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「若者の価値観とやる気を引き出すには?」 ~適応できないのは若者なのか、シニア世代なのか?~
若手社員がこれまでのやり方では育成が進まないという課題に対して、これまで、
第17回「ゆとり世代の特徴と若者のモチベーションを上げる方法」
第30回「ゆとり世代の特徴と誤解」
第31回「ゆとり教育社員への処方箋」
第41回「今までのやり方が通じない!現代若者考」
第53回「モチベーションとやり抜く力『GRIT』」
第75回「『生まれ』か『育ち』か、若者育成の課題」
等で取り上げました。
今回はニートや不登校の特徴から、社会の変化と若者の価値観の変化を取り上げました。
これまで取り上げた若手社員の課題と解決方法
これまでベテラン社員と若手社員の違いを取り上げ、経営者、管理者の視点から若手社員の課題と解決方法取り上げた書籍を参考に、彼らを育成する方法を考えてきました。
若手社員の課題
「これまでの常識が通じない」と言われる若手社員の特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- 指示待ち
- 言われたことしかやらない
- 自分の席でなければ電話が鳴っても取らない
- 自分の担当でなければ気を効かせて動こうとしない
- 低いコミュニケーション能力
- メール1つで急に休む
- 友達にLINEで送るようなメールを顧客に送る
- 電話が怖い、取ろうとしない
- 社内の行事に参加しない、上司の飲み会の誘いを断るなど社外での交流をしない
- 管理職・リーダーになることを避ける
- 自ら管理職・リーダーになろうとしない
- リーダーになることのメリットとデメリットを比較し、デメリットが多ければ断る
- リスクを取らず積極性がない
- 目立つことを避ける
- 失敗した場合のリスクを考えて自分から積極的に手を上げない
- 成長志向と根拠のない自信
- 仕事を指示しても、それがどんなスキルになるのか聞くなどスキルにこだわる
- 本人ができると言うからやらせてみたら、期日になってもできていない
- 遅れるという報告もない
- メンタルが弱くパニックになる
- 仕事の優先順付けができず複数の仕事を与えるとパニックになる
- 叱られたり、仕事で失敗すると心が折れて休職してしまう
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。その背景には、彼らが受けてきた学校教育や、それまでの社会経験が関係しています。
【学校教育】
多くの子供たちは、結果重視、効率重視の学校生活が求められます。子供たちはいかに少ない労力でよい成績を取るかを常に考えて、コストパフォーマンスを重視する学校生活を送っています。失敗は極力避けるため、失敗経験がなく失敗に対する耐性がありません。
【社会集団での経験】
学校のクラスの人間関係、また友人との関係は極めて同質性が高い集団です。少しでも他人と違ったり、目立ってしまうと思わぬ攻撃を仲間から受けます。そうならないためには、目立てないことが一番です。
また親も子供が失敗しないように先回りして手を回します。そのため学校以外の家庭でも失敗体験がなく、チャレンジもしません。(親がさせない) そのため自信の元となる成功体験がありません。
これまで取り上げた解決方法
こういった若者たちの特徴を認めた上で、彼らを組織内で短期間に戦力化する方法は以下のような解決策があります。
- 社会人としての基礎教育
- 電話の応答はできないことを前提に社内で訓練する、そこで電話応答の台本を使って練習する
- 言葉遣いや敬語の練習
- メールの書き方も一から指導
- スキルの明文化とキャリアパス
- 年数に応じて身に着けるべきスキルや資格を紙に書いて渡す
- 将来のキャリアパスを示し、経験を積むことでどのように成長するのかイメージさせる
- スキルや資格を評価や目標管理制度とリンクさせ、努力した結果が反映されるようにする
- 自主性を高める
- 取得する資格やスキルは、ある程度までは本人に選択させる、これらより責任と自覚を促す
- 公正な評価
- 従来の上司の評価だけでなく、同僚や部下からの評価など360度評価を取り入れる
- 本人が納得できる評価制度にする
これはあくまで企業や組織は今までと同じで、問題を解決するには「若者たちを組織に合わせて戦力化しよう」という考えです。
しかし、これは正しいのでしょうか。
社会そのものが変化しつつある昨今、今の若者の特徴は社会の変化の結果なのかもしれません。
社会が変化しつつあるのに、組織や仕事のやり方を変えずに、若者をそれに合わせようとするのは、川の流れに逆らって泳いでいるようなことになっていないでしょうか。
ニート・不登校に見る社会の変化と価値観の転換
今起きている価値観の変化が、今の若者達の特徴の原因かもしれません。それならば彼らの価値観や考え方を理解することで、価値観の変化をつかむことができるかもしれません。
その極端な例として、ニートや不登校の若者について考えます。
20世紀型上昇志向
高度成長期に子供時代を過ごし、バブル崩壊以前1992年までの価値観を持った人たちの特徴を「20世紀型上昇志向」と呼びます。
すべては仕事優先で、仕事の質も重要ですが、それよりも量が重視され、たくさん働くことが求められた時代では、会社と個人は一体化していました。
これは子供には
「会社優先であくせく働く父親は幸せそうに見えない」
と映りました。
一方、消費文化は1970年代以降、比較的新たに出てきた考えです。作れば売れる時代は、古いものは捨てて新しいものを買うことが良いこととされました。これは消費を活性化し経済を成長させました。
1980年代は人と違うもの、人より高いものを持つことが満足感を高めました。消費社会から降りることは負け組を意味しました。
21世紀型の価値観
今の若者たちの価値観、特にニートの人たちの価値観を「21世紀型進化系人間」と呼びます。
これからは
「子供が親よりも貧しくなる世代」
と言われています。
そんな世代の子供たちから見て、親たちの世代や会社人間は幸せそうに見えません。もちろん彼らは、自分の親が1980年代の消費社会に生きた時代も知りません。
今、大企業ですら定年までの雇用を保証していません。若者たちは「会社は人生を保証してくれない」と考えています。
21世紀型進化系人間の彼らにとっては「仲間・働き・役立ち」を三本柱の人生として捉え、仕事は人生の1/3でいいと思っています。彼らは「自分の好きなことを仕事にしている人はほんの一握りだ」ということが分かっています。そのため、仕事は「一番嫌でない仕事でなければいい」と考えています。
高度成長期は、インフレによりお金の価値を下がり、一方賃金が年々上がっていきました。そのため貯蓄よりも消費の方が理にかなっていました。
しかしデフレの今、逆にお金の価値が上がっていきます。消費はマイナスであり、節約・貯蓄の方がメリットは大きくなります。そのため若者たちは節約をゲーム感覚で楽しみます。節約をして貧乏を乗り切るには知恵も必要です。節約には知的な楽しみもあります。
その結果、お金がないことに対し切実感や後ろめたさがありません。お金に対する価値観が違ってきています。
