

という前提で、長く動いた設備は①から③を多く消費するので間接製造費用を多く負担するという考えで分配しました。設備の大きさによって①から③が大きく変わる場合は、大きな設備は間接製造費用を多く、小さな設備は間接製造費用を少なく分配します。
 

アワーレート(人)の計算

B社の成形機でローダー付きの場合、生産中は無人で稼働するのでアワーレート(設備)と加工時間が分かれば加工費用は計算できます。
しかし段取は設備を止めて作業者が段取行うためアワーレート(人)が必要です。
 

アワーレート(人)はアワーレート(設備)と同様に人の直接費用と間接製造費用を合計したものを人の実稼働時間で割って計算します。
 

アワーレート(人)=人の費用(直接費用+間接製造費用)/人の実稼働時間
 

製造一課の作業者8人は、実際はどく設備を操作するのかはっきりしていませんが、各設備毎に原価を計算するために表5に示すように、設備の大きさ毎に2人の作業者を割り振りました。それぞれの作業者の人件費と就業時間を表11に示します。
 

表11 各設備の人件費   

大きさ 人数 人件費
(万円)
就業時間
(時間)
50トン 2 1,000 4,400
180トン 2 1,000 4,400
280トン 2 1,000 4,400
450トン 2 1,000 4,400

 

ここでは1人の人件費500万円、年間就業時間2,200時間としています。実際にアワーレート(人)を計算する際は、実際の人件費と就業時間で計算します。
 

B社では1日のうち、段取中は、作業者は段取を行いますが、生産中は、作業者は直接生産に従事しません。生産中は製品の品質を確認したり、成形条件を確認や記録したりしています。これらの時間に発生する費用は間接製造費用として、アワーレート(設備)に入れます。図5を参照してください。
 

図5 作業者の費用

図5 作業者の費用


 

B社では製造一課の作業者の段取と間接作業の割合は、段取20%、間接作業80%でした。この段取作業中の稼働率は0.8でした。その結果、稼働率を含めた各作業者の段取作業の実稼働時間は表12に示すようになります。
 

表12 就業時間と段取の実稼働時間   

大きさ 就業時間
(時間)
稼働率 直接製造比率
(%)
段取の実稼働時間
(時間)
50トン 4,400 0.8 20 704
180トン 4,400 0.8 20 704
280トン 4,400 0.8 20 704
450トン 4,400 0.8 20 704

 

一方各作業者も業務を遂行するために間接部門や管理者のサポートを受けています。また工場の照明や空調なども使用しています。そのため、間接部門や管理者の人件費、工場の経費の一部を負担する必要があります。そこでこれらの費用を間接製造費用として集計し、各作業者の作業時間に応じて分配します。
 

各現場の作業者の直接製造費用=各現場の人件費×直接製造比率
=1,000×0.2=200 万円

 

分配結果を集計したものを表13に示します。
 

表13 各設備の作業者の費用   

大きさ 人数 直接製造費用
(万円)
間接製造費用
(万円)
合計
(万円)
50トン 2 200 104 304
180トン 2 200 104 304
280トン 2 200 104 304
450トン 2 200 104 304

 

実稼働時間を表8に示します。
 

段取のアワーレート(人)は表13の合計304万円を段取の実稼働時間704時間で割って計算します。
 

アワーレート(人) =304×10,000/704=4,320 円/h
 

製造原価の計算

以下にこのアワーレートを用いた原価計算の例を示します。
 

B1製品の材料費、段取時間、製造時間を表14に示します。
 

表14 B1製品

材料単価 材料使用量 材料単価
240円/kg 0.1kg 24円
段取時間 ロット数 段取時間/個
1時間 8,000個 0.0000125時間
(0.45秒)
製造時間 1回の生産数 製造時間/個
2分 4個 0.0083時間
(30秒)

 

50トン ローダー付きの製造原価を表15に示します。
 

表15 50トン ローダー付きの製造原価   

時間 アワーレート
(円/時間)
費用
(円)
段取 0.000125時間
(0.45秒)
4,320 0.54
設備 1,010 0.13
製造 設備 0.0083時間
(30秒)
1,010 8.4
合計 9.1
材料費 24.0
製造原価 33.1

 

