なぜアイデアが出ないのか?製品開発と発想法の関係

中小企業が自社製品を開発する際に、アイデアを出すために社員と経営者が集まって会議をしましたが、具体的な製品のアイデアが出ないで終わってしまいました。
異業種交流会に参加して、異分野の人と様々な意見交換をしましたが、内容は雑談ばかりで具体的な製品にはつながりませんでした。
 

製品に大きな問題が発生して対策会議を開きました。しかしメンバーの発言は少なく、良いアイデアも出ません。結局、対策は社長が決断せざるを得ませんでした。
 

図1 アイデアを出すための会議

図1 アイデアを出すための会議


 

新製品や新事業には新しいアイデアが必要です。そのために会議を開いたり、様々な発想法に取り組んだりします。しかし会議でブレインストーミングを行ってもなかなか成果が上がりません。アイデアを出すのには、スティーブ・ジョブズのような才能がないとムリなのかと思ってしまいます。
 

実は新製品を開発する場合、アイデアを出すためには必要な手順があります。そして最初に行うことはアイデア出しではありません。ではどのような手順で行い、どのような方法でアイデアを出すのか、製品開発のプロセスと発想法について考えます。
 

アイデア発想から製品の実現までの流れ

製品開発とアイデア発想のプロセスを図2に示します。
最初に新製品はどのようなことを実現するのか、達成すべきゴールを明らかにします。これは、言い換えれば現在の製品やサービスでは満たされていない問題を発見することです。問題が見つかり、ゴールが分かれば、それに対して現在の状態を分析します。
 

今がどのような状態なのか、現状が分かれば、現状からゴールに至る道筋、つまり解決方法を考えることができます。この解決方法を考えるために必要なのがアイデア出しです。ゴールと現状の分析を行わずに、アイデア出しを行っても、解決すべき問題があいまいなためアイデアが出てきません。
 

アイデア出しを行い、アイデアがたくさん出ても解決できないことがあります。つまりアイデアは出たけれど、あと一歩が及びません。この一歩を飛び越えるのが「ひらめき」、あるいはセレンディピティと呼ばれるものです。ただし、ひらめいたアイデアは欠点だらけです。そこで欠点を克服して使えるようにする作業が必要です。
 

そしてアイデアを具現化するために設計作業に入ります。要求機能を詳細に分析し具体的に記述します。そしてシミュレーションやプリテストによりアイデアが実現可能なことを確認していきます。
 
図2 製品開発とアイデア発想のプロセス

図2 製品開発とアイデア発想のプロセス

図2 製品開発とアイデア発想のプロセス


 

問題は何か?問題発見と現状分析

問題を探すコツ

製品開発とは、従来の製品では満たされないことがあり、それを新しい製品で解決することです。今日ではこれが難しくなっています。なぜなら今では顕在化した問題点は、大抵何らかの解決策があるからです。顕在化した「顧客のニーズ」を探すのは容易ではありません。「顧客も気づいていない、満たされていないこと」を探さなければなりません。これには日常接している様々な事柄をより深く掘り下げなければなりません。
 

この「顧客も気づいていない、満たされていないこと」は、ブレインストーミングなどの発想法では見つかりません。発想法はアイデアを広く集めることはできますが、問題を深く掘り下げることはできないからです。では、どのようにすればよいのでしょうか。
 

ポイントは人です。満たされていないと感じるのは顧客です。満たされていないというのは顧客の感情です。「満たされていないこと」を発見するには、顧客の生活、人生観、感情などに踏み込んで、顧客も気がつかなかったことを探します。そのためには、以下の3つのポイントがあります。

  • 否定の精神
  • 論理的思考
  • 教養

 

(1)否定の精神

現状をすべて肯定しては、満たされていないものを発見できません。発明とは「現状に決して満足しない人」がします。まず自らが決して満足せず、否定の精神で今の世界を見ます。
 

