コストダウン | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 数人の会社から使える原価計算システム「利益まっくす」 Wed, 31 Dec 2025 03:01:30 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.7.4 https://ilink-corp.co.jp/wpst/wp-content/uploads/2021/04/riekimax_logo.png コストダウン | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 32 32 【製造業の値上げ交渉】15. いくら値上げするのが適切だろうか? https://ilink-corp.co.jp/9869.html https://ilink-corp.co.jp/9869.html#respond Sat, 20 Jan 2024 02:59:18 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9869
このコラムの概要

製造業が適切な値上げ金額を決定するには、まず企業の持続的成長に必要な「適正利益」を明確に定義することが重要です。その上で、製品の総原価(人件費、設備費、原材料費、エネルギーコストなど)を網羅的に算出し、適正利益を上乗せします。この客観的かつ論理的な計算に基づいた値上げ金額は、交渉を成功させ、企業の未来を支える戦略的な価格設定となります。

 
原価を見直したら大幅な赤字だったため、値上げ交渉を行いました。

取引先から「値上げは検討するが、この金額は高すぎる」と言われました。どうすればいいでしょうか?
 

これまで値上げできなかったことが原因

 
こうなった原因は、これまで様々な費用が少しずつ上がっていたのに、それが価格に反映できなかったためです。

その結果、「自社の現在の見積金額」と受注金額との乖離が大きくなってしまいました。しかもこれまで「コストダウンはあっても値上げはあり得ない」という状況だったため値上げができませんでした。その結果、値上げ金額が大きくなってしまいました。

例えば、架空の企業A社 A1製品は

受注金額が860円、販管費込み原価が908円のため、48円の赤字でした。

(A社の詳細は【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?を参照願います。)

目標利益を得るには、価格を988円に

つまり128円の値上げが必要でした。これを図1に示します。

図1 A社 A1製品の値上げ金額
図1 A社 A1製品の値上げ金額

実はA1製品は、〇年前の見積は860円でした。

販管費込み原価は800円、60円の利益でした。

しかしその後、材料費、外注費、人件費、工場の経費が上昇し、

現在の販管費込み原価は908円、860円の受注金額では48円の赤字になってしまいました。
 

適切な値上げ金額とは?

 
一方、値上げは取引先の立場も考えなければなりません。取引先は仕入部品の価格が上昇すれば、それを製品の価格に転嫁しなければならないからです。

取引先が自社製品を販売するメーカーの場合、値上げすれば競合との競争に負けて市場シェアを失うかもしれません。

取引先も製品をメーカーに納める下請けだった場合、仕入部品が値上げした分、今度は取引先が値上げ交渉しなければなりません。これはとても大変なことです。

経済産業省の「自動車産業適正取引ガイドライン」には、ティア1など下請け部品メーカー(といっても大企業)が取引先の自動車メーカーに対し、

「仕入価格の上昇を価格転嫁ができない」、

「値上げすると次のサプライヤー選定に影響すると言われた」という事例が載っています。

こういった背景があるため、取引先が大幅な値上げを受け入れるのは難しいのです。

《私の経験》
(機械メーカーで、設計、品質保証に24年間従事しました。)
 私の経験でも仕入部品の値上げはある程度は許容しましたが、大幅に上がれば他の仕入先を探しました。大幅な値上げは製品の原価を大きく上げるからです。
 その場合、まず今の仕入先に対し「以前と同じ価格でつくるためにはどうしたらよいか」を協議しました。それがうまくいかなければ他の仕入先を探しました。それでも値段が高くなるような場合は、以前の価格でできないか設計変更を検討しました。
 しかし設計変更は品質リスクを伴います。仕入先を変えて同じ価格でできるのであれば、そうしました。

失注のリスク

 
つまり大幅に値上げすれば、失注するリスクがあります。また大幅な値上げは取引先との関係が悪化し、その後の取引にも影響します。

どうしたらよいでしょうか?
 

