原価計算の基本|製造業のための正しい原価の考え方をわかりやすく解説 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 数人の会社から使える原価計算システム「利益まっくす」 Mon, 30 Mar 2026 10:40:43 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.7.5 https://ilink-corp.co.jp/wpst/wp-content/uploads/2021/04/riekimax_logo.png 原価計算の基本|製造業のための正しい原価の考え方をわかりやすく解説 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 32 32 12. 間接費とは?見積に入れないと利益が残らない理由 https://ilink-corp.co.jp/9598.html https://ilink-corp.co.jp/9598.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:38:03 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9598
【コラムの概要】

製造原価の大部分を占める間接費とは、製造に直接関わらない工場の経費や間接部門の人件費です。品質管理や製造環境の高度化により、その割合は増加傾向にあります。
間接費は多くの固定費を含み、生産量の増減で製品ごとの原価が変動します。正確な原価計算には、この間接費を適切に製品へ分配する必要がありますが、その分配方法には手間がかかり、根拠が不明瞭になる問題も抱えています。
しかし、間接費を計算しないと、適正な売価を設定できず、生産した製品が利益があるかもわかりません。そのため中小企業も間接費の分売は不可欠です。

アワーレート(人)の計算については

またアワーレート(設備)については


実際のアワーレートの中で、人や設備の費用など直接費のほかに、間接費も大きな金額を占めています。
この間接費とはどのような費用でしょうか?

1. 間接費とは?

製造原価の内訳

工場で発生する経費の1年間の合計は、決算書の製造原価報告書に示されます。その内訳は以下の通りです。

材料費
  • 主要原材料
  • 購入品
  • 補助材料:直接/間接
  • 工場消耗品:間接
  • 消耗工具:直接/間接
労務費
  • 直接労務費
  • 間接労務費
外注費
工場経費
  • 電力費:直接/間接
  • 減価償却費:直接/間接
  • 賃借料
  • 地代家賃
  • 通信費
  • 会議費
  • 保険料
  • 修繕費:直接/間接
  • 旅費交通費
  • 荷造包装費
  • 工場消耗品費
  • 租税公課
  • 消耗器具備品
  • 教育訓練費
  • 諸会費
  • 雑費

間接費

ここで「間接」と記載されているものが間接費用です。労務費の間接費は、現場の間接作業者、管理者、および間接部門の労務費です。

図 間接費

この間接費をどのように原価に入れるのかが課題です。なぜなら、原価に占める間接費が増加しているからです。

2. なぜ間接費の分配が必要なのか

原価に占める間接費は増えています。工場によっては加工費の50%が間接費ということもあります。その結果、間接費をどのように原価に組み込むかで原価が大きく変わります。

間接費が増えた理由

顧客・市場の要求が厳しくなっている

品質に対する要求は年々厳しくなり、かつてはリコールにならなかった不良品がリコールや自主回収になっています。そのため、不良品を作らない・出さないために、より高度な品質管理・工程管理や、万が一不良品が流出した場合の迅速な対応のためのトレーサビリティ(製造履歴管理)が求められています。そのため、品質管理・工程管理など管理部門の人員が増加しました。

検査設備・評価設備の増加

より高度な品質管理のためには、検査設備や評価設備の充実が求められることもあります。こうした設備の増加も間接費の増加につながります。

製造環境の改善

わずかな異物混入やより高い精度のため、温度・湿度、空調や異物対策が必要なこともあります。よりレベルの高い空調や温度管理、入室時の異物混入対策なども間接費を増加させます。

他にも様々な要因で間接費が増加します。これを適切に各現場に分配することが必要です。

※注)
本コラムでは、間接費を割り振ることを「分配」と呼びます。
財務会計では割り振ることを「配賦」と呼び、「配賦」も「割り当てる」という意味です。
財務会計には「配賦」のほかに「賦課」という言葉もあり、以下のように使い分けています:

  • 配賦:製造原価を計算する際に、間接費を何らかの基準(配賦基準)を用いて振り分けること
  • 賦課:製造原価を計算する際に、「何に」「どれだけ」使ったのかがわかる直接費を振り分けること

「直接費は賦課して、間接費は配賦する」という表現をします。
しかし、本書では難しい会計用語を用いず、一般的な「分配」を使用します。

工場で発生する費用はすべて原価

先に挙げた工場の経費の中には、一見原価に思えない費用もあります。しかし、実際に支出された費用です。

それに対して、工場でお金を稼いでいるのは直接部門の作業者と設備だけです。先に挙げた経費はすべて、直接部門の作業者と設備が稼いだ売上で賄っています。つまり、間接作業者や間接部門の人の費用、工場の経費は、直接部門の作業者と設備が支えているのです。

図 間接部門の費用は直接作業者と設備が支えている

だから原価を計算する際は、間接部門の費用も工場の経費も、適切な金額を原価に入れなければなりません。工場で使ったお金はすべて原価です。だからボールペン1本余分に買っても原価は上がるのです。これはいくら原価が上がるのかも計算できます。

実態は固定費

一方、間接費の多くが固定費です。固定費なので生産量が増えても変わりません。したがって、生産が増えれば製品1個あたりの間接費は減少します。つまり、生産量が変動すると製品1個の原価も変動します。

生産量によって製品1個あたりの間接費が変わるなら、間接費を細かく計算しても意味がないという意見もあります。実際、管理会計では固定費を振り分けず、直接費のみで計算する「直接原価計算」という方法もあります。

問題は、間接費も原価に入れなければ「いくらで売れば利益が出るのか」「適切な売価」が分からないことです。これは部品加工など受注型生産の工場では問題になります。

そこで、受注型生産の工場では条件を決めて間接費も含めた原価を計算します。一方、自社製品を見込み生産する工場では、価格は市場価格で決まる場合も多く、売価を決めるために原価は必要ありません。その場合は、生産量に応じてトータルでの原価と利益を管理します。

では、間接費の分配はどうすればいいのでしょうか?

3. 財務会計の原価計算

大企業は間接費も含めて原価を計算しています。この大企業が行う財務会計に則った正しい原価計算とは、以下の手順で行います。

(1) 経費を部門別に計算

毎月発生した経費を仕訳する際、「どの部門で使った費用か」が明らかな費用は、その部門の費用にします。この部門は以下のように分けられます。

直接部門

直接製品を製造する部門(例:加工、組立、塗装、検査など)
検査は、検査費用が見積に含まれている場合、検査部門もお金を稼いでいるので直接部門。検査費用が見積に含まれていなければ間接部門です。
同様に設計も、設計費用が見積に含まれていれば直接部門、含まれていなければ間接部門です。

間接部門

直接製品を製造しない部門(例:生産管理、品質管理、資材管理、生産技術など)

この時、消耗品費でも、機械加工部門の刃物代など使用部門が明確にわかる費用は、その部門の費用とします。しかし、消耗品費の中でもウェス、ガムテープなど使用部門が不明確な費用は「共通費」です。他にも共通費には保険料、家賃など様々な費用があります。

図 財務会計の間接費の分配

(2) 共通費を各部門に分配

この共通費は、何らかの分配基準(配賦基準)を用いて各部門に分配します。分配基準には以下のようなものがあります。

  • 社員数:人件費や福利厚生費など、人員に比例すると考えられる費用
  • 占有面積基準:家賃や保険料、固定資産税など、建物や敷地の使用に比例する費用
  • 機械帳簿価格基準:減価償却費や保守料など、機械設備の価値に比例する費用
  • 動力使用量基準:電気代や燃料費など、エネルギー使用量に比例する費用

一見論理的に見えますが、実務でやろうとすると頭を抱えます。雑費や租税公課はどうやって分配すればいいでしょうか?水道代や電気代は各部門の消費金額が分かるでしょうか?

また、社員数の場合、短時間勤務のパート社員と正社員を同じ1人と考えてよいでしょうか?他にも嘱託や派遣社員、請負はどうすればよいでしょうか?

実際の現場は教科書よりも複雑です。

(3) 間接部門費用を直接部門に分配

こうして計算した各部門の費用のうち、間接部門は直接お金を稼いでいないため、その費用は直接部門に分配しなければなりません(間接部門配賦)。
ここでまた分配基準が必要です。この分配基準には以下のような例があります。

  • 資材管理部門:在庫出庫額
  • 資材発注部門:発注伝票数
  • 生産管理部門:生産計画数
  • 品質管理部門:検査数

これも実務では悩むことが多いのです。

例えば、生産管理部門の費用を生産計画数で分配した場合、図のように加工部門と組立部門のその月の生産計画数が同じ50件であれば、50%ずつ分配されます。しかし加工部門は原材料のみで計画の変更はほとんどないのに対し、組立部門は外注加工が多く、納期遅れのため計画の変更が多発していました。実際は組立部門に多くの生産管理の費用がかかっていました。

図 生産管理費用の分配

このように、間接部門費用を直接部門に分配する基準には悩ましいものがあります。しかも間接部門の費用は大きく、この分配の仕方によって原価が大きく変わってしまいます。

(4) 分配(配賦)方法の種類

しかも分配の方法自体も4種類あります。

  1. 直接配賦法
    間接部門費を直接、各直接部門に配賦する方法。計算は単純だが、間接部門同士のサービス提供は考慮しない。
  2. 階梯式配賦法
    サービス提供量の多い間接部門から順に配賦する方法。間接部門間の一方通行的なやり取りを考慮できる。
  3. 相互配賦法
    間接部門同士の相互サービスも反映する方法。精度は高いが計算はやや複雑。
  4. 連続配賦法・連立方程式法
    最も精密な方法で、間接部門間の相互提供を完全に考慮する。大企業やERPシステムで多用。

中小企業の場合、直接配賦法で十分です。なぜなら、そもそも分配基準が前述のように便宜的なもので、現実とは乖離しているからです。

(5) 間接費を製品に分配

こうして直接部門に配賦された間接費を、それぞれの製品の原価を計算する際に分配します。この分配基準には以下のようなものがあります。

  • 直接材料費基準:材料費が多い製品ほど間接費を多く配分
  • 直接労務費基準:手作業中心の工程では有効
  • 製造直接費基準:直接材料費と直接労務費の合計に比例して配分
  • 直接作業時間基準:作業時間を基準に配分。小ロット多品種に向く
  • 機械稼働時間基準:機械時間が多い製品に多く配分。自動化工場に向く
  • 生産量基準:同一製品や類似品の大量生産に有効
  • 売上高基準:販売価格や収益性と比例して配分。ただし製造原価の正確性はやや落ちる