同様に働かないことにも後ろめたさがありません。20世紀型のがつがつとしたパッションは皆無で「競争から降りたあくせくしない生き方」がニートの特徴なのです。
この勝ち負けから降りる生き方が21世紀型の価値観の特徴です。
逆に今日の女性から見ると、
彼らは
- 一緒にいると背伸びせずありのままでいられる
- 細やかな気配りをしてくれてとてもやさしい
と評価されます。
高度成長期に求められた男性像とは全く違うタイプが好まれる時代です。
今や、フルタイムで働き、それでも仕事も結婚も子育てもしたい女性は、男性に経済力よりも人間性や癒しを求めます。こういった女性とニートのカップルは相性が良く、男性を養うことに抵抗感がない女性も現れています。
例1 癒しを必要とする職場とニートの相性1 リハビリ現場の管理者
高齢者のリハビリはすぐに成果が出るとは限らず、先が見えない中で地道に取り組まなければなりません。そこに従来の価値観の管理者が成果を出そうと頑張るとスタッフや患者は疲れてしまいます。ある施設ではそのために組織がぎくしゃくしていました。そこで、その管理者の代わりに元ニートが管理者として入りました。やる気のないおっとりとした雰囲気がリハビリ現場には合っていて、スタッフや患者も馴染んでいました。
例2 震災ボランティア
復興で被災した人たちにとって復興は長期戦です。しかも被災のショックも大きく気持ちも沈みがちになります。そこにやる気満々の団塊世代ボランティアが入ったところ、被災者のリズム感が合わず被災者が疲れていました。「手伝ってくれるのはありがたいのですが…」
むしろニートの「頑張らない、おっとりとした態度」の方が被災者にはありがたく感じられました。
何事も的確に判断し仕事をバリバリこなす、いわゆる「仕事のできる人」は、同じように仕事ができるタイプの女性にとっては「一緒にいると疲れる存在」です。ニートは仕事の結果は人より劣り、社会的にも成功していません。しかし彼らの持っている、今まではかっこ悪いとされていた「癒し」という特徴は、時代が変わったため、求められるようになりました。
コミュニケーションの断絶
20世紀型価値観と21世紀型価値観の2つは、価値観が全く違います。そのため、分かり合うのは困難です。特に家族、中でも親子で20世紀型価値観と21世紀型価値観がぶつかると解決は難しくなります。これが親子の問題の本質かもしれません。
親のコミュニケーション能力に問題があり、自分の価値観にこだわるあまり、子供の価値観を理解しようとしません。子供は親が楽しそうじゃないのを見て育っています。「親はエライと思う。だけど自分はあんなふうになりたくない」と思っています。
ただし若者自身も20世紀型価値観と21世紀型価値観の間で心は揺れ動いています。一部のニートのように達観できません。
格差問題の本質は、経済問題でなく価値観の違いの問題でもあります。その点を踏まえて社会が対策する必要があります。問題はお金だけではないのです。
実は社会は
物質的な豊かさから、心の豊かさのステージへと
大きく流れを変えています。
見えない管理と息苦しさ、閉ざされた世界
会社
学校で息がつまるような人間関係を過ごしてきた若者にとって、価値観の違う様々な人と付き合わなければならない会社は、それだけでひどく疲れる場所です。そこに1日8時間いること自体が大きな苦痛です。
一方、20世紀型価値観の人にとって、会社は自己のアイデンティティの一部であり、自尊心を満足させる場所です。特に家庭での存在感が希薄な人には唯一の居場所です。
一方、職場は表立っては厳格に管理されているわけではありませんが、成果主義の浸透や日常業務までITで管理されるなど、暗黙裡の管理が進んでいます。閉ざされた世界であり、いろいろな面で「理由なき服従」を強いています。
この理由なき服従とは、「従わなければ罰せられる可能性がほとんどなくても従順に従っている」という状態のことです。そうなってしまう理由は、
- 罰せられるとダメージが極めて大きく(新卒一括採用と転職市場が弱い)
- 罰する者の内面には不透明性がある(人事の不透明性)
からです。
若者たちは息を殺して組織で日々を過ごしていることを経営者や管理者は気づいていません。弾が入っていないかもしれないが、それでもこめかみに銃口を突き付けられて、自ら進んで十分な能力を発揮できるのでしょうか。
ここから外れることはできないという恐怖、窒息寸前の職場で、彼らは「会社なんていつでもやめてやると思わなければ頭がおかしくなる」と感じてしまいます。しかも監視は日々強くなり、どんどん不自由になって、正しいことしか許されない職場になっています。
学校
学校は閉ざされた世界です。その中で毎年教師の心無い言葉のために不登校になる子供たちが絶えません。あるいは目立つとクラスメートから執拗な攻撃を受けてしまいます。子供たちにとって教室は地雷原なのです。
調査によれば、学校は気おくれがして居心地が悪いと答えた子供は17.8%(5人に1人)にも上りました。神経をすり減らす友人関係、友達同士の仲良しごっこは、自分を縛り付ける牢獄だと子供たちは感じています。5人に1人は、見えない銃を突きつけられて学校生活を送っているのです。
大人から見ても、子供たちの世界は実に奇妙でわかりにくく複雑な世界なのです。
家庭
子供のことを心配するあまり、些細なことにも口を出すなど、親の呪縛が蔓延しています。子供の就職先も親が決める時代です。
イタリア人心理学者は日本人の親は子供に飛び立て、飛び立てと言いながらいざとなると
「子供の足首をつかんで離さない」
と言いました。
その原因は「子供のため」という親の呪縛です。うわべは子供の意思を尊重していると言いながら、暗黙の親の意思が子供を縛り付けているのです。
「良かれ」と思って愛情から出る言葉には歯止めが利きません。
むしろ他人の親切の方が相手を追い詰めないのです。
「愛は負けるが、親切は勝つ」……精神科医 斎藤環氏はこう述べました。
層であれば20世紀型価値観の親は、子供と「分かり合えない」という前提から始めた方が良いかもしれません。
早く親が子供から離れて、親の人生を生き始めると子供は変わり、引きこもりから抜け出せます。ひきこもり・ニートを支援するNPO法人ニュー・スタートでは、ひきこもっている若者に対し、スタッフ「レンタルお姉さん」が繰り返し訪問します。そして若者を家から出して、ニュー・スタートの寮に住まわせます。若者は親元を離れ、1人暮らしから、アルバイト、自立へと移行できます。
労働環境の変化
仕事がつまらない時代
自動化、IT化が進みで労働は誰でもできる仕事に変わりつつあります。労働はコモディティ化し、この人でなければできないという特別な仕事はなくなりつつあります。仕事をしても人に役立っているという実感が得られなくなっています。
ある家庭は父親が銀行員で、親の意向で子供も銀行員になりました。その結果、子供は荒れ、毎朝母親を殴ってからでないと出社しなくなりました。父親は、今の銀行の仕事は変わり、昔のようなやりがいのある仕事ではなくなったと嘆いています。
疲弊する日常、あるフリーターの1日
