間接費用 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 数人の会社から使える原価計算システム「利益まっくす」 Tue, 30 Sep 2025 07:21:37 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.7.4 https://ilink-corp.co.jp/wpst/wp-content/uploads/2021/04/riekimax_logo.png 間接費用 | 原価計算システムと原価改善コンサルティングの株式会社アイリンク https://ilink-corp.co.jp 32 32 【製造業の値上げ交渉】23. 少し高くても受注3 高い価格を受け入れてもらうには? https://ilink-corp.co.jp/13405.html https://ilink-corp.co.jp/13405.html#respond Sun, 08 Sep 2024 02:53:01 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=13405
このコラムの概要

製造業が顧客に高い価格を受け入れてもらうには、製品が提供する「高い価値」を明確に示すことが重要です。単なる価格提示ではなく、顧客の課題解決にどう貢献し、コスト削減や生産性向上、品質安定などの具体的なメリットをデータで提示します。価格以上の「顧客便益」を具体的に説明し、顧客との長期的な信頼関係を築くことで、単なる製品提供者ではなく「ビジネスパートナー」として価値を認めさせることが、高い価格での受注を可能にします。

値上げをお願いすると「値上げするなら他に出す」と言われます。

実際は安くても品質管理に問題があったりして、出すのをためらう仕入先だったりします。あるいは他に出すところが本当はないかもしれません。私の経験でも指値では発注できないこともありました。

この指値については製造業の値上げ交渉22 少し高くても受注2 指値とコストダウンを参照願います。一方取引先にとって値上げを受け入れることは、他の仕入先よりも高い価格を受け入れることにもなります。
 

他社よりも少し高い価格

なぜなら多くの仕入先があれば、そのサプライチェーンの中では値上げした金額よりも安くつくる仕入先があるからです。再び相見積を取って、安いところに発注すれば値上げしなくてすみます。

つまり他の仕入先よりも少し高い自社と「取引した方がよい」という理由が必要です。この取引先の価格が厳しい原因は、厳しい原価管理と指値にあります。
 

指値とは?

各メーカーとも価格競争は厳しく、原価を抑えなければなりません。そのため開発段階から目標原価を管理する原価企画を行います。製品の目標原価を部品単位に展開し、個々の部品の目標価格を決めます。これを指値として仕入先に提示します。この指値は仕入先にとって厳しい価格です。指値でつくれる根拠は取引先にあるのでしょうか。
 

指値の根拠

まだつくったことのない部品の指値は、大抵は過去の類似部品の実績や製品の目標原価から計算されます。(参考 私が過去に行った原価企画では、類似部品の価格を調べてこれを参考に新たに製作する部品の価格をおよそ見積っていました。)

この場合、具体的な製造時間や製造工程を考慮せずに指値を決めていれば、金額に具体的な根拠はありません。また例え製造工程や製造時間から予測原価を概算したとしても、仕入先のアワーレートや管理費、利益はわかりません。

そのため指値が仕入先の原価とは乖離します。
 

原価の7~8割は設計で決まる

実際は原価の7~8割は設計で決まると言われています。ある機能を実現する製品の原価は、設計が決まればおよそ決まります。その結果、原価が高ければ、図面や仕様を見直して、安くつくれる図面や仕様にしなければなりません。そのためにはつくる側と発注する側の双方がアイデアを出し合う必要があります。

図 目標価格の割り付けと目標価格のオーバー

図 目標価格の割り付けと目標価格のオーバー

しかし発注先を選定する部署(例えば 購買)は、図面や仕様を変える権限がありません。それでも安く調達しようとすれば、その図面や仕様でかかる原価よりも低い価格で発注することになります。これは下請法の「買いたたき」になります。
 

適正価格は企業によって違う

実は原価はどの仕入先も同じではありません。会社の規模やつくり方によって変わるからです。私の経験でも、同じ図面や仕様でも見積価格は仕入先によって違っていました。傾向として規模の大きい会社は原価が高く、規模の小さな会社は原価が低くなります。

図 適正価格の違い

図 適正価格の違い

規模の違いによる原価の違い

規模の大きなA社は、設備が新しく減価償却費も多額です。生産管理や品質管理など間接部門の規模が大きく、その分間接人員の人件費も多くなります。工場の経費も高く、原価に占める間接費用が高くなっています。

対して規模の小さなB社は、大半の設備は償却が終わっています。設備の費用はゼロです。生産管理や品質管理の専任者はおらず、社長以下全員が生産活動に従事しています。規模が小さいため工場の経費も多くありません。

両社を比較すると、A社は、設備の費用や賃金が高いためアワーレートが高くなります。間接費用も大きいため、その分原価も高くなります。

B社は、設備の費用や賃金が低くアワーレートは低くなります。間接費用も小さく、原価は低くなります。

その結果、同じ製品でも見積金額は違います。

これについては【製造業の値上げ交渉】7. この製品、いくらが正しいのだろうか?を参照願います。
 

品質が問われる部品、どちらに出したいですか?

では、ある部品をA社かB社のどちらに出したらよいでしょうか?

これは部品によります。

A社は品質管理や工程管理がしっかりしているので、数が多いものも品質が安定しています。技術的に難しいものも治具や加工方法を工夫して製造します。

B社は昔ながらの職人的なものづくりのため、数が多いものは品質に不安があります。統計的手法を駆使した品質管理や工程能力の把握は困難です。もし不良品が混入すれば、自社で見つけることができず取引先に流出する可能性があります。

従って不良品が流出すれば重大な問題が起きる部品は少々高くてもA社に発注します。もし市場で問題が起きれば、多額の損失が発生し部品単価の違いは吹き飛んでしまいます。

そうなればその仕入先を選定した購買の責任も問われます。

図 企業による原価の違い

図 企業による原価の違い

ポイントはヒューマンエラーの管理

先日、個人的にある部品(小さなカラー)が必要になったため、個人が依頼できる部品発注サイトを使って発注しました。

出来上がった部品は、寸法はOKでしたが、1箇所 面取りが図面指示と異なっていました。図面指示は、C0.1~0.3でしたが、現物はピン角(面取りなし)でした。自分が使う分には問題ないので検収を上げました。

しかしこの部品を企業に納品した場合、これは不良品です。

1個だけつくる場合、その品質は作業者のスキルや注意力に依存します。作業者がどれだけ注意を払って作業するかが重要です。たかが面取りと思われるかもしれません。

しかしたった1箇所の面取りで機械が壊れることもあるのです。

もし企業がこの会社に発注すれば、こうした作業者のミスは、自社の受入検査や現場の担当者が目を光らせて見つけなければなりません。それでも少し安い会社に発注したいでしょうか。
 

適正価格を説明

例えば、ある部品の適正価格は、
A社700円
C社600円
でした。

取引先は、価格のみを比較し、A社に「700円は高い」と言います。A社は「C社と比較されても…」と思いつつ、自社の価格が「適正」と主張しません。

この100円高い理由は、品質管理や工程管理の体制、最新の設備の投資によるものです。それは安定した品質をもたらします。

そうであればA社はそれを取引先に説明しなければ取引先に伝わりません。

それでも取引先が600円で調達したければ、C社に発注すればよいのです。その結果、不良品が発生しても、それは取引先の選択した結果です。
 

買いたたきは下請法違反

問題は、取引先が600円で、A社に発注しようとする場合です。

600円ではA社は、利益がゼロ、販管費もカバーできない金額です。

これは仕入先に不当に低い価格を強要することになります。しかし取引先はC社の600円の見積を見ているので、600円は不当に低い価格とは思いません。

図 買いたたきに気づかない構造

図 買いたたきに気づかない構造

適正価格をていねいに説明

A社は製造工程と各工程の費用を示し、700円が適正な価格であることを説明します。これは暗に無理に700円を要求すれば「買いたたき」になることを示唆します。

原価の根拠を丁寧に説明し、見積は適切で水増しはないことをわかってもらいます。
 

駆け引きしない方が建設的な話し合いができる

価格交渉では、値下げ要求分を見越して、見積を水増しするなど様々な駆け引きがあります。しかし駆け引きをすれば、交渉はお互いの腹の探り合いになってしまいます。

ものづくりは多数の部品が集まって製品になります。ひとつひとつの部品を製造する仕入先の工夫やアイデアも欠かせません。それにはお互いがアイデアを出し合い、協力しなければなりません。

図 建設的な話し合い

図 建設的な話し合い

そのためには仕入先は原価の理由を説明して、見積金額は適正価格であり水増しはないことを理解してもらいます。その上でもっと安く調達したければ、図面や仕様の変更も含めて安くつくる方法を取引先と協議して、よりよいものづくりを目指すのが望ましい姿です。

 

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

弊社の書籍

「中小製造業の『原価計算と値上げ交渉への疑問』にすべて答えます!」
原価計算の基礎から、原材料、人件費の上昇の値上げ計算、値上げ交渉についてわかりやすく解説しました。

「中小製造業の『製造原価と見積価格への疑問』にすべて答えます!」
製品別の原価計算や見積金額など製造業の経営者や管理者が感じる「現場のお金」の疑問についてわかりやすく解説した本です。

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】
経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化、中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として分かりやすく解説しました。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】具体的なモデルでロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失を解説


セミナー

原価計算と見積、価格交渉のセミナーを行っています。

会場開催はこちらからお願いします。

オンライン開催はこちらからお願いします。
 

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム ものづくりの未来と経営

経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、技術革新や経営、社会の変革などのテーマを掘り下げ、ニュースからは見えない本質と変化を深堀したコラムです。「未来戦略ワークショップ」のテキストから作成しています。過去のコラムについてはこちらをご参照ください。
以下から登録いただくと経営コラムの更新のメルマガをお送りします。(ご登録いただいたメールアドレスはメルマガ以外には使用しません。)

]]>
https://ilink-corp.co.jp/13405.html/feed 0
【製造業の値上げ交渉】13. なぜ取引先はアワーレートが高いというのだろうか? https://ilink-corp.co.jp/9867.html https://ilink-corp.co.jp/9867.html#respond Sat, 20 Jan 2024 02:59:44 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9867
このコラムの概要

製造業が値上げ交渉で顧客から「アワーレートが高すぎる」と反論されるのは、根拠が不明瞭なためです。この指摘に対処するには、アワーレートがなぜその金額になるのかを具体的に説明できる準備が不可欠です。設備の稼働率、間接費の適切な配分、製品ごとの工数とアワーレートの積算根拠を明確に提示することで、アワーレートの適正性を客観的なデータに基づいて顧客に理解させることができます。

 
値上げ交渉では値上げの根拠を求められることがあります。

これについて【製造業の値上げ交渉】12. 取引先から値上の根拠を求められた。どうすればいいのだろうか?を参照願います。
 

そこで値上げの根拠の資料を持って行くと、資料を見て「アワーレートが高い」と言われることがあります。

このアワーレートは先期の費用に基づいて適切に計算したアワーレートです。

(自社のアワーレートの計算方法は【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?を参照願います。)
 

なぜ取引先はアワーレートが高いと言うのでしょうか?

このアワーレートについて取引先が誤解している可能性があります。

それは

  1. アワーレートは間接費を含まない
  2. 稼動率は100%
  3. 減価償却が終われば設備の費用はゼロ

これについて説明します。
 

1.アワーレートは間接費を含まないと思っている

 
これはアワーレートが「人や設備で直接発生した年間費用を人や設備の年間時間で割ったもの」と取引先が思っている場合です。

本コラムではアワーレートは「各現場の人や設備の直接製造費用に、分配した間接製造費用を加えたものを人や設備の年間時間で割ったアワーレート間」です。

このアワーレート間には、間接製造費用も含まれています。

 

具体的な計算例 アワーレート(人)

 
架空のモデル企業A社の例で説明します。

(A社の詳細は【製造業の値上げ交渉】1. 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?を参照願います。)

A社 NC旋盤の現場
(アワーレートの計算方法は【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?で説明しました。)
 

アワーレート(人)の計算

 
直接製造費用
4人の労務費合計 1,672万円

 

間接製造費用を含んだアワーレート間(人)の計算

 
NC旋盤の現場の人の間接製造費用の分配は、544万円でした。従ってアワーレート間(人)は、

3,150円/時間で、間接製造費用を含めたアワーレート間(人)は、775円/時間増加しました。

注記)
本コラムでは、数字をわかりやすくするためにアワーレートは一桁目を四捨五入しています。実際に計算する際は正確な値を使用してください。

図2 NC旋盤の現場の人の直接製造費用と間接製造費用

具体的な計算例 アワーレート(設備)

 
NC旋盤の現場の設備の費用は

  • 設備償却費 : 100万円/台
  • 電気代 : 23.2万円/台
  • 設備(NC旋盤) : 計4台


 

間接製造費用を含んだアワーレート間(設備)の計算

 
NC旋盤の現場の設備の間接製造費用の分配は、544万円でした。従ってアワーレート間(設備)は、

1,470円/時間で、間接製造費用を含めたアワーレート間(設備)は、770円/時間増加しました。

図2 NC旋盤の現場の設備の直接製造費用と間接製造費用

人と設備が同時に作業する場合

 
NC旋盤の現場は人と設備が同時に作業するためアワーレートは、アワーレート(人)とアワーレート(設備)の合計になります。

直接製造費用のみアワーレート(人+設備)は

アワーレート(人+設備)=アワーレート(人)+アワーレート(設備)
           =2,375+700=3,075円/時間

間接製造費用を含むアワーレート間(人+設備)は、

アワーレート間(人+設備)=アワーレート間(人)+アワーレート間(設備)
            =3,150+1,470=4,620円/時間 (+1,545円/時間)