実際は直接作業時間基準及び機械稼働時間基準で十分です。こうして計算した間接部門費用の合計と直接費の合計を、その製品の生産数で割れば、1個の製造費用が計算できます。

ただし、これらの計算はその月の結果がわかっているからできる計算です。つまり、財務会計の原価計算は、実際に発生した費用を割り振って個々の製品の原価に落とし込む方法です。従ってその月の費用が確定しないと原価が分かりません。

工場の利益と製品別損益管理を実現

このように計算することで、その月に生産した製品の製造原価が計算されます。これにより、それぞれの製品の利益がいくらだったのか、製品別損益管理ができます。

間接部門の費用も含めた直接部門の費用も計算できます。そこから部門別損益管理も可能です(ただし、それには1つの製品の売上を各直接部門に振り分けなければなりません)。
また、部門別損益管理を間接部門にまで展開したものが、京セラが行っているアメーバ経営です。

4. 財務会計の原価計算の問題

例えば、今まで原価計算の仕組みがない中小企業がこの方法を導入しようとすると、以下のような問題があります。

経費(共通費)の分配

工場の経費(共通費)を各部門に分配する際、分配基準と実際の消費量との関連が弱いものも多く、「これで正しいのか?」という疑問がわきます。

例えば、地代家賃が従業員用の駐車場の賃料の場合、これは各部門の人数で分配すべきでしょうか。しかし、各部門の中で車通勤の比率は一定ではありません。では、車通勤の人数を調べて分配すべきでしょうか?

この分配によって各部門の費用が変わります。例えば、工場の共通費を各部門の占有面積で分配した場合、面積が広い部門は共通費の負担が多くなります。自部門の占有面積を減らせば共通費が減って原価を下げることができます。かといって現場の通路まで狭くすれば原価は下がりますが、作業効率が犠牲になってしまいます。

間接部門費用の分配

より影響が大きいのが間接部門費用の分配です。これらの部門の人件費は高く、分配の仕方によって原価は大きく変動します。

資材管理の費用を在庫出庫額とした場合、組立部門は購入品・外注加工品が多く出庫額も多く成ます。一方加工品は材料だけなので、同じ点数でも出庫額は少なくなります。その結果、同じ労力をかけていても組立部門に資材管理の費用が多く分配されます。

集計に手間がかかる

そもそも月次決算すらできていない中小企業は少なくありません。月次決算を行うには、年払い・半年払いの費用を月割り計算する必要があります。さらに、毎月発生する費用を集計し、そこから間接費の配賦計算を行う必要があります。

大企業ではERPなどの統合システムが自動的に集計しますが、中小企業では高額なERPを導入していないことが多く、経理担当者がExcelで3日がかりで配賦計算をしているケースもあります。

しかも、それだけの労力をかけても「原価が分かる」だけです。しかもその原価は現場から疑問視されることも多い原価です。

部門別損益管理の課題

配賦計算が発展すると部門別損益管理を行う中小企業もあります。しかし、共通費の配賦によって部門の利益額が大きく変わります。

そのため、各部門の長は数字の変動に神経をとがらせます。その結果、社内で利益争奪戦が生まれます。

部門別損益管理とは「利益は社内のコスト削減によって生み出される」という内部管理志向によって生まれたものです。しかし、現実には企業に売上と利益をもたらすのは顧客です。

経営コンサルタントの故・一倉定氏は「企業活動はすべて顧客志向でなければならない」と言いました。社内で数字を操作しても、利益は1円も増えないのです。

5. 原価計算に間接費の分配が必要な理由

固定費を入れない直接原価計算の課題

間接費の多くが固定費です。そのため、売上が増えれば原価に占める間接費は下がり、利益が増えます。売上が減れば間接費は上昇し、利益は減少します。さらに利益は在庫の増減によっても変動します。

財務会計の原価計算は、こういった要因で変動し利益も変わります。そこで、固定費を配賦しない直接原価計算(変動費のみを原価に含める管理会計手法)が生まれました。中には、損益計算書を変動費・固定費に分けて5期分比較したものを出す会計事務所もあります。

ただし、直接原価計算には問題があります。

いくらで売ればいいのかわからない

そもそも、なぜ原価計算が必要なのでしょうか?
原価計算の最大の目的は、適正な受注価格を設定し、利益を確保することです。

受注時には「この案件はいくらで作れるか」を予測し、利益が出る価格で受注する必要があります。生産後は「実際はいくらかかったのか」を把握し、もし想定より高くついたなら、その原因を分析し、改善策を講じます。

この予測と改善のPDCAサイクルを回すことこそ、原価計算の本質です。

図 現場管理ための原価計算の目的

もし変動費だけの直接原価計算しか行わなければ、固定費の負担を考慮しないため、受注価格が低すぎて赤字になるリスクが高まります。

儲かったかどうかわからない

固定費も含めた製造原価を算出しなければ、その製品が本当に黒字なのか赤字なのかを正しく判断できません。

例えば、受注量が少なく固定費負担が大きい場合、変動費ベースでは黒字でも、固定費を含めれば赤字ということがあります。現場が「予定通りのコストで作れた」と思っていても、実は会社全体の利益を圧迫しているケースもあるのです。

したがって、間接費の配賦は面倒で不正確な部分があっても、経営判断のために避けて通れない作業と言えます。

まとめ

  • 間接費は工場経費や管理部門など、生産に直接関係しない費用
  • 品質管理や製造環境の高度化により、間接費の割合が増加
  • 間接費の多くは固定費。そのため、生産量によって原価は変動
  • 財務会計の原価計算は間接費の分配計算が複雑、しかも根拠が希薄
  • 「いくらで作れるか」を予測し、「いくらかかったのか」を把握するため、中小企業も原価の仕組みが必要

このように、原価計算における間接費の分配は「正解のない作業」である反面、それを行わないと価格決定や採算判断ができなくなるというジレンマがあります。

では、どうすればいいのでしょうか?

これについては別のコラムで解説します。

次に読む

間接費の必要性が分かったら、次はどこまで原価に含めるべきかを確認します。

間接費の考え方|どこまで原価に含めるべきか

すべての費用を原価に入れるべきなのか、それとも一部だけなのか。
間接費の範囲の考え方を理解することで、見積原価の誤差を防ぐことができます。

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22. ミスや手戻りで原価はどれだけ上がるのか https://ilink-corp.co.jp/9595.html https://ilink-corp.co.jp/9595.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:36:51 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9595
【コラムの概要】

自社設計・製造の製品では、設計ミスや予期せぬ問題によるやり直しが発生し、原価が当初の見積もりをオーバーして赤字になるリスクがあります。これを避けるため、過去の失敗事例から適切な失敗費用を見積もりに上乗せすることが必要です。また、難易度の高い案件で発生した超過費用は、企業の技術力向上のための「開発費」と捉えことも重要です。

光熱費や運賃などの費用の上昇によるコストアップや利益の影響について、○○で述べました。

一方、自社で設計・製造する場合、設計ミス(失敗)のためやり直しをすることがあります。
これにより原価はどれだけ上昇するのでしょうか。

この失敗の原価について、以下の4点を述べます。

  1. 設計費用の考え方
  2. 失敗コスト
  3. 見積精度を高める取り組み
  4. 失敗を開発費と考える場合

1. 設計費用の考え方

例えば、生産設備や搬送設備を設計・製作する受注生産型の企業は、顧客の要望に基づいて毎回設備(製品)を設計・製造します。初めて設計する製品では、設計ミスや想定外の問題が起きます。設計のやり直しや部品の再作成が発生し、原価は予定より増えます。
そして、見積の時点では利益があったのに、結果的に赤字になってしまいます。

これはどうしたらよいでしょうか?

設計ミスや予期せぬ問題がどれくらい起きるかは、製品の技術的な難易度や複雑さに関係します。そこで、案件毎に材料費、設計費、製造費用の見積金額と実績金額を記録し、どの案件でどのくらいの差異が生じたのか調べます。

例えば、設備メーカーのD社 D1製品の見積は図のようなものでした。

図 設計のあるD1製品の見積
図 設計のあるD1製品の見積

実際は、材料費、設計費用、製造費用が見積よりも増えて0.8万円の赤字でした。こうしたことが毎回起こるのであれば、その分見積を高くします。

図 D1製品の実績原価
図 D1製品の実績原価

 2. 失敗費用

初めて設計する製品はどうしても設計ミス(失敗)が起きます。そこで失敗をある程度予測して見積を高くします。そうしないと失敗で赤字になってしまいます。ただし、あまり高くすると価格競争力をなくして失注します。そこで、過去の失敗とオーバーした金額を調べて、適切な金額を上乗せします。

図では、見積に対し

製品D1 : 130%
製品D2 : 100%
製品D3 : 140%
製品D4 : 110%

平均で120%でした。
利益を確保するためには、現状の見積に対してプラス20%にします。

図 見積に対する実績のばらつき
図 見積に対する実績のばらつき

こう書くと「設計ミスがあることがおかしい! 設計が頑張ってミスをなくすべきだ!」と言われてしまいます。設計ミスややり直しを減らす努力は当然必要です。しかし新規設計する以上、ミスややり直しが発生するのは事実です。それを認めてそれでも利益が出る金額にしないと利益が出ません。〈注〉これはミスを起こす設計者からは言いにくいため管理者が決めます。

〈注2〉筆者がかつて設備メーカーに高額な専用設備を発注した時の経験です。仕様打合せ、相見積の末、ある設備メーカーに発注しました。しかし、発注側は一切仕様を変えていないのに、問題が多発し納期も大幅に遅れました。おそらく設備メーカーは赤字だったと思います。これはすべて設備メーカーの問題でした。こういった特殊な製品は、起こりうる問題の予測も含めて、見積能力がとても重要だと感じました。