9時にシフトに入りランチ用のサンドイッチをひたすらつくります。12時になるとランチタイムで大忙しとなり、そのあとランチの片づけ、休憩のあと少し働いて6時間、6千円の稼ぎになります。帰るとくたくたに疲れて夜まで眠りこけ、夕飯、テレビ、シャワーを浴びれば1日が終わります。時給千円の仕事で特にスキルが身につくこともなく、疲弊する日常に疲れ果て、自信を失い、投げやりになっていきます。こうして日々を重ねる間に、そこから抜け出す気力も、努力する時間も奪われていきます。
一度落ちると這い上がれない社会
新卒一括採用の弊害
フリーターの不安定な暮らしや、非正規雇用でワーキングプアに陥る若者の報道などを見て、若者は安定を求めて就活に力を入れます。多くの若者は安定を最優先して大企業や公務員を志望します。しかし中には高望みしすぎて不採用が続き、心が折れてしまう若者もいます。
フリーター、派遣社員の置かれる厳しい状況から、フリーター=負け組、正社員=勝ち組という認識です。
しかし無理をして就職しても厳しいノルマや評価で続かなくなれば、仕事が続かず引きこもりになります。また人員に余裕のない企業は、入社直後からどんどん仕事を与えていきます。
新入社員に過大な業務をさせて長時間残業の挙句、過労で自殺したD社の新入社員Tさん、冷静に考えれば、入社1年目専門知識の限られた新入社員に長時間残業させて、どのようなメリットがあるのでしょうか。
実は過大な業務をさせる目的は、以下のいずれかです。
- ひたすら長時間働けば成果が出るように仕事がシステム化されており、成果が出るようになっている
- 過大な負荷は体育会系のしごき(いじめ)と同じで、目的は上司に逆らえない従順な社員にすること
正社員が続かず引きこもりになると
ひきこもりの体験者によれば、
「ひきこもりは苦しく、土の中に「生き埋め」にされているようで息ができないつらさがある」
そうです。焼かれるような熱さも感じる人もいます。「何とかしたいけど、どうすることもできない」のでもがき苦しんでいる状態です。
ひきこもりは生きるエネルギーが枯渇した状態です。生きるエネルギーの源は、安心感、共感、心地よさなどポジティブな感情です。これは少しずつしかたまりません。しかも一度ネガティブなことが起きるとたまったエネルギーが吐き出されてしまいます。
子供たちはもともとエネルギーが多くない上、それまでの家族、学校、会社などとのかかわりの中から、生きるエネルギーを枯渇させられてしまうことが、この原因です。
セーフティネットがないことが若者を臆病に
財政学者 神野直彦氏は
「新自由主義者たちはセーフティネットを取り外した上でサーカスの団員たちに綱渡りをしろと言っているようなものだ。セーフティネットがあると彼らはさぼり始め、まじめに演技をしなくなるだろうと主張する。しかし、実際にセーフティネットを外したら、彼らはまじめに演技をするが、命を失うのが怖くて、アクロバットを演じなくなってしまった。」と述べています。
現代に対して当てはめて考えれば、低調な起業の問題があります。
日本は、内需は低迷し、企業は冒険的な試みが減少し、低成長に陥っています。国は起業を増やすために様々な取組をしています。しかし失敗した時のセーフティネットがありません。起業して失敗すれば、債務の個人保証(連帯保証人)しているため自己破産しなければいけません。国が本気で起業を増やすなら、このセーフティネットの構築が不可欠です。
若者の正社員志向は強く、しかも社会のセーフティネットがないため、彼らは会社の中で意欲があってもチャレンジできません。失敗して一度フリーターになったら二度と正社員になれないからです。フリーターの貧困、派遣切りなどの社会問題は連日報道されています。そんな状況で、やっと大企業に就職した彼らに、思い切った仕事をしろというのは酷ではないでしょうか。
消費に浮かれていたかつての大学生に比べ、今の大学生は真面目で仕事のやりがいについても考えています。しかし正社員から外れることの怖さからやりがいを追い求めることをためらっています。
自己実現を求める
一方、真面目に自己啓発に励む若者たちも多くいます。しかし仕事と自己実現が重なると働きすぎるワーカホリックになります。「本当はひどい仕事を楽しいと思い込むことを酩酊 」と表現します。その酩酊に入れば、全能感でむしろ心地よくなります。そうして若者がブラック企業で酷使されます。しかしそんなハードな日々が続けば、最後には仕事を続けられなくなり、ひきこもることになります。
幻想の中で酩酊して、自分の置かれている厳しい状況から目をそらす、これを政治学者 姜尚中は「ココロ主義」と呼びます。これは内向き志向で、外の世界との関係は断ち切られています。ココロ主義に救いを求めれば、それを満たしてくれる自己啓発本やセミナーに手を出してしまいます。これは「諦念」であり隠れた「自殺願望」でもあります。
ココロ主義の酩酊から抜け出すには、ブラックな会社をやめ、みっともなくていいからコンビニでバイトしてでも生き延びることが必要です。自分の心を呪縛から解き放って、自らの知性で世界と対峙しなければいけません。
子供の自主性を重んじるゆとり教育もあり、若者たちは自分のやりたいことを指向します。
かつて多くの若者は自分探しをしてきました。大学を中退したり職を転々としたり……かつて若者は30歳くらいまでは、やりたいこと探し・自分探しでさまよっていても良い存在でした。しかし新卒一括採用の日本はこれを許さなくなっています。しかも大学や民間企業のキャリア教育はこの問題を解決しません。多くの企業は中途採用に対し低く評価しています。
親よりも豊かになれない世代
派遣労働者225万人
派遣社員の大幅な増加は、正社員、終身雇用が生んだいびつな社会です。正社員の雇用を守るため、不足する人員は派遣社員でカバーするからです。
これはアメリカが先行して始めた制度で、1970年代に一般事務を派遣社員に切り替えました。しかし派遣社員から正社員の明確な道筋がないのは日本もアメリカも同じです。
不況になると真っ先に仕事を失い、生活が困窮しますが、これに対し社会のセーフティネットが不十分です。派遣社員やフリーターの身分は不安定で、この不安から自暴自棄になった一部の若者が凶悪犯罪を起こしてしまいます。これを防ぐには警備やパトロールを強化するのでなく、セーフティネットを厚くして、不安を和らげることが重要です。その役割として生活保護制度はあまりに貧弱です。
自己責任論の問題
人々の「普通に頑張ればなんとかなるはずだ」という思い込みが若者を追い詰めます。就業できないのは「努力が足らない」という前提だからです。そして努力を促すために国は就労支援に多額の予算を投じています。
しかし遺伝的な要因や家庭環境など、本人ではどうにもならないことも多くあります。
「働かざるもの食うべからず」
この文言は、本来はレーニンが新約聖書を引き合いに、
労働者を搾取しているブルジョアを批判するため
に使われた言葉です。
しかし今では働けない人を批判するために使われてしまっています。
実は、お金がないためにいやいや働き、十分な収入が得られない人ほど「働かざるもの食うべからず」「ニート死ね」と批判します。
この頑張ればなんとかなるという考え方は「団塊の世代ががむしゃらに働いて日本が豊かになった」というところから来ています。実はこれは幻想です。高度成長は、たまたま日本に1億の人口による安価な労働力があり、欧米の先端技術を導入し、他国と海を隔てた地理的要因から紛争がないなどの要因が重なった結果なのです。
社会の変化に適応できないのはどちらか
変えるべきは若者か、会社・組織か?
