23. 購買は原価をどう見てコストダウンを考えているのか?

購買の仕事はできるだけ安く調達することです。

そのためには、○○では最初の選定が重要なことを書きました。特に購入品はそうです。

私の経験でも、選定の仕方によって価格がかなり変わりました。

では加工品はどうでしょうか。

加工品の場合、一般的には仕入先からの見積に対し、項目ごとに交渉します。

あるいは発注先から価格を指定(指値)する場合もあります。

この見積から価格交渉を行うのですが、原価について購買が誤解していることがあります。そうなると交渉がかみ合いません。

どんな誤解があるのでしょうか。
 

経費に対する誤解

 
製品1個の原価とは、製品を1個製造するのにかかった費用です。

実際は工場では様々な費用が発生します。実際は製品1個にどの費用がどれだけかかったか正確にはわかりません。

しかし「製品1個にいくらかかったのか」わからなくても、会社全体では、それぞれの費用が年間いくら発生したのかは分かります。

それは決算書にあるからです。

そこで決算書の費用から原価に展開すれば、会社の費用を漏れなく原価に入れることができます。

この時、以下のように考えます。
 

「ボルト締めてナンボ」「切粉出してナンボ」

工場でお金を稼いでいるのは、

  • 直接ものをつくっている作業者(直接作業者)
  • 直接生産している設備(直接製造設備)

この2つだけです。

それ以外の間接部門の人や工場の建物、フォークリフトなどの付帯設備はお金を稼いでいません。

言い換えれば、間接部門の人の給料や工場の経費は、直接作業者や直接製造設備が支えています。

工場は「ボルト締めてナンボ」「切粉出してナンボ」なのです。

従って間接部門の人件費、現場の間接作業者、工場の経費は一定の比率で原価に含めなければなりません。

これらはお金を稼いでいないので、お金を稼ぐ直接作業者や直接製造設備に負担してもらわなければならないからです。

つまり工場で発生する費用はすべて原価になるのです。
 

1時間当たりの費用 : アワーレート

製品1個の原価は、その現場の1時間当たりの費用(アワーレート)に製品1個の製造時間をかけて計算します。

製造費用=アワーレート×製造時間

このアワーレートは、チャージ、又は賃率とも呼ばれます。

アワーレートは、アワーレート(人)とアワーレート(設備)があります。

作業者がずっと設備を操作している場合、アワーレートはアワーレート(人)とアワーレート(設備)の合計です。

例えばアワーレート(人)とアワーレート(設備)の合計は、5,000円/時間とします。

その場合、1時間かけて製造した製品は、5,000円以上でなければ利益が出ません。

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原価を決算書に従い整理

このアワーレートを計算する元となる費用は決算書にあります。これは下図のようになります。

売上、製造原価、販管費、利益

図 売上、製造原価

販管費は営業、総務、経理など製造に直接関係しない人の人件費と、通信費、事務消耗品、運賃など製造に直接関係しない費用です(シンプルにするため在庫の増減は考えません)。

この製造原価は下図のようになります、

図 製造原価

直接製造費用は直接ものをつくっている作業者と直接生産している設備の費用です。

それ以外に工場では

  • 生産管理、品質管理など間接部門の人件費
  • 電気代など光熱費、建物や設備の償却費、消耗品、借地料など工場の様々な経費

があります。

これが間接製造費用です。

間接製造費用は意外と大きく、工場によっては1個の製品で直接製造費用と同じ金額の間接製造費用が発生することもあります。
 

間接製造費用はアワーレートに組み込む

一般的には、間接製造費用は直接製造費用と合計してアワーレートを計算します。

図 アワーレートの計算

具体的には間接製造費用は直接製造費用を合計し、それを年間時間で割ってアワーレートを計算します。

ある会社が原価計算の際、これまで慣例として使っていたアワーレートが5,000円/時間だった場合、これは間接製造費用を含んだアワーレートです。

製造費用は

製造経費=アワーレート×加工時間

製造原価は

製造原価=材料費+外注加工費+製造費用
 

現場ごとに異なるアワーレート

工場には様々な現場があり、人や設備の費用も異なります。

そこで現場ごとに直接製造費用と間接製造費用を計算し、その現場のアワーレートを計算します。

問題は様々な費用が年々上がっていることです。

そのためアワーレートも上がっています。

従ってアワーレートは毎年見直しをしなければなりません。しかし毎年アワーレートを改訂している中小企業は多くありません。

購買の考える原価

 

例えば購買が以下のように原価を考える場合があります。

購入価格=材料費+加工+経費+利益

ここで経費は
経費=一般管理費+梱包費+運賃+その他

加工費はどのように計算するのでしょうか。

加工費=人のアワーレート×人の加工時間;設備のアワーレート×設備の加工時間

人のアワーレート=人にかかる費用/(年間時間×稼働率)

設備のアワーレート=設備にかかる費用/(年間時間×稼働率)

ここで
人にかかる費用とは、給与、賞与、法定福利費、退職金など
設備にかかる費用とは、設備購入費、修理費、税金、保険など

この中で間接部門の人件費、工場の経費はどこでしょうか?

問題は、その製品を製造する作業者や設備と、それに関連する費用のみを考えている点です。

そのため間接部門の人件費や工場の経費を「その他」としています。しかし「その他」が直接費用に匹敵するほどあるとは思いません。
 

間接部門の人件費や工場の経費も原価

工場でお金を稼いでいるのは、直接ものをつくっている作業者か、直接生産している設備です。

それ以外の間接部門の人件費や工場の経費は、直接ものをつくっている作業者と直接生産している設備が支えています。

だから、その費用も見積に入れなければ、工場は成り立ちません。
 

間接部門の人件費や工場の経費を取りこぼしている仕入れ先も

仕入先自身も原価をこのように考えていることがあります。

実際、アワーレートの計算に間接部門の人件費や工場の経費が漏れていて、見積が低すぎる会社もあります。つまり最初から儲からない見積を出していたのです。
 

原価を誤解していると交渉が困難に

このように取引先の担当者が原価を正しく理解していないと価格交渉は難しくなります。

他にも担当者が誤解するのは、

ストップウォッチで現場を測って「この時間でできるはずだ」と言うことがあります。
 

金額の工程よりもつくり方の議論

望ましいのは、「見積の明細は正しい」前提で、「どうすれば安くつくることができるか」、仕様や図面の見直しも含めて、お互いがアイデアを出し合い建設的な議論をすることです。

残念ながら誤った原価に従って、価格を下げようとすれば、こういった前向きな議論は難しくなります。

その場合、「自社の見積金額は適正価格であり、水増しはないこと」を説明し理解を求めます。そして価格以外に、品質管理やトレーサビリティ管理などの取組を説明して、自社に出すことのメリットを訴えます。

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