間接製造費用を含むことで、アワーレート間(人+設備)は1,545円/時間 増加しました。
 

取引先は何を現場のアワーレートとしているか

 
取引先に原価の知識があり、自社の工場のアワーレートが直接製造費用のみのアワーレートの場合、アワーレートを計算する基準が違います。そのため見積書に書かれたアワーレートが高すぎると言います。これは直接製造費用のみで原価を考えている可能性があります。

この時、どちらのアワーレートの計算方法が正しいのか、議論をしても水掛け論になってしまいます。
 

取引先が直接製造費用のみでアワーレートを計算している場合

 
その場合、直接製造費用のみのアワーレートで製造費用を計算に、別に間接製造費用を加えて原価とします。
 

直接製造費用と間接製造費用の比率を計算

 
そこで各現場の直接製造費用のみのアワーレートと、間接製造費用を含んだアワーレートの比率から、直接製造費用と間接製造費用の比率を計算します。

例えばA社 NC旋盤の現場の例を以下に示します。

  • 直接製造費用のみのアワーレート(人+設備) : 3,075円/時間
  • 間接製造費用を含んだアワーレート間(人+設備) : 4,620円/時間

比率は1.50でした。
 

直接製造費用を計算

 
A社 NC旋盤の現場のアワーレート(人+設備)は3,075円/時間

A1製品の製造時間 : 0.075時間

直接製造費用=直接製造費用のみのアワーレート(人+設備)×製造時間
      =3,075×0.075=230.6円

直接製造費用のみで計算したA1製品の製造費用は230.6円でした。
 

間接製造費用を含んだ製造費用

 
間接製造費用を含んだ製造費用は、直接製造費用にこの比率をかけて計算します。

間接製造費用を含んだ製造費用=直接製造費用×比率
              =230.6×1.5=345.9≒346円

直接製造費用のみのアワーレートは3,075円/時間です。A1製品の製造費用は230.6円でした。しかしこれには間接製造費用が入っていません。

間接製造費用は、先の計算から直接製造費用の50%なので115.4円でした。その結果、製造費用は直接製造費用と間接製造費用を加えた346円でした。このように説明して製造費用が正しいことを理解してもらいます。

図3 直接製造費用のみのアワーレートで計算した場合

2.稼働率が入っていない

 
もうひとつの可能性は、顧客がアワーレートを計算する際に稼働率を入れていないことです。実際の現場の1日は図5のようになっています。

図5 ある作業者の1日

1日現場にいる作業者でもその中で朝礼、会議といった付加価値を生んでいない時間があります。この時間も人件費は発生しています。この費用もアワーレートに入れなければ、アワーレートが低すぎてしまいます。

そこで本コラムではアワーレートを計算する際に稼働率を分母にかけます。

この稼働率は、年間就業時間に対し付加価値を生んでいる時間(稼働時間)の比率です。

A社の例では、稼働率を0.8としました。もし顧客が稼働率100%でアワーレートを計算していれば、その分アワーレートは低くなります。

A社 NC旋盤の現場では

直接作業者の稼働時間合計=2,200×4×0.8(稼働率)=7,040時間

稼動率100%では

直接作業者の年間時間合計=2,200×4×1.0=8,800時間

設備の年間時間も同じでした。


アワーレート(人+設備)=アワーレート間(人)+アワーレート間(設備)
           =2,520+1,180=3,700円/時間 (▲920円/時間)

稼動率80%では4,620円/時間だったので、稼動率100%にすることで920円/時間低くなりました。

図5 稼働率を入れた場合と入れない場合の人のアワーレート
図56 稼働率を入れた場合と入れない場合の設備のアワーレート

稼働率100%はありえない

 
稼動率は工場によりさまざまです。大量生産の工場は常に人や設備が稼働するようにして稼働率100%を目指します。それでも材料の供給が間に合わなかったり後工程が遅れたりして稼働率は100%にはなりません。多品種少量生産では、製品の切替えが頻繁に発生し、稼働率は大量生産の工場より低下します。

一方取引先が自社の工場のアワーレートを稼働率100%で計算することがあります。しかし生産していない時間も費用は発生しています。その分も見積に含めなければ赤字になってしまいます。

自社の工場の稼働率が現実に80%ならば、稼働率80%で計算した原価が「適正価格」です。
 

3.減価償却が終わっている

 
法定耐用年数を過ぎた設備の減価償却費はゼロです。そうなると設備の費用はランニングコストのみになってしまいます。

しかし本コラムではアワーレート(設備)に使用する設備の償却費は、将来の更新を考えて「実際の償却費 (購入金額を本当の耐用年数で割った金額)」を使用します。

図7 設備を更新すれば新たな減価償却が発生

A社 NC旋盤の現場の場合、購入金額1,500万円、本当の耐用年数15年のため、実際の償却費は100万円でした。

NC旋盤の現場の4台の設備が、すべて減価償却が終わっている場合、設備の費用はランニングコスト23.2万円のみです。その場合、アワーレート間(設備)は以下のようになります。

実際の償却費から計算したアワーレート間(設備)は1,470円/時間でした。決算書の減価償却費でアワーレート間(設備)を計算すれば、570円/時間も低くなりました。

これについては発注側、受注側どちらも誤解していることがが多いです。

しかし高額の設備を使用する工場では、設備の更新に多額の資金が必要です。更新の時点で「必要な資金が会社に内部留保されている」、「新たに借入できるだけの十分な自己資本とキャッシュフロー」のいずれかが必要です。減価償却が終わった設備でも更新まで考えれば、費用は決してゼロではないのです。
 

アワーレートは考え方によって違う

 
このようにアワーレートは計算する条件によって値が大きく違います。アワーレートは、どの条件で計算するのかで大きく変わります。

本コラムで述べた「稼働率を入れる」、「実際の償却費を使って計算する」は正しいのですが、これを納得してもらうには「なぜそうなのか」理由を理解してもらう必要があります。これはなかなか大変です。

取引先が納得しなければ、取引先が考える条件に合わせてアワーレートを変えます。

例えば、稼働率100%で稼働率80%と同じアワーレートになるように年間費用や時間を調整します。そして見積金額は変えないようにします。
 

原価は真実

 
本コラムで述べた原価は、決算書の数字を元にした真実です。
(ただし算出条件が変われば値も変わるため、唯一無二ではありません。)

A社 A1製品の製造原価は726円、販管費182円、販管費込み原価は908円です。これだけの費用が発生していることを前提に、必要な利益が得られるように交渉します。

ただし受注が少なければ、固定費の回収を優先して赤字でも受注することもあります。それでもA1製品は販管費も含めて908円の費用が発生していることは変わりません。

他にもアワーレート以外に販管費や利益が高いと言われることがあります。

販管費や利益が高いと言われる原因について【製造業の値上げ交渉】14. なぜ取引先は販管費が高い、利益が多いと言うのだろうか?を参照願います。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

弊社の書籍

「中小製造業の『原価計算と値上げ交渉への疑問』にすべて答えます!」
原価計算の基礎から、原材料、人件費の上昇の値上げ計算、値上げ交渉についてわかりやすく解説しました。

「中小製造業の『製造原価と見積価格への疑問』にすべて答えます!」
製品別の原価計算や見積金額など製造業の経営者や管理者が感じる「現場のお金」の疑問についてわかりやすく解説した本です。

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】
経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化、中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として分かりやすく解説しました。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】具体的なモデルでロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失を解説

セミナー

アワーレートの計算から人と設備の費用、間接費など原価計算の基本を変わりやすく学ぶセミナーです。人件費・電気代が上昇した場合の値上げ金額もわかります。
オフライン(リアル)またはオンラインで行っています。
詳細・お申し込みはこちらから

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム ものづくりの未来と経営

経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、技術革新や経営、社会の変革などのテーマを掘り下げ、ニュースからは見えない本質と変化を深堀したコラムです。「未来戦略ワークショップ」のテキストから作成しています。過去のコラムについてはこちらをご参照ください。
以下から登録いただくと経営コラムの更新のメルマガをお送りします。(ご登録いただいたメールアドレスはメルマガ以外には使用しません。)

]]>
https://ilink-corp.co.jp/9867.html/feed 0
【現場で役立つ原価のはなし】9. 間接費の分配とは?その1 https://ilink-corp.co.jp/9598.html https://ilink-corp.co.jp/9598.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:38:03 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9598
【コラムの概要】

製造原価の大部分を占める間接費とは、製造に直接関わらない工場の経費や間接部門の人件費です。品質管理や製造環境の高度化により、その割合は増加傾向にあります。
間接費は多くの固定費を含み、生産量の増減で製品ごとの原価が変動します。正確な原価計算には、この間接費を適切に製品へ分配する必要がありますが、その分配方法には手間がかかり、根拠が不明瞭になる問題も抱えています。
しかし、間接費を計算しないと、適正な売価を設定できず、生産した製品が利益があるかもわかりません。そのため中小企業も間接費の分売は不可欠です。

アワーレート(人)の計算については

またアワーレート(設備)については


実際のアワーレートの中で、人や設備の費用など直接費のほかに、間接費も大きな金額を占めています。
この間接費とはどのような費用でしょうか?

1. 間接費とは?

製造原価の内訳

工場で発生する経費の1年間の合計は、決算書の製造原価報告書に示されます。その内訳は以下の通りです。

材料費
  • 主要原材料
  • 購入品
  • 補助材料:直接/間接
  • 工場消耗品:間接
  • 消耗工具:直接/間接
労務費
  • 直接労務費
  • 間接労務費
外注費
工場経費
  • 電力費:直接/間接
  • 減価償却費:直接/間接
  • 賃借料
  • 地代家賃
  • 通信費
  • 会議費
  • 保険料
  • 修繕費:直接/間接
  • 旅費交通費
  • 荷造包装費
  • 工場消耗品費
  • 租税公課
  • 消耗器具備品
  • 教育訓練費
  • 諸会費
  • 雑費

間接費

ここで「間接」と記載されているものが間接費用です。労務費の間接費は、現場の間接作業者、管理者、および間接部門の労務費です。

図 間接費

この間接費をどのように原価に入れるのかが課題です。なぜなら、原価に占める間接費が増加しているからです。

2. なぜ間接費の分配が必要なのか

原価に占める間接費は増えています。工場によっては加工費の50%が間接費ということもあります。その結果、間接費をどのように原価に組み込むかで原価が大きく変わります。

間接費が増えた理由

顧客・市場の要求が厳しくなっている

品質に対する要求は年々厳しくなり、かつてはリコールにならなかった不良品がリコールや自主回収になっています。そのため、不良品を作らない・出さないために、より高度な品質管理・工程管理や、万が一不良品が流出した場合の迅速な対応のためのトレーサビリティ(製造履歴管理)が求められています。そのため、品質管理・工程管理など管理部門の人員が増加しました。

検査設備・評価設備の増加

より高度な品質管理のためには、検査設備や評価設備の充実が求められることもあります。こうした設備の増加も間接費の増加につながります。

製造環境の改善

わずかな異物混入やより高い精度のため、温度・湿度、空調や異物対策が必要なこともあります。よりレベルの高い空調や温度管理、入室時の異物混入対策なども間接費を増加させます。

他にも様々な要因で間接費が増加します。これを適切に各現場に分配することが必要です。

※注)
本コラムでは、間接費を割り振ることを「分配」と呼びます。
財務会計では割り振ることを「配賦」と呼び、「配賦」も「割り当てる」という意味です。
財務会計には「配賦」のほかに「賦課」という言葉もあり、以下のように使い分けています:

  • 配賦:製造原価を計算する際に、間接費を何らかの基準(配賦基準)を用いて振り分けること
  • 賦課:製造原価を計算する際に、「何に」「どれだけ」使ったのかがわかる直接費を振り分けること

「直接費は賦課して、間接費は配賦する」という表現をします。
しかし、本書では難しい会計用語を用いず、一般的な「分配」を使用します。

工場で発生する費用はすべて原価

先に挙げた工場の経費の中には、一見原価に思えない費用もあります。しかし、実際に支出された費用です。

それに対して、工場でお金を稼いでいるのは直接部門の作業者と設備だけです。先に挙げた経費はすべて、直接部門の作業者と設備が稼いだ売上で賄っています。つまり、間接作業者や間接部門の人の費用、工場の経費は、直接部門の作業者と設備が支えているのです。

図 間接部門の費用は直接作業者と設備が支えている

だから原価を計算する際は、間接部門の費用も工場の経費も、適切な金額を原価に入れなければなりません。工場で使ったお金はすべて原価です。だからボールペン1本余分に買っても原価は上がるのです。これはいくら原価が上がるのかも計算できます。

実態は固定費

一方、間接費の多くが固定費です。固定費なので生産量が増えても変わりません。したがって、生産が増えれば製品1個あたりの間接費は減少します。つまり、生産量が変動すると製品1個の原価も変動します。

生産量によって製品1個あたりの間接費が変わるなら、間接費を細かく計算しても意味がないという意見もあります。実際、管理会計では固定費を振り分けず、直接費のみで計算する「直接原価計算」という方法もあります。

問題は、間接費も原価に入れなければ「いくらで売れば利益が出るのか」「適切な売価」が分からないことです。これは部品加工など受注型生産の工場では問題になります。

そこで、受注型生産の工場では条件を決めて間接費も含めた原価を計算します。一方、自社製品を見込み生産する工場では、価格は市場価格で決まる場合も多く、売価を決めるために原価は必要ありません。その場合は、生産量に応じてトータルでの原価と利益を管理します。

では、間接費の分配はどうすればいいのでしょうか?