3. 見積精度を高める取り組み

設計がある製品は見積の精度が重要です。いくら見積価格で受注できても、失敗が多ければ赤字になってしまいます。特に設計やプログラミングなどクリエイティブな仕事は工数の見積が難しく、また設計者やプログラマは、楽観的に考えて工数を少なく見積る傾向があります。(多くの設計者やプログラマが納期を守れないことも、楽観的に考えることの現れです。)
つまり

  • 見積精度を高めるために、過去の設計や製造費用の実績を集計し、見積との乖離を調査
  • 実績を元に設計や製造費用の見積の仕方を改善する(フィードバックする)仕組みをつくる
  • 過去の見積と実績の乖離から、見積に下駄をはかせる量を決める

等が必要です。
それでも顧客の要求が非常に高く、未経験の技術要素があれば失敗は起きます。これはどう考えればいいのでしょうか。

 4. 失敗を開発費と考える

他社と差別化し技術力を高めるには

  • 自ら開発テーマを定めて研究開発する
  • 顧客から難易度の高い案件を受注する

2つの方法があります。
マンパワーに限りがある中小企業は、専任の開発チームをつくる余裕がありません。また開発チームをつくっても生産が優先されて開発が進まないこともあります。

その場合、現在より少し技術レベルの高い案件を受注します。そこで起きる失敗や問題を解決すれば自社の技術力を高めることができます。受注すれば納期までに必ず完成しなければならず、メンバーは必死になって取り組みます。

この時、やり直しのために見積をオーバーした金額は「開発費」の意味があります。顧客からお金をもらって研究開発をしたと考えれば、この赤字は技術を手に入れるための費用です。

しかし、経営者から案件ごとの赤字を厳しく責められると、現場はリスクの少ない無難な案件しか受注しなくなります。技術は向上せず、気がついたら他社もできる無難な案件しか受注できなくなってしまいます。

ただし難易度が高いといっても、

  • 技術的なレベルアップが必要なもの
  • 顧客が現実を無視した実現困難なことを要求している

この見極めは重要です。前者はレベルアップになりますが、後者は実現困難なことをひたすら努力させられるだけで、レベルアップにならないからです。

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20. 不良が発生すると原価はどれだけ上がるのか https://ilink-corp.co.jp/9590.html https://ilink-corp.co.jp/9590.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:33:11 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9590
【コラムの概要】

不良品の発生は、廃棄・修正・再作成の費用として原価を上昇させます。不良の原因は、製造のばらつき、作業ミス、あいまいな合否基準など多岐にわたります。損失額は、修正や再作成の費用で計算され、特に大量生産では利益を大幅に圧迫するため、損失金額を現場に示し、迅速な原因究明と対策を講じることが重要です。

材料価格の変動による原価の影響は○○に、
材料歩留や材料ロス率、スクラップ価格の変動による原価の影響は○○
で述べました。

ここでは不良による原価の影響について述べます。
不良品を廃棄したり修正すれば原価は上昇します。

本来は「不良は放置せず、不良対策が終わるまで生産は止めるべき」ですが、現実には顧客の納期もあり、十分な対策ができないまま生産を続ける場合もあります。

この不良は原価にどれくらい影響するのでしょうか?

不良の原因

不良とは何でしょうか。

不良は「規格を外れた製品」のことです。
ではなぜ規格を外れるのでしょうか。
代表的な原因を示します。

製品のばらつき

大量生産では、製品の品質(特性値)はばらつき(誤差)があります。誤差の分布は、一般的には釣り鐘型の分布(正規分布)になります。

図 正規分布
図 正規分布

分布のすそ野はなだらかに広がっていて、生産量が多ければ公差を外れた(すそ野の端)ものが増えます。大量生産では不良は避けられないのです。

ばらつきが大きくなる原因は

  • 設備の能力不足
  • 作業者のスキル不足のため、製造条件の調整が不十分
  • 工程能力以上の品質の製品を製造
  • 設計上の製品の品質が不足し、要求品質を安定して達成できない
  • 設備の劣化や作業者のスキル不足で工程能力が低下

など様々です。

作業者のミス

設備に問題がなくても、作業者が操作をミスしてしまうこともあります。人は100%ミスなく作業するのは困難です。ミスが起きにくい、あるいはミスをしても不良が出ないやり方を工夫します。

あいまいな合否基準

合否基準があいまいだと、発注側、受注側の解釈の相違により、良品・不良品の判定結果が変わります。傷や汚れ、色合いなどは定量的な判定が難しく、五感による官能検査が行われます。官能検査は検査員の主観で良品・不良品の判定が変わります。しかも顧客(買う側)の立場が強く、つくる側が良品だと思っても顧客から不良品とされてしまうこともあります。

では、この時の損失金額はどのように考えればよいのでしょうか。

これは不良品をどう処置するかで変わります。

不良損失の考え方

不良品の処置には

  • 不良品をそのまま使う
  • 修正して使用する
  • 再作成する

3つがあります。
この修正や再作成にかかった費用が不良損失の金額です。図にこういった不良品の処置の種類を示します。

図 不良品の対処の種類
図 不良品の対処の種類
不良品がそのまま使える場合

機能に影響のない不良、軽微な不良のため、そのまま納入する場合です。あるいは納期が迫っているため、不良品が使えるのでそのまま納入する場合です。
その際、顧客は文書「特別採用申請書 (特採) 」の提出を求めます。この文書の作成や顧客との打合せにかかった時間(コスト)も損失金額です。

不良品を修正して使える場合

不良品を修正する際、新たに製造指図書を発行する会社と発行しない会社があります。前者の場合、新たに発行した製造指図書に修正にかかった工数を記録し、その工数から損失金額を計算します。
製造指図書を発行しない場合、修正工数を修正前の製造指図書か、日報に記録します。

不良品が使えない場合

不良品が使えない場合

  • 不良品の数の分、納入数を減らす
  • 不良品の分、別途作成する

この2つがあります。

  • 納入数を減らす場合、廃棄した分の原価が損失金額です。
  • 再作成する場合、再作成費用が損失金額です。

不良品を廃棄する場合、材料が再利用できる場合と再利用できない場合があります。
樹脂成形は不良品を粉砕して再利用できます(ただし品質の厳しい製品は再利用できません)。 その場合、損失金額は製造費用のみです。材料費は損失に含まれません。

大量生産での不良損失の金額

大量生産は不良はゼロではありません。大量生産では不良の損失コストを原価に組み込んでおきます。

樹脂成形B社

樹脂成形B社 B1製品は、図に示すように不良率が0.5%でした。

図 樹脂成形品B1製品の不良損失1
図 樹脂成形品B1製品の不良損失1

不良品50個(不良率0.5%)はすべて廃棄し、損失分を補填するため50個多く生産しました。
製造原価 : 29.1円

損失金額= 29.1 × 50 = 1,455 円

1個当たりの損失金額 = 損失金額 ロット数 = 1,455 10,000 = 0.15 ≒ 0.2 円

不良発生前に3.3円あった利益は0.2円 (6%) 減少しました。もし常に0.5%不良が発生するならば、損失金額を最初から見積に入れておきます。
一方、1個当たり0.2円の損失は現場も軽視しがちです。しかし、気づかない間に不良率が増加すれば、損失金額はもっと増えます。

不良率が10倍の5%に上昇した場合を図に示します。

図 樹脂成形品B1製品の不良損失2
図 樹脂成形品B1製品の不良損失2

不良数は500個、その分500個多く生産しました。

損失金額 = 29.1 × 500 = 14,550 円

1個当たりの損失金額 = 損失金額 ロット数 = 14,550 10,000 = 1.45 ≒ 1.5 円

3.3円あった利益は1.5円 (55%) 減少し、半分以下になってしまいました。
しかし「不良率が5%!」と現場に注意を促しても、慢性的に不良が発生していれば、現場に危機感が生まれません。そこで不良率でなく、損失金額を現場に示します。利益が大幅に減少している(場合によっては赤字になっている)ことを現場に伝えて、粘り強く対策を行います。

一方、樹脂成形の場合、不良品を粉砕して再び成形できることがあります。樹脂成形品は原価に占める材料費が高いので、材料が再利用できれば損失金額は小さくなります。図に材料が再利用できる場合の損失金額を示します。

図 樹脂成形品B1製品の不良損失3
図 樹脂成形品B1製品の不良損失3

不良数は500個、損失は加工費用のみです。1個当たり損失金額は14.1円です。これは不良を廃棄した場合の37%でした。

損失金額 = 14.1 × 500 = 7,050 円

1個当たりの損失金額 = 損失金額 ロット数 = 7,050 10,000 = 0.71 ≒ 0.7 円

廃棄した場合の1.5円と比べ損失金額は0.7円に減少しました。それでも1個当たり0.7円の損失が発生しています。しかも500個余分に生産しなければならず、時間当たりの出来高が低下します。

しかし、材料が再利用できるため、現場は不良に無関心になっていることがあります。しかし不良は工場の出来高を減らし生産性を低下させています。

評価よりも対策

不良の損失を減らすためには「その期やその月の損失金額がいくらか」よりも、不良が発生した時点で「正確な状況の把握とスピーディーな対策」が重要です。その上で製品毎、ロット毎の不良率や損失金額を監視します。不良率が悪化するようであれば直ちに手を打ちます。

不良の原因には様々なものがあります。発生するタイミングも様々です。その都度原因を突き止めて対策しなければなりません。また不良には自社だけでなく、顧客に協力してもらわないと解決できないものもあります。

  1. 製造プロセスが不安定
    寸法など特性値が安定しない。ばらつきが大きい。温度などの環境の変化、作業者の違いなどで変化が大きい。
  2. 製品の設計品質が不安定
    そもそも図面の公差が工程に対し厳しい。形状、材質に問題があり必要な形状や精度を実現するのが容易でない。
  3. 製造工程、検査工程のミス
    作業者の作業ミスや機械の設定ミス、検査の見逃しなどヒューマンエラー
  4. 顧客と品質の考え方に相違がある
    傷や色むら、バリ、製品の振動や異音など官能検査の部分で顧客と合否判断が違う

このような問題(不良)は、製造の担当者だけでは解決できません。特に(4)などは上司や顧客も巻き込んで取り組む必要があります。

このように不良の増加は原価に大きく影響することが分かりました。

他にも光熱費や運賃などの費用が上昇すれば利益は減少します。

では光熱費や運賃などの費用が上昇が多発した場合、原価や利益はどれだけ変化するのでしょうか?