【カーボンコピーに嫌気がさしたチェスター・カールソン】
世界初の乾式コピーを発明し、ゼロックスの生みの親チェスター・カールソンは、特許関係の事務所で来る日も来る日も特許関係の書類を手書きで複写していました。単調な作業に嫌気がさしたチェスター・カールソンは、仕事の傍らアパートで乾式コピーの実験に没頭し、4年後に世界で最初の乾式コピーに成功しました。

 

(2)論理的思考

発見した問題は解決可能なものでなければ、新商品にはなりません。それには、問題が論理的に解決できることです。問題には原因があり、その原因を除去すれば解決します。つまり論理的に解決可能です。しかし例えば、ある人が、原因が全くないのに、突然不機嫌になったり、機嫌がよくなったりする場合、これは解決方法がありません。つまり論理的に解決できない問題です。なぜ○○なのだろうか?と常に疑問を持ち、それを論理的に解く必要があります。
 

(3)教養

満足できないと感じるのは、人の感情です。この人の感情を理解するには、人に対する深い洞察が必要です。そのために必要なのが「教養」です。私たちの考え方や感情は、今まで育ってきた社会や文化の影響を強くうけます。この文化は、国や地域で異なります。個人個人も様々なタイプや考え方があります。問題を発見するには、こういった文化や歴史、人間心理に対する幅広い知見や深い洞察が教養です。教養を高めるには、人文系の様々な学問や、歴史や文学、芸術などを学び、それを咀嚼して自分の考えや価値観を築く必要があります。
 

【まだ気づいていない問題を見つけることは、顧客の先にある未来を考えること】
佐藤「クライアントの問題を解決しようとするとき、マーケティングの発想でいうと、これまでこのクライアントが何をしてきたのか確認するんです。そうやって過去の情報を整理しながら、一歩先の「未来」を示す。その人がいる地点の、ちょっと先を答えとして当てる作業なんですよ。でもそういう問題解決の仕方だと、過去からの流れの延長線上でしかないので、アイデアとしての爆発力がない。大きく飛躍はできないんです。自分の理想としては、まずポーンと先を見ちゃうんですね。」
松井「少し先でなく、何段階か後の『未来』を見る?」
佐藤「そうです。現状の問題に対する答えではなく、先にいくつも答えを想像してしまう。中略
ちょっと先の未来を予測して、今の課題を見つける。まず答えをイメージして、それに最も合う質問を逆算しているから、その問題は必ず解けるんですよ。説明した相手には、『なんで答えを知っているんだ?』とびっくりされますね。」
(参考文献1)

 

製品開発では問題が見つかった後、その答えに市場があるかどうかを考えなければなりません。また市場があっても、自社が参入できる市場かどうかというビジネスの視点での判断が必要です。事業化を前提として問題を判断する時、以下の点は確認が必要です。

  • 資金、人員など体制
  • 生産のノウハウや技術
  • 販売体制

 

今まで誰も気づかなかった市場に新たな製品を提供することは、競争のないブルーオーシャンでの事業です。しかしその製品が他社でも容易に作ることができるものであれば、すぐに多くのライバルが現れ、短期間にレッドオーシャンになります。それでも優位性を維持するためには、競合に負けないスピードで大量に商品を供給して市場占有率を高めます。そのためには大量の広告宣伝を行ってブランドを認知させる必要があります。さらに製品開発を継続して、競合の追従を振り切らなければなりません。
 

一般消費者向けの商品では、1社で市場を独占しているものは滅多になく、人気のある商品は必ず競合があります。このような時、特許や商標で市場の独占を維持できることはありません。なぜなら、大抵の特許は、競合によって特許を迂回する方法が発見されるからです。
 

現状分析(リサーチ①)