表10の設備毎のアワーレート(設備)により、設備の大きさ毎に原価を計算したものを表16に示します。
 

表16 設備の大きさ毎の原価計算   

大きさ アワーレート(設備)
(円/時間)
設備費用
(円)
人の費用
(円)
合計
(円)
50トン 1,010 8.53 0.54 9.1
180トン 1,220 10.28 10.8
280トン 1,620 13.65 14.2
450トン 1,940 16.34 16.9

 

(設備費用=アワーレート(設備)×(段取時間(設備)+成形時間) )
 

ロット8,000個の場合、1個当たりの段取時間は0.45秒しかないため段取費用はわずかで、製造費用の大半は成形費用が占めています。設備が大きくなると、アワーレート(設備)が高くなり成形費用も高くなります。50トンと450トンでは製造費用は7.2円の差があります。これは製造費用の低樹脂製品では大きな差となります。従って射出成型機は「大は小を兼ねず」、製品の大きさに合わせた適切な設備が必要です。
 

一方、すでに設備がある場合、設備の費用の多くが固定費です。減価償却費や人件費、その他の経費もその多くが固定費です。これらの固定費はすでに支出が決まっている費用で、生産しないからといって減少することはありません。表17に設備毎の費用の変動費と固定費、表18にこれを基にしたアワーレート(設備)の変動費と固定費を示します。
 

表17 設備毎の費用の変動費と固定費 単位 万円

大きさ 変動費
(電気代)
固定費(償却費と
間接製造費用)
50トン 30 413
180トン 65 473
280トン 120 593
450トン 140 713

 

表18 アワーレート(設備)の変動費と固定費 単位 円/時間

大きさ アワーレート(設備)
のうち変動費分
アワーレート(設備)
のうち固定費分
50トン 70 940
180トン 145 1,075
280トン 270 1,350
450トン 320 1,620

 

大きな設備を使用しても小さな設備を使用しても固定費は変わりません。一方電気代、水道代などのランニングコストは変動費です。大きな設備を使用すればその分費用を多くかかります。従って、社内で稼働していない大型の設備があり、これから製造する製品が大型の設備を必要としていない小さな製品でも、ランニングコストの増加分を許容できるのであれば、大型の設備を稼働させて少しでも設備の稼働率を上げた方が得です。表18から、50トンの成形機で製造できる製品を450トンの成形機にかけた場合、
 

ランニングコスト=320―70=250
 

1時間当たり250円増加します。先の製品は1個の製造時間が30秒なので
1時間の生産量=3600/30=120
1時間に120個できます。
 

製品1個当たりの費用増加=250/120=2.1
1個当たり2.1円費用が増加します。それでも多くの場合は、止まっている設備を稼働して生産量を増やした方が利益が多くなります。
 

以上、射出成形のB社の例について考えました。
 

こういった製造業の原価計算の考え方と見積、損失の見える化については下記リンクを参照願います。

 

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https://ilink-corp.co.jp/5675.html/feed 0
【実務における原価の疑問】 20  中小・小規模企業向け個別原価計算システム「利益まっくす」の考え方 https://ilink-corp.co.jp/5620.html https://ilink-corp.co.jp/5620.html#respond Tue, 28 Jul 2020 23:54:21 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=5620 「製造業の個別原価計算18 事例1『原価計算基準』に則った個別原価計算との比較」
従来の原価計算基準に従って、個別原価を計算した場合を示しました。
 

この時は、人の作業時間と設備の稼働時間は同じものとして計算しました。しかし実際は、加工は設備だけで無人で行う場合もあります。
 

そこで
「製造業の個別原価計算19 『原価計算基準』に則った個別原価計算(人と設備を分けた場合)」
で、人と設備のアワーレートを別々に計算し、間接費を分配して計算しました。
 

間接費の分配はどうしても恣意的になる

この従来の原価計算で問題なのが固定費の分配です。
 

固定費の分配の考え方

製造原価には以下の2つがあります。

  • 直接製造費用 人や設備が直接稼働することで発生する費用
  • 間接製造費用 直接製造費用以外の費用で、その多くは生産量の増加に関係なく発生する固定費

 

固定費の分配は「原価計算基準」によれば、以下のように示されています。

  • 工場・建物の維持管理に費用な費用 【工場の面積】
  • 作業者1人1人にかかる費用 【社員数】
  • 設備1台1台にかかる費用 【設備台数】
  • 生産量に応じてかかる費用 【作業時間】

 