次に読む

不良による影響が分かったら、次は会社全体の経費が増えた場合に原価がどう変わるのかを確認します。

経費の増加で原価はどう変わるのか

電気代や人件費の上昇など、会社全体の経費が増えると原価も上昇します。
経費の変化が原価にどのように影響するのかを整理します。

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19. 歩留とスクラップで原価はどう変わるのか https://ilink-corp.co.jp/9587.html https://ilink-corp.co.jp/9587.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:32:39 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9587
【コラムの概要】

材料費は、加工ロス(切削の取り代や端材、成形時の付着など)を考慮し、材料歩留(投入量に対する完成品の割合)を用いて計算されます。歩留改善は原価低減に直結し、発生したスクラップを売却できる場合はその金額を材料費から差し引くことで、より正確な原価が計算できると具体例と共に説明しています。

材料価格の変動と原価について○○で説明しました。

ここでは材料歩留と材料ロス率、スクラップ価格の変動による原価の影響について述べます。

材料歩留と材料ロス率

購入した材料は100%製品にならず材料のロスが発生することがあります。
その場合の材料費は以下の式で計算します。

材料費 = 材料単価 × 使用量 ×(1 + 材料ロス率)

材料ロスの原因

切削加工など除去加工
  • 必要な寸法精度に仕上げるための取り代
  • 定寸材から切り出す場合、切断代と端材
板金プレス加工など成型加工
  • 板材から切り出した端材
樹脂成形など粉体・液体材料
  • 設備や容器に付着して製品にならない材料
  • ランナーなど金型の経路で固まった材料

などがあります。
これを材料歩留〈注2〉といいます。材料費を正しく計算するには、材料歩留を計算します。材料歩留を改善すれば、原価は下がります。

〈注2〉
歩留とは、インプットに対するアウトプットの比率です。歩留には
材料歩留 : 投入した原材料に対する完成品の割合
製品歩留 : 生産数における良品の割合
などがあります。これらを単に歩留と呼ぶこともあります。本コラムは、混同を避けるため、製品歩留、材料歩留と明記します。

切粉や端材を回収業者が買ってくれる場合、その分材料費が下がります。スクラップがお金になる場合、材料費の計算にスクラップ費用も入れます。
これは以下の式で計算します。

材料重量 = 製品重量 + スクラップ重量

材料歩留 = 製品重量 材料重量

材料費 = (材料単価 × 材料重量) - (スクラップ単価 × スクラップ重量)

切削加工の材料歩留の計算例

切削加工では、材料寸法は完成寸法に取り代をプラスします。図では、完成寸法に対し片側で3mmの取り代としました。その結果、
材料寸法 : 106mm
製品重量 : 7.8kg
材料重量 : 9.3 kg

図 切削材料の材料歩留の例
図 切削材料の材料歩留の例

材料歩留 = 製品重量 材料重量 = 7.8 9.3 = 0.84 ≒ 84 %

材料単価 : 300 円/kg

材料費 = 9.3 × 300 = 2,790 円

棒状・板状の材料を定寸材から切断する場合、端材が生じます。端材の分、材料歩留は悪化します。
図では、素材はφ50×1,000mmの定寸材で長さ29mmで切断します。切断のロスを1mmとしました。

図 定寸材から切り出して使用する場合
図 定寸材から切り出して使用する場合

その結果、定寸材から33個取れました。定寸材の価格を取り数33で割ると、材料費は139円でした。

1個の材料重量 : 0.44kg
定寸材のkg単価 : 300円/kg
定寸材の重量 : 15.3kg
定寸材の価格 : 4,590円

材料歩留 = 製品重量 材料重量 = 0.44×3 15.3 = 0.95 ≒ 95 %

プレス加工の材料保留の計算例

図は、プレス加工や板金加工などで四角の板材から丸く切り出す例です。

図 プレス加工(一列配置)の場合の材料歩留
図 プレス加工(一列配置)の場合の材料歩留

製品重量 : 0.098kg
材料重量 : 0.14 kg
材料単価 : 120 円/kg
材料費 : 16.8円

材料歩留 = 製品重量 材料重量 = 0.098 0.14 = 0.7 ≒ 70 %

製品が円形の場合、図のように三列を千鳥に配置すれば、製品の面積の比率が上がり、材料歩留は向上します。

図 三列を千鳥に配置した場合
図 三列を千鳥に配置した場合

1列配置の場合、材料費は16.8円、材料歩留は70%です。しかし3列配置の場合、材料費は14.6円、材料歩留は80%になります。

材料費低減率 = 改善前材料費-改善後材料費 改善前材料費 = 16.8-14.6 16.8 = 0.13 ≒ 13 %

材料費は13%低減できました。プレス加工は、原価に占める材料費の比率が高く、材料歩留を改善すれば原価は大きく下がります。

次に読む

歩留やスクラップの影響が分かったら、次は不良によって原価がどれだけ上がるのかを具体的に確認します。

不良が発生すると原価はどれだけ上がるのか

不良が増えると、材料や作業時間のロスが重なり、原価は大きく上昇します。
具体的にどの程度影響が出るのかを確認することで、改善の重要性が見えてきます。

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18. 材料価格の上昇で原価はどう変わるのか https://ilink-corp.co.jp/9584.html https://ilink-corp.co.jp/9584.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:32:01 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9584
【コラムの概要】

製造原価に大きく影響する材料費について解説。材料の種類や購入に伴う副費を説明し、変動する材料費への対応として、原価の上昇分を値上げ交渉する方法と課題を述べている。

 
検査追加によるコストアップについて【原価計算と見積の基礎】14.検査追加によるコストアップで述べました。

材料価格が上昇した場合、原価はどう変わるでしょうか?

材料費の割合が高い製品は、材料価格が変動すれば原価が大きく変わります。そこで材料価格の変動を原価に細かく反映させます。

それに対し、材料費の割合が低い製品は、材料価格の変動を原価に細かく反映してもメリットは多くありません。

材料費について

  1. 材料費の種類
  2. 材料価格の変動と値上げ交渉

の3点を述べます。
 

1. 材料費の種類

 
材料には図1に示す様々なものがあります。

図1 材料の種類


原材料には、固体、粉体や液体、植物や動物など有機物があります。

固体 : 金属材料(棒やブロック形状、板材)など
    粉体や液体 : 樹脂(ペレット)、化学製品、食品など
有機物 : 野菜も果物や食肉など農産物、水産物など
部品 : メーカーの完成品やボルト、ナットなどの資材

原料と材料の違いは、製造工程で物理的・化学的変化があるかどうかです。

原料 : 物理的・化学的な変化がある
材料 : 物理的・化学的な変化がない

です。部品とは、自社の製造工程では加工せずに、そのまま組み立てるものです。

原材料は、固体、粉体・液体、有機物により材料歩留やロス率の考え方が異なります。

また材料費は直接材料費と間接材料費があります。

直接材料費(主に材料費) : 主要材料、購入部品
間接材料費(製造経費) : 補助材料、工場消耗品、消耗工具器具備品

これを図2に示します。

図2 材料費の種類


直接材料費
【原材料、部品】

  • 主要材料・購入部品
  • 部品表に使用量が記載され、製品毎に原価が明確

補助材料費
【補助材料費】例 ボルト・ナット、電線、溶接スタッドなど

  • まとめて購入され、間接製造費用として計上
  • 部品表に使用量が記載され、製品毎に原価が明確(受払記録がある)

【工場消耗品費】例 油・塗料、結束バンド、ボルト・ナット

  • まとめて購入され、間接製造費用として計上
  • 部品表に使用量が記載されず、製品毎に原価があいまい(受払記録がない)

この分け方は企業によっても違います。例えば塗料は、設備メーカーでは原価に占める割合が低く工場消耗品です。

しかし、塗装工場では塗料は原材料(主材料)です。使用量を製品毎に管理して原価に組み込みます。ボルト・ナットも企業により補助材料費だったり、工場消耗品だったりします。

【消耗工具器具備品費】例 刃物、砥石など

  • まとめて購入され、間接製造費用として計上
  • 製品による消耗度合いが不明

切削工具の中で特定の製品で消耗が大きいものは、その製品の原価に入れます。

材料の費用は材料費だけではありません。他にも材料の購入に伴って発生する費用があります。これは材料副費と呼ばれます。(図3)

図3 材料の購入に伴って発生する費用

材料副費には

  • 材料の発注・受入・検収に伴って発生する費用
  • 材料の購入に伴って発生する費用(保険・税金など)
  • 材料の輸送・保管に伴って発生する費用

があります。海外から材料を直接購入する場合は、関税や手数料も発生します。
材料副費の例を以下に示します。( )内は経理での仕訳科目の例です。

【外部で発生する費用】

    • 運送費・荷役費 (荷造運賃)

海外から購入する場合、以下の費用も発生します。

  • 輸出入運賃   (荷造運賃・輸出入運賃)
  • 関税        (輸出入税金)
  • 買取手数料・保険料 (輸出入雑費)

一方、材料の発注や受入には下記のような社内の費用も発生します。
【内部で発生する費用】

  • 検収・整理のための人件費 (労務費)
  • 保管のために倉庫を借りている (保管料)
  • 注文・支払事務の人件費  (労務費・販管費)

材料副費は、材料費、労務費、製造経費、販管費などに計上されます。

材料副費は材料の購入に伴って発生しますが、材料の購入と発生時期がずれ、複数の材料をまとめて計上されるため、どの費用がどの材料に対応するのかわかりません。また運送費や保管料は販管費になっていることもあります。