満たされないことが見つかった場合、最初のリサーチを行い、その答えが本当にまだ世の中にないのか調査します。インターネットや新聞、雑誌等の情報源から、答えがすでに商品化されていないか、調べます。さらに別の事業分野では、同様の問題が解決されていないか、調べます。特にニーズが顕在化していて、既存の技術で解決可能な問題は、すでに解決策があるか、誰かが解決策に取り組んでいる可能性があります。最初のリサーチでそのような情報が見つかれば、その問題には取り組まない方が賢明です。
 

ゴールはどこか?何をしたいかの明確化

要求を言語化する

問題が見つかれば、ゴールを具体的にイメージします。「どのような状態になれば問題が解決したといえるのか」達成すべきゴールの姿をイメージします。そして要求機能を言葉で書き表します。数値化できるものは数値化します。
 

問題がシンプルであれば、この段階で必要な要求機能はすべて表すことができます。複雑な問題の場合、後でさらに深くリサーチを行い、概要設計をしないと要求機能がすべては決まりません。その場合は、この段階では最低限の「これだけは実現しなければ目的が達成できない」という機能を書きます。
 

現状分析(リサーチ②)

要求機能が明確になれば、これを実現する方法を探します。この段階で本当に実現する方法がないのか2回目のリサーチを行います。問題がシンプルであれば、最初のリサーチで具体的な方法もリサーチします。
 

この問題の発見と具体的なゴールの決定は、現状を深く洞察して考える作業です。これは極めて個人的な作業です。会議で大勢が議論すれば、いろいろな考えは出ますが、深い洞察に至りません。製品開発において、ここが不十分でゴールと要求機能があいまいであれば、その後のアイデア出しでアイデアが発散してまとまらなくなります。
 

アイデア出し、実現方法の探求

問題とゴールがはっきりしたらアイデア出しを行います。この段階で図2に示すように現在のスタート地点とゴールははっきりしました。しかし、ゴールへ至る道筋が分かっていません。この道筋を発見するのが発想法です。
 

発想法とその特徴

実際は現在の地点とゴールが分かっても、どのようにすればゴールにたどり着くのか分かりません。これは干草の山の中から針を見つけるようなものです。このゴールへの道筋を探り当てる方法は、以下のようなものがあります。
 

【試行錯誤法】

手当たり次第に思いつくものをすべて行う方法です。干草の山から針を見つけるのであれば、干草を1本1本調べます。発明王エジソンは、電球のフィラメント材料を発明する際、6,000種類もの材料を炭にしました。最初は木綿の糸から知人のヒゲまで燃やしたそうです。
 

ある日、偶然机の上にあった竹の扇子に目が留まり、フィラメントにしてみると200時間灯りました。そこでエジソンは当時の金額で10万ドルをかけ、竹の材料を探すために20人の竹取ハンターを世界中に派遣しました。このように発明には熱狂的な勤勉さで努力を惜しまなかったエジソンは、一つの発明に平均で7年の歳月を費やしていました。
 

図3 1879年にメンロパークでのデモンストレーションで使われた電球
(ウィキペディアより)

図3 1879年にメンロパークでのデモンストレーションで使われた電球
(ウィキペディアより)


 

発想を引き出すには、二つの要素がカギとなります。ひとつは言葉です。人は言葉で思考し、言葉で論理を考えます。例えば、AならばB、BならばC、ならばAならばCと思考します。できるだけ多くの言葉を挙げて、その言葉をきっかけとしてできる限り多くのアイデアを出します。
 

もう一つは、絵などのイメージです。言葉の意味するものを図や写真で表すと対象のイメージが具体化します。あるいは、関係する言葉をグループにまとめたり、言葉同士の関係を図で表すことで情報が整理されて、アイデアが生まれやすくなります。
 

この試行錯誤法は、手当たり次第に思いつくものを試す方法です。図4に試行錯誤法のプロセスを示します。最初に課題から様々なアイデアを考えて、そのうちで1のアイデアを試します。それでダメだったら、次に2のアイデアを試します。それでダメだったら3のアイデアを試します。だったら最初からもっと多くのアイデアを出して、その中から良いアイデアを選択すれば、ゴールに達する時間を短縮できます。そこで最初からもっと多くの方法を出すために、様々な方法があります。
 