作業時間で分配する場合、人だけで作業する工程と、設備が自動で製造する工程がある場合、人の作業時間と設備の稼働時間は一致しません。そうなると作業時間は人の作業時間を採用すべきか、設備の稼働時間を採用すべきかという問題が生じます。またいずれを採用しても適切でないこともあります。
 

そこで
「製造業の個別原価計算19 『原価計算基準』に則った個別原価計算(人と設備を分けた場合)」
では、間接費を分配する際にある工程は人の作業時間、ある行程は設備の稼働時間を採用してバランスを取りました。
 

間接部門の費用の分配

この間接部門の費用の分配については原価計算の教科書には

  • 生産管理は計画回数
  • 資材購買は発注回数
  • 検査費用は検査回数
  • 品質管理費用は稼働時間

を基準とすると書かれています。
 

しかしこの方法は、年間の計画回数や発注回数を把握しなければならず、手間がかかります。しかも生産管理の時間はどの製品でも同じ時間をかけているとは限りません。そのため実態とは乖離する可能性があります。
 

この方法に従って個別原価を計算したものが
「製造業の個別原価計算18 事例1『原価計算基準』に則った個別原価計算との比較」
です。
 

しかしこの方法はとても手間がかかり、中小・小規模企業にとっては現実的ではありません。
 

管理会計では直接製造費用のみで原価を計算

間接費を分配するとこのような問題が生じるため、管理会計では間接費を分配せず直接製造費用のみで製造原価を計算します。
 

これは価格が市場で決まってしまう製品には使いやすい方法です。一般消費者向けの製品では、細かく原価を計算しても競合が低い価格で販売すれば、その価格にしなければ売れないからです。
 

しかし中小・小規模企業に多い個別受注生産は、引き合いに対してこちらから見積を出して受注価格が決まります。見積が低ければ利益ででなくなるため、個々の受注の製造原価を計算し正しい見積を作る必要があります。
 

そこで中小・小規模企業でも個別原価が容易に計算できるシンプルな方法「利益まっくす」について説明します。
 

利益まっくすの考え方

利益まっくすは各工程の直接製造費用に着目して、直接製造費用に応じて固定費を分配します。

同様に間接部門の費用も各工程の直接製造費用に応じて分配します。
 

直接製造費用であれば、人だけや設備だけで生産する現場でも費用に応じて固定費を分配すればよいので簡単です。
 

これは分配というより、

費用を負担する

という考え方です。
 

具体的には、図1に示すように工程Aの年間の直接製造費用と間接製造費用を先期の決算書から計算します。
 

図1 利益まっくすのアワーレート計算方法
図1 利益まっくすのアワーレート計算方法

 

直接製造費用はその工程の直接製造にかかわる作業者の人件費、直接製造に使用する設備の費用などです。間接製造費用は、その工程で直接製造にかかわらない作業者の労務費や直接製造に使用しない設備の費用などです。
 

間接部門は各工程に対して生産計画の作成や材料の手配など様々なサービスを提供しています。これらの部門の費用も厳密にはどの工程にどれだけ貢献しているか計算することは困難です。
 

この間接部門の労務費やどの工程にかかったのかわからない工場の経費(決算書 製造原価報告書の製造経費)などが、間接製造費用です。

工程Aの間接製造費用は、工場全体の直接製造費用に対する工程Aの直接製造費用の比率で分配します。
 

こうして工程Aの費用を合計して、工程Aの実稼働時間の合計で割って工程Aのアワーレートを計算します。

間接製造費用は、どの工程がどれだけかかっているのか、正確にはわからない費用です。それならば直接製造費用の大きい工程はそれだけ間接製造費用も多く負担してもらうという考え方です。
 

間接製造費用の分配は、どのような方法を取っても完全にうまくいくことはありません。

それであればできるだけシンプルな方法で行った方が現実的です。
 

ただし、その分配方法がうまくいかない場合もあります。その場合、原因を理解したうえで微調整を行います。
 

利益まっくすでのアワーレート計算

「製造業の個別原価計算18 事例1『原価計算基準』に則った個別原価計算との比較」
で検討したモデル企業A社について、利益まっくすを用いて個別原価計算を行います。
 

モデル企業A社の詳細を再度以下に示します。
 

架空の企業A社は、機械加工と組立を行っています。機械加工は顧客の注文に応じて部品を加工し納入する多品種少量生産です。工作機械は、マシニングセンタ、 NC 旋盤、平面研削盤、他に汎用工作機械などがあります。
 