従って、材料副費も含めた材料費を正確に計算するのは困難です。そこで材料副費は間接製造費用として現場に分配します。

ただし材料を国内と海外のどちらから調達すべきか判断する場合は、材料価格だけでなく、材料副費も含めて判断しなければなりません。

単価は海外の方が安くても、まとめ買いが必要だったり保管費用や倉庫へ運ぶ運賃が必要だったりして、海外の方が高くなっているかもしれません。
 

2. 材料価格の変動と値上げ交渉

 原価に占める材料費の比率が高い製品の場合、材料価格が変動すれば原価は大きく変わります。そこで原価の上昇分を値上げ交渉します。

悩ましいのは、材料費が頻繁に変動する時です。市場価格が頻繁に上がったり下がったりする材料もあります。

顧客が毎月材料費を改訂してくれればいいのですがそうはいきません。図6は材料費が徐々に上昇する例です。

図6 値上げが続く材料費の価格交渉

材料費の上昇が続くため、4月に顧客と値上げ交渉を行いました。

交渉には時間がかかり、発注単価が変わったのは半年後の10月でした。その間も材料価格は上昇し続け、10月の価格は4月より15円高くなっていました。

値上げ交渉しないよりはましなのですが、結局元の利益になりませんでした(実際には発注価格が改訂されるまで、もっとかかった例もあります)。

それならば将来の材料費の上昇も見込んで値上げしたいところですが、これは難しいです。

次に読む

材料価格の影響が分かったら、次は生産効率によって原価がどう変わるのかを確認します。

歩留とスクラップで原価はどう変わるのか

不良やスクラップが発生すると、同じ製品でも必要な材料や作業時間が増え、原価は上がります。
歩留と原価の関係を理解することで、見積と実績の差の原因が見えてきます。

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17. 検査工程の追加で原価はどう上がるのか https://ilink-corp.co.jp/9581.html https://ilink-corp.co.jp/9581.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:31:19 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9581
このコラムの概要

製品の検査強化は品質向上に不可欠ですが、コスト増大も招きます。人件費や設備費に加え、検査時間の増加は生産効率を下げ、製品原価を引き上げます。しかし、不良品流出による損失やブランドイメージの低下を防ぐメリットもあります。コスト増大だけを問題視するのではなく、不良品発生による損失と比較検討し、品質とコストの最適なバランスを見極めることが重要です。

 
段取時間の短縮と外段取化について【原価計算と見積の基礎】13.段取時間の短縮で述べました。検査が追加された場合は原価はどうなるでしょうか?

検査費用が最初から見積に入っていれば問題はありません。しかし、見積にない検査をすれば原価は増えています。
あるいは、当初は無検査や抜取検査でした。しかし不良が流出したため全数検査を追加した場合です。全数検査の分、原価が増えています。

この検査の損失について

  1. 検査の種類
  2. 検査費用の違い

を述べます。

1. 検査の種類

検査の種類は大きく分けると

① 全数検査
② 抜取検査
③ 無検査

の3つです。


図1 抜取検査と全数検査

全数検査

 製品をすべて検査する方法です。確実ですが、その分コストがかかります。プレス加工など加工時間が短い製品は、生産時間よりも検査時間の方が長く原価は大きく上昇します。

一方、全数検査でも検査漏れは起きます。全数検査をしても100%良品とは限りません。例えば、人が目視で検査する目視検査では、見逃しがどうしても起きてしまいます。

抜取検査

一定量のサンプルを抜き取って検査する方法です。抜き取ったサンプルの結果を統計的手法を用いて判定します。

図2の検査は、1,000個から10個を抜き取り「不合格品が1個以内なら合格」でした。不合格品が2個あれば、そのロットは不合格です。その場合、このロットは全数検査をします。

この抜取検査の方法はJIS(JIS Z 9002~9004、Z9015)に詳しく記載されています。実際はJISに規定された方法でなく「1,000個生産したから5個抜き取って検査」と抜取り数を適当に決めていることもあります。

製品の強度や溶接・半田付けなど接合部の強度は、破壊しなければ測定できません。従って検査したものは使えません。硬さ測定も製品にくぼみをつけるため、検査したものは使えません。こうした製品は抜取検査しかできません。

抜取検査の課題は、

  • 不良品が流出することがある
  • 誤判定がある

この2点です。これはサンプルからロット全体を(統計的手法で)推定するためです。つまり100%良品を保証することは抜取検査ではできないのです。

その一方、強度測定のように抜取検査でしかできない検査があります。今日、品質に対する要求は厳しく、顧客は「100%良品」を求めます。しかし抜取検査は100%良品を保証できません。だからといって全数検査をしても100%良品とは限りません。

100%良品を保証するには、以下の2点が重要です。

  • ポカヨケのような不良品をつくらない仕組みをつくって、100%良品ができるようにする
  • ばらつきを抑えて不良の発生確率を低くする。

では、この抜取検査の費用はいくらでしょうか。

抜取検査の場合、1個当たりの検査費用は、検査費用に抜取りの比率をかけて計算します。

無検査

検査しないことです。

  • 規格から外れても、後工程や客先で発見できる
  • 規格から外れても、その影響は限られるので検査費用をかけるまでもない
  • 規格に対し、製品の品質が十分に高い

このような場合、無検査で製造します。

3種類のどの検査方法を採用するかは、製品の特長や品質に対する考え方によって異なります。

2.検査費用の違い

 見積に全数検査が入っていないのに、全数検査を追加すれば原価は増えます。赤字になることもあります。何とか全数検査をやめたいところです。

そこで顧客に全数検査の廃止を理解してもらうために、コストダウンを訴えます。では、検査をやめるといくらコストダウンになるのでしょうか?

無検査、抜取検査、全数検査でどれだけ原価が変わるのか、具体的な数値で確認します。
 

機械加工A社 A1製品の場合

機械加工A社 A1製品の原価を無検査、抜取検査、全数検査で比較します。検査は各寸法をノギス、マイクロメーターで行いました。

検査時間 : 3分(0.05時間)
検査のアワーレート : 2,350円/時間

検査費用を以下に示します。

【全数検査】
検査費用=検査のアワーレート×検査時間
=2,350×0.05
=117.5 ≒ 120 円 

全数検査追加による原価の上昇は120円でした。

【抜取検査】
抜取検査の数 : 100個中5個抜取

A1製品の抜取検査、全数検査の製造費用と利益を図2に示します。

図2  A1製品 検査追加による製造費用と利益

検査費用       利益
無検査 : 0円   無検査 : 50円
抜取検査 : 6円   抜取検査 : 44円
全数検査 : 120円   全数検査 : ▲100円
抜取検査追加では、利益は6円減少し、全数検査では、利益は100円の赤字でした。

検査費用が見積に入っていない場合、全数検査を追加すれば原価は大幅に増加します。

抜取検査は1個あたりの検査費用が5/100に減少します。そのため検査費用は6円、抜取検査の影響は多くありません。そのため抜取検査の費用を原価と考えない企業もあります。

次に読む

工程の追加による原価の変化が分かったら、次は材料価格の上昇による影響を確認します。

材料価格の上昇で原価はどう変わるのか

材料価格が上がると、製品の原価は直接的に上昇します。
原価への影響と見積への反映の考え方を整理します。

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11. 工程別原価計算とは?製品ごとに原価を積み上げる方法 https://ilink-corp.co.jp/9570.html https://ilink-corp.co.jp/9570.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:22:01 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9570
【コラムの概要】

製品の原価と見積金額の具体的な計算方法を解説。材料費・外注費、段取・加工時間を考慮し、製造費用を工程別に計算。最後に販管費と目標利益を加えて最終的な見積金額を算出する。

 
8.販管費と利益の計算では、具体的な販管費と利益の計算方法について説明しました。

ここでは具体的な原価と見積金額の計算について説明します。

これまでアワーレート(人)、アワーレート(設備)、間接製造費用の分配、

販管費の計算方法、目標利益の計算方法を説明しました。

ここでは、これらを使って個々の製品の原価計算を説明します。
 

材料費と外注費

 
材料費と外注費の概要は2.製造原価の計算方法(1)で説明しました。

材料費は一般的には原材料のみ計算します。材料費の計算は

材料費=単価×使用量
 

材料ロスを考慮した場合

 
材料費で注意が必要なのは、取り代や端材、材料ロスにより、

なくなる材料があることです。そこで材料ロス率を考慮した場合、

材料費=材料単価×使用量×(1+材料ロス率) 

材料費の計算例を図に示します。

図 材料費の計算(重量単価)

 

外注加工費

 
外注加工費は、大抵は1個当たりの金額がはっきりしています。

不明な場合は発注単価をロット数で割って計算します。

図 外注加工の場合

製造時間 (段取時間と加工時間)

ロット生産の場合、段取費用も原価に入れます。大量生産で品種の切り替えが

稀にしかなく段取費用が問題にならない場合は、段取費用は無視します。

図に製造時間の計算例を示します。

図 製造時間の計算

1個当たりの段取時間は、1個の段取時間をロット数で割って計算します。

製造時間は、1個当たりの段取時間と1個の加工時間の合計です。

時間の単位は、工場によって「時間」「分」「秒」など様々です。

ロットが小さく、段取時間が長い場合、加工費用よりも段取費用の方が高くなります。

  • A社 A1製品の場合

段取時間 : 0.5時間
加工時間 : 0.07時間
ロット : 100個

 

製造費用の計算

 