図4 試行錯誤法のイメージ

図4 試行錯誤法のイメージ


 

【ブレインストーミング】

アメリカの広告代理店の副社長A.F.オズボーンが発案した発想法で、自由奔放にアイデアを出すことで、アイデアの量を増やすことで、良いアイデアを出す方法です。
ブレインストーミングでは、以下の4つのルールを守らなければなりません。

  • 批判厳禁
  • 自由奔放
  • 大量生産
  • 結合・便乗

 

図5 ポストイットがよくブレインストーミングで使われる(wikipediaより)

図5 ポストイットがよくブレインストーミングで使われる(wikipediaより)


 

【ブレインライティング】

ドイツのホリゲルが開発した方法です、発言の際に退任への気兼ねや思いやり、遠慮などが自由奔放な発言の障害になる事から、発言の代わりに紙に書きつける方法です。前の人が書いた意見に対して、制限時間内に新たに意見を書くため、新たなアイデアを引き出すことができます。
 

図6 ブレインライティング (Wikipediaより)

図6 ブレインライティング (Wikipediaより)


 

【チェックリスト法】

ブレインストーミングでアイデアを出しやすくするためにA.F.オズボーンが考案した方法です。
 

表1 チェックリスト法

転用 他に使い道はないか?
応用 他からアイデアを借りられないか?
変更 変えてみたらどうか?
拡大 大きくしてみたらどうか?
縮小 小さくしてみたらどうか?
代用 他のモノで代用できないか?
置換 入れ替えてみたらどうか?
逆転 逆にしてみたらどうか?
結合 組み合わせてみたらどうか?

 

【アルファベット法】

世界で初めて使い捨て替え刃の剃刀を交換したキング・ジレット氏が考案した方法で、アルファベットをAからZまで順に書き、その横に各文字を頭文字とする商品を書きます。そしてそれらを使う際の人間の行動の特徴やこうあったらよいという希望など思いつくままに書きます。そしてその解決策を考えます。
 

図式化して、発想を引き出す方法【特性要因図】

東京大学の石川馨氏が考案した方法で、中央に一本の線を引き、そこから枝分かれしながら、中骨、小骨などを書いていきます。形が魚の骨に似ているので、フィッシュボーンチャートとも呼ばれています。
 

図7 特性要因図(Wikipediaより)

図7 特性要因図(Wikipediaより)


 

【KJ法】

東京工業大学の川喜田二郎氏が考案した方法で、たくさんのカードにアイデアを書いてそれらをグループにまとめて、アイデアを引き出す方法で、ブレインストーミングとよく併用されます。
 

図8 KJ法

図8 KJ法


 

《KJ法の特徴》
KJ法のようなカードに書いて整理する方法は、日本で広く普及しました。その理由として、漢字は表意文字の為、少ない文字から容易にイメージできることがあります。表音文字の場合、文字を見ただけではイメージがわかず、毎回読まなければならないので、イメージわきにくい欠点があります。
KJ法について川喜田氏は、自著の方法のみが唯一KJ法と呼べるもので、これに正確に準じないKJ法から派生したものはKJ法と呼ばないと主張しています。川喜田氏の手法の特徴は、必ず集めたカードから結論を構築するボトムアップのやり方にこだわり、トップダウンからの結論は一切認めない点にあります。これは川喜田氏が野外科学(フィールドサイエンス)の専門であったため、KJ法は現地で収集したノイズの多い情報から結論を導き出す総合の方法だったからです。

 

【マインドマップ】

イギリスのトニープザン氏が考案した方法で、真ん中にテーマを書き、そこから多段の枝分かれによってアイデアを二次元に表現する方法です。
 

図9 マインドマップ(Wikipediaより)

図9 マインドマップ(Wikipediaより)


 