適正価格を示して交渉

 
このような場合、値上げは取引先が受け入れられる(と思われる)金額にとどめておく必要があります。

ただし、本当に必要な金額は取引先に提示します。そして「原価はこれだけかかっているため、本当はここまで値上げしたい。しかし大幅な値上げは難しいことは理解しているので、これだけは上げてほしい」と交渉します。

例えばA社では、

A1製品をいきなり128円値上げするのが困難であれば、取引先に

「当社の適正価格は988円ですが、いきなりその価格にするのは難しいでしょうから、せめて80円値上げして940円にしてもらえませんか?」

と交渉します。

940円であれば、赤字は解消し32円の利益になります。目標利益ではありませんが、赤字で受注するよりはましです。
(実際の金額は自社と取引先との関係で変わります。この数字はあくまで参考値です。)
 

コストダウン提案も入れる

 
できれば

「できる限り値上げ金額を低くするようにコストダウンのアイデアを考えるから図面や仕様の見直しに協力してほしい」、

論点をコストダウン協議に変えます。

それには日頃から図面指示や形状に注意して、コストダウンできる箇所を探します。

例えばA1製品では、コストダウンを検討した結果、「公差を緩和し、検査基準を変える」ことで、製造時間を短くできることが分かりました。その結果
人件費 : マイナス20円
製造経費 : マイナス3円
が見込まれました。

これにより値上げを60円、値上げ後の金額920円に抑えても、40円の利益が出ます。これを図2に示します。

図2 コストダウン提案も入れた場合


 

他社がやらない製品

 
一方、何らかの理由があって他社がやらない製品であれば、取引先も値上げを受け入れざるを得なくなります。その場合は、取引先が受け入れる値上げ金額はもう少し高くなります。ただし値上げ金額があまり高いと、取引先は他にできるところを探し始めますので、さじ加減は必要です。ただし他社がやらないものなのかどうかは、日頃から情報を集めていないとわかりません。

「なぜこれは当社に発注するのですか?」

「この図面の○○はとても難しいのですが、他にやるところはないのですか?」

取引先の担当者と日々の会話の中で「他に競合はあるのか」、「競合があれば価格や品質面ではどうか」などさりげなく質問して情報を収集します。
 

失注しても影響の少ない製品

 
あるいは受注が潤沢にあり、例えこの製品を失注しても業績への影響が小さければ、値上げ幅を大きくすることもできます。値上げ交渉は失注のリスクがゼロではありません。受注が少なく、ひとつ失注しても業績に大きく影響すれば、値上げ交渉は消極的になります。つまり営業活動がどれだけ成果を上げていて、受注がどれだけあるかが、値上げ交渉に影響します。

一方ずっと前に受注して、同じ価格でつくり続けている製品もあります。例えば15年前に受注して、受注価格は15年間変わっていない製品です。

これはどうすればよいでしょうか?

これについては【製造業の値上げ交渉】16. 15年前の製品、赤字がひどくやめたいを参照願います。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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【原価計算と見積の基礎】13.段取時間の短縮 https://ilink-corp.co.jp/9579.html https://ilink-corp.co.jp/9579.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:30:25 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9579
このコラムの概要

製造業において、多品種少量生産が進む中、段取時間の短縮は極めて重要です。この取り組みは、生産停止時間を減らすことで設備の稼働率を高め、製品あたりの固定費を削減します。また、人件費や在庫コストの削減、さらにはリードタイム短縮による顧客満足度向上にも繋がります。段取時間の短縮は、単なる効率化に留まらず、企業の競争力強化に不可欠な経営戦略です。

 
ロットが減少すれば利益が少なくなります。これについては【原価計算と見積の基礎】12.ロットの減少によるコストアップで説明しました。

それでも利益を出すためには、段取費用を削減します。これには段取時間の短縮や外段取化があります。ここでは

  1. 段取の種類
  2. 段取時間の短縮
  3. 外段取化
  4. 段取時間の短縮と外段取化のコスト削減効果

について述べます。

1.二種類の段取

一般的に「段取」と呼ばれる作業は、二種類あります。1つは「品種の切替」、もう1つは「新たな製品の生産準備」です。 

品種の切替

 現在生産中の製品を「すでに実績がある別の製品」に切り替えることです。

今日では製品の種類が増え、大量生産の工場も以前より頻繁に段取を行っています。
多品種少量生産では段取の頻度はさらに高くなっています。そのため段取時間は生産性に大きく影響します。段取で行うことは加工方法によって変わります。具体的には以下の内容です。

【機械加工】
加工プログラムの切替、刃物の交換、加工治具の準備、設定値の入力など

【樹脂成形】
金型の交換、樹脂原料の入れ替え、射出成形機の設定など

【プレス加工】
金型の交換や材料の入れ替え

段取後は、テスト生産を行い品質を確認します。問題があれば製造条件を調整します。品質に問題がなければ生産を開始します。
すでに実績がある製品なので製造条件は確立し、作業手順も決まっています。そのためできるだけ短時間に行います。できれば目標時間を決め、実際にかかった時間を記録します。