3. 財務会計の原価計算

大企業は間接費も含めて原価を計算しています。この大企業が行う財務会計に則った正しい原価計算とは、以下の手順で行います。

(1) 経費を部門別に計算

毎月発生した経費を仕訳する際、「どの部門で使った費用か」が明らかな費用は、その部門の費用にします。この部門は以下のように分けられます。

直接部門

直接製品を製造する部門(例:加工、組立、塗装、検査など)
検査は、検査費用が見積に含まれている場合、検査部門もお金を稼いでいるので直接部門。検査費用が見積に含まれていなければ間接部門です。
同様に設計も、設計費用が見積に含まれていれば直接部門、含まれていなければ間接部門です。

間接部門

直接製品を製造しない部門(例:生産管理、品質管理、資材管理、生産技術など)

この時、消耗品費でも、機械加工部門の刃物代など使用部門が明確にわかる費用は、その部門の費用とします。しかし、消耗品費の中でもウェス、ガムテープなど使用部門が不明確な費用は「共通費」です。他にも共通費には保険料、家賃など様々な費用があります。

図 財務会計の間接費の分配

(2) 共通費を各部門に分配

この共通費は、何らかの分配基準(配賦基準)を用いて各部門に分配します。分配基準には以下のようなものがあります。

  • 社員数:人件費や福利厚生費など、人員に比例すると考えられる費用
  • 占有面積基準:家賃や保険料、固定資産税など、建物や敷地の使用に比例する費用
  • 機械帳簿価格基準:減価償却費や保守料など、機械設備の価値に比例する費用
  • 動力使用量基準:電気代や燃料費など、エネルギー使用量に比例する費用

一見論理的に見えますが、実務でやろうとすると頭を抱えます。雑費や租税公課はどうやって分配すればいいでしょうか?水道代や電気代は各部門の消費金額が分かるでしょうか?

また、社員数の場合、短時間勤務のパート社員と正社員を同じ1人と考えてよいでしょうか?他にも嘱託や派遣社員、請負はどうすればよいでしょうか?

実際の現場は教科書よりも複雑です。

(3) 間接部門費用を直接部門に分配

こうして計算した各部門の費用のうち、間接部門は直接お金を稼いでいないため、その費用は直接部門に分配しなければなりません(間接部門配賦)。
ここでまた分配基準が必要です。この分配基準には以下のような例があります。

  • 資材管理部門:在庫出庫額
  • 資材発注部門:発注伝票数
  • 生産管理部門:生産計画数
  • 品質管理部門:検査数

これも実務では悩むことが多いのです。

例えば、生産管理部門の費用を生産計画数で分配した場合、図のように加工部門と組立部門のその月の生産計画数が同じ50件であれば、50%ずつ分配されます。しかし加工部門は原材料のみで計画の変更はほとんどないのに対し、組立部門は外注加工が多く、納期遅れのため計画の変更が多発していました。実際は組立部門に多くの生産管理の費用がかかっていました。

図 生産管理費用の分配

このように、間接部門費用を直接部門に分配する基準には悩ましいものがあります。しかも間接部門の費用は大きく、この分配の仕方によって原価が大きく変わってしまいます。

(4) 分配(配賦)方法の種類

しかも分配の方法自体も4種類あります。

  1. 直接配賦法
    間接部門費を直接、各直接部門に配賦する方法。計算は単純だが、間接部門同士のサービス提供は考慮しない。
  2. 階梯式配賦法
    サービス提供量の多い間接部門から順に配賦する方法。間接部門間の一方通行的なやり取りを考慮できる。
  3. 相互配賦法
    間接部門同士の相互サービスも反映する方法。精度は高いが計算はやや複雑。
  4. 連続配賦法・連立方程式法
    最も精密な方法で、間接部門間の相互提供を完全に考慮する。大企業やERPシステムで多用。

中小企業の場合、直接配賦法で十分です。なぜなら、そもそも分配基準が前述のように便宜的なもので、現実とは乖離しているからです。

(5) 間接費を製品に分配

こうして直接部門に配賦された間接費を、それぞれの製品の原価を計算する際に分配します。この分配基準には以下のようなものがあります。

  • 直接材料費基準:材料費が多い製品ほど間接費を多く配分
  • 直接労務費基準:手作業中心の工程では有効
  • 製造直接費基準:直接材料費と直接労務費の合計に比例して配分
  • 直接作業時間基準:作業時間を基準に配分。小ロット多品種に向く
  • 機械稼働時間基準:機械時間が多い製品に多く配分。自動化工場に向く
  • 生産量基準:同一製品や類似品の大量生産に有効
  • 売上高基準:販売価格や収益性と比例して配分。ただし製造原価の正確性はやや落ちる

実際は直接作業時間基準及び機械稼働時間基準で十分です。こうして計算した間接部門費用の合計と直接費の合計を、その製品の生産数で割れば、1個の製造費用が計算できます。

ただし、これらの計算はその月の結果がわかっているからできる計算です。つまり、財務会計の原価計算は、実際に発生した費用を割り振って個々の製品の原価に落とし込む方法です。従ってその月の費用が確定しないと原価が分かりません。

工場の利益と製品別損益管理を実現

このように計算することで、その月に生産した製品の製造原価が計算されます。これにより、それぞれの製品の利益がいくらだったのか、製品別損益管理ができます。

間接部門の費用も含めた直接部門の費用も計算できます。そこから部門別損益管理も可能です(ただし、それには1つの製品の売上を各直接部門に振り分けなければなりません)。
また、部門別損益管理を間接部門にまで展開したものが、京セラが行っているアメーバ経営です。

4. 財務会計の原価計算の問題

例えば、今まで原価計算の仕組みがない中小企業がこの方法を導入しようとすると、以下のような問題があります。

経費(共通費)の分配

工場の経費(共通費)を各部門に分配する際、分配基準と実際の消費量との関連が弱いものも多く、「これで正しいのか?」という疑問がわきます。

例えば、地代家賃が従業員用の駐車場の賃料の場合、これは各部門の人数で分配すべきでしょうか。しかし、各部門の中で車通勤の比率は一定ではありません。では、車通勤の人数を調べて分配すべきでしょうか?

この分配によって各部門の費用が変わります。例えば、工場の共通費を各部門の占有面積で分配した場合、面積が広い部門は共通費の負担が多くなります。自部門の占有面積を減らせば共通費が減って原価を下げることができます。かといって現場の通路まで狭くすれば原価は下がりますが、作業効率が犠牲になってしまいます。

間接部門費用の分配

より影響が大きいのが間接部門費用の分配です。これらの部門の人件費は高く、分配の仕方によって原価は大きく変動します。

資材管理の費用を在庫出庫額とした場合、組立部門は購入品・外注加工品が多く出庫額も多く成ます。一方加工品は材料だけなので、同じ点数でも出庫額は少なくなります。その結果、同じ労力をかけていても組立部門に資材管理の費用が多く分配されます。

集計に手間がかかる

そもそも月次決算すらできていない中小企業は少なくありません。月次決算を行うには、年払い・半年払いの費用を月割り計算する必要があります。さらに、毎月発生する費用を集計し、そこから間接費の配賦計算を行う必要があります。

大企業ではERPなどの統合システムが自動的に集計しますが、中小企業では高額なERPを導入していないことが多く、経理担当者がExcelで3日がかりで配賦計算をしているケースもあります。

しかも、それだけの労力をかけても「原価が分かる」だけです。しかもその原価は現場から疑問視されることも多い原価です。

部門別損益管理の課題

配賦計算が発展すると部門別損益管理を行う中小企業もあります。しかし、共通費の配賦によって部門の利益額が大きく変わります。

そのため、各部門の長は数字の変動に神経をとがらせます。その結果、社内で利益争奪戦が生まれます。

部門別損益管理とは「利益は社内のコスト削減によって生み出される」という内部管理志向によって生まれたものです。しかし、現実には企業に売上と利益をもたらすのは顧客です。

経営コンサルタントの故・一倉定氏は「企業活動はすべて顧客志向でなければならない」と言いました。社内で数字を操作しても、利益は1円も増えないのです。

5. 原価計算に間接費の分配が必要な理由

固定費を入れない直接原価計算の課題

間接費の多くが固定費です。そのため、売上が増えれば原価に占める間接費は下がり、利益が増えます。売上が減れば間接費は上昇し、利益は減少します。さらに利益は在庫の増減によっても変動します。

財務会計の原価計算は、こういった要因で変動し利益も変わります。そこで、固定費を配賦しない直接原価計算(変動費のみを原価に含める管理会計手法)が生まれました。中には、損益計算書を変動費・固定費に分けて5期分比較したものを出す会計事務所もあります。

ただし、直接原価計算には問題があります。

いくらで売ればいいのかわからない

そもそも、なぜ原価計算が必要なのでしょうか?
原価計算の最大の目的は、適正な受注価格を設定し、利益を確保することです。

受注時には「この案件はいくらで作れるか」を予測し、利益が出る価格で受注する必要があります。生産後は「実際はいくらかかったのか」を把握し、もし想定より高くついたなら、その原因を分析し、改善策を講じます。

この予測と改善のPDCAサイクルを回すことこそ、原価計算の本質です。

図 現場管理ための原価計算の目的

もし変動費だけの直接原価計算しか行わなければ、固定費の負担を考慮しないため、受注価格が低すぎて赤字になるリスクが高まります。

儲かったかどうかわからない

固定費も含めた製造原価を算出しなければ、その製品が本当に黒字なのか赤字なのかを正しく判断できません。

例えば、受注量が少なく固定費負担が大きい場合、変動費ベースでは黒字でも、固定費を含めれば赤字ということがあります。現場が「予定通りのコストで作れた」と思っていても、実は会社全体の利益を圧迫しているケースもあるのです。

したがって、間接費の配賦は面倒で不正確な部分があっても、経営判断のために避けて通れない作業と言えます。

まとめ

  • 間接費は工場経費や管理部門など、生産に直接関係しない費用
  • 品質管理や製造環境の高度化により、間接費の割合が増加
  • 間接費の多くは固定費。そのため、生産量によって原価は変動
  • 財務会計の原価計算は間接費の分配計算が複雑、しかも根拠が希薄
  • 「いくらで作れるか」を予測し、「いくらかかったのか」を把握するため、中小企業も原価の仕組みが必要

このように、原価計算における間接費の分配は「正解のない作業」である反面、それを行わないと価格決定や採算判断ができなくなるというジレンマがあります。

では、どうすればいいのでしょうか?

これについては別のコラムで解説します。

経営コラム【製造業の原価計算と見積】【製造業の値上げ交渉】は下記リンクを参照願います。


中小企業ができる簡単な原価計算手法

書籍

「中小製造業の『原価計算と値上げ交渉への疑問』にすべて答えます!」

「原価計算」と「値上げ交渉」について具体的に解説した本です。
原価計算の基礎から、原材料、人件費の上昇など原価に与える影響がわかります。取引先との値上げ交渉のポイントも解説しています。実務担当者から管理者・経営者に役立つ内容です。

中小製造業の『原価計算と値上げ交渉への疑問』にすべて答えます!
             日刊工業新聞社

書籍「中小製造業の『原価計算と値上げ交渉への疑問』にすべて答えます!」
「中小製造業の『製造原価と見積価格への疑問』にすべて答えます!」

「この見積価格は正しいのだろうか?」「ランニングコストはどうやって計算するのだろうか?」多くの製造業の経営者や管理者が感じている「現場のお金」の疑問についてわかりやすく書した本です。
切削加工、プレス加工の架空のモデル企業を使って、アワーレートや見積金額を具体的な数字で示しました。難しい会計の理論はないので、会計の苦手な方も抵抗なく読めます。

中小製造業の『製造原価と見積価格への疑問』にすべて答えます!
             日刊工業新聞社

書籍「中小製造業の『製造原価と見積価格への疑問』にすべて答えます!」
「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

中小企業が自ら製品の原価を計算する手引書として、専門的な言葉を使わず、できる限り分かりやすく書いた本です。「難しい会計の知識は不要」「原価計算の専任者がいなくても事務や経営者ができる」ことを目指して、
【基礎編】はアワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本について書きました。
【実践編】は具体的なモデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失について書きました。

中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書
              【基礎編】

中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書
              【実践編】

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

セミナー

アワーレートの計算から人と設備の費用、間接費など原価計算の基本を変わりやすく学ぶセミナーです。人件費・電気代が上昇した場合の値上げ金額もわかります。
オフライン(リアル)またはオンラインで行っています。
詳細・お申し込みはこちらから

]]>
https://ilink-corp.co.jp/9598.html/feed 0
【原価計算と見積の基礎】10.高い設備は原価が高いのか https://ilink-corp.co.jp/9572.html https://ilink-corp.co.jp/9572.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:26:13 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9572
このコラムの概要

高額な設備投資は、減価償却費を増やすものの、必ずしも原価を高騰させるわけではありません。生産効率の向上、不良品の削減、人件費抑制など、多くのコスト削減効果を生む可能性があります。重要なのは、設備価格だけでなく、その設備が生産プロセス全体に与える価値を総合的に評価することです。適切な設備投資は、長期的に見て製品あたりの原価を下げ、企業の競争力を高めます。

大きな設備と小さな設備で原価はどのように変わるのでしょうか?設備の大きさの違いによる原価に関して、以下の5点について述べます。

  1. アワーレート(設備)と設備の費用
  2. 設備の違いによって現場を分けるかどうか
  3. アワーレート(設備)の間接製造費用の影響
  4. 具体的な原価の違い