【パテントマップ】

解決したい技術に関連する特許を調べて図式化する方法です。アイデアを出しても他社の特許に抵触しては製品できません。そのため、製品開発・リサーチには特許調査が不可欠です。その調査した特許を図式化することで技術相互の関係がわかり、新たなアイデアを出すことができます。この特許マップは、科学技術振興機構(JST)が運営するJ-STOREにて無償で公開されています。
J-STORE
 

発想法の長所

試行錯誤型が、限られた頭脳が何度も失敗を繰り返しながら答えに到達するのに対して、発想法を用いることで最初から非常に多くのアイデアの中から、ゴールに到達できる確率の高いものを選ぶことができます。図10に発想法の効果のイメージを示します。

(1)発想法

(1)発想法


(2)試行錯誤法

(2)試行錯誤法


図10 発想法のイメージ
 

発想法のポイントは

  • 多くの頭脳を使う
  • 時間を制限する
  • ブレイン・ライティングでは5分以内にアイデアを書かなければなりません。

  • ノルマ
  • カードに記入する方法では、一人何枚というノルマがあります。

  • ヒントから連想する 
  • オズボーンのチェックリストやジレットのアルファベット法のように発想の手助けにヒントを使います。

  • 分類・整理 
  • アイデアをまとめて、関係づけることで、あらたなアイデアを導きます。

  • 図式化 
  • 言葉の相互の関係を図で表すことで、新たなアイデアを引き出します。

 

TRIZ

TRIZは、旧ソ連海軍の特許審査官ゲンリッヒ・アルトシュラーが、膨大な特許を整理分析した結果から、技術課題を解決する原理を体系化したものです。創造的な活動を天才のひらめきから汎用的な方法論へと変えた方法として注目されました。一方、日本ではこれを使えば誰でも自動的に発明ができるという誤解が生じ、思うような結果が出なかったため、TRIZは使えないという誤解も生まれました。
 

図11 TRIZの概念

図11 TRIZの概念


 

このTRIZは40の発明原理がありますが、これを使うにはまず目の前の固有の問題を、TRIZで扱うことのできる一般的な課題に変換し、それを40の発明原理で解決し、その原理を固有の課題に落とし込む必要があります。この思考の上下運動が適切にできなければTRIZ をうまく活用できません。
 

表2 TRIZ40の発明原理

発明原理 発明原理
1 分割 21 高速実行
2 分離 22 災いを転じて福となす
レモンをレモネードにする
3 局所的性質 23 フィードバック
4 非対称 24 仲介
5 併合 25 セルフサービス
6 汎用性 26 コピー
7 入れ子 27 高価な長寿命より
安価な短寿命
8 釣り合い
(カウンタウェイト)
28 メカニズムの代替
もう一つの知覚
9 先取り反作用 29 空気圧と水圧の利用
10 先取り作用 30 柔軟な殻と薄膜
11 事前保護 31 多孔質材料
12 等ポテンシャル 32 色の変化
13 逆発想 33 均質性
14 曲面 34 排除と再生
15 ダイナミックス 35 パラメータの変更
16 部分的な作用
または過剰な作用
36 相変異
17 もう一つの次元 37 熱膨張
18 機械的振動 38 強い酸化剤
19 周期的作用 39 不活性雰囲気
20 有用作用継続 40 複合材料

 

一方TRIZを使えば、より確実にゴールに近づくことができます。試行錯誤法に対し、発想法が使えば、非常に多くのアイデアでゴールを取り囲むことができます。さらにTRIZはよりゴールに向いたアイデアを集めることができます。このTRIZは、米国IHS社(日本代理店 株式会社アイデア)が開発する『IHS Goldfire』と、Ideation TRIZ(I-TRIZ)(アイディエーション・ジャパン株式会社)の二つがあります。
 