新たな製品の生産準備

 これは「今まで実績のない製品」の生産準備です。以下の作業が増えます。

【機械加工】
加工プログラムの作成やテスト加工

単品生産や多品種少量生産では、日々新たな製品を生産します。日常の段取の多くはこの「新たな製品の生産準備」です。

【プレス加工、樹脂成形加工】
新しい金型を使ったテスト加工、加工条件の調整です。量産の現場ではそれほど多くありません。

プレス加工、樹脂成形加工など量産工場では、「品種の切替」を段取と呼び、新たな製品の生産準備は「生産立ち上げ」や「生産準備」と呼ぶこともあります。

この新たな製品の生産準備は、時間よりも作業の正確さとその後の生産の品質が安定していることが重要です。最初の設定に問題があれば、その後不良品を大量に生産してしまいます。

このように、2種類の段取では内容や要求されることが違います。では段取時間はどうやって短縮すればよいでしょうか。

2. 段取時間短縮の方法

 実際に段取作業を観察すると、様々な課題が見つかります。

  1. 段取に必要な治具や金型が近くにないため、遠くまで取りに行っている。あるいは治具や金型が見つからず探している。
  2. 治具や金型を取り付ける位置が定まっていないため、調整や芯出しをしている。
  3. 交換部分がユニット化されていないため、交換に時間がかかる(例 マシニングセンタのツールホルダの数が十分になく、ツールホルダの交換でなく、ツールホルダの刃物を交換している)。
  4. 段取作業中、締め付けるボルトの数が多く、締め付けに時間がかかっている。
  5. 段取の手順が作業者によってバラバラで、段取時間も作業者によって異なる。

このような課題を改善します。一方、段取時間は同じでも、段取を生産中に行えば、設備の停止時間を短くできます。これが外段取化です。

3. 外段取化

 外段取とは、生産中に次の生産の段取を行うことです。

例えばプレス加工や樹脂成形加工では、生産中に次の金型を運びます。樹脂成形加工では、すぐに生産できるように予めヒーターで金型の温度を上げておきます。

このように生産中に行う段取を「外段取」と呼びます。これに対して設備を止めて行う段取を「内段取」と呼びます。「内段取」の一部を「外段取化」すれば、段取中の設備の停止時間を短くできます。

図1では、金型交換1時間のうち、30分を外段取化しました。その結果、内段取時間は30分に短縮できました。

図1 射出成形機の外段取化

マシニングセンタの外段取

 マシニングセンタには、図2に示すようにワークをパレットと呼ばれる治具に固定し、このパレットを自動で交換するものがあります。

パレットを自動で交換する装置をパレットチェンジャー(PC)と呼びます。パレットの交換は自動で行いますが、パレットからのワークの着脱は作業者が行います。パレットには異なるワークを取り付けることができるため、パレットを交換すれば品種を切り替えることができます。またパレットチェンジャーに多くのパレットをセットすれば、夜間無人で生産できます。

図2 パレットチェンジャー

4. 段取時間短縮と外段取化のコスト削減効果

射出成型加工の外段取化の効果

 樹脂成形加工B社 B1製品 (ロット1,000個)、外段取化によって原価がどれだけ改善されるのでしょうか。

【従来】
段取時間(内段取) 1時間

【改善後】
外段取時間0.5時間 内段取時間0.5時間

外段取は生産中、作業者が空いている時間を使って行います。そのため外段取の人の費用はゼロです。

ロット数 : 1,000個
加工時間 : 0.0167時間 (1分)

この時の改善前と改善後の製造費用、利益を図3に示します。

図3 段取時間短縮の効果

製造費用          利益
段取1時間 : 16.7円   段取1時間 : 0.2円
段取0.5時間 : 15.2円    段取0.5時間 : 2.0円

ロット1,000個では0.2円しかなかった利益が、段取時間を短縮したことで2.0円に増加しました。全体の製造時間も短くなり、時間当たりの出来高も増えました。

この外段取化のコスト低減は、作業者が空いている時間に行うことで人の費用がゼロになったためです。生産中作業者が手一杯で、外段取のため他から応援してもらう場合は、人の費用が発生します。そうなると外段取化のコスト低減効果は大幅に減少します。

実は外段取化の最大のメリットは、設備の稼働時間が長くなることです。しかし、それをお金に変えるには、稼働時間が長くなった分、生産量を増やす、つまり受注を増やさなければなりません。外段取化を進めても受注が増えなければ利益は増えません。

では検査が追加されると原価はどれだけ変化するのでしょうか?