1. アワーレート(設備)と設備の費用

 アワーレート(設備)は、

本コラムでは設備の年間費用は、決算書の減価償却費でなく実際の償却費を使います。ランニングコストには以下のものがあります。

設備の購入費用 : 実際の償却費
ランニングコスト : 光熱費、消耗品費、修理代、保守料など


図1
 

ランニングコスト

 ランニングコストは設備を動かすのに必要な電気代など光熱費、消耗品費、修理代、保守契約費用などです。この中で設備の差が大きいものをアワーレート(設備)に入れます。今回は電気代のみランニングコストに入れました。

それ以外の費用は金額が少なく設備毎の差も小さいので、間接製造費用として各現場に分配しました。

設備の年間費用が高ければアワーレート(設備)も高くなります。では設備によって現場を分けた方がいいのでしょうか。 

2. 違う設備は現場を分けた方がいいか

 これは設備の機能・能力で判断します。

設備の価格やランニングコストが違っていても、同じ加工であれば生み出す付加価値も同じです。従って、同じ現場にします。 

A社の場合

 機械加工A社は、小型のマシニングセンタ4台と大型のマシニングセンタ4台があります。(図2)この4台は導入時期が異なり、減価償却が残っている設備もあります。ただし加工能力はこの4台の間で差はありません。

大型のマシニングセンタは、大きな部品が加工できるため単価の高い製品が受注できます。
一方、小型のマシニングセンタよりスピードが劣るため、小さな部品は原価が高くなります。

そのため現場はこの2つを使い分けしています。そこで小型のマシニングセンタと大型のマシニングセンタは別の現場とします。

ただし同じ製品を、ある時は大型のマシニングセンタ、ある時は小型のマシニングセンタと、現場が使い分けしていなければ同じ現場にします。つまり、現場を分けるかどうかは「実際に使い分けしているかどうか」です。

図2

です。ラインの効率は

各設備のサイクルタイムのばらつきを縮めない限り、現状では10%のロスが必ず発生します。これは複数の設備に工程分割すれば必ず発生するロスです。実際は、アワーレートの計算には直接製造費用だけでなく、間接製造費用も含まれます。
間接製造費用はアワーレート(設備)にどのように影響するのでしょうか。

3. 間接製造費用の影響

 この間接製造費用を現場に分配する場合、様々な方法があります。本コラムは、

  • 現場の直接製造費用に比例
  • 現場の直接製造時間に比例

この2つを使います。

この間接製造費用を含めたアワーレートがアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)で、これは以下の式で計算します。

では設備の大きさによって、原価はどう変わるでしょうか。具体的な数値で検証します。 

4. 具体的な原価の違い

機械加工A社

図5に示すA社の2つの現場(マシニングセンタ1(小型)とマシニングセンタ2(大型))のアワーレート(設備)や原価を比較します。

図5 A社のマシニングセンタのアワーレート

マシニングセンタ2(大型)の1台の年間費用280万円はマシニングセンタ1(小型)140万円の2倍でした。アワーレート(設備)も2倍になりました。ここでは、間接製造費用を各現場の直接製造費用に比例して分配しました。

これは「直接製造費用の高い現場は付加価値の高い製造をするため、間接製造費用を多く負担する」考え方です。その結果、分配した間接製造費用は、

マシニングセンタ1(小型) : 145万円

マシニングセンタ2(大型) : 185万円

でした。間接製造費用を分配したアワーレート間(設備)は、

マシニングセンタ1(小型) : 1,720円/時間

マシニングセンタ2(大型) : 2,850円/時間

1.7倍に差は縮みました。この違いが原価にどう影響するのでしょうか。A社 A1製品の原価を図6に示します。

図6 A1製品の受注条件と原価、利益

A1製品は、製造費用
マシニングセンタ1(小型) : 380円

マシニングセンタ2(大型) : 470円 (+90円)

利益
マシニングセンタ1(小型) : 50円

マシニングセンタ2(大型) : ▲60円

マシニングセンタ1(小型)では50円の利益が、マシニングセンタ2(大型)では60円の赤字になりました。このように大きな(年間費用の高い)設備は原価が上がります。

実際マシニングセンタ2(大型)は製造費用が90円増えました。しかし、この90円の多くは固定費(実際の償却費)です。つまり赤字でも本当にお金が出ていくわけではありません。

もし、マシニングセンタ2(大型)でも加工できる製品があり、マシニングセンタ2(大型)が空いていれば、マシニングセンタ2(大型)で加工すべきです。

そうすれば原価計算上は赤字でも会社の利益は増えます。この点は誤解する現場の人も多いので注意します。 

このように設備毎の原価の違いを計算できました。

では設備を自動化すれば原価はどう変わるでしょうか?

設備の自動化と多台持ち、ロボットの活用については【原価計算と見えない赤字】9.自動化とロボットの活用を参照願います。

 

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化しました。
中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として、専門的な言葉を使わず分かりやすく書いた本です。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

 

]]>
https://ilink-corp.co.jp/9572.html/feed 0
【原価計算と見積の基礎】7.間接費用の分配 https://ilink-corp.co.jp/9566.html https://ilink-corp.co.jp/9566.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:20:53 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9566
このコラムの概要

製品の正確な原価計算と見積もりには、間接費(家賃、光熱費など)の適切な分配が不可欠です。これらの費用を各製品に配賦する際、売上高や作業時間など、企業の状況に合った基準を選択することが重要です。これにより、製品ごとの収益性が明確になり、価格設定や経営戦略の精度が高まります。不適切な配賦は原価を歪め、企業の利益を損なう可能性があります。

 
6.設備のアワーレートの計算方法(2)ではアワーレート(設備)の計算について説明しました。ここでは人と設備以外の費用、間接製造費用と販管費の計算について説明します。
 

意外と大きい間接部門の費用

間接製造費用とは

 工場には直接製品を製造する直接部門と、製品を直接製造しない間接部門があります。間接部門には生産管理、資材調達、物流、品質管理などがあります。間接部門の費用は間接製造費用です。

また直接部門にも部長や課長など管理に専任し直接製造しない人たちもいます。現場の中にも生産準備など補助的な作業を行い、どれだけ作業すれば、どれだけ生産できるのか明確でない作業者もいます。彼らの費用も間接製造費用です。

A社の部門構成を図1に示します。

図1 A社の部門構成

A社の直接製造部門

  • マシニングセンタ1(小型)
  • マシニングセンタ2(大型)
  • NC旋盤
  • ワイヤーカット放電加工機
  • 組立
  • 出荷検査
  • 設計

A社は設計費用も見積に入れているため、設計も直接製造部門です。間接部門は

  • 生産管理
  • 資材発注
  • 品質管理
  • 受入検査

です。また製造課の課長やマシニングセンタの現場のパート社員は間接作業者です。 

設計や検査は直接部門か?間接部門か?

 加工、組立の現場は直接製造部門です。では検査や設計は直接部門と間接部門のどちらでしょうか?
これは、設計費用や検査費用が見積に含まれるかどうかによります。(図2)

図2 設計費用の考え方

【設計費用】
設計費用は、以下の2種類があります。

  1. 自社製品として設計し、製造・販売する製品の設計費用
  2. 顧客の要求に基づいて設計・製作する製品の設計費用

1.の設計費用は開発費で、製造原価の間接製造費用です。あるいは設計費用が研究開発費の場合、販管費のこともあります。

2.の場合、設計費用が見積に含まれるかどうかで、設計費用が直接製造費用か、間接製造費用か変わります。

設計費用が見積に含まれる場合、設計費用は直接製造費用です。この場合、製品毎に設計時間を集計し、設計時間から設計費用を計算し、原価に加えます。そうしないとその製品が儲かったかどうかがわかりません。

設計費用が見積に含まれない場合、設計費用は間接製造費用です。この場合、他の間接部門の費用と同じように各現場に分配します。

【検査費用】
検査費用も同様です。検査費用が見積に含まれる場合、検査もお金を稼いでいます。その場合、検査は直接部門です。検査費用は直接製造費用です。
一方、検査費用が見積に含まれなければ、検査は間接部門です。検査費用は間接製造費用です。

受入検査は見積に含まれないため、受入検査は間接部門で、受入検査の費用は間接製造費用です。
 

これも大きい「工場の経費」

 
もうひとつの間接製造費用は工場の経費です。図3に代表的な工場の経費を示します。

図3 製造経費

図3のうち消耗品・消耗工具費の一部は本来は材料費です。もし消耗品、消耗工具の中で、特定の製品で消費量が多いものがあれば、その費用は直接製造費用として、その製品の製造原価に入れます。

例えば、ある製品は特殊な刃物を使用して加工します。その刃物は高価で消費量も多いため、その刃物代のみ直接製造費用としてその製品の見積に入れます。 

間接製造費用の原価への組込み1 (簡便な方法)

 間接製造費用を原価に組み込む際、2つの方法があります。

ひとつは個々の製品の直接製造費用に一定の比率(間接費レート)をかけて間接製造費用を計算する方法です。この場合、間接費レートは第2章 式2-6より

間接費レート= 先期の間接製造費用 先期の直接製造費用

A社の場合

先期の間接製造費用合計 : 4,680万円
先期の直接製造費用合計 : 1億1,820万円

間接費レート= 4,680 1億1,820 =0.396≒0.40

間接費レートは40%でした。従って

製造費用=直接製造費用×(1+間接費レート)
    =直接製造費用×(1+0.4)
    =直接製造費用×1.4

直接製造費用を1.4倍すれば、製造費用になります。 

間接製造費用の原価への組込み2 (現場の分配)

 間接製造費用を部門別に計算し各現場に分配する場合、本コラムでは以下のように行います。

  • 間接部門の費用は労務費のみとする。
  • 製造経費は間接部門には分配せず、各現場に直接分配する。

この間接部門の費用と製造経費を、各現場の直接時間、もしくは直接製造費用のいずれかに比例して分配します。

  • 直接製造費用に比例して分配
  • 直接製造時間に比例して分配 (人・設備)

設備の直接製造時間に比例して分配する場合、設備がない現場は人の時間を使用します。人の直接製造時間に比例して分配する場合、無人で加工する設備の現場は設備の時間を使用します。(図4)

ただし、特定の現場で多く消費している費用があれば、その現場固有の費用とします。

図4 間接製造費用の分配

直接製造費用に比例して分配

 直接製造費用に比例して分配する場合、各現場の直接製造費用を計算し、直接製造費用の大きい現場には、間接製造費用を多く分配します。直接製造費用が大きい現場は生み出す付加価値が高くたくさん稼ぐはずです。たくさん稼ぐ現場には、間接製造費用をたくさん負担してもらうという考え方です。 

直接製造時間に比例して分配

 直接製造時間に比例して分配する場合、各現場の直接製造時間を合計し、現場毎の直接製造時間の比率を計算します。直接製造時間の大きい現場に間接製造費用を多く分配します。直接製造時間が大きい現場は工場の資源(リソース)を多く使用し、生み出す付加価値も高いと考えます。その分間接製造費用をたくさん負担してもらう考えです。 

アワーレート間の計算

 どちらの分配ルールを採用するかで現場毎のアワーレートは変わります。しかしどちらが正解ということはないので、自社に合った方法を選択します。

アワーレート間(人)、アワーレート間(設備)は

アワーレート間(人)= 人の年間費用合計+間接製造費用分配 直接作業者の稼働時間合計

アワーレート間(設備)= 設備の年間費用合計+間接製造費用分配 直接設備の稼働時間合計

人の年間費用合計は、その現場の直接作業者と間接作業者の人件費の合計です。従って

アワーレート間(人)= 直接作業者人件費合計+間接作業者人件費合計+ 間接製造費用分配 直接作業者の稼働時間合計

また設備の年間費用合計は、その現場の直接製造設備の費用と間接製造設備の費用の合計です。従って

 

アワーレート間(設備)= 直接製造設備の年間費用合計+間接製造設備費用合計+間接製造費用分配 直接設備の稼働時間合計

A社マシニングセンタ1(小型)の現場の計算例

 A社マシニングセンタ1(小型)の現場の例を図5に示します。

図5 間接製造費用を含んだアワーレート(人)

A社は直接製造費用に比例して間接製造費用を分配しました。その結果、マシニングセンタ1(小型)の人の現場の間接製造費用の分配は580万円でした。

アワーレート間(人)= 直接作業者の人件費合計++間接作業者人件費合計+間接製造費用分配 直接作業者の稼働時間合計
= (1,672×10^4+115.2+580×10^4) 7,040
=3,363≒3,360円/時間

マシニングセンタ1(小型)の現場は

アワーレート(人) : 2,540円/時間
アワーレート間(人) : 3,360円/時間

この現場の間接製造費用を含んだアワーレート(設備)を図6に示します。

図6 間接製造費用を含んだアワーレート(設備)

マシニングセンタ1(小型)の設備の現場の間接製造費用分配は580万円でした。

アワーレート間(設備)= 直接製造設備費用合計++間接製造設備費用合計+間接製造費用分配 直接作製造設備の稼働時間合計
= (140+18.4)×4×10^4+0+580×10^4) 2,200×0.8×4
=1,724≒1,720円/時間

マシニングセンタ1(小型)の現場
アワーレート(設備) : 900円/時間
アワーレート間(設備) : 1,720円/時間 

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化しました。
中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として、専門的な言葉を使わず分かりやすく書いた本です。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

]]>
https://ilink-corp.co.jp/9566.html/feed 0
【原価計算と見積の基礎】3.製造原価の計算方法(2) https://ilink-corp.co.jp/9558.html https://ilink-corp.co.jp/9558.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:17:24 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9558
このコラムの概要