間接製造費用の分配1 簡便な方法

 
A1製品の製造はマシニングセンタ1(小型)の工程でした。

この工程は作業者が常時設備を操作して製造します。

そのため常に人と設備の費用が発生します。本コラムはこれを「有人加工」と呼びます。

製造費用は、人の費用と設備の費用の合計です。図に有人加工の例を示します。

図 有人加工の例

A1製品の製造費用を間接費レートを用いた方法で計算します。

A1製品の直接製造費用

アワーレート(設備) : 900円/時間
アワーレート(人) : 2,380円/時間

直接製造費用(人)=製造時間(人)×アワーレート(人)
        =0.075×2,380
        =179≒180円

直接製造費用(設備)=製造時間(設備)×アワーレート(設備)
        =0.075×900
        =68≒70円

直接製造費用=直接製造費用(人)+直接製造費用(設備)
      =180+70
      =250円

A社の間接費レート : 0.4

製造費用=直接製造費用+間接製造費用
    =直接製造費用×(1+間接費レート)
    =250×(1+0.4)
    =350円

間接費レートを使って計算した結果、A1製品の製造費用は350円でした。
 

間接製造費用の分配2 各現場に分配

 
A1製品の製造費用を、間接製造費用を各現場に分配して計算した

アワーレート間を用いて計算します。

アワーレート間(設備) : 1,720円/時間
アワーレート間(人) : 3,360円/時間

アワーレート間(人+設備)=1,720+3,360
            =5,080円/時間

有人加工の例を図に示します。

図 有人加工の例2

製造費用=アワーレート間(人+設備)×製造時間
    =5,080×0.075
    =381≒380円

有人加工の場合、アワーレートはアワーレート間(設備)と

アワーレート間(人)の合計です。

A社 マシニングセンタ1(小型)は5,080円でした。

製造時間は0.075時間なので、製造費用は380円でした。
 

人が製造する場合と設備が無人で製造する場合

 

有人加工(人のみ)の場合

 
有人加工でも設備がなければ人の費用のみです。

A社の組立現場は、人だけで設備はありません。これを図に示します。

図 人だけの現場の場合

図7の組立現場は、補助的に使われる設備のみで、付加価値を生むのは作業者です。

組立の現場はパート社員が多いため、アワーレート(人)は1,920円/時間と

低くなっています。

A2製品の組立工程の計算を以下に示します。

段取時間 : 0時間
加工時間 : 0.1時間
ロット : 100個

アワーレート間(設備) : 0円/時間
アワーレート間(人) : 1,920円/時間

製造費用=アワーレート間(人)×製造時間
    =1,920×0.1
    =192≒190円

アワーレート間(人)は1,920円/時間、段取はなく、加工時間は0.1時間でした。

その結果、製造費用は190円でした。
 

無人加工の場合

 
設備の中には、起動ボタンを押せばあとは自動で製造する設備(無人加工)があります。

この場合、製造費用は設備の費用のみです。これを図に示します。

図 無人加工の場合

無人加工でも段取は人と設備の費用が両方発生します。

従って段取のアワーレートは、アワーレート間(設備)とアワーレート間(人)の合計です。

しかし加工は設備の費用のみです。そこで無人加工のA1製品の製造費用を以下に示します。

段取時間       : 0.5時間
ロット        : 100個
1個の段取時間    : 0.005時間
加工時間       : 0.07時間
アワーレート間(設備) :1,720円/時間
アワーレート間(人)  : 3,360円/時間

アワーレート間(人+設備)=1,720+3,360
            =5,080円/時間

段取費用=アワーレート間(人+設備)×段取時間
    =5,080×0.005
    =25円

加工費用=アワーレート間(設備)×加工時間
    =1,720×0.07
    =120円

製造費用=段取費用+加工費用
    =25+120
    =145≒150円

段取時間0.005時間、アワーレート5,080円/時間から、段取費用は25円でした。

加工は設備の費用のみなので、加工費用は加工時間0.07時間に

アワーレート(設備)1,720円/時間をかけた120円でした。

有人加工の場合の製造費用は(3節 2)より)380円だったので、

製造費用は約1/3になりました。

ただし、無人加工中作業者の費用がゼロになるには、作業者は起動ボタンを押した後、

他の現場で生産(お金を稼ぐ仕事)をしなければなりません。

起動ボタンを押した後もその現場にとどまり、

品質確認をしたり次の生産準備をしたりといった間接的な仕事をしていれば、

その間も人の費用が生じています。その場合、原価は有人加工と同じです。
 

工程別の原価計算

 
複数の工程がある場合は、工程毎に製造費用を計算します。

A2製品は、マシニングセンタ1(小型)、NC旋盤、組立の工程がありました。

1工程のマシニングセンタ1(小型)の製造費用を図に示します。

図 工程1 マシニングセンタ1(小型)の製造費用

マシニングセンタ1(小型)は、人と設備の費用が発生するため、

アワーレートはアワーレート間(人)とアワーレート間(設備)の合計になります。

2工程のNC旋盤の製造費用を図に示します。

図 工程2 NC旋盤工程の製造費用

NC旋盤も人と設備の費用が発生するため、アワーレートは

アワーレート間(人)とアワーレート間(設備)の合計になります。

3工程の組立の製造費用を図に示します。

図 工程3 組立の製造費用

各工程の費用と材料費、外注費、製造原価を図に示します。

図 材料費、外注費と製造原価

材料費、外注費合計 : 500円
製造費用合計 : 1,060円

従って製造原価は1,560円でした。
 

販管費、目標利益、見積金額

 
販管費は、製造原価に販管費レートをかけて計算します。A2製品の

製造原価 : 1,560円
販管費レート : 25%

でした。販管費を図に示します。

図 販管費と目標利益


販管費は390円でした。

販管費込み原価=製造原価+販管費
       =1,560+390
       =1,950円

目標利益率 : 8.7%

目標利益=販管費込み原価×販管費込み原価利益率
    =1,950×0.087
    =170円

見積金額=販管費込み原価+目標利益
    =1,950+170
    =2,120円

次に読む

製品ごとの原価が分かったら、次は見積に入れていない費用がないかを確認します。

間接費とは?見積に入れないと利益が残らない理由

材料費や加工費だけでは、実際のコストを正しく反映できないことがあります。
間接費をどのように考え、見積に入れるべきかを解説します。

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https://ilink-corp.co.jp/9570.html/feed 0
15. 販管費と利益の考え方|見積金額にどう反映するか https://ilink-corp.co.jp/9568.html https://ilink-corp.co.jp/9568.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:21:28 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9568
【コラムの概要】

製造原価と販管費の違いを解説し、製造に不可欠な販管費の算出方法を説明。また、見積金額の計算では、販管費を含めた原価に目標利益を加えて決定する手順が示されている。

 
7.間接費用の分配では、間接製造費用の分配方法と間接製造費用を含んだ

アワーレートの計算について説明しました。

ここでは販管費と利益の計算について説明します。
 

製造原価と販管費の違い

 
工場で発生する費用のうち、製造に直接関係する費用は

製造原価、営業、経理、総務など製造に直接関係しない費用は販管費です。

製造原価と販管費を図に示します。

図 製造原価と販管費

工場には不可欠な費用

直接製造に関係しないといっても、経理や総務の業務の多くは工場の人員や工場で

発生する費用に関する業務です。総務や経理の活動がなくては工場は運営できません。

従って販管費も工場には不可欠な費用なのです。

ある費用を製造原価に計上するか、販管費に計上するかは、経理や

会計事務所によって変わります。

例えば、製品を輸送する運賃、原料の輸入に係る費用、工場の人材派遣費用が

販管費になっていることもあります。

近年は管理業務が増加し、多くの中小企業で販管費は増え、

売上高の10~30%にもなります。

「中小企業実態調査に基づく経営・原価指標(平成21年度発行)」によれば、

製造業、卸売業、小売業の販管費は表1のようになっています。

表1 中小企業の販管費と利益率    単位 : %

 製造業平均卸売業平均小売業平均
販管費18.114.229.7
利益率3.31.40.4

出典 平成21年度発行「中小企業実態調査に基づく経営・原価指標」

この販管費も工場には不可欠な費用です。見積には必ず販管費も含めます。

見積金額は第2章から以下の式で計算します。

販管費込み原価=製造原価+販管費 

見積金額=販管費込み原価+目標営業利益
 

製品毎の販管費の計算

 
製品1個の販管費はどうやって計算すればよいでしょうか?

製品1個つくるのに販管費がどのくらい発生するのか、

これは正確にはわかりません。

最も簡単な方法は、製造原価に一定の比率(販管費レート)をかけて

計算することです。この比率は、先期の決算書の製造原価と販管費から計算します。

販管費は第2章から

販管費=製造原価×販管費レート 

販管費レートは以下の式で計算します。

 

A社の場合

 
製造原価 3億960万円 販管費 7,700万円 

A社の売上高に対する販管費の比率は

 

利益はどうやって決めたらいいのだろうか?

 
見積金額はいくらになるでしょうか?

見積金額を計算する際は目標利益を決めます。これは、各社それぞれの考え方があるので

「これが正しい」という方法はありません。

例として今期の目標利益から決める方法を紹介します。

今期の目標売上高と目標利益から目標営業利益率を計算します。

先に目標営業利益率が決まっている場合は、以下の式で目標利益を計算します。

目標利益=目標売上高×目標営業利益率 

見積を計算する際は、販管費込み原価から目標営業利益を計算します。

そこで、売上高営業利益率から、販管費込み原価に対する利益率

(販管費込み原価利益率)を計算します。これは以下の式で計算します。

 

A社の例

 
A社の例を図に示します。

図 先期の売上、原価、利益の例

A社の先期の売上高営業利益率は

受注時に値引きが予想される場合、値引きの分、見積を高くします。

A社は値引きを考慮して営業利益率の目標を8%にしました。

図 値引きを考慮した目標利益

目標営業利益率が8%の場合、販管費込み原価利益率は

従って販管費込み原価に8.7%をかけて目標利益を計算します。
 

具体的な原価と見積の計算については9.工程別の原価計算で説明します。

次に読む

見積金額の考え方が分かったら、次は条件によって原価がどう変わるのかを確認します。

ロットの大きさで原価はどう変わるのか

生産数量が変わると、1個あたりの原価は大きく変わります。
ロットと原価の関係を理解することで、見積の前提条件を正しく考えられるようになります。

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【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1) https://ilink-corp.co.jp/9562.html https://ilink-corp.co.jp/9562.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:19:37 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9562
このコラムの概要

製品原価を正確に把握するには、設備のアワーレートを算出することが不可欠です。この算出には、設備の購入費用を耐用年数で配分する減価償却費や、借入金利、保険料、固定資産税などの固定費を含める必要があります。これらの費用を適切にアワーレートに盛り込むことで、設備の真のコストが明らかになり、より精度の高い見積もりや価格設定が可能になります。

 
【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法ではアワーレート(人)の計算について説明しました。

ここではアワーレート(設備)の計算について説明します。
 

アワーレート(設備)の計算式

 
第3章で説明したアワーレート(人)の計算式は以下の式でした。

アワーレート(設備)も同様に設備の年間費用を「年間操業時間〈注1〉×稼働率」で割って計算します。


〈注1〉アワーレート(人)の場合、就業時間でしたが、設備を「就業」とは言わないので操業時間としました。意味は同じです。

設備の年間費用は、設備の購入費用と年間のランニングコストです。
この設備の購入費用は、減価償却費として計上されています。

この減価償却費はどのような費用でしょうか。
 

減価償却費とは?