子供はいつの時代も最先端で、社会の変化を示しています。
ある作業をニートに頼んだら「仕事になるから嫌です」と労働を拒否しました。つまり
無償でやるのは楽しいが報酬が生まれると楽しくないから拒否する
という価値観です。
ニートの価値観
「仕事なんて命に比べたらどうでもいい。人間は仕事のために生きているわけじゃないし、仕事なんて人生を豊かするための手段に過ぎない」
つまり、仕事をすることで多くを失い人生がつまらなくなるのであれば仕事をしなくてもいいと考えています。
それには「いろんなことを諦めなければならないが、それは構わない」とも思っています。まさに
「会社中心の社会の終わり」です。
一方、ニートにも必要な向上心があります。それは
「先にある楽しみなことに向けて自分で何かを行動する力」で、これがあれば楽しく過ごせます。
楽しみが全くないとひたすら憂鬱になります。そうなると、そこから逃れるために、酒を飲む、自殺するなど、自暴自棄になっていきます。
こういった価値観の若者たちと共存するのに必要なのはなんでしようか。
変えるべきは若者でしょうか、組織でしょうか。
仕事は変化し、20世紀型の労働は減少、こういった作業はロボットやITが行うようになりました。労働時間も減少し、長時間会社に縛り付ける必要はなくなります。その分収入も減るかもしれませんが、そもそもこれまでのホワイトカラーの長時間労働は、生産性はそれほど高くありません。
ある経営者は、命令(指示)すれば、人は動くと考えます。正しく指示すれば成果が得られると思っています。だから社員を「一度自衛隊に入れろ」という発想が出ます。欲しいのは指示・命令を忠実にこなすロボットのような人材です。だから何も知らない若者を一から教育して自社の文化に染め上げる新卒一括採用にこだわります。
しかしこれからの時代は、横並びでライバルと同じことをしていては生き残れなくなっていきます。グーグルは「卓越した人材」に「卓越した成果」を求めます。
上司の指示に部下が心から応答できず、「つべこべ言わずやれっ!」と罵られ、しかも失敗すればフリーターに転落する恐怖を背負わされた若者たちに「卓越した成果」は出せるのでしょうか?
21世紀型価値観が主流になるのであれば、彼らに合わせた組織、仕事の進め方にした方が生産性は上がるのではないでしょうか。
イタリア型の幸福感
【イタリア人「遊ぶために仕事をする」】
イタリア人は、仕事のために私生活を犠牲にしない気質と言われています。
財布をすられたあるイタリア人は「本当にお金が必要な人が持っていったんだからいいだろう」と言いました。
イタリア人は「自分が凡人であることを知る偉大な国民」といわれています。であれば、自己実現や酩酊とは無縁でいられます。
イタリアの諺に「神様以外、人間はみな障害者」というものがあります。人間は長所と短所を兼ね備えた出来損ない同士、だから仕事に完璧を求めず、もっといい加減でもいいとさえ思っています。力を抜いて生きることが必要かもしれません。
【働かなくても生きていていい】
都会では午前中から居酒屋で酒飲んでいる中年男性が多く存在しています。「ぶらぶらしている大人は結構たくさんいる」と感じるほどです。
本当は、人は働かなくても生きていていいのです。
役に立たないことをしている人が増えれば、世界はもっと豊かになります。
ダーウィンは裕福な家の生まれで終生父親の遺産で生活し働く必要がありませんでした。
創作活動では作家の死後、作品が広く知られることも多くあります。アメリカの小説家エドガー・アラン・ポーは、作品自体は雑誌や文芸批評で当時評価されていましたが、生前作家としてはほとんど評価されませんでした。しかもバクチ狂いで女性関係のトラブルが絶えず、昼間から泥酔して仕事に来ないなどの多くの問題を起こしていました。
「変身」「城」などシュールな作品で知られるフランツ・カフカも、保健局に勤めながら執筆を続けていました。生前に出版した7冊はそれほど売れず、40歳でこの世を去りました。作品が広く知られたのは死後でした。
ある人の遺したものが本当に優れたものかどうか、我々自身もわからないのです。
「働くこと」は「他人の役に立つこと」と考えれば、お金を稼がなくても他人の役に立てば、それは労働です。実際、実用的なものばかりだと息が詰まってしまいます。無駄に見えるものも必要なのです。
無駄がたくさんあり、世界が多様で混沌であれば、その中から今までにないものが生まれます。プログラマの場合、怠惰は美徳です。プログラマの三大美徳は怠惰、短気、傲慢だそうです。
生きる意味を失っているニートたちにNPO法人ニュー・スタートの二神氏は
- 自立なんかする必要ない
- 他人にもたれあって生きろ
- 人生に目的なんか必要ない。ただの人として楽しく生きろ
と説いています。
- 自分の能力を発揮してバリバリやる
このような自己中心的考え方は、組織の中で軋轢を生みます。下手をすると組織を自分の都合よいものに変えてしまい、大きな問題を起こしてしまいます。
- 自分はそんなに大したことはできないかもしれないけれど、そういう自分も安心できる場所があったらいいな
そういう人が多数いる社会は間違いなく今よりも豊かな社会です。むしろ社会がこれを受け入れられるかどうかが大きな問題です。
参考文献
「ニートがひらく幸福社会ニッポン」二神能基 著 赤石書店
「ハタチの原点」 阿部真大 著 筑摩書房
「ニートの歩き方」pha(ファ) 著 技術評論社
「半径1メートルの想像力」 山崎鎮親 著 旬報社
「ひきこもりの真実」 林恭子 著 筑摩書房
「若者の貧困・居場所・セカンドチャンス」青砥恭 著 太郎次郎社エディタス
「若者の働く意識はなぜ変わったのか」岩間夏樹 著 ミネルヴァ書房
経営コラム ものづくりの未来と経営
人工知能、フィンテック、5G、技術の進歩は加速しています。また先進国の少子高齢化、格差の拡大と資源争奪など、私たちを取り巻く社会も変化しています。そのような中
ものづくりはどのように変わっていくのでしょうか?
未来の組織や経営は何が求められるのでしょうか?
経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、こういった課題に対するヒントになるコラムです。
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人間の失敗メカニズムと、失敗を防ぐリーダーの役割 その3
組織のリーダーは、部下のミスを防ぐために何をすべきか、リーダーに必要な考え方を以下の経営コラムで述べました。
また、ミスの原因となる人間の注意力と不注意について、また記憶力と忘れることについて、以下の経営コラムで述べました。
今回は、個人では正しい行動をとるのに、集団になるとミスを犯す組織行動の問題について考えます。
組織行動の問題
今まで述べたように組織の目標達成には、個人のミスを防ぐことは非常に重要です。
もうひとつ重要なのは、組織が集団として行動することで、判断が変わることです。
個人では適切な判断をできる人が、集団では誤った判断をして大きな事故を起こしてしまいます。
リーダーは、この組織行動の問題点を理解し、誤った判断に流されないようにしなければなりません。
権威勾配
新人看護師が、先輩看護師の医療機器の操作に疑問を感じても「自分がまちがっていたらきっと怒られる」と考えて言い出せず、医療事故が起きました。
このような事故はいろいろなところで起きています。
人は権威を持っている人に命令されると、自分の意思に反していてもそれに従う傾向があります。
アメリカの心理学者ミルグラムが1965に年行った「権威への服従」の実験では、普段はとても危険でできない操作も権威ある人に命令されると、多くの人が行うことが示されました。
スタンリー・ミルグラムの実験