検査の追加によるコストアップについては【原価計算と見積の基礎】14.検査追加によるコストアップを参照願います。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化しました。
中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として、専門的な言葉を使わず分かりやすく書いた本です。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

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経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

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【製造業の値上げ交渉】12. 取引先から値上の根拠を求められた。どうすればいいのだろうか? https://ilink-corp.co.jp/9110.html https://ilink-corp.co.jp/9110.html#respond Fri, 24 Nov 2023 08:16:59 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9110
このコラムの概要

製造業の値上げ交渉では、具体的な根拠の提示が不可欠です。「コストが上がったから」だけでは不十分です。原材料費、人件費、エネルギーコスト、運賃、品質向上への投資といった各項目の変動を、過去のデータや市場動向を基に数値で明確に示します。製品ごとの原価上昇分を具体的に説明することで、顧客の納得を得やすくなります。透明性のあるデータに基づいた交渉が、信頼関係を維持し、成功に導く鍵です。

 
様々な費用が高くなっている今日、製造業も値上げ交渉が避けて通れません。

ところがこれまで「価格引下げ」への対応はありましたが、「値上げ」となると経験がない企業もあります。

そこで値上げ交渉の手順について【製造業の値上げ交渉】10. 値上げ交渉は初めて、どう進めていけばよいのだろうか?で説明しました。

こうして意を決して値上げ交渉に行くと…
 

値上げの根拠を要求

 
取引先から
「根拠となる資料を出してください」
と言われることがあります。根拠とは何でしょうか?
 

なぜ顧客は値上げの根拠を求めるのか?

 
実は顧客が最も気にするのは
「便乗値上げ」
です。

様々なものの値段が上昇しています。値上げはやむを得ないというムードです。

そうかといって仕入先の値上げをそのまま受け入れれば原価が高くなってしまいます。取引先が部品メーカーの場合、今度は取引先が自身の納入先に値上げをお願いしなければなりません。そして

「こういった理由で仕入れ先からの値上げがあったため、納入価格の見直しをお願いします」

とお願いしなければなりません。そのためにも具体的な値上げの根拠が必要です。
 

社内での承認・決済

 
仕入先からの値上げは、取引先の内部で審査し、承認を得なければなりません。例え担当者が「その金額が妥当な金額だ」と思っても上司から

「なぜその金額なのか」

「もっと値上げ金額を引き下げることができないのか」

と指摘されるかもしれません。

なぜその金額なのか?


 

10%値上げ、なぜ10%なのか?

 
例えば
「電気代高騰、材料費上昇のため10%値上げさせてほしい」とお願いします。取引先は

「なぜ10%なのでしょうか?」

「値上げの原因が電気代の上昇ならば、金額はもっと低いのではないか」

と思います。
 

多くの人が気づかない『食品とは値上げの考え方が違う』

 
実は、私たちが普段接している一般消費者向けの商品、例えば食品などの値上げと製造業の値上げとは違うのです。

これらの商品は多額の販売促進費を投じて売上を維持しています。この販売促進費は、商品の価格のかなりの割合を占めます。どの商品もライバル企業があります。ライバル企業が値上げしなければ消費者は他のメーカーの商品を買います。

競合が値上げしなければ…

例えば食パン、皆さんはメーカーにこだわりがありますか?
「絶対にA社の食パンでないといやだ!」
そういう方は少ないのではないでしょうか?

そこでメーカーは消費者に振り向いてもらえるように、広告宣伝やキャンペーンに多額のお金をかけています。もし自社だけが値上げすれば、顧客は安いライバルメーカーの商品を買います。値上げしても市場シェアが低下すれば、売上が低下してしまいます。

これでは本末転倒です。
 

小麦価格が高騰してもパンは高くならない。

 
実際、小麦価格が高騰しても食パンの原価は10%も上がりません。計算してみましたが1円にも満たない金額でした。しかし小麦以外にも原材料、工場の経費、人件費、販売促進費など様々な費用が上がれば、メーカーの利益は減少します。

そこでメーカーは市場シェアを落とさないように値上げはできるだけ我慢します。それでも利益の減少が大きくなればライバルメーカーの動向も踏まえて、消費者に分かりやすい金額に値上げします。
 