 
設備を購入した場合、その費用は耐用年数で分割して減価償却費として毎年計上されます。図1では、2,100万円の設備を購入し、耐用年数は10年でした。

この場合、毎年210万円が費用として計上されます。(定額法の場合)

図1 減価償却費の例

計上される費用とお金の動き

最初の年は設備を買ったため、2,100万円お金が出ていきました。

しかし費用として計上されるのは、減価償却費210万円のみです。

従って会社のお金は、その差額1,890万円分マイナスします。(キャッシュフローがマイナス1,890万円) これを図2に示します。

図2 減価償却費とお金の動き

2年目以降はお金がプラス

2年目以降は、もうお金は出ていきません。しかし毎年減価償却費210万円が計上されます。支出がないのに210万円費用が計上されるため、お金は210万円増えます。(キャッシュフローがプラス210万円)

このように設備投資は、決算書の費用と実際のお金の動きが異なります。

どうしてこのようなことをするのでしょうか。
 

減価償却の考え方

 
これは会社の起源となった大航海時代を考えるとわかりやすいです。

胡椒などの香辛料はヨーロッパでは採れません。そのため、かつては東南アジアや中国からシルクロードを経由して運ばれ、極めて高価なものでした。

しかし16世紀に入るとヨーロッパから東南アジアへの貿易航路が開かれました。

図3 大航海時代の帆船、サンタマリア号(復元)(Wikipediaより)

当時の貿易航海は、多額のお金が必要な一大事業でした。そのため複数の資産家がお金を出して会社をつくって事業を行いました。

当初は1回の航海が終わると、会社を清算して出資者にお金を分配しました。しかし次も航海は行います。毎回会社を清算していては非効率です。

そこで一度航海が終わっても会社を清算せず、出資金は株式として残し事業を継続しました。これが株式会社の始まりです。
 

船の費用

 
ここで船の費用を考えてみます。

船は最初に購入しますが、その後何回も航海に使えます。船の費用をすべて1年目の費用にすると、1年目の航海は大きな赤字になります。

図4では、1年目は経費1億円で売上は4億円でした。しかし船の費用10億円あるため、収支はマイナス7億円でした。

対して2年目以降は船の費用はゼロです。そのため収支はプラス3億円でした。

図4 船の費用と利益

船は10回の航海に使えるとします。そこで船の費用を10回の航海に分けて費用とした方が利益を適切に計算できます。これを図5に示します。

図5 船の費用を均等にした場合

図5では、船の費用は毎年1億円です。収支は1年目からプラス2億円になります。
 

減価償却とは資産の価値が減少すること

 

これは航海に1度出る度に船が痛み、1億円ずつ価値が減っていくことです。

この事業を続けるには、毎年1億円ずつ10年間お金を貯めて、11年目には10億円で新たに船を買わなければなりません。これが減価償却費の意味するところです。〈注2〉

一方、減価償却費があると、毎期の利益と現金の動きが合わなくなります。利益が出ていても会社にお金があるとは限らないのです。


〈注2〉実際は大航海時代は、まだ固定資産や減価償却費の概念はありませんでした。
減価償却費が普及したのは、19世紀イギリスで蒸気機関車が発明され、鉄道が普及したためでした。鉄道は多額の初期投資が必要なため、初期投資した年は多額の赤字が発生します。それでは株主に利益を分配できないことから減価償却という概念が生まれました。
 ただ固定資産の損耗という考え方は、船で考えるとわかりやすいので、貿易航海を例に説明しました。

 

財務会計の減価償却は税法に従う

 
従って減価償却の金額によって利益は変わります。

毎期の減価償却を企業が自由に決めることができれば、企業が自由に利益を増やしたり減らしたりできます。

これは税務署には都合が悪いため、減価償却については以下の2点が税法で決められています。
 

耐用年数

 

耐用年数(法定耐用年数)は、設備の種類に応じて税法で決められています。表1に国税庁の定める法定耐用年数の一部を示します。

表1 法定耐用年数の例

設備の種類細目耐用年数(年)
プラスチック製品製造業用設備8
金属製品製造業用設備金属被覆及び彫刻業
又は打はく及び金属製ネームプレート
製造業用設備
6
その他の設備10
はん用機械器具製造業用設備12
生産用機械器具製造業用設備金属加工機械製造設備9
その他の設備12

この法定耐用年数は、設備の区分が粗く、使用条件の違いも考慮していません。

実際は同じ設備でも、過酷な使い方をする場合とそうでない場合、1日24時間稼働と昼勤のみの場合で劣化は大きく違います。そのため法定耐用年数まで持たない設備もあれば、法定耐用年数よりずっと長く使える設備もあります。

設備でも金額が低いものは1年で償却(一括償却)されます。また設備以外に建物やソフトウェアも減価償却します。しかし土地は劣化しないので減価償却をしません。

定率法と定額法


減価償却の方法は、図6に示すように、毎年一定額を償却する定額法と、毎年一定率を償却する定率法があります。

どちらを採用するかは企業が前もって選択します。定率法を選択すればすべて定率法、定額法を選択すればすべて定額法です。(ただし建物はいずれの場合も定額法です。)

図6定率法と定額法

図6の場合

設備 : 2,100万円
法定耐用年数 : 10年
定額法 : 毎年210万円
定率法 : 1年目420万円、2年目336万円と年々減少

設備の劣化という点で考えれば定額法が適切です(海外は定額法が一般的)。しかし利益が多く出ている企業は、できるだけ早く減価償却をして利益を減らし、支払う税金を少なくしたいと考えます。

また毎年設備投資を行うと、定額法の場合、年々減価償却費が増えて利益を圧迫します。
定率法ならば減価償却費は2年目以降減少するため、こういったことが起きにくくなります。

そのため定率法を選択する中小企業が多いです。

一方大企業と違い、中小企業は減価償却をしなくても違法でありません。利益が出なければ無理に減価償却をしなくてもよいのです。ただし減価償却をしないで利益を増やして決算をよく見せることは、金融機関に対してはマイナスです。

アワーレート(設備)に減価償却費を使用する問題

アワーレート(設備)の計算に、この減価償却費を使用する場合、以下の問題があります。

  • 定率法の場合、減価償却費が年々減少する

図4-6に示すように定率法の減価償却費は年々減少します。そしてアワーレート(設備)も年々低くなります。それでも利益は出ます。

  • 法定耐用年数を過ぎればゼロ

法定耐用年数を過ぎて設備を使用できれば減価償却費はゼロです。アワーレート(設備)はさらに低くなります。

  • 設備の更新を考えると

設備を更新すると新たに減価償却が発生し、アワーレート(設備)が高くなります。

減価償却が終わった設備が、その後は未来永劫使えるならアワーレート(設備)が低くても問題ありません。

例えば、現場で補助的に使っているボール盤やグラインダーなどは壊れない限り何十年も使用できるでしょう。

しかし、日常の生産に使用している設備は徐々に劣化します。そしていつか更新時期が来ます。最近の設備は制御にコンピューターや電子回路を使用するものも多く、コンピューターや電子回路は10~15年で寿命が来ます。

そしてその頃には補給部品もなくなります。 (これはメーカーによります。20年以上補給部品を供給するメーカーもあれば、10年未満でなくなるメーカーもあります。)

減価償却が終わった設備を更新すれば、新たに減価償却費が発生します。減価償却が終わってアワーレート(設備)を低くしていた場合、アワーレート(設備)を高くしなければ赤字になってしまいます。

しかし設備を更新したからといって、価格を上げることができるでしょうか。

更新を考慮した正しい設備の費用


こういったことを避けるためアワーレート(設備)に使用する設備の費用は、購入金額を本当の耐用年数で割った金額を使用します。これを本コラムは「実際の償却費」と呼びます。

例えば図6の設備は法定耐用年数が10年ですが、A社では、実際は15年くらい使用します。

そこで実際の償却費は

この140万円でアワーレート(設備)を計算すれば、設備を更新した後も同じアワーレート(設備)になります。

ただし、実際の償却費からアワーレート(設備)を計算した場合、問題がひとつあります。

それは、設備購入直後は実際の償却費より、決算書の減価償却費の方が高いことです。減価償却費の方が高いため、利益が低くなります。図7では、

実際の償却費 : 140万円

減価償却費(1年目) : 420万円

差額の280万円分利益がマイナスします。場合によってはこのために会社が赤字になるかもしれません。ただし、減価償却費420万円は、実際は現金の支出がない費用です。従って会社に残るお金はどちらも変わりません。

図7 減価償却費と実際の償却費

耐用年数に達したら更新に必要なお金がなければならない


この減価償却費は現金の支出のない費用です。そのため減価償却費の分だけ会社にお金が残ります。

図8に示すように毎年減価償却費でプラスしたお金を貯めていけば、設備が耐用年数に達した時、設備の購入金額分のお金が会社に残ります。

このお金で設備を更新します。借入をして設備を導入した場合は、減価償却費でプラスになったお金で借入金を返済します。設備の更新が来れば、借入金の返済が終わり、新たな借入ができるようにします(実際は借入金の返済期間は耐用年数より短いため、返済にはもっとお金が必要です)。

図8 減価償却と内部留保

減価償却が進むと安く受注しても利益が出る


注意しなければならないのは、減価償却が進むと会社全体の製造原価が下がり、「受注金額が低くても利益が出る」ことです。

顧客から価格引き下げの要求が厳しい場合、利益が出ているので、まだ値下げできるように思えます。しかし値下げを続ければ、次の設備の更新に必要なお金が残りません。しかも多くの工場では、そういった設備は1台ではありません。