ある役者が別室にあるニセの電気椅子に座り、別の室内ではもう一人の役者が実験を行う博士を演じます。
“博士”は被験者に、別室にいる役者がある一連の単語を思い出さなければ罰として電気ショック与えるように指示します。
実験が進むにつれ、電気ショックの強さと犠牲者の苦痛の訴えは激しさを増していきます。
被験者のおよそ65%が「犠牲者」がやめてくれ、と頼んだ後でも電流を流し続けました。
450ボルトもの死に至るほどの強度の電流でも流し続け、その結果、無反応になっても電気ショックを与えました。
同調行動
チーム内の他のメンバーが全員、自分と異なる意見を持っているときに、それでも自分の意見を主張することは容易ではありません。
アッシュは、1951年に、こうした個人と個人、個人と集団との間に相互に表れる影響過程を明らかにする実験を行いました。
被験者8人の集団に、2枚のカードを見せ、1枚には線が1本だけ描かれ、もう1枚には長さの異なる3本の線が描かれています。
3本の線のうち、どの線がもう1枚のカードと同じか1人ずつ順に答えていきます。
しかし8人のうち本当の被験者は1人だけで残りの7人は、間違った答えを言う役割のサクラでした。
実験の結果、被験者の約3分の1が、サクラと同じ答えを選択しました。
みんながそうなら自分も従うということは、日常の場面でも起こり易いのです。
社会的手抜き
「私が確認をしなくても他の誰かがちゃんとやるだろう」と適当に確認してしまうことです。
自分がやらなくても他の誰かがやるだろうと手を抜いたり、チームで作業すると、人は単独のときよりも働かなくなったりすることを「社会的手抜き」と言います。
ドイツのリングルマンは、1人、2人、3人、8人で綱を引いてもらい、その力を測定し、1人あたりの引っ張る力を計算しました。
その結果、1人で綱を引く力を100%とすると、2人のときは93%、3人のときは85%、8人のときは49%の力しか出していませんでした。
1人あたりの作業量は、単独作業状況よりも集団状況において低下しており、これはリングルマン効果と呼ばれています。
集団浅慮
集団で意思決定を行うとき、優れた人が集まっても愚かな意思決定を行うことがあります。
これは「集団浅慮」と呼ばれています。
その理由は
- 自分たちこそが唯一正しい判断力を有しているという過信
- 批判的な情報を軽視し、そのような情報を支持するメンバーを疑問視する
- その結果、他の集団から孤立し、誤った最初の仮定やそれに基づく決定を変更できないまま突き進んでしまう
リスキーシフト
集団の決定は、個人の決定よりも危険な選択をすることがあり、これはリスキーシフトと呼ばれています。
例えば、ネット上で誰か一人を集中攻撃したり、サイトが炎上したりする現象は、リスキーシフトの代表例です。
学校などでしばしば問題になる「集団いじめ」や「集団暴行」、暴動やテロリズムにも、リスキーシフトの側面があります。
ワラックの実験では、例えば
「重い心臓病の人が、大手術を受ければ普通の生活を送ることができるが、その手術は失敗すると命を落とすことになる」
という問題について、ひとりで答えた場合と、集団で話し合った場合を比較しました。
その結果、集団討議の方が個人の決定よりもリスキーな方向になりました。
またリスキーな意思決定をしている人ほど討論で積極的な役割を演じていました。
コーシャスシフト
コーシャスシフトは、集団で決めた決定が、個人で決めるよりも、慎重でより安全志向になることをいいます。
議論を重ねるごとに、リスクをとることを怖れて消極的で現状維持に治まったり、結局はいつまでも効果的な結論が出ずに、ずるずると同じようなやりとりを引きずったりしていれば、議論がコーシャスシフトに傾いています。
これは決定した結果、発声した問題の責任より、決定しないことで起きる問題の責任の方が軽い場合に、消極的になります。
そして多くの場合、決定しないことに対する責任は、極めて軽いものです。
このコーシャスシフトは企業の会議や政府・行政の議論などで見られます。
組織リーダーに求められること
スイス・チーズ・モデル
不良と事故には共通点があります。
- 不良=作業の結果、要求された品質を満たしていない
- 事故=作業の結果、要求された安全が維持されていない
つまり、結果は異なりますが、いずれもそのプロセスに問題があり、要求されたことを満たしていない点が共通しています。
ではどうして事故は起きるのでしょうか。
実は、事故が単独の原因で起きることはそんなに多くはありません。
一つの危険な行為だけでは多くの場合本人が注意していれば事故になりません。
あるいは誰かが気がつき事故に至らないように対処します。
しかしさらに別の要因でいつもと違うことが起きた時、あるいはうっかりした、手が滑ったなどが起きた時、重大な事故が起きてしまいます。
これは「スイス・チーズ・モデル」で説明されます。
スイスのチーズは、図のように穴がたくさん空いています。
これをスライスして重ねると図のようになります。
このとき重ねたチーズの穴がすべて一致すると、光が通ります。
同様に個々の作業に不注意、ミス、ルールの無視があっても、これが即座に事故(あるいは不良)につながりません。
しかしこれを放置すると、いくつかの穴が重なり重大な事故(あるいは不良)が発生してしまいます。
例えば制限速度を大幅に超えて自動車を運転すれば、すぐに事故が起きるでしょうか。
実際には事故は起きないかもしれません。
しかしたまたま交差点に信号を無視して入ってきた車があったらどうなるでしょうか。
制限速度を守っていれば避けることができたことが、スピードが出過ぎていたためによけることができず事故が起きてしまうかもしれません。
このようにルールを逸脱すると、安全に対するマージンが減少し、わずかなミスで大きな事故が起きるようになってしまいます。
同様に今は不良が発生していなくても、ミスや問題を放置すれば、いつか重大な事故や不良品の流出が起きてしまいます。
従って個々に問題、あるいは危険を感じたり、ルールを逸脱するなどの問題のある行動を発見した時点で、適切な処置と対策を講じておくことが重要です。
つまり、普段からチーズの穴を埋めておくことです。
失敗を防ぐためのリーダーの役割と組織づくり
チームのリーダーは、失敗やミスの原理や原因を理解し、再発しないような仕事のやり方や仕組みを構築しなければなりません。
そして人間の注意力や記憶について知識を深め、注意力や記憶に頼らない方法を構築する必要があります。
さらに上記の組織特有の問題を理解し、組織の問題が重大なミスを招かないように、組織の運営や体制を考えなければなりません。
人間のウッカリミス、ヒューマンエラーについてもっと詳しく知りたい方は、こちらをご参照願います。
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仕事のミスとミスを防ぐリーダーの役割 その2
組織が目標を達成できない原因に、ミスによる失敗があります。
組織のリーダーは、部下のミスを防ぐために何をすべきか、リーダーに必要な考え方を以下の経営コラムで述べました。
以下ではミスの原因となる人間の注意力と不注意について、また記憶力と忘れることについて述べます。
人間の注意力とミス
多くのミスは、不注意が原因で発生します。
では人間の注意力はどのようなものでしょうか。
覚醒水準(ボンヤリとコックリ)
覚醒水準とは、どのくらい目がパッチリと醒めているかの程度であり、注意の容量を決める大きな要因です。
いくら一所懸命注意を配分しようと思っても、配分すべき注意の全体量が乏しくてはどうにもなりません。
覚醒水準は以下の5つの「フェーズ」に分けられます。
表1 人間の情報処理の信頼性と覚醒水準
フェーズ | 意識の状態 | 注意の作用 | 生理的状態 | 信頼性 |