AIの活用

多くのアイデアを出すためにブレインストーミングは他人の頭を借り、アルファベット法は、アルファベット順という強制力を活用しています。大量のアイデア、つまりキーワードを出す作業に人工知能(AI)を活用して、より関連性の高い言葉を数多く出せば、正解により近づくことができます。京都大学の逢沢明氏は、AIを使った連想検索エンジンにより、瞬時にテーマに関連するキーワードを抽出、またキーワードを画面上で自由に移動し、図式化するソフト「アイデア革命」を開発しました。(残念ながら、提供していたソフト会社はなくなり、現在は入手できません。)
 

発想支援ソフトの進化

ゴールに早くたどり着くためには、

  • 使えそうな過去の解決策を集める
  • できる限り多くのアイデアを集める

この二つがポイントです。そしてこれはコンピューター、つまりAIが得意とするところです。今後AI+TRIZの機能を持つ発想支援ソフトが進化すれば、このアイデア出しの時間が短縮され、より多くのアイデアから考えることで、より優れた解決策が見つかるようになることが期待されます。
 

(1)試行錯誤法

(1)試行錯誤法


(2)発想法

(2)発想法


(3)AI+TRIZ

(3)AI+TRIZ


(4)AIの活用

(4)AIの活用

図12 AIの活用とTRIZ+AIのイメージージ
 

最後の一歩、セレンディピティ

こうして、考えたアイデアですが、それがズバリ解決策なることは滅多にありません。かなり近いところに来ますが、あと一歩が足りないためゴールにたどり着きません。ここでひらめきが必要になります。つまり、集めたアイデアとゴールまでの最後の一歩をつなぐものがひらめきです。
 

ひらめきの瞬間

このひらめきについて、アメリカの広告業ジェームズ・ヤングは著書「アイデアのつくり方」の中で述べています。その中でアイデアの実際の生産は5つの段階を経由して行われます。

  1. データ集め
  2. データの咀嚼
  3. データの組み合わせ
  4. ユーレカ(発見した!)の瞬間
  5. アイデアのチェック

 

図13 ひらめきのイメージ

図13 ひらめきのイメージ


 

① データ集め

現状のリサーチと発想法によって、集めたものです。
 

② データの咀嚼

それぞれの情報を並べたり組合せたりして、自分の中でこれらの情報を多面的に見ます。その過程で部分的なひらめきが訪れたら、どんな突飛なものでも書き留めておきます。
 

③ 心の外に放り出す

アイデアの孵化段階です。この時は無意識の中で、自分で組合せの仕事をやるのにまかせます。
 

④ ユーレカ(発見した!)の瞬間(アイデアの誕生)

そして大抵は心身ともにリラックスしている時に、ひらめきが訪れます。
 

⑤ アイデアのチェック

生れたばかりアイデアは、大抵は粗削りな概念です。これを現実世界で役に立つものにするためには、最終的にこのアイデアを具体化し、実際の事業や製品に展開させる作業が必要になります。そして多くの組織やチームで、保守的な人、リスクを嫌う人が生まれたばかりのアイデアの問題点をいくつも指摘して、そのアイデアは葬り去られます。
 

問題が明らかになり、ゴールもわかりました。現状のリサーチも行い、それを解決するアイデアもたくさん集まりました。しかしまだ解決できずに行き詰ってしまいました。そこで一旦その問題から離れます。これが③の心の外に放り出す段階です。
 

そして、ある時ひらめきが訪れます。しかし、その時がいつか誰にも分かりません。明日かもしれないし、十年後かもしれません。そして残念ながら多くの人が、ひらめきが訪れる前にあきらめてしまいます。最後まであきらめずに考え続けた人にのみ、セレンディピティという女神が訪れます。フランスの細菌学者で世界で最初にワクチンを開発したパスツールは「幸運は用意された心のみに宿る」と述べています。
 

革新的なアイデアとは?