例えば、図9の例は設備が4台あり、導入から14年目が1台、12年目が2台、11年目が1台、全て減価償却が終わっています。

図9 4台の設備の更新

4台はそれぞれ

1年後 : 設備1が15年目

3年後 : 設備2、3が15年目

4年後 : 設備4が15年目

になり、順に更新時期を迎えます。

自己資金で設備を更新する場合、今年の時点で8,400万円の内部留保がなければなりません(借入で購入する場合は、新たに借入しても返済できる利益が今年の時点で必要です)。

昨今、中小企業(製造業)の廃業の原因のひとつに設備の老朽化があります。

理由は厳しい値下げ要請に応え続けた結果、利益が減少して更新に必要な内部留保が残らなかったためです。

これを避けるには中期経営計画に設備の更新時期と必要な資金を盛り込んで、計画的に内部留保を積み上げます。

この設備の償却費を使用してアワーレート(設備)はどうやって計算するのでしょうか。

具体的なアワーレート(設備)の計算は【原価計算と見積の基礎】6.設備のアワーレートの計算方法(2)で説明します。/

次に読む

製造原価の計算方法(1)

個別原価はどのように計算するのか。
製造業の原価計算の基本となる考え方を解説します。

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4. 人のアワーレートとは?見積原価がずれる原因と考え https://ilink-corp.co.jp/9560.html https://ilink-corp.co.jp/9560.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:18:32 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9560
このコラムの概要

見積では利益が出るはずなのに、実際には思ったほど利益が残らない――
そんな経験はないでしょうか。
その原因の多くは、「原価が適切に計算されていない」ことにあります。
アワーレートの設定や、間接費の扱い、原価の範囲の考え方が適切でない場合、見積と実績に差が生じます。
本記事では、原価が合わない理由を解説し、どこに問題があるのかを分かりやすく説明します。
原価の差の原因を正しく理解することで、見積や価格判断に使える「適切な原価」に近づけることができます。

 
原価構造とは?材料費・労務費・経費の内訳を理解するでは工場で発生する必要と製造原価の構成について

原価計算の考え方|まず押さえるべき基本では間接製造費用と販管費、見積金額の計算について説明しました。

ここではアワーレート(人)の計算について説明します。
 

アワーレート(人)は稼働率を入れて計算

 
アワーレート(人)とは、1時間あたりの人の費用です。

これは時給とは違うのでしょうか?
 

アワーレート(人)の計算

 
アワーレート(人)は、人の年間費用を1年間の稼働時間(実際にお金を稼いでいる時間)で割って計算します。

1年間の稼働時間は、年間の就業時間に稼働率をかけて計算します。

従ってアワーレート(人)の計算は以下のようになります。

つまりアワーレート(人)は、稼働率の分、時給より高くなります。
 

A社 正社員Aさんのアワーレート(人)

 
A社の正社員Aさんの費用とアワーレート(人)を図1に示します。稼働率は80%とします。

図1 正社員Aさんのアワーレート

Aさんの支給額は月20.23万円〈注1〉賞与含めて15か月分で303.5万円でした。

社会保険料の会社負担分は303.5万円の16%、49万円でした。


〈注1〉本コラムはできるだけ区切りがいい数字になるように金額を決めています。そのため、現実の費用と比べると高すぎる、あるいは低すぎることがあります。

Aさんの年間費用は

年間費用=20.23×15×(1+0.16)
    =352 万円

Aさんのアワーレートは、

A社 パート社員Hさんのアワーレート(人)

 
パート社員Hさんの時給は、960円/時間、年間費用は115.2万円でした。(図2)

アワーレート(人)は、稼働率が0.8のため、Hさんのアワーレート(人)1,200円/時間でした。

図2パート社員のアワーレート(人)

正社員Aさんのアワーレート(人)   : 2,000円/時間

パート社員Hさんのアワーレート(人) : 1,200円/時間

時給960円のHさんのアワーレート(人)は、稼働率0.8で割ったため1,200円です。

なぜアワーレート(人)の計算に稼働率をかけるでしょうか?

この稼働率は何を意味するのでしょうか?
 

稼働率の意味するところ

 

稼動率の意味は、企業や書籍により様々です。本コラムは、稼働率を「就業時間に対し付加価値を生んでいる時間(稼働時間)の割合」とします。


例えば、ある作業者の1日は図3のようになっていました。

図3 ある作業者の1日

この1日は以下のように分けられます。
 

【付加価値を生んでいる時間】

  • 段取時間
  • 生産時間

 
【付加価値を生んでいない時間】

  • 朝礼
  • 移動
  • トイレのため離席
  • 資材を探す
  • 会議
  • 片付け

 

ここで付加価値を生んでいる時間に段取時間が入っているのは、本コラムは段取費用も見積に入れているからです。

多品種少量生産では、ロットの大きさが違うと製品1個当たりの段取費用が大きく変わります。そのため原価に段取費用を入れます。

大量生産で段取の頻度が少なく、段取費用が見積に入っていない場合、段取時間は付加価値を生まない時間です。

作業者が1日忙しく働いていても、このような付加価値を生まない「稼いでいない時間」があります。しかしこの時間も費用(人件費)は発生しています。

そこで就業時間に対し付加価値を生んでいる時間の割合を稼働率とします。

アワーレート(人)は、人の年間費用を就業時間に稼働率をかけたもので割って計算します。受注が少なくなり稼いでいる時間も少なくなれば、稼働率は下がります。

1日フルに生産するだけの受注がなく、空いた時間に5S活動(整理・整頓)や改善活動を行っても、それは「お金を稼いでいない時間」です。その分、アワーレート(人)は高くなっています。

稼動率は、作業者の稼働時間と就業時間を集計すれば計算できます。

実際は1年を通して行うのは大変なので、数名を一定期間調べて全体の稼働率を推定します。稼働率の値は、1日現場に入っている作業者でも80~95%ぐらいです。
 

賃金、社会保険料、派遣、請負などの費用は?

 

労務費には図4に示すように

  • 賃金
  • 賞与
  • 退職金
  • 各種手当
  • 社会保険料(法定福利費)
  • 福利厚生費
  • 雑給

があります。

図4 労務費の内訳

この労務費は、賃金、賞与、退職金、各種手当などが含まれます。

各現場の人の年間費用は、その現場に所属している人の労務費を集計します。

社会保険料は、全社員がまとめて計上され、個々の社員の金額はわからないことがあります。社会保険料の会社負担の合計はA社では約16%でした。そこで人件費の16%で概算しました。(これは業界によって異なりますので注意してください。)

派遣社員や請負の費用は労務費でなく、外注費や製造経費に入っていることもあります。
これらは原価計算では「労務費」なので、各現場の人の費用に入れ、その分、外注費や製造経費からマイナスします。
 

賃金の高い人のつくった製品の原価は高いのか?

 
正社員Aさんとパート社員Hさんのアワーレート(人)は

正社員Aさんのアワーレート(人)   : 2,000円/時間

パート社員Hさんのアワーレート(人) : 1,200時間

パート社員Hさんのアワーレート(人)は正社員Aさんの60%です。その結果、同じ製品を1時間かけて製造した時の費用は

正社員Aさんが製造   : 2,000円

パート社員Hさんが製造 : 1,200円

パート社員Hさんが製造すればAさんの60%になります。

この計算は正しいのですが、現実には全く同じ製品を、つくった人が違うために異なる原価で管理するのは困難です。

そこで正社員Aさん、パート社員Hさんも含めた、その現場全体の平均アワーレート(人)を使います。
 

A社のマシニングセンタ1(小型)の現場の平均アワーレート

 

A社のマシニングセンタ1(小型)の現場は、図5に示すようにA~Dさんまで4人の作業者(正社員)がいました。年間総支給額も352~528万円と幅がありました。

ただし就業時間と稼働率は、計算を簡単にするため同じにしました。

図5 現場の平均アワーレート(人)

マシニングセンタ1(小型)の現場の作業者の年間費用合計は

作業者の年間費用合計=352+352+440+528
          =1,672 万円

マシニングセンタ1(小型)の現場の作業者の「就業時間×稼働率」の合計は

作業者の「就業時間×稼働率」の合計=2,200×0.8×4
                 =7,040 時間

平均アワーレート(人)は以下の式で計算します。

マシニングセンタ1(小型)の現場の場合

平均アワーレート(人)は、2,380円/時間でした。この2,380円/時間であれば、誰がつくっても同じ原価になります。

 

稼働率が低い年は翌年アワーレート(人)が高くなる?

 

忙しい月は人の稼働率が高く、暇な月は稼働率が低くなります。

その結果、忙しい月はアワーレート(人)が低くなり、暇な月はアワーレート(人)が高くなります。そうなると原価が変わってしまいます。

これでは製品が儲かっているのは

  • 高く受注できた
  • 短い時間で生産できた
  • たまたまその月は稼働率が高かった

どれなのかわからなくなってしまいます。

アワーレート(人)は、原価を計算する「ものさし」です。

そこで稼働率は年間で一定とし、アワーレート(人)は一年間変わらないようにします。(この点が、毎月の稼働率から実際原価を計算する財務会計の原価計算と違う点です。)

一方、年によって繁忙状況が変わることもあります。

本コラムは、先期の決算書からアワーレートを計算します。そのため先期の稼働率が低ければ、翌期のアワーレート(人)は高くなります。

本当は、先期は受注が少なかったので、今期は受注を増やしたいところです。

しかし今期のアワーレート(人)が高ければ、見積も高くなってしまい、一層受注しにくくなります。

この場合は、工場が元々目標としている稼働率でアワーレート(人)を計算します。そしてその稼働率を達成できるように営業活動に力を入れます。

では、アワーレート(設備)はどうやって計算するのでしょうか。

アワーレート(設備)の計算方法は人のアワーレートの計算方法(1)基本の考え方で説明します。

次に読む

原価の基本が分かったら、次は「原価の中身」を分けて考えます。

人のアワーレートの計算方法(1)基本の考え方

アワーレートの考え方が分かったら、次は具体的な計算方法の基本を確認します。

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