中小製造業における間接製造費用の分配とアワーレート計算について解説します。まず、間接費を直接製造費用に比例して現場ごとに配賦し、労務費や設備費、光熱費などを含んだアワーレートを算出します。このアワーレートに製造時間を掛けることで、正確な製造原価を把握できます。この方法は、合理的かつ実務的に原価計算を行うための重要なプロセスです。

 
【原価計算と見積の基礎】2.製造原価の計算方法(1)では工場で発生する必要と製造原価の構成について説明しました。

ここでは間接製造費用と販管費、見積金額の計算について説明します。

間接製造費用も原価の一部です。そこでこれらの費用も製品の原価に組み込みます。

では、どうやって間接製造費用を原価に組み込むのでしょうか。
 

間接製造費用の分配1 製品に直接分配

 
最も簡単な方法は直接製造費用に何らかのルールで分配〈注1〉する方法です。

〈注1〉
本コラムでは、間接製造費用を割り振ることを「分配」と呼びます。会計では割り振ることを「配賦」と呼びます。この配賦も「割り当てる」という意味です。
会計では「配賦」のほかに「賦課」という言葉もあり、以下のように使い分けています。

配賦:製造原価を計算する際に、間接費を何らかの基準(配賦基準)を用いて振り分けること

賦課:製造原価を計算する際に、「何に」「どれだけ」使ったのかがわかる直接費を振り分けること

「直接費は賦課して、間接費は配賦する」という表現します。しかし、本コラムでは難しい会計用語を用いず、一般的な「分配」を使用します。

原価計算の本には、分配基準の例として以下のものがあります。

  • 直接材料費
  • 直接労務費
  • 直接製造費用
  • 直接活動時間
  • 機械稼働時間
  • 生産量
  • 売上高

これらの分配基準は一長一短があります。

例えば「直接材料費に比例して分配する方法」は、製品によって材料費の比率が異なると間接製造費用が変わってしまいます。

そこで本コラムはこのような問題の比較的少ない「直接製造費用に比例する方法」を使用します。直接製造費用に対する間接製造費用の比率を、本コラムは「間接費レート」と呼びます。

間接費レートは、決算書の直接製造費用合計と間接製造費用合計から計算します。

間接製造費用は、直接製造費用に間接費レートをかけて計算します。

間接製造費用=直接製造費用×間接費レート

製造費用は、直接製造費用と間接製造費用の合計です。

製造費用=直接製造費用+間接製造費用
    =直接製造費用×(1+間接費レート)

この方法は、どの製品も直接製造費用に比例して間接製造費用を計算します。

しかし現場によっては間接製造費用がたくさん発生した現場とそうでない現場があります。その場合、次の方法で間接製造費用を各現場に分配して原価を計算します。
 

間接製造費用の分配2 各現場に分配

 
間接製造費用を部門別に計算し、各現場に分配する方法です。

例えばA社では、資材発注部門は、原材料を使う加工や組立の現場には関係しますが、検査や設計には関係しません。
そこで資材発注部門の費用は、加工と組立の現場に分配します。

このようにして各現場の直接製造費用と間接製造費用を計算し、その合計からアワーレートを計算します。これを図1に示します。

図1 間接製造費用の分配

 

財務会計の計算方法

 
財務会計では、この部門別の費用の計算は以下のように行います。

  1. 水道光熱費、消耗品費、修繕費などを各現場と間接部門に分配する
  2. 共用部の減価償却費、保険料、賃借料など共用部の費用を何らかの
    分配基準で各現場と間接部門に分配する(分配基準の例 人数、床専有面積、光熱費など)
  3. 間接部門の費用を各現場に分配

実際は、消耗品費や水道光熱費などは、各現場や間接部門がどれだけ使っているのか正確にはわかりません。またこれらの費用を各現場や部門に分配しても金額は低いので、そこに労力をかけてもメリットは多くありません。
 

直接時間、又は直接製造費用に比例して分配

 
そこで本コラムは、間接製造費用(製造経費と間接部門費用)は各現場の「直接時間」、または「直接製造費用」に比例して分配します。

例えば、A社の資材発注の費用は、加工と組立の各現場それぞれの直接製造費用に比例して分配します。ただし特定の現場が多く消費している費用があれば、その現場の費用を増やします。
 

間接製造費用を含んだアワーレート

 
こうして計算した間接製造費用と直接製造費用を現場毎に合計し、稼働時間で割ってアワーレートを計算します。

なお本コラムは、直接製造費用から計算したアワーレートと、直接製造費用と間接製造費用の合計から計算したアワーレートを区別するために、これをアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)と表記します。


アワーレート間(人)の計算方法は、【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法

アワーレート間(設備)の計算方法は、【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)

6.設備のアワーレートの計算方法(2)

で説明します。
 

製造費用の計算式

 

間接製造費用を含んだ製造費用は以下の式で計算されます。

製造費用(人)=アワーレート間(人)×製造時間(人)

製造費用(設備)=アワーレート間(設備)×製造時間(設備) 

製造費用(人+設備)=製造費用(人)+製造費用(設備)

本コラムでは、製造費用は製造費用(人+設備)を指します。もし人と設備が同じ時間製造すれば、製造費用は以下の式になります。

製造費用=(アワーレート間(人)+アワーレート間(設備))×製造時間
    =(アワーレート間(人+設備))×製造時間 

ここでアワーレート(人+設備)は、アワーレート間(人)とアワーレート間(設備)を合計したものです。
 

A社のアワーレート間

 

この方法で計算したA社のアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)を表1の右側に示します。

表1 アワーレート間(人)、アワーレート間(設備) 単位 : 円/時間

 アワーレートアワーレート間
設備設備
マシニングセンタ1(小型)2,3809003,3601,720
マシニングセンタ2(大型)2,3801,8003,4202,850
NC旋盤2,3807003,1501,470
ワイヤーカット2,2504002,400※550(890)
出荷検査1,7202,350
組立1,5301,920
設計2,7503,220

※ ワイヤーカットは段取のアワーレート、( )内は加工のアワーレート


マシニングセンタ1(小型)の現場のアワーレート間(人)は、

(直接製造費用のみの)アワーレート(人) : 2,380円/時間

(間接製造費用を含めた)アワーレート間(人) : 3,360円/時間

間接製造費用を含めると980円/時間増加しました。

アワーレート間(設備)は、

(直接製造費用のみの)アワーレート(設備) : 900円/時間

(間接製造費用を含めた)アワーレート間(設備) : 1,720円/時間

間接製造費用を含めると820円/時間増加しました。
 

製造原価の計算

 

複数の工程で製造する場合は、各工程の製造費用を合計します。
 

A1製品の製造原価

 

図2に複数の工程で製造したA社 A2製品の例を示します。

図2 複数工程での原価

3工程の製造費用の合計は1,060円でした。製造原価は製造費用に材料費と外注費を加えたものです。

製造原価=材料費+外注費+製造費用 

図2は、材料費450円、外注費50円なので、

製造原価=450+50+1,060
    =1,560円

製造原価は1,560円でした。
 

見積金額の計算

 
販管費は製造原価に一定の比率(販管費レート)をかけて計算します。

販管費=製造原価×販管費レート 

製造原価に販管費を加えたものを本コラムでは「販管費込み原価」と呼びます。(会計では「総原価」と呼びます。)

販管費込み原価=製造原価+販管費

見積金額は、販管費込み原価に目標利益を加えたものです。

目標利益は、販管費込み原価に「販管費込み原価利益率」をかけて計算します。

目標利益=販管費込み原価×販管費込み原価利益率

見積金額=販管費込み原価+目標利益 

販管費込み原価利益率の計算については、【原価計算と見積の基礎】8.販管費と利益の計算で説明します。
 

販管費、目標利益、見積金額

 

A社 A1製品 (マシニングセンタ1(小型)で製造)の原価、販管費、目標利益を図3に示します。

図3 見積金額

A社は、販管費レート25%、販管費込み原価利益率は8.7%でした。

販管費=製造原価×販管費レート
   =760×0.25=190円

販管費込み原価=製造原価+販管費
       =760+190=950円

目標利益=販管費込み原価×販管費込み原価利益率
    =950×0.087=83≒80円

見積金額=販管費込み原価+目標利益
    =950+80=1,030円

見積金額は1,030円でした。

アワーレートはどうやって計算するのでしょうか。

アワーレート(人)の計算方法は【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法で説明します。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化しました。
中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として、専門的な言葉を使わず分かりやすく書いた本です。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

]]>
https://ilink-corp.co.jp/9558.html/feed 0
【原価計算と見積の基礎】2.製造原価の計算方法(1) https://ilink-corp.co.jp/9552.html https://ilink-corp.co.jp/9552.html#respond Wed, 17 Jan 2024 02:12:04 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9552
このコラムの概要

本記事では、中小製造業が押さえておくべき「製造原価の計算方法」について、実務に即した形で解説しています。製造原価は、材料費や外注費、労務費、設備費、間接費などで構成され、それぞれの費用の算出方法や考え方が丁寧に説明されています。さらに、これらの原価に販管費や目標利益を加えることで見積価格が決まるという、見積作成までの一連の流れも紹介。記事では、複雑になりがちな原価計算をシンプルに整理し、実際の業務で活用しやすい形で理解できるよう工夫されています。原価の「見える化」によって、根拠ある見積や価格設定を実現するための第一歩となる内容です。

 
【原価計算と見積の基礎】1.なぜ原価が必要なのか? では、工場が儲かっているかどうかの「ものさし」として、原価の必要性を説明しました。ここでは原価計算の方法について説明します。

製造業では、会社に入ってくるお金は製品の売上です。会社の費用はこの売上から賄われます。この費用が増えれば利益が減少します。

つまり会社の費用が増加することは、原価が増えることです。

言い換えれば「会社で発生する費用はすべて原価」です。つまり「ボールペン1本買っても原価は増える」のです。

この費用にはどのようなものがあるのでしょうか?
 

発生する費用はすべて決算書に書かれている

 
会社に入ってくるお金(売上)と出るお金(費用)、そして残るお金(利益)は、決算書に記載されています。

この決算書には図1に示す損益計算書、製造原価報告書があります。

図1 決算書の構成

この決算書の費用について、以下に説明します。
 

材料費

 
材料費は、製造原価報告書の材料費に計上されます。材料費は図2に示すようなものがあります。

図2 材料費


 
〈原材料〉

原材料には、原料と材料があります。

原料:製造工程で性質が変わるものです。

例えば、樹脂原料は粒上のペレットですが、成型機を通すことで
樹脂製品に変わります。

材料:製造工程で基本的に性質が変わらないものです。

鋼材は、加工機で切削することで形は変わりますが、
鋼材の性質は変わりません。

   ただし熱処理をすれば硬さは変わります。しかし硬さ以外は原型も性質もとどめているので、材料のままと考えます。

〈部品〉
購入した状態のまま使用するものです。

部品には、製造先によって購入品(メーカー)、外注品(外注)、内製品(社内)の3種類があります。

部品の中には、ボルトやピンのように使用量が多く、ひとつの製品に何個使用したのか管理していないものがあります。

その場合、材料費でなく工場消耗品(製造経費)とすることもあります。

〈工場消耗品〉
補修用材料、洗浄剤、オイル、燃料、包装資材など、生産活動に伴って消費されるものです。

多くは製品1個にどのくらい使用されているのかわかりません。あるものが原材料か、工場消耗品なのかは、企業によって変わります。

例えば、組立工場では塗料は消耗品ですが、塗装工場では、塗料は原価に占める割合が高いため原材料です。

〈消耗工具器具備品〉
スパナなどの工具や切削・研削工具などの刃物、測定工具など、資産にならない少額の工具や備品です。

機械加工工場は、切削・研削工具の消耗が激しく、これらは材料費とすることもあります。
また特定の製品で激しく消耗する工具は、その製品固有の材料費にすることもあります。

製品1個の材料費は以下の式で計算します。

材料費=単価×使用量
 

外注費

 
メッキ、塗装、焼入れなど製造工程の一部を社外に委託した費用です。大抵の場合、製品1個の外注費は明確です。

一方、外注先に支払う費用がすべて外注費とは限りません。中には、材料費や労務費もあります。これを図3に示します。

図3 外注先に支払う費用とその区分

外注に支払う費用には以下のものがあります。

〈材料費〉
外注先が仕入れた材料、部品を購入。
外注先が購入した材料を外注先が加工し完成部品として納入。

これらは会計上は材料費ですが、外注費に仕分けされることもあります。

〈外注費〉
外注先に材料(又は半加工品)を支給して、製造の一部を委託し、完成品、又は半加工品として納入。

〈労務費〉
外注先の社員が自社に来て、自社の工場内で製造の一部を請け負えば、これは派遣社員と同様に労務費です。

組立工程の一部を外注先に委託した場合、外注先の社内で行えば外注費ですが、外注先の社員が自社に来て作業すれば労務費です。

外注先に支払った費用でも、このように内容によっては材料費・外注費・労務費です。

しかし全部外注費として決算書に計上されていることもあります。財務会計上は問題ありませんが、原価計算では内容に応じて分ける必要があります。

また受注が増えたため、一部の製品の製造を外注に委託することがあります。その結果、同一製品で内製と外注の2つの原価ができます。この場合、元々内製の製品であれば内製の原価とします。

外注に出して原価が上がった場合は、「実績原価が上がった」と考えます。
 

労務費

 
製造原価報告書の労務費は、製造部門や間接部門など工場で働いている人たちの人件費です。
製品1個つくるのにかかった労務費は、作業者の1時間当たりの費用(アワーレート(人))に〈注1〉製造時間をかけて計算します。