他に組立部門があります。こちらは特定の顧客から OEM でユニット製品の組立を受注しています。使用する部品は、一部は社内で加工し、他は外注で加工しています。
 

工場の間接部門 (以降、間接製造部門と呼びます) として生産管理部と品質管理部があります。生産管理部は生産管理課が生産計画の作成と管理、資材課が 資材の発注を行っています。品質管理部は、品質管理課が品質管理業務全般を行い、検査課が受入検査と出荷検査を行っています。A社の部門構成を図2に示します。
 

図2  A社の部門構成

図2  A社の部門構成
 

A社の売上などについては
売上6億3千万円 
(機械加工部門売上 1億5千万円)
(組立部門売上 4億8千万円)
製造原価 5億円
販売費及び一般管理費 6,850万円
営業利益 6,150万円
でした。
 

A社の決算書(損益計算書)を表1に、決算書(製造原価報告書)を表2に示します。
 

表1 決算書(損益計算書)
表1 決算書(損益計算書)

 

表2 決算書(製造原価報告書)
表2 決算書(製造原価報告書)

 

A社の部門構成、費用構成は製造業の典型的な例です。しかし原価計算の教科書によくある事例とは以下の点が異なります。

  • 製造部門に加工と組立という費用や付加価値の異なる2つの部門がある
  • 間接製造部門の生産管理や品質管理は、直接製造部門に対する貢献の度合いが異なる
  • 機械加工部門の製品は外販と社内使用の2種類がある

 

A社の構成

A社の組織構成を以下に示します。
 

    【機械加工部門 (第一製造部) 】

  1. マシニングセンタ
  2. NC旋盤
  3. 平面研削盤
  4. その他汎用
  5. 【組立部門(第二製造部) 】

  6. 組立
  7. 【生産管理部】

  8. 生産計画課
  9. 資材課
  10. 【品質管理部】

  11. 品質管理課
  12. 検査課

 

各現場の費用

直接製造部門の費用のうち、労務費、設備の費用など、どの現場の費用がわかるものは現場毎に集計します。労務費は表3のように各現場の人員と年間人件費から計算します。
 

表3 各現場の人員と年間人件費      単位 万円

社員番号 氏名 年間労務費
マシニングセンタ 1001 原価一郎 550
1002 原価二郎 546
1003 原価三郎 450
1004 原価四郎 440
1005 原価五郎 350
2001 計算一子 101
NC旋盤 1006 原価六郎 550
1007 原価七郎 535
1008 原価八郎 420
2002 計算二子 160
平面研削盤 1009 原価九郎 528
1010 原価十郎 528
その他汎用 1011 原価十一郎 650
2003 計算三子 130
組立 1013 原価十二郎 700
1014 原価十三郎 700
1015 原価十四郎 700
2004 計算四子 120
2005 計算五子 120
2006 計算六子 120
2007 計算七子 120
2008 計算八子 120
生産管理課 1016 原価十五郎 500
2009 計算九子 112

 

労務費以外の費用は、表2の 製造原価報告書に製造経費として挙げられている費用です。この製造経費には電気代、修繕費、消耗品費、保守料などいろいろな費用があります。ここでは、この製造経費を「その他の費用」と呼びます。この中で減価償却費には各現場の設備の購入費用が含まれます。そこで表4のように各現場の設備と減価償却費を一覧表にして集計します。
 

表4 各現場の設備と減価償却費   単位 万円

設備ID 設備名 減価償却費
マシニングセンタ 10101 MC1 0
10102 MC2 21
10103 MC3 181
10104 MC4 221
10105 MC5 251
10106 MC7 100
10107 MC8 12
NC旋盤 10110 NC1 0
10111 NC2 190
10112 NC3 16
10113 NC4 6
平面研削盤 10201 GC1 85
10202 GC2 85
10203 GC3 85
10203 GC4 6
その他汎用 10204 KM1 50
組立 10301 KT1 0

 

利益まっくすの計算結果

アワーレート

利益まっくすで計算したアワーレートを表5に示します。
 

表5 利益まっくすのアワーレート    単位 円/h

設備 人と設備
マシニングセンタ 4,361 1,361 5,722
NC旋盤 4,358 919 5,277
平面研削盤 6,535 2,940 9,475
その他汎用 4,520 6,565 11,086
組立 4,244 0 4,244