---|---|---|---|---|
0 | 無意識・失神 | ゼロ | 睡眠・脳発作 | 0 |
Ⅰ | 意識ボケ | 不注意 | 疲労・単調 眠気、酒酔い |
0.9以下 |
Ⅱ | リラックス | 受動的 | 安静起居・休息 定常作業時 |
0.99~0.99999 |
Ⅲ | 明晰 | 能動的 | 積極活動時 | 0.999999以上 |
Ⅳ | 過緊張 | 1点に固執 | 感情興奮時 パニック状態 |
0.9以下 |
(うっかりミスはなぜ起きる 芳賀繁 著 より引用)
覚醒水準が「フェーズⅠ」の状態が、うっかりしていた、ぼんやりしていた状態です。
実際は、明確に「フェーズⅠ」の状態になるわけではなく、意識は「フェーズⅠ」から「フェーズⅢ」の間を行ったり来たりしています。
覚醒水準が高くなりすぎ「フェーズⅣ」になると、過緊張や興奮状態となってしまいます。
注意をうまく配分できず、範囲が狭くなり、ひとつのことに注意を奪われる「一点集中」に陥ってしまいます。
エラーの確率が一番低いのは「フェーズⅢ」です。しかしこの状態を長く続けることはできません。
あまりがんばりすぎると、肝心な所で集中力がダウンしてしまい、ミスをしてしまいます。
リラックスした状態の「フェーズⅡ」と緊張した状態の「フェーズⅢ」とを、要所で上手に切り換えるのがコツです。
サーカディアンリズム
人間は、体内に時計を持っていて、この体内時計が持っているリズムをサーカディアンリズムと言います。
サーカディアンリズムの主な機能は、眠りと体温のコントロールです。
体温が高いときは、覚醒水準が上昇し、活動性も高くなります。逆に、体温が低くなると、眠気が生じ、注意力が低下します。
一般的に人は、夜明け前に体温が低くなります。したがって、夜明け前にエラーをする可能性が高くなるわけです。
医療従事者の夜勤は、サーカディアンリズムの点から、潜在的にミスを引き起こしやすいと言えます。
夜明け前は覚醒水準が低下するうえに、さらに入院患者への作業が増えるので、ミスが起こりやすくなります。
意識が他のことに向いてしまうミス
覚醒水準が「フェーズⅠ」から「フェーズⅣ」へと高まると、対象へ意識が集中します。
一方あまり集中しすぎて過緊張の状態になってもミスが多くなります。
ミスが起きるもう一つの原因は、別のことに注意が向けられてしまい、現在行っていることに対する注意レベルが低下してしまうことです。
つまり覚醒水準は「フェーズⅢ」であるにもかかわらず、他ことに気を取られて、肝心の対象に対しては「フェーズⅡ」になってしまうことです。
これは男性ドライバーが道を歩くミニスカートの女性に気を取られて、信号を見落としてしまうようなことです。
人が最適な状態で仕事をしているとき、100の注意のうち、70を仕事に向け、残り30を、仕事をとりまく周辺の状況に向けています。
この30の注意は、仕事をもう一段上から見て、視野狭窄に陥らないように全体を俯瞰しています。
この作業用の注意と管理用の注意の配分バランスがくずれると、不注意エラーが発生します。
この不注意を防ぐには、
- 注意を余計なことに向けさせない。情報騒音を排除し、興味関心を引くものが回りにないようにする。
- 注意を向けさせたいものに、注意を引き付けるように工夫する。交通標識や危険表示などのように大きくする、対比をつける、色を付ける、動かす、などで目立たせる。
等があります。
加齢
人は加齢により様々な身体的機能が低下します。特に視覚、聴覚、平衡感覚、皮膚感覚、内臓感覚、痛覚などの感覚・知覚が著しく低下します。
中高年になると、近くのものが見えにくくなったり、コンピュータディスプレイの文字が見づらくなったりします。
また、明るいところから暗いところに入ったとき、初めは何も見えなかったのが徐々に見えるようになる現象を、暗順応といいます。
眼が暗所に対して感度調節をし、弱い光でもとらえられるように感度が上昇するのですが、これも高齢者と若者のちがいが顕著な例です。
高齢者では、
- 暗順応に要する時間が長くなる
- 暗順応による感度上昇に限界があり、若年者ほどの高感度が得られなくなる
という二つの機能の低下がみられます。
疲労
疲れるとミスをしやすくなります。
この疲労は、ミスを起こすまで、疲労していることに気がつかない場合もあり、注意が必要です。
疲労は加齢とも関係があり、一般に加齢とともに疲労回復の時間は多く必要となります。
単調
注意は同じ水準で持続させることができません。
同じ作業を連続して行うと、最初は間違わずに処理できますが、やがてミスが入り込む可能性が高くなります。
実際には忙しい状態が続いた後に、ミスがよく発生します。
つまり単純作業は、注意力を低下させ、ミスを誘発します。
リーダーは長時間の単純作業を発見したら、如何に変化を加えて注意力を高める作業にするか、考えなければなりません。
その他ミスの原因となるもの
【近道・省略・カン違い】
職場や作業に慣れると、ラクをしようと工場内で指定した安全通路を通らずに、近道をしようと現場を斜めに横切ったりします。
あるいは必要な安全確認を省略します。人間は常にラクをしたがる生き物だからです。
さらに取りに行くのが面倒だからとスパナーをハンマー代わりにしたり、必要な保護具を使わなかったりと、正しいやり方を行わないこともあります。
また、バルブを閉めたつもりが閉まっていなかったなどのカン違いもあります。
【憶測・思い込み】
クレーンなどの玉掛け作業では、玉掛け者が退避したと勝手に判断して、玉掛け者が合図をする前にクレーンを操作し、吊った荷を移動し始めるといったことがあります。
電気配線工事では、同僚が電源を切ってくれていると思い込んで検電をせずに作業を始めて感電するとこともあります。
仕事に慣れてくると、「多分こうだ」「こうなっているはずだ」など自分の勝手な判断で、コミュニケーションを取らず安全を確認しないために、重大なミスにつながることがあります。
【考えごと】
覚醒水準が「フェーズⅢ」から「フェーズⅡ」に低下する原因の一つが考え事です。
作業中に、家庭やレジャーなど作業以外のことを考えて、作業に対する注意が不足しミスが起きます。
特に私生活での大きな問題などがある場合は、作業中も頻繁に思い出され、作業に対する注意力がおろそかになってしまいます。
深刻な悩みごとは、悩みごとが気になり仕事中も放心状態になってしまいます。
話も 「うわの空」で仕事に対する注意力もなくなるため、そのような状態の人を危険な作業に着かせるのは極めて危険です。
【意識の迂回】
例えばある人と会話中にふと窓の外を見て、急に雨が降り出したことに気づくと、意識は雨に向かい、会話に対する意識が途絶えてしまうことがあります。
会話中は、話題に意識が集中していますが、会話中に日ごろから心の中に気にかけていることを思い出した時、会話と関係のないことに気を取られます。
そして、次の瞬間に、再び会話に意識が戻ります。
このような、今行っている行動や思考と関係ないことに一時的に意識を持つことを「意識の迂回」といいます。
これは、日々の作業中にも生じます。
通常は作業手順に沿って、作業や品質の確認、設備の操作などに次々と意識を転移させて行っています。
しかし作業の途中で日ごろから気になっている心配ごとをふと思い出して、一時的にそのことだけを意識します。
そして次の瞬間に、再び本来の作業に対する意識に戻ります。
不注意によって事故が起きる原因の中には、このように意識が迂回していることが原因の場合が少なくありません。
リーダーは、このような注意力を低下させミスを誘発する原因である覚醒水準、他の気を引くもの、加齢、疲労の影響を理解し、必要な対処をしなければなりません。
不注意と記憶
不注意やウッカリミスの原因が、記憶の間違いだった場合も少なくありません。