労務費=アワーレート(人)×製造時間

A社の現場〈注2〉には図4に示す人たちがいました。

図4 製造現場の人たち


〈注1〉アワーレートは、チャージ、賃率、ローディングなどと呼ばれることもあります。意味は同じなので本コラムではアワーレートとします。アワーレートの時間単位は、1時間(円/時間)の他、1分(円/分)、1秒(円/秒)があります。

〈注2〉本コラムではアワーレートを計算する組織の単位を「現場」と呼びます。同じ部署でも設備の種類が異なりアワーレートも異なれば別の現場とします。
例えば、製造1課にマシニングセンタとNC旋盤があれば、現場1はマシニングセンタ、現場2はNC旋盤とします。

自社が雇用:
正社員、パート社員、実習生他にシニア社員を定年後、嘱託やアルバイトとして雇用する場合もあります。社長など役員が現場で作業していれば、役員報酬(販管費)の一部も原価計算では労務費です。

他社が雇用:
派遣社員や社内外注・請負これらが製造原価の労務費です。一方、図5に示す
派遣社員や社内外注の費用は、外注費や製造経費に計上されていることもあります。

図5 労務費以外に計上される人の費用

自社で雇用する人の費用の内訳:
正社員、パート社員、実習生、嘱託・アルバイトなど、自社が直接雇用する人の費用には以下のものがあります。

  • 賃金・給与
  • 退職金 (又は退職引当金)
  • 賞与 (又は賞与引当金)
  • その他手当
  • 法定福利費
  • 福利厚生費
  • 雑給

法定福利費や福利厚生費は、製造原価と販管費を分けずに、すべて販管費に計上されていることもあります。
また実習生に関する費用は労務費でなく製造経費の場合もあります。

派遣社員、社内外注など他社が雇用する費用:
派遣社員の費用は、企業によって労務費、外注費、製造経費など計上の仕方が異なります。また社内外注や請負は、外注費に計上されることがあります。

その場合、外注先が社内外注と加工外注の両方を行っていれば、加工外注の費用と社内外注の費用が一緒になっています。
原価計算では、外注費と労務費に分けます。

このように原価計算では人の費用は、決算書の費目を確認して適切に分類します。
 

製造経費

 
工場で発生する費用の内、材料費、労務費、外注費以外は、製造経費です。
ただし、総務、経理や営業など、製造に直接関係しない費用は販管費です。

製造経費には図6に示すようなものがあります。

図6 製造経費


 

販管費

 
販管費(販売費及び一般管理費)は、会社で発生する費用のうち製造に直接関係しない費用です。

これは図7に示すものがあります。

製造に直接関係しない費用とは何でしょうか。これは以下の2つです。

販売費 商品や製品を販売するための費用「販売費」
一般管理費 会社全般の業務の管理活動にかかる費用「一般管理費」

図7 販管費

工場では日々これらの費用が発生します。

原価を計算するためには、これらの費用を元に製品1個あたりの原価を計算しなければなりません。

この原価の構成はどうなっているのでしょうか。
 

製造原価の計算

 

製造原価の構成

 
図8にA社 A1製品の製造原価を示します。

図8 A1製品の製造原価の構成

A1製品は、材料費330円、外注費50円、製造費用380円でした。
製造原価は、材料費、外注費、製造費用の合計760円でした。

製造費用380円の内訳は、直接製造費用(人)、直接製造費用(設備)、間接製造費用です。

【直接製造費用】
製品を製造するのに直接携わった人や設備の費用で、その中で製品1個製造するのにどのくらい発生したのか、はっきりとわかる費用です。
これには人と設備の費用があります。

直接製造費用(人) : 人が直接関与して製造した費用
直接製造費用(設備) : 設備が直接関与して製造した費用

【間接製造費用】
物流や資材受入など製造に間接的に関わった人の費用です。加えて工場で発生する様々な費用(製造経費)も間接製造費用です。

また製造に直接かかわった費用でも、製品1個にどのくらいかかったのか正確にわからなければ、間接製造費用とします。
 

直接製造費用(人)とアワーレート(人)

 
直接製造費用(人)は、以下の式で計算します。

直接製造費用(人)=製造時間(人)×アワーレート(人)

製造時間(人) : 製品1個を製造するのにかかった人の時間
アワーレート(人) : 作業者1人が1時間作業した時に発生する費用

アワーレート(人)の計算は【原価計算と見積の基礎】4.人のアワーレートの計算方法で説明します。
 

設備の直接製造費用とアワーレート

 
直接製造費用(設備)は、製造にかかった設備の費用です。

直接製造費用(設備)=製造時間(設備)×アワーレート(設備)

製造時間 (設備) : 製品1個を製造するのにかかった設備の時間
アワーレート(設備) : 設備1台が1時間稼働した時に発生する費用

アワーレート(設備)の計算は【原価計算と見積の基礎】5.設備のアワーレートの計算方法(1)【原価計算と見積の基礎】6.設備のアワーレートの計算方法(2)で説明します。

例として、A社の現場毎のアワーレート(人)、アワーレート(設備)を表1に示します。

表1 A社の現場毎のアワーレート  単位:円/時間

 アワーレート(人)アワーレート(設備)
マシニングセンタ1(小型)2,380900
マシニングセンタ2(大型)2,3801,800
NC旋盤2,380700
ワイヤーカット2,250400
出荷検査1,720
組立1,530
設計2,750

現場によって、人件費や設備の費用が異なります。そのため、アワーレート(人)、アワーレート(設備)も現場によって異なります。
 

多品種少量生産では段取時間も見積に入れる

 
段取とは、品種の切替のことです。〈注3〉
 


〈注3〉段取は、大きく分けて以下の2種類があり内容は異なります。

(1) (すでに実績のある製品の) 品種の切替
(2) (過去に実績のない製品の) 生産準備

(1)の段取は、金型、材料、刃物、加工治具の交換、加工プログラムの切替、テスト加工と品質確認などを行います。

(2)の段取は、(1)に加え加工プログラムの作成やテスト加工、プログラムの修正などを行います。

プレス加工、樹脂成形加工のような量産工場は、段取は(1)を指します。段取の手順は決まっていて、できる限り早く行います。

一方、多品種少量生産や単品生産の工場は、段取は(2)のこともあります。

初めて製造する場合、プログラムや加工条件が適切でなければ不良品をつくってしまいます。従ってスピードだけでなく、的確な作業が求められます。

 

製品1個当たりの段取時間は

従って、ロット数が多ければ1個当たりの段取時間は短くなります。段取も含めた製造時間は、1個当たりの段取時間と1個の加工時間の合計です。

 

間接製造費用の分配

 
 

付加価値について

 
製造業は、材料を仕入れて製品に加工する事業です。

例えばA社は材料を330円で仕入れ外注に50円払って加工してもらいました。それを社内でA1製品に加工して1,000円で顧客に納入しました。(図9)

この時、工場が生み出した付加価値は、製品の価格1,000円から社外に払った費用(材料費と外注費の合計)380円を引いた620円です。

付加価値=売上-社外に払った費用

図9 付加価値


 

直接作業者と間接作業者

 
この付加価値を生む人が直接作業者です。
工場にはこの直接作業者以外に、ものを運んだり、生産管理といった付加価値を直接生まない人もます。その人たちを本コラムでは間接作業者と呼びます。

間接作業者の費用は間接製造費用です。
 

直接製造設備と補助的に使用する設備

 
多くの設備は「削る、穴を開ける」などの付加価値を生みます。こういった設備は直接製造設備です。

また設備には常時生産に使用され付加価値を生む設備以外に、たまにしか使われない設備もあります。

例えば、製品のひずみ取りに使用する油圧プレスは、製品にひずみが出た時だけ使用されます。製造工程が安定してひずみが出なければ使いません。

本コラムでは、このような設備を「補助的に使用する設備」と呼びます。

補助的に使用する設備は、どの製品にどのくらい使われたのか正確にわかりません。そのため、このような設備の費用は間接製造費用です。

言い換えると付加価値を生まない人や設備は「稼いでいない」人や設備です。しかし稼いでいない人や設備も良い製品をつくるには必要です。ただし、稼いでいない人や設備が増えれば、原価が高くなります。
 

具体的な間接製造費用

 
この間接製造費用を図10に示します。

図10 間接製造費用

【人の費用 (労務費) 】

  • 現場で生産準備や後処理など補助作業を行う作業者
  • 現場の管理者
  • 倉庫や工場内の物流(フォークリフトの運転)を行う作業者
  • 生産管理、品質管理など間接部門

 

【人以外の費用 (製造経費) 】

  • 現場にある直接製造設備以外の設備(補助的に使われる設備)
  • 測定機、フォークリフトなど間接部門の設備
  • クレーン、空調機など工場の共用設備
  • 工場の光熱費、借地代、税金などの費用

 
これらの間接製造費用も原価の一部です。そこでこれらの費用も製品の原価に組み込みます。

では、どうやって間接製造費用を原価に組み込むのでしょうか。

これは【原価計算と見積の基礎】3.製造原価の計算方法(2)で説明します。

「原価計算と見積の基礎」の他のコラムは以下から参照いただけます
本コラムは「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】の一部を抜粋しました。

「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」の目次
【基礎編】

  • 第1章 なぜ個々の製品の製造原価が必要なのか?
  • 第2章 どうやって個別原価を計算するのか?
  • 第3章 アワーレート(人)はどうやって計算する?
  • 第4章 アワーレート(設備)に必要な減価償却費
  • 第5章 アワーレート(設備)はどうやって計算する?
  • 第6章 間接製造費用と販管費の分配
  • 第7章 個々の製品の原価計算

【実践編】

  • 第1章 製造原価の計算方法
  • 第2章 難しい原価計算を分かりやすく解説
  • 第3章 原価を活かした工場管理
  • 第4章 原価を活かして見えない損失を発見する
  • 第5章 意思決定への原価の活用

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】

経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化しました。
中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として、専門的な言葉を使わず分かりやすく書いた本です。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】モデルを使ってロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失

弊社執筆の原価計算に関する著作は以下からご参照いただけます

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

]]>
https://ilink-corp.co.jp/9552.html/feed 0
【製造業の値上げ交渉】5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか? https://ilink-corp.co.jp/9386.html https://ilink-corp.co.jp/9386.html#respond Mon, 08 Jan 2024 03:58:52 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9386
このコラムの概要

製造業は、電気代上昇が製品原価に与える影響を正確に把握する必要があります。単に電気代全体が増えたと捉えるのではなく、各製造工程や設備が消費する電力量を基に、製品1つあたりのコスト増加分を具体的に算出することが重要です。この定量的なデータを値上げ交渉の根拠とすることで、顧客に説得力のある説明が可能となり、適正な利益を確保し、持続的な経営を実現できます。

 
クイズです。

ある会社(A社) 受注金額1,000円の製品で、電気代が30%上昇した時、原価はどれだけ高くなるでしょうか?

1. 5円
2. 9円
3. 20円

正解は2.の9円でした。電気代上昇の影響は意外と大きかったのではないでしょうか?

これは架空のモデル企業の場合でしたが、自社ではどうでしょうか?
 

資源価格の高騰と電気代の変化

 
日本の場合、電気、ガスなどのエネルギー費は原油や天然ガスの価格に影響されます。この原油や天然ガスは、ロシアの産出量も多く、ウクライナ戦争の影響で価格が上昇しました。また大半が輸入のため為替の影響も受けます。また原油は市場で取引されますが、時には投機マネーが流入して価格が大きく跳ね上げることもあります。

2000年から2023年の間の原油価格の推移を図1に示します。

図1 原油価格の推移
図1 原油価格の推移

天然ガスの価格も図2のように乱高下しています。

図2 天然ガスの価格の推移
図2 天然ガスの価格の推移

その結果、電気代も上昇しています。電気代(kWh単価)は、2020年から3年間で2.1倍になりました。

図3 電気代の推移
図3 電気代の推移

これにより原価はどれだけ上昇したでしょうか?
 

電気代の上昇によるアワーレートの上昇

 
電気代が上昇した場合、以下の2つが増加します。

  • アワーレート(設備)の計算に電気代が含まれている場合、その分の電気代の上昇
  • 共用部分の電気代が上昇し、それによってる間接製造費用の分配つが増加

これについて架空のモデル企業A社 NC旋盤の現場のアワーレートと原価を計算します。

モデル企業A社の詳細は「製造業の値上げ交渉1 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?」を参照願います。
 

設備のアワーレートの上昇

 
A社 NC旋盤の現場

NC旋盤1台の年間電気代 : 23.2万円

電気代30%増加した場合 

増加後のNC旋盤1台の電気代=23.2×(1+0.3)=30.2万円

NC旋盤の現場は、4台のNC旋盤がありました。この現場の平均アワーレート(設備)は
平均アワーレート(設備)の計算

  • 値上げ前 : 700円/時間
  • 30%上昇後 : 740円/時間

40円/時間増加しました。

一方共用部分の電気代も上昇します。A社の年間の電気代は1,300万円、このうち共用部分の電気代は756万円でした。この756万円も30%増加します。

そのため、間接製造費用の分配は544万円→568万円と24万円増加しました。この間接製造費用の分配については「製造業の値上げ交渉3 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか?」を参照願います。

従ってアワーレート間(設備) 〈注〉は
アワーレート間(設備)の計算


〈注〉本コラムでは、間接製造費用を含んだアワーレートを区別するために、

  • 直接製造費用のみのアワーレート : アワーレート(人)、アワーレート(設備)
  • 間接製造費用を含んだアワーレート : アワーレート間(人)、アワーレート間(設備)

と表記します。
またアワーレートは、直感的に理解しやすいように一桁目を四捨五入しています。(正確さよりもわかりやすさを重視しています。) 実際の計算では正確な数字を使用願います。

間接製造費用も含めるとアワーレート間(設備)は

  • 値上げ前 : 1,470円/時間
  • 30%上昇後 :1,550円/時間

80円/時間増加しました。
 

人のアワーレートの上昇

 
共用部分の電気代が上昇によって間接製造費用が増加すると、アワーレート間(人)も上昇します。NC旋盤の現場の人の間接製造費用分配は設備と同じ568万円でした。

その結果、アワーレート間(人)は
アワーレート間(人)の計算

  • 値上げ前 : 3,150円/時間
  • 30%上昇後 :3,180円/時間

30円/時間増加しました。
 

電気代の上昇による原価・見積金額の増加

 
このアワーレートの上昇により原価はどうなるのでしょうか?