異なる製造業の値上げ

 
一方、製造業、特に中小企業の多くはメーカーの下請けです。値上げを我慢したからといって、売上が増えるわけではありません。しかも費用が増加すれば、その分利益が減少します。値上げをしなければ、会社が立ち行かなくなってしまいます。
 

値上げ金額の妥当性を示す資料

 
製造業の値上げ交渉では、取引先に値上げ金額の妥当性を示す資料を提示します。もし電気代の上昇のため値上げするのであれば、10%というキリのいい数字にはなりません。

この値上げ金額の資料の例を、下図に示します。

 値上げ金額の例
値上げ金額の例


こうした値上げ金額の明細があれば、取引先も金額の査定が容易です。そして
「電気代が30%上昇したため、9.6円増加」
と値上げ金額を妥当と感じます。
 

この値上げ金額の詳細については【製造業の値上げ交渉6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?を参照願います。
 

ただし値上げの根拠を出す際、実際の原価の明細を出すのは問題があります。ではどうすればよいでしょうか?
 

詳細な原価を求める理由は?

 
なぜ取引先は詳細な資料を求めるのでしょうか?

これは以下の理由が推測されます。

  1. 上司に説明するのに必要
  2. 金額が妥当か査定するために詳しく知りたい
  3. 金額の詳細から値上げ金額を引き下げたい

 

詳細な数字を出しても良い場合

 
結局、詳細な数字を出せば、値上げ金額の引き下げにつながりかねないので、できるだけ出さない方が良いです。取引先が中小企業の費用を理解していないこともあるからです。アワーレートや間接製造費用、販管費について取引先が誤解している場合もあります。

その結果

  • アワーレートが高すぎる。○○円/時間ぐらいが適正でないか
  • 製造時間が長すぎる。もっと短いはずだ
  • 販管費が高すぎる。〇%以下にすべきだ
  • 利益が大きすぎる

といった指摘を受けます。

取引先との信頼関係があり、コストダウン協議のためであれば…

 
一方、取引先と一緒にコストダウンを協議するには、詳細な原価情報が必要です。「どのような工程で、製造時間はどれくらいか」わからなければコストダウンの協議が進みません。その場合、取引先と信頼関係があれば、詳細に数字を出すことも可能です。

顧客と協議
顧客と協議

 

安く調達するためには

 

取引先は安く部品を調達したいと思っています。

当たり前ですが、安く部品を調達するためには、安くつくる必要があります。そのためには作り方を変えなければなりません。

受注側と発注側が協力して、より安くつくる方法を一緒に考えて取り組む必要があります。その結果、取引先も仕様や公差の見直しが必要になるかもしれません。
 

100円でつくるものを80円で買おうとしていないか?

 
安くつくる努力をしないで、交渉で安くしようとすれば
「100円でつくるものを80円で買おうとする」
ことになります。

これは中小企業庁のいう「買いたたき」になってしまいます。
 

企業によってアワーレートは違う

 
企業によって、同じ工程でもアワーレートは違います。その原因は、設備や人の違い、減価償却の違い、間接部門の比率、稼働率など様々です。○○工程ならば○○円/時間 と一律では決められません。
 

この会社毎の違いと適正価格については【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?を参照願います。
 

顧客と計算条件が違う

 
しかも自社と顧客で計算条件が違うこともあります。例えば、

【顧客のアワーレート計算】 直接費用のみ、稼働率100%

【自社のアワーレート計算】 間接製造費用を含む、稼働率80%

こうなると取引先が計算するアワーレートは低くなります。こちらが提出した資料のアワーレートを見て「こんなに高いわけない!」と思うかもしれません。

実際は、取引先の工場でも稼働率が下がれば原価は高くなっています。これは原価差異として経理が計算していても、工場の人たちは知らないかもしれません。しかし仕入れ先が見積をつくる時、稼働率100%では実現できない原価になってしまいます。

同様に間接部門費用、販売費及び一般管理費、利益も企業によって違います。
 

原価は真実

 
本コラムで述べる原価の計算方法は、先期の決算書の数値を元にしています。今期の費用が先期とほぼ同じであれば、この原価は「真実」です。

従って、この見積金額で受注できなければ、製造費用、販管費をカバーして、なおかつ必要な利益を得られません。しかし、この数字を正しく理解するには、それぞれの企業のおかれた背景や中小企業固有の事情を理解する必要があります。

これについては【製造業の値上げ交渉】13. なぜ取引先はアワーレートが高いというのだろうか?を参照願います。


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