不注意は前述のように覚醒水準を高めたり、注意力を低下させる要因を取り除いたりすることで対策が可能です。
しかし記憶が原因の場合は、そのような対策は効果がありません。では、なぜ記憶が変わってしまうのでしょうか。
記憶のあいまいさ
人間の記憶は、時間の経過とともに急速に減衰します。
また記憶内容が変わることもあります。
ミスをなくすためには、記憶とはかくもあてにならないものであり、できれば記憶に頼らずに仕事を進めていきたいものです。
しかし現実にはなかなかそうはいきません。
間違った記憶
人は記憶を再現する過程の中で、記憶を自分に都合の良いものに作りかえることがあります。
つまり記憶は作られるのです。
カリフォルニア大学のエリザペスーロフタスの研究室によれば、実験室でやったと「想像した」だけのことでも、実際にやったのだと思い込ませることができました。
記憶はつくり変えられるのです。
実は記憶したことは時々刻々変わっているのです。
まるで真珠のように、思い出すと同時にその中身を磨いています。
思い出すたびに、関係ない細部は捨てて、ふさわしいと思うことをつけ足しています。
ですから恨みは思い出すたびにどんどん肥大化して、「仕返し」となってしまうのです。
試合で負けた悔しさは、ハードな練習をこなす活力となりますが、人から受けた仕打ちはあまり思い出さない方が良さそうです。
また記憶する要素は、脳の中に整理整頓されてしまわれているわけではなく、脳のあちこちに散らばっています。
視覚要素の記憶は視覚体系に、言語要素の記憶は言語体系にあります。
人が思い出している時は、あちこちにある貯蔵庫から記憶の要素を出してきて再構成しています。
その時の呼び出すテーマが変われば、再構成されるものも変わります。
警察で取り調べを受けた際、犯人でないのに刑事から自白を迫られ、記憶の断片をつなぎ合わせて、起きてもいない物語を語ってしまうことすらあります。
取り調べの苦痛から逃れたいばかりに…。
記憶のメカニズム
【感覚記憶】
我々が目、耳、鼻、舌、皮膚などを通じて外界から受ける情報は、感覚記憶に入ります。
外界からは常時膨大な情報が入っており、大抵の情報は感覚記憶で廃棄されます。
あるいは即座に対応しなければならない情報は感覚記憶から直ちに体を動かす神経に伝えられ、対処します。
例えば、知らずに熱いお湯に手を入れてしまった時、直ちに「熱い!」と手をお湯から出します。
これは反射と呼ばれる動作です。
【短期記憶】
この感覚記憶に入った情報の中で、意識が向けられた情報は短期記憶に一時保管されます。
短期記憶は、一度に記憶できる数字が「7プラス・マイナス2個」と小さく、保管時間が10秒から20秒程度と短いという特徴があります。
短期記憶の特性を考慮して、一度に読み取る数字は「7プラス・マイナス2個」としたり、一時的に記憶する情報は小さく、短時間で使用するようにしたりします。
【長期記憶】
短期記憶の一部は、感動したり、驚いたり、反復することで(記名処理と言います)長期記憶に保管されます。
長期記憶は文字通り長期間記憶することができ、有効な記憶術をマスターすれば、10の20乗ビットもの情報を記録できるそうです。
長期記憶には2つのタイプの記憶があります。
- 勉強などで日頃行っている言葉が意味を伴った記憶(Semantic Memory)
- 印象深い経験・体験したこと(読書や映画などを通じた疑似体験も含みます)の記憶(Episodic Memory)
長期記憶は、時間経過とともに忘却する特徴があります。
コンピューターは一度記憶すれば、故障がない限り、半永久的に保持されます。
しかし人間の記憶は細部まで正確に覚えることは難しく、さらに細部から徐々に忘れられています。
エビングハウスの忘却曲線
記憶の忘却について、心理学者 エビングハウスが実験結果から提唱した忘却曲線があります。
忘却曲線によれば、時間の経過と残っていた記憶の量は、
20分後 | 58% |
---|---|
1時間後 | 44% |
1日後 | 26% |
1週間後 | 23% |
1ヶ月後 | 21% |
と低下していきます。
この曲線が示す特徴的な点として、20分後には既に4割ぐらいのことを忘れ、1ヶ月後では2割ぐらいのことは覚えていることです。
短期記憶に頼る作業
仕事の中で短期記憶に頼っている部分はありませんか。
例えば、測定値の転記作業、途中で中断した作業がどこまでやってあるか、Aさんからの伝言など、これら多くの作業が記憶に頼っています。
その大半は、短期記憶の領域です。
転記作業をなくす
伝言は必ずメモにする
など短期記憶に頼らない作業に変えることは大変重要です。
設計ミスも短期記憶が原因
機械設計、電気設計、システムやソフトウェアなどの設計業務のミスの原因の多くが短期記憶にあります。
設計とは、入力条件(インプット)Aに対して、欲しい出力(アウトプット)G、Hを実現する装置や回路、システムを作ることです。
そのためには、AからG、Hに変換する論理的なプロセスを作る必要があります。設計者はこの論理を頭の中で構築します。
時には設計した結果、出力がG、Hだけでなく、Iも追加されることもあります。
この思考プロセスの中で、設計者がA→Cのプロセスを忘れてしまった場合、出力Iが欠落します。
この論理を構築する作業はすべて頭の中で行う為、プロセスを忘れることが時々起きます。
最後の設計検証の中でIをチェックすれば、ミスは検出できますが、大抵の設計では出力は膨大で、Iのチェックが漏れることが少なくありません。
あるいは、F→Iのプロセスを設計している際に、制約条件を忘れてしまい、結果がKに変わってしまう場合もあります。
いずれも思考プロセスの中で、一時的に考えていたことを忘れなければ、防ぐことができます。
今日、不注意やウッカリミス、記憶違いによる問題に対して、個人の責任に負わせて注意するだけでは、再発を防ぐことはできません。
さらに個人に責任を負われることでモチベーションの低下や最悪離職を招きます。
不注意やミスの原因に踏み込んで、注意力に頼らないやり方や仕組みを構築することが組織のリーダーには求められます。
一方人が組織という集団を形成することで意図的に誤った行動をとることがあります。
これについては別の機会にお伝えします。
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仕事のミスとミスを防ぐリーダーの役割 その1
組織はリーダーの指示に従って、部下が必要な作業や活動を行い、目的とする成果を達成します。
計画通りうまくいけば良いのですが、時には部下が「失敗」してしまうこともあります。
どうして部下は失敗したのでしようか。
これは、大別すると2通りの原因があります。
ひとつは、元々の計画・進め方に問題があった戦術的・戦略的な失敗です。
もうひとつは、人の「ミス」です。
人のミス(別名ヒューマンエラー)は、飲食店での注文の聞き間違いから、発電所プラントの運転ミスまで様々な分野で起きています。
時には、これにより貴い命が失われることすらあります。
では、組織のリーダーは、部下のミスを防ぐために何をすべきでしょうか。
ミスを防ぐためにリーダーに必要なことについて述べます。
リーダーになりたがらない人たち
組織のリーダーとは、どのような存在でしょうか。
リーダーとは「部下を通じて仕事をする人」です。
リーダー自身は作業を行いませんが、部下に指示して、最も効率良く部下が行動することで、組織は成果を得ます。
しかし「最近の人たちはリーダーになりたがらない」と嘆く方が少なくありません。
ではリーダーは彼らにとって嫌な役割でしょうか。
リーダーになることは快感
本質的には、リーダーになることは快感をもたらします。
マイケル・J・ローリーは、サバンナモンキーの血液中のセロトニン濃度を研究し、1984年セロトニン濃度と群れの地位には、強い相関関係があることを見つけました。