A社のA1製品の原価と見積金額を計算します。
 

製造原価

 
A1製品

  • 製造時間 : 0.075時間
  • アワーレート間(人) : 3,180円/時間
  • アワーレート間(設備) : 1,550円/時間

アワーレート間(人+設備)の計算
製造費用の計算
その結果、製造原価は
製造原価の計算
製造費用は

  • 値上げ前 : 726円
  • 30%上昇後 : 735円/時間

9円増加しました。
 

見積金額

 
販管費は製造原価に比例して計算するため、販管費も増加します。

A社の販管費レート : 0.25
見積金額の計算

販管費も増加したため、見積金額は

  • 値上げ前 : 988円
  • 30%上昇後 : 999円/時間

11円増加しました。これを図4に示します。

図4 電気代の上昇による見積金額の増加
図4 電気代の上昇による見積金額の増加


 

金額は低いが利益への影響は大

 
見積金額は988円から999円と11円増加しました。11円は988円に比べれば小さな金額です。値上げをお願いすると「それぐらい企業努力で何とかしてくれませんか」と言われかもしれません。

しかし電気代が30%上昇し、経費が390万円増加したのは事実です。この11円の値上げができなければ、390万円の利益を喪失します。11円の値上げは、実際の電気代の上昇に基づく金額であることを伝えて、この金額だけは認めてもらうようにします。

その際、販管費や利益の増加分2円を認めてもらうのは難しいかもしれません。しかしA社は製造原価の25%の販管費が発生しているのは事実です。新たに見積をする場合は、販管費は184円になります。

販管費の増加分を認めてもらうのが難しければ、製造費用の上昇分9円だけは認めてもらいます。
 

電気代以外の工場の経費の上昇

 
消耗品など工場で使用する工具や資材の価格も上昇しています。

例えば機械加工工場では、金属を切削する刃物(バイトやエンドミル)を毎月大量に消費します。刃物にはタングステンなどレアメタルを使用するものもあり、資源価格の上昇やウクライナ戦争によりロシアからの入手が困難になったため価格が上昇しました。

あるいは設備の老朽化により修理代が増えていることもあります。他にも工場の土地の賃借料や材料の運送費が上昇していることもあります。

これらは原価に影響するのでしょうか?
 

比率を計算すれば原価の上昇が計算可能

 
本コラムのアワーレート間の計算では、各現場に間接製造費用を分配して計算しました。

例えば、A社 NC旋盤の現場では間接製造費用の分配は544万円でした。この544万円は先期の決算書の費用を元に計算しました。

A社の決算書の製造経費は

  • 電気代 : 1,300万円
  • 消耗品費 : 400万円
  • 修繕費 : 300万円

でした。この比率から、NC旋盤の現場のアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)に占める電気代、消耗品費、修繕費の比率が計算できます。

A社のNC旋盤の現場のアワーレート間(人)、アワーレート間(設備)に占める電気代、消耗品費、修繕費の比率を図5、図6に示します。

図5 A社のNC旋盤のアワーレート間(人)に占める費用の比率
図5 A社のNC旋盤のアワーレート間(人)に占める費用の比率
図6  A社のNC旋盤のアワーレート間(設備)に占める費用の比率
図6 A社のNC旋盤のアワーレート間(設備)に占める費用の比率

なおこの計算は弊社の個別原価計算システム「利益まっくす」値上げ計算シート(オプション)から行いました。

詳細は「原価計算システム『利益まっくす』」の紹介サイトを参照願います。
 

A1製品の値上げ金額の計算

 
この比率から、A1製品の値上げ金額を計算します。

A1製品の材料費330円 外注費50円 製造費用346円
 

A1製品の費用の内訳

 
製造費用346円の内訳を図7に示します。

図7 A1製品の費用の内訳
図7 A1製品の費用の内訳

A1製品の製造費用346円の内訳は

  • 人件費 : 224円
  • 設備償却費 : 28円
  • 電気代 : 31.7円
  • 消耗品費 : 13円
  • 修繕費 : 10円
  • その他 : 39円

でした。
 

値上げ金額の計算

 
例えば

  • 人件費 : 8%
  • 電気代 : 30%
  • 消耗品費 : 15%
  • 修理費 : 10%

増加した場合

人件費=224×0.08=17.9円

電気代=32×0.3=9.6円

消耗品費=13×0.15=2円

修繕費=10×0.1=1円

値上げ金額合計=17.9+9.6+2+1=30.5≒30円

製造費用は30円上昇します。

製造費用=346+30=376円

A1製品は
材料費 : 330円
外注費 : 50円
なので、製造原価は
製造原価の計算
販管費は製造原価に比例して計算するため
A社の販管費レート : 0.25
見積金額の計算
見積金額は

  • 値上げ前 : 988円
  • 値上げ後 : 1,027円/時間

34円増加しました。これを図8に示します。

図8 人件費、電気代、消耗品費の上昇による見積金額の増加
図8 人件費、電気代、消耗品費の上昇による見積金額の増加

以上の計算は決算書の数値を元に計算したものであり、真実です。ただし、それだけの金額が値上げ交渉できるとは限りません。値上げ交渉は顧客が納得できる理由が必要だからです。

それでも様々な費用が上昇した結果、原価がどのように変わったのか知っておくことは価値があります。

一方値上げの資料にはどこまで記載すればよいでしょうか。

これについては【製造業の値上げ交渉】6. 値上金額は見積書にどのように入れればいいのだろうか?を参照願います。

本コラムのテーマについては以下の動画もあります

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

弊社の書籍

「中小製造業の『原価計算と値上げ交渉への疑問』にすべて答えます!」
原価計算の基礎から、原材料、人件費の上昇の値上げ計算、値上げ交渉についてわかりやすく解説しました。

「中小製造業の『製造原価と見積価格への疑問』にすべて答えます!」
製品別の原価計算や見積金額など製造業の経営者や管理者が感じる「現場のお金」の疑問についてわかりやすく解説した本です。

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】
経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化、中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として分かりやすく解説しました。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】具体的なモデルでロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失を解説

セミナー

アワーレートの計算から人と設備の費用、間接費など原価計算の基本を変わりやすく学ぶセミナーです。人件費・電気代が上昇した場合の値上げ金額もわかります。
オフライン(リアル)またはオンラインで行っています。
詳細・お申し込みはこちらから

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム ものづくりの未来と経営

経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、技術革新や経営、社会の変革などのテーマを掘り下げ、ニュースからは見えない本質と変化を深堀したコラムです。「未来戦略ワークショップ」のテキストから作成しています。過去のコラムについてはこちらをご参照ください。
以下から登録いただくと経営コラムの更新のメルマガをお送りします。(ご登録いただいたメールアドレスはメルマガ以外には使用しません。)

]]>
https://ilink-corp.co.jp/9386.html/feed 0
【製造業の値上げ交渉】4. 人件費が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか? https://ilink-corp.co.jp/9383.html https://ilink-corp.co.jp/9383.html#respond Mon, 08 Jan 2024 03:57:32 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9383
このコラムの概要

製造業は人件費上昇が製品原価に与える影響を正確に把握すべきです。単に人件費総額を見るのではなく、製品ごとの工数にアワーレート(時間当たり人件費)を掛けて、製品ごとの原価上昇額を算出することが重要です。この具体的なデータを値上げ交渉の根拠とすることで、顧客を納得させ、適正な利益を確保し、持続的な経営を実現できます。

 
最低賃金が上昇し、人手不足もあって人件費が上昇しています。

また2022年以降、資源高、円安などの影響で物価も上昇しています。生活を維持するための賃上げも必要になってきました。
 

人件費の上昇

 
デフレが続く日本でも、これまでも人件費は上昇していました。

それは最低賃金が上がっているからです。

図1に2014年から2023年の間の最低賃金(全国加重平均)の推移を示します。

2014年から2023年の10年間で最低賃金は780円から1,004円と約3割(28.7%)上昇していました。

図1 10年間の最低賃金の推移
図1 10年間の最低賃金の推移

最低賃金は10年間で3割近くも上昇しています。

直近の3年間、2021年から2023年の間でも930円から1,004円と8%上昇しています。

加えて人手不足もあって、最近は最低賃金ではバート・アルバイトの雇用が難しくなっています。
 

賃金上昇でアワーレートは増加

 
人件費が上昇すれば、作業者の費用は増加します。さらに作業者の費用(直接製造費用)だけでなく、間接部門や販管費の人件費も上昇するため間接製造費用や販管費も押し上げます。

これにより原価はどれだけ増加するのでしょうか?
 

人件費の上昇によるアワーレートの上昇

 
架空のモデル企業A社を例に、会社全体の人件費が8%上昇した場合の原価の上昇を計算します。

モデル企業A社の詳細は「製造業の値上げ交渉1 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?」を参照願います。
 

平均アワーレート(人) (直接製造費用)の上昇

 
このA社のNC旋盤の現場は、作業者は4人、直接作業者の平均アワーレート(人)は2,375円/時間でした。

このアワーレートの計算は「製造業の値上げ交渉2 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?」を参照願います。

作業者4人の年間費用 : 1,672万円

人件費が8%上昇したため

作業者の年間費用=1,672×(1+0.08)=1,806万円

1,672万円が1,806万円に上昇しました。その結果
平均アワーレート(人)の計算

平均アワーレート(人)は、

  • 上昇前 2,380円/時間
  • 8%上昇 2,570円/時間

190円/時間増加しました。
 

間接部門費用も上昇

 
人件費が8%上昇したため、間接部門の労務費も増加します。その結果、NC旋盤の現場の間接製造費用の分配は、544万円から571万円に増加しました。

これにより間接製造費用を含んだアワーレート間(人)は〈注〉
間接製造費用を含んだアワーレート間(人)


〈注〉本コラムでは、間接製造費用を含んだアワーレートを区別するために、

  • 直接製造費用のみのアワーレート : アワーレート(人)、アワーレート(設備)
  • 間接製造費用を含んだアワーレート : アワーレート間(人)、アワーレート間(設備)

と表記します。
またアワーレートは、直感的に理解しやすいように一桁目を四捨五入しています。(正確さよりもわかりやすさを重視しています。) 実際の計算では正確な数字を使用願います。

アワーレート間(人)は、

  • 上昇前 3,150円/時間
  • 8%上昇 3,380円/時間

230円/時間増加しました。
 

アワーレート間(設備)も上昇

 
間接製造費用分配の増加は、アワーレート間(設備)にも影響します。

NC旋盤の現場の設備の間接製造費用の分配も544万円から571万円に増加しました。
間接製造費用を含んだアワーレート間(設備)

アワーレート間(設備)は、

  • 上昇前 1,470円/時間
  • 8%上昇 1,510円/時間

40円/時間増加しました。

このアワーレート間の上昇により原価はどう変わるでしょうか?
 

A1製品の原価

 
A社 A1製品の原価を計算します。

  • 製造時間 : 0.075時間
  • アワーレート間(人) : 3,380円/時間
  • アワーレート間(設備) : 1,510円/時間
アワーレート間(人+設備)の計算
製造費用の計算


製造費用は、

  • 上昇前 346円
  • 8%上昇 367円

21円増加しました。

その結果、製造原価は
製造原価の計算

製造原価も21円増加しました。
 

販管費の増加と見積金額

 
人件費の上昇により販管費の労務費も増加します。A社の販管費は7,700万円が7,868万円に増加しました。
 

販管費レートは増加するとは限らない

 
ただし、A社の場合、販管費の増加以上に製造原価が増加しました。その結果、販管費レートは25%から24.7%と、むしろ減少しました。
 

実際の販管費と見積金額

 
人件費8%上昇後の見積金額は、製造原価は747円なので
見積金額の計算

見積金額は

  • 上昇前 988円
  • 8%上昇 1,013円

25円増加しました。これを図2に示します。

図2 人件費の上昇による見積金額の上昇
図2 人件費の上昇による見積金額の上昇

このように人件費の上昇は原価全体に影響します。
 

3年前に見積した製品も高くなっている可能性

 
時給が最低賃金と同期して上がっている場合、3年前に988円で見積した製品は、現在は25円値上げしなければ、目標の利益が得られません。もしギリギリの価格で受注していた場合、今は赤字になっている可能性もあります。

この値上げ金額の計算は、利益まっくすの値上げ計算シートを使って計算することができます。

では、人件費以外に電気代や消耗品が上がった場合、原価はどうなるのでしょうか?