しかし閃いたアイデアは、大抵は欠点だらけの不完全なものです。このアイデアを葬り去るのはとてもたやすいことです。多くの組織やチームに必ずいる保守的でリスクを嫌う人が、この生まれたばかりのアイデアの問題点をいくつも指摘して、アイデアを葬り去っていきます。この瞬間にも世界中で数えきれないくらいのアイデアが葬り去られているでしょう。
 

この欠点だらけのアイデアを守り育てることができるのは、アイデアを閃いた人しかいません。この問題について深く考えた人だけが、閃いたアイデアが本当に革新的なことが分かるからです。彼のみが確信を持って「これは素晴らしい方法だ」といえるのです。しかし、アイデアが革新的であればあるほど、欠点も多くあります。このアイデアを具現化するには、その欠点をひとつひとつつぶしていかなければなりません。欠点をなくす方法を考え、疑問な点を実験で確認しなければなりません。
 

それには時間と費用がかかります。時には上層部の理解が得られず、担当者が隠れて開発せざる得ないこともあります。コニカのオートフォーカスカメラは、開発予算が打ち切られる中、昼は通常業務を行い、夜間こっそりと研究を続けて実現したものです。
 

図14  小さな成功から大きな成功

図14 小さな成功から大きな成功


 

このような粘り強さはどこから生まれるのでしょうか。誰もが生まれながら粘り強さを持っているわけではありません。自分の手で小さな成功を積み重ね、それが自信となります。徐々に高いハードルチャレンジし、それを克服することで「できる!」という自信から「○○するんだ!」という強い意志が生まれます。そしてひらめきまでの期間が長ければ長いほど、その方法を実現したいという気持ちが強くなります。
 

アイデアの具現化と設計作業

詳細な要求機能の具現化

アイデアが見つかり、ゴールまでの道筋が分かれば、後は具体的な設計作業に入ります。ここで重要なのが詳細な要求機能の定義です。特に高度な機能を持った製品や複雑なシステムでは必ず必要です。一方大企業でも要求機能を明確にしないで設計することは珍しくありません。かつては欧米製品のキャッチアップをすれば製品開発できました。その後、日本製品が欧米製品を上回っても、開発者が見ていたのは顧客でなく競合でした。改めて要求機能を定義しなくても、競合製品よりも良いスペックの製品を、より早くより安く作ればよかったのでした。
 

今日では、詳細に要求機能をしないと以下のような問題が起きます。

  • 要求機能の矛盾
  • 全体像が見えない
  • 要求機能が干渉
  • 正しくテストできない

 

【要求機能が矛盾する】

要求機能が矛盾していると設計に無理が出ます。後日それが原因となり致命的な問題が生じることもあります。あれもこれもと欲張る前に、一度要求機能をリスト化し、要求機能を満足しても論理的、物理的に矛盾しないか確認します。
 

【創造したいものの全体像が分からない】

要求機能を、基本的な上位機能から下位機能へと展開します。こうして要求機能の全体像を明らかになると、創造しようとするものの全体像が分かります。
 

【要求機能が干渉して問題を起こす】

要求機能の干渉とは、複数の要素が相互に影響し合って目的を達成することです。例えば、デジタルカメラにおいて、撮影した画像の品質を高めるために、レンズ、撮像素子、画像処理ソフト単体での性能を上げるとともに、それぞれを組み合わせた状態で最高の画像が得られるようにチューニングします。レンズのひずみを画像処理でカバーし、撮像素子の感度をレンズの明るさでカバーします。こうすることで、レンズ、撮像素子、画像処理ソフトの要求機能は、単体の時だけでなく、組み合わせた状態でも求められます。これが要求機能の干渉です。これは別名「すり合わせ」と呼ばれています。
 

こうすることで、各要素が持っている性能以上の能力を引き出すことができます。一方一つの要素の条件が変わると、他の要素もすべて再度チューニングしなければなりません。レンズ、撮像素子に多くの種類がある場合、その組合せが非常に多くなります。チューニングやテストはすべての組合せに対して行わなければならず、工数は膨大なものになります。
 