ボスザルのセロトニン濃度は、下位のサルのほぼ倍のレベルでした。つまりボスザルにとって、ボスであることは快感だったのです。
そして下位のサルは、群れの中でより優位に立つとセロトニンのレベルが上がりました。つまり地位が上がることは、それ自体が報酬なのです。
企業や社会など人間の組織においても、地位が上がること、すなわち昇進は報酬です。
だから地位を誇示するためにリーダーや管理職は、他の社員と区別するような制服や階級章などがあるわけです。
昔の将軍は、写真を撮る時にありったけの勲章をつけました。
また副社長が何人もいる大企業もあります。
功ある人には、より上位の地位(称号)を与えれば、セロトニンのレベルが上がり、昇給と同じ満足感が得られます。
しかしそれにかかるコストは、新しい名刺を刷る印刷代だけです。
なぜ若者たちはリーダーになりたがらないのか
多くの企業で、経験を積んだ社員がリーダーになりたがらないと言われています。
推測ですが、彼らはリーダーになることで得られる快感と、その結果自分にかかる負荷を計算し、トータルではマイナスが大きいと判断しているのではないでしょうか。
これは、以前の世代とは、仕事に対する価値観が違うことが原因かもしれません。
あるいは昇進すると残業手当がなくなり経済的に不利になることや、役職が上になってしまうと、将来率先してリストラされることを心配しているのかもしれません。
その場合、まずこれらのマイナス要因を排除する必要があります。
リーダーになることで、精神的な快感と経済的なメリットなどトータルでプラスになれば、リーダーになる人も増えるのではないでしょうか。
そのリーダーの負担のマイナス要素として、組織や部下の失敗を負わなければならないこともあります。
「報酬が少なく、責任ばかりが重くなる」ということにならないためにも、失敗を防ぐ仕事の仕方の構築が重要です。
不注意によるミスの原因と対策
精神論の誘惑に抗して
部下のミスで失敗した時、多くの場合、原因は「うっかりしていた」「不注意だった」で片づけてしまいます。
そして、ミスを犯した当人に責任を押しつけます。
しかし注意してもミスは再発します。
そして部下のモチベーションはさらに低下します。
しかしリーダーは有効な手立てを何ら打てないことは珍しくありません。
現実には「たるんでいる」としか思えないミスも多いし、解決にはしっかり注意するしかないこともあります。
しかし組織としての再発防止の王道は「うっかりしていても大丈夫」な仕事の仕方に変えることです。
再発防止のためにリーダーは、部下に注意や指導を行います。
リーダーは、教育や指示をすれば部下に伝わっていると思っています。
しかし、ここに落とし穴があります。
リーダーの錯覚
ミスなく確実に業務を遂行するために、リーダーは業務の手順を定め、手順書を作成したり、部下を指導したりします。
しかし事故や災害を見ると、それが生かされていないことがあります。
その原因はリーダーが以下のような思い込みをしているからです。
不注意は作業者の責任
多くのリーダーは「作業者は、常に注意しながら作業すべき。不注意は作業者の責任」と思っています。
しかし「作業者が常に注意している」というのはリーダーの思い込みです。
そのため不注意によるミスが生じると、「どうしてもっと注意しなかったのか」と部下の不注意を責め立てます。
しかし、人は心身ともに健康な状態でも、高い注意力を持続できるのはせいぜい20~30分です。
疲れていたり、他に注意をそらすような条件があれば、注意力はさらに低下します。
リーダーが「こんなミスは、気をつけてやれば起きない」と思っていても、その作業を1日行えば、リーダー自身がミスをするかもしれません。
人は不注意をするものだと考え、注意しなくてもミスなく行うことができる環境や方法を考え、改善することがリーダーの仕事です。
《不注意の例 目視検査の限界》
2002年にアメリカ国内の空港検査員5万人について銃を見過ごす確率を調査しました。
その結果、見過ごす確率は25%で、なんと4丁に1丁は見過ごされていたことが判明しました。
このときの発生確率は1PPM(100万の1)、650万人の乗客に対し、検査員が見つけた銃は598丁でした。
検査員にとって、百万個に1個の怪しい画像を検出するほどの注意力を維持するのは容易ではありません。
《対策 あえて面倒をかける》
アメリカ大陸横断鉄道では、風景の変化が乏しく運転士が眠くなるため、眠気を防ぐために15秒ごとにボタンを押さないと、列車が自動的に減速する装置が備えられています。
多摩都市モノレールでは、列車を発進させるためには二つのボタンを同時に押さなければなりません。
ちょっと知恵を使う作業を付け足すことで集中力の低下を防いでいます。
教育
リーダーは「教育で教えたことは、必ず実践してくれる」と思っています。
例えば、新人の安全教育は、最初に集合教育を行い、安全意識や安全な作業方法を教育します。
そしてリーダーは「必要なことを熱心に教えたから、教えたことを実践してくれる」と思います。
実際は、熱心に教育したにもかかわらず、教えたことと違うことを行い、ミスを起こしてしまいます。
教育したことを根気よく繰り返し部下に言い続けなければ、行動に反映されないものです。
正しい方法を部下に教育し、部下も正しいやり方を行なっていても、誤って前のやり方をしてしまうこともあります。
今までの手順が新しい手順に変更になった時は、古い手順を忘却しなければなりません。
しかし人は自ら積極的に忘れることはできないため、あたかも記憶されているものに上書きします。
そしてやっかいなことに、緊急時やぼんやりしているときにこの古い手順が思い出されて、間違ってしまうのです。
指示
リーダーは「指示したことは守ってくれる」と思っています。
座学で教育までしなくても、会議や朝礼などで部下に「指示」することがあります。
リーダーは部下に指示したから、実行されると考えます。
「上司から指示されたことは守らなければならない」と部下も思っています。
しかし指示したことが守られていないことが多いのが現実です。
いろいろな事がらを指示しても、すべて守られていないと認識して、個人個人に合った指示の仕方や、指示した結果の確認が必要です。
文書
リーダーは「必要な事がらは、文書によって通達・回覧し、周知すれば実践してくれる」と思います。
口頭での指示が徹底されないことから「文書を回覧する」「文書を掲示する」という方法が取られます。
基準となる数値や日付は、口頭では間違いやすく、文書による伝達は有効な方法です。
一方文書でも文脈から意味を取り違えることもあり、伝達ミスすることもあります。
また読み手の受け取り方によって、絶対に守らなければならないものなのか、単に注意を促したものなのか、理解が変わることもあります。
従って「文書にして通達したから守ってくれる」と考えるのは危険です。
ミスの原因
作業中に不注意、つまりぼんやりしていると、ミスが生じます。
このミスには、見間違いや見落としなどの認識のミスや、スリップなど行動を間違えるミスがあります。
一方ミスの原因として、記憶が原因の場合もあります。
例えばどこに何を置くのか、何と何を混ぜるのか、作業の対象や作業の順序を記憶に頼って行っていると「作業途中で忘れる」「記憶内容が変わる」などが原因でミスが生じます。
この場合、いくら注意しても記憶力は向上しませんので、記憶に頼らない方法や記憶を助ける方法を考えなければなりません。
リーダーは、このような人間心理とミスの関係を理解し、適切な対策を考えなければなりません。
この人間の注意力とミスについては、別の機会にお伝えします。
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