 

利益まっくすで計算したアワーレートと、これまで経営コラムで紹介した従来の方法で計算したアワーレートを表6に比較します。(人と設備が一緒に生産する条件としました。)
 

表6 利益まっくすと従来の方法の比較    単位 円/h

従来
人のみ
従来
人と設備
利益まっくす
マシニングセンタ 5,324 5,070 5,722
NC旋盤 5,324 4,494 5,277
平面研削盤 10,258 9,352 9,475
その他汎用 9,281 10,911 11,086
組立 4,679 4,943 4,244

 

ここで【従来 人のみ】は、「製造業の個別原価計算18 事例1「原価計算基準」に則った個別原価計算との比較」で計算した、人の時間を間接費の配賦基準としてアワーレートを計算したものです。
 

【従来 人と設備】は、「製造業の個別原価計算19 「原価計算基準」に則った個別原価計算(人と設備を分けた場合)」で計算した、人と設備の時間を別々にしてアワーレートを計算したものです。

間接費の配賦の仕方が異なるので同じ値にはなりませんが、アワーレートは近い数値になりました。
 

利益まっくすでの個別原価

このアワーレートを使って前回個別原価を計算した製品の原価を利益まっくすで再度計算します。

販管費レートは同じ値を使用します。
 

製品1
機械加工製品 1ロット100個 受注金額2,100円
加工工程

  1. マシニング
  2. NC旋盤
  3. 平面研削盤
  4. その他汎用

 

材料費
使用材料 S45C-D 材料単価310円/kg  使用量1kg
材料費=310×1=310円
製造時間と工程別の原価を表7に示します。
 

表7 製造時間と工程別の原価1

工程順 現場 製造時間 製造費用
(人の時間のみ)
製造費用
(人と設備)
製造費用
(利益まっくす)
加工時間
1 マシニングセンタ 0.05 372 304 343
2 NC旋盤 0.08 506 126 100
3 平面研削盤 0.03 369 309 313
4 その他汎用 0.02 187 219 223
合計 1,435 958 979

 

人と設備を分けて計算した従来の計算方法と利益まっくすは近い数値になることが分かります。
 

製造原価=材料費+製造費用
=310+979=1,289円
販管費=製造原価×販管費レート
=1,289×0.137=176
総費用=製造原価+販管費
=1,289+176=1,465円
利益=受注金額-総費用
=2,100-1,465=635円
 

製品2
組立製品 1ロット25個 受注金額400,000円
工程は、組立のみ
材料費
外注加工品、購入品合わせて 材料費 240,000円
製造時間と工程別の原価を表8に示します。
 

表8 製造時間と工程別の原価2

現場 製造時間 製造費用
(人の時間のみ)
製造費用
(人と設備)
製造費用
(利益まっくす)
段取時間
組立 16 74,906 79,137 69,950

 

製造原価=材料費+製造費用
=240,000+69,950=309,950円
販管費=製造原価×販管費レート
=309,950×0.137=42,463円
総費用=製造原価+販管費
=309,950+42,463=352,413円
 

製品2で、利益まっくすの方が製造費用が低くなったのは、組立工程のアワーレートが利益まっくすでは低いためです。

これは従来の方法では間接費用の分配時間を基準としたため、時間が比較的多い組立工程は間接費が多くなり、アワーレートが高くなりました。
 

利益まっくすは、直接製造費用を基準に間接費を分配するため、人件費のみの組立工程よりも設備を使用する他の工程の方が直接製造費用が多く、間接費も多くなったためです。

工場の運営から考えると、設備は間接的な費用が多く、人のみの現場では間接的な費用は多くないため、利益まっくすの方がより実情に近いといえます。
 

ただ、従来の方法が間違いで、利益まっくすが正解というわけではありません。

間接費用の分配は正解がありません。

製品2の原価が、利益まっくすで従来の方法に比べて低ければ、製品1は、利益まっくすで従来の方法に比べ高くなっています。年間で合計すれば合計金額はほぼ同じになります。
 

こういった製造業の原価計算の考え方と見積、損失の見える化については下記リンクを参照願います。

 

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【実務における原価の疑問】 19 「原価計算基準」に則った個別原価計算(人と設備を分けた場合) https://ilink-corp.co.jp/5598.html https://ilink-corp.co.jp/5598.html#respond Tue, 21 Jul 2020 00:32:43 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=5598 製造業の個別原価計算18 事例1『原価計算基準』に則った個別原価計算との比較」で、従来の原価計算基準に従って、個別原価を計算した場合を示しました。
 