その結果、特定の組合せで確認や検討が行われず、大きな問題を起こします。(参考文献2によれば、ハードウェアの失敗の1/4は要求機能の干渉によるものと述べています。)
 

【正しくテストできない】

要求機能がすべて明確になっていれば、それに基づきテストを計画し行うことができます。もし要求機能が明確になっていなければ、どのようにテストを行うかはテスト担当者の勘と経験に頼ることになります。その結果、テストの漏れが発生します。特にソフトウエアでは、ユーザーが設計者の意図しなかった操作を行うことがあります。その結果、予想外の結果が生じ大きな問題が起きます。すべての要求機能をもれなくテストするためには要求機能の明文化は必須です。
 

モジュラー設計とインテグラル設計

要求機能を干渉させずに独立させるのがモジュラー設計です。マサチューセッツ工科大学のスー教授は、「要求機能は干渉するよりも、互いに独立であることが設計として絶対に正しい」と述べています。
 

従来、製品を構成するユニットの性能が不十分な場合は要求機能を干渉させて、各ユニットを組み合わせた状態でチューニングし、より高い性能を引き出します。しかし、各ユニットの性能が上がり、顧客の要求を満たすことができれば各ユニットの要求機能を独立させ、互換性を持たせた方が、大量生産できるためコストが下がります。かつてコンピューターは、メモリー、ハードディスクをCPUと一体で開発しました。しかしメモリーとCPU間の通信、CPUとハードディスクの通信に余裕が出てきたら、標準化しても十分な性能が得られるようになりました。今日ではDDR規格やSCSI規格で互換性が満たされ、どれでも自由に組み合わせできます。
 

QFDとシミュレーション

QFD:品質機能展開
(Quality Function Deployment)とは,顧客のニーズを整理し、技術的にどのようにして顧客の要望する品質を実現するかを明確にする方法です。市場の声を整理した要求品質展開と製品に関する技術的な特性を展開した品質特性展開表,要求品質展開表と品質特性展開表の二元表の品質表などがあります。
 

図15  QFDの構成

図15 QFDの構成


 

品質機能展開表は,提供する製品の設計段階からの品質保証を目的とした設計アプローチ方法です。
品質を保証するための,現行技術との対応付け(技術展開),故障発生との因果関係(信頼性展開),開発するためのコスト設定(コスト展開)など,展開方法は多岐にわたります。
 

品質機能展開の根幹が品質表です。

  1. 顧客の要求する品質(要求品質)を集め階層構造にまとめる
  2. 技術的にどのような特性(品質特性)を考慮すべきかまとめる
  3. ①と②の組み合わせの中で、競合他社の製品を考慮しながら、重点を置く点を絞込む。
  4. 製品の品質をどのように企画するのか(企画品質)設定する。
  5. 企画品質を実現するために、どのような仕様に(設計品質)すればよいか、不足している技術は何か明確にする

 

【狩野モデル】

東京理科大学教授 狩野紀昭氏により提唱されたもので、顧客満足度に影響を与える品質要素を分類し、その特徴を記述したモデルです。
 

図16  狩野モデル

図16 狩野モデル


 

  • 魅力的品質要素
  • 充足されれば満足を与えるが、不充足であっても仕方がないとされる品質要素

  • 一元的品質要素
  • 充足されれば満足し、不充足であれば不満を引き起こす品質要素。

  • 当たり前品質要素
  • 充足されれば当たり前と受け止められが、不充足であれば不満を引き起こす品質要素。

 

参考文献

「ひらめき教室」 松井優征、佐藤オオキ 著 集英社新書
「想像はシステムである」 中尾政之 著 角川oneテーマ
「結果が出る発想法」 逢沢明 著 PHP新書
入門編「原理と概念に見る全体像」 ゲンリック・アルトシュラー 著 日経BP社
「現状打破・創造への道」 狩野紀昭 著 日科技連
 

 

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