これについては【製造業の値上げ交渉】5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?」を参照願います。

本コラムの内容について、以下の動画もあります。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

弊社の書籍

「中小製造業の『原価計算と値上げ交渉への疑問』にすべて答えます!」
原価計算の基礎から、原材料、人件費の上昇の値上げ計算、値上げ交渉についてわかりやすく解説しました。

「中小製造業の『製造原価と見積価格への疑問』にすべて答えます!」
製品別の原価計算や見積金額など製造業の経営者や管理者が感じる「現場のお金」の疑問についてわかりやすく解説した本です。

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】
経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化、中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として分かりやすく解説しました。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】具体的なモデルでロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失を解説

セミナー

アワーレートの計算から人と設備の費用、間接費など原価計算の基本を変わりやすく学ぶセミナーです。人件費・電気代が上昇した場合の値上げ金額もわかります。
オフライン(リアル)またはオンラインで行っています。
詳細・お申し込みはこちらから

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム ものづくりの未来と経営

経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、技術革新や経営、社会の変革などのテーマを掘り下げ、ニュースからは見えない本質と変化を深堀したコラムです。「未来戦略ワークショップ」のテキストから作成しています。過去のコラムについてはこちらをご参照ください。
以下から登録いただくと経営コラムの更新のメルマガをお送りします。(ご登録いただいたメールアドレスはメルマガ以外には使用しません。)

]]>
https://ilink-corp.co.jp/9383.html/feed 0
【製造業の値上げ交渉】3. 間接費用や販管費も原価に含まれるのだろうか? https://ilink-corp.co.jp/9381.html https://ilink-corp.co.jp/9381.html#respond Mon, 08 Jan 2024 03:56:42 +0000 https://ilink-corp.co.jp/?p=9381
このコラムの概要

製造業の値上げ交渉では、直接的な製造原価だけでなく、間接費用や販管費も考慮に入れるべきです。多くの企業が直接原価に注目しがちですが、これら間接的な費用も製品の生産・販売活動を支える不可欠な要素です。製造間接費(光熱費など)や販管費(営業費用など)を含めた全費用を正確に把握することで、適正な利益を確保できる値上げ交渉が可能になります。すべての費用を網羅的に捉えることが、企業の持続可能な経営と競争力維持に繋がります。

 
【製造業の値上げ交渉】2. 我が社の人と設備のアワーレートはいくらなのだろうか?」で人と設備のアワーレートの計算方法を説明しました。

原価を計算するには、各現場の費用に間接製造費用を加えたアワーレート間〈注1〉を計算する必要があります。

では、このアワーレート間はどうやって計算するでしょうか?


〈注1〉本コラムでは、間接製造費用を含んだアワーレートを区別するために、

  • 直接製造費用のみのアワーレート : アワーレート(人)、アワーレート(設備)
  • 間接製造費用を含んだアワーレート : アワーレート間(人)、アワーレート間(設備)

と表記します。
またアワーレートは、直感的に理解しやすいように一桁目を四捨五入しています。(正確さよりもわかりやすさを重視しています。) 実際の計算では正確な数字を使用願います。

 

直接製造費用と間接製造費用

 
工場の費用は、直接製造費用と間接製造費用があります。
 

直接製造費用

 
ある製品を製造するのにどのくらいかかったのかが明確にわかる費用
(これは人の費用と設備の費用があります)
 

間接製造費用

 
どの製品にどのくらいかかったのかが明確にわからない費用
(間接部門の費用や消耗品など、他に工場全体で発生する費用)

図1 直接製造費用と間接製造費用
図1 直接製造費用と間接製造費用

この間接製造費用は意外と多く、原価のかなりの割合を占めます。

そこで各現場のアワーレートは、その現場の直接製造費に間接製造費用を加えて計算したアワーレート間を使用します。そのためには間接製造費用を各現場に分配〈注2〉する必要があります。これはどうすればよいでしょうか?


〈注2〉
これは固定費の配賦とも呼ばれます。本コラムでは難しい会計用語は使用せず、一般的な「分配」と呼びます。

 

間接製造費用の分配

 

間接製造費用の分配は、本コラムは以下のように行います。

  • 間接部門の費用は労務費のみとする。
  • 間接部門の費用は、その部門が関与する現場のみに分配する。
  • 製造経費は間接部門には分配せず、各現場に直接分配する。

これは各現場の直接時間、又は直接製造費用に比例して分配します。
 

分配の考え方

直接製造費用に比例して分配

直接製造費用の大きい現場には、間接製造費用を多く分配します。直接製造費用が大きい現場は、生み出す付加価値が高くたくさん稼ぐはずなので、間接製造費用をたくさん負担してもらう考え方です。

直接製造時間に比例して分配

直接製造時間の大きい現場に間接製造費用を多く分配します。直接製造時間が大きい現場は、工場の資源(リソース)を多く使用し、生み出す付加価値も高いと考え、その分間接製造費用をたくさん負担してもらう考えです。

どちらの分配ルールを採用するかでアワーレート間は変わりますが、どちらが正解ということはないので、自社に合った方法を選択します。
 

アワーレート間の計算

 
アワーレート間(人)、アワーレート間(設備)は、以下の式で計算します。


アワーレート間(人)の計算式

アワーレート間(設備)の計算式
では、架空のモデル企業A社(機械加工)のNC旋盤の現場のアワーレート間を計算します。
 

実際の計算

 
モデル企業A社の詳細は「製造業の値上げ交渉1 個々の製品の原価はいくらなのだろうか?」を参照願います。
 

アワーレート間(人)

 
NC旋盤の現場の人の費用とアワーレート間(人)を図2に示します。

NC旋盤の現場の作業者は4人、4人の人件費の年間合計は1,672万円でした。就業時間と稼働率は4人とも
就業時間 : 2,200時間
稼動率 : 0.8
でした。

図2 NC旋盤の現場の人の費用とアワーレート間(人)
図2 NC旋盤の現場の人の費用とアワーレート間(人)

A社は直接製造費用に比例して間接製造費用を分配しました。その結果、NC旋盤の人の現場の間接製造費用の分配は544万円でした。アワーレート間(人)は

アワーレート間(人)の計算

でした。

NC旋盤の現場は
アワーレート(人) : 2,380円/時間
アワーレート間(人) : 3,150円/時間
間接製造費用を分配したことでアワーレートは770円/時間 高くなりました。
 

アワーレート間(設備)

 
NC旋盤の現場の設備の費用とアワーレート間(設備)を図3に示します。

NC旋盤の現場には4台のNC旋盤があり、実際の償却費、電気代、操業時間、稼働率は4台とも以下の値でした。
実際の償却費 : 100万円
電気代 : 23.2万円
操業時間 : 2,200時間
稼動率 : 0.8

図3 NC旋盤の現場の設備の費用とアワーレート間(設備)
図3 NC旋盤の現場の設備の費用とアワーレート間(設備)

NC旋盤の現場の設備の間接製造費用分配は、544万円でした。

アワーレート間(設備)の計算

NC旋盤の現場
アワーレート(設備) : 700円/時間
アワーレート間(設備) : 1,470円/時間
間接製造費用を分配したことでアワーレートは770円/時間 高くなりました。

実は見積金額を計算するには、販売費及び一般管理費も入れる必要があります。
 

これも必要、販売費及び一般管理費

 
企業で発生する費用のうち、製造に直接関係しない費用が販売費及び一般管理費 (以降、販管費)です。これは以下の二つの費用です。

  • 販売費   : 商品や製品を販売するための費用
  • 一般管理費 : 会社全般の業務の管理活動にかかる費用

図4 販管費の例
図4 販管費の例

工場の人や設備の大半は製造のためのものです。一般管理費といってもその大半は製造のための管理費です。会計上の扱いが異なるため、製造原価と販管費は分けていますが、販管費がなければ工場は成り立ちません。
 

販管費も含めた金額が本当の原価

 
従って製造原価に販管費を加えたものが本当の原価です。会計ではこれを「総原価」と呼びます。本コラムではこれを「販管費込み原価」と呼ぶことにします。

販管費込み原価=製造原価+販管費

最近は中小企業も管理業務が増え、多くの中小企業は販管費が売上高の15~30%を占めています。従って、見積には販管費も入れて、必要な利益が出るような金額にします。
 

先期の決算書から比率を計算

 
それぞれの製品の販管費は、製造原価に一定の比率をかけて計算します。本コラムではこれを「販管費レート」と呼びます。

販管費レートは以下の式で計算します。
販管費レートの計算式

販管費=製造原価×販管費レート
 

ではA社の実際の販管費レートを計算します。

実際の販管費レートの計算

 
A社の製造原価と販管費は先期の決算書から
製造原価 3億960万円  販管費 7,700万円
販管費レートの計算

販管費レートは25%でした。

見積金額は、この販管費込み原価に目標利益を加えて計算します。

見積金額=販管費込み原価+目標利益

では目標利益はいくらでしょうか。
 

目標利益

 
目標利益の決め方は企業によってそれぞれのやり方があります。参考までに前年度の営業利益率から計算する方法を紹介します。
 

目標営業利益率から計算する方法

 
先期の営業利益率は以下の式で計算します。
先期の営業利益率の計算式

例えば、先期の営業利益率は3%、今期の目標営業利益率を8%としました。

見積書の目標利益は、図5に示すように販管費込み原価から計算します。そこで販管費込み原価に対する利益率(販管費込み原価利益率)を計算します。

図5 A社の売上高、製造原価、販管費と利益
図5 A社の売上高、製造原価、販管費と利益

販管費込み原価利益率は、以下の式で計算します。
販管費込み原価利益率
 

実際の利益率の計算

 
図5から先期の営業利益率は3%、それを元に今期の目標営業利益率を8%とした場合
販管費込み原価利益率

販管費込み原価利益率は8.7%でした。

目標利益は、販管費込み原価に販管費込み原価利益率をかけて計算します。

目標利益=販管費込み原価×販管費込み原価利益率 

実際にある製品A1製品の見積金額を計算します。
 

A1製品の見積金額の計算

 

A1製品の製造原価は726円でした。

A1製品の見積金額

987円で受注すれば、製造原価、販管費をカバーして、さらに79円の利益が得られます。これを図6に示します。

図6 A1製品の原価の構成
図6 A1製品の原価の構成


 

原価は真実

 
以上の方法で計算した原価は、実際に工場で発生した費用(先期のですが)を元に計算した金額です。従ってこの原価は「真実」といえます。ただし間接製造費用の分配方法などが変われば原価は変わります。つまり真実ですが「唯一の値」ではありません。
 

この金額で受注しなければ目標利益は達成できない

 
製造業は人や設備が生産することで付加価値を生みます。しかし人や設備の生産能力には限りがあります。

当初想定した稼働率で人や設備が1年間生産すれば、目標の売上や利益を達成します。一方想定以上に受注があっても急に生産を増やすことはできません。(外注化すれば売上は増えますが付加価値は多くありません。)

つまり人や設備によって生産量が限られるため、会社が利益を出すにはひとつひとつの製品で利益がなければなりません。

この点が店舗や人を増やさなくても販売量を大きく増やすことができる小売業や卸売業と違う点です。小売業や卸売業は価格を下げて販売が大きく伸びれば利益は増えるからです。
 

さまざまな費用が上昇し原価が高くなっている場合

 
従ってそれぞれの受注で利益があるのか、管理する必要があります。

今日さまざまな費用が上がっています。改めて原価を計算すると赤字になっている製品があるかもしれません。

では、費用が上がると原価はどれだけ高くなるのでしょうか?

これについては以下のコラムを参照願います。

【製造業の値上げ交渉】4. 人件費が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?

【製造業の値上げ交渉】5. 電気代が上昇すれば原価はどれだけ上がるのだろうか?を参照願います。

経営コラム【製造業の値上げ交渉】【製造業の原価計算と見積】【現場で役立つ原価のはなし】の過去記事は、下記リンクからご参照いただけます。

弊社の書籍

「中小製造業の『原価計算と値上げ交渉への疑問』にすべて答えます!」
原価計算の基礎から、原材料、人件費の上昇の値上げ計算、値上げ交渉についてわかりやすく解説しました。

「中小製造業の『製造原価と見積価格への疑問』にすべて答えます!」
製品別の原価計算や見積金額など製造業の経営者や管理者が感じる「現場のお金」の疑問についてわかりやすく解説した本です。

書籍「中小企業・小規模企業のための個別製造原価の手引書」【基礎編】【実践編】
経営コラム「原価計算と見積の基礎」を書籍化、中小企業が自ら原価を計算する時の手引書として分かりやすく解説しました。
【基礎編】アワーレートや間接費、販管費の計算など原価計算の基本
【実践編】具体的なモデルでロットの違い、多台持ちなど実務で起きる原価の違いや損失を解説

セミナー

アワーレートの計算から人と設備の費用、間接費など原価計算の基本を変わりやすく学ぶセミナーです。人件費・電気代が上昇した場合の値上げ金額もわかります。
オフライン(リアル)またはオンラインで行っています。
詳細・お申し込みはこちらから

月額5,000円で使える原価計算システム「利益まっくす」

中小企業が簡単に使える低価格の原価計算システムです。
利益まっくすの詳細は以下からお願いします。詳しい資料を無料でお送りします。

経営コラム ものづくりの未来と経営

経営コラム「ものづくりの未来と経営」は、技術革新や経営、社会の変革などのテーマを掘り下げ、ニュースからは見えない本質と変化を深堀したコラムです。「未来戦略ワークショップ」のテキストから作成しています。過去のコラムについてはこちらをご参照ください。
以下から登録いただくと経営コラムの更新のメルマガをお送りします。(ご登録いただいたメールアドレスはメルマガ以外には使用しません。)

]]>
https://ilink-corp.co.jp/9381.html/feed 0