個別原価の計算に使用するアワーレートは、

  • 人のアワーレートは、製造に直接かかわる人の作業時間と労務費から計算します。
  • 設備のアワーレートは、製造に直接用いられる設備の稼働時間と費用 (減価償却費とランニングコスト) から計算します。

 

これらの計算の元となる金額は決算書からわかります。
 

問題はそれ以外の費用です。
消耗品や水道光熱費などの費用は、何らかの基準で部門毎に分配 (注1) します。
 

生産管理や資材調達などの間接部門の費用は、それぞれの部門の費用 (人件費) を各直接製造部門に分配します。分配基準は計画回数や手配回数などです。

原価計算の本にはこのように書いてありますが、これはやってみると大変です。
 

「製造業の個別原価計算18 事例1『原価計算基準』に則った個別原価計算との比較」では、この方法で個別原価を計算しました。
 

この時は、人の作業時間と設備の稼働時間は同じ時間として計算しましたが、実際は設備だけで無人で加工する場合もあります。そうなると人の作業時間と設備の稼働時間が一致しなくなり、計算が合わなくなります。
 

このコラムでは、そのような場合にどうなるのか計算してみました。
 

注1) 会計では費用の分配は、配賦、賦課などと呼びます。しかしここでは工場の方がわかりやすいように難しい会計用語はあえて使わずに分配と呼ぶことにします。)
 

人と設備の時間が異なる場合

「製造業の個別原価計算18 事例1『原価計算基準』に則った個別原価計算との比較」で取り上げたA社は、図1に示すような設備があります。このうちNC旋盤は加工開始すると作業者は設備を離れ、設備は自動で加工します。その場合、加工中は人の費用はかかってなく、設備の費用のみです。
 

図1 各現場の段取と加工の人と設備の時間の組合せ

図1 各現場の段取と加工の人と設備の時間の組合せ
 

この場合、設備と人のアワーレートを別々に計算し、さらに間接費用のアワーレートを計算します。
 

設備と人の間接費の分配

人だけで製造する場合、費用はアワーレート(人)+アワーレート(間接費)
設備だけで製造する場合、費用はアワーレート(設備)+アワーレート(間接費)
人と設備で製造する場合、費用はアワーレート(人)+ アワーレート(設備)+アワーレート(間接費)

から計算します。
 

稼働時間の問題

アワーレート(間接費)を計算する際、間接費を分配する基準が問題になります。A社の人と設備の稼働時間は表1のようになっていました。
 

表1 実稼働時間      単位 時間

設備 分配用
マシニングセンタ 9,120 10,320 9,120
NC旋盤 5,200 10,000 10,000
平面研削盤 2,150 2,688 2,150
その他汎用 2,464 1,232 2,464
組立 9,459 0 9,459

 

NC旋盤は自動で加工を行うので設備の加工時間は人に比べて長くなっています。これに対して組立は設備を使用しないので設備の時間はゼロです。従って、人の時間、設備の時間のどちらかを間接費の分配に使用すると、間接費の分配がアンバランスになります。
 

人の時間で分配すればNC旋盤の時間が少なくなり、間接費の分配も少なくなって他の現場の間接費が相対的に高くなります。

設備の時間で分配すれば、組立は設備の時間がゼロなので間接費の分配もゼロになります。

どちらかの時間で分配するとこのような問題が生じるため、今回は便宜的にNC旋盤のみ設備の時間を使用し、他の工程は人の時間を使用しました。
 

アワーレート(間接費)の計算

この時間からアワーレート(間接費)を計算したものを表2に示します。
 

表2 アワーレートの計算結果    単位 円/h

設備 間接
マシニングセンタ 2,628 1,091 1,351
NC旋盤 3,202 427 865
平面研削盤 4,911 1,641 2,801
その他汎用 3,166 3,856 3,890
組立 2,854 0 2,089

 

表3にこの人と設備と間接費のアワーレートを合計したものを示します。右隣に「製造業の個別原価計算18 事例1『原価計算基準』に則った個別原価計算との比較」で計算した「人の時間のみで計算したアワーレート」を示します。
 

表3 加工と段取のアワーレート     単位 円/h

人+設備+間接費 人の時間のみで計算
マシニングセンタ 5,070 5,324
NC旋盤 4,494 5,627
平面研削盤 9,352 10,258
その他汎用 10,911 9,281
組立 4,943 4,679

 

アワーレートを計算する時間が異なるので、そのまま比較はできませんが近い数字になってることがわかります。
 

個別原価の計算

このアワーレートを使って前回個別原価を計算した製品の原価を再度計算します。
 

販管費レートは同じ値を使用します。
 

製品1
機械加工製品 1ロット100個 受注金額2,100円
加工工程
1. マシニング
2. NC旋盤
3. 平面研削盤
4. その他汎用
 

材料費
使用材料 S45C-D 材料単価310円/kg  使用量1kg
材料費=310×1=310円
製造時間と工程別の原価を表4に示します。
 

表4 製造時間と工程別の原価1

工程順 現場 製造時間 製造費用
(人と設備)
製造費用
(人の時間のみ)
合計
1 マシニングセンタ 0.06 304 372
2 NC旋盤 0.085 126 506
3 平面研削盤 0.033 309 369
4 その他汎用 0.0201 219 187
合計 958 1,435

 

NC旋盤の費用が大幅に下がったこともあり、製造費用は大きく低下しました。
 

製造原価=材料費+製造費用
=310+958=1,267円
 

販管費=製造原価×販管費レート
=1,267×0.137=174
 

総費用=製造原価+販管費
=1,267+174=1,441円
 

利益=受注金額-総費用
=2,100-1,441=659円
 

製品2
組立製品 1ロット25個 受注金額400,000円
工程は、組立のみ
材料費
外注加工品、購入品合わせて 材料費 240,000円
製造時間と工程別の原価を表5に示します。
 

表5 製造時間と工程別の原価2

工程順 現場 製造時間 製造費用
(人と設備)
製造費用
(人の時間のみ)
合計
1 組立 16.04 79,137 74,906

 

今回の計算の方が組立のアワーレートが高くなったため、製造費用は高くなりました。
 

製造原価=材料費+製造費用
=240,000+79,137=319,137円
 

販管費=製造原価×販管費レート
=319,137×0.137=43,722円
 

総費用=製造原価+販管費
=319,137+43,722=362,859円
 

管理会計での個別原価

このようにアワーレートの計算では、間接部門の労務費や、消耗品費や水道光熱費など、その他の費用を各現場に分配するやり方で結果に差が出ます。
 

実はこれらの費用の多くは固定費のため、あらかじめ総額は決まっていて生産が多くても少なくても変わりません。このように個別原価を計算する過程において、固定費の分配の仕方が原価に影響します。
 

そこで管理会計では、図2に示すように、あえて固定費を分配せず、変動費のみで個別原価を計算します。
 

図2 管理会計での個別製造原価

図2 管理会計での個別製造原価
 

この方法は直接製造費用という確実な数値のみで原価を計算するため、上記のように間接製造費用の分配の仕方で原価が変わることはありません。
 

一方目標限界利益が比較的大きな金額になるため、利益管理が甘くなるという欠点があります。特に顧客からの値下げの要求が厳しい場合、限界利益があるからと値下げしてしまうと赤字になってしまいます。
 

一般消費者向けの商品のように市場価格で価格が決まってしまう場合は、細かく原価を計算しても意味がない (販売価格を変えられない) ので上記の方法で十分です。

しかし個別受注生産で、個々に見積を出して顧客と価格交渉をする場合、見積に占める製造原価、販管費、利益の割合を知り、毎回顧客と粘り強く交渉しなければなりません。製造原価だけを見て粗利があるからと安く受注し、販管費がマイナスになるようでは利益が確保できません。
 

図3 受注活動における個別原価の役割

図3 受注活動における個別原価の役割
 

図3で受注価格8,200円、利益1,000円です。この場合、製造原価6,000円、販管費1,200円、利益1,000円と分かっていれば、少なくとも7,200円以上の価格で受注しようと頑張ると思います。
 

しかし変動費4,000円、限界利益4,200円しかわからなければ、1,200円値下げしても限界利益が3,000円もあると考えるかもしれません。

あるいは製造原価6,000円、粗利2,200円しかわからなければ、1,200円値下げしても粗利が1,000円あると考えるかもしれません。
 

従って、個別受注生産では製造原価、販管費、目標利益は必要と考えます。
 

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